(第1実施形態)
以下、第1実施形態の添加制御装置に係るポンプ制御部70が適用される排気浄化システム10について、図面を参照しつつ説明する。排気浄化システム10は、選択還元型触媒(以下、SCR触媒という)を用いて排気ガス中のNOxを浄化するものであり、尿素SCRシステムとして構築されている。排気浄化システム10は、内燃機関であるディーゼルエンジン(以下、エンジンという)30が搭載された各種車両に適用できる。排気浄化システム10は、またクレーン車等の建設機械、トラクター等の農業機械等にも適用可能である。
図1に示すように、排気浄化システム10では、エンジン排気系において、エンジン30には排気通路31aを形成する排気管31が接続されており、その排気管31に、排気上流側から順にDPF(Diesel Particulate Filter)32、SCR触媒33が配設されている。また、排気管31においてDPF32とSCR触媒33との間には、液状の還元剤としての尿素水(尿素水溶液)を排気通路31aに噴射供給する尿素水噴射弁(以下、噴射弁という)50が設けられている。噴射弁50は、高温の排気ガス(例えば600℃)から加えられる熱の影響をできるだけ避けるために、先端側のみが排気管31内に位置されるように取り付けられている。なお、本実施形態において、SCR触媒33が「NOx浄化触媒」に相当し、噴射弁50が「添加弁」に相当する。
DPF32は、排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕集するPM除去用フィルタである。DPF32は白金系の酸化触媒を担持しており、PM成分の1つである可溶性有機成分(SOF)とともにHCやCOを除去する。このDPF32に捕集されたPMは、エンジン30におけるメイン燃料噴射後のポスト噴射等により燃焼除去でき、これによりDPF32の継続使用が可能となっている。
SCR触媒33は、NOxの還元反応(排気浄化反応)を促進するものであり、例えば、
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O …(式1)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O …(式2)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O …(式3)
といった反応を促進して排気ガス中のNOxを浄化する。そして、これらの反応において、NOxの還元剤となるアンモニア(NH3)を生成するための尿素水を噴射供給するものが、同SCR触媒33の上流側に設けられた噴射弁50である。
なお排気管31においてSCR触媒33の下流側には、アンモニア除去装置としての酸化触媒が設けられていてもよい。この酸化触媒により、SCR触媒33から排出されるアンモニア(NH3)、すなわち余剰のアンモニアが除去される。
次に、排気浄化システム10のうち、噴射弁50の噴射により尿素水を噴射する還元剤噴射システム20の各構成についてそれぞれ説明する。なお、以下の説明では便宜上、尿素水タンク(以下、タンクという)40から噴射弁50に対して尿素水が供給される場合を基準にして、タンク40側を上流側、噴射弁50側を下流側として記載する。
図1において、タンク40は、給液キャップ付きの密閉容器にて構成されており、その内部に所定の規定濃度の尿素水が貯蔵されている。本実施形態では、尿素濃度が、凍結温度(凝固点)が最も低い濃度である32.5%になっている。なお、尿素濃度が32.5%の場合、マイナス11℃以下で凍結する。
タンク40と噴射弁50とは、供給配管42により接続されている。供給配管42の上流側端部は、タンク40の底面の略中央に接続されており、タンク40内に貯留された尿素水が供給配管42に流れ込む状態になっている。なお、本実施形態において、供給配管42が「還元剤通路」に相当する。
供給配管42の途中には、尿素水ポンプ(以下、ポンプという)44が設けられている。ポンプ44は、ポンプ制御部70から供給される電流により回転駆動される電動ポンプであり、供給配管42を介してタンク40から噴射弁50に対して尿素水を加圧供給する。
ポンプ44は歯車45を有し、その歯車45の回転数に応じて尿素水を供給する。また、ポンプ44は、歯車45が正逆いずれの方向にも回転可能となっている。ポンプ44の正回転によりタンク40内の尿素水の吸い出しが行われ、ポンプ44の逆回転によりタンク40への尿素水の吸い戻しが行われる。
ポンプ44には、回転検出部46が設けられている。回転検出部46は、ポンプ44の単位時間当たりの回転数である回転速度Nを検出し、例えば、ポンプ44による尿素水の吐出(圧送)速度を検出する。
供給配管42には、ポンプ44の下流側に圧力検出部48が設けられている。圧力検出部48は、供給配管42内の圧力(以下、配管圧力という)Pを検出し、例えば、ポンプ44による尿素水の吐出圧力を検出する。
噴射弁50は、供給配管42の下流側端部に接続されている。噴射弁50は、既存の燃料噴射弁(インジェクタ)とほぼ同様の構成を有するものであり、公知の構成が採用できるため、ここでは構成を簡単に説明する。噴射弁50は、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、先端噴射口を開閉するためのニードル52を有する弁体部とを備えた電磁式開閉弁として構成されており、ポンプ制御部70からの駆動信号に基づき開放又は閉鎖する。すなわち、駆動信号に基づき電磁ソレノイドが通電されると、該通電に伴いニードル52が開放方向に移動し、そのニードル52の移動によって先端噴射口が開放されて尿素水が噴射される。
供給配管42には分岐配管54が接続されている。分岐配管54は、供給配管42におけるポンプ44よりも下流側の分岐部Bと、タンク40と、を接続する。なお、圧力検出部48は、供給配管42のうちのポンプ44と分岐部Bとの間の部分に設けられている。
分岐配管54の一端は、タンク40の底面に接続されており、この分岐配管54の一端に、逆止弁60が設けられている。逆止弁60は、分岐配管54内の圧力が基準圧力よりも低い場合に閉鎖し、タンク40内に貯留された尿素水が分岐配管54に流れ込むことを防止する。また、逆止弁60は、分岐配管54内の圧力が基準圧力よりも高い場合に開放し、供給配管42から分岐配管54に流れ込んだ尿素水がタンク40に戻ることを許可する。
タンク40内には、2つの発熱体62、63が設けられている。例えば発熱体62、63は電気式のヒータであり、ポンプ制御部70からの通電によって、タンク内で凍結した尿素水を解凍する。なお、本実施形態において、発熱体62、63が「複数の電気ヒータ」に相当する。
発熱体62、63は、タンク40内の複数箇所に設けられている。具体的には、発熱体62、63は、ポンプ44が設けられた供給配管42の上流側端部近傍に配置されており、詳細には、供給配管42の上流側端部が接続されるタンク40の底面の略中央部において、供給配管42の上流側端部を挟んだ両側に配置されている。
供給配管42の外周には、発熱体65が設けられている。例えば発熱体65は電気式のヒータであり、ポンプ制御部70からの通電によって供給配管42内で凍結した尿素水を解凍する。
タンク40内には、温度センサ66が設けられている。例えば温度センサ66は感温ダイオードやサーミスタであり、タンク40内の尿素水の温度を測定する。また、タンク40外には、外気温センサ68が設けられている。例えば外気温センサ68は感温ダイオードやサーミスタであり、タンク40から離間して配置され、エンジン30が搭載された車両の周囲の外気の温度を測定する。
ポンプ制御部70は、排気浄化に係る制御を行うECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイコンにより構成されている。ポンプ制御部70は、回転検出部46から回転速度Nを取得し、圧力検出部48から配管圧力Pを取得し、温度センサ66からタンク40内の尿素水の温度を取得し、外気温センサ68から外気温を取得する。ポンプ制御部70は、取得したこれらの値により還元剤噴射システム20の各部を制御する。
具体的には、噴射弁50側への尿素水圧送時には、ポンプ44に通電されることでポンプ44が正回転方向に回転駆動される。これにより、タンク40内の尿素水が吸い出されて下流側に流れる。そして、ポンプ44から尿素水が圧送され、その尿素水は噴射弁50に供給される。また、余剰となった尿素水は逆止弁60を通じてタンク40に戻される。
また、タンク40への尿素水の吸い戻し時には、ポンプ44が逆回転方向に回転駆動される。これにより、供給配管42内の尿素水がタンク40内に吸引される。これによりエンジン30停止後の車両放置中に尿素水が供給配管42内に残存したままになるのを回避し、尿素水の凍結・膨張による供給配管42の破損を抑制する。
噴射弁50側への尿素水圧送時には、噴射弁50により排気管31内に尿素水が噴射供給される。すると、排気管31内において排気ガスと共に尿素水がSCR触媒33に供給され、SCR触媒33においてNOxの還元反応によりその排気ガスが浄化される。NOxの還元に際しては、例えば、
(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2 …(式4)
といった反応により、排気熱による高温下で尿素水が加水分解される。これにより、アンモニア(NH3)が生成され、そのアンモニアがSCR触媒33に吸着するとともに、そのSCR触媒33において排気ガス中のNOxがアンモニアにより選択的に還元除去される。すなわち、同SCR触媒33上でアンモニアに基づく還元反応(上記の反応式(式1)~(式3))が行われることにより、NOxが還元、浄化されることとなる。
ところで、本実施形態にかかる排気浄化システム10が搭載された車両が寒冷地で使用される場合、エンジン始動時に尿素水が凍結していることがある。この場合、温度センサ66や外気温センサ68から取得される温度が尿素水の凝固点Tc以下であり、尿素水の圧送が不可であると判定された場合には、ポンプ44の回転駆動は停止され、発熱体62~65により尿素水が解凍される。尿素水の解凍により、尿素水の圧送が可能であると判定されると、ポンプ44の回転駆動が再開される。
2つの発熱体62、63に通電を行って凍結状態の尿素水を解凍する場合に、タンク40内において尿素水の解凍速度にムラが生じることがある。解凍速度のムラの原因には、例えば各発熱体62、63の特性や設置場所の違い等の他、様々な原因が考えられる。その結果、発熱体62、63の一方の付近には、解凍状態の尿素水が存在し、他方の発熱体の付近には、凍結状態の尿素水が存在する事態が生じる。
この場合に、2つの発熱体62、63の通電量を等しくすると、解凍効率が低下する問題が生じる。すなわち、固体の尿素水の比熱は、液体の尿素水の比熱よりも小さいため、凍結状態の尿素水は、解凍状態の尿素水に比べて、温度が上昇しやすく、熱が拡散しやすい。そのため、2つの発熱体62、63の通電量を等しくすると、他方の発熱体の通電により固体の尿素水に供給された熱量の一部が拡散されてしまい、尿素水の解凍に利用されないことから、解凍効率が低下してしまう。
本実施形態のポンプ制御部70は、上記問題を解決するために制御処理を実施する。制御処理は、発熱体62、63ごとに発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2を算出し、その抵抗値Re1、Re2に基づいて、発熱体62、63ごとの通電量を決定する。これにより、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。
図2に本実施形態の制御処理のフローチャートを示す。ポンプ制御部70は、尿素水の凍結によるポンプ44の回転駆動の停止中に、制御処理を実施する。
制御処理を開始すると、まずステップS10において、均等加熱処理を実施する。均等加熱処理では、2つの発熱体62、63の通電量W1、W2を、一定の基準通電量Wkに設定する。一定の基準通電量Wkは、所定期間内でタンク40内の尿素水を解凍することを可能にする通電量に設定されている。
ステップS12において、発熱体62、63ごとに、発熱体62、63の抵抗値Reを算出する。ポンプ制御部70は、発熱体62、63それぞれに通電を行っており、発熱体62、63それぞれに流れる電流と、発熱体62、63それぞれに印加される電圧とを検出することができる。ポンプ制御部70は、発熱体62の電流と電圧とを同時に検出し、検出された電流と電圧との組を用いて、発熱体62の抵抗値Re1を算出する。発熱体63の抵抗値Re2についても同様である。なお、発熱体62に対する検出と、発熱体63に対する検出は、同時に実施されることが好ましいが、必ずしも同時に実施される必要はない。
ステップS14において、発熱体62の付近の尿素水の温度Tn1と、発熱体63の付近の尿素水の温度Tn2とを推定する。図3に示すように、ポンプ制御部70には、発熱体の抵抗値Reと温度Trとの関係を示す換算テーブルが記憶されている。換算テーブルは、発熱体の温度Trが大きくなると、発熱体の抵抗値Reが大きくなる関係を有する。ポンプ制御部70は、この換算テーブルを用いて、発熱体62の抵抗値Re1から発熱体62の温度Tr1を取得し、発熱体63の抵抗値Re2から発熱体63の温度Tr2を取得する。
ポンプ制御部70は、発熱体62の通電時間に基づいて、発熱体62の温度Tr1と、尿素水の温度Tn1と、の温度差ΔTを推定し、尿素水の温度Tn1を推定する。尿素水の温度Tn2についても同様である。なお、温度差ΔTは、発熱体の通電時間が長くなるほど、大きくなる。
つまり、ステップS12で算出された発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2は、発熱体62、63の付近の尿素水の温度Tn1、Tn2に相関する。尿素水の温度Tn1、Tn2は、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを示すものであるため、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2は、発熱体62、63の付近の尿素水が凍結状態であるか又は凍結状態であるかを示す、ということができる。
なお、本実施形態では、尿素水の温度Tn1、Tn2が凝固点Tc以下であることを、凍結状態とよび、尿素水の温度Tn1、Tn2が凝固点Tcよりも高いことを、解凍状態とよぶ。そのため、凍結状態には、尿素水が完全に凍結している状態とともに、一部解凍している状態が含まれ、解凍状態には、尿素水が完全に解凍している状態のみが含まれる。
ステップS16において、尿素水の温度Tn1が凝固点Tc以下であるかを判定する。発熱体62の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS16で肯定判定し、ステップS18で、尿素水の温度Tn2が凝固点Tc以下であるかを判定する。
発熱体63の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS18で肯定判定する。この場合、2つの発熱体62、63の付近の尿素水が、ともに凍結状態である。そのため、ステップS20において、均等加熱処理を継続し、2つの発熱体62、63の通電量W1、W2を基準通電量Wkに維持し、続くステップS22において、所定の解凍加熱時間Thをゼロとする。所定の解凍加熱時間Thは、2つの発熱体62、63の付近の尿素水が、ともに解凍状態となってからの発熱体62、63の通電時間である。そのため、このステップS22では、解凍加熱時間Thがゼロとされる。
一方、発熱体63の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS18で否定判定する。この場合、2つの発熱体62、63の一方の発熱体63付近の尿素水が、解凍状態であり、他方の発熱体62付近の尿素水が、凍結状態である。そのため、ステップS24において、優先加熱処理を実施し、続くステップS26において、解凍加熱時間Thをゼロとする。
ステップS24の優先加熱処理では、付近の尿素水が解凍状態である発熱体63の通電量W1である解凍通電量Wlが、付近の尿素水が凍結状態である発熱体62の通電量W2である凍結通電量Wsよりも大きくなるように、2つの発熱体62、63の通電量W1、W2を設定する。具体的には、解凍通電量Wlを基準通電量Wkよりも大きく設定し、凍結通電量Wsを基準通電量Wkよりも小さく設定する。
本実施形態では、基準通電量Wkに対する解凍通電量Wlの増加量ΔWuが、基準通電量Wkに対する凍結通電量Wsの減少量ΔWdと等しくなるように、解凍通電量Wl及び凍結通電量Wsを設定する。そのため、均等加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量は、優先加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量に等しくなる。
一方、発熱体62の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS16で否定判定し、ステップS28で、尿素水の温度Tn2が凝固点Tc以下であるかを判定する。本実施形態において、ステップS16、S18、S28の処理が「判定部」に相当する。
発熱体63の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS28で肯定判定する。この場合、2つの発熱体62、63の一方の発熱体62付近の尿素水が、解凍状態であり、他方の発熱体63付近の尿素水が、凍結状態である。そのため、ステップS30において、優先加熱処理を実施し、続くステップS32において、解凍加熱時間Thをゼロとする。
ステップS30の優先加熱処理では、付近の尿素水が解凍状態である発熱体62の通電量W1を解凍通電量Wlに設定し、付近の尿素水が凍結状態である発熱体63の通電量W2を凍結通電量Wsに設定する。
一方、発熱体63の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS28で否定判定する。この場合、2つの発熱体62、63の付近の尿素水が、ともに解凍状態である。そのため、ステップS34において、再び均等加熱処理を実施し、続くステップS36において、解凍加熱時間Thに「1」を加算する。そのため、解凍加熱時間Thが長くなるほど、解凍状態の尿素水の温度が上昇する。本実施形態において、ステップS20、S24、S30、S34の処理が「決定部」に相当する。
ステップS38において、解凍加熱時間Thが所定の目標時間Tgよりも大きいかを判定する。所定の目標時間Tgは、一定の基準通電量Wkは、均等加熱処理により、タンク40内の尿素水の温度が、噴射弁50の噴射に必要な温度まで上昇する通電時間に設定されている。
ステップS38で否定判定すると、ステップS12に戻る。一方、ステップS38で肯定判定すると、タンク40内の尿素水に対する加熱を停止し、制御処理を終了する。これにより、尿素水の圧送が可能となる。
続いて、図4に、制御処理の一例を示す。ここで、図4(a)は、発熱体62、63の通電量W1、W2の推移を示し、図4(b)は、尿素水の温度Tn1、Tn2の推移を示し、図4(c)は、タンク40内で解凍した尿素水の割合である解凍率Ptの推移を示す。なお、図4(a)、(b)において、グラフF1(実線)は、本実施形態の発熱体62における各種値の推移を示し、グラフF2(実線)は、本実施形態の発熱体63における各種値の推移を示す。また、グラフF3(破線)は、比較例の発熱体62における各種値の推移を示し、グラフF4(破線)は、比較例の発熱体63における各種値の推移を示す。また、図4(c)において、グラフF1(実線)は、本実施形態の解凍率Ptの推移を示し、グラフF2(破線)は、比較例の解凍率Ptの推移を示す。
図4(a)に示すように、時刻t1に制御処理が開始されると、均等加熱処理が実施され、尿素水の温度Tn1、Tn2が、凝固点Tcよりも低い温度Tsから上昇を開始する。本実施形態では、図5(a)に示すように、制御処理の開始時において、タンク40内の尿素水は全て凍結している。
図4(b)に示すように、タンク40内において尿素水の解凍速度にムラがあり、本実施形態では、発熱体62の付近の尿素水の温度Tn1が、発熱体63の付近の尿素水の温度Tn2よりも上昇しやすい。そのため、発熱体62の付近の尿素水は、時刻t2において凝固点Tcに到達すると、解凍を開始し、時刻t3において、解凍を終了する。一方、発熱体63の付近の尿素水は、時刻t3においても凝固点Tcに到達していない。
そのため、時刻t3では、図5(b)に示すように、一方の発熱体62の付近には、解凍状態の尿素水が存在し、他方の発熱体63の付近には、凍結状態の尿素水が存在する状態となる。これにより、尿素水の加熱処理が、均等加熱処理から優先加熱処理に切り替えられると、発熱体62の付近の解凍状態の尿素水の温度上昇が促され、その解凍状態の尿素水周辺に存在する凍結状態の尿素水の解凍が促進される。この結果、図4(c)に実線で示すように、解凍率Ptが傾きθ1で上昇する。一方、発熱体63の付近の凍結状態の尿素水の温度上昇が抑制される。
その後時刻t5において、発熱体63の付近の尿素水が凝固点Tcに到達すると、解凍を開始し、時刻t7において、解凍を終了する。
そのため、時刻t7では、図5(c)に示すように、両方の発熱体62、63の付近に、解凍状態の尿素水が存在する状態となる。本実施形態では、優先加熱処理により、発熱体62の付近の尿素水の解凍が促進された結果、時刻t7において、発熱体62の付近に、大量の解凍状態の尿素水が存在している。これにより、図4(c)に実線で示すように、時刻t7において、解凍率Ptは第1解凍率Pt1に到達している。
また、時刻t7に、尿素水への加熱処理が、優先加熱処理から均等加熱処理に再び切り替えられる。そのため、発熱体62の付近の解凍状態の尿素水の温度上昇が抑制され、発熱体62の付近の尿素水の温度上昇速度と、発熱体63の付近の尿素水の温度上昇速度とが等しくなる。この結果、解凍率Ptが傾きθ1よりも大きい傾きθ2で上昇する。
その後時刻t8に、解凍加熱時間Thが所定の目標時間Tgよりも大きくなり、解凍率Ptが100%に到達すると、制御処理を終了する。
一方、比較例では、図4(a)に破線で示すように、時刻t3において、尿素水への加熱処理が、均等加熱処理に維持されるため、図4(b)に破線で示すように、発熱体62の付近の解凍状態の尿素水の温度上昇が抑制される。この結果、解凍率Ptが傾きθ1よりも小さい傾きθ3で上昇する。
一方、発熱体63の付近の凍結状態の尿素水の温度上昇は維持される。そのため、時刻t5よりも早い時刻t4において、発熱体63の付近の尿素水が凝固点Tcに到達し、時刻t7よりも早い時刻t6において、解凍を終了する。
そのため、時刻t6では、図5(d)に示すように、両方の発熱体62、63の付近に、解凍状態の尿素水が存在する状態となる。比較例では、均等加熱処理が維持されたことにより、発熱体62の付近の尿素水の解凍が促進されず、本実施形態の時刻t7に比べて、発熱体62の付近の解凍状態の尿素水が減少している。したがって、図4(c)に破線で示すように、時刻t6において、解凍率Ptは第1解凍率Pt1よりも小さい第2解凍率Pt2に抑制されている。
そして、第1解凍率Pt1と第2解凍率Pt2との間の解凍率差を、時刻t6と時刻t7との間の時間差で除したときの傾きθ4は、傾きθ2よりも大きい。そのため、比較例では、本実施形態よりも先に、両方の発熱体62、63の付近に、解凍状態の尿素水が存在する状態となるが、解凍率Ptが100%に到達する時刻t9は、時刻t8よりも遅れる。
その結果、本実施形態では、比較例に比べて、発熱体62、63の通電時間が短くなる。つまり、発熱体62、63の通電量の合計量を抑制することができ、これにより、解凍効率を向上させることができる。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
尿素水では、凍結状態の比熱が解凍状態の比熱がよりも小さいため、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを示す発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2と、尿素水の解凍効率とには相関がある。そのため、本実施形態では、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2に基づいて、発熱体62、63ごとの通電量を決定することで、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。
本実施形態では、2つの発熱体62、63の一方の発熱体の付近の尿素水が解凍状態であり、他方の発熱体の付近の尿素水が凍結状態である場合には、一方の発熱体の通電量を解凍通電量Wlに設定し、他方の発熱体の通電量を凍結通電量Wsに設定する。そして、解凍通電量Wlを凍結通電量Wsよりも大きくすることで、解凍状態の尿素水に供給される熱量を、凍結状態の尿素水に供給される熱量よりも大きくし、解凍状態の尿素水に優先的に熱量を供給する。これにより、解凍状態の尿素水周辺に存在する凍結状態の尿素水の解凍が促進され、尿素水の解凍速度を好適に向上させることができる。
具体的には、解凍通電量Wlを基準通電量Wkよりも大きくする。これにより、解凍状態の尿素水周辺に存在する凍結状態の還元剤の解凍が促進される。また、凍結通電量Wsを基準通電量Wkよりも小さくよりする。これによって、尿素水の解凍以外に用いられる熱量が減少する。これにより、尿素水の解凍速度を好適に向上させつつ、還元剤の解凍効率を好適に向上させることができる。
特に本実施形態では、基準通電量Wkに対する解凍通電量Wlの増加量ΔWuを、基準通電量Wkに対する凍結通電量Wsの減少量ΔWdと等しくする。そのため、解凍通電量Wlを基準通電量Wkよりも大きくすることにより、排気浄化システム10の電力消費量が増大することを抑制することができる。
本実施形態では、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2を用いて特定する。そのため、例えば温度センサなど、発熱体62、63以外に尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを特定する構成を必要とせず、排気浄化システム10の構成を簡略化することができる。
(第2実施形態)
次に第2実施形態に係るポンプ制御部70について図6、7を用いて説明する。第2実施形態に係るポンプ制御部70は、第1実施形態に係るポンプ制御部70と比べて、制御処理が異なる。なお、図6、7において、先の図2、4で説明した内容と同一の内容については、説明を省略する。
図6に示すように、第2実施形態の制御処理が、第1実施形態の制御処理と異なる点は、発熱体62の付近の尿素水の温度勾配Gr1を用いて、発熱体62の付近の尿素水が解凍状態であるか又は凍結状態であるかを判定し、発熱体63の付近の尿素水の温度勾配Gr2とを用いて、発熱体63の付近の尿素水が解凍状態であるか又は凍結状態であるかを判定する点である。
制御処理を開始すると、ステップS14において、尿素水の温度Tn1、Tn2を推定する。ポンプ制御部70は、推定された尿素水の温度Tn1、Tn2を内部の記憶部に記憶する。
続くステップS50において、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2を算出する。ここで、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2は、単位時間当たりの尿素水の温度Tn1、Tn2の変化量である。本実施形態では、尿素水の温度Tn1、Tn2が所定の基準周期ごとに推定されている。そのため、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2として、前回推定した尿素水の温度Pn1、Pn2から、今回推定した尿素水の温度Tn1、Tn2を差し引いた差分値を用いることができる。
Gr1=Pn1-Tn1 …(式5)
Gr2=Pn2-Tn2 …(式6)。
図7(b)に示すように、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2は、発熱体62、63の付近の尿素水が、完全に凍結している状態である場合に、第1閾値Gk1よりも大きくなる。また、発熱体62、63の付近の尿素水が、完全に解凍している状態である場合に、第1閾値Gk1よりも小さく、かつ、第1閾値Gk1よりも小さい第2閾値Gk2よりも大きくなる。また、発熱体62、63の付近の尿素水が一部解凍している状態である場合に、ゼロとなり、第2閾値Gk2よりも小さくなる。そのため、例えば尿素水の温度勾配Gr1が第1閾値Gk1よりも大きい、又は、第2閾値Gk2よりも小さい場合には、発熱体62の付近の尿素水が凍結状態であると判定することができる。また、例えば尿素水の温度勾配Gr1が第1閾値Gk1よりも小さく、かつ、第2閾値Gk2よりも大きい場合には、発熱体62の付近の尿素水が解凍状態であると判定することができる。
つまり、ステップS12で算出された発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2は、尿素水の温度Tn1、Tn2を介して尿素水の温度勾配Gr1、Gr2に相関する。尿素水の温度勾配Gr1、Gr2は、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを示すものであるため、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2は、発熱体62、63の付近の尿素水が凍結状態であるか又は凍結状態であるかを示す、ということができる。
続くステップS52において、尿素水の温度勾配Gr1が第1閾値Gk1よりも大きいか、又は、第2閾値Gk2よりも小さいかを判定する。発熱体62の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS52で肯定判定し、ステップS54で、尿素水の温度勾配Gr2が第1閾値Gk1よりも大きいか、又は、第2閾値Gk2よりも小さいかを判定する。
発熱体63の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS54で肯定判定し、ステップS20に進む。一方、発熱体63の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS54で否定判定し、ステップS24に進む。
一方、発熱体62の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS56で肯定判定し、ステップS54で、尿素水の温度勾配Gr2が第1閾値Gk1よりも大きいか、又は、第2閾値Gk2よりも小さいかを判定する。本実施形態において、ステップS52、S54、S56の処理が「判定部」に相当する。
発熱体63の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS56で肯定判定し、ステップS30に進む。一方、発熱体63の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS56で否定判定し、ステップS34に進む。
続いて、図7に、制御処理の一例を示す。ここで、図7(a)は、発熱体62、63の通電量W1、W2の推移を示し、図7(b)は、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2の推移を示し、図7(c)は、タンク40内で解凍した尿素水の割合である解凍率Ptの推移を示す。なお、図7(a)、(b)において、グラフF1(実線)は、発熱体62における各種値の推移を示し、グラフF2(破線)は、発熱体63における各種値の推移を示す。
図7(a)に示すように、時刻t1に制御処理が開始されると、均等加熱処理が実施される。本実施形態では、制御処理の開始時において、タンク40内の尿素水は全て凍結している。したがって、図7(b)に示すように、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2それぞれは、第1閾値Gk1よりも大きくなっている。
タンク40内において尿素水の解凍速度にムラがあり、本実施形態では、発熱体62の付近の尿素水の温度勾配Gr1が、発熱体63の付近の尿素水の温度勾配Gr2よりも大きい。そのため、発熱体62の付近の尿素水は、時刻t2において凝固点Tcに到達すると、解凍を開始し、時刻t3において、解凍を終了する。したがって、時刻t2から時刻t3までの期間において、尿素水の温度勾配Gr1がゼロとなる。
時刻t3において、尿素水の加熱処理が、均等加熱処理から優先加熱処理に切り替えられると、尿素水の温度勾配Gr2が、温度勾配Gr2aに減少する。また、尿素水の温度勾配Gr1が、第1閾値Gk1よりも小さく、かつ、第2閾値Gk2よりも大きい温度勾配Gr1aとなる。これにより、図7(c)に示すように、解凍率Ptが傾きθ1で上昇する。
その後時刻t5において、発熱体63の付近の尿素水が凝固点Tcに到達すると、解凍を開始し、時刻t7において、解凍を終了する。したがって、時刻t5から時刻t7までの期間において、尿素水の温度勾配Gr2がゼロとなる。
時刻t7において、尿素水への加熱処理が、優先加熱処理から均等加熱処理に再び切り替えられると、また、発熱体62の付近の解凍状態の尿素水の温度上昇が抑制され、尿素水の温度勾配Gr1が、温度勾配Gr1aよりも小さい温度勾配Gr1bに減少する。また、尿素水の温度勾配Gr2が、温度勾配Gr2bとなる。これにより、解凍率Ptが傾きθ2で上昇する。なお、温度勾配Gr1b及び温度勾配Gr2bは、第1閾値Gk1よりも小さく、かつ、第2閾値Gk2よりも大きい。
以上説明したように、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2は、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを示すものであり、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2と相関する。本実施形態では、発熱体62、63の抵抗値Re1、Re2に基づいて、発熱体62、63ごとの通電量を決定することで、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。
特に尿素水の温度勾配Gr1、Gr2は、発熱体62、63の付近の尿素水が、完全に凍結している状態と、一部解凍している状態とで異なる。本実施形態では、尿素水の温度勾配Gr1、Gr2の上記特性を利用して、凍結状態の尿素水が、尿素水が完全に凍結している状態か、一部解凍している状態かを判定することができる。
(第3実施形態)
次に第3実施形態に係るポンプ制御部70について図8~10を用いて説明する。第2実施形態に係るポンプ制御部70は、第1実施形態に係るポンプ制御部70と比べて、タンク40内に設けられた発熱体の数が異なる。なお、図8~10において、先の図1、2、4で説明した内容と同一の内容については、説明を省略する。
図8に示すように、タンク40内には、3つの発熱体62~64が設けられている。例えば発熱体62~64は電気式のヒータであり、ポンプ制御部70からの通電によって、タンク内で凍結した尿素水を解凍する。なお、本実施形態において、発熱体62~64が「複数の電気ヒータ」に相当する。
発熱体62~64は、タンク40内の複数箇所に設けられている。具体的には、発熱体62~64は、ポンプ44が設けられた供給配管42の上流側端部近傍に配置されており、詳細には、供給配管42の上流側端部が接続されるタンク40の底面の略中央部において、供給配管42の上流側端部を三方向から囲む位置に配置されている。第3実施形態の制御処理では、発熱体62の抵抗値Re1、発熱体63の抵抗値Re2、及び発熱体64の抵抗値Re3に基づいて、発熱体62~64ごとの通電量を決定する。
制御処理を開始すると、ステップS60において、発熱体62~64の抵抗値Re1~Re3を算出する。続くステップS62において、発熱体62の付近の尿素水の温度Tn1と、発熱体63の付近の尿素水の温度Tn2と、発熱体64の付近の尿素水の温度Tn3と、を推定する。
そして、ステップS18で肯定判定すると、ステップS64で、尿素水の温度Tn3が凝固点Tc以下であるかを判定する。発熱体64の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS64で肯定判定し、ステップS20に進む。一方、発熱体64の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS64で否定判定し、ステップS68において、優先加熱処理を実施する。その後、ステップS26に進む。
ステップS68の優先加熱処理では、付近の尿素水が解凍状態である1つの発熱体の通電量を解凍通電量Wlとし、付近の尿素水が凍結状態である2つの発熱体の通電量を凍結通電量Wsとする。そして、図10に示すように、基準通電量Wkに対する凍結通電量Wsの減少量ΔWdが、基準通電量Wkに対する解凍通電量Wlの増加量ΔWuの半分となるように、解凍通電量Wl及び凍結通電量Wsを設定する。そのため、均等加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量は、優先加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量に等しくなる。
一方、ステップS18で否定判定すると、ステップS66で、尿素水の温度Tn3が凝固点Tc以下であるかを判定する。発熱体64の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS66で肯定判定し、ステップS68に進む。一方、発熱体64の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS66で否定判定し、ステップS70において、優先加熱処理を実施する。その後、ステップS72において、解凍加熱時間Thをゼロとする。
ステップS70の優先加熱処理では、付近の尿素水が解凍状態である2つの発熱体の通電量を解凍通電量Wlとし、付近の尿素水が凍結状態である1つの発熱体の通電量を凍結通電量Wsとする。そして、図10に示すように、減少量ΔWdが増加量ΔWuの2倍となるように、解凍通電量Wl及び凍結通電量Wsを設定する。そのため、均等加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量は、優先加熱処理における発熱体62、63の通電量の合計量に等しくなる。
本実施形態では、増加量ΔWuが一定値に設定される。そのため、ステップS70の優先加熱処理において、凍結通電量Wsがマイナスの値とならないように、増加量ΔWuは、基準通電量Wkの半分よりも小さい値に設定される。
また、ステップS28で肯定判定すると、ステップS74で、尿素水の温度Tn3が凝固点Tc以下であるかを判定する。発熱体64の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS74で肯定判定し、ステップS76において、優先加熱処理を実施する。その後、ステップS26に進む。なお、ステップS76の優先加熱処理は、ステップS68の優先加熱処理と同一であり、重複した説明を省略する。
一方、発熱体64の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS74で否定判定し、ステップS80において、優先加熱処理を実施する。その後、ステップS82において、解凍加熱時間Thをゼロとする。なお、ステップS80の優先加熱処理は、ステップS70の優先加熱処理と同一であり、重複した説明を省略する。
一方、ステップS28で否定判定すると、ステップS78で、尿素水の温度Tn3が凝固点Tc以下であるかを判定する。発熱体64の付近の尿素水が凍結状態である場合、ステップS78で肯定判定し、ステップS80に進む。一方、発熱体64の付近の尿素水が解凍状態である場合、ステップS78で否定判定し、ステップS34に進む。本実施形態において、ステップS16、S18、S28、S64、S66、S74、S78の処理が「判定部」に相当し、ステップS20、S34、S68、S70、S76、S80の処理が「決定部」に相当する。
続いて、図10に、制御処理の一例を示す。ここで、図10(a)は、発熱体62の通電量W1の推移を示し、図10(b)は、発熱体63の通電量W1の推移を示し、図10(c)は、発熱体64の通電量W3の推移を示す。
図10に示すように、時刻t11に制御処理が開始されると、均等加熱処理が実施される。タンク40内において尿素水の解凍速度にムラがあり、本実施形態では、発熱体62の付近の尿素水の温度Tn1、発熱体63の付近の尿素水の温度Tn2、発熱体64の付近の尿素水の温度Tn3の順で上昇しやすい。そのため、発熱体62の付近の尿素水が、最も早く凝固点Tcに到達して解凍を開始し、時刻t12おいて、解凍状態となる。
そのため、時刻t12において、尿素水の加熱処理が、均等加熱処理から優先加熱処理に切り替えられる。この場合、1つの発熱体62の付近の尿素水が解凍状態であり、2つの発熱体63、64の付近の尿素水が解凍状態であるため、発熱体62の通電量W1が解凍通電量Wlに設定され、発熱体63、64の通電量W2、W3が凍結通電量Wsに設定される。そして、減少量ΔWdが増加量ΔWuの半分に設定される。
その後、発熱体63の付近の尿素水が凝固点Tcに到達して解凍を開始し、時刻t13において、解凍状態となる。そのため、時刻t13において、尿素水の加熱処理が、優先加熱処理に維持されたまま、発熱体63、64の通電量W2、W3が切り替えられる。
具体的には、2つの発熱体62、63の付近の尿素水が解凍状態であり、1つの発熱体64の付近の尿素水が解凍状態であるため、発熱体62、63の通電量W1、W2が解凍通電量Wlに設定され、発熱体64の通電量W3が凍結通電量Wsに設定される。そして、減少量ΔWdが増加量ΔWuの2倍に設定される。
その後、発熱体64の付近の尿素水が凝固点Tcに到達して解凍を開始し、時刻t14において、解凍状態となる。そのため、時刻t14において、尿素水の加熱処理が、優先加熱処理から均等加熱処理に切り替えられる。
以上説明したように、尿素水では、尿素水が凍結状態であるか又は解凍状態であるかを示す発熱体62~64の抵抗値Re1~Re3と、尿素水の解凍効率とには相関がある。そのため、本実施形態では、発熱体62~64の抵抗値Re1~Re3に基づいて、発熱体62~64ごとの通電量を決定することで、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。
特に本実施形態では、付近の尿素水が解凍状態となった発熱体62~64の順に、付近の尿素水が解凍状態となった発熱体の通電量を増加させ、それに対応して、優先加熱処理内において、付近の尿素水が解凍状態となった発熱体の通電量を順に減少させる。そのため、排気浄化システム10の電力消費量を維持しつつ、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
液状の還元剤は、尿素水に限定されず、例えば、尿素水以外のアンモニア由来化合物を噴射するものであってもよい。
尿素水が噴射により排気通路31aに供給される形態を例示したが、これに限定されず、例えば、水滴状の尿素水を排気通路31aに添加供給してもよい。
タンク40内に、発熱体が2つまたは3つ設けられる例を示したが、これに限定されず、4つ以上の発熱体が設けられてもよい。この場合、発熱体の数をN(N:2以上の自然数)個とすると、一定値である増加量ΔWuを下記のように設定することで、優先加熱処理において、凍結通電量Wsがマイナスの値となることを抑制することができる。
Wk/(N-1)>ΔWu …(式7)
優先加熱処理において、付近の尿素水が凍結状態である発熱体への通電を継続する例を示したが、これに限定されず、優先加熱処理において、付近の尿素水が凍結状態である発熱体への通電を停止してもよい。
上記第2実施形態では、付近の尿素水が凍結状態である発熱体の通電量を一定に設定する例を示したが、これに限定されず、例えば、尿素水の温度勾配に基づいて、付近の尿素水が一部解凍している発熱体の通電量を、完全に凍結している発熱体の通電量よりも大きく設定してもよい。一部解凍している尿素水は、解凍状態の尿素水を含むため、完全に凍結している尿素水よりも解凍効率がよく、これにより、尿素水の解凍効率を好適に向上させることができる。