JP7016473B2 - 塵捕捉用シート体、その塗装ブース - Google Patents
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更には、塵捕捉用シート体を使った塗装ブース、そして塵の捕捉除去方法に関する。
これらの高光沢面は、塗装により現出することができるが、塗装を行う際に高光沢面に付着する塵(例えば糸片、微細片、埃等)は、目立ち易く、品質を大きく低下させる原因となる。
しかし、大きなサイズの被塗装物は広い規模のクリーンルームが必要で、設備的に経費が極めて大となる。
この場合、塗装ブース内の空気中に浮遊する、糸片、微細片、埃等の塵が被塗装物に付着してしまってその塗装面に残ることとなる。
特に、塗装面が高光沢面の場合は、付着した異物が目立って、品質に悪い影響を及ぼすこととなる。
排気ファンにより一方向に吸引することで、空気は外部からダストキャッチネットを通過して、塗装ブース内に引き込まれる。
そのため、空気が通過する際、その空気に含まれる糸片、微細片、埃等の塵がダストキャッチネットにより捕捉されることになる。
しかし、ダストキャッチネットは、一定量の塵が捕捉された後は、捕捉効率が極端に悪くなるので、ダストキャッチネット全体を捕捉された塵と共に廃棄する必要がある。
廃棄する場合ごとに、わざわざダストキャッチネットを取り外し、その後、また新しいダストキャッチネットの取り付けを行わなければならならず、多くの手数を要し効率的ではない。
すなわち、本発明の目的は、繰り返し使え、空気中に浮遊する糸片、微細片、埃等のいわゆる塵を効率よく捕捉除去することができる塵捕捉用シート体及び塗装ブース、更にはそれを使った塵捕捉除去方法を提供することにある。
また、建屋内で塗装以外の他の工程作業が必要になった場合、塗装ブースPを最小限に縮小した状態とすることで、他の工程作業に対応することが可能となり、床面を有効に利用することができる。
本発明の塵捕捉用シートAは、空気中に浮遊する糸片、微細片、埃等の塵を捕捉して除去するための塵捕捉用シート体Aである。
また、図3は本発明の塵捕捉用シートAの構成を説明する概略図である。
粘着剤Nは、その通気性ネット1に付与されているが、両面でなくても少なくとも片面には付与されていることが必要である。
ここで、粘着剤Nとしては、例えば、アクリル系、SBR、天然ゴム系等の粘着剤Nが採用される。
粘着剤Nが付与されている通気性ネット1は、多数のメッシュ目(網目、編目等)を有するもので通気性があり、メッシュ目は、通気性ネット1を構成する糸により区画形成されている。
通気性ネット1は製網機、編機、織機等によって製造され、そのメッシュ目の大きさは通気性の観点から2mm~15mm(最大部)が好ましく採用される。
製造装置を選択することにより、メッシュ目の形状は種々の形状(矩形、菱形、円、楕円等)が可能である。
また、通気性ネット1に使われる糸の形態としては、マルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸等が挙げられる。
本発明の通気性フィルタシート2は、通気性ネット1に粘着により添着されるもので、空気中に含まれる塵を空気の移動を利用して捕捉する機能を有する。
従って、塵を捕捉することができるもので、少なくとも有孔の通気性のあるシートが採用される。
素材としては、繊維布(織地、編地、不織布等)や粗目の紙が有効に採用される。
繊維布としては、天然繊維や合成繊維の布が挙げられ、糸の形態としてはマルチフィラメント、モノフィラメント、紡績糸等が挙げられる。
図4及び図5は、本発明の塵捕捉用シート体Aによる捕捉原理を説明する図である。
また、図6は本発明の塵捕捉除去方法を示す工程ブロック図である。
塵を含んだ空気は塵捕捉用シート体Aに達し、その後、通気性のある通気性フィルタシート2と通気性ネット1とを通過する。
尚、図4及び図5については、詳しく後述する。
ここで、通気性フィルタシート2の裏面には、通気性ネット1の粘着剤が存在するので、通気性フィルタシート2の目孔に食い込んだ塵は、それだけで捕捉されるが、更に粘着剤によっても粘着されて捕捉される。
或いは、また、塵が通気性フィルタシート2に静電気により捕捉される作用も生じる。
これが塵を含む空気を通過させて、通気性フィルタシート2により塵を捕捉する塵捕捉工程である。
空気中の塵は、通気性フィルタシート2で捕捉された後なので、塵を捕捉された後の空気は通気性ネット1のメッシュ目から逃げる。
これが塵を捕捉された後の空気が通気性ネット1を通過して逃げる逃がし工程である。
ここで、塵捕捉用シート体Aを使用することによって、通気性フィルタシート2に一定量の塵が捕捉された場合、この通気性フィルタシート2は、通気性ネット1から分離されて(すなわち剥離により引き剥がされて)塵と共に除去される。
このように分離の際は、粘着剤Nの粘着力に逆らって通気性フィルタシート2を矢印の如く通気性ネット1から引き剥がせばよい。
この分離は、通気性フィルタシート2に、塵が捕捉された結果、捕捉力が低下した後に行うものである。
この分離工程後は、通気性ネット1に、別の新しい、通気性フィルタシート2を添着する。
以下、同様な操作が繰り返される。
以上のように、本発明の塵捕捉用シート体Aは、通気性ネット1はそのままで、通気性フィルタシート2のみを新しいものと交換するだけで、繰り返し長期に使用することができる。
因みに、従来のダストキャッチネットは、所定の塵が捕捉された後は、ダストキャッチネット全体を新しいものと取り換えなければならない。
そのため、使用後の古いダストキャッチネットは廃棄しなければならなく、手間を要し、エネルギ―効率も悪く廃棄物も多くなっていた。
なお、本発明の塵捕捉用シート体は、その一部である通気性フィルタシート2のみを交換するだけでよく、従来のようにダストキャッチネット全体を取り換えるのに較べ、その場合の時間や手間及びコストについても大きく低減される。
本発明の塵捕捉用シート体Aにおいては、通気性フィルタシート2によって塵が捕捉される原理のため、捕捉される塵の大きさは通気性フィルタシート2の目孔の大きさに依存する。
そのため交換する通気性フィルタシート2の目孔の大きさを異なるものと交換することにより、捕捉する塵の大きさを意図的に変えることができる(捕捉塵調整作用)。
ここでは、通気性フィルタシート2の目孔の大きさがL1、通気性ネット1のメッシュ目の大きさがKである場合を想定した。
また、通気性フィルタシート2の目孔を通過したL1未満の塵Mは、その後、通気性ネット1のメッシュ目(大きさK)を逃げる。
ここでは、通気性フィルタシート2の目孔の大きさがL2、通気性ネット1のメッシュ目の大きさがKである場合を想定した(尚、図4とは、L2>L1:K=Kの関係にある)。
また、通気性フィルタシート2の目孔を通過したL2未満の塵Mは、その後、通気性ネット1のメッシュ目(大きさK)を逃げる。
尚、理論的には上述の通りだが、通気性フィルタシート2の目孔を通過したL1、或いはL2未満の塵Mであっても、粘着剤が付着した通気性ネット1によって捕捉されることも当然あり得る。
本発明の塵捕捉用シート体Aは、塵を効率よく捕捉できるためその適用分野は広い。
(塗装ブースへの適用)
図8は、塵捕捉用シート体Aを使った塗装ブースPを示す概略平面図である。
この実施の形態の塗装ブースPにおいては、ブース後壁P1の前面空間に塵捕捉用シート体Aを天井から垂下し、空間を仕切って塗装作業空間部Sを区画形成する。
この仕切られて形成された塗装作業空間部Sの中で、図示しない塗装対象物(ワーク)に塗装を施す作業を行う。
この場合、図に示すように、一方側から排気手段Fにより排出力を生じさせ、塗装作業空間部Sに空気流の雰囲気を作る。
そのため、塗装ブースPにそれ以外の他の所から空気が流れ込んでくる現象が生じる。
すなわち、前述したように、塗装ブースPの外にある塵を含んだ空気は、塵捕捉用シート体Aに達してそれを通過するが、空気中の塵は、最初に通気性フィルタシート2に衝突し絡むようにして捕捉されることになる。
因みに、塗装ブース内の空気の流れは、排気手段の排出力の強弱により、例えば0.1m/秒~0.8m/秒程度の緩やかな流れとする。
このようなブース内の塵が除去された環境では、塗装面に塵が付着するようなことが回避され品質の良い塗装物が得られる。
すなわち、通気性ネット1に対して、部分的に目孔の異なる通気性フィルタシート2を添着することが可能である。
そのため、例えば、通気性ネット1に対して、上半分は、粗い目孔を有する通気性フィルタシート2Aを添着し、下半分は、それより細かい目孔を有する通気性フィルタシート2Bを添着する。
このように区分けすることで、効率よく塵を捕捉除去することができるのである。
この場合、上半分と下半分とで通気性フィルタシート2を変えているが、上半分と下半分とに限らず、部分的に変えることも当然可能である。
通気性フィルタシート2を引き剥がす、すなわち分離する場合、それを手間取らなくて簡単に行えるように、通気性フィルタシート2の周縁の一部に被粘着部分21(図10参照)を設けておくことができる。
通気性フィルタシート2を通気性ネット1から引き剥がす場合は、この被粘着部分21を摘まみ上げて簡単に引き剥がすことができる。
また、通気性フィルタシート2の周縁に摘まみ片22を設けておいても、この摘まみ片22を把持して簡単に引き剥がすことができる。
このような工夫により、塵捕捉用シート体Aにおいて、通気性フィルタシート2を引き剥がして交換することが極めて容易となる。
本発明の塵捕捉用シート体A[粘着剤のついた通気性ネット(商品名;スーパーダストキャッチネット、株式会社メイテック社製)に通気性フィルタシートである不織布(商品名;まもるくん、第一ビニール株式会社製)を添着したもの]を天井からブース後壁部の前面空間に垂らして塗装作業のための一定空間(縦3m、横3m、高さ3.2mのスプレーヤード)を区画形成した。
ブース後壁部に設けられた排気フアンを作動させ、スプレーヤード内の空気を0.5m/秒の流れを有する排出状態に維持した。
この環境で無発塵性の作業服を着た作業者が、熱硬化性樹脂製の浴槽エプロンの表面にピアノブラック色の塗料を順次塗装する作業を30分間行った。
この塗装においては、高光沢の黒色仕上げとなるため、表面に塵等が付着すると容易に視認が可能であり、品質の良否が明確に確認できるものである。
以上、本発明を説明してきたが、本発明は、実施の形態や実施例に拘束されるものではない。
また、建屋のフロアー(床面)を有効利用できる塗装ブースPについていうと、塗装ブース自体を伸縮自在にすることが可能である。
建屋の中で、塗装作業を必要としない場合は、塗装ブース自体を縮小状態にしておくことができる便利さがある。
両側の側壁部には縦方向の複数の支持パイプ3が設けられており、この支持パイプ3の間には中心部を枢着されたX状の結合パイプ4が回動自在に取り付けてある。
支持パイプ同士の間隔は、このX状の結合パイプ4により自由に調整できる。
各支持パイプ3の下端には、車輪31が設けられているため各支持パイプ3は建屋の床面を水平方向に移動することができる。
そして、両側の支持パイプ3には、側壁部全体に渡って塵捕捉用シート体Aが張設されている。
また、奥側(出口側)の側壁部には、上方に両側の側壁部をつなぐように結合パイプが渡されている。
この奥側(出口側)の側壁部は、排気フアン等の排気手段が備わっており、この排気手段により、塗装作業空間部の空気を吸引して該塗装作業空間部から外部に排出する。
奥側(出口側)の側壁部は、必ずしも塵捕捉用シート体を設ける必要はなく、フイルタ等を備えた壁面であってよい。
このような構造の塗装ブースPにおいて、塵捕捉用シート体よりなる側壁部とプラスチックシートよりなる天井部とによって仕切られた塗装作業区間部の中で、塗装作業が効率よく行われる。
天井に張設された天井シート5は、屈曲性があるので支持パイプ3の移動に、すなわち側壁部の伸縮に、容易に追従することができる。
また、天井シート5を透明のものにすることで、建屋天井に設けられた照明を利用でき塗装ブース内を明るくすることができる。
また、建屋内で塗装以外の他の工程作業が必要になった場合、塗装ブースPを最小限に縮小した状態とすることで、他の工程作業に対応することが可能となり、極めて便利である。
この様に、本発明の塗装ブースPは、床面を有効に利用することができる。
そのため、塗装ブース以外にも、空調機器の空気取り入れ口用のフィルタ、防塵服等、本発明の原理を使ったものであれば種々の分野での適用が可能である。
2・・・通気性フィルタシート
3・・・支持パイプ
31・・・キャスタ
4・・・X状の結合パイプ
5・・・天井シート
A・・・塵捕捉用シート体
K・・・通気性ネットのメッシュ目の大きさ
L1,L2・・・通気性フィルタシートの目孔の大きさ
M・・・塵
N・・・粘着剤
F・・・排気手段
P・・・塗装ブース
S・・・塗装作業空間部
Claims (5)
- 塵を捕捉して除去する塵捕捉用シート体であって、多数のメッシュ目を有し粘着剤が付与されている通気性ネットとその表面に添着された通気性フィルタシートとよりなり、
通気性ネットの片面に通気性フィルタシートが粘着力に逆らって引き剥がし可能に添着されており、
通気性フィルタシートの目孔が通気性ネットのメッシュ目より小さいものであり、
風上側に通気性フィルタシートを配置し、風下側に通気性ネットを配置して使用することを特徴とする塵捕捉用シート体。 - 通気性ネットのメッシュ目の最大部の大きさが、2mm~15mmであることを特徴とする請求項1記載の塵捕捉用シート体。
- 上記請求項1記載の塵捕捉用シート体を使った塗装ブースであり、塵捕捉用シート体で仕切られた塗装作業空間部と該塗装作業空間部の空気を吸引して該塗装作業空間部から外部に排出する排気手段を備えたことを特徴とする塗装ブース。
- 塵捕捉用シート体が天井から垂下されていることを特徴とする請求項3記載の塗装ブース。
- 上記請求項1記載の塵捕捉用シート体を使った塗装ブースであり、塵捕捉用シート体よりなる側壁部と天井シートよりなる天井部とによって仕切られた塗装作業区間部と該塗装作業空間部の空気を吸引して該塗装作業空間部から外部に排出する排気手段を備え、
上記側壁部には縦方向の複数の支持パイプが設けられており、この支持パイプの間には中心部を枢着されたX状の結合パイプが回動自在に取り付けられており、支持パイプ同士の間隔は、このX状の結合パイプにより自由に調整可能であることを特徴とする塗装ブース。
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