JP7022579B2 - マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法 - Google Patents

マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、マスターバッチの製造方法、ゴム組成物の製造方法およびタイヤの製造方法に関する。
天然ゴムにカーボンブラックが分散したウェットマスターバッチは、ムーニー粘度が高く、加工性が悪い。ウェットマスターバッチは、たとえば、天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合し、凝固し、脱水して得ることができる。
加工性を向上するために、ウェットマスターバッチを混練りする際に、可塑剤を添加することができる。混練りは、混練機、たとえばバンバリーミキサーでおこなわれる。
特開平11-49895号公報
しかしながら、加工性の向上だけでなく、加硫ゴムの物性、たとえば引裂強さや耐摩耗性も考慮すべきである。引裂強さや耐摩耗性について、ウェットマスターバッチを混練りする際に可塑剤を添加する手法には改善の余地がある。
本開示の目的は、加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とを向上することができるマスターバッチの製造方法を提供することである。
本開示におけるマスターバッチの製造方法は、少なくとも天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで凝固処理前混合液を作製する工程と、凝固処理前混合液を凝固する工程とを含む。
本開示における実施形態のマスターバッチの製造方法は、少なくとも天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで凝固処理前混合液を作製する工程と、凝固処理前混合液を凝固する工程とを含む。
本開示における実施形態のマスターバッチの製造方法は、加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とを向上することができる。凝固処理前混合液を、天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで作製することで、凝固処理前混合液に液状ゴムを分散させることが可能であり、液状ゴムが分散したマスターバッチを得ることができる。このようなマスターバッチで加硫ゴムを作製することによって、混練り時に液状ゴムをはじめて使用(添加)して加硫ゴムを作製する手法にくらべて、架橋点の分布状態の均一性を高めることができる。よって、本開示における実施形態のマスターバッチの製造方法は、そのような手法にくらべて、加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とを向上することができる。
凝固処理前混合液を作製する工程は、天然ゴムラテックスに液状ゴムラテックスを添加し、添加後天然ゴムラテックスを得ることと、添加後天然ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーを混合することとを含むことができる。いっぽう、このような手順に代えて、凝固処理前混合液を作製する工程は、天然ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーを混合し、液状ゴムラテックスを添加することを含むことができる。
本開示における実施形態のゴム組成物の製造方法は、本開示における実施形態のマスターバッチの製造方法を含む。具体的には、本開示における実施形態のゴム組成物の製造方法は、少なくとも天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで凝固処理前混合液を作製する工程と、凝固処理前混合液を凝固する工程とを含む。
本開示における実施形態のタイヤの製造方法は、本開示における実施形態のマスターバッチの製造方法を含む。具体的には、本開示における実施形態のタイヤの製造方法は、少なくとも天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで凝固処理前混合液を作製する工程と、凝固処理前混合液を凝固する工程とを含む。
本開示の実施形態において、充てん剤は、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機充てん剤であることができる。これらのうち、一つまたは複数を選択して、使用することができる。
実施形態1
ここからは、本開示の実施形態1について説明する。実施形態1は、マスターバッチのための充てん剤としてカーボンブラックを使用する。
実施形態1におけるタイヤの製造方法は、凝固処理前混合液を作製する工程と、凝固処理前混合液を凝固し、マスターバッチを得る工程と、少なくともマスターバッチおよび配合剤を混練りし、ゴム混合物を得る工程と、ゴム混合物に加硫系配合剤を練り込み、ゴム組成物を得る工程と、ゴム組成物で作製した未加硫タイヤを加硫成型する工程とを含む。
実施形態1におけるタイヤの製造方法は、凝固処理前混合液を作製する工程、すなわち、天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーで凝固処理前混合液を作製する工程を含む。
天然ゴムラテックスでは、天然ゴムを含むゴム粒子が、コロイド状に水に分散している。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。天然ゴムラテックスの乾燥ゴム分は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。天然ゴムラテックスにおける乾燥ゴム分の上限は、たとえば60質量%、好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。
液状ゴムラテックスでは、液状ゴムを含むゴム粒子が、コロイド状に水に分散している。液状ゴムは、たとえば、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴムであることができる。すなわち、液状ゴムラテックスは、液状ジエン系ゴムラテックスであることができ、たとえば液状イソプレンゴムラテックスであることができる。液状ゴムの数平均分子量は、たとえば0.5万~6.0万である。液状ゴムラテックスの乾燥ゴム分は、たとえば10質量%以上であることができ、30質量%以上であることもでき、50質量%以上であることもできる。液状ゴムラテックスにおける乾燥ゴム分の上限は、たとえば90質量%、80質量%、70質量%などである。
カーボンブラックスラリーでは、カーボンブラックが水中に分散している。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラックの量は、カーボンブラックスラリー100質量%において、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。カーボンブラックスラリーにおけるカーボンブラック量の上限は、好ましくは15質量%、より好ましくは10質量%である。カーボンブラックスラリーは、たとえばカーボンブラックと水とを混合することで得ることができる。カーボンブラックとしては、たとえばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなどのカーボンブラックのほか、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックと水とは、高せん断ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
凝固処理前混合液は、天然ゴムを含むゴム粒子と、液状ゴムを含むゴム粒子と、カーボンブラックとを含む。凝固処理前混合液では、これらが水中に分散している。凝固処理前混合液における天然ゴムの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量%において、たとえば80質量%以上であることができ、85質量%以上であることができ、90質量%以上であることができる。凝固処理前混合液における天然ゴムの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量%において、たとえば99質量%以下であることができ、98質量%以下であることができ、97質量%以下であることができる。いっぽう、凝固処理前混合液における液状ゴムの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量%において、たとえば1質量%以上であることができ、2質量%以上であることができ、3質量%以上であることができる。凝固処理前混合液における液状ゴムの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量%において、たとえば20質量%以下であることができ、15質量%以下であることができ、10質量%以下であることができる。いっぽう、凝固処理前混合液におけるカーボンブラックの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量部に対して、たとえば10質量部以上であることができ、20質量部以上であることができ、30質量部以上であることができ、40質量部以上であることができる。凝固処理前混合液におけるカーボンブラックの量は、凝固処理前混合液の乾燥ゴム分100質量部に対して、たとえば80質量部以下であることができ、70質量部以下であることができ、60質量部以下であることができる。
凝固処理前混合液を作製する工程は、天然ゴムラテックスに液状ゴムラテックスを添加し、添加後天然ゴムラテックスを得ることと、添加後天然ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーを混合することとを含む(この手順を、以下、「第一手順」という。)。具体的には、まず、天然ゴムラテックスに液状ゴムラテックスを添加し、必要に応じて撹拌し、添加後天然ゴムラテックスを得る。次いで、添加後天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合し、凝固処理前混合液を得る。添加後天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとは、高せん断ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。
凝固処理前混合液を作製する工程は、前述の第一手順(天然ゴムラテックスに液状ゴムラテックスを添加し、添加後天然ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーを混合する手順)に代えて、天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合し、液状ゴムラテックスを添加することを含んでもよい(この手順を、以下、「第二手順」という。)。この場合、まず、天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合する。天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとは、高せん断ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機で混合できる。次いで、この混合で得られた液に、液状ゴムラテックスを添加し、必要に応じて撹拌し、凝固処理前混合液を得る。
凝固処理前混合液を凝固し、マスターバッチを得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。凝固は、凝固処理前混合液を乾燥させることで起こすことができる。いっぽう、凝固を起こすために、凝固処理前混合液に凝固剤を添加してもよい。凝固剤は、たとえば酸である。酸としてギ酸、硫酸などを挙げることができる。凝固処理前混合液を凝固することで得られた凝固物は水を含んでいる。よって、この工程(凝固処理前混合液を凝固し、マスターバッチを得る工程)は、凝固物を脱水することを含むことができる。凝固物を脱水するために、たとえば、押出機や真空乾燥機、エアドライヤーなどを使用できる。脱水された凝固物の水分量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。脱水後の凝固物を成形することをこの工程は含むことができる。このようにして得られたマスターバッチは、ゴム、カーボンブラックを含む。
マスターバッチはゴムを含む。マスターバッチのゴムは、天然ゴムと液状ゴムとを含む。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、マスターバッチ中のゴム100質量%において、たとえば80質量%以上であることができ、85質量%以上であることができ、90質量%以上であることができる。マスターバッチにおける天然ゴムの量は、マスターバッチ中のゴム100質量%において、たとえば99質量%以下であることができ、98質量%以下であることができ、97質量%以下であることができる。
マスターバッチはカーボンブラックをさらに含む。カーボンブラックの量は、マスターバッチ中のゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、マスターバッチ中のゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
マスターバッチと配合剤とを混練りし、ゴム混合物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。配合剤としては、充てん剤、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤など挙げることができる。これらのうち、一つまたは複数を選択して、マスターバッチと混練することができる。この工程でマスターバッチに添加する配合剤はオイルを含んでいない。老化防止剤として、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などを挙げることができる。この混練りの工程では、マスターバッチおよび配合剤とともに、ほかのゴムを混練りすることができる。混練り時にマスターバッチに追加するゴムとして、たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどを挙げることができる。混練り時にマスターバッチに追加するゴムは液状ゴムを含んでいない。ここでの液状ゴムとして、たとえば、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系液状ゴムを挙げることができる。混練りは、混練機でおこなうことができる。混練機として密閉式混練機、オープンロールなどを挙げることができる。密閉式混練機としてバンバリーミキサー、ニーダーなどを挙げることができる。
ゴム混合物に加硫系配合剤を練り込み、ゴム組成物を得る工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法はさらに含む。加硫系配合剤として硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などを挙げることができる。硫黄として粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを挙げることができる。加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などを挙げることができる。
ゴム組成物は、マスターバッチに由来するゴムを含む。マスターバッチに由来するゴムの量は、ゴム組成物中のゴム100質量%に対して、たとえば、40質量%以上であることができ、60質量%以上であることができ、80質量%以上であることができ、100質量%であることもできる。
ゴム組成物はカーボンブラックを含む。カーボンブラックの量は、ゴム組成物中のゴム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上である。カーボンブラックの量は、ゴム組成物中のゴム100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
ゴム組成物は、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などをさらに含むことができる。硫黄の量は、ゴム組成物中のゴム100質量部に対して、硫黄分換算で好ましくは0.5質量部~5質量部である。加硫促進剤の量は、ゴム組成物中のゴム100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~5質量部である。
ゴム組成物は、タイヤの作製に使用できる。具体的には、タイヤを構成するタイヤ部材の作製に使用可能である。たとえば、トレッドゴム、サイドウォールゴム、チェーハーゴム、ビードフィラーゴムなどの作製にゴム組成物を使用できる。
ゴム組成物で作製した未加硫タイヤを加硫成型する工程を、実施形態1におけるタイヤの製造方法は含む。未加硫タイヤは、ゴム組成物で作製したタイヤ部材を備える。すなわち、未加硫タイヤが、ゴム組成物を含むタイヤ部材を備える。実施形態1の方法で得られたタイヤは、たとえば空気入りタイヤであることができる。
ここまで説明したように、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とを向上することができる。凝固処理前混合液を、天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーで作製することで、凝固処理前混合液に液状ゴムを分散させることが可能であり、液状ゴムが分散したマスターバッチを得ることができる。このようなマスターバッチで加硫ゴムを作製することによって、混練り時に液状ゴムをはじめて使用(添加)して加硫ゴムを作製する手法にくらべて、架橋点の分布状態の均一性を高めることができる。よって、本開示における実施形態1のマスターバッチの製造方法は、そのような手法にくらべて、加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とを向上することができる。
実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、加工性を向上することができる。凝固処理前混合液を、天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーで作製することで、凝固処理前混合液に液状ゴムを分散させることが可能であり、液状ゴムが分散したマスターバッチを得ることができる。よって、液状ゴムに、可塑剤としての機能を発揮させることが可能であり、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は加工性を向上することができる。
さらに、実施形態1におけるマスターバッチの製造方法は、液状ゴムラテックスに代えて液状ゴムを用いる手法(凝固処理前混合液を、天然ゴムラテックス、液状ゴムおよびカーボンブラックスラリーで作製する手法)にくらべて、液状ゴムを凝固処理前混合液に容易に分散することが可能であり、液状ゴムの分散を向上できる。
変形例1
実施形態1では、マスターバッチに添加する配合剤がオイルを含んでいないものの、実施形態1における変形例1では、マスターバッチに添加する配合剤がオイルを含んでいる。
変形例2
実施形態1では、混練り時にマスターバッチにゴムを追加する場合、このゴムが液状ゴムを含んでいないものの、実施形態1における変形例2では、このゴムが液状ゴムを含んでいる。
変形例3
実施形態1では、凝固処理前混合液を作製する工程が、第一手順(天然ゴムラテックスに液状ゴムラテックスを添加し、添加後天然ゴムラテックスおよびカーボンブラックスラリーを混合する手順)、または第二手順(天然ゴムラテックスとカーボンブラックスラリーとを混合し、液状ゴムラテックスを添加する手順)を含むものの、実施形態1の変形例3では、第一手順または第二手順に代えて、カーボンブラックスラリーに液状ゴムラテックスを添加し、必要に応じて撹拌し、これと天然ゴムラテックスとを混合することを、この工程が含む。
変形例4
実施形態1では、カーボンブラックスラリーを得るためにカーボンブラックと水とを混合するものの、実施形態1の変形例4では、この操作に代えて、カーボンブラックスラリーを得るために、カーボンブラックとゴムラテックス(以下、カーボンブラックと混合するためのゴムラテックスを「希薄ゴムラテックス」という。)とを混合する。カーボンブラックと希薄ゴムラテックスとを混合することによって、カーボンブラックの再凝集を防止できる。カーボンブラックの表面の一部または全部に極薄いラテックス相が生成し、ラテックス相がカーボンブラックの再凝集を抑制すると考えられるからである。希薄ゴムラテックスでは、ゴム粒子が,コロイド状に水に分散している。希薄ゴムラテックスは、たとえば天然ゴムラテックス、合成ゴムラテックスなどである。天然ゴムラテックス中の天然ゴムの数平均分子量は、たとえば200万以上である。合成ゴムラテックスは、たとえばスチレン-ブタジエンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスである。希薄ゴムラテックスの乾燥ゴム分は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上である。乾燥ゴム分の上限は、たとえば5質量%、好ましくは2質量%、さらに好ましくは1質量%である。
これらの変形例から、一つまたは複数を選択して、実施形態1に、組み合わせることはもちろん可能である。
以下に、本開示の実施例を説明する。
原料・薬品を次に示す。
天然ゴムラテックス(乾燥ゴム分30.5%のフィールドラテックス) Golden Hope社製
液状イソプレンゴムラテックス 「LIR-700」(数平均分子量=28000、乾燥ゴム分=60.0質量%、分散媒=水)クラレ社製
N330カーボンブラック(NSA93m/g フタル酸ジブチル吸収量119cm/100g)東海カーボン社製
N110カーボンブラック(NSA142m/g フタル酸ジブチル吸収量115cm/100g)東海カーボン社製
天然ゴム RSS#3を素練りしたもの
亜鉛華 「亜鉛華1号」三井金属鉱業社製
老化防止剤 「ノクラック6C」(6PPD)大内新興化学工業社製
ステアリン酸 「ルナックS-20」花王社製
オイル 「プロセスNC-140」JOMO社製
液状イソプレンゴムA 「LIR-50」(数平均分子量=54000)クラレ社製
液状イソプレンゴムB 「LIR-30」(数平均分子量=28000)クラレ社製
硫黄 「粉末硫黄」鶴見化学工業社製
加硫促進剤 「ソクシールCZ」住友化学社製
実施例1~3におけるマスターバッチの作製
天然ゴムラテックスに、液状イソプレンゴムラテックスを表1にしたがって添加し、撹拌し、スラリー添加前ゴムラテックスを得た。いっぽう、カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、スラリー添加前ゴムラテックスに表1にしたがって加え、撹拌し、凝固剤としてギ酸をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製スクリュープレスV-02型)で200℃で脱水し、マスターバッチを得た。
実施例4におけるマスターバッチの作製
カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、天然ゴムラテックスに表1にしたがって加え、撹拌した。これに、液状イソプレンゴムラテックスを表1にしたがって添加し、撹拌し、凝固剤としてギ酸をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機で200℃で脱水し、マスターバッチを得た。
比較例2~5におけるマスターバッチの作製
カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、天然ゴムラテックスに表1にしたがって加え、撹拌し、凝固剤としてギ酸をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機で200℃で脱水し、マスターバッチを得た。
Figure 0007022579000001
未加硫ゴムの作製
マスターバッチまたは天然ゴムに、硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表2にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
ムーニー粘度
JIS K6300に準じて、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱した後にローターを回転させ、回転開始から4分後のトルク値をムーニー単位で記録した。比較例1のムーニー粘度を100とした指数で、各例のムーニー粘度を表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
引裂強さ
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムから試験片を作製した。試験片を引き裂くのに要する力を、JIS K6252に準じて測定した。比較例1の引裂強さを100とした指数で、各例の引裂強さを表示した。指数が大きいほど引裂強さに優れる。
耐摩耗性
未加硫ゴムを150℃で30分間加硫し、加硫ゴムから試験片を作製した。試験片の摩耗量を、岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%、温度23℃、落砂量20g/分でJIS K6264に準じて測定した。比較例1の摩耗量を100とした指数で、各例の摩耗量を表示した。指数が小さいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れる。
Figure 0007022579000002

実施例1・4における加硫ゴムの引裂強さと耐摩耗性とが、比較例4における加硫ゴムのそれらにくらべて優れていた。
いっぽう、実施例1のムーニー粘度および引裂強さ・耐摩耗性は、実施例4のそれらより優れていた。
実施例1~4における未加硫ゴムのムーニー粘度は、比較例1における未加硫ゴムのそれにくらべて低かった。すなわち、実施例1~4における未加硫ゴムの加工性は、比較例1における未加硫ゴムのそれにくらべて優れていた。
なお、比較例5では、液状イソプレンゴムラテックスにおける分散媒の影響で、うまく混練りできなかった。
実施例5~7におけるマスターバッチの作製
天然ゴムラテックスに、液状イソプレンゴムラテックスを表3にしたがって添加し、撹拌し、スラリー添加前ゴムラテックスを得た。いっぽう、カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、スラリー添加前ゴムラテックスに表3にしたがって加え、撹拌し、凝固剤としてギ酸をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機で200℃で脱水し、マスターバッチを得た。
比較例7におけるマスターバッチの作製
カーボンブラックを水に添加し、撹拌し、カーボンブラックスラリーを得た。カーボンブラックスラリーを、天然ゴムラテックスに表3にしたがって加え、撹拌し、凝固剤としてギ酸をpH4になるまで添加し、凝固物を得た。凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機で200℃で脱水し、マスターバッチを得た。
Figure 0007022579000003
未加硫ゴムの作製
マスターバッチまたは天然ゴムに、硫黄と加硫促進剤とを除く配合剤を表4にしたがって添加し、神戸製鋼社製のB型バンバリーミキサーで混練りし、ゴム混合物を排出した。ゴム混合物と硫黄と加硫促進剤とをB型バンバリーミキサーで混練りし、未加硫ゴムを得た。
未加硫ゴムおよび加硫ゴムの評価
ムーニー粘度、引裂強さおよび耐摩耗性を、すでに述べた方法で評価した。各例のムーニー粘度は、比較例6のムーニー粘度を100とした指数で表示した。指数が小さいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。各例の引裂強さは、比較例6の引裂強さを100とした指数で表示した。指数が大きいほど引裂強さに優れる。各例の摩耗量は、比較例6の摩耗量を100とした指数で表示した。指数が小さいほど摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れる。
Figure 0007022579000004
実施例5~7のムーニー粘度および引裂強さ・耐摩耗性は、比較例6のそれらより優れていた。

Claims (4)

  1. 少なくとも天然ゴムラテックス、液状ゴムラテックスおよび充てん剤スラリーで凝固処理前混合液を作製する工程と、
    前記凝固処理前混合液を凝固する工程とを含
    前記液状ゴムラテックスが、液状ゴムを含むゴム粒子を含有する、
    マスターバッチの製造方法。
  2. 前記凝固処理前混合液を作製する前記工程は、前記天然ゴムラテックスに前記液状ゴムラテックスを添加し、添加後天然ゴムラテックスを得ることと、前記添加後天然ゴムラテックスおよび前記充てん剤スラリーを混合することとを含む、または
    前記凝固処理前混合液を作製する前記工程は、前記天然ゴムラテックスおよび前記充てん剤スラリーを混合し、前記液状ゴムラテックスを添加することを含む、
    請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法で得られたマスターバッチと配合剤とを混練りする工程を含む、ゴム組成物の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法を含む、タイヤの製造方法。
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