以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る電子装置は、電磁波により受電デバイスに電力を伝送する(給電する)機能を有する無線給電装置である。このような無線給電装置によれば、受電デバイスは、当該無線給電装置から電磁波で伝送された電力を用いて動作することが可能となる。
ここで、上記した無線給電装置は特定の周波数帯域の電磁波により受電デバイスに電力を伝送するが、この場合、当該周波数帯域と同一または近傍の周波数帯域を用いる他の無線システムに対して干渉を与える可能性がある。このため、本実施形態に係る無線給電装置は、他の無線システムに対する干渉を抑制するための構成を有する。
以下の説明においては、本実施形態に係る無線給電装置(電子装置)をWPT(Wireless Power Transmitter)と称し、当該WPTとは異なる他の無線システムをVictimと称する。なお、Victimは、例えば無線通信を実行する基地局及び端末装置等を含む無線通信装置(以下、Victim端末と表記)から構成される。
ここで、図1を参照して、本実施形態に係るWPTとVictimとの関係性について説明する。上記したようにWPTは電磁波により受電デバイスに電力を伝送することが可能であるが、当該WPTは、例えば周波数帯域F1(第1周波数帯域)を用いて電力を伝送するものとする。一方、Victimは、例えば周波数帯域F2(第2周波数帯域)を用いて無線通信を実行するものとする。
図1において縦軸は送信電力を示しているが、電力を伝送する際にWPTから送信される電磁波の電力レベル(送信電力)は、例えばVictimにおいて送信される無線信号の電力レベル(送信電力)と比較して非常に高い。
また、図1において横軸は周波数帯域を示しているが、WPTが用いる周波数帯域F1とVictimが用いる周波数帯域F2との周波数差が小さい(つまり、WPTが用いる周波数帯域F1の近傍の周波数帯域F2をVictimが用いる)場合には、WPTによる給電(電力の伝送)が当該Victimに対して干渉を与える可能性がある。
更に、Victimを構成するVictim端末は、当該Victimが用いる周波数帯域F2に対し、より広い周波数帯域F3の無線信号を受信可能なアンテナを備えている場合が多いため、VictimはよりWPTの影響を受ける可能性がある。
よって、WPTによる給電は、当該WPTが用いる周波数帯域F1だけではなく、その近傍の周波数帯域の利用状況も考慮して実施される必要がある。
そこで、本実施形態に係るWPTは、給電を実施する前に少なくともWPTが用いる周波数帯域とは異なる周波数帯域をスキャンし、当該周波数帯域でキャリアセンスすることによって、当該周波数帯域を用いるVictimが存在するか否かを検査するものとする。以下においては、便宜的に、キャリアセンスをCCA(Clear Channel Assessment)として説明する。
次に、図2を参照して、本実施形態に係るWPTにおける動作の概要について説明する。なお、以下の説明においては、Victimにおいて送信された無線信号(Victim端末から送信された無線信号)を便宜的にVictim信号と称する。
本実施形態に係るWPTにおいては、例えば給電前のT1(第1期間)の間にCCAを実施し、当該CCAにおいてVictim信号が検出されない場合、T2(第2期間)の間に給電が実施される。なお、T2の間に給電が実施されると、再度、T1の間にCCAが実行される。
一方、T1の間に実施されたCCAにおいてVictim信号が検出された場合、T3(第3期間)の間に再度CCAが実施される。T3の間に実施されたCCAにおいてVictim信号が検出されない場合には、T2の間に給電が実施される。
なお、図2においてはT1とT3との期間が異なる例が示されているが、T1とT3との期間は同一であってもよい。
本実施形態においては、WPTが図2に示すように動作することによって、Victim信号を検出しない場合にのみ給電を実施することが可能となるため、WPTによるVictimに対する干渉を抑制する(WPTがVictimに与える影響を軽減する)ことが可能となる。
なお、WPTにおいて実施されるCCAの対象となる周波数帯域は、WPTが用いる周波数帯域の近傍のVictimが用いる周波数帯域である。なお、Victimが複数のチャネルを用いる場合には、それらのチャネルのうち、WPTが用いる周波数帯域(送電周波数)の近傍のチャネルをCCAの対象とする。また、Victimは複数種類であってもよく、当該複数種類のVictimの各々が用いるチャネルのうち、WPTが用いる周波数帯域の近傍のチャネルをCCAの対象としてもよい。
また、本実施形態において、「近傍」とは、WPTの輻射電力、設置環境または想定されるVictimの種類等によって定義(設定)されるものとする。具体的には、WPTの輻射電力及び設置環境等に基づいて当該WPTによる給電(電力の伝送)によって影響を与え得る範囲が算出可能な場合には、当該範囲に該当するチャネルを近傍のチャネルとして設定することができる。また、Victimが用いるチャネルが判明している場合には、当該チャネルを近傍のチャネルとして設定すればよい。なお、本実施形態において、輻射電力とは、例えばWPTから送信される電磁波の電力レベルにアンテナ利得を加えたものに相当する。
なお、上記した「近傍のチャネル」は、例えばVictimが用いるチャネルのうちWPTが用いる周波数帯域に最も近いチャネルであってもよいし、当該周波数帯域に近いN(Nは自然数)番目までのチャネルであってもよい。また、Victimの種類によらず、WPTが用いる周波数帯域の近傍と定義される全てのチャネルを近傍のチャネルとしてもよい。
以下、本実施形態に係るWPTについて詳細に説明する。図3は、WPTのハードウェア構成の一例を示す。図3に示すように、WPT10は、CPU11、不揮発性メモリ12、主メモリ13、アンテナ14及び通信デバイス15等を備える。
CPU11は、WPT10内の各コンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU11は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ12から主メモリ13にロードされるプログラムを実行する。
アンテナ14は、電力を伝送するための電磁波(以下、WPT10の給電信号と表記)を所定の周波数帯域を用いて送信するように構成されている。また、アンテナ14は、上記したCCAの対象となる周波数帯域に基づくVictim信号を受信するように構成されている。アンテナ14は1つ以上であってもよいし、複数のアレー素子からなるアレーアンテナであってもよい。また、Victim信号を受信するアンテナとは別に、外部装置と無線通信を実行するためのアンテナを別に具備してもよい。
通信デバイス15は、例えば外部装置と無線通信を実行するように構成されたデバイスである。
図4は、WPT10の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、WPT10は、検出部101及び電力伝送部102を含む。
本実施形態において、検出部101及び電力伝送部102の一部または全ては、上記したCPU11にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、これらの各部101及び102の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)または専用のハードウェア等によって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
検出部101は、上記したCCAを実施する(つまり、キャリアセンスする)機能部であり、所定の期間(以下、CCA期間と表記)の間に、少なくともWPT10が用いる周波数帯域とは異なる周波数帯域における無線信号(つまり、Victim信号)の有無を検出する。なお、検出部101は、CCAにおいて検出されたVictim信号の電力レベル(以下、Victim信号電力と表記)が閾値以上であるか否かを判定する。Victim信号電力が閾値以上であると判定された場合、検出部101は、再度CCAを実施する。また、検出部101は、CCAにおいて用いられる閾値を算出する処理も実行する。以下の説明においては、CCAにおいて用いられる閾値を便宜的にCCA閾値と称する。
電力伝送部102は、WPT10が用いる周波数帯域を用いてWPT10の給電信号を送信することによって、受電デバイスに電力を伝送する機能部である。なお、電力伝送部102は、上記したVictim信号電力が検出部101において検出されない、あるいは検出したVictim信号電力がCCA閾値以上でない(つまり、閾値未満である)と判定された場合、所定の期間(以下、給電期間と表記)の間に電力を伝送する。
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係るWPT10の処理手順の一例について説明する。
まず、検出部101は、WPT10の給電信号の電力レベル(以下、WPT10の送信電力と表記)を設定する(ステップS1)。ステップS1において設定されるWPT10の送信電力(値)は、例えば予め定められていてもよいし、受電デバイスの位置等に基づくものであってもよい。なお、受電デバイスの位置等の情報(受電デバイスに関する情報)は、上記した通信デバイス15を介して受電デバイスから受信されても構わない。
次に、検出部101は、ステップS1において設定されたWPT10の送信電力に基づいて、CCA閾値を算出する(ステップS2)。なお、ステップS2において算出されるCCA閾値の具体例については後述する。
ステップS2の処理が実行されると、検出部101は、CCAを実施する(ステップS3)。このCCAによれば、上記したCCA期間の間に、Victim信号の有無が検出される。
ここで、CCAが実施されることによってVictim信号が検出された場合を想定する。この場合、検出部101は、検出されたVictim信号の電力レベル(Victim信号電力)がステップS2において算出されたCCA閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。
Victim信号電力がCCA閾値以上であると判定された場合(ステップS4のYES)、ステップS3に戻って、再度、CCAが実施される。
一方、Victim信号電力が検出されない、あるいはVictim信号電力がCCA閾値以上でない(つまり、CCA閾値よりも小さい)と判定された場合(ステップS4のNO)、電力伝送部102は、給電を実施する(ステップS5)。この場合、電力伝送部102は、ステップS1において設定された送信電力に基づく電磁波(つまり、WPT10の給電信号)を送信することによって、受電デバイスに対して電力を伝送(供給)する。
次に、WPT10(電力伝送部102)による給電を終了するか否かが判定される(ステップS6)。ステップS6においては、例えば受電デバイスに対する給電を終了する時間に到達したような場合に、給電を終了すると判定される。なお、例えば電力伝送部102による電力の伝送量(つまり、給電量)が予め定められた値に達した場合に給電を終了すると判定されてもよいし、受電デバイスからの応答に基づいて給電を終了すると判定されてもよい。更に、給電の際には電力レベルの高い電磁波が送信されるため、例えばWPT10または受電デバイスの近傍に設けられた人感センサ等によって人物の存在が検知された際に給電を終了すると判定されてもよい。
給電を終了しないと判定された場合(ステップS6のNO)、ステップS3に戻って処理が繰り返される。すなわち、給電を終了しないと判定された場合には、図5に示すステップS3以降の処理に従ってCCA及び給電が繰り返し実施される。
一方、給電を終了すると判定された場合(ステップS6のYES)、図5に示す処理は終了される。
なお、図5に示す処理は、例えば定期的に実行されてもよいし、予め定められた時間に到達した場合に実行されてもよい。
上記したように本実施形態に係るWPT10はVictim信号電力がCCA閾値未満であると判定された場合に給電を実施するが、以下の説明においては、当該Victim信号電力がCCA閾値以上であると判定される(つまり、Victim信号電力がCCA閾値以上のVictim信号が検出される)ことを、単にVictim信号が検出されると称する。また、以下の説明において、「Victim信号が検出されない」とは、Victim信号自体が検出されないことに加えて、上記したVictim信号電力がCCA閾値以上でないことを含むものとする。
以下、図5に示すステップS2において算出されるCCA閾値の具体例について説明する。本実施形態におけるCCA閾値は、WPT10とVictimとの共存条件から算出されるものとする。
ここで、上記したようにWPT10においては給電前にCCAが実施されるが、Victimを構成するVictim端末側においても他の無線システム等との干渉を避けるためにCCAが実施される。
このため、本実施形態においては、WPT10とVictimとの共存条件として例えば「WPT10の給電信号がVictim(Victim端末)において実施されるCCAに影響を与えない」という条件(以下、第1共存条件と表記)に基づいてCCA閾値が算出(設定)されるものとする。以下、第1共存条件に基づいて算出されるCCA閾値を第1CCA閾値と称する。なお、第1CCA閾値は、電力伝送部102により出力される電磁波が、Victim端末のCCA(無線通信装置のキャリアセンス)に影響を与えないように設定された閾値に相当する。
図6を参照して、第1CCA閾値の概要について説明する。図6の左側は、アンテナ利得がG1であるアンテナ14を介してWPT10から送信電力P1に基づく給電信号が送信(放射)され、当該給電信号が空間伝搬損Lを経てVictimを構成するVictim端末において受信される場合を示している。
なお、Victim端末側にもアンテナが備えられているが、当該アンテナのアンテナ利得をG2とする。また、Victim端末が備えるフィルタ(Victimが用いる周波数帯域の無線信号を選択するためのフィルタ)の減衰量をL2とする。
この場合、Victim端末に到来するWPT10の信号電力(Victim端末における受信電力)Prx1は、以下の式(1)で表される。
Prx1=P1+G1-L+G2-L2 式(1)
ここで、Victim端末側で実施されるCCAにおいて用いられる閾値をTh1とすると、式(1)のPrx1がTh1よりも大きい場合には、当該CCAによりWPT10の給電信号が検出される(CCA Busyとなる)。この場合、Victimにおいては、WPT10の給電信号との干渉を避けるために無線信号の送信を控えることになり、通信が実行されなくなる可能性がある。
このため、上記した第1共存条件を満足するためには、以下の式(2)に示すように、上記した式(1)のPrx1がTh1よりも小さくなればよい。
Prx1=P1+G1-L+G2-L2<Th1 式(2)
次に、図6の右側は、WPT10で実施されるCCAにおいてVictim信号を検出する場合を示している。この場合、WPT10に到来するVictim信号の電力レベル(Victim信号電力)Prx2は、以下の式(3)で表される。
Prx2=P2+G2-L+G1 式(3)
ここで、式(3)におけるP2は、Victim端末の送信電力(Victim端末から送信される無線信号の電力レベル)である。なお、式(3)においては、WPT10及びVictim端末のいずれにおいても送受信アンテナの利得が同一であると仮定している。
この場合において、上記した式(3)に式(2)を代入すると、以下の式(4)が導出される。
Prx2<Th1+P2-P1+L2 式(4)
式(4)は、上記した第1共存条件の制約下で、WPT10(検出部101)によって検出可能なVictim信号の電力レベルの範囲を表している。換言すれば、Victim信号電力Prx2が式(4)を満たすのであれば、第1共存条件は満たされているということになる。
よって、WPT10では式(4)の右辺で定義される電力レベルを第1CCA閾値として算出し、Victim信号電力が当該第1CCA閾値以上である場合には、第1共存条件が満たされていないものとして給電が実施されないようにする。一方、Victim信号電力が第1CCA閾値以上でない場合には、第1共存条件が満たされているものとして給電が実施される。このような第1CCA閾値を用いることによって、第1共存条件に基づくWPT10とVictimとの共存が可能となる。
なお、式(4)の右辺で定義される第1CCA閾値は、4つのパラメタP1、P2、Th1及びL2によって決定される。このうちP1は、WPT10の送信電力であり、当該WPT10側で既知である。また、P2はVictim端末の送信電力であり、Th1はVictimで実施されるCCAにおいて用いられる閾値である。このP2及びTh1については、Victimで採用されている規格(無線システム規格またはテスト規格等)において規定値または標準値等として示されている場合が多い。L2は、Victim端末におけるフィルタ減衰量であり、Victim端末の実装に依存した数値となるが、一般的な無線システムのチャネル選択フィルタの減衰特性を用いる(当てはめる)ことができる。
ここで、図7は、Victim端末におけるチャネル選択フィルタの振幅特性の一例を示す。
図7においては、Victim(Victim端末)が用いる周波数帯域に基づくフィルタ特性が示されている。なお、図7において、横軸はVictimが用いる周波数帯域との周波数差を表し、縦軸の絶対値がフィルタ減衰量を表している。
上記したL2として図7に示すフィルタ減衰量が適用される場合において、例えばTh1=-62dBm、P2=10dBm、P1=40dBmとすると、第1CCA閾値のマスクパターン(WPT10が用いる周波数帯域とVictimが用いる周波数帯域との周波数差に応じた第1CCA閾値のパターン)は、図8に示すようになる。なお、図8において、横軸はWPT10が用いる周波数帯域とVictimが用いる周波数帯域との周波数差(以下、単にWPT10とVictimとの周波数差と表記)を表しており、縦軸は第1CCA閾値を表している。
ここで、上記したTh1、P2、P1及び図7に示す減衰特性に基づくL2を用いて式(4)の右辺で定義される第1CCA閾値を計算すると、図8に示す実線201に示すようなマスクパターンが得られる。なお、一般的な無線システムの周波数チャネルは離散的な配置となるため、第1CCA閾値のマスクパターンは、図8に示す破線202のような離散値としてもよい。
なお、図8に示すように、第1CCA閾値は、上記したようにWPT10とVictimとの周波数差に応じて異なる。すなわち、第1共存条件を満たす第1CCA閾値のマスクパターンによれば、WPT10とVictimとの周波数差が小さいほど、WPT10のVictimに与える影響が大きくなるため、第1CCA閾値は小さい(厳しい)値となる。一方、WPT10とVictimとの周波数差が大きいほど、WPT10のVictimに与える影響が小さくなるため、第1CCA閾値は大きい(緩い)値となる。
上記した第1CCA閾値が図5に示すステップS2において算出された場合、当該第1CCA閾値のマスクパターンに基づいてWPT10とVictimとの周波数差に対応する第1CCA閾値を特定し、当該特定された第1CCA閾値を用いてステップS4の処理が実行される。なお、WPT10とVictimとの周波数差を得るために必要なWPT10が用いる周波数帯域は、WPT10において予め設定されているものとする。また、WPT10とVictimとの周波数差を得るために必要な当該Victimが用いる周波数帯域も、WPT10において予め設定されているものとする。あるいは、予め設定されているWPT10において受信可能な無線信号の周波数帯域等に基づいて特定されてもよいし、WPT10において検出(受信)されたVictim信号を解析(周波数解析)することによって特定されてもよい。
なお、実際にWPT10を運用する際には、上記した第1CCA閾値に更にマージンを加えた値を第1CCA閾値として用いてもよい。以下に説明する第1CCA閾値以外のCCA閾値についても同様である。
ここでは、第1共存条件に基づいてCCA閾値が算出される場合について説明したが、当該CCA閾値は、他の共存条件に基づいて算出されるものであってもよい。
具体的には、WPT10とVictimとの共存条件は、例えば「WPT10の給電信号がVictimの通信特性に影響を与えない」という条件(以下、第2共存条件と表記)であってもよい。以下、第2共存条件に基づいて算出されるCCA閾値を第2CCA閾値と称する。なお、第2CCA閾値は、電力伝送部102により出力される電磁波が、Victim端末(無線通信装置)の通信特性に影響を与えないように設定された閾値に相当する。
ここで、Victim側からすると、WPT10の給電信号は干渉源となる妨害波であり、当該妨害波の影響によってVictimの通信特性(例えば、通信感度またはスループット等)が劣化する可能性がある。
なお、一般に無線システムでは、上記した妨害波による通信特性への影響を回避するために妨害波規定が仕様化されている。妨害波規定とは、Victimが通信を維持することが可能な妨害波のレベルを規定したものである。このような妨害波規定によれば、Victim端末で受信されるWPT10の給電信号の電力レベル(信号レベル)が妨害波規定における妨害波レベルの規定値よりも小さければ、Victimは通信を維持することができる。
以下、図9を参照して、第2CCA閾値の概要について説明する。図9の左側においては、アンテナ利得がG1であるアンテナ14を介してWPT10から送信電力P1に基づく給電信号が送信(放射)され、当該給電信号が空間伝搬損Lを経てVictimを構成するVictim端末において受信される場合を示している。
ここで、Victim端末が備えるアンテナのアンテナ利得をG2とすると、Victim端末に到来するWPT10の給電信号のアンテナ出力レベル(WPT10から放射された信号の、Victim端末アンテナ出力における電力)Prx3は、以下の式(5)で表される。
Prx3=P1+G1-L+G2 式(5)
ここで、上記した妨害波規定における妨害波レベルの規定値をTh2とすると、第2共存条件を満足するためには、以下の式(6)に示すように、式(5)のPrx3がTh2より小さくなればよい。
Prx3=P1+G1-L+G2<Th2 式(6)
次に、図9の右側は、WPT10で実施されるCCAにおいてVictim信号を検出する場合を示している。WPT10側に到来するVictim信号の電力レベル(Victim信号電力)Prx2は上述した式(3)で表される。このため、式(3)に式(6)を代入すると、以下の式(7)が導出される。
Prx2<Th2+P2-P1 式(7)
式(7)は、上記した第2共存条件の制約下で、WPT10(検出部101)によって検出可能なVictim信号の電力レベルの範囲を表している。換言すれば、Victim信号電力Prx2が式(7)を満たすのであれば、第2共存条件は満たされているということになる。
よって、WPT10では式(7)の右辺で定義される電力レベルを第2CCA閾値として算出し、Victim信号電力が当該第2CCA閾値以上である場合には、第2共存条件が満たされていないものとして給電が実施されないようにする。一方、Victim信号電力が第2CCA閾値以上でない場合には、第2共存条件が満たされているものとして給電が実施される。このような第2CCA閾値を用いることによって、第2共存条件に基づくWPT10とVictimとの共存が可能となる。
ここで、一般に、無線システムにおける妨害波レベルの規定値としては、Victimが用いる周波数帯域と妨害波の周波数帯域との周波数差に応じて異なる値が規定されている。例えば、周波数差が20MHz以下の場合の妨害波レベルの規定値として-63dBmが規定され、当該周波数差が20MHzより大きく、かつ、40MHz以下である場合の妨害波レベルの規定値として-47dBmが規定され得る。
この場合において、例えばP2=10dBm、P1=40dBmとすると、第2CCA閾値のマスクパターン(WPT10とVictimとの周波数差に応じた第2CCA閾値のパターン)は、図10に示す第1線301のようになる。なお、図10において、横軸はWPT10とVictimとの周波数差を表しており、縦軸は第2CCA閾値を表している。
上記した第2CCA閾値が図5に示すステップS2において算出された場合、当該第2CCA閾値のマスクパターンに基づいてWPT10とVictimとの周波数差に対応する第2CCA閾値を特定し、当該特定された第2CCA閾値を用いてステップS4の処理が実行される。
更に、WPT10とVictimとの共存条件を、例えば「WPT10の給電信号がVictim(Victim端末)が具備するアナログ回路の性能に影響を与えない」という条件(以下、第3共存条件と表記)とすることも可能である。以下、第3共存条件に基づいて算出されるCCA閾値を第3CCA閾値と称する。なお、第3CCA閾値は、電力伝送部102により出力される電磁波が、Victim端末(無線通信装置)が具備するアナログ回路の性能に影響を与えないように設定された閾値に相当する。
ここで、上記したようにWPT10の給電信号の電力レベル(送信電力)は、一般の無線通信端末等から送信される無線信号の電力レベルよりも高い(つまり、大電力になる)場合が多い。なお、無線通信端末にはアナログ回路が具備されているが、当該アナログ回路は、電力レベルの高い信号を受信することによって性能が劣化する(または破壊される)場合がある。
このため、多くの無線システムにおいては、アナログ回路(受信回路)が受信可能な信号の最大電力レベルを規定している。ここでは、このように規定されている最大電力レベルにマージンを加えた値を限界受信電力レベルTh3とすることによって、上記した第3共存条件を満たす式を導出する。この場合、上述した式(7)におけるTh2をTh3に置き換えた式(8)が導出される。
Prx2<Th3+P2-P1 式(8)
なお、式(8)の導出については、上記した第2共存条件において説明した通りであるので、その詳しい説明を省略する。
式(8)は、上記した第3共存条件の制約下で、WPT10(検出部101)によって検出可能なVictim信号の電力レベルの範囲を表している。換言すれば、Victim信号電力Prx2が式(8)を満たすのであれば、第3共存条件は満たされているということになる。
よって、WPT10では式(8)の右辺で定義される電力レベルを第3CCA閾値として算出し、Victim信号電力が当該第3CCA閾値以上である場合には、第3共存条件が満たされていないものとして給電が実施されないようにする。一方、Victim信号電力が第3CCA閾値以上でない場合には、第3共存条件が満たされているものとして給電が実施される。このような第3CCA閾値を用いることによって、第3共存条件に基づくWPT10とVictimとの共存が可能となる。
なお、例えば限界受信電力レベル(Th3)が-20dBmと規定されている場合において、P2=10dBm、P1=40dBmとすると、第3CCA閾値のマスクパターン(WPT10とVictimとの周波数差に応じた第3CCA閾値のパターン)は、図10に示す第2線401のようになる。なお、上記した限界受信電力レベルは周波数差によらず一定である。このため、第3CCA閾値のマスクパターンは、他のマスクパターン(第1CCA閾値及び第2CCA閾値のマスクパターン)とは異なり、周波数差にかかわらず同一の値をとるフラットなマスクパターンとなっている。
上記した第3CCA閾値が図5に示すステップS2において算出された場合には、当該第3CCA閾値(一定の値)を用いてステップS4の処理が実行される。
上記したように本実施形態においては、例えばCCA期間(第1期間)の間に実施されたCCAによってVictim信号が検出されない場合には、給電期間(第2期間)の間に電力を伝送(つまり、給電)し、当該CCAによってVictim信号が検出された場合には、CCA期間(第3期間)の間に更にCCAが実施される。
本実施形態においては、このような構成により、Victim(他の無線システム)に影響を与える可能性が高い場合には給電を実施せず、当該Victimに影響を与える可能性が低い場合に給電を実施することができるため、WPT10によるVictimに対する干渉を抑制することが可能となる。
また、本実施形態におけるCCAは、例えばVictimにおいて実施されるCCAに影響を与えないように設定された第1CCA閾値に基づいて実施される。このような構成によれば、上記した第1共存条件(「WPT10の給電信号がVictimにおいて実施されるCCAに影響を与えない」という条件)の制約下で、WPT10とVictimとの共存を実現することが可能となる。
なお、第1CCA閾値は、WPT10とVictimとの周波数差に応じて異なる。このような第1CCA閾値によれば、例えば周波数差が小さいほど第1CCA閾値を厳しい値とし、当該周波数差が大きいほどCCA閾値を緩い値とすることによって、当該周波数差を考慮したCCA(Victim信号の検出)を実施することが可能となる。
更に、本実施形態におけるCCAは、例えばVictimの通信特性に影響を与えないように設定された第2CCA閾値に基づいて実施されてもよい。このような構成によれば、上記した第2共存条件(「WPT10の給電信号がVictimの通信特性に影響を与えない」という条件)の制約下で、WPT10とVictimとの共存を実現することが可能となる。
更に、本実施形態におけるCCAは、例えばVictimが具備するアナログ回路の性能に影響を与えないように設定された第3CCA閾値に基づいて実施されてもよい。このような構成によれば、上記した第3共存条件(「WPT10の給電信号がVictimが具備するアナログ回路の性能に影響を与えない」という条件)の制約下で、WPT10とVictimとの共存を実現することが可能となる。
本実施形態において、例えば第1CCA閾値はWPT10とVictimとの周波数の差に応じて異なる値となるが、CCA閾値は、例えばWPT10とVictim(Victim端末)との距離に応じて異なる値となるものであってもよい。
なお、本実施形態においてはCCA閾値として第1~第3CCA閾値を用いる場合について説明したが、本実施形態に係るWPT10は、当該第1~第3CCA閾値のうちの予め定められた1つを用いる構成とすることができる。
また、第1~第3CCA閾値を組み合わせて用い、当該第1~第3CCA閾値のうちの1つを選択的に用いる構成とすることも可能である。この場合には、上記した第1~第3CCA閾値のマスクパターンの各々を参照し、WPT10とVictimとの周波数差に対応する第1~第3CCA閾値を特定し、当該特定された第1~第3CCA閾値のうち最も厳しい(小さい)値をCCA閾値として採用する構成としてもよい。
ここで、上記した式(4)、(7)及び(8)の右辺で定義されるCCA閾値(第1~第3CCA閾値)は、WPT10の送信電力(P1)によって値が変化する。具体的には、WPT10の送信電力を下げた場合には、CCA閾値は大きくなる。このため、例えばWPT10(検出部101)によって検出されたVictim信号の電力レベル(Victim信号電力)がCCA閾値を1dBだけ超えている(上回っている)ような場合には、WPT10の送信電力を下げるように調整(再設定)することによって、当該CCA閾値(共存条件)の制約下で給電を実施することが可能となる。
すなわち、本実施形態においては、例えばCCAにおいてVictim信号が検出された場合に、Victim信号電力がCCA閾値よりも小さくなる(つまり、給電を実施することができる)ようにWPT10の送信電力を調整するような構成としてもよい。
更に、上記した図5に示す処理においてCCAが繰り返し実施される場合、当該CCAが実施される度にCCA閾値を変化させる構成としてもよい。具体的には、例えば1回目のCCAにおいてはマージンを少なくしたCCA閾値を用い、2回目のCCAにおいてはマージンを多くしたCCA閾値を用いるように、段階的に変化させたCCA閾値を用いたCCAが実施されるようにしてもよい。1回目のCCAにおいてはマージンを多くしたCCA閾値を用い、2回目のCCAにおいてはマージンを少なくしたCCA閾値を用いても良い。また、CCAが実施される度に用いられるCCA閾値(第1~第3CCA閾値)を変えるようにしてもよい。
なお、本実施形態においては第1~第3共存条件に基づく第1~第3CCA閾値について主に説明したが、CCA閾値として他の共存条件に基づくCCA閾値が用いられてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1実施形態の説明で用いた図面と同様の部分には同一参照符号を付して説明するものとする。また、以下の説明では、前述した第1実施形態とは異なる部分について主に述べる。
図11は、本実施形態に係るWPT10の機能構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、WPT10は、前述した第1実施形態において説明した検出部101及び電力伝送部102に加えて、保持部103及び制御部104を含む。
本実施形態において、保持部103は、例えば図3に示す不揮発性メモリ12等によって実現される。また、制御部104の一部または全ては、例えば図3に示すCPU11にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、制御部104の一部または全ては、ICまたは専用のハードウェア等によって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
前述した第1実施形態において説明したように、検出部101はCCA期間の間にVictim信号の有無を検出する(つまり、CCAを実施する)ことが可能であるが、保持部103は、当該CCAの結果(つまり、Victim信号が検出されたか否か)を履歴情報として保持する。
制御部104は、保持部103に保持された履歴情報に応じて、後に実施されるCCAにおけるCCA期間及び給電における給電期間を制御(変更)する機能を有する。
すなわち、本実施形態は、過去に実施されたCCAの結果に基づいて将来のCCA期間及び給電期間を制御する点で、前述した第1実施形態とは異なる。
次に、図12のフローチャートを参照して、本実施形態に係るWPT10の処理手順の一例について説明する。ここでは、WPT10に含まれる保持部103には、過去のCCAの結果(履歴情報)が既に保持されているものとして説明する。
ここでは、図5に示す処理と異なる部分について主に説明し、当該図5と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、前述した図5に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS11及びS12の処理が実行される。
次に、制御部104は、保持部103に保持されている履歴情報を取得する(ステップS13)。ステップS13において取得される履歴情報は、例えばVictim信号が検出されたか否かを示す。なお、ステップS13において取得される履歴情報は、例えば直近に実施された1回分のCCAの結果であってもよいし、過去に実施された複数回分のCCAの結果であってもよい。
制御部104は、ステップS13において取得された履歴情報に基づいて、CCA期間を算出する(ステップS14)。
ステップS14において、制御部104は、ステップS13において取得された履歴情報に基づいて、Victim信号が検出された回数(以下、Victim信号の検出回数と表記)を算出する。
制御部104によって算出されたVictim信号の検出回数が予め定められた値以上である場合、制御部104は、Victimに与える影響が大きいと推測し、予め定められているCCA期間(以下、CCA期間の初期値と表記)よりも長いCCA期間を算出する。
一方、制御部104によって算出されたVictim信号の検出回数が予め定められた値以上でない場合、制御部104は、Victimに与える影響が小さいと推測し、CCA期間の初期値よりも短いCCA期間を算出する。
ステップS14の処理が実行されると、ステップS13において取得された履歴情報に基づいて、給電期間を算出する(ステップS15)。
上記したように制御部104によって算出された検出回数が予め定められた値以上である場合、制御部104は、Victimに与える影響が大きいと推測し、予め定められている給電期間(以下、給電期間の初期値と表記)よりも短い給電期間を算出する。
一方、制御部104によって算出されたVictim信号の検出回数が予め定められた値以上でない場合、制御部104は、Victimに与える影響が小さいと推測し、給電期間の初期値よりも長い給電期間を算出する。
なお、上記したステップS14及びS15においてはVictim信号の検出回数を用いてCCA期間及び給電期間が算出されるものとして説明したが、当該検出回数の代わりに、Victim信号の検出頻度(Victim信号が検出された頻度)またはVictim信号の検出期間(Victim信号が検出された期間)等が用いられてもよい。すなわち、上記したCCA期間及び給電期間は、保持部103に保持されている履歴情報に基づいて算出される統計量等に基づいて制御される構成であってもよい。
ステップS15の処理が実行されると、前述した図5に示すステップS3~S6の処理に相当するステップS16~S19の処理が実行される。この場合、ステップS16においては、ステップS14の処理において算出されたCCA期間でCCAが実施される。また、ステップS18においては、ステップS15において算出された給電期間で給電が実施される。
また、ステップS17の処理が実行された場合には、当該ステップS17の処理の結果(つまり、CCAの結果)が履歴情報として保持部103に保持(格納)される。このように保持部103に保持された履歴情報は後の図12に示す処理において用いることができる。
また、ステップS17においてVictim信号電力がCCA閾値以上であると判定された場合には、ステップS13に戻って処理が繰り返される。なお、この場合には、例えばステップS14において算出されたCCA期間を維持したままでステップS16の処理が再度実行されてもよい。
また、ステップS19において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS16に戻って処理が繰り返される。なお、この場合には、ステップS13に戻って処理が繰り返されてもよい。
上記した図12に示す処理によれば、過去のCCAの結果に基づいてCCA期間及び給電期間を制御することが可能となる。
なお、図12に示す処理においてはCCA期間及び給電期間の両方が制御されるものとして説明したが、CCA期間及び給電期間の一方のみが制御(変更)される構成としても構わない。
上記したように本実施形態においては、CCAが実施された結果(つまり、キャリアセンスの結果)を履歴情報として保持部103に保持し、当該保持部103に保持された履歴情報に基づいて、CCA期間及び給電期間(第1期間、第2期間及び第3期間)の長さの少なくとも1つを変更する。
このような構成によれば、例えばVictim信号の検出回数(検出率)が多いような環境では、CCA期間を長くすることによって、当該Victim信号の検出精度を向上させることができる。また、給電期間を短くすることによって、WPT10のVictimへの干渉量またはWPT10がVictimに影響を与える可能性を低減することができる。
一方で、例えばVictim信号の検出回数が少ないような環境では、CCA期間を短くするまたは給電期間を長くすることによって、給電効率を向上させることができる。
なお、図12において説明したようにステップS14及びS15の処理は繰り返し実行される場合があるが、当該処理が繰り返し実行されることによってCCA期間または給電期間が極端に長くまたは短くなるように制御された場合には、WPT10及びVictimが適切に動作(機能)しない可能性がある。このため、本実施形態においては、CCA期間及び給電期間に対して制限値(上限値及び下限値)が設定されるものとする。
また、このような構成の場合には、CCA期間と給電期間の一方を優先的に制御するようにしてもよい。具体的には、給電期間を固定したままCCA期間を優先的に制御し、当該CCA期間が制限値に達した場合に給電期間を制御するようにしてもよい。一方、CCA期間を固定したまま給電期間を優先的に制御し、当該給電期間が制限値に達した場合にCCA期間を制御するようにしてもよい。
なお、本実施形態において制御されるCCA期間及び給電期間の具体的な数値は、想定するVictimにおいて採用される無線通信方式に応じて決定されてもよい。また、CCA期間及び給電期間は、Victimが無線チャネル(周波数帯域)を占有する時間と、WPT10が無線チャネル(周波数帯域)を占有する時間とが公平になるように制御されてもよい。更に、CCA期間及び給電期間は、Victimが無線チャネルへのアクセス権を取得する確率と、WPT10が無線チャネルへのアクセス権を取得する確率とが同程度となるように制御されてもよい。
例えば、VictimがIEEE802.11規格に従う無線LANシステム(以下、無線LANシステムと表記)である場合を想定すると、当該無線LANのパケット信号はCSMA(Carrier Sense Multiple Access)プロトコルに従う。この場合、WPT10におけるCCA期間及び給電期間についても、CSMAプロトコルを考慮して制御されるようにしてもよい。
ここで、図13は、CSMAプロトコルに従う無線LANシステムを構成する無線LAN端末(Victim端末)のチャネルアクセスに関する動作の一例を示す。
無線LAN端末は、無線信号の送信前に所定の範囲からランダムな値(ランダムバックオフ:BOF)を生成し、固定のセンシングスロット時間でのCCAを繰り返し実施し、BOFの分だけチャネルが空いていることを確認することができた場合に、無線信号の送信を行う。
図13に示す例では、無線LAN端末は、T11において無線信号が送信された後のT12の間にCCAを実施することによって、初期遅延時間を含むBOFカウンタが3から0になる期間だけチャネルが空いていることを確認し、次のT13で無線LAN信号を送信している。
なお、BOFの生成範囲はContention Window(CW)サイズとして設定されており、直前の通信エラー(失敗)の状況に応じて可変の値をとるBOFが生成される。すなわち、図13に示す例では、T13の後のT14において再度CCAが実行されるが、この場合におけるBOFカウンタ値Nは、T13での通信エラーの状況に応じて可変となる。例えばT13での通信エラーの回数が多い場合には、BOFカウンタ値の上限値は大きくなる。
ここで、Victimが上記した無線LANシステムである場合を想定すると、WPT10におけるCCA期間をCSMAプロトコルに準拠したものとすることができる。この場合、上記した無線LAN端末と同様に、無線LANの通信状況に応じてBOFカウンタを制御する必要があるため、WPT10が無線LANの通信状況を把握するように構成されているものとする。
一方、Victimが無線LANシステムである場合であっても、WPT10におけるCCA期間を厳密にCSMAプロトコルに準拠させなくてもよい(つまり、修正を加えたものにしてもよい)。この場合、例えばWPT10におけるCCA期間は無線LANと同様に固定のセンシングスロット時間で規定される構成とし、BOFカウンタ値をWPT10とVictimとの共存環境に応じて決定するようにしてもよい。例えば過去のCCA(履歴情報)におけるVictim信号の検出回数が多ければBOFカウンタ値を大きく設定し、当該検出回数が少なければBOFカウンタ値を小さく設定することができる。これによれば、WPT10においても無線LANと類似したチャネルアクセスを実現することができる。
また、無線LANにおいて、無線LAN端末がチャネルを占有できる時間(以下、無線LAN端末のチャネル占有時間と表記)は、パケット長やTXOP(Transmission Opportunity)と称されるパラメタで規定されている。この場合、チャネル占有時間を公平にするため、WPT10における給電期間を上記した無線LAN端末のチャネル占有時間と同程度とすることができる。
具体的には、WPT10が無線LAN信号を受信及び復号する機能を有している場合は、無線LANパケットのパケット長またはTXOPパラメタを解釈することで、WPT10の給電期間を無線LAN端末のチャネル占有時間と同程度に設定(制御)することができる。
一方、WPT10が無線LAN信号を受信及び復号する機能を有していない場合には、WPT10の初期設定として給電期間を短めに設定し、過去のCCAにおけるVictim信号の検出回数に応じて給電期間を変更する制御を実行するようにしてもよい。例えば過去のCCAにおけるVictim信号の検出回数が多い場合は給電期間を維持あるいは短くしていくように制御することで、Victimへの干渉を軽減することができる。過去のCCAにおけるVictim信号の検出回数が少ない場合は、給電期間が長くなるように制御することによって、給電効率の改善を図ることができる。
なお、WPT10におけるCCA期間や給電期間には上記したように初期値が設定されていてもよいが、CCA期間の初期値は長く設定し、給電期間の初期値は短く設定しておくものとする。これによれば、既存のVictimへの影響を最小限とした状態で給電を開始することが可能となる。その後、WPT10において実施されたCCAにおけるVictim信号の検出回数が少ない場合には、CCA期間が短くなるように変更していく、または、給電期間が長くなるように変更していくことで給電効率を向上させることができる。一方、WPT10において実施されたCCAにおけるVictim信号の検出回数が多い場合には、CCA期間が長くなるように変更していく、または、給電期間が短くなるように変更していくことでVictimへの干渉を抑制することができる。なお、WPT10において実施されたCCAにおけるVictim信号の検出回数が多い場合には、CCA期間及び給電期間を維持するようにしてもよい。
また、CCA期間及び給電期間を変更(制御)する構成の場合、当該変更が繰り返し行われることによって、Victimが永久にチャネルアクセスできなくなる可能性がある。例えば、WPT10のCCA期間が、Victimの実施するCCA期間(の最小値)より短くなってしまうと、Victimの実施するCCAで常にWPT10の給電信号を検出してしまい、Victimがチャネルアクセスできなくなってしまう可能性がある。あるいは、WPT10の給電期間が、Victimにおける送信データ用バッファの一時保存時間を大幅に超えてしまうと、Victimは送信すべきデータを破棄してしまう可能性がある。このため、WPT10とVictimとが共存する環境においては、上記したようにCCA期間及び給電期間に対して制限値(上限値及び下限値)が設定されているものとする。
ところで、Victimにおいては無線通信が実行されるため、当該Victimを構成するVictim端末は複数存在するが、例えば図14に示すように、そのうちの一部のVictim端末からの無線信号(Victim信号)のみがWPT10で検出可能なような共存環境を想定する。図14に示す例では、Victimが複数のVictim端末A及びBから構成され、Victim端末Aからの無線信号はWPT10において検出することができず、Victim端末Bからの無線信号はWPT10において検出することができるという共存環境(シナリオ)が示されている。このような共存環境においては、無線信号を検出することができないVictim端末Aに対してWPT10の給電信号が与える影響を考慮する必要がある。なお、このような共存環境は隠れ端末環境と称され、無線信号を検出することができないVictim端末Aは隠れ端末と称される。
ここで、WPT10は、上記したようにVictim端末Bからの無線信号をCCAによって検出することができるが、Victim端末Aからの無線信号は障害物等の影響により検出することができない。このような共存環境において、例えばVictim端末BからVictim端末Aへの送信が支配的な場合(つまり、Victim端末Bから一方的にVictim端末Aに対して無線信号を送信する場合)には、当該Victim端末Bからの無線信号をWPT10で検出することができるため問題にならない。これに対して、Victim端末AからVictim端末Bへの送信が支配的な場合(つまり、Victim端末Aから一方的にVictim端末Bに対して無線信号を送信する場合)は、Victim信号を検出することができず、Victimに対して干渉を与える要因となる。換言すれば、このような場合にはWPT10においてVictimの存在を認識することができず、適切な制御を実行することができない場合がある。
しかしながら、例えばVictim端末AからVictim端末Bへの送信が支配的な場合であっても、図15に示すように、Victim端末BからVictim端末Aに対して応答信号が定期的に送信される。
よって、Victim端末Bからの応答信号をWPT10において検出することが有効である。すなわち、この応答信号をWPT10において検出することで、WPT10は、Victim端末B(つまり、Victim)の存在を認識することができる。
上記した応答信号の送信タイミングはVictimにおいて採用されている無線通信方式によって異なり、例えばパケットを正しく受信することができたときに応答信号が送信される場合、パケットを正しく受信することができないときに応答信号が送信される場合、または複数のパケットを受信した後に応答信号を送信する場合等があり得る。
なお、WPT10の給電信号によってVictimに干渉を与えてしまうと、応答信号が送信されなくなる可能性があるため、WPT10は当該応答信号を検出することができる程度に十分に長いCCA期間でCCAを実施する必要がある。
この場合、WPT10においては、例えばVictim端末の一部が隠れ端末である可能性を想定し、少なくともVicitmのパケット長以上の長さとなるようにCCA期間の初期値が設定されるものとする。例えば、Victimが無線LANシステムである場合、CCA期間の初期値は無線LANの最大バースト長以上であればよい。また、CCA期間の初期値は、最大データフレーム長+SIFS+ACKフレーム長以上となるように設定されてもよいし、TXOPパラメタの最大値以上となるように設定されてもよい。なお、CCA期間の初期値が大きいほど、隠れ端末に与える影響を軽減することが可能となる。
このように初期値が設定された後で、CCAにおけるVictim信号の検出回数(検出結果)に応じてCCA期間が制御されればよい。なお、CCA期間を制御するための指標としては、上記したVictim信号の検出回数以外には、Victim信号の検出頻度及び検出期間等を用いることができる。すなわち、この検出回数が多い、検出頻度が高いまたは検出期間が長い場合には、CCA期間が長くなるように制御する。この場合、同時に給電期間が短くなるように制御してもよい。一方、検出回数が少ない、検出頻度が低いまたは検出期間が短い場合には、CCA期間が短くなるように制御する。この場合、同時に給電期間が長くなるように制御してもよい。
なお、Victim端末が通信を開始するタイミング及び隠れ端末環境が発生するタイミングをWPT10において把握することはできないため、WPT10はCCA期間及び給電期間を周期的に変更することが望ましい。具体的には、例えばCCAにおけるVictim信号の検出回数が少ない場合は、CCA期間を短くし、給電期間を長くするような制御が実行されるが、周期的にCCA期間を長くし、給電期間を短くするような制御が更に実行されるものとする。この場合、CCA期間及び給電期間を周期的に初期値に戻すような制御が実行されてもよい。
すなわち、本実施形態においては、CCA期間(第1期間及び第3期間)及び給電期間(第2期間)の長さが変更された場合、予め定められたタイミングで(つまり、所定の期間が経過したときに)、当該CCA期間及び給電期間の長さを初期値に近づくように再度変更(制御)される構成としてもよい。なお、このような制御は、CCA期間(第1期間及び第3期間)及び給電期間(第2期間)のうちの少なくとも1つに対して実施されればよい。
このような構成によれば、例えば隠れ端末環境が発生する可能性を考慮してWPT10を適切に動作させる(つまり、Victimに対する干渉を回避する)ことが可能となる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1及び第2実施形態の説明で用いた図面と同様の部分には同一参照符号を付して説明するものとする。また、以下の説明では、前述した第1及び第2実施形態とは異なる部分について主に述べる。なお、本実施形態に係るWPT10の機能構成は、前述した第2実施形態と同一であるものとする。
本実施形態は、電力を伝送する(つまり、WPT10の給電信号を送信する)方向を制御するための指向性形成機能をWPT10が有する点で、前述した第1及び第2実施形態とは異なる。なお、指向性形成機能は、前述した図3に示すアンテナ14として、複数のアレー素子から構成されるフェーズドアレーアンテナを用いることによって実現されてもよいし、指向性の異なる複数のアンテナを用いることによって実現されてもよい。
なお、このようなアンテナ14による指向性形成機能(アンテナ指向性)は、給電信号の送信だけではなく、Victim信号の受信にも適用される。すなわち、本実施形態において、電力を伝送する(つまり、給電を行う)際の指向性は、CCAを実施する際の指向性と同一であるものとする。
このように送信と受信とにおけるアンテナ指向性を同一とする場合、方向毎の電磁波の送信のしやすさは、当該方向毎の電磁波の受信のしやすさと同じとなる。換言すれば、本実施形態においては、WPT10がCCAを実施する際に適用される受信アンテナ指向性と、給電を行う際に適用される送信アンテナ指向性とを同一とすることによって、CCAにおいてVictim信号が検出されるVictim端末に対しては給電信号が届きやすく、CCAにおいてVictim信号が検出されないVictim端末に対しては給電信号が届きにくいという関係が成り立つ。
以下の説明においては、上記した電力を伝送する際の指向性(つまり、送信アンテナ指向性)とCCAを実施する際の指向性(つまり、受信アンテナ指向性)とを包含してWPT10の指向性と称する。
以下、図16のフローチャートを参照して、本実施形態に係るWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、図5に示す処理と異なる部分について主に説明し、当該図5と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、前述した図5に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS21及びS22の処理が実行される。
次に、検出部101は、WPT10の指向性を設定する(ステップS23)。ステップS23において設定されるWPT10の指向性は、例えば予め定めされていてもよいし、受電デバイスの位置等に基づくものであってもよい。なお、受電デバイスの位置等の情報(受電デバイスに関する情報)は、前述した図3に示す通信デバイス15を介して受電デバイスから受信されても構わない。
ステップS23の処理が実行されると、前述した図5に示すステップS3~S6の処理に相当するステップS24~S27の処理が実行される。
なお、ステップS24においては、ステップS23において設定されたWPT10の指向性に基づいてCCAが実施される(つまり、当該指向性の下でVictim信号が検出される)。
また、ステップS25の処理が実行された場合には、前述した第2実施形態と同様に、当該ステップS25の処理の結果(つまり、CCAの結果)が履歴情報として保持部103に保持される。なお、本実施形態における履歴情報には、例えばVictim信号が検出された際のWPT10の指向性の情報が含まれる。
また、ステップS26において給電が行われる場合、電力伝送部102は、ステップS23において設定されたWPT10の指向性に基づいて給電信号を送信する。
なお、ステップS25においてVictim信号電力がCCA閾値以上であると判定された場合には、ステップS23に戻って処理が繰り返されるものとする。この場合、制御部104は、上記した保持部103に保持されている履歴情報に基づいてWPT10の指向性を制御(再設定)する。この場合、制御部104は、現在のWPT10の指向性を、他の指向性に変更するような制御を実行する。他の指向性とは、例えば、WPT10が予め備えている複数の指向性のうちの1つであってもよい。あるいは、過去のCCAにおいてVictim信号が検出されていない指向性に変更するような制御を実行してもよい。あるいは、WPT10がアレーアンテナを備えている場合は、アレー素子の位相や振幅を制御することで新しい指向性を形成するようにしてもよい。
また、ステップS27において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS24に戻って処理が繰り返される。
上記した図16に示す処理によれば、設定されたWPT10の指向性に基づいてCCAを実施し、当該CCAにおいてVictim信号が検出されない場合には、当該指向性に基づいて給電を実施する。一方、CCAにおいてVictim信号が検出された場合には、設定された指向性を変更して再度CCAを実施する。
上記したように本実施形態においては、CCAが実施された結果を履歴情報として保持部103に保持し、当該保持部103に保持された履歴情報に基づいて、電力を伝送する際の指向性(つまり、電磁波の指向性)を制御する。また、本実施形態において、電力を伝送する際の指向性は、CCAを実施する際の指向性(キャリアセンスの指向性)と同一である。
このような構成によれば、例えば過去にVictim信号が検出された方向以外の方向にWPT10の給電信号を送信することができるため、Victimへの影響を軽減することが可能となる。換言すれば、過去のCCAにおいてVictim信号が検出されている場合、同一の指向性のままではVictimに対して干渉を与える可能性が高いと推測することができるため、WPT10の指向性を変更する制御を実行することによって、当該干渉を抑制することが可能となる。
また、本実施形態においては、例えばWPT10の指向性を切り替えながら(変更しながら)CCAを複数回実施するような構成としてもよい。具体的には、例えば最初に比較的広い指向性(ビームパターン)でCCAを実施し、次に比較的狭い指向性(ビームパターン)でCCAを実施し、いずれのCCAにおいてもVictim信号が検出されない場合に、給電が実施されるような構成とすることも可能である。
一般的に、広いビームパターンほど広範囲からの信号を検出することが可能であるが、給電効率は低下する。一方、狭いビームパターンほど信号を検出することができる範囲(検出可能エリア)は狭くなるが、給電効率は向上する。このため、広いビームパターンと狭いビームパターンとを切り替えてCCAを実施することによって、検出可能エリアと給電効率との両立を図ることができる。
なお、このような構成の場合において、例えば広いビームパターンでVictim信号が検出されず、狭いビームパターンでVictim信号が検出された場合には、当該狭いビームパターンの向き(つまり、WPT10の指向性)を変更して再度CCAが実施されてもよいし、WPT10の送信電力を下げてCCA閾値を大きくした後に、再度CCAを実施するようにしてもよい。一方、広いビームパターンでVictim信号が検出された場合には、当該広いビームパターンの向き(つまり、WPT10の指向性)を変更して再度CCAが実施されてもよいし、WPT10の送信電力を下げてCCA閾値を大きくした後に当該広いビームパターンで再度CCAを実施するようにしてもよい。
また、本実施形態においてはWPT10の指向性を制御するものとして説明したが、電力を伝送する際のWPT10の輻射電力(つまり、電磁波の輻射電力)を制御する構成としてもよい。なお、輻射電力は、例えばWPT10の送信電力にアンテナ利得を加えたものに相当する。すなわち、本実施形態においては、WPT10の指向性だけではなく、WPT10の送信電力をも同時に制御するようにしてもよい。更に、本実施形態においては、WPT10の指向性及び送信電力の一方を適応的(選択的)に制御する構成としてもよい。
以下、図17のフローチャートを参照して、WPT10の輻射電力(指向性及び送信電力)を制御する場合におけるWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、上記した図16と異なる部分について主に説明し、当該図16と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、図16に示すステップS21~S25の処理に相当するステップS31~S35の処理が実行される。
次に、ステップS35においてVicim信号電力がCCA閾値以上でないと判定された場合(ステップS35のNO)、図16に示すステップS26及びS27の処理に相当するステップS38及びS39の処理が実行される。
一方、Victim信号電力がCCA閾値以上であると判定された場合(ステップS35のYES)、検出部101は、当該Victim信号電力がCCA閾値に予め定められたオフセット値を加算した値(つまり、CCA閾値+オフセット値)以上であるか否かを判定する(ステップS36)。
Victim信号電力がCCA閾値+オフセット値以上であると判定された場合(ステップS36のYES)、ステップS33戻って処理が繰り返される。この場合におけるステップS33においては、現在のWPT10の指向性を、他の指向性に変更するような制御を実行する。上述したように、他の指向性とは、例えば、WPT10が予め備えている複数の指向性のうちの1つであってもよい。あるいは、過去のCCAにおいてVictim信号が検出されていない指向性に変更するような制御を実行してもよい。あるいは、WPT10がアレーアンテナを備えている場合は、アレー素子の位相や振幅を制御することで新しい指向性を形成するようにしてもよい。
一方、Victim信号電力がCCA閾値+オフセット値以上でないと判定された場合(ステップS36のNO)、制御部104は、WPT10の送信電力を変更する(ステップS37)。この場合、制御部104は、ステップS35またはS36において用いられたCCA閾値がVictim信号電力を上回るように、WPT10の送信電力をステップS31において設定された送信電力よりも下げる制御を実行する。
ステップS37の処理が実行されると、上記したステップS38及びS39の処理が実行される。
なお、ステップS39において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS34に戻って処理が繰り返される。
ここで、前述した第1実施形態において説明したようにCCAではCCA閾値のマスクパターンに従ってVictim(Victim信号)の検出を行うが、当該検出されたVictim信号の電力レベル(Victim信号電力)がCCA閾値をわずかに上回る程度であれば、その分だけWPT10の送信電力を下げることで当該CCA閾値(マスクパターン)を満たすことができる。このような場合には、送電パターンが大きく変更する指向性ではなく、WPT10の送信電力を変更(制御)する方が有効であるといえる。
この点を考慮することにより、上記した図17に示す処理においては、Victim送信電力がCCA閾値+オフセット値以上でない場合には、指向性を変更して送電パターンを大きく変化させることなく、WPT10の送信電力を制御することによってVictimに対する干渉を抑制するものとする。
更に、本実施形態においては、CCA閾値のマスクパターンを複数設定し、Victim信号電力と当該マスクパターンとの関係に応じてWPT10の指向性または送信電力を制御する構成とすることも可能である。
具体的には、図18に示すように、CCA閾値のマスクパターンとしてMask_LowとMask_Highとを設定する。なお、図18に示す例では、Mask_Lowとしては、前述した第1実施形態において説明した第2CCA閾値のマスクパターン(Victimの通信特性に影響与えないように設定された閾値)が設定されている。また、Mask_Highとしては、前述した第1実施形態において説明した第3CCA閾値のマスクパターン(Victimが具備するアナログ回路の性能に影響を与えないように設定された閾値)が設定されている。
以下、図19のフローチャートを参照して、上記したようにMask_LowとMask_HighとがCCA閾値のマスクパターンとして設定されている場合におけるWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、図16に示す処理と異なる部分について主に説明し、当該図16と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、図16に示すステップS21~S24の処理に相当するステップS41~S44の処理が実行される。
次に、検出部101は、Victim信号電力が、WPT10とVictimとの周波数差に基づいてMask_Highから特定されたCCA閾値(以下、単にMask_Highと表記)以上であるか否かを判定する(ステップS45)。なお、図18に示す例ではMask_Highは第3CCA閾値のマスクパターンであるため、ステップS45において用いられるMask_Highは、周波数差にかかわらず一定の値である。
Victim信号電力がMask_High以上であると判定された場合(ステップS45のYES)、ステップS43に戻って処理が繰り返される。この場合におけるステップS43においては、現在のWPT10の指向性を、他の指向性に変更するような制御が実行される。
一方、Victim信号電力がMask_High以上でないと判定された場合(ステップS45のNO)、検出部101は、Victim信号電力が、WPT10とVictimとの周波数差に基づいてMask_Lowから特定されたCCA閾値(以下、単にMask_Lowと表記)以上であるか否かを判定する(ステップS46)。
Victim信号電力がMask_Low以上であると判定された場合(ステップS46のYES)、制御部104は、WPT10の送信電力を変更する(ステップS47)。なお、このステップS47の処理は上記した図17に示すステップS37の処理に相当する処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。ステップS47の処理が実行されると、図16に示すステップS26及びS27の処理に相当するステップS48及びS49の処理が実行される。
一方、Victim信号電力がMask_Low以上でないと判定された場合(ステップS46のNO)、上記したステップS48及びS49の処理が実行される。CCAにおいてVictim信号自体が検出されない場合も同様に、ステップS48及びS49の処理が実行される。
なお、ステップS49において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS44に戻って処理が繰り返される。
上記した図19に示す処理によれば、Victim信号電力がMask_Low以上でなければ、Victimに与える干渉はほとんどないと推定して給電が実施される。一方、Victim信号電力がMask_Low以上であり、かつ、Mask_High以上でない(つまり、Mask_LowとMask_Highとの間である)場合には、Victimに与える干渉は限定的であると推定し、WPT10の送信電力を変更(制御)した上で給電が実施される。また、Victim信号電力がMask_High以上であれば、Victi与える影響が大きい(深刻である)と推定して給電を実施せず、指向性が変更(制御)される。
図19に示す処理によれば、上記したようにVictim信号電力が複数のマスクパターンのどのレベルに該当するかに応じて異なる制御を実行することにより、Victimに対する干渉の抑制と給電効率との両立を図ることができる。
なお、図19においてはVictim信号電力がMask_Low以上であると判定された場合にはWPT10の送信電力が変更されるものとして説明したが、当該Victim信号電力がMask_Low以上である場合には、当該Victim信号電力がMask_High以上である場合と同様に指向性を変更する構成としても構わない。
また、Victim信号電力がMask_High以上であると判定された場合であっても、例えば当該Victim信号電力とMask_Highとの差分が小さいような場合には、WPT10の送信電力を変更する構成としてもよい。
更に、本実施形態においては、上記したWPT10の指向性及び送信電力に加えて、給電期間を制御してもよい。
以下、図20のフローチャートを参照して、上記したようにWPT10の指向性及び送信電力に加えて給電時間を制御する場合におけるWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、上記した図19に示す処理と異なる部分について主に説明し、当該図19と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、図19に示すステップS41~S46の処理に相当するステップS51~S56の処理が実行される。
次に、ステップS56においてVictim信号電力がMask_Low以上であると判定された場合(ステップS56のYES)、制御部104は、WPT10の送信電力を変更するか否かを判定する(ステップS57)。なお、ステップS57においては、例えばVictim信号電力とMask_Lowとの差分に応じて判定処理が実行される。具体的には、Victim信号電力とMask_Lowとの差分が予め定められた値よりも小さい場合には、送信電力を変更することによってVictim信号電力をMask_Low以下とすることが可能であるため、WPT10の送信電力を変更すると判定することができる。一方、Victim信号電力とMask_Lowとの差分が予め定められた値よりも大きい場合には、WPT10の送信電力を変更しない(つまり、給電期間を変更する)と判定するものとする。
WPT10の送信電力を変更すると判定された場合(ステップS57のYES)、制御部104は、WPT10の送信電力を変更する(ステップS58)。なお、このステップS58の処理は上記した図19に示すステップS47(図17に示すステップS37)の処理に相当する処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
一方、WPT10の送信電力を変更しないと判定された場合(ステップS57のNO)、制御部104は、給電期間を変更する(ステップS59)。この場合、制御部104は、Victimに対して干渉を与える可能性を低減させるために、現在の給電期間(例えば、給電期間の初期値)をより短い給電期間に変更する。
上記したステップS58またはS59の処理が実行されると、図19に示すステップS48及びS49の処理に相当するステップS60及びS61の処理が実行される。
一方、ステップS56においてVictim信号電力がMask_Low以上でないと判定された場合(ステップS56のNO)、ステップS60及びS61の処理が実行される。
なお、ステップS61において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS54に戻って処理が繰り返される。
上記した図20に示すようにWPT10の指向性及び送信電力に加えて給電期間を制御する構成であっても、Vicimに対する干渉の抑制と給電効率との両立を図ることができる。
なお、図20においてはVictim信号電力がMask_Low以上であると判定された場合にはWPT10の送信電力または給電期間が変更されるものとして説明したが、当該Victim信号電力がMask_Low以上である場合には、当該Victim信号電力がMask_High以上である場合と同様に指向性を変更する構成としても構わない。
また、Victim信号電力がMask_High上であると判定された場合であっても、例えば当該Victim信号電力とMask_Highとの差分が小さいような場合には、WPT10の送信電力または給電期間を変更する構成としてもよい。
なお、図20においては給電期間が制御される場合について説明したが、当該給電期間に代えてまたは当該給電期間とともにCCA期間を制御する構成としてもよい。
本実施形態においては主に保持部103に保持されている履歴情報に基づいてWPT10の指向性(電磁波の指向性)等を制御するものとして主に説明したが、当該制御は、例えば図3に示す通信デバイス15を介して受電デバイスとの間で無線通信が行われることによって受信される当該受電デバイスに関する情報に基づいて実行されても構わない。
なお、受電デバイスから受信される情報としては、例えば受電デバイスが要求する電力量、受電デバイスまでの距離、受電デバイスの方向及び位置等の情報が含まれる。あるいは、受電デバイスから給電開始・停止等の指令を受け取っても良い。
受電デバイスとの間の無線通信は、WPT10におけるCCAや給電処理とは独立した任意の時間に行われてもよいし、周期的に行われてもよい。あるいは、CCAと同時に行われてもよいし、給電時間の終了後に行われてもよい。
本実施形態に係るWPT10においては、これらの情報を用いることによって、WPT10(から出力される電磁波)の指向性、送信電力または輻射電力等を制御するように構成されていてもよい。
また、本実施形態において説明した図16、図17、図19及び図20等においてはCCAが実施される前にWPT10の送信電力及び指向性が設定されるが、これらの設定は、受電デバイスに関する情報が受電デバイスから受信される度に行われるようにしてもよい。また、これらの設定は、受電デバイスとの通信とは独立して、周期的に行われてもよい。
なお、本実施形態に係るWPT10は、前述した第2実施形態において説明した構成(制御)等と組み合わせて実現されてもよい。
すなわち、上記した本実施形態に係るWPT10は、WPT10が指向性形成機能を有し、保持部103に保持された履歴情報(CCAの結果)や受電デバイスに関する情報等に基づいてWPT10の指向性、送信電力、給電期間、またはCCA期間を制御することによって、Victimに対する干渉の抑制と無線給電との両立を実現することが可能な構成であればよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、前述した第1~第3実施形態の説明で用いた図面と同様の部分には同一参照符号を付して説明するものとする。また、以下の説明では、前述した第1~第3実施形態とは異なる部分について主に述べる。なお、本実施形態に係るWPT10の機能構成は、前述した第2及び第3実施形態と同一であるものとする。
前述した第1~第3実施形態においては主に1種類のVictimの存在を検査するためにCCAが実施される場合について説明したが、本実施形態は、例えば少なくともWPT10が用いる周波数帯域とは異なる周波数帯域(第2及び第3周波数帯域)を用いる2種類以上のVictimの存在を検査するためにCCAを実施する(つまり、当該第2及び第3周波数帯域でキャリアセンスする)点で、当該第1~第3実施形態とは異なる。
WPT10が用いる周波数帯域(送電周波数)によっては、当該周波数帯域の近傍の周波数待機(近傍周波数)に複数の異なるVcitim(無線システム)が存在する可能性があるため、当該複数の異なるVictimに対する影響を考慮する必要がある。
ここで、上記した複数の異なるVictimとして第1及び第2Victimが存在する場合を想定する。この第1及び第2Victimの種類が異なる場合、例えば当該第1及び第2Victimにおいて採用されている無線通信方式の違いによって、WPT10が制御すべきCCA期間及び給電期間に関する要求(オーダ)が異なる可能性がある。
図21は、上記した第1及び第2Victimに対するCCA期間及び給電期間の一例を示す。
以下の説明において、第1Victimに対するCCA期間及び給電期間をそれぞれ第1CCA期間及び第1給電期間と称する。また、第2Victimに対するCCA期間及び給電期間をそれぞれ第2CCA期間及び第2給電期間と称する。
なお、図21において、第1CCA期間及び第1給電期間はそれぞれ「CCA1」及び「給電1」と表記されている。また、第2CCA期間及び第2給電期間はそれぞれ「CCA2」及び「給電2」と表記されている。以下の図面においても同様である。
図21においては、第1CCA期間が10μs(オーダ)であり、第1給電期間が1ms(オーダ)であることが示されている。一方、第2CCA期間が1ms(オーダ)であり、第2給電期間が10ms(オーダ)であることが示されている。
このように第1及び第2Victimにおいては、CCA期間及び給電期間がそれぞれ一致しない(つまり、CCA期間及び給電期間の不一致が生じる)場合がある。
ここで、WPT10が実施するCCAにおけるCCA期間は、Victim信号を確実に検出するために必要十分な時間を確保する必要がある。このため、CCA期間は、想定するVictimの種類によって変わる。
また、給電期間は、Victimにおいて実行される無線通信において当該Victimがチャネルを占有する時間と同程度となることが好ましい。このため、給電期間についても、想定するVictimの種類によって変わる。
前述した第2実施形態等で説明したようにCCA期間及び給電期間を制御することは可能であるが、複数のVictim(第1及び第2Victim)に対するCCA期間及び給電期間の制御を同時に行う場合には、当該CCA期間及び給電期間の各々の違いを考慮する必要がある。
以下、図22のフローチャートを参照して、本実施形態に係るWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、図12に示す処理と異なる部分について主に説明し、当該図12と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、前述した図12に示すステップS11~S15の処理に相当するステップS71~S75の処理が実行される。
なお、本実施形態においては上記したように第1及び第2Victimが存在している場合を想定しているが、CCA閾値(マスクパターン)は、前述した第1実施形態において説明したようにVictim(Victim端末の送信電力等)に応じて異なる。このため、ステップS72の処理はVictim毎に実行され、第1Victim用のCCA閾値及び第2Victim用のCCA閾値がそれぞれ算出される。
また、ステップS74及びS75の処理についても同様に、Victim毎に実行される。すなわち、ステップS74及びS75の処理が実行された場合には、上記した第1CCA期間及び第1給電期間が算出されるとともに、第2CCA期間及び第2給電期間が算出される。
なお、図22においては履歴情報に基づいて第1及び第2Victimの各々に対するCCA期間及び給電期間が算出される場合が示されているが、本実施形態においては当該CCA期間及び給電期間を得ることができればよい。すなわち、第1及び第2Victimの各々に対するCCA期間及び給電期間は、例えば予め定められたものであってもよいし、他の情報から算出さるものであってもよい。
次に、制御部104は、ステップS74及びS75において算出された第1CCA期間及び第1給電期間と第2CCA期間及び第2給電期間とに基づいて、WPT10において実施されるCCAにおけるCCA期間及び給電期間(以下、WPT10におけるCCA期間及び給電期間と表記)を決定する(ステップS76)。この場合、制御部104は、例えば第1CCA期間及び第1給電期間に基づいてCCA及び給電を順次実施する場合と、第2CCA期間及び第2給電期間に基づいてCCA及び給電を順次実施する場合とを比較し、両者の給電時間が一致する時間帯に給電が実施されるようにWPT10におけるCCA期間及び給電期間を決定する。なお、ステップS76において決定されるWPT10におけるCCA期間及び給電期間の具体例については後述する。
ステップS76の処理が実行されると、図12に示すステップS16~S19の処理に相当するステップS77~S80の処理が実行される。
なお、ステップS77においては、ステップS76において決定されたWPT10におけるCCA期間の間にCCAが実施される。また、このステップS77において実施されるCCAにおいては、第1Victimにおいて送信される無線信号(以下、第1Victim信号と表記)及び第2Victimにおいて送信される無線信号(以下、第2Victim信号と表記)の両方を検出可能であるものとする。換言すれば、ステップS77においては、第1Victim向けのCCA及び第2Victim向けのCCAが同時並行に実施されている。
また、ステップS78においては、CCAにおいて検出された第1Victim信号の電力レベル(以下、第1Victim信号電力と表記)及び第2Victim信号の電力レベル(以下、第2Victim信号電力と表記)のうちの少なくとも一方がCCA閾値以上であるか否かが判定される。
なお、ステップS78において用いられるCCA閾値(マスクパターン)は、例えば上記した第1Victim用のCCA閾値及び第2Victim用のCCA閾値のうち、値が厳しいCCA閾値を用いることができる。なお、第1Victimが用いる周波数帯域と第2Victimが用いる周波数帯域とが異なる場合には、当該周波数帯域(つまり、検出されるVictim信号)に応じて別々のCCA閾値を用いるようにしてもよい。
ステップS78において第1及び第2Victim信号電力のうちの少なくとも一方がCCA閾値以上であると判定された場合、当該CCAの結果が保持部103に保持された上で、ステップS73に戻って処理が繰り返される。なお、この場合には、ステップS76において決定されたCCA期間を維持したままでステップS77の処理が再度実行されてもよい。あるいは、第3実施形態で述べたように、送信電力やアンテナ指向性を変更してもよい。
また、ステップS79においては、ステップS76において決定されたWPT10における給電期間の間に給電が実施される。
また、ステップS80において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS77に戻って処理が繰り返される。なお、この場合には、ステップS73に戻って処理が繰り返されてもよい。
ここで、図23を参照して、上記したWPT10におけるCCA期間及び給電期間について具体的に説明する。
図23においては第1Victimと第2Victimとに対して独立に算出されたCCA期間(第1CCA期間、第2CCA期間)及び給電期間(第1給電期間、第2給電期間)が示されているが、本実施形態においては、第1給電期間と第2給電期間とで一致する時間帯がWPT10における給電期間として決定されている。
なお、この場合のWPT10におけるCCA期間は、上記したように決定されたWPT10における給電期間以外の時間帯に割り当てられる。
上記したように本実施形態においては、複数のVictim(第1及び第2Victim)におけるVictim信号の有無を検出するCCAが実施される。なお、WPT10におけるCCA期間及び給電期間は、は、第1Victimに対して算出されたCCA期間及び給電期間(第1CCA期間及び第1給電期間)と第2Victimに対して算出されたCCA期間及び給電期間(第2CCA期間及び第2給電期間)とに基づいて決定される。
本実施形態においては、このような構成により、第1及び第2Victimのいずれに対してもCCA時間を確保しながら給電を実施することが可能となるため、複数の異なるVictimが存在する場合であってもWPT10との共存を図ることができる。
なお、本実施形態において、WPT10における第1Victim信号の検出及び第2Victim信号の検出は、別々の信号検出機構によって実現されてもよいし、同一の信号検出機構によって実現されてもよい。
また、同一の信号検出機構によって実現される場合には、例えば第1Victimが用いる周波数帯域(信号帯域)と第2Victimが用いる周波数帯域(信号帯域)の両方を含む広い帯域で無線信号を受信し、当該無線信号を周波数解析することによって、当該無線信号に第1Victim信号あるいは第2Victim信号が含まれるかを判別することが可能である。また、第1Victim信号及び第2Victim信号は、受信した無線信号に対して復調処理を実行することによって判別されてもよい。更に、予め第1Victim及び第2Victimの種類(無線通信方式等)が判明している場合、第1Victim信号及び第2Victim信号は、例えば受信した無線信号の電力レベルの大小や当該無線信号における電力レベルの高い区間の継続時間等から判別されてもよい。
なお、本実施形態に係るWPT10は、例えばCCAと給電とを切り替える度にCCA期間及び給電期間を決定する構成としてもよい。
以下、図24のフローチャートを参照して、上記したCCAと給電とを切り替える度にCCA期間及び給電期間を決定する場合におけるWPT10の処理手順の一例について説明する。
ここでは、上記した図22と異なる部分について主に説明し、当該図22と同様の部分についてはその詳しい説明を省略する。
まず、図22に示すステップS71~S75の処理に相当するステップS91~S95の処理が実行される。
次に、制御部104は、ステップS94において算出された第1CCA期間と第2CCA期間とを比較し、当該第2CCA期間よりも第1CCA期間の方が長いか否かを判定する(ステップS96)。
第2CCA期間よりも第1CCA期間の方が長いと判定された場合(ステップS96のYES)、制御部104は、当該第1CCA期間を、WPT10におけるCCA期間として決定する。この場合、検出部101は、第1CCA期間の間にCCAを実施する(ステップS97)。
一方、第2CCA期間よりも第1CCA期間の方が長くない(つまり、第2CCA期間よりも第1CCA期間の方が短い)と判定された場合(ステップS96のNO)、制御部104は、当該第2CCA期間を、WPT10におけるCCA期間として決定する。この場合、検出部101は、第2CCA期間の間にCCAを実施する(ステップS98)。
ステップS97またはS98の処理が実行されると、図22に示すステップS78の処理に相当するステップS99の処理が実行される。
ステップS99において第1Victim信号電力及び第2Victim信号電力のうちの少なくとも一方がCCA閾値以上であると判定された場合には、ステップS93に戻って処理が繰り返される。なお、この場合には、制御部104によって決定されたCCA期間を維持したままでステップS97またはS98の処理が再度実行されてもよい。
ステップS99において第1及び第2Victim信号電力の両方がCCA閾値以上でないと判定された場合、制御部104は、ステップS95において算出された第1給電期間と第2給電期間とを比較し、当該第2給電期間よりも第1給電期間の方が短いか否かを判定する(ステップS100)。
第2給電期間よりも第1給電期間の方が短いと判定された場合(ステップS96のYES)、制御部104は、当該第1給電期間を、WPT10における給電期間として決定する。この場合、電力伝送部102は、第1給電期間の間に給電を実施する(ステップS101)。
一方、第2給電期間よりも第1給電期間の方が短くない(つまり、第2給電期間よりも第1給電期間の方が長い)と判定された場合(ステップS100のNO)、制御部104は、当該第2給電期間を、WPT10における給電期間として決定する。この場合、検出部101は、第2給電期間の間に給電を実施する(ステップS102)。
ステップS101またはS102の処理が実行されると、図22に示すステップS80の処理に相当するステップS103の処理が実行される。なお、ステップS103において給電を終了しないと判定された場合には、ステップS96に戻って処理が繰り返される。
上記した図24に示す処理によれば、CCAに関しては、第1CCA期間と第2CCA期間とを比較し、より期間が長い方を採用してCCAを実施する。一方、給電に関しては、第1給電期間と第2給電期間とを比較し、より期間が短い方を採用して給電を実施する。
上記したような制御を実行することによって、複数のVictimに対してCCA期間を確実に確保しつつ、給電によって複数のVictimに対して影響を与える可能性を低減することが可能となる。
なお、本実施形態においては第1及び第2Victimに共通してCCAを実施するものとして説明したが、例えば第1Victim向けのCCA及び第2Victim向けのCCAを異なる時間帯に実施する構成としてもよい。
具体的には、例えば第1給電期間(第1Victim向けに算出された給電期間)と比べて第2給電期間(第2Victim向けに算出された給電期間)が非常に長い場合、当該第2給電期間の範囲内で、第1Victim向けのCCAを実施するようにしてもよい。
ここで、図25を参照して、上記した第2給電期間の範囲内で第1Victim向けのCCAを実施する場合について具体的に説明する。
ここでは、第1Victimに対するCCA期間及び給電期間として、図25において「CCA1」と表記されている第1CCA期間及び「給電1」と表記されている第1給電期間が算出されているものとする。
また、第2Victimに対するCCA期間及び給電期間として、図25において「CCA2」と表記されている第2CCA期間及び「給電2」と表記されている第2給電期間が算出されているものとする。
この場合、まず、WPT10(検出部101)は、例えば期間がより長い第2CCA期間で第2Victim向けのCCAを実施する。なお、本実施形態において、第2Victim向けのCCAとは、上記した第2Victim用のCCA閾値を用いて第2Victim信号を検出することをいう。
第2Victim向けのCCAにおいて第2Victim信号が検出されない場合(つまり、給電可能と判定された場合)、第2給電期間において、第1給電期間での給電及び第1CCA期間での第1Victim向けのCCAが繰り返し実施される。第1Victim向けのCCAとは、上記した第1Victim用のCCA閾値を用いて第1Victim信号を検出することをいう。
なお、図25に示す例では、給電と第1Victim向けのCCAとが繰り返し実施されることが示されているが、例えば繰り返し実施される第1Victim向けのCCAの結果に基づいて、後に実施されるCCAにおける第1CCA期間及び当該CCAの後に実施される第1給電期間を制御(変更)してもよい。
上記した給電と第1Victim向けのCCAが繰り返し実行されることによって第2給電期間が経過した場合、再度、第2CCA期間で第2Victim向けのCCAが実施される。
なお、上記した第2Victim向けのCCAにおいて第2Victim信号が検出された場合には、当該第2Victim向けのCCAが再度実施される。また、第1Victim向けのCCAにおいて第1Victim信号が検出された場合には、当該第1Victim向けのCCAが再度実施される。
また、無線システムによっては、例えばCCAによってアクセス権を取得してから実際に無線信号を送信するための時間的制約が厳しい場合がある。複数のVictimに対するCCA期間及び給電期間をWPT10が制御する場合、給電前のCCAは時間的制約の厳しいVictimに対して実施される必要がある。
このため、例えば第2Victimよりも第1Victimの方が上記した時間的制約が厳しい場合には、例えば図26に示すように、図25において第2給電期間の間に実施される給電が実施される時間帯と第1Victim向けのCCAが実施される時間帯とを入れ替えるようにしてもよい。これによれば、給電前に実施されるCCAが常に第1Victim向けのCCAとなるようにすることができる。
また、例えば図25に示す例では、第1Victimに対するCCA期間及び給電期間は第2Victimに対するCCA期間及び給電期間と比べて短いが、より期間の短い第1Victimに合わせて制御が実行される構成であってもよい。
このような構成の場合には、図27に示すように、WPT10は、第1CCA期間でCCAを実施する。この場合におけるCCAは、第1及び第2Victimに共通して実施されるCCAである。すなわち、図27において「CCA1」及び「CCA2」が併記されている箇所は、第1CCA期間の間に第1Victim向けのCCA及び第2Victim向けのCCAが同時並行で実施されることを表している。
このようなCCAにおいて第1Victim信号及び第2Victim信号のいずれも検出されない場合、オーダの短い第1給電時間で給電が実施される。この給電が実施された後、再度、第1CCA期間でCCA(第1Victim向けのCCA及び第2Victim向けのCCA)が実施される。
なお、第1CCA期間は第2CCA期間よりも短いため、第2Victimに対しては十分な精度でCCAを実施することができない(つまり、第2Victim信号を検出することができない)可能性がある。
そこで、例えば第1CCA期間でのCCAは粗い信号検出にとどめ、当該CCAにおいて任意の信号が検出された場合に、第2CCA期間でCCA(第2Victim向けのCCA)を実施するようにしてもよい。このようにCCAが実施される期間を第2CCA期間に拡張して第2Victim向けのCCA(より詳細なCCA)を実施することによって、確実に第2Victim信号の有無を検出することができる。ここで、「詳細なCCA」とは、例えば長時間かけてCCAを実施することによって雑音等による検出誤差を低減する、CCA閾値を変更する、または信号復調等の処理により、Victim信号の有無をより正確に検出することを意味する。
なお、第2Victim向けのCCAにおいて第2Victim信号が検出されない場合には給電が実施される。一方、第2Victim向けのCCAにおいて第2Victim信号が検出された場合には、第2Victim向けのCCAが再度実施されればよい。
本実施形態に係るWPT10は、上述した各実施形態において説明した構成(制御)等と組み合わせて実現されてもよい。具体的には、例えば所定のタイミングにおいては第1CCA期間と第2CCA期間とが同程度であるが、別のタイミングでは当該第1CCA期間と当該第2CCA期間とが大きく異なるといった状況があり得る。
このような場合においては、例えば前述した第2実施形態において説明したCCA期間及び給電期間を変更可能な構成と組み合わせることによって、例えば第1CCA期間と第2CCA期間とが同程度の場合は図22~図24等で説明した制御が実行され、第1CCA期間と第2CCA期間とが大きく異なる場合は図25~図27等で説明した制御が実行される構成としてもよい。ここでは、CCA期間を用いる場合について説明したが、例えば給電期間が用いられてもよいし、CCA期間及び給電期間の両方が用いられてもよい。このような構成によれば、各タイミングにおける状況に応じた制御を実現することが可能となる。
なお、本実施形態においては、第1及び第2Victimの2つのVictimが存在する場合について主に説明したが、Victimの数は3以上であってもよい。
以上述べた少なくとも1つの実施形態においては、他の無線システムに対する干渉を回避することが可能な電子装置及び方法を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。