JP7022406B2 - 舌苔除去材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、舌苔除去材及びその製造方法に関する。
舌苔(ぜったい)は、食物残渣、剥離した口内粘膜細胞、唾液成分(タンパク質等)、細菌、細菌の代謝物などが舌表面に付着することにより形成されるものであり、口臭発生の原因とされている。
舌表面には舌乳頭と呼ばれる小さな突起(襞)が存在しており、舌苔は舌乳頭の隙間などに付着・堆積することにより形成されるため、歯磨きやうがいなどの日常の口腔ケアでは、舌苔を十分に除去することが困難である。そのため、舌苔の除去方法としては、例えば、舌ブラシなどの専用の除去具を用いて舌表面をブラッシングして舌苔を物理的に除去する方法や、舌苔を酵素により化学的に分解する方法などが知られている。
舌苔の分解能を有する酵素としてはプロテアーゼが知られている。プロテアーゼを利用した舌苔除去材の具体的な形態としては、システインプロテアーゼなどの酵素を含むキャンディーやタブレットなどの食品が報告されている(特許文献1~3参照)。
国際公開第03/090704号 国際公開第2007/026755号 国際公開第2007/105661号
しかしながら、プロテアーゼなどの舌苔の分解能を有する酵素は、一般に保存安定性が悪く、例えば室温環境で放置されると、酵素活性が著しく低下するという問題がある。
このような状況下、本発明は、プロテアーゼを含み、保存安定性に優れており、さらに、舌苔除去材が舌の表面に適用すると、舌苔除去材の凍結乾燥体が瞬時に舌表面の水分や唾液を吸水して舌の表面に密着し、舌の表面に貼付後は、水分や唾液を含んで良好な弾性のゲル状物を形成して存在し、プロテアーゼを舌苔に長時間作用させる特性を備えた舌苔除去材を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくともプロテアーゼ及びヒアルロン酸を含む組成物の凍結乾燥体を備える舌苔除去材は、室温環境で放置された場合の酵素活性の低下が抑制されており、保存安定性に優れることを見出した。さらに、舌苔除去材を舌の表面に適用すると、舌苔除去材の凍結乾燥体が瞬時に舌表面の水分や唾液を吸水して舌の表面に密着し、舌の表面に貼付後は、水分や唾液を含んで良好な弾性のゲル状物を形成して存在し、プロテアーゼを舌苔に長時間作用させることが見いだされた。本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくともプロテアーゼ及びヒアルロン酸を含む組成物の凍結乾燥体を備える、舌苔除去材。
項2. 前記プロテアーゼが、システインプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の舌苔除去材。
項3. 前記凍結乾燥体中の前記ヒアルロン酸の割合が、20質量%以上である、項1または2に記載の舌苔除去材。
項4. 前記ヒアルロン酸の分子量が、1×105ダルトン以上である、項1~3のいずれかに記載の舌苔除去材。
項5. 下記の測定方法によって測定される前記ヒアルロン酸の極限粘度が、3dL/g以上である、項1~4のいずれかに記載の舌苔除去材。
(極限粘度の測定法)
ヒアルロン酸50mgを量り、0.2mol/L塩化ナトリウム溶液に溶かして100mLとした液、並びに、この液10mL、15mL、及び20mLを量り、それぞれに0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を加えて25mLとした液を、それぞれ試料溶液とする。各試料溶液と0.2mol/L塩化ナトリウム溶液について、日本薬局方 第17局の「一般試験法の2.53 粘度測定法の1. 第1法 毛細管粘度計法」の規定に準じた粘度測定法により30.0±0.1℃の環境で比粘度を測定し、還元粘度を算出する。還元粘度を縦軸に、ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。
ただし、比粘度及び還元粘度は次式から求める。
比粘度=(試料溶液の流下秒数÷0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の流下秒速)-1
還元粘度=比粘度÷ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)
項6. 前記凍結乾燥体に含まれる前記ヒアルロン酸の含有量が、0.1mg/cm2以上である、項1~5のいずれかに記載の舌苔除去材。
項7. 基材と、前記基材の上に積層された前記凍結乾燥体とを備える、項1~6のいずれかに記載の舌苔除去材。
項8. 前記凍結乾燥体が、ヒアルロン酸とは異なるポリマーを含む、項1~7のいずれかに記載の舌苔除去材。
項9. 前記凍結乾燥体が、糖及び多価アルコールの少なくとも一方をさらに含んでいる、項1~8のいずれかに記載の舌苔除去材。
項10. 舌表面に貼付して用いられる、項1~9のいずれかに記載の舌苔除去材。
項11. 項1~10のいずれかに記載の舌苔除去材の製造方法であって、
少なくともプロテアーゼ、ヒアルロン酸、及び水を含む組成物を用意する工程と、
前記組成物を凍結乾燥する工程と、
を備える、舌苔除去材の製造方法。
本発明によれば、プロテアーゼを含み、保存安定性に優れており、さらに、良好な貼付性を備えた舌苔除去材を提供することができる。すなわち、本発明の舌苔除去材は、舌の表面に適用されると、舌苔除去材の凍結乾燥体が瞬時に舌表面の水分や唾液を吸水して舌の表面に密着し、舌の表面に貼付後は、水分や唾液を含んで良好な弾性のゲル状物を形成して存在し、プロテアーゼを舌苔に長時間作用させる特性を備える。さらに、本発明によれば、当該舌苔除去材の好適な製造方法を提供することができる。
本発明の舌苔除去材の模式図の一例である。 本発明の舌苔除去材の模式図の一例である。
本発明の舌苔除去材は、少なくともプロテアーゼ及びヒアルロン酸を含む組成物の凍結乾燥体を備えることを特徴とする。本発明の舌苔除去材は、このような構成を備えていることにより、プロテアーゼを含んでいるにも拘わらず、優れた保存安定性と良好な貼付性を発揮することができる。すなわち、例えば室温環境で保管された本発明の舌苔除去材を表面に適用すると、舌苔除去材の凍結乾燥体が瞬時に舌表面の水分や唾液を吸水して舌の表面に密着し、舌の表面に貼付後は、水分や唾液を含んで良好な弾性のゲル状物を形成して存在し、プロテアーゼを舌苔に長時間作用させることにより、効果的に舌苔を除去することが可能となる。以下、本発明の舌苔除去材及びその製造方法について詳述する。
本発明の舌苔除去材は、少なくともプロテアーゼ及びヒアルロン酸を含む組成物の凍結乾燥体を備えている。本発明の舌苔除去材は、当該凍結乾燥体を舌苔との接着面とし、舌表面に貼付して用いられる。
凍結乾燥体は、例えば、少なくともプロテアーゼ、ヒアルロン酸、及び水を含む組成物を凍結乾燥させることにより得られる。凍結乾燥体は、綿状、スポンジ状等の形態を有しており、水分含有量は、通常、5質量%以下である。
本発明において、「ヒアルロン酸」は、ヒアルロン酸及びその塩を含む概念で使用される。従って、「ヒアルロン酸及びその塩」を、単に「ヒアルロン酸」と表記することがある。ヒアルロン酸の塩としては、特に制限されないが、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸カルシウムなどが挙げられる。本発明において、ヒアルロン酸及びその塩は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ヒアルロン酸の平均分子量としては、特に制限されないが、舌苔除去材の取扱性を向上しつつ、舌苔を除去する間、貼付部位に好適に残存させる観点からは、好ましくは1×105ダルトン以上が挙げられる。さらに好ましくは3.5×105~5×106ダルトン程度、より好ましくは3.5×105~3×106ダルトン程度、さらに好ましくは6×105~2.3×106ダルトン程度、特に好ましくは6×106~1.6×106ダルトン程度が挙げられる。ヒアルロン酸としては、単一分子量のものを用いてもよいし、複数種類の分子量のものを混合して用いてもよい。
同様の観点から、下記の測定方法によって測定されるヒアルロン酸の極限粘度としては、特に制限されないが、好ましくは3(dL/g)以上が挙げられる。さらに好ましくは8~55(dL/g)程度、より好ましくは8~40(dL/、g)程度、さらに好ましくは10~40(dL/g)程度、特に好ましくは14~32(dL/g)程度が挙げられる。ヒアルロン酸としては、単一分子量のものを用いてもよいし、複数種類の分子量のものを混合して用いてもよい。
(極限粘度の測定法)
ヒアルロン酸50mgを量り、0.2mol/L塩化ナトリウム溶液に溶かして100mLとした液、並びに、この液10mL、15mL、及び20mLを量り、それぞれに0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を加えて25mLとした液を、それぞれ試料溶液とする。各試料溶液と0.2mol/L塩化ナトリウム溶液について、日本薬局方 第17局の「一般試験法の2.53 粘度測定法の1. 第1法 毛細管粘度計法」の規定に準じた粘度測定法により30.0±0.1℃の環境で比粘度を測定し、還元粘度を算出する。還元粘度を縦軸に、ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。なお、原料として使用されるヒアルロン酸には、通常、水分が数%程度含まれているが、上記式での「ヒアルロン酸の濃度」とは、乾燥ヒアルロン酸に換算した濃度を意味している。ただし、比粘度及び還元粘度は次式から求める。
比粘度=(試料溶液の流下秒数÷0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の流下秒速)-1
還元粘度=比粘度÷ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)
ヒアルロン酸の由来は特に制限されず、例えば、鶏の鶏冠、臍帯等から単離抽出されたものや、ストレプトコッカス属等の微生物を用いた発酵法などにより調製されたものなどが好適に使用できる。本発明において、ヒアルロン酸としては、市販品を使用することができる。ヒアルロン酸としては、実質的に化学修飾されていないヒアルロン酸を用いてもよいし、化学修飾されたヒアルロン酸を用いてもよい。
化学修飾されたヒアルロン酸の具体例としては、カルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、加水分解ヒアルロン酸アルキル(C12-13)グリセリル、ヒアルロン酸プロピレングリコール、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムなどが挙げられる。化学修飾されたヒアルロン酸は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体中のヒアルロン酸の割合としては、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、上限については、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下が挙げられ、下限については、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上が挙げられる。
凍結乾燥体中のヒアルロン酸の割合が、例えば20質量%以上であると、本発明の舌苔除去材の取扱性が良好で、舌の表面に貼り付く優れた貼付性を発揮することができる。さらに、貼付後に水分や唾液を含んで弾性を示すことで、舌苔を除去する間、貼付部位に好適に残存させることが可能となる。すなわち、舌苔除去材が舌の表面に適用される際には、舌苔除去材は十分な保形性を有しており、取扱性に優れている。さらに、舌苔除去材が舌の表面に適用すると、舌苔除去材の凍結乾燥体が瞬時に舌表面の水分や唾液を吸水し、舌の表面に密着する。また、舌の表面に貼付後は、水分や唾液を含んで良好な弾性のゲル状物を形成して舌の表面を覆い、プロテアーゼを舌苔に作用させる。更に、このゲル状物はチクソトロピー性を有しないことから、舌などの口腔内の物理的な動きによる損傷、崩壊が生じにくく、また、水分や唾液に対する溶解速度も遅いことから舌の上に好適に残存させることができ、舌の上でプロテアーゼを舌苔に長時間にわたり作用させることができる
本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体に含まれるヒアルロン酸の単位面積当たりの含有量としては、特に制限されないが、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、例えば0.1mg/cm2以上、好ましくは0.5~100mg/cm2程度、より好ましくは1~50mg/cm2程度、さらに好ましくは1~25mg/cm2程度、さらにより好ましくは2~20mg/cm2程度、特に好ましくは2~10mg/cm2程度が挙げられる。
本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体は、ヒアルロン酸以外の他のポリマー(ヒアルロン酸とは異なるポリマー)を含んでいてもよい。凍結乾燥体が、他のポリマーを含む場合、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、その含有量としては、ヒアルロン酸100質量部に対して、上限については、好ましくは、300質量部以下、200質量部以下、100質量部以下が挙げられ、下限については、好ましくは、0質量部以上、20質量部以上、40質量部以上が挙げられる。
本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体中の全ポリマーの割合(ヒアルロン酸と、必要に応じて配合される他のポリマーの合計割合)としては、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、上限については、好ましくは99.1質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下が挙げられ、下限については、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上が挙げられる。
他のポリマーとしては、特に制限されないが、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、好ましくはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、結晶セルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カラギーナン、プルラン、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、アルギン酸、カルシウムなどの2価のアルギン酸塩、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、キトサン、キチン誘導体、キトサン誘導体、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカンなどが挙げられる。これらの中でも、他のポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、ポリアクリル酸、がさらに好ましい。他のポリマーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
凍結乾燥体に含まれるプロテアーゼとしては、舌苔の分解作用を発揮できる酵素であれば、特に制限されず、公知のものを使用できる。プロテアーゼは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。プロテアーゼとしては、例えば、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼなどが挙げられ、これらの中でも、特に、システインプロテアーゼが好ましい。
システインプロテアーゼとしては、特に制限されず、例えば、パパインファミリーのシステインプロテアーゼ、ショウガプロテアーゼ、オリザイン、カテプシン類などが挙げられる。これらの中でもパパインファミリーに属するシステインプロテアーゼが好ましい。パパインファミリーに属するシステインプロテアーゼとしては、パパイン、キモパパイン、ブロメライン、フィシン及びアクチニジンなどが挙げられ、これらの中でもパパイン、ブロメライン及びアクチニジンが好ましく、パパインが特に好ましい。システインプロテアーゼとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、パパインについてはパパインW-40(天野エンザイム社製)や精製パパイン(三菱化学フーズ社製)などを、ブロメラインについてはブロメラインF(天野エンザイム社製)などを、アクチニジンについてはザクティナーゼ(登録商標)(ビーエイチエヌ社製)などを例示することができる。
本発明の舌苔除去材は、舌苔構造の全体又は一部構造を分解する作用を有するプロテアーゼを、舌苔に作用させ生体組織との結合を切断したり弱めたりすることにより、舌組織に負担を与えることなく舌苔除去を可能とするものである。従って、凍結乾燥体に含まれるシステインプロテアーゼとしては、上記したシステインプロテアーゼを1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、2種以上組み合わせて用いる場合、基質特異性や至適pH、至適温度など酵素活性に関する性質が異なる種類を組み合わせることが好ましく、また、その配合比率や合計の配合量は、舌苔を分解する作用が損なわれない範囲において適宜設定することができる。
システインプロテアーゼは、果物の果実や果皮等の植物体、樹液等の植物体の分泌物などに含まれることが知られている。例えば、パパインはパパイアの果実に、ブロメラインはパイナップルの果実に、フィシンはイチジクの樹液に、アクチニジンはキウイフルーツの果実に、ショウガプロテアーゼはショウガに、オリザインは米糠にそれぞれ含まれることが知られている。従って、凍結乾燥体に含まれるシステインプロテアーゼとしては、システインプロテアーゼを含む植物体の抽出物であってもよい。なお、後述するように、システインプロテアーゼは、自由水の存在下においては自己分解性を有するものがあり酵素活性の経時安定性が極めて悪くなる恐れが高いことから、システインプロテアーゼ原料として植物体抽出物を用いる場合には、当該抽出物は自由水が実質的に除去された乾燥抽出物であることが好ましい。また、植物体抽出物にはシステインプロテアーゼの酵素活性の失活を引き起こす成分が含まれている場合があるため、このような成分が除去された抽出物を用いることが好ましい。システインプロテアーゼの酵素活性の失活を引き起こす成分としては、例えば、果物の果実や果皮などに含まれる果糖や乳糖などが挙げられる。植物体抽出物は市販品を使用してもよいし、植物体から常法に従って抽出・濃縮等を行ってもよい。また、植物体抽出物の乾燥、及び植物体抽出物からのシステインプロテアーゼの酵素活性の失活を引き起こす成分の除去は、常法に従って行うことができる。
本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体中のプロテアーゼの割合としては、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させる観点から、上限については、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下が挙げられ、下限については、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上が挙げられる。
また、本発明の舌苔除去材において、凍結乾燥体に含まれるプロテアーゼの単位面積当たりの含有量としては、特に制限されないが、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させる観点から、例えば0.005mg/cm2以上、好ましくは0.01~20mg/cm2程度、より好ましくは0.05~10mg/cm2程度、さらに好ましくは0.05~5mg/cm2程度、さらにより好ましくは0.1~2.5mg/cm2程度、特に好ましくは0.1~1mg/cm2程度が挙げられる。
凍結乾燥体には、ヒアルロン酸、プロテアーゼ、及び必要に応じて配合されるヒアルロン酸とは異なるポリマーに加えて、さらに他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、本発明の効果を阻害しない限り、特に制限されないが、例えば、糖、多価アルコール、pH調整剤などが挙げられる。
凍結乾燥体に糖及び多価アルコールの少なくとも一方が含まれることにより、凍結乾燥体のコシが強くなり、舌苔除去材の取扱性をより一層向上する。また、貼付後に水分や唾液を含んで形成したゲル状物はより良好な弾性を示し、プロテアーゼを舌苔に作用させる間、舌苔除去材を舌の上に好適に残存させることができる。
糖としては、例えば、単糖、二糖、三~六糖及びそれらの糖アルコールが挙げられる。単糖類としては、例えば、エリスロース、スレオース等のアルドテトロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース等のアルドペントース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース等のアルドヘキソース、エリスルロース等のケトテトロース、キシルロース、リブロース等のケトペントース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のケトヘキソース等が挙げられる。二糖類としては、例えば、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース等のα-ジグルコシド、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース等のβ-ジグルコシド、ネオトレハロース等のα,β-ジグルコシドの他、ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース)、スクラロース等が挙げられる。三糖類としては、例えば、ラフィノース等が挙げられる。三糖~六糖のオリゴ糖としては、例えば、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキスロリン、シクロデキストリン等の環状オリゴ糖等が挙げられる。また、単糖のアルコールとしては、例えば、エリスリトール、D-スレイトール、L-スレイトール等のテトリトール、D-アラビニトール、キシリトール等のペンチトール、D-イジノール、ガラクチトール(ダルシトール)、D-グルシトール(ソルビトール)、マンニトール等のヘキシトール、イノシトール等のシクリトール等が挙げられる。また、二糖のアルコールとしては、例えば、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(イソマルト)等が挙げられ、オリゴ糖としては、ペンタエリスリトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられる。これらの中でも、マルトース,ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、キシリトール、エリストール、イソマルトースが特に好ましい。糖は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明において、「糖」という場合、25℃において液性の多価アルコールについては含まれず、当該液性多価アルコールは、後述の「多価アルコール」に含まれるものとする。
また、多価アルコールとしては、特に制限されないが、好ましくはグリセリン、ジグリセリン等のグリセリン類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;1,3-プロパンジオール、ブタンジオール(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオールなど)、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類などが挙げられ、より好ましくはグリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、グリセリン、ジグリセリン、分子量1000未満のポリエチレングリコールなどが特に好ましい。多価アルコールは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
凍結乾燥体中における糖または多価アルコールの含有量(両者が含まれる場合には、合計含有量)としては、優れた保存安定性を発揮しつつ、舌苔除去作用を効果的に発揮させ、さらに、舌苔除去材の取扱性、舌表面への貼り付き性などを向上させる観点から、上限については、好ましくは、90質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、0質量%が挙げられ、下限については、好ましくは、0質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上が挙げられる。
pH調節剤としては特に限定されないが、アジピン酸、アンモニア水、塩酸、炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸水和物、グリシン、グルコノ-δ-ラクトン、グルコン酸、結晶リン酸二水素ナトリウム、コハク酸、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム水和物、ジイソプロパノールアミン、酒石酸、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム液、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂、マレイン酸、無水クエン酸、無水リン酸一水素ナトリウム、無水リン酸二水素ナトリウム、メグルミン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、硫酸、硫酸アルミニウムカリウム水和物、DL-リンゴ酸、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。これらのpH調節剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記pH調節剤は、例えば、有機酸と、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等との組み合わせのように、後述する有機酸塩と同等の有機酸塩となる組み合わせが用いられてもよい。また、製造上の観点から、上記pH調節剤は、少量でpHの調節が可能なものが好ましい。このようなpH調節剤としては、例えば、塩酸及び水酸化ナトリウム等が挙げられる。また、上記pH調節剤としては、酵素の変性を抑制する効果のある有機酸及び有機酸塩も好適に用いられる。このような有機酸としては、例えば、クエン酸水和物、グリシン、グルコノ-δ-ラクトン、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、乳酸、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、マレイン酸、無水クエン酸、リンゴ酸等が挙げられる。また、有機酸塩は、例えば、アミノ酸塩類、アジピン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、 酢酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、マロン酸塩、グルタル酸塩、マレイン酸 塩、グリコール酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、グリチルリチン酸塩、ピメリン酸塩、アスパラギン酸塩等が挙げられる。これらの有機酸塩は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の舌苔除去材は、保存安定性に優れており、かつ、舌の表面に貼り付く優れた貼付性を発揮させることができるため、本発明の舌苔除去材がプロテアーゼ以外の有効成分などを含んでいる場合には、口腔内において、当該有効成分を長期間にわたり放出させることができる。
本発明において、凍結乾燥体の厚みとしては、特に制限されないが、舌苔除去材が凍結乾燥体の単層により構成されている場合、好ましくは0.05~10mm程度が挙げられる。また、舌苔除去材が、凍結乾燥体と後述の基材との積層体である場合、凍結乾燥体の厚みとしては、好ましくは0.02~10mm程度が挙げられる。また、凍結乾燥によって調製した凍結乾燥体を、圧縮することで薄くして舌苔除去材とすることもできる。
本発明において、舌への接着面の面積についても、舌の大きさなどに応じて適宜設定することができ、例えば、1~40cm2程度が挙げられる。さらに、舌への接着面の形状についても、特に制限されず、例えば、舌の形状や、円形、楕円形、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)、星型、不定形などが挙げられる。
本発明の舌苔除去材10は、例えば図1に示されるように、凍結乾燥体1の単層により構成されていてもよいし、例えば図2に示されるように、基材2と、当該基材2の上に積層された凍結乾燥体1とを備える複層により構成されていてもよい。図1及び図2において、凍結乾燥体1の表面が、舌との接着面10aを構成している。
本発明の舌苔除去材が、基材を備えることにより、舌苔除去材の取扱性をより一層向上させる効果が期待できる。例えば、基材を構成する素材として、機械的強度と耐水性が高く、ヒアルロン酸を含む凍結乾燥体よりも湿った手などへの貼付性に劣る基材を用いることにより、このような効果を好適に発揮することが可能となる。
基材を構成する素材としては、特に制限されないが、このような効果を発揮させる観点からは、好ましくは前述の他のポリマーや、他のポリマーに多価アルコールなどを添加したものが挙げられる。例えば、前述の他のポリマーの凍結乾燥体を基材とすることにより、このような効果を好適に発揮させることが可能となる。基材を構成する素材として、特に好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースナノファイバー、アガロース、カルシウムなどの2価のアルギン酸塩などの他のポリマーを含む水溶液の凍結乾燥体やこれらのポリマーと分子量が1000以上のポリエチレングリコールを含む水溶液の凍結乾燥体が挙げられる。他のポリマーは1種類単独で使用してもよいし、ヒアルロン酸も含めて2種類以上を組み合わせてもよい。
また、ヒアルロン酸、及び、前述の他のポリマーからなる薄いフィルムを基材とすることにより、このような効果を好適に発揮させることが可能となる。基材を構成する素材としては、ヒアルロン酸、前述の他のポリマー、及び、ポリ乳酸などの生分解性ポリマーや他のポリマーに多価アルコールなどの可塑剤を添加したものが挙げられる。ヒアルロン酸、及び、他のポリマーと添加する可塑剤はそれぞれ1種類単独で使用してもよいし、それぞれ2種類以上を組み合わせてもよい。
本発明の舌苔除去材が、基材を備える場合、基材の厚みとしては特に制限されないが、好ましくは0.0001~10mm、より好ましくは0.0002~5mm、または0.01~10mmが挙げられる。
本発明の舌苔除去材の適用部位は、舌の表面であれば、特に制限されない。また、本発明の舌苔除去材が舌の表面に貼り付けられた状態で、飲食を行ってもよい。
本発明の舌苔除去材の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、少なくともプロテアーゼ、ヒアルロン酸、及び水を含む組成物を用意する工程と、当該組成物を凍結乾燥する工程とを備える方法が挙げられる。
本発明の舌苔除去材の製造方法において、ヒアルロン酸、プロテアーゼ、必要に応じて配合される他のポリマーの詳細、各成分の含有量等については、前述の通りである。また、ヒアルロン酸、プロテアーゼ、必要に応じて配合される他のポリマーの含有量についても、前述の舌苔除去材中のこれらの含有量となるように調整すればよい。
本発明の舌苔除去材が、基材と、当該基材の上に積層された凍結乾燥体とを備える複層により構成されている場合であって、例えば、基材が前述のような他のポリマーの凍結乾燥体により構成されている場合には、他のポリマーと水を含む組成物と、ヒアルロン酸、プロテアーゼ及び水を含む組成物の何れか一方を凍結させ、容器内に配置した当該凍結体の上にもう一方の組成物を注いて凍結させた後、両者を凍結乾燥させる方法により、複層構成の舌苔除去材を製造することができる。また、例えば基材が前述のような他のポリマーのフィルムにより構成されている場合には、ヒアルロン酸、プロテアーゼ、及び水を含む組成物を容器に注いだ上にフィルムを乗せて凍結させた後、凍結乾燥させる方法が挙げられる。
また、例えば、容器内に配置した基材の上に、ヒアルロン酸、プロテアーゼ及び水を含む組成物を積層し、その状態で組成物を凍結乾燥することにより、複層構成の舌苔除去材を製造することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた試薬は、以下の通りである。
<試薬>・ヒアルロン酸(80万;ヒアベスト(J));ヒアルロン酸ナトリウム、キューピー株式会社製の商品名「ヒアベスト(J)」(製品表示:分子量60万~120万、平均分子量80万)(実施例に使用した試薬の極限粘度14.1dL/g)
・カルボキシメチルセルロース;カルボキシセルロースナトリウム、第一工業製薬株式会社製の商品名「セロゲンF-BSH-12」
・ヒドロキシプロピルセルロース;日本曹達株式会社製の商品名「ヒドロキシプロピルセルロースH」
・ポリビニルピロリドン;和光純薬工業株式会社製の商品名「ポリビニルピロリドンK90(分子生物学用)」
・プルラン;和光純薬工業株式会社製のプルラン(生化学用)
・キシリトール;和光純薬工業株式会社製のキシリトール(特級)
・ソルビトール;和光純薬工業株式会社製のD(+)-ソルビトール(一級)
・トレハロース;和光純薬工業株式会社製のトレハロース二水和物(特級)
・マンニトール;和光純薬工業株式会社製のD(-)-マンニトール(特級)
・スクロース;和光純薬工業株式会社製のスクロース(特級)
・精製パパイン;三菱ケミカルフーズ株式会社製の「精製パパイン」
・L-システイン塩酸塩;和光純薬工業株式会社製のL-システイン塩酸塩(特級)
・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム;ナカライテスク株式会社製のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(特級)
・1mol/l水酸化ナトリウム溶液;ナカライテスク株式会社製の1mol/l水酸化ナトリウム
・1mol/l塩酸溶液;和光純薬株式会社製の1mol/l塩酸
・リン酸水素二ナトリウム・十二水和物;和光純薬株式会社製のリン酸水素二ナトリウム・十二水和物(特級)
・酢酸ナトリウム(無水);和光純薬株式会社製の酢酸ナトリウム(無水)(特級)
・酢酸;ナカライテスク株式会社製の酢酸(特級)
・トリクロロ酢酸;和光純薬工業株式会社製のトリクロロ酢酸(特級)
・カゼイン試液(pH8.0);乳製カゼイン CALBIOCHEM 製,Casein,Biovine Milk,Carbohydrate and Fatty acid Free,No.218682を用いる。乳製カゼインをあらかじめ105℃2時間乾燥し、乾燥減量を求めておき、乾燥物0.600gに対応する量を正確に量り、0.05mol/lリン酸二ナトリウム試液80mlに懸濁し、水浴中で加温して溶かす。流水で冷却した後、希水酸化ナトリウム試液を加えてpH8.0に調製し、水を加えて正確に100mlとする。
・トリクロロ酢酸試液;酢酸ナトリウム(無水)1.8g,1mol/l トリクロロ酢酸溶液11ml及び酢酸1.9mlを約60mlの水に溶かし、1mol/l 水酸化ナトリウム溶液でpH4.0に調製した後,100mlとする。
・チロシン標準液;チロシン標準品(日本薬局方標準品,日本公定書協会から入手できる)を精密に量り,0.1mol/l 塩酸試液に溶かし、その1ml中にチロシン50.0μgを含む液を調製する。
(舌苔除去材の製造)
それぞれ、表1~3に記載の組成となるようにして、舌苔除去材用水溶液(少なくともヒアルロン酸、プロテアーゼ、及び水を含む組成物)を調製した。具体的には、まず、ヒアルロン酸を、水中に均一に溶解して、ヒアルロン酸水溶液を調製した。次に、それぞれ、表1~3に記載の他の成分(精製パパイン、糖、その他のポリマー)を添加して均一に溶解し、舌苔除去材用水溶液を調製した。得られた舌苔除去材用水溶液を底面積が9.1cm2のプラスチックシャーレに入れ、-82℃の冷凍庫で凍結させた。次に、圧力10Pa以下において凍結体をシャーレ内で凍結乾燥(24時間)させることにより、凍結乾燥体を得た。得られた凍結乾燥体を、それぞれ、舌苔除去材とした。舌苔除去材の厚みは、それぞれ約0.3cmであった。
Figure 0007022406000001
Figure 0007022406000002
Figure 0007022406000003
*HPC;ヒドロキシプロピルセルロース
*CMC;カルボキシメチルセルロース
*PVP;ポリビニルピロリドン
<舌苔除去材の性状評価>
実施例1~14で調製した舌苔除去材の性状を以下の基準により評価した。結果を表5に示す。
(舌苔除去材の性状)
A:綿状の乾燥体で、ふんわりとしているが腰がある。
B:綿状の乾燥体で、柔軟性はあまりなく腰がある。
C:高密度のスポンジ状乾燥体で、柔軟性はあまりない。
<酵素活性の安定性評価>
実施例1~14で調製した舌苔除去材が入ったシャーレをパラフィルムで密閉状態し、室温で10日間保管した。その後、食品添加物公定書第8版「成分規格・保存規格」の「パパイン」の項(523~524頁)に記載の「酵素活性測定法」に準じてシステインプロテアーゼの酵素活性を測定した。具体的には以下のようにしてシステインプロテアーゼの酵素活性を測定した。
L-システイン塩酸塩8.75gを水約800mlに加えて溶かし、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム2.23gを加えて溶解した後、1mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH4.5に調整し、水を加えて1000mlとし、希釈液を調製した。次いで、10日間保管後の実施例1~14の舌苔除去材全量に、上記で調製した希釈液を加えて溶解し、試料溶液100mlをそれぞれ調製した。
カゼイン試液(pH8.0)5mlを正確に量り、試験管に入れ、約37℃で5分間加温した後、上記で調製した試料溶液1mlを加え、直ちに振り混ぜ、混合溶液とした。次いで、当該混合溶液を約37℃で10分間反応させた後、トリクロロ酢酸試液5mlを加えて振り混ぜ、約37℃で30分間放置し、定量分析用ろ紙(5種C)を用いてろ過した。最初の3mlを除いたろ液につき、水を対照とし、波長275nmにおける吸光度(At)を測定した。また、別途、試料溶液1mlにトリクロロ酢酸試液5mlを加えてよく振り混ぜた後、さらにカゼイン試液(pH8.0)5mlを加えてよく振り混ぜ、約37℃で30分間放置し、上記と同様にしてろ過及び吸光度(Ab)の測定を行った。また、0.1mol/L塩酸を用いて、その1ml中にチロシン50.0μgを含むチロシン標準液を作製し、水を対照として、波長275nmの吸光度(As)を測定した。さらに、0.1mol/L塩酸について、水を対照とし、波長275nmにおける吸光度(As0)を測定した。
上記で測定した各吸光度から、下記式(1)により、酵素活性(unit/g)を測定した。
酵素活性(unit/g)=(At-Ab)×50/(As-As0)×11/10×1000/0.05
サンプルの調製に用いた精製パパイン5mgの酵素活性値(845263(unit/g))を基準(100%)として、上記で算出した各サンプルの酵素活性値から酵素活性の残存率を算出し、残存酵素活性を下記のとおりスコア化することにより評価を行った。その結果を表4に示す。
(残存酵素活性のスコア)
5:80%超え、105%以下
4:70%超え、80%以下
3:60%超え、70%以下
2:50%超え、60%以下
1:50%以下
<舌上への貼付性評価>
実施例1~14で調製した舌苔除去材を、100mlの蒸留水で口腔内をすすいで清潔にした舌上にそれぞれ貼り付けた。そのまま5分放置後、100mlの蒸留水で口腔内をかるくすすぎ、25分後に貼り付き状況(貼り付き性)を以下の基準により評価した。結果を表4に示す。
(貼付性評価基準)
A:舌上に舌苔除去材がしっかりと貼り付いており、舌苔除去材が水和して舌を好適に覆っている。さらに、舌苔除去材の溶け出しは、ほとんどない。
B:舌上に舌苔除去材が良好に貼り付いており、舌苔除去材が水和して舌を好適に覆っているが、半分ほどの舌苔除去材が溶け出していた。
C:貼り付け時には、舌上に舌苔除去材がしっかりと貼り付いていたが、舌苔除去材が水和してほとんど溶けだしていた。
Figure 0007022406000004
1 凍結乾燥体
2 基材
10 舌苔除去材
10a 舌との接着面

Claims (10)

  1. 少なくともプロテアーゼ及びヒアルロン酸を含む組成物の凍結乾燥体を備え、前記凍結乾燥体を舌表面に貼付して用いられる、舌苔除去材。
  2. 前記プロテアーゼが、システインプロテアーゼ及びセリンプロテアーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の舌苔除去材。
  3. 前記凍結乾燥体中の前記ヒアルロン酸の割合が、20質量%以上である、請求項1または2に記載の舌苔除去材。
  4. 前記ヒアルロン酸の分子量が、1×105ダルトン以上である、請求項1~3のいずれかに記載の舌苔除去材。
  5. 下記の測定方法によって測定される前記ヒアルロン酸の極限粘度が、3dL/g以上である、請求項1~4のいずれかに記載の舌苔除去材。
    (極限粘度の測定法)
    ヒアルロン酸50mgを量り、0.2mol/L塩化ナトリウム溶液に溶かして100mLとした液、並びに、この液10mL、15mL、及び20mLを量り、それぞれに0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を加えて25mLとした液を、それぞれ試料溶液とする。各試料溶液と0.2mol/L塩化ナトリウム溶液について、日本薬局方 第17局の「一般試験法の2.53 粘度測定法の1. 第1法 毛細管粘度計法」の規定に準じた粘度測定法により30.0±0.1℃の環境で比粘度を測定し、還元粘度を算出する。還元粘度を縦軸に、ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。
    ただし、比粘度及び還元粘度は次式から求める。
    比粘度=(試料溶液の流下秒数÷0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の流下秒速)-1
    還元粘度=比粘度÷ヒアルロン酸の濃度(g/100mL)
  6. 前記凍結乾燥体に含まれる前記ヒアルロン酸の含有量が、0.1mg/cm2以上である、請求項1~5のいずれかに記載の舌苔除去材。
  7. 基材と、前記基材の上に積層された前記凍結乾燥体とを備える、請求項1~6のいずれかに記載の舌苔除去材。
  8. 前記凍結乾燥体が、ヒアルロン酸とは異なるポリマーを含む、請求項1~7のいずれかに記載の舌苔除去材。
  9. 前記凍結乾燥体が、糖及び多価アルコールの少なくとも一方をさらに含んでいる、請求項1~8のいずれかに記載の舌苔除去材。
  10. 請求項1~のいずれかに記載の舌苔除去材の製造方法であって、
    少なくともプロテアーゼ、ヒアルロン酸、及び水を含む組成物を用意する工程と、
    前記組成物を凍結乾燥する工程と、
    を備える、舌苔除去材の製造方法。

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