以下、図1~図21に基づいて、第1の実施の形態のアシスト装置1の全体構造について説明する。アシスト装置1は、例えば、対象者が荷物を持ち上げる際に腰部に対する大腿部の回動をアシストしたり、対象者が歩行する際に腰部に対する大腿部の回動をアシストしたりする装置である。なお、各図中のX軸、Y軸、Z軸は、互いに直交しており、アシスト装置を装着した対象者から見て、X軸方向は前方向、Y軸方向は左方向、Z軸方向は上方向、に対応している。
●[第1の実施の形態(図1~図34)]
●[アシスト装置1の全体構造(図1~図21)]
図1に、第1の実施の形態のアシスト装置1の全体の外観を示す。アシスト装置1は、身体装着具2(図2参照)と、右アクチュエータユニット4R(図3参照)及び左アクチュエータユニット4L(図3参照)とを有している。身体装着具2は、対象者のアシスト対象身体部(本実施の形態の例では、大腿部)の周囲を含む身体に装着されるものである。右アクチュエータユニット4R及び左アクチュエータユニット4Lは、身体装着具2とアシスト対象身体部に装着されて、アシスト対象身体部の動作を支援(アシスト)する。以下、身体装着具2と右アクチュエータユニット4R及び左アクチュエータユニット4Lを順に説明する。
●[身体装着具2の外観(図2)]
図2に示すように、身体装着具2は、対象者の腰周りに装着される腰サポート部10と、対象者の肩周り及び胸周りに装着されるジャケット部20と、腰サポート部10とジャケット部20とを接続するフレーム部30と、フレーム部30に取り付けられたバックパック部37と、を有している。フレーム部30は、対象者の背中及び腰周りに配置される。
腰サポート部10は、対象者の右半身の腰周りに装着される右腰装着部11Rと、対象者の左半身の腰周りに装着される左腰装着部11Lとを有している。また図2に示すように、右腰装着部11Rと、左腰装着部11Lは、対象者への着脱を容易にするために、長さを調整可能な右腰締めベルト13RAに設けられた腰ベルト保持部材13RB(腰バックル)と、長さを調整可能な左腰締めベルト13LAに設けられた腰ベルト保持部材13LB(腰バックル)と、を有している。また図2に示すように、腰サポート部10には、対象者に装着された場合に対象者の股関節の周囲において対象者の左右方向に延びるように仮想回動軸線15Yが設定されている。仮想回動軸線15Yと右腰装着部11Rとの交差位置には、仮想回動軸線15Yに沿って右方向に突出した回動軸部15Rが、右腰装着部11Rの芯部12Bに固定されている(図21参照)。同様に、仮想回動軸線15Yと左腰装着部11Lとの交差位置には、仮想回動軸線15Yに沿って左方向に突出した回動軸部15Lが、左腰装着部11Lの芯部に固定されている。なお、腰サポート部10の詳細については後述する。なお、仮想回動軸線15Yは、対象者の股関節から第5腰椎の間くらいの位置に設定され、腰サポート部10によって一定の範囲に保たれる。
ジャケット部20は、対象者の右半身の胸周りに装着される右胸装着部21Rと、対象者の左半身の胸周りに装着される左胸装着部21Lとを有している。右胸装着部21Rは、左胸装着部21Lと、例えばファスナ21Fによって接続されており、対象者へのジャケット部20の着脱を容易にしている。また、右胸装着部21Rは、フレーム部30に固定されたバックパック部37の背当て部37Cに接続される右肩ベルト24Rと、背当て部37Cに接続される右腋ベルト25Rと、を有している。また、左胸装着部21Lは、フレーム部30に固定されたバックパック部37の背当て部37Cに接続される左肩ベルト24Lと、背当て部37Cに接続される左腋ベルト25L(図12参照)と、を有している。なお、ジャケット部20の詳細については後述する。
バックパック部37は、フレーム部30の上端部に取り付けられ、ジャケット部20の右肩ベルト24R、右腋ベルト25R、左肩ベルト24L、左腋ベルト25L(図12参照)、が接続されている。またバックパック部37には、CPUを備えた制御装置や電源ユニットや通信手段等が収容されている。なお、バックパック部37の詳細については後述する。
フレーム部30は、メインフレーム31と、右サブフレーム32Rと、左サブフレーム32L(図4参照)と、右接続部34Rと、左接続部34Lと、ボックス33RB、33LB等を有している。図4に示すように、右サブフレーム32Rは、メインフレーム31に対して回動可能に接続され、右接続部34Rは、右サブフレーム32Rに対して回動可能に接続されている。同様に、図4に示すように、左サブフレーム32Lは、メインフレーム31に対して回動可能に接続され、左接続部34Lは、左サブフレーム32Lに対して回動可能に接続されている。また右接続部34Rの軸孔36RC(図4、図5参照)には、回動軸部15R(図2、図7参照)が挿通され、左接続部34Lの軸孔36LC(図4、図5参照)には、回動軸部15L(図2、図7参照)が挿通されている。これにより、腰サポート部10に対して、フレーム部30及びジャケット部20(及びバックパック部37)は、仮想回動軸線15Y回りに回動可能とされている(図22、図23参照)。また、ボックス33RB、33LBには、例えば、アシスト装置1の電源のON/OFFやアシスト倍率等の動作状態の指示を行うための複数の入力手段33RSを有している。なお、フレーム部30の詳細については後述する。
●[右アクチュエータユニット4R、左アクチュエータユニット4Lの外観(図3)]
図3は、図2に示すボックス33RBの下方に設けられた右モータ接続部35R(図5参照)に接続される右アクチュエータユニット4R、及びボックス33LBの下方に設けられた左モータ接続部35L(図5参照)に接続される左アクチュエータユニット4L、の外観を示している。なお、左アクチュエータユニット4Lは、右アクチュエータユニット4Rを左右対称としたものであるので、以降の説明では、左アクチュエータユニット4Lについては説明を省略する。
図3に示すように、右アクチュエータユニット4Rは、トルク発生部40Rと、トルク伝達部である出力リンク50Rと、を有している。トルク発生部40Rは、アクチュエータベース部41Rと、カバー41RBと、を有している。なお、カバー41RBに収容されている各部材については後述する。図3に示すように、右アクチュエータユニット4Rのリンク機構である出力リンク50Rは、アシスト対象身体部(この場合、大腿部)の関節(この場合、股関節)回りに回動してアシスト対象身体部に装着される。なお、出力リンク50R(50L)を介してアシスト対象身体部の回動をアシストするアシストトルクは、図19に示すように、トルク発生部40R内において、出力軸47RAを有する電動モータ47R(アクチュエータに相当)にて発生される。
出力リンク50Rは、アシストアーム51R(第1リンクに相当)と、第2リンク52Rと、第3リンク53Rと、大腿装着部54R(身体保持部に相当)と、を有している。アシストアーム51Rは、トルク発生部40R内の電動モータによって発生したアシストトルクと、対象者の大腿部の動作による対象者トルクと、が合成された合成トルクによって、回動軸線40RY回りに回動する。アシストアーム51Rの先端には第2リンク52Rの一方端が回動軸線51RJ回りに回動可能に接続され、第2リンク52Rの他方端には第3リンク53Rの一方端が回動軸線52RJ回りに回動可能に接続されている。そして第3リンク53Rの他方端には、第3ジョイント部53RS(この場合、球面ジョイント)を介して大腿装着部54Rが接続されている。
●[フレーム部30の構造の詳細(図4~図6)]
次に、図4~図6を用いて、フレーム部30の構造の詳細について説明する。メインフレーム31は、逆U字状に形成されており、対象者の背中側における右腰部に配置される接続部31R(右回動軸部に相当)と、対象者の背中側における左腰部に配置される接続部31L(左回動軸部に相当)と、を有している。右サブフレーム32Rと左サブフレーム32Lは、一部が曲げられた棒状の形状を有している。図4及び図5に示すように、メインフレーム31の一方端の接続部31Rには、右サブフレーム32Rの一方端が、回動軸線31RJ回りに回動可能に接続されている。またメインフレーム31の他方端の接続部31Lには、左サブフレーム32Lの一方端が、回動軸線31LJ回りに回動可能に接続されている。また右サブフレーム32Rの他方端の接続部33R(右サブ回動軸部に相当)には、右接続部34Rの右接続軸35RZが、回動軸線33RJ回りに回動可能に接続されている。また左サブフレーム32Lの他方端の接続部33L(左サブ回動軸部に相当)には、左接続部34Lの左接続軸35LZが、回動軸線33LJ回りに回動可能に接続されている。
図5に示すように、右接続軸35RZには、右モータ接続部35Rと右腰接続部36Rが固定されている。右モータ接続部35Rの取付孔35RCには、図3に示す右アクチュエータユニット4Rの上端の取付孔41RSが同軸に配置され、右アクチュエータユニット4Rが回動軸線35RJ回り(図3では回動軸線41RX回り)に回動可能に取り付けられる。同様に、左接続軸35LZには、左モータ接続部35Lと左腰接続部36Lが固定されている。左モータ接続部35Lの取付孔35LCには、図3に示す左アクチュエータユニット4Lの上端の取付孔41LSが同軸に配置され、左アクチュエータユニット4Lが回動軸線35LJ回り(図3では回動軸線41LX回り)に回動可能に取り付けられる。右腰接続部36Rの軸孔36RCには、回動軸部15R(図2、図21参照)が挿通される。同様に、左腰接続部36Lの軸孔36LCには、回動軸部15L(図2参照)が挿通される。従って、接続部33Rには、接続部33Rの回動軸線33RJ回りに回動する右接続部34Rを介して右アクチュエータユニット4Rが接続される。また、接続部33Lには、接続部33Lの回動軸線33LJ回りに回動する左接続部34Lを介して左アクチュエータユニット4Lが接続される。
なお、図21に示すように、回動軸部15Rは、パッド部12A、芯部12B、表皮部12Cの3層を有する右腰装着部11Rの芯部12Bに固定されている。回動軸部15Rは、軸受15RBを介して右腰接続部36Rの軸孔36RCに挿通され、回動軸部15Rの先端には抜け止めリング15RCが取り付けられている。従って、図4及び図5に示す軸孔36RCの軸線36RJと、軸孔36LCの軸線36LJは、仮想回動軸線15Yと重ねられる。また、右腰接続部36Rとアクチュエータベース部41Rとの間には、クッション36RDが設けられている。対象者へのアシストトルクを大きくしたり、速く変化させる時は、回動軸線35RJ、35LJで右アクチュエータユニット4R、左アクチュエータユニット4Lが回動しないように、固定してもよい。このとき、右アクチュエータユニット4R、左アクチュエータユニット4Lが固定されているので、クッション36RDは、設けなくても良い。
以上の構成を有することで、図2において、フレーム部30は、腰サポート部10に対して、仮想回動軸線15Y回りに回動可能である(図22、図23参照)。また、図6に示すように、右サブフレーム32Rが回動軸線31RJ回りに回動可能であり、左サブフレーム32Lが回動軸線31LJ回りに回動可能であるので、右接続部34Rと左接続部34Lの左右方向の間隔W30を自由に調整することができる。従って、対象者の腰幅に合わせて間隔W30を調整することが可能であり、対象者の身体へより適切に密着させてアシストトルクを効率良く伝達できる。さらに、右接続部34Rが回動軸線33RJ回りに回動可能であり、左接続部34Lが回動軸線33LJ回りに回動可能であるので、間隔W30を変化させても、右アクチュエータユニットのアシストアームの揺動方向、及び左アクチュエータユニットのアシストアームの揺動方向を、所望する方向へと適切に設定することができる。また、図6に示すように、メインフレーム31が、回動軸線31RJ回りに回動可能であり、回動軸線31LJ回りに回動可能であるので、対象者が、上半身をひねって後ろを見るような動作を行っても、メインフレーム31、右サブフレーム32R、左サブフレーム32L、のそれぞれを、対象者の動作を妨げないように適切に回動させることができる。また、メインフレーム31の回動軸線31RJと回動軸線31LJの間の空間(図5参照)は、対象者の背中の曲げ動作の妨げにならないように広がっている。そしてメインフレーム31において当該空間の左右にほぼ平行となるように配置されたフレームは、アシストトルクを効率良く伝達するため対象者の背中の中心部の左右からアクチュエータユニットを支持する。また、右サブフレーム32R、左サブフレーム32Lは、対象者の肘などの動きの妨げにならないように(接触しないように)背中から腰部にかけて(凹形状に)湾曲している。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、腰部を中心として、背中部と脚部にアシストトルクを効率良く伝える(ロスを少なくする)必要があり、このようなフレーム部30の構造は、アシストトルクを効率的に伝えることができる。
●[腰サポート部10の構造の詳細(図7~図10)]
次に、図7~図10を用いて、腰サポート部10の構造の詳細について説明する。図8の展開図に示すように、腰サポート部10は、帯状であり、対象者の右腰部に装着される右腰装着部11Rと、対象者の左腰部に装着される左腰装着部11Lと、に分割されており、複数のベルトを有している。また、上述したように、右腰装着部11Rには回動軸部15Rが取り付けられ、左腰装着部11Lには回動軸部15Lが取り付けられている。
右腰装着部11R、左腰装着部11Lは、例えば図21に示すように、対象者の腰周りに巻回される所定厚さのパッド部12Aと、パッド部12Aの外周に配置された芯部12Bと、芯部12Bの外周に配置された表皮部12Cと、にて3層で構成されている。パッド部12Aは、例えば弾性部材で構成され、芯部12Bは、例えば樹脂等で構成され、表皮部12Cは、例えば布等で構成されている。右腰装着部11Rにおける対象者の背面側となる位置は、切欠部11RCが形成されて、右腰部11RAと右臀部11RBとに分割されている。左腰装着部11Lにおける対象者の背面側となる位置は、切欠部11LCが形成されて、左腰部11LAと左臀部11LBとに分割されている。
腰サポート部10が有している複数のベルトには、背面腰ベルト16A、臀部上ベルト16B、臀部下ベルト16C、右骨盤上ベルト17RA、右骨盤下ベルト17RB、左骨盤上ベルト17LA、左骨盤下ベルト17LB、右腰締めベルト13RA、左腰締めベルト13LA、がある。腰サポート部10に取り付けられた、これらの複数のベルトのうち、少なくとも2本のベルトは、対象者の右腰部、または左腰部、または臀部、の近傍において、対象者の腰回り周回方向に沿った腰サポート部10の幅(図8におけるY軸方向の長さ)を伸縮可能である。
背面腰ベルト16Aは、例えば伸縮性を有する弾性体のベルトであり、右腰装着部11Rの右腰部11RAと、左腰装着部11Lの左腰部11LAと、の間隔(距離)を調整可能となるように、右腰装着部11Rの右腰部11RAと、左腰装着部11Lの左腰部11LAと、に接続されている。臀部上ベルト16B及び臀部下ベルト16Cは、例えば伸縮性を有する弾性体のベルトであり、右腰装着部11Rの右臀部11RBと、左腰装着部11Lの左臀部11LBと、の間隔(距離)を調整可能となるように、右腰装着部11Rの右臀部11RBと、左腰装着部11Lの左臀部11LBと、に接続されている。また図10に示すように、臀部上ベルト16Bは、対象者の臀部の上部に当たる位置に配置され、臀部下ベルト16Cは、対象者の臀部の下部に当たるように配置されている。また図10に示すように、背面腰ベルト16Aは、対象者の臀部よりも上側の腰部であって、臀部上ベルト16Bよりも上側の腰部に当たる位置に配置されている。この背面腰ベルト16A、臀部上ベルト16B、臀部下ベルト16Cによって、腰サポート部10は、対象者の背面側の臀部周りに(臀部の上部、中部、下部を挟み込み)、ズレないように密着される。
右骨盤上ベルト17RAは、例えば伸縮しないベルトであり、図9に示すように、対象者の右骨盤上端ARよりも上側に配置され、対象者の腰回り周回方向に沿った右腰装着部11Rの幅を伸縮可能となるように、右腰装着部11Rに取り付けられている。右骨盤下ベルト17RBは、例えば伸縮しないベルトであり、図9に示すように、対象者の右骨盤上端ARよりも下側に配置され、対象者の腰回り周回方向に沿った右腰装着部11Rの幅を伸縮可能となるように、右腰装着部11Rに取り付けられている。また右骨盤上ベルト17RAの先端には右上ベルト保持部材17RC(右上コキ)が接続され、右骨盤下ベルト17RBの先端には右下ベルト保持部材17RD(右下コキ)が接続されており、右上ベルト保持部材17RC(右上コキ)と右下ベルト保持部材17RD(右下コキ)には、腰ベルト保持部材13RB(腰バックル)に接続された右腰締めベルト13RAが挿通されている。対象者は、右上ベルト保持部材17RCと右下ベルト保持部材17RDから延びている右腰締めベルト13RAの引張部13RAHを引っ張ることで、右骨盤上ベルト17RA、右骨盤下ベルト17RB、及び背面腰ベルト16A、臀部上ベルト16B、臀部下ベルト16C、そして腰サポート部10を、対象者の身体に密着させることができる。また、右骨盤上端ARの上下部を挟み込むため、ズレにくくなる。
左骨盤上ベルト17LAは、例えば伸縮しないベルトであり、対象者の左骨盤上端よりも上側に配置され、対象者の腰回り周回方向に沿った左腰装着部11Lの幅を伸縮可能となるように、左腰装着部11Lに取り付けられている。左骨盤下ベルト17LBは、例えば伸縮しないベルトであり、対象者の左骨盤上端よりも下側に配置され、対象者の腰回り周回方向に沿った左腰装着部11Lの幅を伸縮可能となるように、左腰装着部11Lに取り付けられている。また左骨盤上ベルト17LAの先端には左上ベルト保持部材17LC(左上コキ)が接続され、左骨盤下ベルト17LBの先端には左下ベルト保持部材17LD(左下コキ)が接続されており、左上ベルト保持部材17LC(左上コキ)と左下ベルト保持部材17LD(左下コキ)には、腰ベルト保持部材13LB(腰バックル)に接続された左腰締めベルト13LAが挿通されている。対象者は、左上ベルト保持部材17LCと左下ベルト保持部材17LDから延びている左腰締めベルト13LAの引張部13LAHを引っ張ることで、左骨盤上ベルト17LA、左骨盤下ベルト17LB、及び背面腰ベルト16A、臀部上ベルト16B、臀部下ベルト16C、そして腰サポート部10を、対象者の身体に密着させることができる。また、左骨盤上端の上下部を挟み込むため、ズレにくくなる。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、腰部を中心として、背中部と脚部にアシストトルクを効率良く伝える(ロスを少なくする)必要があり、このような腰サポート部10の構造は、アシストトルクを効率的に伝えることができる。
●[バックパック部37の構造の詳細(図11、図12)]
次に図11及び図12を用いて、バックパック部37の構造の詳細について説明する。図11に示すように、バックパック部37は、フレーム接続部37A、収容部37B、背当て部37C、スライドレール37D(スライド機構に相当)、クッション37G等を有している。図2に示すように、フレーム接続部37Aは、メインフレーム31の上端部が通されて、フレーム部30の上端部に固定されている。なお、収容部37Bには、制御装置や電源ユニットや通信手段等が収容されている。
図11に示すように、フレーム部30に固定されたフレーム接続部37A及び収容部37Bにおける対象者の背中と対向する面には、スライドレール37Dが上下方向に沿って設けられている。スライドレール37Dには、当該スライドレール37Dに沿って上下方向にスライド可能となるように背当て部37Cが設けられている。つまり、背当て部37Cは、フレーム部30に対して背当て部37Cを上下にスライド可能に支持するスライド機構(スライドレール37D)を介してフレーム部30に接続されている。また、背当て部37Cにおける対象者の背中と対向する面には、クッション37Gが設けられている。なお、クッション37Gは省略されていてもよい。
図11に示すように、背当て部37Cには、対象者の背中側における右肩周りとなる位置には、ベルト接続部37ERが設けられており、左肩周りとなる位置には、ベルト接続部37ELが設けられている。また、対象者の背中側における右腋周りとなる位置には、ベルト接続部37FRが設けられており、左腋周りとなる位置には、ベルト接続部37FLが設けられている。
図12に示すように、ジャケット部20は、対象者の右肩周り及び右胸周りに装着される右胸装着部21Rと、対象者の左肩周り及び左胸周りに装着される左胸装着部21Lと、に分割されており、ファスナ21Fにて右胸装着部21Rと左胸装着部21Lとが接続及び分離可能とされている。そして、右胸装着部21Rにおける対象者の右肩周りとなる位置から延ばされた右肩ベルト24Rが、ベルト接続部37ERに接続されている。また、右胸装着部21Rにおける対象者の右腋周りとなる位置から延ばされた右腋ベルト25Rが、ベルト接続部37FRに接続されている。また、左胸装着部21Lにおける対象者の左肩周りとなる位置から延ばされた左肩ベルト24Lが、ベルト接続部37ELに接続されている。また、左胸装着部21Lにおける対象者の左腋周りとなる位置から延ばされた左腋ベルト25Lが、ベルト接続部37FLに接続されている。
以上の構成により、ジャケット部20が接続された背当て部37Cが、スライド機構(スライドレール)を介してフレーム部30に対して上下にスライド可能である。従って、対象者の体格(身長)に合わせて、フレーム部30に対するジャケット部20の上下方向の位置が自動的に調整されるので、ジャケット部20を、対象者の身体へより適切に密着させてアシストトルクを効率良く伝達できる。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、腰部を中心として、背中部と脚部にアシストトルクを効率良く伝える(ロスを少なくする)必要があり、このようなバックパック部37の構造は、アシストトルクを効率的に伝えることができる。
●[ジャケット部20の構造の詳細(図12~図15)]
次に図12~図15を用いて、ジャケット部20の構造の詳細について説明する。図13の展開図に示すように、対象者の肩周り及び胸周りに装着されるジャケット部20は、右胸装着部21Rと、左胸装着部21Lと、右腋装着部21RWと、左腋装着部21LWと、に分割されており、複数のベルトを有している。なお、右胸装着部21Rと右腋装着部21RWは右肩部で連結されており、左胸装着部21Lと左腋装着部21LWは左肩部で連結されている。右胸装着部21Rは対象者の右肩周り及び右胸周りに装着され、左胸装着部21Lは対象者の左肩周り及び左胸周りに装着され、右腋装着部21RWは対象者の右背中周り及び右腋周りに装着され、左腋装着部21LWは対象者の左背中周り及び左腋周りに装着される。なお、右腋装着部21RWと左腋装着部21LWは、分割されてベルトで連結される構造でなく、分割されることなく一体的に接続されている構造であっても良い。また、右胸装着部21Rと、左胸装着部21Lと、右腋装着部21RWと、左腋装着部21LWと、が分割されておらず、一体的に接続されている構造であっても良い。
右胸装着部21R、左胸装着部21L、右腋装着部21RW、左腋装着部21LWは、例えば、対象者の身体に対向する側には所定厚さのパッド部(例えば弾性部材)の層を有し、パッド部の外周には表皮部(例えば布)の層を有し、パッド部と表皮部の2層で構成されている。また、図13に示すように、右腋装着部21RWと左腋装着部21LWは、長さを調節可能とされたベルト22A、22Bにて接続されている。
図13に示すように、右胸装着部21Rには、右肩ベルト24R、23R、ベルト26Rが取り付けられている。右肩ベルト24Rの一方端は、図12に示すように、長さ調節可能とされて背当て部37Cのベルト接続部37ERに接続されている。右肩ベルト24Rの他方端は、ベルト通し24RTに通されてバックル24RBが接続されている。右肩ベルト23Rの一方端は、バックル24RBと接続されるバックル23RBが接続され、右肩ベルト23Rの他方端には右肩ベルト保持部材23RK(右肩コキ)が接続されている。また、ベルト26Rの一方端は右胸装着部21Rに接続され、ベルト26Rの他方端にはバックル26RBが接続され、バックル26RBには右胸ベルト保持部材26RC(右胸バックル)が接続されている。右胸ベルト保持部材26RCは、対象者の右胸周りとなる位置に配置されている。
同様に、図13に示すように、左胸装着部21Lには、左肩ベルト24L、23L、ベルト26Lが取り付けられている。左肩ベルト24Lの一方端は、図12に示すように、長さ調節可能とされて背当て部37Cのベルト接続部37ELに接続されている。左肩ベルト24Lの他方端は、ベルト通し24LTに通されてバックル24LBが接続されている。左肩ベルト23Lの一方端は、バックル24LBと接続されるバックル23LBが接続され、左肩ベルト23Lの他方端には左肩ベルト保持部材23LK(左肩コキ)が接続されている。また、図13に示すように、ベルト26Lの一方端は左胸装着部21Lに接続され、ベルト26Lの他方端にはバックル26LBが接続され、バックル26LBには左胸ベルト保持部材26LC(左胸バックル)が接続されている。左胸ベルト保持部材26LCは、対象者の左胸周りとなる位置に配置されている。
図13に示すように、右腋装着部21RWには、ベルト27Rが取り付けられており、ベルト27Rの一方端は右腋装着部21RWに接続され、ベルト27Rの他方端には右腋ベルト保持部材27RK(右腋コキ)が接続されている。右腋ベルト保持部材27RKは、対象者の右腋周りとなる位置に配置されている。同様に、図13に示すように、左腋装着部21LWには、ベルト27Lが取り付けられており、ベルト27Lの一方端は左腋装着部21LWに接続され、ベルト27Lの他方端には左腋ベルト保持部材27LK(左腋コキ)が接続されている。左腋ベルト保持部材27LKは、対象者の左腋周りとなる位置に配置されている。
図12に示すように、右胸装着部21Rにおける対象者の右肩周りとなる位置から延ばされた右肩ベルト24Rは、一方端の側が、長さ調節可能とされて背当て部37Cのベルト接続部37ERに接続されている。右胸装着部21Rにおける対象者の右腋周りとなる位置から延ばされた右腋ベルト25Rは、一方端の側が、背当て部37Cのベルト接続部37FRに接続されている。同様に、左胸装着部21Lにおける対象者の左肩周りとなる位置から延ばされた左肩ベルト24Lは、一方端の側が、長さ調節可能とされて背当て部37Cのベルト接続部37ELに接続されている。左胸装着部21Lにおける対象者の左腋周りとなる位置から延ばされた左腋ベルト25Lは、一方端の側が、背当て部37Cのベルト接続部37FLに接続されている。
図13に示すように、右胸締めベルトは、右腋ベルト25Rと兼用とされて、一方端の側(右腋ベルト25RDであり、右腋ベルト25Rの一部とみなす)が背当て部37Cに接続され(図12参照)、他方端の側は、右胸ベルト保持部材26RC、右腋ベルト保持部材27RK、ベルト通し25RT、右肩ベルト保持部材23RK、の順に通されている。なお、右腋ベルト25RDの一端はバックル25RCに接続されており、右腋ベルト25Rの一端はバックル25RBに接続されている。そしてバックル25RCとバックル25RBが接続されている。従って、右腋ベルト25Rと右腋ベルト25RDは、バックル25RB、25RCを介して接続されているので、右腋ベルト25RDを右腋ベルト25Rの一部とみなすことができる。なお、左胸締めベルトは、左腋ベルト25Lと兼用とされ、右腋ベルトと同様に各バックル等に通されており、説明は省略する。図14に示すように、対象者は、右肩ベルト保持部材23RKから延びている右胸締めベルト(この場合、右腋ベルト25R)の他方端を引っ張る(力FRで引っ張る)ことで、右肩ベルト24R、23Rと、右腋ベルト25Rと、を同時に引っ張ることができる。これにより、図14に示すように、対象者の右肩周りと右腋周りにおける右胸装着部21Rを、(力FR1、力FR3にて)同時に背当て部37Cに近づけるとともに、(力FR2にて)右腋装着部21RWを右胸装着部21Rに近づけることが可能である。これにより、右胸装着部21Rと右腋装着部21RWを対象者の身体に密着させるとともに、右胸装着部21Rと右腋装着部21RWを背当て部37Cに密着させることができる。なお、対象者が、左胸締めベルト(この場合、左腋ベルト25L)の他方端を引っ張った(力FLで引っ張った)場合も同様に、左胸装着部21Lと左腋装着部21LWを対象者の身体に密着させるとともに、左胸装着部21Lと左腋装着部21LWを背当て部37Cに密着させることができる。また、右腋ベルト25Rにおけるベルト通し25RTの前側の個所を、前方向に(図14中の(FRA)の方向に)引っ張っても同様に調整可能となる。このようにしても、簡単なベルト調整操作で、対象者の身体に密着させることができる。この場合、右腋ベルト25Rの他方側を(図14中の(FR)の方向に)引っ張って、ベルト通し25RTの前側の撓みを緩和してやり、対象者の作業の邪魔にならないようにする。
[ジャケット部の別の例(図15)]
図15は、図14に示すジャケット部20とは別のジャケット部20Zの例を示している。図15に示すジャケット部20Zは、図14に示すジャケット部20に対して右腋装着部21RWと左腋装着部21LW(図13参照)が省略されており、各ベルト保持部材の配置と、ベルトの引き回し状態が異なっている。以下、相違点について主に説明する。なお、図15に示すように、右胸装着部21RZに取り付けられている右肩ベルト24R、23R、バックル24RB、23RB、右肩ベルト保持部材23RK(右肩コキ)は、図12に示す右胸装着部21Rに取り付けられているものと同じである。
図15に示すように、右胸装着部21RZにおける対象者の右腋周りとなる位置から延ばされた右腋ベルト28Rは、一方端にバックル28RBが接続され、バックル28RBは、バックル39RBとベルト39Rを介して背当て部37Cのベルト接続部37FRに接続されている。なお右腋ベルト28Rの他方端には右腋ベルト保持部材28RK(右腋コキ)が接続され、右腋ベルト保持部材28RKには右胸締めベルト25RZが挿通されている。なお、左胸装着部の各ベルト、各バックル、各ベルト保持部材等も同様であるので、これらの説明は省略する。
図15に示すように、右胸締めベルト25RZは、一方端が右胸装着部21RZに接続され、他方端は、右腋ベルト保持部材28RK、ベルト通し25RT、右肩ベルト保持部材23RK、の順に通されている。対象者は、右肩ベルト保持部材23RKから延びている右胸締めベルト25RZの他方端を引っ張る(力FRで引っ張る)ことで、右肩ベルト24R、23Rと、右腋ベルト28Rと、を同時に引っ張ることができる。これにより、図15に示すように、対象者の右肩周りと右腋周りにおける右胸装着部21RZを、(力FR1、FR3にて)同時に背当て部37Cに近づけるとともに、(力FR2にて)右腋ベルト28Rを右胸装着部21Rに近づけることが可能である。これにより、右胸装着部21RZを対象者の身体に密着させるとともに、右胸装着部21RZを背当て部37Cに密着させることができる。なお、対象者が、左胸締めベルト25LZの他方端を引っ張った(力FLで引っ張った)場合も同様に、左胸装着部21LZを対象者の身体に密着させるとともに、左胸装着部21LZを背当て部37Cに密着させることができる。また、対象者が、ジャケット部20を装着するときは、まず、ファスナ21Fを開けて、対象者の左右の手(腕)を通して、対象者の体をジャケット部20の内側へ入れて、ファスナ21Fを閉める。そして、右腋ベルト25R(右胸締めベルト)と左腋ベルト25L(左胸締めベルト)のベルトなどによって、対象者の体とフレーム部30とを密着させることができる。また、対象者の体型によって、ジャケット部20の腋の下のコキ等の調整機構を緩めて、手(腕)を挿入する開口を広げることで、容易に装着可能となる。ジャケット部20のメンテナンス(クリーニングなど)のときには、バックル23RB、24RB(23LB、24LB)を外し(ベルト通し24RT(24LT)も外し)、バックル25RB、25RC(25LB、25LC)を外すことで、バックパック部37からジャケット部20を外すことが可能となる。なお、ベルト通し24RT(24LT)は、例えば面ファスナにて着脱可能に取り付けられている。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、腰部を中心として、背中部と脚部にアシストトルクを効率良く伝える(ロスを少なくする)必要があり、このようなジャケット部20の構造は、アシストトルクを効率的に伝えることができる。
●[右アクチュエータニット4R(左アクチュエータユニット4L)のリンク機構(図3、図16~図18)]
次に図3、図16~図18を用いて、右アクチュエータユニット4Rのリンク機構の詳細について説明する。なお、左アクチュエータユニット4Lのリンク機構も同様であるので、左アクチュエータユニット4Lのリンク機構の説明は省略する。出力リンク50R(出力リンク50Lも同様)は、複数の連結部材であるアシストアーム51R(第1リンクに相当)と、第2リンク52Rと、第3リンク53Rと、大腿装着部54R(身体保持部に相当)と、がジョイント部にて連結されて構成されている。また、大腿装着部54Rは、例えば弾性体のパッドであり、大腿装着部54Rには、ベルト55RA、55RBを介してパッド55Rが接続されている。
以下では、ジョイント部の自由度についても説明するが、一方の連結部材に他方の連結部材を接続するジョイント部(連結部)において、1つの軸線回りに回動可能な連結構造を自由度1、1つの軸線に沿って往復スライド可能な連結構造を自由度1、と定義する。また、2つのそれぞれの軸線回りに回動可能な連結構造(例えば、車両のプロペラシャフト等のユニバーサルジョイントによる連結構造)を自由度2、3つのそれぞれの軸線回りに回動可能な連結構造(例えば、球面ジョイントによる連結構造)を自由度3、と定義する。
図3において、アシストアーム51Rは、トルク発生部40R内にて発生させたアシストトルクと、対象者の大腿部の動作による対象者トルクと、が合成された合成トルクによって、回動軸線40RY回りに回動する。アシストアーム51Rの先端には、回動軸線51RJ回りに回動可能となるように、第2リンク52Rの一方端が、(第1)ジョイント部51RSにて連結されている。従って、アシストアーム51Rと第2リンク52Rの(第1)ジョイント部51RSは、自由度1を有している。また、第2リンク52Rの他方端には、回動軸線52RJ回りに回動可能となるように、第3リンク53Rの一方端が、(第2)ジョイント部52RSにて連結されている。従って、第2リンク52Rと第3リンク53Rの(第2)ジョイント部52RSは、自由度1を有している。また、第3リンク53Rの他方端は、第3ジョイント部53RS(この場合、球面ジョイント)にて大腿装着部54Rと連結されている。従って、第3リンク53Rと大腿装着部54Rの(第3)ジョイント部は、自由度3を有している。以上より、図3における出力リンク50Rのそれぞれのジョイント部の自由度の総数は、1+1+3=5である。なお、図3に示す例では、出力リンク50Rの自由度の総数が5であるが、自由度の総数が3以上であればよい。例えば、第3リンク53Rと大腿装着部54Rとのジョイント部を、自由度1の連結構造としてもよいし、自由度2の連結構造としてもよい。つまり、第3リンク53Rと大腿装着部54Rとのジョイント部の自由度を、1~3のいずれかにしてもよい。なお、第3リンク53Rと大腿装着部54Rとのジョイント部である第3ジョイント部53RS(この場合、球面ジョイント)を、大腿装着部54Rの側面の側でなく正面の側に設けているので、大腿装着部54Rが大腿部に対してズレることがなく、より適切にアシストトルクを伝達させることができる。
図16に示すように、出力リンク50Rは、対象者の体格に応じて(大腿部の長さに応じて)、回動軸線40RYから大腿装着部54Rまでの上下方向の距離H54を自由に変更することができる。また図16に示すように、出力リンク50Rは、対象者が大腿部を左右に開いた場合であっても、トルク発生部40Rに対する大腿装着部54Rの左右方向(Y軸方向)の位置を、自由に変更することができる。従って、対象者の身体により適切に大腿装着部54Rを密着させることが可能であり、アシストトルクを効率良く伝達することができる。また、対象者が脚(大腿部)を左右に開いた場合であっても、大腿装着部54Rの位置が開いた脚に適切に追従して、アシストトルクを効率良く伝達することができる。
また、ジョイント部において、一方の連結部材に対して他方の連結部材が、1つの軸線回りに回動可能な連結構造とされている場合、回動範囲を制限するストッパを設けることが好ましい。ストッパの構造については図示省略するが、図16において、アシストアーム51Rに対する第2リンク52Rの回動角度を制限するストッパや、第2リンク52Rに対する第3リンク53Rの回動角度を制限するストッパを設けると、より好ましい。
[出力リンクの別の構造(図17、図18)]
次に、図17及び図18を用いて、図3に示す出力リンク50Rとは別の構造を有する出力リンク50RAの例について説明する。なお、図17及び図18では、図3と同一の部材については同一の符号を付与している。出力リンク50RAは、複数の連結部材であるアシストアーム51R(第1リンクに相当)と、第2リンク52RAと、第3リンク53RAと、大腿装着部54Rと、がジョイント部にて連結されて構成されている。
アシストアーム51Rの先端には、回動軸線51RJ回りに回動可能となるように、第2リンク52RAの一方端が、(第1)ジョイント部51RSにて連結されている。従って、アシストアーム51Rと第2リンク52Rの(第1)ジョイント部51RSは、自由度1を有している。また、第2リンク52RAの他方端には、長手方向に沿って往復スライド可能な第3リンク53RAの一方端の側が、(第2)ジョイント部52RSにて連結されている。従って、第2リンク52RAと第3リンク53RAの(第2)ジョイント部52RSは、自由度1を有している。また、第3リンク53RAの他方端は、第3ジョイント部53RS(この場合、球面ジョイント)にて大腿装着部54Rと連結されている。従って、第3リンク53RAと大腿装着部54Rの(第3)ジョイント部は、自由度3を有している。以上より、図17及び図18における出力リンク50RAのそれぞれのジョイント部の自由度の総数は、1+1+3=5である。なお、自由度の総数は3以上であればよく、例えば第3リンク53RAと大腿装着部54Rとのジョイント部の自由度を、1~3のいずれかにしてもよい。
図18に示すように、出力リンク50RAは、対象者の体格に応じて(大腿部の長さに応じて)、回動軸線40RYから大腿装着部54Rまでの上下方向の距離H54を自由に変更することができる。また図18に示すように、出力リンク50RAは、対象者が大腿部を左右に開いた場合であっても、トルク発生部40Rに対する大腿装着部54Rの左右方向(Y軸方向)の位置を、自由に変更することができる。従って、対象者の身体により適切に大腿装着部54Rを密着させることが可能であり、アシストトルクを効率良く伝達することができる。また、対象者が脚(大腿部)を左右に開いた場合であっても、大腿装着部54Rの位置が開いた脚に適切に追従して、アシストトルクを効率良く伝達することができる。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、腰部を中心として、背中部と脚部にアシストトルクを効率良く伝える(ロスを少なくする)必要があり、このようなリンク構造は、アシストトルクを効率的に伝えることができる。
●[右アクチュエータユニット4Rにおけるトルク発生部40Rの内部構造(図19、図20)]
次に、図19及び図20を用いて、トルク発生部40R(図3参照)のカバー41RBに収容されている各部材について説明する。なお図20は、図19におけるA-A断面図である。図19及び図20に示すように、カバー41RB内には、軸部51RAを有するアシストアーム51R、減速機42R、プーリ43RA、伝達ベルト43RB、フランジ部43RDを有するプーリ43RC、渦巻バネ45R、軸受46R、電動モータ47R(アクチュエータに相当)、サブフレーム48R等が収容されている。
図19及び図20に示すように、アクチュエータベース部41Rに対するアシストアーム51Rの回動角度を検出する出力リンク回動角度検出手段43RS(回動角度センサ等)が、減速機42Rの増速軸42RBに接続されたプーリ43RAに接続されている。出力リンク回動角度検出手段43RSは、例えばエンコーダや角度センサであり、回転角度に応じた検出信号を制御装置61(図24参照)に出力する。また電動モータ47Rには、モータ軸(出力軸に相当)の回転角度を検出可能なモータ回転角度検出手段47RSが設けられている。モータ回転角度検出手段47RSは、例えばエンコーダや角度センサであり、回転角度に応じた検出信号を制御装置61(図24参照)に出力する。
図19に示すように、アクチュエータベース部41Rには、接続部41RC等が設けられている。接続部41RCは、アクチュエータベース部41Rが回動軸線41RX回りに回動可能となるように、右モータ接続部35R(図1参照)に接続される。
図19に示すように、サブフレーム48Rには、減速機42Rの減速機ハウジング42RCを固定する貫通孔48RAと、電動モータ47Rの出力軸47RAを挿通する貫通孔48RBと、が形成されている。アシストアーム51Rの軸部51RAは、減速機42Rの減速軸42RAの穴部42RDに嵌め込まれ、減速機42Rの減速機ハウジング42RCはサブフレーム48Rの貫通孔48RAに固定される。これにより、アシストアーム51Rは、アクチュエータベース部41Rに対して、回動軸線40RY回りに回動可能に支持され、減速軸42RAと一体となって回動する。また、電動モータ47Rはサブフレーム48Rに固定され、出力軸47RAはサブフレーム48Rの貫通孔48RBに挿通されている。サブフレーム48Rは、ボルト等の締結部材にて、アクチュエータベース部41Rの取付部41RHに固定される。
図19に示すように、減速機42Rの増速軸42RBには、プーリ43RAが接続され、プーリ43RAには出力リンク回動角度検出手段43RSが接続されている。そして出力リンク回動角度検出手段43RSには、サブフレーム48Rに固定される支持部材43RTが接続されている。これにより、出力リンク回動角度検出手段43RSは、サブフレーム48Rに対する(すなわち、アクチュエータベース部41Rに対する)増速軸42RBの回動角度を検出することができる。しかも、アシストアーム51Rの回動角度は、減速機42Rの増速軸42RBによって増加された回動角度となるので、出力リンク回動角度検出手段43RS及び制御装置は、より高い分解能にて、アシストアーム51Rの回動角度を検出することができる。出力リンクの回動角度をより高い分解能で検出することで、制御装置は、より高精度な制御を実行することができる。なお、アシストアーム51Rの軸部51RA、減速機42R、プーリ43RA、出力リンク回動角度検出手段43RSは、回動軸線40RYに沿って同軸となるように配置されている。
減速機42Rは、減速比n(1<n)が設定されており、減速軸42RAが回動角度θだけ回動された場合に、増速軸42RBを回動角度nθだけ回動させる。また減速機42Rは、増速軸42RBが回動角度nθだけ回動された場合に、減速軸42RAを回動角度θだけ回動させる。減速機42Rの増速軸42RBが接続されたプーリ43RAと、プーリ43RCには、伝達ベルト43RBが掛けられている。従って、アシストアーム51Rからの対象者トルクは増速軸42RBを介してプーリ43RCに伝達され、電動モータ47Rからのアシストトルクは、渦巻バネ45Rとプーリ43RCを介して増速軸42RBに伝達される。
渦巻バネ45Rは、バネ定数Ksを有し、中心側に内側端部45RC、外周側に外側端部45RAを有する渦巻き形状を有している。渦巻バネ45Rの内側端部45RCは、電動モータ47Rの出力軸47RAに形成された溝部47RBに嵌め込まれている。渦巻バネ45Rの外側端部45RAは、円筒状に巻回されて、プーリ43RCのフランジ部43RDに設けられた伝達軸43REが嵌め込まれ、当該伝達軸43REにて支持されている(プーリ43RCは、フランジ部43RDと伝達軸43REが一体とされている)。プーリ43RCは、回動軸線47RY回りに回動可能に支持され、一体とされたフランジ部43RDの外周縁部の近傍には、渦巻バネ45Rの側に突出する伝達軸43REが設けられている。伝達軸43REは、渦巻バネ45Rの外側端部45RAに嵌め込まれ、外側端部45RAの位置を回動軸線47RY回りに移動させる。また、電動モータ47Rの出力軸47RAとプーリ43RCとの間には、軸受46Rが設けられている。つまり、プーリ43RCに出力軸47RAは固定されておらず、出力軸47RAは、プーリ43RCに対して自由に回転できる。プーリ43RCは、渦巻バネ45Rを介して電動モータ47Rから回転駆動される。以上の構成にて、電動モータ47Rの出力軸47RA、軸受46R、フランジ部43RDを有するプーリ43RC、渦巻バネ45R、は回動軸線47RYに沿って同軸となるように配置されている。
渦巻バネ45Rは、電動モータ47Rから伝達されたアシストトルクを蓄えるとともに、対象者の大腿部の動作によってアシストアーム51Rと減速機42Rとプーリ43RA及びプーリ43RCを経由して伝達された対象者トルクを蓄え、その結果として、アシストトルクと対象者トルクとを合成した合成トルクを蓄える。そして、渦巻バネ45Rに蓄えられた合成トルクは、プーリ43RC及びプーリ43RAと減速機42Rを介してアシストアーム51Rを回動させる。以上の構成により、電動モータ47Rの出力軸47RAは、出力軸47RAの回転角度を減量する減速機42Rを介して出力リンク(図19の場合、アシストアーム51R)に接続されている。
渦巻バネ45Rに蓄えられている合成トルクは、無負荷状態からの角度変化量とバネ定数に基づいて求められ、例えば、アシストアーム51Rの回動角度(出力リンク回動角度検出手段43RSにて求められる)と、電動モータ47Rの出力軸47RAの回転角度(モータ回転角度検出手段47RSにて求められる)と、渦巻バネ45Rのバネ定数Ksと、に基づいて求められる。そして求められた合成トルクから対象者トルクが抽出され、当該対象者トルクに応じたアシストトルクが電動モータから出力される。なお、上記の角度変化量の算出、合成トルクの算出、対象者トルクの抽出、アシストトルクの算出、電動モータへの制御信号の出力等は、バックパック部37(図2参照)に収容されている制御装置によって行われる。また、特に、荷物の持ち上げ、持ち下げ動作は、直立二足歩行(脚と脊椎を垂直に立てて行う二足歩行)とは異なり、比較的大きなトルクをアシストトルクとして出力するため(減速比も比較的大きい)、対象者に対して違和感のない制御を行う(スムーズな変化のアシストフィーリングを与える)ことが必要で、このようなアクチュエータユニット構造(回転角度(回動角度)検出手段)は、制御の精度向上をすることができ、スムーズな変化のアシストフィーリングの制御が可能となる。
●[腰サポート部10に対してフレーム部30を回動させる回動機構の構造(図21)と回動の様子(図22、図23)]
次に図21に示す断面図を用いて、腰サポート部10に対して、フレーム部30を仮想回動軸線15Y回りに回動可能に支持する回動機構の詳細について説明する。図21は、図1において仮想回動軸線15Yを通るZY平面にて切断した右アクチュエータユニット4R及び腰サポート部10の断面図であり、右アクチュエータユニット4Rについては、図20に示すB-B断面図である。以下、図21を用いて、右腰装着部11Rに設けられた回動軸部15Rを含む回動機構の説明をするが、左腰装着部11L(図2参照)に設けられた回動軸部15L(図2参照)を含む回動機構も同様であるので、回動軸部15Lを含む回動機構については説明を省略する。
回動機構は、回動軸部15Rと、当該回動軸部15Rを嵌め込むための右腰接続部36Rに設けられた軸孔36RC(図5参照)と、にて構成されている。回動軸部15Rは、パッド部12A、芯部12B、表皮部12Cの3層を有する右腰装着部11Rの芯部12Bにおける仮想回動軸線15Yと交差する位置に、仮想回動軸線15Yに沿って、右腰装着部11Rから外方に突出するように設けられている(固定されている)。そしてフレーム部30における右腰接続部36Rの下方の軸孔36RCに、回動軸部15Rが軸受15RBを介して嵌め込まれている。なお軸受15RBから突出した回動軸部15Rの先端部には、抜け防止リング15RCが嵌め込まれている。なお、本実施の形態の説明では、回動軸部15Rを右腰装着部11Rに固定して右腰接続部36Rに軸孔36RCを設けた例を説明したが、回動軸部15Rを右腰接続部36Rに固定して右腰装着部11Rに軸孔を設けるようにしてもよい。以上に説明した回動機構によって、図22及び図23に示すように、腰サポート部10に対して、フレーム部30(フレーム部30及びジャケット部20)は、対象者の動作に応じて、仮想回動軸線15Y回りに回動する。その結果、図22及び図23に示すように、例えば対象者の姿勢が直立姿勢から前傾姿勢に変化しても、腰サポート部10は、対象者の腰の位置から上下にズレることがない。これにより、第3リンク53R等を介してアシストトルクを効率よく伝達することができる。なお、図23に示す鉛直方向に対する対象者の上半身の傾斜角度を回動角度(実リンク角度θLであり、この場合、姿勢角度に相当)とすると、当該回動角度は、出力リンク回動角度検出手段43RS(図19参照)にて検出することができる。
●[右アクチュエータユニット4Rを左右に開く開き角度付与機構について(図21)]
次に、フレーム部30に対して、右アクチュエータユニット4Rを左右方向に回動させる(左右方向に開く)開き角度付与機構について説明する。以下、腰サポート部10の右側に取り付けられる右アクチュエータユニット4Rについて、開き角度付与機構の説明をするが、腰サポート部10の左側に取り付けられる左アクチュエータユニット4L(図1参照)の開き角度付与機構も同様であるので、左アクチュエータユニット4Lの開き角度付与機構については説明を省略する。開き角度付与機構は、図21における右モータ接続部35Rと接続部41RCにて構成される第1開き角度付与機構と、図16及び図18における出力リンク50R、50RAにて構成される第2開き角度付与機構と、が有る。
第1開き角度付与機構は、図21において、右モータ接続部35Rと、右アクチュエータユニット4Rのアクチュエータベース部41Rに設けられた接続部41RCと、にて構成されている。接続部41RCは、右モータ接続部35Rに対して、前後方向に延びる回動軸線41RX回りに回動可能に支持される。従って、腰サポート部10に対して、右アクチュエータユニット4Rは、回動軸線41RX回りに回動可能である。この回動によって、例えば対象者が大腿部を左右に開いた場合、図21における右腰接続部36Rの長手方向と、アクチュエータベース部41Rの長手方向と、がなす角度である第1開き角度が変化する。つまり、第1開き角度付与機構は、腰サポート部10に対して、右アクチュエータユニット4Rの全体を、左右方向に開く(回動させる)機構(及び、左アクチュエータユニット4Lの全体を左右方向に開く(回動させる)機構)である。
第2開き角度付与機構は、図16及び図18において、出力リンク50R、50RAを、左右方向に開く(回動させる)機構であり、構造については、自由度の説明にて、既に説明しているので省略する。例えば対象者が大腿部を左右に開いた場合、図16及び図18に示すように、左右に開いた大腿部に追従するように、出力リンク50R、50RAが左右方向に回動する。つまり、第2開き角度付与機構は、右アクチュエータユニット4Rのトルク発生部40Rに対して、出力リンク50R、50RAを左右方向に開く(回動させる)機構である(左アクチュエータユニット4Lも同様である)。また、第1開き角度付与機構や、第2開き角度付与機構の開く度合(開く角度)は、調整可能であり、対象者の大腿部の股関節の外転、外旋(外側へ離れる)動作に加え、対象者の大腿部の股関節の内転、内旋(内側へ向かう)動作も行うことが可能である。これにより、対象者の動作の妨げにならないように、出力リンク50R、50RAが動作して、大腿部へのアシストトルクを効率良く伝達することができる。
開き角度付与機構は、上記の第1開き角度付与機構と、第2開き角度付与機構と、の双方を有していてもよいし、一方のみを有していてもよい。第1開き角度付与機構と第2開き角度付与機構とを有している場合では、上記の第1開き角度と第2開き角度との和が開き角度となる。
なお、右モータ接続部35Rに支持された接続部41RC及びアクチュエータベース部41Rが、図21に示すように右腰接続部36Rと平行となる状態の場合(すなわち、上記の第1開き角度がゼロの場合)、右アクチュエータユニット4Rの回動軸線40RYは、仮想回動軸線15Yと一致するように設定されている。従って、アクチュエータベース部41Rが右腰接続部36Rと平行な状態の場合(第1開き角度がゼロの場合)、腰サポート部10に対して、フレーム部30が仮想回動軸線15Y回りにどのように回動しても、仮想回動軸線15Yと回動軸線40RYは一致した状態が維持される(図22、図23参照)。なお、例えば対象者が、重量物を持ち上げるために、大腿部を左右に開いて踏ん張るような場合、(右、左の)アクチュエータユニット4R、4L(図1参照)が、回動軸線41RX、41LX(図1参照)回りに回動、あるいは出力リンク50R、50RAが左右に開くように回動、の少なくとも一方の回動が発生する。そして、左右に開いた大腿部に追従して左右のアクチュエータユニットが左右に開く。従って、対象者が大腿部を左右に開いた状態でも、アシストトルクを大腿部に適切に伝達することができる。
●[制御装置61の入出力(図24)]
制御装置61は、図24に示すように、バックパック部37の収容部37B(図12参照)内に収容されている。図24に示す例では、収容部37B内に、制御装置61、モータドライバ62、電源ユニット63等が収容されている。制御装置61は、例えばCPUや、記憶装置(制御プログラム等を格納)を有している。なお制御装置61は、後述するトルク判定手段61A(トルク判定部)、動作種類判定手段61B(動作種類判定部)、アシストトルク演算手段61C(アシストトルク演算部)、補正手段61D(補正部)、回動角度制御手段61E(回動角度制御部)、通信手段64等を有している。モータドライバ62は、制御装置61からの制御信号に基づいて、電動モータ47Rを駆動する駆動電流を出力する電子回路である。電源ユニット63は、例えばリチウム電池であり、制御装置61とモータドライバ62に電力を供給する。なお通信手段64の動作等については後述する。
制御装置61には、入力手段33RSからの入力信号と、モータ回転角度検出手段47RSからの検出信号(電動モータ47Rの実モータ軸角度θrMに応じた検出信号)と、出力リンク回動角度検出手段43RSからの検出信号(アシストアーム51Rの実リンク角度θLに応じた検出信号)等が入力されている。制御装置61は、入力された信号に基づいて、電動モータ47Rの回転角度を求め、求めた回転角度に応じた制御信号をモータドライバ62に出力する。入力手段33RSは、例えば、対象者から制御装置61の動作と停止を指示する電源スイッチや、対象者からのアシスト倍率α(0<α)の設定を行う調整ダイヤルや、対象者からの微分補正ゲインβ(0≦β)の設定を行う調整ダイヤル等である。アシスト倍率α、微分補正ゲインβは、アシストトルク出力、バネ定数、に基づいて決められ、大きなアシストトルクが必要な時は、大きな値(例えば、α>1)が設定される。
なお、対象者トルクとアシストトルクとを合成した合成トルクに関するトルク関連信号を出力するトルク検出部は、モータ回転角度検出手段47RS、出力リンク回動角度検出手段43RS、渦巻バネ45Rが相当している。そしてトルク関連信号は、モータ回転角度検出手段47RSからの検出信号(電動モータ47Rのモータ軸の回転角度の検出信号)、出力リンク回動角度検出手段43RSからの検出信号(アシストアーム51Rの回動角度の検出信号)、が相当している。
●[制御ブロック(図25、図26)と、制御装置61の処理手順(図27)]
次に、図27に示すフローチャートと、図25及び図26に示す制御ブロックを用いて、制御装置61の処理手順について説明する。なお図25に示す制御ブロックは、図27におけるステップS200にて、歩行/作業判定の結果が「荷物持ち上げ・持ち下げ」または「荷物横移動」と判定された場合の制御ブロックを示している。また図26に示す制御ブロックは、図27におけるステップS200にて、歩行/作業判定の結果が「歩行」と判定された場合の制御ブロックを示している。また、図25及び図26に示す制御ブロックは、(右)アクチュエータユニット4R(図1参照)を制御するブロックを示しており、(左)アクチュエータユニット4L(図1参照)を制御するブロックは、同様の制御ブロックであるので記載を省略している。また図27に示すフローチャートは、(右)アクチュエータユニット4Rと(左)アクチュエータユニット4Lを制御する処理手順を示している。図27に示す処理は、所定時間間隔(例えば数[ms]間隔)に起動され、当該処理が起動されると制御装置61は、ステップS100Rへと処理を進める。
●[ステップS100R、S100L(図27)]
ステップS100Rにて制御装置61は、(右)アクチュエータユニット4Rに関する入力信号等の処理を行い、ステップS100Lに進む。またステップS100Lにて制御装置61は、(左)アクチュエータユニット4Lに関する入力信号等の処理を行い、ステップS200に進む。なお、ステップS100R、S100Lの処理の詳細については後述する。ステップS100R、S100Lの処理は、図25におけるノードN10の処理に相当している。ステップS100R、S100Lの処理を実行している制御装置61は、トルク検出部からのトルク関連信号(電動モータ47Rのモータ軸の回転角度の検出信号、アシストアーム51Rの回動角度の検出信号)に基づいて、合成トルクと、対象者トルクを含む関連トルク情報を判定するトルク判定手段(図24に示すトルク判定手段61A)として機能する。
●[ステップS200(図27)]
ステップS200にて制御装置61は、判定したトルク関連情報に基づいて、対象者の動作種類を判定してステップS2A0に進む。なお、ステップS200の処理の詳細については後述するが、判定された動作種類には、「歩行」、「荷物持ち上げ・持ち下げ」、「荷物横移動」が有る。「歩行」は対象者の歩行動作であり、「荷物持ち上げ・持ち下げ」は対象者が重量物を持ち上げる動作、または持っている重量物をおろす動作であり、「荷物横移動」は対象者が重量物をかかえて右から左、または左から右へと移動する動作である。ステップS200の処理は、図25におけるブロックB10の処理に相当している。ステップS200の処理を実行している制御装置61は、判定したトルク関連情報に基づいて対象者の動作種類を判定する動作種類判定手段(図24に示す動作種類判定手段61B)として機能する。
●[ステップS2A0、S2B0(図27)]
ステップS2A0にて制御装置61は、判定した動作種類が「荷物持ち上げ・持ち下げ」であるか否かを判定し、「荷物持ち上げ・持ち下げ」である場合(Yes)はステップS300Rに進み、「荷物持ち上げ・持ち下げ」でない場合(No)はステップS2B0に進む。ステップS2B0に進んだ場合、制御装置61は、判定した動作種類が「荷物横移動」であるか否かを判定し、「荷物横移動」である場合(Yes)はステップS400Rに進み、「荷物横移動」でない場合(No)はステップS500Rに進む。
●[ステップS300R、S300L、S340R、S340L(図27)]
ステップS300R、S300L、S340R、S340Lは、動作種類が「荷物持ち上げ・持ち下げ」の場合の処理である。ステップS300Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)γを演算してステップS300Lに進み、ステップS300Lにて(左)γを演算してステップS340Rに進む。なお、(右)γの演算、(左)γの演算、の詳細については後述する。(右)γは、(右)アクチュエータユニットのアシストトルクの大きさを補正するためのゲイン(係数)である。同様に(左)γは、(左)アクチュエータユニットのアシストトルクの大きさを補正するためのゲイン(係数)である。なお、(右)γ、(左)γの演算は、図25におけるブロックB11、B12の処理に相当する。
ステップS340Rにて制御装置61は、(右)τss(t)を演算してステップS340Lに進み、ステップS340Lにて(左)τss(t)を演算してステップS710に進む。なお、(右)τss(t)の演算、(左)τss(t)の演算、の詳細については後述する。(右)τss(t)は、(右)アクチュエータユニットのアシストトルクのピーク到達までの時間を短くする(位相を進める)ように補正するものであり、(右)τss(t)は、(右)アクチュエータユニットのアシストトルクのピーク到達までの時間を短くする(位相を進める)ように補正するものである。なお、(右)τss(t)、(左)τss(t)の演算は、図25におけるブロックB14の処理に相当する。
●[ステップS400R、S400L、S440R、S440L(図27)]
ステップS400R、S400L、S440R、S440Lは、動作種類が「荷物横移動」の場合の処理である。ステップS400Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)γを演算してステップS400Lに進み、ステップS400Lにて(左)γを演算してステップS440Rに進む。なお、(右)γの演算、(左)γの演算、はステップS300R、S300Lと同じであり、詳細については後述する。そして制御装置61は、ステップS440Rにて(右)τss(t)に(右)τs(t)を代入して記憶し、ステップS440Lにて(左)τss(t)に(左)τs(t)を代入して記憶し、ステップS710に進む。
●[ステップS500R、S500L(図27)]
ステップS500R、S500Lは、動作種類が「歩行」の場合の処理である。本実施の形態では、「荷物持ち上げ・持ち下げ」と「荷物横移動」では図25に示す制御ブロックにてアシストトルクを発生させるが、「歩行」では図26に示す制御ブロックにて制御してアシストトルクを発生させない(τa_ref=0にしている)例を説明する。「歩行」の場合、制御装置61は、渦巻バネ45Rが伸縮しないように、アシストアーム51Rの回動角度に応じて、電動モータ47Rの回転角度を制御する。
ステップS500Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)γに1を代入して記憶し、(右)τss(t)に(右)τs(t)を代入して記憶する。また制御装置61は、(右)τa_ref_torq(t)と、(右)τa_ref_ang(t)と、(右)τa_ref(t)のそれぞれにゼロを代入して記憶し、ステップS500Lに進む。ステップS500Lにて制御装置61は、(左)γに1を代入して記憶し、(左)τss(t)に(左)τs(t)を代入して記憶する。また制御装置61は、(左)τa_ref_torq(t)と、(左)τa_ref_ang(t)と、(左)τa_ref(t)のそれぞれにゼロを代入して記憶し、ステップS740に進む。
●[ステップS710(図27)]
ステップS710にて制御装置61は、以下の(式1)にて(右)アシストトルク指令値(トルク可変型)τa_ref_torq(t)を求めて記憶し、以下の(式2)にて(左)アシストトルク指令値(トルク可変型)τa_ref_torq(t)を求めて記憶し、ステップS720に進む。なお、ステップS710の処理は、図25におけるブロックB15、B16、B17、ノードN20、ブロックB21、ノードN30の処理に相当している。
(右)τa_ref_torq(t)=(右)τa_ref_torq(t-1)+(右)γ*α*(右)τss(t)+β*(右)Δτss(t) (式1)
(左)τa_ref_torq(t)=(左)τa_ref_torq(t-1)+(左)γ*α*(左)τss(t)+β*(左)Δτss(t) (式2)
(右)τa_ref_torq(t):(右)アシストトルク指令値(トルク可変型)
(左)τa_ref_torq(t):(左)アシストトルク指令値(トルク可変型)
(右)γ:(右)トルク補正ゲイン
(左)γ:(左)トルク補正ゲイン
α:(左右)アシスト倍率
β:(左右)微分補正ゲイン
(右)τss(t):(右)トルク変化量(位相補正後)
(左)τss(t):(左)トルク変化量(位相補正後)
●[ステップS720(図27)]
ステップS720にて制御装置61は、以下の(式3)にて(右)アシストトルク指令値(姿勢角可変型)τa_ref_ang(t)を求めて記憶し、以下の(式4)にて(左)アシストトルク指令値(姿勢角可変型)τa_ref_ang(t)を求めて記憶し、ステップS730に進む。なお、ステップS720の処理は、図25におけるブロックB41の処理に相当している。また、姿勢補正ゲインKは、例えば0~10の範囲内の値(0≦K≦10)であり、要求アシスト量、当該処理の時間間隔(サンプリング時間)、出力リンク回動角度検出手段やモータ回転角度検出手段の検出分解能、対象者の身長や体重、等に応じて設定されるゲイン(定数)である。
(右)τa_ref_ang(t)=K*sin(右)θL(t) (式3)
(左)τa_ref_ang(t)=K*sin(左)θL(t) (式4)
(右)τa_ref_ang(t):(右)アシストトルク指令値(姿勢角可変型)
(左)τa_ref_ang(t):(左)アシストトルク指令値(姿勢角可変型)
K:(左右)姿勢補正ゲイン
(右)θL(t):(右)実リンク角度
(左)θL(t):(左)実リンク角度
●[ステップS730(図27)]
ステップS730にて制御装置61は、以下の(式5)にて(右)総アシストトルク指令値τa_ref(t)を求めて記憶し、以下の(式6)にて(左)総アシストトルク指令値τa_ref(t)を求めて記憶し、ステップS740に進む。なお、ステップS730の処理は、図25におけるノードN40の処理に相当している。
(右)τa_ref(t)=(右)τa_ref_torq(t)+(右)τa_ref_ang(t) (式5)
(左)τa_ref(t)=(左)τa_ref_torq(t)+(左)τa_ref_ang(t) (式6)
(右)τa_ref(t):(右)総アシストトルク指令値
(左)τa_ref(t):(左)総アシストトルク指令値
以上に説明したステップS2A0、S2B0からステップS730の処理を実行している制御装置61は、判定した関連トルク情報に基づいてアシストトルクを演算するアシストトルク演算手段(図24に示すアシストトルク演算手段61C)、及び、判定した動作種類に基づいて、演算したアシストトルクを補正する補正手段(図24に示す補正手段61D)、として機能する。
●[ステップS740(図27)]
ステップS740にて制御装置61は、以下の(式7)を整理した(式8)にて、(右)τa_ref(t)から(右)モータ回転角度指令値θM(t)を求めて記憶し、以下の(式9)を整理した(式10)にて、(左)τa_ref(t)から(左)電動モータの回転角度指令値θM(t)を求めて記憶し、ステップS750に進む。なお、このステップS740の処理は、図25におけるブロックB42の処理に相当している。
(右)τa_ref(t)=na*Ks*[na*(右)θL(t)-((右)θM(t)/nb)] (式7)
(右)θM(t)=[(na2*Ks*(右)θL(t)-(右)τa_ref(t))*nb]/(na*Ks) (式8)
(左)τa_ref(t)=na*Ks*[na*(左)θL(t)-((左)θM(t)/nb)] (式9)
(左)θM(t)=[(na2*Ks*(左)θL(t)-(左)τa_ref(t))*nb]/(na*Ks) (式10)
Ks:渦巻バネ45Rのバネ定数
(右)θM(t):(右)モータ回転角度指令値
(右)θM(t):(右)モータ回転角度指令値
na及びnb:減速機42Rにおける減速軸42RAをna回転させた場合に増速軸42RBはnb回転(na<nb)
●[ステップS750(図27)]
ステップS750にて制御装置61は、(右)電動モータ47Rの実モータ軸角度である(右)θrM(t)が、(右)θM(t)となるように、(右)電動モータ47Rを制御し、(左)電動モータの実モータ軸角度である(左)θrM(t)が、(左)θM(t)となるように、(左)電動モータを制御し、処理を終了する。以上に説明したステップS740とS750の処理を実行している制御装置61は、補正手段にて補正したアシストトルクに基づいて、電動モータの出力軸の回動角度(回転角度)を制御する回動角度制御手段(図24に示す回動角度制御手段61E)として機能する。なお、このステップS750の処理は、図25におけるノードN50、ブロックB51、ノードN60、ブロックB61、B81、ノードN70、ブロックB71、B72に相当している。そしてステップS750の処理は、回転角度指令値を指令電流に変換し、指令電流をPWM出力のDuty比に変換して出力する際に、指令値と実際の値との偏差に基づいてPID(比例、積分、微分)制御を行うフィードバック制御であり、既存の制御と同様であるので説明を省略する。
●[ステップS100Rの詳細(図28)]
図28に、ステップS100R(図27参照)の処理((右)アクチュエータユニット4Rに関する入力信号等の処理)の詳細であるステップS110Rの処理を示す。図28に示すように、ステップS110Rにて制御装置61は、入力手段33RS(図2参照)からの入力信号に基づいて、今回の(左右)アシスト倍率αを決定して記憶し、今回の(左右)微分補正ゲインβを決定して記憶する。このアシスト倍率αと、微分補正ゲインβは、左右のアクチュエータユニットで共通に使用される。
また、制御装置61は、前回の処理タイミング時に求めた(右)アシストトルク指令値(トルク可変型)τa_ref_torq(t)を、前回の(右)アシストトルク指令値(トルク可変型)τa_ref_torq(t-1)に記憶する。また制御装置61は、今回の処理タイミングにて検出した(右)モータ軸角度を、(右)実モータ軸角度θrM(t)に記憶する。
また制御装置61は、前回の処理タイミング時に求めた(右)実リンク角度θL(t)を、前回の(右)実リンク角度θL(t-1)に記憶し、今回の処理タイミングにて検出した出力リンク(アシストアーム51R)の回動角度を(右)実リンク角度θL(t)に記憶する。そして制御装置61は、以下の(式11)より(右)リンク角変位量ΔθL(t)求めて記憶する。
(右)ΔθL(t)=(右)θL(t)-(右)θL(t-1) (式11)
(右)θL(t):(右)実リンク角度
(右)ΔθL(t):(右)リンク角変位量
また制御装置61は、前回の処理タイミング時に求めた(右)合成トルク(t)を、前回の(右)合成トルク(t-1)に記憶し、渦巻バネ45R(図19参照)のバネ定数Ks、今回の(右)実リンク角度θL(t)、今回の(右)実モータ軸角度θrM(t)、を用いて、以下の(式12)より、今回の(右)合成トルク(t)を求めて記憶する。なお、合成トルクは、電動モータ47Rの実モータ軸角度θrM(t)、出力リンク(アシストアーム51R)の実リンク角度θL(t)、渦巻バネ45Rのバネ定数Ks、減速機42Rの減速比等に基づいて求めることができる。
(右)合成トルク(t)=Ks*(渦巻バネ45Rの伸縮量) (式12)
また制御装置61は、前回の処理タイミング時に求めた(右)トルク変化量τs(t)を、前回の(右)トルク変化量τs(t-1)に記憶し、今回の(右)トルク変化量τs(t)を、以下の(式13)より求めて記憶する。
(右)τs(t)=Ks*(右)ΔθL(t) (式13)
(右)τs(t):(右)トルク変化量
●[ステップS100Lの詳細(図29)]
ステップS100L(図27参照)は、ステップS100Rに続いて実行される処置であり、(左)アクチュエータユニット4Lに関する入力信号等の処理である。なお図29に、ステップS100Lの処理((左)アクチュエータユニット4Lに関する入力信号等の処理)の詳細であるステップS110Lの処理を示す。ステップS110Lの処理の詳細については、(右)アクチュエータユニット4Rに関する入力信号等の処理であるステップS100Rと同様であるので省略する。
●[ステップS200の詳細(図30)]
ステップS200(図27参照)は、対象者の動作種類を判定する処理であり、対象者の動作が、「歩行」、「荷物持ち上げ・持ち下げ」、荷物を右から左(または左から右)へ移動させる「荷物横移動」、のいずれの動作であるか、を判定する処理である。なお図30に、ステップS200の処理(歩行/作業判定)の詳細であるステップS210~S230Cの処理を示す。
ステップS210(図30参照)にて制御装置61は、[(右)θL(t)+(左)θL(t)]/2が、予め設定した第1角度閾値θ1以下であり、かつ、(右)合成トルク(t)*(左)合成トルク(t)が、予め設定した第1トルク閾値τ1未満であることを満足するか否か判定する。満足する場合(Yes)、制御装置61は、対象者の動作が「歩行」であると判定してステップS230Aに進み、満足しない場合(No)はステップS215に進む。
ステップS215に進んだ場合、制御装置61は、(右)合成トルク(t)*(左)合成トルク(t)が、予め設定した第2トルク閾値τ2以上であるか否かを判定し、第2トルク閾値τ2以上である場合(Yes)、制御装置61は、対象者の動作が「荷物持ち上げ・持ち下げ」であると判定してステップS230Bに進み、第2トルク閾値τ2以上でない場合(No)はステップS220に進む。
ステップS220に進んだ場合、制御装置61は、[(右)θL(t)+(左)θL(t)]/2が、予め設定した第1角度閾値θ1より大きく、かつ、(右)合成トルク(t)*(左)合成トルク(t)が、予め設定した第1トルク閾値τ1未満であることを満足するか否か判定する。満足する場合(Yes)、制御装置61は、対象者の動作が「荷物横移動」であると判定してステップS230Cに進み、満足しない場合(No)は処理を終了する。
ステップS230Aに進んだ場合、制御装置61は、動作種類に「歩行」を記憶して処理を終了する。ステップS230Bに進んだ場合、制御装置61は、動作種類に「荷物持ち上げ・持ち下げ」を記憶して処理を終了する。ステップS230Cに進んだ場合、制御装置61は、動作種類に「荷物横移動」を記憶して処理を終了する。
●[ステップS300R、S300Lの詳細(図31)]
ステップS300R(図27参照)は、図25に示すブロックB11、B12の処理に相当し、ブロックB15にて用いるγを演算する処理である。なお図31に、ステップS300Rの処理(右γを演算)の詳細であるステップS314R~S324Rの処理を示す。なお、(右)アクチュエータユニットに対するステップS300Rの処理に対して、ステップS300Lは(左)アクチュエータユニットに対する処理であり、ステップS300Rと同様であるので、ステップS300Lの処理については説明を省略する。
ステップS314R(図31参照)にて制御装置61は、(右)τs(t-1)がゼロ以上であり、かつ、(右)τs(t)がゼロより小さいことを満足するか否か判定する。この判定は、横軸を時間、縦軸をアシストトルクとした、荷物持ち上げ動作の例を示す図33において、現在の時点が、アシストトルクが正から負へと切り替わるQ1であるか否かを判定していることになる。満足する場合(Yes)、制御装置61は、ステップS320Rに進み、満足しない場合はステップS316Rに進む。
なお、図33に示す[持ち上げ基準動作]は、荷物持ち上げ動作に対して、予め設定した基準動作の例を示しており、対象者が直立状態から、予め設定した第1基準時間Ta1にて腰を曲げて足元の荷物に手をかけ、さらに第1基準時間Ta1にて荷物を持ち上げて直立状態になった場合における、時間の経過に対する(基準動作の)アシストトルクの変化の様子を示している。また+側(正側)のアシストトルクは、腰を前方に曲げる側の動作をアシストするトルクを示し、-側(負側)のアシストトルクは、前方に曲げた腰を伸ばす側の動作をアシストするトルクを示している。また、図33に示す[持ち上げ基準動作に対して周期が長く、かつ補正前のアシストトルクが小さい場合]は、予め設定した[持ち上げ基準動作]よりも対象者の動作が遅く、かつ、補正前のアシストトルクが[持ち上げ基準動作]のアシストトルクよりも小さい場合の例を示している。
ステップS316Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)τs(t-1)がゼロ未満であり、かつ、(右)τs(t)がゼロ以上であることを満足するか否か判定する。この判定は、図33において、現在の時点が、アシストトルクが負から正へと切り替わるQ2であるか否かを判定していることになる。満足する場合(Yes)、制御装置61は、ステップS324Rに進み、満足しない場合は処理を終了する。
ステップS320Rに進んだ場合(図33におけるQ1の位置の場合)、制御装置61は、(右)トルク変化量微分値Δτs(t)を、以下の(式14)より求めて記憶し、ステップS322Rに進む。
(右)Δτs(t)=(右)τs(t)-(右)τs(t-1) (式14)
ステップS322Rにて制御装置61は、(右)トルク補正ゲインγを、以下の(式15)より求めて記憶し、処理を終了する。なお、(右)トルク補正ゲインγを、以下の(式16)にて求めて記憶してもよい。なお、(式15)中における(右)Δτs,maxは、図33に示す[持ち上げ基準動作]に対応するτs(t)のグラフにおけるQ1の位置のグラフの傾きである。また(式5)中における(右)Δτsは、実際の対象者の動作に対応するτs(t)のグラフにおけるQ1の位置のグラフの傾きである。同様に、(式6)中における(d/dt)(右)ΔθL,maxは、図33に示す[持ち上げ基準動作]に対応するQ1の位置における(右)ΔθLの微分値である。また(式6)中における(d/dt)(右)ΔθLは、実際の対象者の動作に対応するQ1の位置における(右)ΔθLの微分値である。
(右)γ=√((右)Δτs,max/(右)Δτs) (式15)
(右)γ=√[((d/dt)(右)ΔθL,max)/((d/dt)(右)ΔθL)] (式16)
なお、(右)γは、図33における[持ち上げ基準動作に対して、周期が長く、かつ、補正前のアシストトルクが小さい場合]において、時間tb1~時間tb2の間の補正前のアシストトルク最大値(P)が、[持ち上げ基準動作]におけるアシストトルク最大値(Pbase)となるように補正するゲインである。
ステップS324Rに進んだ場合(図33におけるQ2の位置の場合)、制御装置61は、(右)γに1を代入して記憶し、処理を終了する。(右)γの値が1の場合、アシストトルク最大値の補正は行われない。
以上の手順にて求めた(右)γにより、図33の[持ち上げ基準動作に対して、周期が長く、かつ、補正前のアシストトルクが小さい場合]において、持ち上げを開始してから持ち上げが完了するまでの持ち上げ期間である時間tb1~時間tb2において、アシストトルクの大きさを補正するアシストトルク量補正が実行される。また、このアシストトルク量補正を行う場合、(式15)または(式16)に示すように、(右)γの値は、Q1の位置における(右)τs(t)の傾きによって変化する。そしてQ1の位置における(右)τs(t)の傾きは、持ち上げ期間の長さに応じて変化し、持ち上げ期間の長さが短い場合はQ1の位置における(右)τs(t)の傾きが大きく、持ち上げ期間の長さが長い場合はQ1の位置における(右)τs(t)の傾きが小さくなる。このため、持ち上げ期間の長さに応じて(右)γの値が変化することで、アシストトルク量補正による増量割合が調整される。具体的には、実際の持ち上げ期間が、図33に示す基準動作の持ち上げ期間(Ta1)よりも長い場合では、(右)γ>1となり、アシストトルクは増量される。また、実際の持ち上げ期間が、図33に示す基準動作の持ち上げ期間(Ta1)よりも短い場合では、(右)γ<1となり、アシストトルクは減量される。これにより、実際の持ち上げ期間の長さにかかわらず、持ち上げ期間におけるアシストトルクの最大値は、図33の基準動作における持ち上げ期間のアシストトルクの最大値(Pbase)となる。
●[ステップS340R、340Lの詳細(図32)]
ステップS340R(図27参照)は、図25に示すブロックB14の処理に相当し、以降で使用する(右)トルク変化量τss(t)を求める処理である。なお図32に、ステップS340Rの処理(右τss(t)を演算)の詳細であるステップS344R~S370Rの処理を示す。なお、(右)アクチュエータユニットに対するステップS340Rの処理に対して、ステップS340Lは(左)アクチュエータユニットに対する処理であり、ステップS340Rと同様であるので、ステップS340Lの処理については説明を省略する。
ステップS344R(図32参照)にて制御装置61は、(右)τss(t-1)に(右)τss(t)を代入し、(右)τss(t-1)を記憶する。
ステップS346Rにて制御装置61は、(右)τs(t-1)がゼロ以上であり、かつ、(右)τs(t)がゼロ未満(負)であることを満足するか否か判定する。この判定は、荷物持ち上げ動作の例を示す図34において、現在の時点が、アシストトルクが正から負へと切り替わるQ1であるか否かを判定していることになる。満足する場合(Yes)はステップS348Rに進み、満足しない場合(No)はステップS350Rに進む。
ステップS348Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)動作状態フラグに1を代入して記憶し、ステップS350Rに進む。
ステップS350Rに進んだ場合、制御装置61は、(右)動作状態フラグが1であり、かつ、(右)τs(t)がゼロ未満(負)であることを満足するか否か判定する。この判定は、横軸を時間、縦軸をアシストトルクとした、荷物持ち上げ動作の例を示す図34において、現在の時点が、アシストトルクが負の状態である「持ち上げ期間」であるか否かを判定していることになる。満足する場合(Yes)、制御装置61は、ステップS360Rに進み、満足しない場合はステップS352Rに進む。
なお、図34に示す[持ち上げ基準動作]は、図33に示す[持ち上げ基準動作]と同様、荷物持ち上げ動作に対して、予め設定した基準動作を示しており、対象者が直立状態から、予め設定した第1基準時間Ta1にて腰を曲げて足元の荷物に手をかけ、さらに第1基準時間Ta1にて荷物を持ち上げて直立状態になった場合における、時間の経過に対するアシストトルクの変化の様子を示している。また+側(正側)のアシストトルクは、腰を前方に曲げる側の動作をアシストするトルクを示し、-側(負側)のアシストトルクは、前方に曲げた腰を伸ばす側の動作をアシストするトルクを示している。また、図33に示す[持ち上げ基準動作に対して周期が長く、かつ補正前のアシストトルクが小さい場合]は、予め設定した[持ち上げ基準動作]よりも対象者の動作が遅く、かつ、[持ち上げ基準動作]よりもアシストトルクが小さい場合の例を示している。
ステップS352Rに進んだ場合(図34におけるQ2の位置からQ1の位置までの場合)、制御装置61は、(右)動作状態フラグにゼロを代入して記憶し、ステップS354Rに進む。そしてステップS354Rにて制御装置61は、(右)τss(t)に(右)τs(t)を代入して記憶し、ステップS370Rに進む。
ステップS360Rに進んだ場合(図34におけるQ1の位置からQ2の位置までである持ち上げ期間の場合)、制御装置61は、以下の(式17)にて、対象者の持ち上げ動作の(右)収束時間Tを求めて(予測して)記憶し、ステップS362Rに進む。なお、Tbaseは、予め設定した持ち上げ動作の基準動作である図34の[持ち上げ基準動作]に示す「持ち上げ期間」の長さである。(右)収束時間Tは、対象者が荷物を把持して持ち上げを開始してから、持ち上げを完了するまでの時間を示し、Tbaseは、基準動作における、荷物の持ち上げを開始してから、持ち上げを完了するまでの時間を示している。
(右)T=(右)γ*Tbase (式17)
(右)T:実際の対象者における、荷物の持ち上げを開始してから、持ち上げを完了するまでの予測時間((右)収束時間)
Tbase:基準動作における、荷物の持ち上げを開始してから、持ち上げを完了するまでの時間(=基準動作における持ち上げ期間)
ステップS362Rにて制御装置61は、以下の(式18)にて、対象者の持ち上げ期間中における(右)アシストトルクピーク値Pを求めて(予測して)記憶し、ステップS364Rに進む。なお、Pbaseは、図34の[持ち上げ基準動作]に示す「持ち上げ期間」中におけるアシストトルクの大きさの最大値である。
(右)P=Pbase/(右)γ (式18)
(右)P:実際の対象者における、持ち上げ期間中のアシストトルクの最大値(予測した最大値)
Pbase:基準動作における、持ち上げ期間中のアシストトルクの最大値
ステップS364Rにて制御装置61は、(右)動作状態フラグが0から1となってからの(右)経過時間tが、予め設定したピーク到達基準時間T1と(右)γを乗算した値(γT1)よりも短いか否かを判定し、短い場合(Yes)はステップS366Rに進み、短くない場合(No)はステップS368Rに進む。なお、ピーク到達基準時間T1は、種々の実験等によって決められた時間である。種々の実験の結果、発明者は、対象者が荷物の持ち上げを開始した際、持ち上げ動作時間の長さ(持ち上げ動作の遅さ)に応じて、アシストトルクのピーク値の位置を調整することが有効であることを見出した。ピーク到達基準時間T1は、基準動作時において、持ち上げ動作を開始してからアシストトルクがピークとなるまでの、最も適切な時間として設定されている。
ステップS366Rに進んだ場合、制御装置61は、以下の(式19)にて、(右)τss(t)を求めて記憶し、ステップS370Rに進む。
τss(t)=-(右)P*sin[2*(右)T*π*(右)t/(γ*T1)] (式19)
(右)t:(右)動作状態フラグが0から1となってからの経過時間
T1:ピーク到達基準時間
ステップS368Rに進んだ場合、制御装置61は、以下の(式20)にて、(右)τss(t)を求めて記憶し、ステップS370Rに進む。
τss(t)=-(右)P*sin{[2*(右)T*π*((右)t-γ*T1)]/[(右)T-γ*T1]+π/2} (式20)
ステップS370Rに進んだ場合、制御装置61は、以下の(式21)にて、(右)Δτss(t)を求めて記憶し、処理を終了する。
(右)Δτss(t)=(右)τss(t)-(右)τss(t-1) (式21)
以上の手順にて求めた(右)τss(t)により、図34の[持ち上げ基準動作に対して、周期が長く、かつ、補正前のアシストトルクが小さい場合]において、持ち上げ期間内におけるアシストトルクのピークの位置を、持ち上げを開始してからγT1経過後に移動させるように補正する、アシストトルク位相補正が実行される。また、このアシストトルク位相補正を行う場合、予測した持ち上げ期間の長さ(T)に応じて(右)γの値が変化するので、予測した持ち上げ期間の長さ(T)に応じて、持ち上げを開始した時点からアシストトルクピーク時点までの時間(γT1)が調整される。
●[本願の効果]
以上、本実施の形態にて説明したアシスト装置1は、対象者の動作(「歩行」、「荷物持ち上げ・持ち下げ」、「荷物横移動」)に応じて、適切な補正を行ったアシストトルクを発生させることができる。例えば、「荷物持ち上げ」の際の対象者の動作が遅い場合、トルク補正ゲインγによって、適切にアシストトルクを増量することができる。また、例えば「荷物持ち上げ」の際の対象者の動作が遅い場合、アシストトルクのピークまでの時間を、τss(t)によって短くすることで、アシストトルクのピークの位置を適切なタイミングにすることができる。
また、適切な構造を有する身体装着具2(図2参照)とすることで、対象者への装着が容易である。また、右アクチュエータユニット4R(及び左アクチュエータユニット4L)は、図19に示すようにシンプルな構造であり、対象者への生体信号検出センサの貼り付けも不要である。そして右アクチュエータユニット4R(及び左アクチュエータユニット4L)の制御装置61による制御も、図25~図34を用いて説明したように、比較的シンプルな制御である。
また、本実施の形態の説明では、判定する動作種類が、「歩行」、「荷物持ち上げ・持ち下げ」、「荷物横移動」の3種類の例を説明したが、「歩行」を含まずに、「荷物持ち上げ・持ち下げ」を含む作業を判定するようにしてもよい。また、「歩行」を含まずに、「荷物持ち上げ・持ち下げ」と「荷物横移動」を含む作業を判定するようにしてもよい。
●[第2の実施の形態(図35~図51)]
●[アシスト装置201の全体構造(図35~図39)]
図35に、第2の実施の形態のアシスト装置201の全体の外観を示す。また図39に、アシスト装置201を各構成要素に分解した分解斜視図を示す。アシスト装置201は、身体装着具202(図37参照)と、右アクチュエータユニット204R(図38参照)及び左アクチュエータユニット204L(図38参照)とを有している。身体装着具202は、対象者のアシスト対象身体部(本実施の形態の例では、大腿部)の周囲を含む身体に装着されるものである。右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lは、身体装着具202とアシスト対象身体部に装着されて、アシスト対象身体部の動作を支援(アシスト)する。なお、図35~図51に示す第2の実施の形態におけるアシスト装置201、身体装着具202、右アクチュエータユニット204R、左アクチュエータユニット204Lは、図1~図34に示す第1の実施の形態におけるアシスト装置1、身体装着具2、右アクチュエータユニット4R、左アクチュエータユニット4L、のそれぞれに対応している。
●[身体装着具202の外観(図37、図39)]
図37及び図39に示すように、身体装着具202は第1の実施の形態と同様、対象者の腰周りに装着される腰サポート部210と、対象者の肩周り及び胸周りに装着されるジャケット部220と、ジャケット部220が接続されるフレーム部230と、フレーム部230に取り付けられたバックパック部237と、を有している。また、フレーム部230は、対象者の背中及び腰周りに配置され、バックパック部237と対象者の背中との間となる位置には、クッション237Gが配置されている。なお、各部の詳細については後述する。
●[右アクチュエータユニット204R、左アクチュエータユニット204Lの外観(図38、図39)]
図3に示す第1の実施の形態のトルク発生部40R、40L、出力リンク50R、50Lと同様に、図38に示す第2の実施の形態の右アクチュエータユニット204R、左アクチュエータユニット204Lは、トルク発生部240R、240Lと、出力リンク250R、250Lと、を有している。なお、第1の実施の形態と同様、左アクチュエータユニット204Lは、右アクチュエータユニット204Rを左右対称としたものであるので、以降の説明では、左アクチュエータユニット204Lについては説明を省略する。なお、トルク発生部240R、240Lの内部構造及び制御の処理手順等は、第1の実施の形態のトルク発生部40R、40Lの内部構造及び制御の処理手順と同じであるので説明を省略する。また、アクチュエータユニット(204R、204L)におけるフレーム部230に近い部分に、アクチュエータ駆動用、制御用、通信用、の各ケーブルの取出口233RS、233LS(接続口)が設けられている。そして、ケーブルの取出口233RS、233LSに接続されたケーブル(図示省略)は、フレーム部230に沿って配置され、バックパック部237に接続される。また、取出口233RS、233LSの配置位置は、アクチュエータユニット(204R、204L)の形状や、アクチュエータユニット(204R、204L)の内部のアクチュエータ等の配置などによって変更され、対象者の動作を妨げない適切な位置に配置されている。また、取出口233RS、233LSに接続されたケーブル(図示省略)を、フレーム部230の内部に収容させるとともに、アクチュエータユニット(204R、204L)の形状や内部のアクチュエータ等の配置などによって、取出口233RS、233LSの配置位置を、対象者の動作を妨げない適切な位置に配置するようにしてもよい。
出力リンク250Rは、第1の実施の形態と同様、アシストアーム251R(第1リンクに相当)と、第2リンク252Rと、第3リンク253Rと、大腿装着部254R(身体保持部に相当)と、を有している。なお、出力リンク250Rの詳細については後述する。また、図2に示す第1の実施の形態の入力手段33RSは、図35に示す第2の実施の形態では、図示を省略している。
また、図35、図39に示すように、右サブフレーム232Rの下端には、右アクチュエータユニット204Rの接続部241RSが固定されている。従って、第2の実施の形態では、右サブフレーム232Rに対して右アクチュエータユニット204Rが左右方向に回動せず、かつ、右サブフレーム232Rに対して右アクチュエータユニット204Rが上下方向に回動しないことになる。アシストトルクが大きい場合や変化が速い状態が必要な作業(動き)では、不必要にアクチュエータユニットが回動して伝達効率が低下することを防止できる。さらに、アシストトルクが大きい状態や変化が速い状態によっては、右アクチュエータユニット204Rの上側の上下方向の回動についても、回動させないようにすることで、さらに伝達効率が低下することを防止できる。つまり、アシストトルクが大きい状態や変化が速い状態などのときに、右アクチュエータユニット204Rを、右サブフレーム232R、背当て部237C(クッション237G)、対象者の背中(上半身)とで、不必要に回動させることなく適切に支持する。そして、適切に支持された右アクチュエータユニット204Rからアシストトルク(出力リンク250R(図38参照)からのアシストトルク)を出力することで、対象者の大腿部へ適切にアシストトルクを伝達することができる(左アクチュエータユニット204Lも同様である)。
●[フレーム部230の構造の詳細(図39、図40)]
図39及び図40に示すように、フレーム部230は、第1の実施の形態と同様、メインフレーム231と、右サブフレーム232Rと、左サブフレーム232L等を有している。また右サブフレーム232Rの一方端(上端)は、メインフレーム231の右側に設けられた接続部(右回動軸部)231Rに接続され、左サブフレーム232Lの一方端(上端)は、メインフレーム231の左側に設けられた接続部(左回動軸部)231Lに接続される。接続部231Rは、いわゆる円筒ダンパであり、同軸に配置された内筒と外筒とを有し、内筒と外筒との間には筒状弾性体が配置されている。そして外筒はメインフレーム231に固定され、内筒には右サブフレーム232Rの一方端が固定されている。同様に、接続部231Lの外筒はメインフレーム231に固定され、内筒には左サブフレーム232Lの一方端が固定されている。
接続部(右回動軸部)231Rの内筒と外筒との間には、摩擦の大きな筒状弾性体が配置されているので、この摩擦を越える回動力F(図40参照)が加えられた場合に、右サブフレーム232Rは、回動軸線231RJ回りに回動する。つまり、メインフレーム231に対して右サブフレーム232Rを回動軸線231RJ回りに回動させるためには、より大きな回動力Fを印加する必要があり(予め設定された負荷閾値以上の負荷を入力する必要があり)、アシストトルクの伝達時の反力によって回動しないように負荷閾値が設定されている。従って、右サブフレーム232Rが必要以上に回動することを抑制できるので、安定したアシストトルクを対象者に伝達することができる。つまり、アシストトルクを伝達する際、右サブフレーム及び左サブフレームが不必要に回動して伝達効率が低下することを防止することができる。なお、接続部(左回動軸部)231L及び左サブフレーム232Lも上記と同様であるので、これらの説明は省略する。
●[腰サポート部210の構造の詳細(図41)]
図41に示す第2の実施の形態の腰サポート部210において、図8に示す第1の実施の形態の腰サポート部10と同じものについては、同じ符号を付与している。図41に示す第2の実施の形態の腰サポート部210は、図8に示す第1の実施の形態の腰サポート部10に対して、右腰装着部211Rに、切込み211RCと、連結ベルト219R及び連結リング219RSとが追加され、回動軸部15R(図8参照)の代わりに連結孔215Rが設けられている。同様に、左腰装着部211Lにも、切込み211LCと、連結ベルト219L及び連結リング219LSとが追加され、回動軸部15L(図8参照)の代わりに連結孔215Lが設けられている。
連結孔215Rは、図38に示す右アクチュエータユニット204Rの連結部240RSとネジ等の連結部材にて連結するための孔である。同様に、腰サポート部210の連結孔215Lは、図38に示す左アクチュエータユニット204Lの連結部240LSとネジ等の連結部材にて連結するための孔である。これにより、腰サポート部210は、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lに対して、強固に固定される。従って、対象者に対する腰サポート部210の位置のズレを抑制することができるので、アシストトルクを効率よく伝達することができる。
図41に示すように、連結ベルト219Rの一方端は右腰装着部211Rに接続され、他方端には連結リング219RSが接続されている。そして連結リング219RSは、図35に示すように、ジャケット部220に設けられた連結ベルト229R、229RDの下端に設けられた連結部229RSと接続される。同様に、連結ベルト219Lの一方端は左腰装着部211Lに接続され、他方端には連結リング219LSが接続されている。そして連結リング219LSは、図35に示すように、ジャケット部220に設けられた連結ベルト229L、229LDの下端に設けられた連結部229LSと接続される。このように、腰サポート部210とジャケット部220は、対象者の前面または側面において連結ベルト219R、219Lを介して連結されている。これにより、腰サポート部210に対してジャケット部220が上方にズレることや、ジャケット部220に対して腰サポート部210が下方にズレることを防止できる。つまり、アシストトルクの伝達中に、対象者に対する腰サポート部210やジャケット部220の位置のズレが抑制されるので、アシストトルクを効率よく伝達することができる。なお、対象者の背面においては、腰サポート部210とジャケット部220は、フレーム部230と右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lと、を介して連結されている。
図35に示すように、ジャケット部220の連結部229RS(図44参照)は、腰サポート部210の連結リング219RS(図41参照)に対して着脱可能に接続され、ジャケット部220の連結部229LS(図44参照)は、腰サポート部210の連結リング219LS(図41参照)に対して着脱可能に接続される。従って、連結部229RS、229LSは、(腰サポート部210に設けられた連結リング219RS、219LS及び連結ベルト219R、219Lを介して)腰サポート部210へのジャケット部220の接続と解放を可能とするジャケット・腰サポート着脱機構に相当している。仮に、ジャケット部220が背当て部237C(またはフレーム部230)と接続されておらず、腰サポート部210のみに接続されている構造である場合、上記のジャケット・腰サポート着脱機構を有することで、対象者の体型や体格に合わせて、適切な大きさと形状のジャケット部へと、変更することが容易である。従って、対象者へのジャケット部の装着性を、より向上させることができる。
また、切込み211RC、切込み211LCは、例えば対象者が上半身を前方に大きく傾斜させる動作に対する抵抗を軽減する。
第2の実施の形態では、フレーム部230の下方に、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lが、フレーム部230に対して回動しないように固定されている。またフレーム部230の上方には、バックパック部237が固定されるとともにジャケット部220がベルトを介して接続されている。そして、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lには、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lに対して回動しないように腰サポート部210が固定されている。さらに、腰サポート部210とジャケット部220は、連結ベルトを介して連結されている。これにより、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lからアシストトルクを対象者に伝達した際、アシストトルクの反力を、右アクチュエータユニット204R及び左アクチュエータユニット204Lが固定されているフレーム部230及び腰サポート部210にて、しっかりと受け止めることが可能であり、アシストトルクを効率良く伝達することができる。
●[バックパック部237の周囲の構造の詳細(図42、図43)]
バックパック部237は、シンプルな箱状の形状を有し、第1の実施の形態の収容部37Bと同様、制御装置や電源ユニットや通信手段等が収容されている。バックパック部237は、図42に示すように、メインフレーム231の側に背当て部237Cを有している。そして背当て部237Cは、メインフレーム231に対して上下に移動しないようにメインフレーム231に固定されている。メインフレーム231における対象者の背中側の両肩に対向する位置には、複数のベルト接続孔231H(ベルト接続部に相当)が上下方向に配置された支持体231SR、231SLが設けられている。つまり、ベルト接続孔231H(ベルト接続部)は、対象者の体格に応じて、フレーム部230に対するジャケット部220の高さ方向の位置を調整可能とするように、複数設けられている。従って、対象者の体格に合わせてジャケット部220の高さを適切な位置に調整できる。また、第1の実施の形態の背当て部37C(図11参照)と比較して、上下スライド機構が不要であり、バックパック部237に対向している個所のメインフレーム231の長さや、ベルト接続孔231Hの数や位置を調整することで、対象者への調整限界を広くしたり、調整間隔を狭くしたりできるので、特に背の高い人や背の低い人に対しても、容易に調整可能となる(上下スライド機構の場合、スライド機構のストローク限界によって、調整量が決まってしまい、ストローク限界の変更は困難)。従って、複雑な機構もなくシンプルな構造にて、フレーム部230に対するジャケット部220の高さ方向の位置が、簡単かつ的確に調整される。また、対象者の上半身が前に傾いた場合であっても、背中に接触するクッション237G(背当て部237C)を、対象者の肩から腰の方向へと長くすることで、アシストトルクを出力するアクチュエータユニット(204R、204L)を適切に支持することができる。さらに、対象者の上半身が左右に傾いた場合であっても、対象者の背中の曲がり中心にクッション237G(背当て部237C)が接触することで、アシストトルクを出力するアクチュエータユニット(204R、204L)をより適切に支持することができる(支持剛性が高くなる)。また、バックパック部237の内部の部品を平面的に配置することで、バックパック部237の厚さ(対象者の背中の面に対して垂直方向)を薄くすることが可能であり、狭い作業現場等において対象者の背後の干渉を低減して作業性を向上させることができる。
また、支持体231SRのいずれかのベルト接続孔231H(ベルト接続部)には、図43に示すように、右肩ベルト224Rのベルト接続部224RSが接続される。同様に、支持体231SLのいずれかのベルト接続孔231H(ベルト接続部)には、図43に示すように、左肩ベルト224Lのベルト接続部224LSが接続される。対象者の体格に合わせて、適切な位置のベルト接続孔231Hを選択することで、対象者の肩及び胸周りに密着させたジャケット部を、フレーム部に適切に密着させることができる。従って、対象者に対するジャケット部及びフレーム部のズレを抑制し、アシストトルクを効率良く伝達することができる。なお、支持体231SR、231SLは、バックパック部237に設けられていてもよい。
バックパック部237の下端の左右には、ベルト接続部237FR、237FLが設けられている。ベルト接続部237FRには、図43に示すように、右腋ベルト225Rのベルト接続部225RSが接続される。同様に、ベルト接続部237FLには、図43に示すように、左腋ベルト225Lのベルト接続部225LSが接続される。なお、ベルト接続部237FR、237FLは、メインフレーム231に設けられていてもよい。
●[ジャケット部220の構造の詳細(図43、図44)]
ジャケット部220は、図44に示すように、対象者の肩周り及び胸周りに装着される右胸装着部221Rと左胸装着部221Lとを有している。右胸装着部221Rと左胸装着部221Lは、バックル221Bにて、容易に接続と解放が可能とされている。
右胸装着部221Rの下方には、固定部228Rが設けられており、固定部228Rには、右肩ベルト223Rの一方端が固定されている。また固定部228Rには、右腋ベルト226Rの一方端と、連結ベルト229Rの一方端が固定されている。右肩ベルト223Rの他方端は、右肩ベルト保持部材223RK(右肩コキ)を介して右肩ベルト224Rの一方端に接続されている。そして右肩ベルト224Rの他方端には、ベルト接続部224RSが接続されている。固定部228Rからベルト接続部224RSまでの距離は、右肩ベルト保持部材223RKにて調整可能とされている。同様に、右腋ベルト226Rの他方端は、右腋ベルト保持部材226RK(右腋コキ)を介して右腋ベルト225Rの一方端に接続されている。そして右腋ベルト225Rの他方端には、ベルト接続部225RSが接続されている。固定部228Rからベルト接続部225RSまでの距離は、右腋ベルト保持部材226RKにて調整可能とされている。同様に、連結ベルト229Rの他方端は、連結ベルト保持部材229RK(連結コキ)を介して連結ベルト229RDの一方端に接続されている。そして連結ベルト229RDの他方端には、連結部229RSが接続されている。固定部228Rから連結部229RSまでの距離は、連結ベルト保持部材229RKにて調整可能とされている。なお、左胸装着部221Lにおける左肩ベルト223L、224L、左腋ベルト226L、225L、連結ベルト229L、229LD等も同様であり、これらの説明は省略する。
そして図43に示すように、右腋ベルト225Rのベルト接続部225RSは、バックパック部237のベルト接続部237FRに接続され、左腋ベルト225Lのベルト接続部225LSは、バックパック部237のベルト接続部237FLに接続される。また、右肩ベルト224Rのベルト接続部224RS、及び左肩ベルト224Lのベルト接続部224LSは、アシスト装置を装着した対象者の肩の位置に合わせて、上下に複数配置されたベルト接続孔231Hの中から適切なベルト接続孔が選択され、選択されたベルト接続孔231Hに接続される。そして、対象者の肩周り及び胸周りに右胸装着部221Rと左胸装着部221Lが密着するように、右肩ベルト223R、224R、及び左肩ベルト223L、224Lの長さが調整され、右腋ベルト225R、226R、及び左腋ベルト225L、226Lの長さが調整される。また、連結ベルト229RDの連結部229RS、及び連結ベルト229LDの連結部229LSは、図35に示すように腰サポート部210に設けられた連結リング219RS、及び連結リング219LS(図41参照)に接続される。そして、連結ベルト229R、229Lの長さが調整される。
なお、図43に示すように、ベルト接続部224RS、224LSは、ベルト接続孔231H(ベルト接続部に相当)に対して着脱可能に接続される。また、ベルト接続部225RSは、ベルト接続部237FRに対して着脱可能に接続され、ベルト接続部225LSは、ベルト接続部237FLに対して着脱可能に接続される。従って、ベルト接続部224RS、224LS、225RS、225LSは、背当て部237C(またはフレーム部230)に設けられたベルト接続部(231H、237FR、237FL)へのジャケット部220の接続と解放を可能とするジャケット・フレーム着脱機構に相当している。また、図43に示す連結部229RSは、図35に示すように腰サポート部210の連結リング219RS(図41参照)に対して着脱可能に接続され、図43に示す連結部229LSは、図35に示すように腰サポート部210の連結リング219LS(図41参照)に対して着脱可能に接続される。従って、連結部229RS、229LSは、腰サポート部210(腰サポート部210に設けられた連結リング219RS、219LS)へのジャケット部220の接続と解放を可能とするジャケット・腰サポート着脱機構に相当している。上記のジャケット・フレーム着脱機構、ジャケット・腰サポート着脱機構を有することで、対象者の体型や体格に合わせて、適切な大きさと形状のジャケット部へと、変更することが容易である。従って、対象者へのジャケット部の装着性を、より向上させることができる。
ジャケット部220は、非常にシンプルかつ軽量な構造にて(右肩ベルト、左肩ベルト、右腋ベルト、左腋ベルトによって)、対象者の右肩、左肩、右腋、左腋に密着される構造を有しているとともに、(連結ベルトによって)腰サポート部210に対する位置のズレも抑制されている。従って、ジャケット部220は、対象者に適切に密着され、アシストトルクをより効率よく伝達することができる。
また、図36に示すアシスト装置201Aは、図35に示すアシスト装置201のジャケット部220における右腋ベルト225Rと左腋ベルト225Lを、密着ベルト225RLに変更した例を示している。図36に示すように、右腋ベルト225R(図43参照)、左腋ベルト225L(図43参照)、ベルト接続部225RS、225LS(図43参照)、ベルト接続部237FR、237FL(図43参照)、が省略され、右腋ベルト225Rと左腋ベルト225Lとを一本化した密着ベルト225RLに変更されている。また、一本化することなく、右腋ベルト225Rと左腋ベルト225Lを接続して密着ベルト225RLとしてもよい。そして密着ベルト225RLは、対象者の胸部から腹部の間の胴部に巻かれ、対象者の胴部とジャケット部220Aとを密着させる。
図36に示す密着ベルト225RLは、右腋ベルト保持部材226RK(図43参照)を介して右腋ベルト226Rに接続され、左腋ベルト保持部材226LK(図43の左胸装着部221Lの裏側、図44参照)を介して左腋ベルト226Lに接続されている。密着ベルト225RLは、右腋ベルト保持部材226RK及び左腋ベルト保持部材226LKを調整することで、ベルト長さが調整される。密着ベルト225RLは、ジャケット部220Aの下側周囲を、対象者の胴部の周囲に密着させることで、例えば対象者の荷物の持ち上げ・持ち下げ動作にて、対象者が前にかがんだり(前屈しても)、背をそらしても(後屈しても)、ジャケット部220Aと対象者の胴部周囲との密着性の低下を抑制することが可能である。従って、密着ベルト225RLによって、ジャケット部220Aの密着性低下によるばたつきの抑制と、アシストトルクを効率良く伝達することが可能になる。また、対象者の胴部の周囲を密着させる位置は、対象者の胸部から腹部の間(胴体の周囲)でよい。より好ましい位置としては、対象者の胸部の下側の周囲(下方の肋骨の周囲)に密着ベルト225RLを密着させることが好ましい。この場合、バックパック部237の下側で、密着ベルト225RLが対象者の胸周りの骨部(下方の肋骨)を押さえることになり、対象者の腹部を締め付ける圧迫感がない。また、バックパック部237に近い位置にジャケット部220Aを保持することで、装着感が良く(圧迫感がないほど良い)、アシストトルクを効率良く伝達することができる。さらに、持ち下げ動作時のアシストトルクを維持するときなどにも、ジャケット部220と対象者の胴部周囲との密着性の低下を抑制することも可能であって、装着感が良く、アシストトルクを効率良く伝達することができる。
●[右アクチュエータユニット204R(左アクチュエータユニット204L)のリンク機構(図38、図45~図51)]
次に図38、図45~図51を用いて、右アクチュエータユニット204Rのリンク機構の詳細について説明する。なお、左アクチュエータユニット204Lのリンク機構も同様であるので、左アクチュエータユニット204Lのリンク機構の説明は省略する。リンク機構の例として、図45に示す出力リンク250Rの例と、図46に示す出力リンク250RAの例について説明する。
図45に示す出力リンク250Rは、アシストアーム251R(第1リンクに相当)と、第2リンク252Rと、第3リンク253Rと、大腿装着部254R(身体保持部に相当)とが、それぞれジョイント部にて連結されて構成されることで、複数の連結部材にて構成されている。なお、図45に示す大腿装着部254Rは、図47に示す大腿ベルト255Rの記載を省略している。アシストアーム251Rは、トルク発生部240R内にて発生させたアシストトルクと、対象者の大腿部の動作による対象者トルクと、が合成された合成トルクによって、アシスト対象身体部(この場合、股関節)を通る回動軸線240RY(回動軸線215Y、図35参照)回りに回動する。アシストアーム251Rは、図19に示すアシストアーム51Rに相当しており、図19に示す電動モータ47R(アクチュエータ)から回動軸線40RY回りに回動可能とされている。
アシストアーム251Rの先端には、回動軸線251RJ回りに回動可能となるように、第2リンク252Rの一方端が、第1ジョイント部251RSにて連結されている。つまり、第1ジョイント部251RSは、アシストアーム251Rに対して第2リンク252Rを、アシストアーム251Rに設定された回動軸線251RJ(第1ジョイント回動軸線に相当)回りに回動可能な自由度1を有する連結構造とされている。また、第2リンク252Rの他方端には、回動軸線252RJ回りに回動可能となるように、第3リンク253Rの一方端が、第2ジョイント部252RSにて連結されている。つまり、第2ジョイント部252RSは、第2リンク252Rに対して第3リンク253Rを、第2リンク252Rに設定された回動軸線252RJ(第2ジョイント回動軸線に相当)回りに回動可能な自由度1を有する連結構造とされている。また、第3リンク253Rの他方端は、第3ジョイント部253RS(図45の例では球面ジョイント)にて大腿装着部254Rと連結されている。従って、第3リンクと大腿装着部254R(身体保持部)との間の第3ジョイント部253RSは、自由度3の連結構造とされている。以上より、図45に示す出力リンク250Rの自由度の総数は、1+1+3=5である。第3ジョイント部253RSが自由度3を有する球面ジョイントの場合、対象者が開脚した場合等において、対象者の大腿部に密着させた身体保持部を、開脚した大腿部に密着させたまま適切に追従させることが容易となる。
なお、出力リンク250Rの自由度の総数は、3以上であればよい。例えば、図47に示すように、第3リンク253Rの他方端に対して、回動軸線253RJ回りに大腿装着部254Rが回動可能となるように第3ジョイント部253RSを構成してもよい。図47の例では、第3ジョイント部253RSは、第3リンク253Rに対して大腿装着部254Rを、第3リンク253Rに設定された回動軸線253RJ(第3ジョイント回動軸線に相当)回りに回動可能な自由度1を有する連結構造とされている。従って、この場合の出力リンクの自由度の総数は、第1ジョイント部251RSの自由度が「1」、第2ジョイント部252RSの自由度が「1」であるので、1+1+1=3となる。第3ジョイント部253RSが自由度1を有するジョイントの場合、対象者が開脚した場合等において、第3ジョイント部が自由度3のジョイントである場合と比較して、対象者の大腿部に密着させた身体保持部の位置がズレにくくなり、アシストトルクをより効率良く伝達することができる。
自由度の総数が3以上であれば、図45に示すように、対象者の体格や動作(左右の脚を開く動作等)に応じて、大腿装着部254Rの位置を、上下や左右に移動可能であるとともに、大腿装着部254Rを回転させたり傾斜させたりすることが可能であり、対象者の大腿部に密着させることができる。従って、アシストトルクを効率よく伝達することができる。なお、第2リンクや第3リンクの回動範囲を制限するストッパを設けると、より好ましい。
なお、図47に示すように、第3リンク253Rに連結されて対象者の大腿部に装着される大腿装着部254Rと、対象者の大腿部を一周するように大腿装着部254Rに設けられて伸縮可能な大腿ベルト255Rと、にて身体保持部が構成されている。大腿ベルト255Rは伸縮する弾性体で形成されており、一方端の側は大腿装着部254Rに固定され、他方端の側は面ファスナ255RMとされている。また大腿装着部254Rにおける大腿ベルト255Rの他方端の側と対向する位置には、面ファスナ254RMが設けられている。従って、大腿装着部254Rを大腿部に装着した対象者は、大腿ベルト255Rを少し引っ張りながら自身の大腿部に巻回して、大腿ベルト255Rの他方端の側の面ファスナ255RMを、大腿装着部254Rの面ファスナ254RMに重ねることで、大腿装着部254Rを容易にかつズレないように大腿部に密着させることができる。
また図47は大腿装着部254R及び大腿ベルト255Rにて身体保持部を構成した例を示しているが、図48は大腿装着部254R及び大腿ベルト255Rと、膝下ベルト257Rと、にて身体保持部を構成した例を示している。図48に示すように、大腿ベルト255Rは、対象者の膝上部の大腿部を一周するように大腿装着部254Rに設けられている。また膝下ベルト257Rは、対象者の膝下部を一周するように設けられている。また、膝下ベルト257Rは、大腿ベルト255Rと同じ材質で形成され、大腿ベルト255Rと同様、面ファスナを有して膝下部に密着される。そして大腿ベルト255Rと膝下ベルト257Rは、対象者の膝の裏側において、対象者の大腿部から足先方向に延びる連結部材256Rにて連結されている。連結部材256Rは、対象者の膝の裏に配置され、対象者の膝の曲げ伸ばしに追従して曲がることが可能な材質とされている。このように、大腿ベルト255Rは対象者の膝上側に密着されて保持され、膝下ベルト257Rは対象者の膝下側に密着されて保持される。つまり、大腿ベルト255Rと膝下ベルト257Rにて、対象者の膝を上下から挟み込むように身体保持部を密着させる。従って、対象者の歩行や荷物の持ち上げ・持ち下げのときなどの膝部の急な動き(曲げ伸ばし)や大きなアシストトルクなどに対しても、対象者の大腿部(膝上部)及び膝下部に密着させた身体保持部の位置のズレが抑制され、アシストトルクをより効率良く伝達することができる。
図46に示す出力リンク250RAは、アシストアーム251R(第1リンクに相当)と、第2リンク252RA(及び第2ジョイント部252RS)と、第3リンク253RAと、大腿装着部254R(身体保持部に相当)とが、それぞれジョイント部にて連結されて構成されることで、複数の連結部材にて構成されている。なお、図46に示す大腿装着部254Rは、図47に示す大腿ベルト255Rの記載を省略している。アシストアーム251Rは、トルク発生部240R内にて発生させたアシストトルクと、対象者の大腿部の動作による対象者トルクと、が合成された合成トルクによって、アシスト対象身体部(この場合、股関節)を通る回動軸線240RY(回動軸線215Y、図35参照)回りに回動する。アシストアーム251Rは、図19に示すアシストアーム51Rに相当しており、図19に示す電動モータ47R(アクチュエータ)から回動軸線40RY回りに回動可能とされている。
アシストアーム251Rの先端には、回動軸線251RJ回りに回動可能となるように、第2リンク252RAの端部が、第1ジョイント部251RSにて連結されている。つまり、第1ジョイント部251RSは、アシストアーム251Rに対して第2リンク252RAを、アシストアーム251Rに設定された回動軸線251RJ(第1ジョイント回動軸線に相当)回りに回動可能な自由度1を有する連結構造とされている。また、第2リンク252RAと第2ジョイント部252RSは一体化されており、第2リンク252RAには、長手方向であるスライド軸線252RSJに沿って往復スライド可能な第3リンク253RAの一方端の側が、第2ジョイント部252RSにて連結されている。つまり、第2ジョイント部252RSは、第2リンク252RAに対して第3リンク253RAを、第2リンク253RAに設定されたスライド軸線252RSJ(第2ジョイントスライド軸線に相当)に沿ってスライド可能な自由度1を有する連結構造とされている。また、第3ジョイント部253RS(図46の例では球面ジョイント)にて大腿装着部254Rと連結されている。従って、第3リンクと大腿装着部254R(身体保持部)との間の第3ジョイント部253RSは、自由度3の連結構造とされている。以上より、図46に示す出力リンク250RAの自由度の総数は、1+1+3=5である。なお自由度の総数は3以上であればよいので、図47に示すように、第3ジョイント部を、大腿装着部254Rが回動軸線253RJ回りに回動可能となるように自由度1の連結構造としてもよい。
自由度の総数が3以上であれば、図46に示すように、対象者の体格や動作(左右の脚を開く動作等)に応じて、大腿装着部254Rの位置を、上下や左右に移動可能であるとともに、大腿装着部254Rを回転させたり傾斜させたりすることが可能であり、対象者の大腿部に密着させることができる。従って、アシストトルクを効率よく伝達することができる。なお、第2リンクの回動範囲や第3リンクのスライド範囲を制限するストッパを設けると、より好ましい。また、図45に示す出力リンク250Rでは、対象者が開脚して、膝を折り曲げて腰を落とす(しゃがむ)ときに、対象者の脚部の外側へ第2ジョイント部252RS、第3リンク253Rなどがはみ出してしまう。しかし、図46に示す出力リンク250RAでは、第2ジョイント部252RS、第3リンク253RAなどがはみ出すことが抑制されるので、対象者が狭いところで作業を行う場合であっても、出力リンク250RAの干渉が抑制され、効率よく作業を行うことができる。
また、図47を用いて上述したように、大腿装着部254Rには、大腿ベルト255Rが設けられており、この大腿ベルト255Rにて、大腿装着部254Rを、対象者の大腿部に容易にかつズレないように大腿部に密着させることができる。
また、図49~図51は、図46に示すリンク機構において、第3リンク253RAと大腿装着部254Rとの連結部である第3ジョイント部253RSの位置を、対象者の大腿部の前面に配置した例(図49)、対象者の大腿部の外側となる側面に配置した例(図50)、対象者の大腿部の背面に配置した例(図51)、を説明する図である。
図49の例は、第2リンク252RAの下方を対象者の前方に向けて延長させて、第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAを対象者の前面に配置し、第3ジョイント部253RSの位置を、対象者の大腿部の前面に配置している。この場合、アシストトルクを伝達する際には、対象者の前面に配置された第3ジョイント部253RS(アシストトルクが印加される力点)を、前面側から背面側に押し付ける、あるいは背面側から前面側に引っ張るので、効率よくアシストトルクを伝達することができる。ただし、対象者の前面に配置された第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAが、対象者の作業の種類(例えば、荷物の持ち上げ持ち下げ作業)によっては、作業時に邪魔となる可能性がある。
図50の例は、第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAを対象者の側面に配置し、第3ジョイント部253RSの位置を、対象者の大腿部の外側となる側面に配置している。この場合、アシストトルクを伝達する際には、対象者の側面に配置された第3ジョイント部253RS(アシストトルクが印加される力点)を、前面側から背面側に押し付ける、あるいは背面側から前面側に引っ張ることになる。図49の場合と比較して、例えば荷物の持ち上げ持ち下げ作業時において、対象者の側面に配置された第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAが対象者の作業時に邪魔となる可能性は少ない。しかし、アシストトルクが印加される力点が対象者の側面であるため、アシストトルクが印加された際、対象者の大腿部に装着された大腿装着部254Rが、対象者の大腿部周りに回転する可能性があり、アシストトルクの伝達効率が低下する可能性が考えられる。
図50の例は、第2リンク252RAの下方を対象者の後方に向けて延長させて、第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAを対象者の背面に配置し、第3ジョイント部253RSの位置を、対象者の大腿部の背面に配置している。この場合、アシストトルクを伝達する際には、対象者の背面に配置された第3ジョイント部253RS(アシストトルクが印加される力点)を、前面側から背面側に引っ張る、あるいは背面側から前面側に押し付けるので、効率よくアシストトルクを伝達することができる。ただし、例えば荷物の持ち上げ持ち下げ作業時において、対象者の背面に配置された第2ジョイント部252RSと第3リンク253RAが、対象者の作業時に邪魔となる可能性は少ないが、対象者が椅子等に腰掛ける際に邪魔となる可能性が考えられる。
本発明のアシスト装置の構造、構成、形状、外観、処理手順等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、制御装置の処理手順は、図27~図32に示すフローチャートに限定されるものではない。また、本実施の形態の説明では、渦巻バネ45R(図19参照)を用いた例を説明したが、渦巻バネの代わりにトーションバネ(torsion barやtorsion bar spring)を用いてもよい。
本実施の形態にて説明したアシスト装置1では、ベルト保持部材として、コキまたはバックルを用いる例を説明した。そして、ベルト等の接続と解放をバックルにて行う例を説明したが、バックルとは異なるベルト保持部材にてベルト等の接続と解放を行うようにしてもよい。また、コキにベルトを通すことで、引っ張ったベルトが緩まないようにしたが、コキ以外のベルト保持部材を用いてもよい。また、コキとバックルの双方の機能を有するベルト保持部材を用いてもよい。
本実施の形態にて説明したアシスト装置1は、アシスト倍率α、微分補正ゲインβを、入力手段33RSから指示する例を説明したが、制御装置61に(無線または有線で通信する)通信手段64(図24参照)を設け、スマートフォン等からの通信にてアシスト倍率α、微分補正ゲインβを設定できるようにしてもよい。また、制御装置61に(無線または有線で通信する)通信手段64(図24参照)を備え、制御装置61にて種々のデータを収集し、収集したデータを所定タイミング(常時、一定時間間隔、アシスト動作の終了後など)で解析システムに送信するようにしてもよい。例えば収集したデータには、対象者情報とアシスト情報とが有る。対象者情報は、例えば、対象者トルクや対象者の姿勢などを含み、対象者に関する情報である。アシスト情報は、例えば、アシストトルク、電動モータ(アクチュエータ)の回転角度(図24中の実モータ軸角度θrM)、出力リンク回動角度(図24中の実リンク角度θL)、アシスト倍率α、微分補正ゲインβなどを含み、左右のアクチュエータユニットの入出力に関する情報である。また解析システムは、アシスト装置とは別に用意されたシステムであり、例えば、ネットワーク(LAN)で接続する外部のパーソナルコンピュータ、サーバ、PLC(Programmable Logic Controller)、CNC(Computerized Numerical Control)装置などの組み込みシステムである。そして解析システムにて、アシスト装置1に固有(すなわち、対象者に固有)の最適な設定値(アシスト倍率α、微分補正ゲインβ等の最適な値)を解析(算出)させ、解析結果(算出した結果)である最適な設定値を含む解析情報を、アシスト装置1の制御装置61(通信手段64)に送信するようにしてもよい。解析システムで対象者の動作、アシスト力等を解析することで、作業の種類(繰り返しや、持ち上げ高さなど)や、対象者の能力を考慮した最適なアシストトルクを出力できる。そして左右のアクチュエータユニットは、解析システムから受信した解析情報(例えば、アシスト倍率α、微分補正ゲインβ)に基づいて、自身の動作を調整する(例えば、アシスト倍率α、微分補正ゲインβを、受信したアシスト倍率α、微分補正ゲインβに変更する)。