JP7014354B2 - 高強度繊維、及び高強度繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、高強度繊維、及び高強度繊維の製造方法に関する。
防弾チョッキ等の高強度織物又は高強度編物の製造、釣り糸、漁網、重量物の吊り下げ用ロープ、船舶係留用ロープなどには、軽量であり、金属繊維に比較して耐酸性が良好であり、塩の影響を受けにくいという点から、高強度合成繊維が求められている。
高強度繊維の需要は広範に亘り、強度と物性とが良好な高強度繊維が求められ、各種の検討がなされている。
例えば、短径が50μm以上であり、かつ比重が1.31(20℃)を超える物質の含有量が、ポリエチレンパウダー500g中10個以下であり、粘度平均分子量が100,000以上である、高分子量ポリエチレンパウダーを用いて製造された高強度繊維が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の繊維は、ゲル紡糸法により製造されており、溶剤を使用することから、製造時に使用する溶剤の処理が問題となる。特許文献1に記載のポリエチレン繊維は、連続製造された繊維の寸法安定性が良好であることは確認されている。しかし、強度については「手で単糸を引張っても切断しない」と記載されるのみであり、既述の高強度繊維の用途に使用するための充分な強度を有するか否かについては確認されていない。
また、釣り糸に関しては、超高分子量ポリオレフィン繊維糸が製紐(編組)構成されている釣糸であって、組み紐の編密度が1インチ(24.5mm)間15以上で、直線強度が20g/d以上の強力を有する釣り糸(例えば、特許文献2)及び、超高分子量ポリエチレン繊維糸をもって構成される釣糸の製造方法であって、超高分子量ポリエチレン繊維糸を、編組(製紐)、加撚、もしくは被覆(カバーリング)処理を施した後、あるいはこれらの2種以上の処理を組合せた処理を施した後、該超高分子量ポリエチレン繊維糸の融解点温度未満にて、延伸倍率を1.01~4.00の範囲内で加熱延伸を行い、編組処理された釣糸の延伸後編密度(PIC数)を1インチ間15以上とする釣り糸の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、釣糸にも使用しうる滑らかな表面を有し、切断されやすい融着糸条として、熱可塑性樹脂からなるフィラメント複数本を引きそろえ、所望により加撚および/または製紐し、ついで、延伸倍率1.0未満で加熱下にて延伸することにより、隣接するフィラメントを実質的に融着させ、ついで、延伸倍率1.0より高い倍率で加熱下延伸することにより製造される融着糸条が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2016-35063号公報 特許第5105724号公報 特許第5116223号公報 特開2008-75239号公報
特許文献2及び特許文献3において使用される超高分子量ポリエチレン繊維は、市販品を用いているが、これらはいずれもゲル紡糸法により製造されており、特許文献1と同様に有機溶剤の使用を必要とし、より環境負荷が低く、より高強度な合成繊維及びその製造方法が求められている。
また、特許文献4に記載の融着糸条もまた、熱可塑性樹脂フィラメントとして超高分子量ポリエチレンのモノフィラメントを使用する態様が記載されてはいるが、同様にゲル紡糸法により製造されたフィラメントを用いている。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、超高分子量ポリエチレンを用いた、引張強度、剛性、および、摩擦された部分若しくは結節部分における強度保持性能が良好な高強度繊維を提供することである。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、引張強度、剛性、および、摩擦された部分若しくは結節部分における強度保持性能が良好な高強度繊維を、有機溶剤を用いないか、極めて少ない使用量にて製造することができる高強度繊維の製造方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段は、以下の実施形態を含む。
<1>超高分子量ポリエチレン原料を含む高強度繊維であり、直径が1mm以下であり、引張り破断強度が100MPa以上であり、かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5(mm)以下である高強度繊維。
-曲げ硬さ試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
<2> 超高分子量ポリエチレン原料からなる<1>に記載の高強度繊維。
<3> 超高分子量ポリエチレン原料を含む短冊状フィルム片を複数含み、前記短冊状フィルム片は、互いに界面で融着しており、引張り破断強度が100MPa以上であり、かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5(mm)以下である高強度繊維。
-曲げ硬さ試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
<4> 下記摩擦試験後の引張り破断強度が摩擦試験前の引張り破断強度の40%以上である<3>に記載の高強度繊維。
-摩擦試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、内径5mmのアルミナ製ガイドリング内に、高強度繊維を通し、前記高強度繊維の先端に50gの分銅を固定して、ガイドリングより、鉛直方向に100mmの長さで垂らす。その後、ガイドリングより上流の繊維を50mm水平に引張り、分銅を固定した高強度繊維をガイドリングに摩擦させ、その後、分銅が引張る前の位置に戻るように、水平に引張った高強度繊維をガイドリング側に戻す。この操作を50回繰り返し、ガイドリングにより高強度繊維を摩擦し、高強度繊維の摩擦された部分の破断強度を測定する。
<5> 結節強度が引張り破断強度の40%以上である<3>又は<4>に記載の高強度繊維。
<6> 超高分子量ポリエチレン原料の粘度平均分子量が100万~1200万である<1>~<5>のいずれか1つに記載の高強度繊維。
<7>撚り紐又は組紐の組織を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の高強度繊維。
<8> 超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程、前記工程で得られた超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る工程、前記短冊状のフィルム片を、複数本編むか又は複数本撚ることで、短冊状のフィルム片を製紐する工程、及び、前記短冊状のフィルムの融点以上の温度にて、製紐された短冊状のフィルム片を、長手方向に一軸に延伸する工程、を含む高強度繊維の製造方法。
<9> 前記短冊状のフィルム片の長手方向に直交する断面において、断面の最短片の長さに対する最長辺の長さの比が、1.1~100である<8>に記載の高強度繊維の製造方法。
<10> 前記短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る工程の前に、前記工程で得られた超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを、x軸およびy軸の少なくとも一方の軸方向に延伸処理する工程をさらに含む<8>又は<9>に記載の高強度繊維の製造方法。
<11> 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを延伸処理する工程が、前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムの融点以上の温度で行われる<10>に記載の高強度繊維の製造方法。
<12>前記短冊状のフィルム片を製紐する工程の前に、前記短冊状のフィルム片を得る工程により得られた前記短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程をさらに含む<8>~<11>のいずれか1つに記載の高強度繊維の製造方法。
<13> 前記短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程が、前記短冊状のフィルム片の融点以上の温度で行われる<12>に記載の高強度繊維の製造方法。
<14> 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程が、超高分子量ポリエチレン原料からなる超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程である<8>~<13>のいずれか1つに記載の高強度繊維の製造方法。
<15> 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程が、超高分子量ポリエチレン原料からなる超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムを得る工程、及び、前記超高分子量ポリエチレンフィルムと、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムと、を積層する工程を含む<8>~<13>のいずれか1つに記載の高強度繊維の製造方法。
<16> 前記短冊状のフィルム片を製紐する工程が、3本~10本から選択される本数の短冊状のフィルム片を用いて製紐する工程である<8>~<15>のいずれか1つに記載の高強度繊維の製造方法。
本発明の一実施形態によれば、超高分子量ポリエチレンを用いた、引張強度、剛性、および、摩擦された部分若しくは結節部分における強度保持性能が良好な高強度繊維を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、引張強度、剛性、および摩擦された部分若しくは結節部分における強度保持性能が良好な高強度繊維を、有機溶剤を用いないか、極めて少ない有機溶剤の使用量にて製造することができる高強度繊維の製造方法を提供することができる。
曲げ硬さ試験に用いる矩形の硬質試験台及び剛性の高い高強度繊維の垂れ下がり距離の測定箇所を示す模式図である。 曲げ硬さ試験に用いる矩形の硬質試験台及び剛性の低い繊維の垂れ下がり距離の測定箇所を示す模式図である。 摩擦試験の手順を示す模式図である。 編み込み延伸における高強度繊維の製造手順を示す模式図である。 撚り延伸における高強度繊維の製造手順を示す模式図である。 図3Aにおいて、さらに前延伸処理を施す場合の高強度繊維の製造手順を示す模式図である。 図3Bにおいて、さらに前延伸処理を施す場合の高強度繊維の製造手順を示す模式図である。 編み込み延伸により調製した実施例1の高強度繊維の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例1の高強度繊維の、50回摩擦試験後の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例2の高強度繊維の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例2の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例3の高強度繊維の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例3の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例4の高強度繊維の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例5の高強度繊維の断面SEM写真である。 編み込み延伸により調製した実施例6の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後編み込み延伸により調製した実施例9の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後編み込み延伸により調製した実施例9の高強度繊維の側面SEM写真である。 延伸処理後編み込み延伸により調製した実施例9の50回摩擦試験後の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後編み込み延伸により調製した実施例9の高強度繊維の、50回摩擦試験後の側面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例10の高強度繊維の断面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例10の高強度繊維の側面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例10の高強度繊維の、50回摩擦試験後の高強度繊維の断面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例11の高強度繊維の断面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例11高強度繊維の、200回摩擦試験後の高強度繊維の断面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例12の高強度繊維の断面SEM写真である。 撚り延伸により調製した実施例12高強度繊維の、200回摩擦試験後の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後撚り延伸により調製した実施例13の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後撚り延伸により調製した実施例13の高強度繊維の側面SEM写真である。 延伸処理後撚り延伸により調製した実施例13の高強度繊維の、50回摩擦試験後の高強度繊維の側面SEM写真である。 延伸処理後撚り延伸により調製した実施例14の高強度繊維の断面SEM写真である。 延伸処理後撚り延伸により調製した実施例14の高強度繊維の、50回摩擦試験後の高強度繊維の断面SEM写真である。 短冊状フィルム片を6本用いて延伸処理後撚り延伸により調製した実施例16の高強度繊維の断面SEM写真である。 積層フィルムの作製方法を示す概略図である。 撚り延伸により調製した実施例17の高強度繊維の側面SEM写真およびその部分拡大図である。 撚り延伸により調製した実施例18の高強度繊維の側面SEM写真およびその部分拡大図である。 比較例1における、溶融一軸延伸後の短冊状フィルム片の断面SEM写真である。 比較例2における、ゲル紡糸繊維の側面SEM写真である。 比較例2における、50回摩擦後のゲル紡糸繊維の側面SEM写真である。
以下、本開示の高強度繊維及びその製造方法について詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
さらに、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における「短冊状フィルム片」とは、フィルムを、フィルムの面方向において、一片の長さが他片の長さに対してより長いサイズの矩形状に切断して得られたフィルム片(a long strap of film)を指す。
本明細書における「融点」とは、昇温速度10℃/minで行った示差走査熱量測定(Differential scanning calorimetry:DSC)における融解ピーク温度であり、融解ピークが複数ある場合は、最も低いピーク温度を採用する。
<高強度繊維>
本開示の第1の実施形態である高強度繊維は、超高分子量ポリエチレン原料を含む繊維であり、直径が1mm以下であり、引張り破断強度が100MPa以上であり、かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5mm以下である高強度繊維である。
-曲げ硬さ試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
第1の実施形態の高強度繊維は、超高分子量ポリエチレン原料を含む繊維であり、従って原料に由来して破断強度が高く、延伸することによって引張り破断強度が100MPa以上を示す。さらに、曲げ硬さが高く、以下に示す曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離と高強度繊維の直径を乗じた数値が5mm以下である。
曲げ硬さ試験について図を参照して説明する。図1Aは、曲げ硬さ試験に用いる矩形の硬質試験台及び剛性の高い高強度繊維の垂れ下がり距離の測定箇所を示す模式図であり、図1Bは、曲げ硬さ試験に用いる矩形の硬質試験台及び剛性のより低い高強度繊維の垂れ下がり距離の測定箇所を示す模式図である。図1A及び図1Bでは、繊維12を、矩形の硬質試験台10から8cm突出させた状態を示す。矩形の硬質試験台10は、重力に垂直な面が平滑な面であり、繊維を突出させる側が90°の角度をなしており、繊維が垂れ下がる状態であれば、特に制限はない。例えば、平滑な面を有するデスクの端部などにおいても曲げ硬さ試験を行なうことができる。
被試験体である繊維12の先端部から8cmの箇所に印を付し、繊維12を、矩形の硬質試験台10の表面に添って8cmの印を付けた箇所まで、矩形の硬質試験台10の端部から矩形の硬質試験台10の上面に水平方向に繰り出し、そのまま静置する。垂れ下がった繊維12の先端と、矩形の硬質試験台10の表面の高さとの距離(図1A及び図1B中Lで示す)を測定し、垂れ下がり距離とする。繊維の直径が同じ場合、垂れ下がり距離が短いほど曲げ硬さが高く、剛性が良好であることを示す。また、高強度繊維の直径が異なる、例えば、直径がより小さい場合であっても、後述の垂れ下がり距離と繊維直径とを乗じて算出された値を指標とすることで、剛性を比較することが可能となる。この場合、垂れ下がり距離と繊維直径とを乗じて算出された値が5mm以下であることで、高い剛性を有することが示される。
本明細書では、高強度繊維の直径は、断面が真円形であると仮定して、当該繊維の断面積から算出する値を用いている。即ち、高強度繊維の重さを密度と長さで割った値を繊維の断面積としている。断面積は、以下の式1から算出する。断面積を3.14で割り、得られた数値を平方根したものが半径となる。これを2倍して直径の値とする。
Figure 0007014354000001
なお、上記式1において、ポリエチレンの密度を1g/cmとしているが、この値は、結晶化度100%のポリエチレン結晶の密度である。ポリエチレンの密度は、結晶化度に依存し、結晶化度50%のポリエチレンの密度は0.92g/cm、結晶化度70%では0.95g/cm、結晶化度90%では0.98g/cmである。
本開示の高強度繊維に用いられるポリエチレンの結晶化度は約80%で、厳密には、密度は0.97g/cm程度となる。しかし、上記式1を用いて、細径の繊維の断面積を測定する場合には、結晶化度100%における密度である1.00g/cmを導入して算出した場合と、誤差の範囲でしか変動はない。従って、通常、ポリエチレン繊維の質量から断面積を計算する場合は、密度1.00g/cmを採用している。このため、本明細書においても、ポリエチレンの密度を1g/cmとして断面積を算出する方法を採用している。
高強度繊維は、用途によっては、引張り強度が高いことに加え、例えば、曲げ剛性が高いことが要求される場合がある。
本開示の高強度繊維における「垂れ下がり距離(mm)×直径(mm)」が低いほど、曲げ剛性が高く、いわゆる「コシ」が強いことが裏付けられる。
例えば、本開示の高強度繊維を釣り糸として用いる際には、この値が5mm以下であることで十分な曲げ剛性を有すると判断できる。
高強度繊維を釣り糸等に使用した場合、引張り強度が高いことは、切断され難いことを意味し、釣り糸として必須の物性である。さらに、曲げ剛性が高いことが求められる。曲げ剛性が高いことにより、魚が釣り針に食いついた際のいわゆる「アタリ」を高感度で認識できる利点がある。したがって、曲げ剛性が高いことは、釣り糸に関しては、釣果に直結する性能であると言える。
ここで、曲げ剛性が高い(いわゆる「コシ」が強い)釣り糸としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製のモノフィラメント釣り糸「シーガー(クレハ(株))」が知られている。この市販釣り糸について、前記の曲げ硬さ試験によって、8cm突出させた際の垂れ下がり距離を測定したところ、0.4号(直径0.104mm)で24mm、5号(直径0.370mm)で8mmであった。このことから、同じ材質でも、太い方が垂れ下がり距離が小さくなるので、垂れ下がり距離を太さで規格化した数値が「コシ」の指標になると考えられる。そこで、「垂れ下がり距離(mm)×直径(mm)」を算出したところ、0.4号で2.50(mm)、5号で2.96(mm)となり、両方とも3mm程度であった。また、1.5号(直径0.205mm)および3.5号(直径0.310mm)でも、これらの間の数値をとっていた(後述の比較例1~4を参照)。したがって、この「垂れ下がり距離(mm)×直径(mm)」を「コシ」の指標として定義できると考えられる。
本明細書における高強度繊維とは、断面の直径が1.0mm以下であり、後述の方法で測定した引張り破断強度が100MPa以上であり、かつ、曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5mm以下である繊維を指す。
本開示の高強度繊維における「垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値」が5mm以下であり、3mm以下であることが好ましい。
この数値が5mm以下であることで、本開示の高強度繊維は、釣り糸等に実用することができ、3mm以下であることで、アタリ感度に優れた理想的な超高性能釣り糸として利用することが可能である。
高強度繊維に含まれる超高分子量ポリエチレン原料としては、粘度平均分子量が100万以上のポリエチレンが好ましく用いられる。
本開示の高強度繊維の直径には特に制限はないが、本開示の高強度繊維は、繊維径が細くても強度と曲げ剛性とが良好であることを考慮すれば、曲げ硬さ試験に供される高強度繊維の直径は、1mm以下とすることができ、0.5mm以下であることが好ましい。
繊維の直径は、既述の方法で測定される。
本開示の高強度繊維は、引張り破断強度が100MPa以上であり、300MPa以上であることが好ましく、500MPa以上であることがさらに好ましい。
本明細書における高強度繊維の引張り破断強度は、ORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC-1325Aを用いて、装置の把持部に初期長10mmの繊維両端を固定し、試験速度20mm/min、室温(25℃)下で引張り試験を行って得た値を採用している。
試験試料である高強度繊維の断面積は既述の方法により算出した値を用いている。
本開示の第1の実施形態の高強度繊維に用いられる超高分子量ポリエチレン(以下、UHMW-PEと称することがある)原料は、粘度平均分子量(Mv)が100万~1200万のポリエチレンが好ましく、120万~600万のポリエチレンがより好ましい。
本開示におけるUHMW-PE原料は、一般に行なわれるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法では分子量の測定が困難である高分子量のポリエチレンであり、本明細書においては、ポリエチレンの粘度平均分子量は、デカリン溶媒を用いて135℃において測定した値を採用しており、極限粘度[η]は、5dl/g~50dl/gが好ましく、8dl/g~40dl/gがより好ましく、10dl/g~30dl/gが更に好ましい。
より詳細には、UHMW-PEのデカリン溶液を、毛細管粘度計を用いて、135℃において流下時間を測定し、UHMW-PEの固有粘度[η]を求め、下記式からUHMW-PEのMv(粘度平均分子量)を算出することができる。
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の場合、粘度平均分子量と極限粘度[η]は、特開2005-314544号公報及び特開2005-313391号公報に記載されるように、下記式で表される関係にあることが知られている。

Mv=5.37×10[η]1.49

ここで、[η]は、デカリン溶媒(135℃)中において測定した値であり、5dl以上であることが好ましい。
毛細管粘度計としては、柴田科学(株)のウベローデ型粘度計を用いることができる。測定は、粘度測定用恒温槽中で行いうる。
フィルム成形に用いられる超高分子量ポリエチレン原料の形状は特に制限されないが、顆粒状または粉末状の超高分子量ポリエチレンが好ましく、粉末状の超高分子量ポリエチレンがより好ましい。粉末状超高分子量ポリエチレンの粒径としては、体積平均粒径(D50)で、2000μm以下が好ましく、1μm~2000μmがより好ましく、10μm~1000μmが更に好ましい。
粉末状の超高分子量ポリエチレンは、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、三井化学(株):ハイゼックスミリオン(登録商標)シリーズ、旭化成(株):サンファイン(登録商標)シリーズ、セラニーズジャパン(株):GUR(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
超高分子量ポリエチレンは公知の触媒を用いて重合された重合体であればよいが、チーグラー触媒やメタロセン触媒を用いて重合された超高分子量ポリエチレンが好適に用いられる。なお、フィルム成形の際には溶媒やシリカなど超高分子量ポリエチレン原料以外の成分を加えてもよい。
また、該超高分子量ポリエチレンは、結晶化度が高く強度等の物性に優れる点でエチレンのみを構成単位とすることが望ましいが、エチレンから誘導される構成単位を含む重合体もしくは共重合体であってもよい。該超高分子量ポリエチレンが共重合体である場合、エチレン構成単位と共に超高分子量ポリエチレンを構成する構成単位としては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンから誘導される構成単位を挙げることができる。
すなわち、本明細書における「超高分子量ポリエチレン」には、エチレンと、既述のエチレン以外のモノマーとの共重合体も含まれる。なお、エチレン以外の原料モノマーの含有量は、全原料モノマー中、10mol%以下であることが好ましく、エチレン以外の原料モノマーを含まないポリエチレンであってもよい。
本開示の第1の実施形態である高強度繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)原料を含む繊維としては、既述のUHMW-PE原料のみで構成された繊維であってもよく、また、例えば、UHMW-PE原料に加え、公知の高分子量ポリエチレン(以下、HDPEと称することがある)原料などを含む繊維であってもよい。
HDPEは、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど持たない、直鎖状に結合した、結晶性の密度0.942g/cm以上のポリエチレンを指す。
また、HDPE以外にも、1-ブテンなどのα-オレフィンとエチレンとの共重合体(所謂、直鎖状低密度ポリエチレン:LLDPE)を超高分子量ポリエチレン原料とともに含む繊維であってもよい。
本開示の超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムに用いられるHDPEは、重量平均分子量(Mw)が1万~80万である粉末状あるいはペレット状のポリエチレンであることが好ましく、Mwとしては、2万~50万のポリエチレンがより好ましい。
(重量平均分子量の測定方法)
HDPEの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって決定することができる。GPC測定は、例えば、下記の条件で行うことができ、得られた分子量分布曲線から重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を決定することができる。
・装置 :HLC-8121GPC/HT(検出器:RI)
・カラム :TSLgel GMHHR-H(20)HT
(東ソー製7.8mmI.D.×30cm)×3本
・溶離液 :HPLC級 1,2,4-トリクロロベンゼン(和光純薬製)
(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT):酸化防止剤を0.05質量%含有する)
・流量 :1.0mL/min.
・検出条件 :polarity=(-)
・注入量 :0.3mL
・カラム温度 :150℃
・試料濃度 :0.1~1.0mg/mL
HDPE原料は、市販品を用いてもよく、例えば、日本ポリオレフィン社製のJ-REX KX285N(商品名:Mw=1.05×10)、三菱ケミカル(株)製のJX-20(商品名:Mw=7.09×10)などが挙げられる。
UHMW-PEとHDPEとの含有比としては、質量基準で99:1~1:99とすることができ、90:10~10:90の範囲が好ましい。なお、後述の高強度繊維の強度向上の観点からは、UHMW-PEの含有量が多いことが好ましく、99:1~50:50の範囲がより好ましい。
なかでも、同じ直径の高強度繊維において、引張強度と曲げ剛性とがより良好であるという観点から、超高分子量ポリエチレン原料からなる高強度繊維であることが好ましい。
引張強度が高く、かつ、曲げ剛性が良好な本開示の第1の実施形態である高強度繊維は、種々の用途に好適に使用しうる。
本開示の高強度繊維の第2の実施形態は、複数の超高分子量ポリエチレン原料を含む短冊状フィルム片を用いて形成された繊維であり、前記繊維の断面において複数の前記短冊状フィルム片が界面で互いに融着しており、引張り破断強度が100MPa以上であり、かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5(mm)以下である高強度繊維である。
-曲げ硬さ試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
なお、曲げ硬さ試験の詳細及び上記曲げ硬さ試験の結果による作用については、既述の本開示の高強度繊維の第1の実施形態において述べたとおりである。
高強度繊維のさらに好ましい特性として、下記摩擦試験後の引張り破断強度が、摩擦試験前の引張り破断強度の40%以上であることが挙げられる。
-摩擦試験-
25℃65%RHの雰囲気下で、内径5mmのアルミナ製ガイドリング内に、高強度繊維を通し、前記高強度繊維の先端に50gの分銅を固定して、ガイドリングより、鉛直方向に100mmの長さで垂らす。その後、ガイドリングより上流の繊維を50mm水平に引張り、分銅を固定した高強度繊維をガイドリングに摩擦させ、その後、分銅が引張る前の位置に戻るように、水平に引張った高強度繊維をガイドリング側に戻す。この操作を50回繰り返し、ガイドリングにより高強度繊維を摩擦し、高強度繊維の摩擦された部分の破断強度を測定する。
なお、より厳しい条件として、摩擦試験は、上記操作を200回繰り返して行い、同様の評価を行うことがある。
第2の実施形態の高強度繊維は、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)原料を含む繊維であり、従って原料に由来して破断強度が高く、引張り破断強度が100MPa以上を示す。また、繊維を構成するUHMW-PE原料を含む複数の短冊状フィルム片が界面で互いに融着して一体化したモノフィラメント状となっており、摩擦耐性に優れている。なお、本明細書において「複数の短冊状フィルム片が界面で互いに融着する」とは、隣接する短冊状フィルム片同士が、界面の少なくとも一部で互いに融着している状態を含む。従って、必ずしも複数の短冊状フィルム片が全面に亘り互いに融着している必要はなく、少なくとも一部において融着による強固な一体化がなされれば、高強度繊維としての効果を奏する。
本開示の高強度繊維における摩擦耐性としては、既述の摩擦試験後の引張り破断強度が、摩擦試験前の高強度繊維の引張り破断強度の40%以上であることが好ましい。
摩擦試験について図を参照して説明する。図2は、摩擦試験の手順を示す模式図である。
図2に記載されるように繊維12を、アルミナ製ガイドリング14に通し、繊維の先端に50gの分銅16を固定し、重力方向に鉛直に垂らした状態を示す概略図である。評価に用いるガイドリング14は、リング内径4mm、リング太さ2mmのものを用いる。
摩擦試験に用いるアルミナ製ガイドリングは、サイズが上記条件に合えば、通常の釣り竿に用いられる市販の釣り竿用ガイドリング(例えば、富士工業(株)、Fuji(登録商標)”O”-リング(アルミナ製リング) LOT等)を特に制限なく使用することができる。なお、繊維と接触して繊維を摩擦するガイドリング内側のアルミナ表面は平滑であることが、高強度繊維における実性能を検証する上で好ましい。
分銅を高強度繊維に固定化する方法としては、分銅の端部に繊維を結びつける方法、繊維をテープで止める方法、繊維を接着剤で固定する方法などが挙げられ、繰り返し試験の終了まで、繊維の先端に分銅を安定に固定化できれば、特に制限はない。ここで、分銅に換えて、釣りに用いられる錘を重量50gに調整したものを用いてもよい。
被試験体である繊維12をガイドリング14に通し、繊維12の先端に50gの分銅16を取り付けてガイドリング14から、分銅16を固定化した繊維12を重力方向に鉛直に100mm垂らす。
繊維12の、分銅を固定化した端部とは反対側の端を手で持ち、水平方向に引っ張ることで、繊維12は、ガイドリング14に接したまま引き上げられ、繊維12がガイドリング14と摩擦される。なお、図2に示すように、ガイドリング14の傾きは鉛直方向に対して45°になるように設置した。この際、繊維12を50mm水平に引っ張ると、繊維が50mmに亘って摩擦される、即ち、摩擦試験をうける部分となる。
その後、分銅をはじめの位置まで下げ(ここまでを「1回の摩擦」とカウントする)、再度水平に引張り、分銅を元の位置まで戻す(これで2回の摩擦となる)。この際の分銅の上げ下げを「1回の往復の摩擦操作」として、この操作を50回繰り返し、摩擦された部分50mmを切り取る。
この摩擦試験後の繊維の両端をORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC-1325Aの把持部に固定し(初期長10mm)、試験速度20mm/min、室温(25℃)にて、引張り強度試験を行う。
試験試料である摩擦された繊維の断面積は、摩擦試験前の高強度繊維の重さを密度と長さで割った値とした。引張り試験は、繊維が破断するまで行い、その際に記録された破断直前の最大応力を摩擦された繊維の前記断面積で割って、摩擦試験後の引張り破断強度を算出した。
後述のように、摩擦試験後に測定した引張り破断強度の、摩擦試験前に測定した引張り破断強度に対する割合を「摩擦後の強度保持率」と称し、この値が高い程、磨耗に対する強度の低下が抑制され、摩擦耐性が良好な高強度繊維であると評価することができる。
なお、より厳しい摩擦試験として、上記操作を200回繰り返し行ってもよい。
本開示の高強度繊維を釣り糸等として使用される場合、高強度繊維としては、引張り強度や剛性が高いだけでなく、摩擦耐性に優れることが求められる。
即ち、釣り糸は、釣竿のガイドリングを通して送り出しと巻取りを繰り返して行うことになり、ガイドリングによる摩擦が必然的に起こる。
特に、釣り針に魚がかかった場合には、ガイドリングと釣り糸間にかかる荷重も大きくなるため、より摩擦が激しくなり、釣り糸の強度が低下する傾向にある。したがって、ガイドリングで摩擦させた後の破断強度の保持率(摩擦前の破断強度に対するパーセント表示)、即ち、摩擦後の強度保持率が、釣り糸の性能を表す重要な指標となる。
既述の超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを短冊状に切断した短冊状フィルム片が、本開示の第2の実施形態の高強度繊維の原料となる。短冊状フィルム片は、超高分子量ポリエチレン原料のみからなるフィルム片であってもよく、超高分子量ポリエチレン原料と、既述のHDPEとを含むフィルム片であってもよい。なかでも、超高分子量ポリエチレン原料のみからなるフィルム片であることが、得られる繊維の強度と曲げ剛性がより良好であるという観点から好ましい。
一般に製造されているUHMW-PE繊維は、ゲル紡糸法により得られたマルチフィラメントであり、直径が0.1mm以下の単糸が100本程度、束になった形態を有している。これを撚り合わせたり、編んだりして製紐した後、加熱延伸しても互いに融着し難いことが知られている。
本開示の高強度繊維は、短冊状フィルム片を含んで形成されることで、隣接するフィルム片同士の接触面積がより大きくなり、短冊状フィルム片が界面で互いに融着することで、均一な高強度繊維となると考えられる。
本開示の高強度繊維は、撚り紐又は組紐の組織を有することが好ましい。
複数の短冊状フィルム片を含み、互いに界面において少なくとも一部が融着してなる繊維は、マルチフィラメントを製紐してなる繊維よりも、剛性がより良好であるのみならず、摩擦された部分の強度保持率(摩擦後の強度保持率)がより高くなり、直線強度に対する結節強度の低下もより抑制される傾向がある。
本開示の高強度繊維の摩擦後の強度保持率が良好な点は、本開示の高強度繊維の第1の実施形態にて述べたとおりである。
通常、UHMW-PE繊維のようなマルチフィラメントの場合、結節強度は直線強度の3分の1程度まで低下してしまう。これに対して、前述のクレハ製シーガー等のモノフィラメントの場合、結節強度は直線強度の3分の2程度まで保持される。これは、結節破断のメカニズムがマルチフィラメントとモノフィラメントでは異なることに起因する。
ここで、モノフィラメントを片結び(1回結び)した場合、結節破断は結び目の内部で起こることが知られている(下記参考文献参照)。これに対して、マルチフィラメントでは、結び目の入り口付近で破断が起こる。これは、結節部分ではマルチフィラメントであっても一体化しているので束糸全体に荷重がかかるのに対して、直線部分ではマルチフィラメントの単糸に対して個別に荷重がかかる(すなわち、荷重が不均一にかかる)ためである。したがって、直線部分と結節部分では応力の伝達様式に違いがあり、その界面が破断点となる。現象としては、結び目の入り口付近で単糸が次々と破断する。
したがって、マルチフィラメントの場合、束糸全体が同時に破断する直線強度測定と比較すると、結節強度測定では破断時に応力がかかっている実効の繊維断面積が小さくなるため、単糸毎に個別に荷重がかかることになり、結果として小さい応力で破断に至る。したがって、結節強度が直線強度より、かなり低下する。
これに対して、モノフィラメントの場合、結節部分と直線部分での応力の伝達様式の差が小さく、同一素材で比較した場合、直線強度に対する結節強度の保持率(単に、「結節強度の保持率」と称することがある)は、マルチフィラメントよりも高い傾向にある。
モノフィラメントの結節破断については、本発明者らによる参考文献、「Hiroki Uehara, Hiroyuki Kimura, Asami Aoyama, Takeshi Yamanobe and Tadashi Komoto, “Effects of Knot Characteristics on Tensile Breaking for Polymeric Monofilament”, New Journal of Physics, 9, 65.1-15 (2007年)に詳細に記載されている。
本開示の高強度繊維は、短冊状フィルム片が複数本、互いに界面で融着して製紐されている繊維であるため、複数の短冊状フィルム片がモノフィラメント化しており、結節を形成した際の強度低下が抑制され、その結果、結節強度は引張り破断強度の40%以上を保持することができる。即ち、結節強度の保持率を40%以上とすることが好ましい。なかでも、結節強度は引張り破断強度の60%以上である、即ち、結節強度の保持率が60%以上であることがより好ましい。
本開示の高強度繊維が釣り糸等に使用される場合は、この直線強度に対する結節強度の保持率が高いことが求められる。釣り糸は、釣り針や錘、仕掛け部分を道糸と結びつける必要があるため、必然的に結節を有する。したがって、いくら直線強度が高くても、結節強度の保持率が低いと、釣り糸としての性能が発揮できない。したがって、直線強度に対する結節強度の保持率は、高強度繊維を釣り糸として使用する際の重要な指標となる。
本明細書における高強度繊維の結節強度は以下の方法で測定した値を用いている。
1本の高強度繊維の中央部に結び目(片結び)を1つ作り、結び目を作った状態で、ORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC-1325Aを用いて、結び目を含む繊維の両端(初期長10mm)を装置の把持部に固定し、試験速度20mm/min、室温(25℃)にて、強度試験を行った。
試験試料としての繊維の断面積は、引張強度試験と同様に、結節形成前の高強度繊維の重さを密度と長さで割った値とした。引張り試験は、繊維が破断するまで行い、その際に記録された破断直前の最大応力を試料とした繊維の前記断面積で割って、結節破断強度、即ち、結節強度を算出した。
第2の実施形態における高強度繊維に用いられるUHMW-PE原料は、第1の実施形態における原料と同様、粘度平均分子量(Mv)が100万~1200万のポリエチレンが好ましく、120万~600万のポリエチレンがより好ましい。
UHMW-PE原料の粘度平均分子量(Mv)の測定方法は既述の通りである。
<高強度繊維の製造方法>
上記本開示の各高強度繊維の製造方法には、特に制限はない。
なかでも、有機溶剤を用いないか、或いは、有機溶剤の使用量が極めて少ない点で、下記本開示の高強度繊維の製造方法により製造されることが好ましい。
以下、本開示の高強度繊維の製造方法について説明する。
<高強度繊維の製造方法>
超高分子量ポリエチレン原料から、超高分子量ポリエチレンフィルムを作製する方法ついては後述する。
本開示の高強度繊維の製造方法は、UHMW-PE原料を含むフィルムを得る工程(以下、工程(A)と称することがある)、前記工程で得られたUHMW-PE原料を含むフィルムを短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る工程(以下、工程(B)と称することがある)、前記短冊状のフィルム片を、複数本編むか又は複数本撚ることで、短冊状のフィルム片を製紐する工程、(以下、工程(C)と称することがある)、及び、前記短冊状のフィルム片の融点以上の温度にて、製紐された短冊状のフィルム片を、製紐の長手方向に一軸に延伸する工程(以下、工程(D)と称することがある)、を含む。
高強度繊維の製造方法は、前記工程(A)~工程(D)に加え、さらに、所望により他の工程を含むことができる。
他の工程としては、例えば、後述の、工程(B)に先立ち、UHMW-PE原料を含むフィルムを、前記UHMW-PE原料を含むフィルムの融点以上の温度でx軸及びy軸の少なくとも一方の軸方向に延伸処理する工程(以下、工程(B-0)と称することがある)、工程(B)にて得られた短冊状のフィルム片を、製紐に先立ち、前記短冊状のフィルムの融点以上の温度で、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程(以下、工程(B-2)と称することがある)をさらに含むことができる。
(工程(A))
工程(A)における、UHMW-PE原料を用いて、UHMW-PE原料を含むフィルムを作製する方法は特に制限されない。
UHMW-PE原料を含むフィルムを得る工程は、UHMW-PE原料のみで構成されたUHMW-PEフィルムを得る工程(以下、工程(A-1)と称することがある)であってもよく、UHMW-PE原料と、前記UHMW-PE原料よりも低分子量のポリエチレン原料と、を含むポリエチレンフィルムを得る工程であってもよい。なお、既述のように、工程(A)は、市販の超高分子量ポリエチレンフィルム(商品によっては「フィルム」ではなく、「シート」と称される場合がある)を得ることも包含する。
なお、前記超UHMW-PE原料と、UHMW-PE原料よりも低分子量のポリエチレン原料と、を含むポリエチレンフィルムを得る工程については、後述する。
まず、前記UHMW-PE原料のみで構成されたポリエチレンフィルム(以下、単にUHMW-PEフィルムと称することがある)を得る工程、即ち、工程(A-1)について説明する。
工程(A-1)における公知のフィルム成形方法としては、プレス成形、ロール成形、混練・押出成形、スカイブ法、インフレーション成形等が挙げられる。
なかでも、工程(A-1)は、原料であるUHMW-PE粉末をプレス成形する工程及び原料であるUHMW-PE粉末をロール成形する工程の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
UHMW-PE原料をロール成形してフィルムを調製する方法については、特開2003-165155号公報に記載されており、ここに記載の方法を本開示にも適用することができる。
超高分子量ポリエチレンフィルムの成形、好ましくは、ロール成形及びプレス成形の少なくともいずれかを行う際には、原料となる超高分子量ポリエチレン粉末を、前記UHMW-PE粉末の融点を超える温度で成形することが好ましく、具体的には136℃~250℃で成形することがより好ましい。
なお、本明細書におけるポリエチレンの「融点」とは、示差走査熱量計(DSC)にて測定し得られたDSC曲線のピークにおける温度(℃)を指し、超高分子量ポリエチレン(粉末あるいはフィルム)の製造方法や分子量にもよるが、約120℃~145℃の範囲とすることができる。
超高分子量ポリエチレンフィルムのロール成形としては、一対のロール同士の間隙にポリエチレン重合体粉末を通過させることによりフィルムを成形する方法が好ましい。
ロール成形は、既述のように、成形に供する超高分子量ポリエチレン(粉末あるいはフィルム)の融点を超える温度条件で行うことが好ましい。
プレス成形は、原料となる超高分子量ポリエチレン粉末を、0.01MPa~100MPaの圧力でプレスして行うことが好ましく、0.01MPa~50MPaの圧力で行うことがより好ましく、0.1MPa~10MPaの圧力で行うことがさらに好ましい。
超高分子量ポリエチレンフィルムを作製する際には、原料となる超高分子量ポリエチレン粉末をロール成形する工程を含むか、あるいはプレス成形する工程を含むことが好ましく、ロール成形とプレス成形の両方を行ってもよい。この場合、ロール成形とプレス成形はどちらを先に行ってもよいし、ロール成形とプレス成形を、それぞれ複数回繰り返して行ってもよい。
ロール成形は136℃~185℃の範囲で行い、プレス成形は136℃~250℃の範囲で行うことがさらに好ましい。
これらの温度は、ロール表面の温度あるいはプレス板表面の温度のことを指す。この温度は、接触型の熱電対等で測定することができる。
なお、工程(A)において「超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程(工程(A-1)」として、超高分子量ポリエチレン原料から、超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程について説明したが、工程(A)は既述の工程に限定されず、市販の超高分子量ポリエチレンフィルムを得ることも包含している。
市販の超高分子量ポリエチレンフィルムとしては、例えば、作新工業(株)のSaxin ニューライト(登録商標)シリーズ、日東電工(株)のNO.440フィルム(https://www.nitto.com/jp/ja/others/products/group/file/datasheet/NJ_NO.440_443_4430_JA.pdf)等が挙げられる。
ここで、工程(A-1)で得られるUHMW-PEフィルムの厚みは、0.1μm~5mmが好ましく、0.5μm~1mmがより好ましい。フィルムの厚みが薄すぎると、後述の工程(B)で調製する短冊状フィルム片の耐荷重が小さくなるため、複数のフィルム片を製紐する後述の工程(工程(C))の途中で短冊状フィルム片が破断してしまうことがある。逆にフィルムの厚みが厚すぎる場合、複数のフィルム片を製紐すること自体が難しくなる。また、後述の工程(B-0)で溶融二軸延伸を行うことでフィルムを薄肉化しようとしても、延伸荷重が高くなり、フィルムがチャック部からすり抜けてしまって効率的に薄肉化できないことがある。
また、超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを成形する際に、超高分子量ポリエチレン原料に加え、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料と、を含むポリエチレンフィルムを得る工程である場合、前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程が、超高分子量ポリエチレン原料のみで構成された超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程(工程(A-1))、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムを得る工程、及び、前記超高分子量ポリエチレンフィルムと、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムと、を積層する工程を含むことが好ましい(以下、工程(A-2)と称することがある)。
工程(A-2)によれば、まず、工程(A-1)に従って、UHMW-PE原料のみで構成されたフィルムを作製し、その後、HDPEの如き、超高分子量ポリエチレンよりも低分子量のポリエチレン原料を用いたポリエチレンフィルムを形成し、両者を積層して一体化したフィルムとすることで、任意の比率でUHMW-PEよりも低分子量のポリエチレン原料を含むフィルムを得ることができる。
本明細書において、前記超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)原料よりも低分子量のポリエチレン原料としては、既述のHDPEを挙げることができる。
HDPE原料は市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、日本ポリオレフィン(株)製の高密度ポリエチレン(HDPE)重合パウダー(J-REX KX285N:商品名、重量平均分子量(Mw)=1.0×10)等が挙げられる。
UHMW-PEよりも低分子量のポリエチレン原料は、UHMW-PEよりも溶融粘度が低いため流動しやすい。したがって、短冊状のUHMW-PEのフィルム片を用いて「編み込み延伸(後述)」あるいは「撚り延伸(後述)」するにあたり、UHMW-PEフィルムの表面に低分子量ポリエチレン層が介在すると、UHMW-PEフィルム片同士の融着が促進されることが期待される。この低分子量ポリエチレン層による接着効果は、モノフィラメント化によって高強度繊維を製造しようとする本願においては有効である。
ここで、HDPEは溶融粘度が低いことから、単独では溶融延伸を行うことができないが、UHMW-PE原料により形成されたフィルムにHDPEフィルムを積層し、UHMW-PE層を支持層として用いることで、HDPEを溶融状態で延伸することができる。
具体的には、既述の方法、例えば、プレス法、ロール法により形成されたUHMW-PEフィルムと、例えば、押出し法により形成されたHDPEフィルムとを、例えば、交互に、それぞれ2層~20層の範囲より枚数を選択して積層し、積層したフィルムを後述の工程(B-0)により溶融延伸処理することで、好ましい配向構造を有し、引張強度及び引き裂き強度に優れ、高強度繊維の作製に適したフィルムを得ることができる。
積層に際しては、使用するUHMW-PEフィルムと、HDPEフィルムとの枚数を選択することで、フィルムに含まれるUHMW-PEとHDPEとの含有比を制御することができる。
また、使用するUHMW-PEフィルムと、HDPEフィルムの厚みを調節することによっても、フィルムに含まれるUHMW-PEとHDPEとの含有比を制御することができる。これらのフィルムの厚みの好ましい範囲は、既述の工程(A-1)におけるUHMW-PEフィルムの厚みと同様である。
UHMW-PEとHDPEとを併用する場合のUHMW-PEとHDPEとの含有比としては、質量基準で99:1~1:99とすることができ、90:10~10:90の範囲が好ましい。なお、後述の高強度繊維の強度向上の観点からは、UHMW-PEの含有量が多いことが好ましく、99:1~50:50の範囲が好ましい。
(工程(B))
本開示の高強度繊維の製造方法における本工程(B)では、前工程(A)において成形された超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを、短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る。
既述のように、得られた超高分子量フィルムに厚みは好ましくは0.1μm~5mmであり、フィルムを面方向に短冊状に切断して短冊状フィルム片を得る。
短冊状のフィルム片の幅は、高強度繊維の使用目的、必要とされる太さ、強度などを勘案して適宜決定すればよい。
フィルム片の幅について述べれば、例えば、漁網、釣り糸など、断面径が0.05mm~1mmの高強度繊維を製造する場合には、短冊状のフィルム片の幅は、0.5mm~10mmが好ましく、1mm~5mmであることがより好ましい。
防弾チョッキ等の高強度織物又は高強度編物の製造に供される断面径が1μm~500μmの高強度繊維を製造する場合には、短冊状のフィルム片の幅は、10μm~5mmが好ましく、50μm~1mmであることがより好ましい。
工程(B)にて得られた超高分子量ポリエチレンフィルムを短冊状に切断する方法には特に制限はなく、公知のフィルムの切断方法を選択して適用することができる。
切断方法としては、例えば、スリッター、工業用カッターなどのフィルム状物あるいはシート状物を切断する装置等を用いて切断する方法、打抜き機を用いて、フィルムを任意の幅の短冊状に打ち抜く方法等が挙げられる。
なかでも、生産性の観点からは、前工程で得られた超高分子量ポリエチレンフィルムを、連続的に切断装置に供給し、切断装置を用いて切断する方法が好ましい。スリッター、打抜き金型などを調整することで、任意の幅の短冊状のフィルム片を得ることができる。
なお、短冊状とは、フィルムの面方向において、一片(長辺)の長さが他の片(短辺)の長さの1.1倍以上である断面が矩形状のフィルム片を指す。
なかでも、前記短冊状のフィルム片の断面において、断面の最短片の長さに対する最長辺の長さの比が、1.1~100であることが好ましく、5~100であることがより好ましい。
短冊状のフィルム片の断面において、断面の最短片の長さに対する最長辺の長さの比が1.1以上であることで、複数の短冊状フィルム片を用いて製紐する際に、隣接する短冊状フィルム片同士の接触面積がより大きくなり、均一な高強度繊維が得易い。また、断面の最短片の長さに対する最長辺の長さの比が100以下であることで、得られる高強度繊維は取り扱い性がより良好となる。
また、短冊状フィルム片を切り出す方向については、特に制限はなく、x軸方向に平行に切り出しても良いし、y軸方向に平行に切り出しても良い。また、対角線上に切り出してもよいし、フィルムの中心から放射状に切り出してもよい。
工程(A)がロール成形の場合、ロール方向に平行に切り出してもよいし、それと垂直方向に切り出してもよく、また、任意の斜め方向に切り出してもよい。
なお、短冊状フィルム片を切り出す前に、工程(A)で得たUHMW-PEフィルムを、後述のように延伸することができる(後述の工程(B-0))。任意の工程である工程(B-0)で幅拘束一軸延伸を行う場合や、二軸延伸を行ない、その延伸倍率がx軸とy軸方向で異なる場合、短冊状フィルム片の切り出しは、必ずしも、フィルムの長手方向に平行に行う必要はなく、それと垂直方向(サイズの小さい方向に平行)に切り出してもよい。
(工程(B-0))
本開示の高強度繊維の製造方法は、前工程(A)において成形されたUHMW-PEを含むフィルムを、工程(B)にて短冊状のフィルム片とする前に、x軸およびy軸の少なくとも一方の軸方向に延伸処理する工程を含んでもよい。任意に行うことができるUHMW-PEを含むフィルムを延伸する工程を、工程(B-0)と称する。
工程(B-0)における延伸処理は、x軸方向、y軸方向のいずれの軸方向に行なわれてもよい。例えば、x軸あるいはy軸のみの一軸延伸、x軸あるいはy軸のいずれかの寸法を固定し、片方の(固定していない)軸方向のみ延伸する幅拘束延伸、x軸方向、y軸方向の双方に延伸する二軸延伸等が挙げられ、いずれの延伸であってもよい。得られるフィルムの面積をより大きくできるという観点からは、x軸とy軸の双方向に二軸延伸することがより好ましい。
工程(A)がロール成形である場合、x軸とy軸は、ロール方向およびそれと垂直方向であってもよいし、その逆であってもよい。
二軸延伸は、まず、一方向(x軸)に延伸し、次いで該方向と垂直方向(y軸)に延伸する逐次二軸延伸でもよいが、x軸およびy軸方向(縦横)同時に延伸する同時二軸延伸が好ましい。
延伸処理における温度は、特に限定されないが、延伸倍率を高くできる観点から、該超高分子量ポリエチレンフィルムの融点を超える温度であることが望ましい。具体的には、136℃~185℃が好ましく、140℃~175℃がより好ましく、145℃~165℃がさらに好ましい。なお、この温度範囲内であれば延伸処理中に温度を変動させてもよい。
延伸温度は、例えば、非接触温度計にて、延伸されるフィルムの中心部近傍における雰囲気温度を測定することで確認できる。
フィルムを延伸するに先立ち、延伸温度にて保持する工程を含んでもよい。この際の保持時間は1秒間から1時間とすることができる。延伸前のフィルムを延伸温度で保持する工程を、以下、保持工程と称することがある。
あるいは、フィルムを延伸するに先立ち、延伸されるフィルムを溶融状態とするために、該超高分子量ポリエチレンフィルムの融点を超える温度かつ延伸温度よりも高温で保持する工程を含んでよい。この際の保持温度は140℃~250℃とし、保持時間は1秒間から1時間とすることができる。延伸前のフィルムを延伸温度よりも高温で保持する工程を、以下、予備加熱工程と称することがある。
工程(B-0)における延伸倍率は、x軸方向、y軸方向ともに、延伸前の長さの1.1倍~100倍が好ましく、1.1倍~20倍であることがより好ましい。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸による強度向上の効果が得られず、100倍以上にするとフィルムが薄くなりすぎて、工程(B)で調製する短冊状フィルム片の耐荷重が小さくなるため、製紐工程(工程(D))の途中で短冊状フィルム片が破断してしまうことがある。
また、工程(B-0)において、フィルムを二軸延伸処理する場合のx軸方向とy軸方向の延伸倍率は同じでも異なってもよい。
これらの延伸倍率は、延伸前の原反フィルムに縞状あるいは格子状のインクマークを一定間隔で付し、その延伸後の変異量を計測することで算出できる。
なお、溶融状態での延伸処理を効率よく行うため、熱風吹き付け型の延伸機などを用い、フィルム中心部をより高温として溶融粘度を下げ、一方、チャック部(端部)をより低温(ただし該UHMW-PEフィルムの融点以上)として溶融粘度が高い状態で延伸を行うことが好ましい。これにより、チャック部でフィルムが破断すること防ぐことができる。
この際、延伸が溶融状態で行われていることを確認できるよう、応力検知機構を備えた延伸機であることが好ましい。また、チャック部(端部)は延伸に伴って次第に膜厚が薄くなり、滑りやすくなるので、エアーチャック機構等の常に一定の掴み力がかかるチャック機構を備えていることが好ましい。
工程(B-0)後に得られる超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムの厚みは0.1μm~500μmが好ましく、0.5μm~100μmがより好ましい。
フィルムを薄くすることにより、短冊状のフィルム片を用いて作製する高強度繊維内で、フィルム片を高密度で製紐することができる。
ただし、フィルムが薄すぎると、工程(B)で調製する短冊状フィルム片の耐荷重が小さくなるため、複数のフィルム片を製紐する工程(工程(C))の途中で短冊状フィルム片が破断してしまうことがある。
なお、工程(B-0)にてフィルムを延伸した後、フィルム構造をより均一化する観点から、延伸処理したフィルムを前記x軸およびy軸の少なくとも一方の軸に沿って収縮処理(戻し処理)する工程をさらに含んでもよい。
この収縮処理の温度は、前記工程(B-0)における延伸温度と同様、該超高分子量ポリエチレンフィルムの融点を超える温度であることが望ましい。具体的には、136℃~185℃が好ましく、140℃~175℃がより好ましく、145℃~165℃がさらに好ましい。なお、この温度範囲内であれば収縮処理中に温度を変動させてもよい。
また、この収縮処理においても、前述の工程(B-0)同様、前延伸処理に先立ち、前延伸処理温度にて保持する工程(保持工程)や前延伸処理温度よりも高温で保持する工程(予備加熱工程)を含んでもよい。その際の保持温度や保持時間は、工程(B-0)の場合と同じである。
上記工程(B-0)と、延伸したフィルムと収縮処理する工程とを含んで得られる超高分子量ポリエチレンフィルムは、構造の均一性が非常に高い。物性としては、DSC融解ピークの半値全幅(FWHM)が20.0℃より狭いことが好ましく、10.0℃より狭いことがより好ましく、6.0℃より狭いことがさらに好ましい。FWHMは特許5614746公報に記載の公知の方法により算出することができる。
また、収縮処理により得られる超高分子量ポリエチレンフィルムは、引張り破断強度および引き裂き強度が共に高く、実用上充分な力学物性を有し、機械物性のバランスに優れているため、高強度繊維の製造に好適に使用しうる。
また、後述の、工程(C)の前に、工程(B)にて得られた短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程(以下、工程(B-2)と称することがある)をさらに含むことができる。
この後の工程でも延伸を行うため(後述の工程(D))、この工程(B-2)における短冊状のフィルム片を製紐する前に延伸する延伸処理を「前延伸処理」と称することがある。
短冊状フィルム片を前延伸処理する工程は、既述の任意の工程である工程(B-0)において用いたものと同じ延伸装置を用いて、フィルム片の長手方向の両端を、チャック部(端部)に固定化し、長手方向に加熱しながら延伸する方法をとることができる。
前延伸処理する方法としては、上記の他、さらに、高温槽を敷設したORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC-1325Aを用いて延伸する方法、ロール状の加熱機構を備えた連続繊維延伸装置等を用いて延伸する方法などが挙げられる。
短冊状フィルム片を得た後、前記フィルム片における長手方向に延伸することにより、分子鎖が長手方向に配向し、得られる繊維がより高強度化されるといった利点を有する。
前記短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に前延伸処理する工程は、前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムの融点以上の温度であることが好ましく、具体的には、136℃~185℃の範囲で行われることが、延伸倍率を高くできる点で好ましい。なお、前延伸処理する温度は、延伸されるフィルム片の近傍における雰囲気温度を指し、例えば、非接触温度計にて測定することで確認できる。
この工程(B-2)においても、前述の工程(B-0)同様、前延伸処理に先立ち、前延伸処理温度にて保持する工程(保持工程)や前延伸処理温度よりも高温で保持する工程(予備加熱工程)を含んでもよい。その際の保持温度や保持時間は、工程(B-0)の場合と同じである。
(工程(C))
本工程(C)では、前工程(B)で得られた超高分子量ポリエチレン原料を含む短冊状フィルム片を、複数本編んで製紐するか、又は、短冊状のフィルム片を複数本撚って製紐する。複数のフィルム片を編むか、撚って製紐することにより、複数のフィルム片が1本の紐の如く合糸され、後述の工程(D)における延伸処理により、少なくとも一部において複数のフィルム片が互いに界面で融着し、高強度繊維が形成される。
短冊状フィルム片を複数本編んだ後に延伸された場合(「編み込み延伸」と称することがある)か、又は、撚った後に延伸された場合(「撚り延伸」と称することがある)、1枚の短冊状フィルム片に対してではなく、編まれるか、又は撚られて製紐された合糸としての紐全体に対して延伸応力が加わるためにモノフィラメント化されやすく、得られる高強度繊維は、複数本の短冊状フィルム片を製紐しないで延伸される繊維よりも、より剛性が高くなると考えられる。
工程(C)は、短冊状のフィルム片を3本~10本用いて製紐する工程であることが好ましい。
製紐する際に使用する短冊状のフィルム片が3本以上であると、得られる高強度繊維の剛性と取り扱い性とのバランスが良好となる。使用するフィルム片の数の上限には特に制限はない。生産性、及び得られる高強度繊維の取り扱い性の観点からは、10本以下とすることが好ましい。
複数本の短冊状フィルム片を編む場合には、30mmの長さあたり、0.2回(150mmで1回)以上の編み回数で編むことが好ましく、0.5回(60mmで1回)以上10回以下編み回数で編むことがより好ましい。
図3Aは、編み込み延伸における高強度繊維の製造手順を示す模式図である。図3Aでは、さらに、フィルム片を編む場合の編み回数の測定方法を模式的に示している。図3Aでは、まず、3本の短冊状フィルム片を模式図で示している。各短冊状フィルム片は、便宜上、白、灰色、黒に着色して示す。着色して示された3本の短冊状フィルム片を三つ編みにして製紐した状態を、横矢印の先端側に模式図で示している。製紐した模式図の場合、三つ編みにした第1のフィルム片(図3A中、白色で示される)が、編み始めた箇所から紐の下流側30mmの長さの中で同位置に現れる回数を編み回数1回として計測している。
図3A中、編み始めた箇所から紐の下流側で同位置に現れるαで示す範囲が1回の編み回数に対応する長さである。
複数本の短冊状フィルム片を撚る場合には、20cm(200mm)の長さあたり、1回以上の撚り回数で撚ることが好ましく、3回以上50回以下の撚り回数で撚ることがより好ましい。
図3Bにフィルム片を撚る場合の撚り回数の測定方法を模式図で示す。図3Bは、3本の短冊状フィルム片を示す模式図、即ち、図3Aで編む前の状態のフィルム片を示す模式図と同じ図である。図3Bは、着色して示された3本の短冊状フィルム片に撚りを加えて製紐した状態を、横矢印の先端側に模式図で示している。撚られた第1のフィルム片が、撚り始めた箇所(図3B中、第1の破線で示される)から、紐の下流側で3本のフィルム片が同位置に現れる(図3B中、第2の破線で示される)回数、即ち、βで示す範囲が1回の撚り回数に対応する長さである。
なお、既述の前延伸処理工程(B-2)を含む場合の高強度繊維の製造手順を図4Aおよび図4Bに模式的に示す。
図4Aは、図3Aにおいて、さらに前延伸処理を施す場合の高強度繊維の製造手順を示す模式図であり、着色して示された3本の短冊状フィルム片を三つ編みにして製紐する前に、それぞれの短冊状フィルム片を延伸した状態を示し、延伸した短冊状フィルム片を三つ編みにした状態を模式的に示している。
図4Bでは、図3Bの撚りによる製紐に先だって、それぞれの短冊状フィルム片を延伸した状態を示し、延伸した短冊状フィルム片を撚って製紐した状態を模式図として示している。
(工程(D))
工程(D)では、前工程(C)で製紐された繊維を、UHMW-PEフィルムの融点以上の温度で、繊維の長手方向に延伸処理する。UHMW-PEフィルムの融点以上の温度で、延伸処理することにより、製紐された複数の短冊状フィルム片における界面が、少なくとも一部において互いに融着し、均一で剛性の高い高強度繊維を得ることができる。
延伸処理は一軸延伸であり、延伸倍率は目的に応じて適宜選択される。なかでも、延伸倍率は、得られる高強度繊維の均一性及び剛性がより良好になるという観点から、1.01倍~100倍の範囲であることが好ましく、1.1倍~50倍の範囲であることがさらに好ましい。
この延伸倍率は、工程(C)で製紐された繊維に一定間隔で付したインクマークの変位から算出することができる。
この延伸処理は、前述の工程(B-2)の「前延伸処理」と区別するため、「後延伸処理」と称することがある。
また、前述したように、工程(C)にて、編みにより製紐された繊維が延伸される場合を「編み込み延伸」と称し、工程(C)にて撚りにより製紐された繊維が延伸される場合を「撚り延伸」と称することがある。
さらに、前述の前延伸処理工程(B-2)をさらに含む場合、それぞれ、「延伸処理後編み込み延伸」および「延伸処理後撚り延伸」と称することがある。
本工程(D)、即ち、製紐された短冊状のフィルム片を、製紐された短冊状のフィルム片の長手方向に一軸延伸する工程は、前記短冊状フィルム片の融点以上の温度で行われることが好ましい。具体的には、136℃~185℃の温度範囲で行われることが好ましく、140℃~175℃の温度範囲で行なわれることがより好ましい。
製紐された短冊状のフィルム片を延伸するに先立ち、任意の工程である工程(B-0)における原反フィルムの延伸と同様、延伸温度にて保持する工程を含んでもよい。この際の保持時間は1秒間から1時間とすることができる。
また、製紐された短冊状フィルム片を溶融状態にするために、短冊状フィルム片の融点を超える温度であり、かつ、延伸温度よりも高温で保持する工程を含んでよい。この際の保持温度は140℃~250℃とし、保持時間は1秒間から1時間とすることができる。
一軸延伸される繊維が、UHMW-PE原料のみからなる繊維である場合、製紐された短冊状のフィルム片の長手方向に一軸延伸する工程は、雰囲気温度が136℃~185℃の範囲で行われることにより、隣接する短冊状フィルム片における界面の融着がより強固となり、より高強度で剛性ならびに摩擦耐性に優れる高強度繊維を得ることができる。
また、一軸延伸される繊維が、UHMW-PE原料とHDPE原料とを含む場合、HDPE原料の増加に伴い、若干の強度低下が認められるが、溶融延伸の際に溶融したHDPEが、UHMW-PE原料からなる短冊状フィルム片の周辺を被覆して、界面にて融着の機能を果たすため、繊維表面が滑らかになる。このことから、用途に応じて、UHMW-PE原料に対するHDPE原料の含有量を調整することで、UHMW-PE原料を含む繊維の利点を生かしつつ、剛性と摩擦耐性に優れる高強度繊維が得られると考えられる。
本開示の高強度繊維の製造方法によって得られる高強度繊維は、引張強度、剛性及び摩擦耐性に優れ、種々の用途に使用することができる。
用途としては、縫製用の糸、釣り糸、魚網、ロープ、海底敷設用ケーブル線材などに繊維の形状のまま使用することができる。
また、高強度繊維を編んだり、織ったりして高強度繊維からなる布として使用することができる。これら高強度繊維からなる布は、高強度性、優れた摩擦耐性等を利用して、防弾チョッキ、ヘルメット芯材、防御用盾芯材、FRP(繊維強化プラスチック)用織布等に利用することができる。
特に、本発明のポリエチレン製高強度繊維は、デュポン製ケブラー等のアラミド繊維や、東洋紡製ザイロン等のポリイミド繊維に比べて比重が軽いため、高強度でありながら軽量であることが求められる上記用途に好適に使用でききる。また、現在、航空機材料、自動車材料として使用されているカーボンファイバーよりも比重が軽いため、その代替材料としても好適に利用できる。
さらに、製造工程において、有機溶剤を用いないか、或いは、用いても極めて微量であるため、高強度繊維中における有機溶剤の残存の懸念がなく、生体適合性に優れた高強度繊維が得られる。そのため、例えば、高強度の手術用縫合糸、外科手術用ステント線材等に使用することができる。
以下に、本開示の高強度繊維及びその製造方法について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本開示は下記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の主旨に従い各種の変型例を包含する。
[実施例1]
UHMW-PE原反フィルムとして、作新工業(株)のUHMW-PEシートSaxinニューライト(登録商標)550M(厚さ1mm)を用いた。(工程(A))
これを初期幅(x軸):70mm、長さ(y軸)70mmに切り出し(チャック部分を含むフィルム寸法は75mm×75mm)、エアーチャック機構を装備した大型二軸延伸機にセットし、165℃にてフィルムを一度溶融させた後、温度を155℃に下げ、5分間保持後、延伸速度60mm/minで、幅(x軸)方向6倍、長さ(y軸)方向6倍に同時二軸延伸を行い、溶融二軸延伸膜を作製した。(工程(B-0))
作製した溶融二軸延伸膜を溶融二軸延伸時の長さ(y軸)方向200mm、幅(x軸)方向2mmの大きさの短冊状に切り出し、短冊状フィルム片を得た。(工程(B))
得られた短冊状フィルム片を3本使用して、長さ30mmの中に編み回数が3回となるように三つ編みを行い、初期長30mmの編み込み製紐を準備した。(工程(C))なお、編み込み製紐した試料には、サインペンで長さ5mm毎にマーク線を引いた。
上記の編み込み製紐した試料を3本選択し、ORIENTEC社製テンシロン万能試験機RTC-1325Aの把持部に固定し、延伸温度150℃で5分間保持した後、延伸速度20mm/minの条件において溶融一軸延伸を行った。(工程(D))
なお、この溶融一軸延伸過程において、3試料のうち2試料が破断したところを最大延伸倍率とした。そして、延伸前後でのマーク線間の長さから最大延伸倍率を算出した。このときの編み込み製紐の最大延伸倍率は5倍であったので、総延伸比(溶融二軸延伸倍率6×6=36倍に溶融一軸延伸倍率5倍を乗じた数値)は180倍となる。
(高強度繊維の評価)
得られた実施例1の高強度繊維の引張り破断強度を既述の方法で測定したところ、163MPaであった。また、50回摩擦試験後の破断強度は146MPaであり、摩擦後の強度保持率は89.6%であった。
また、曲げ硬さ試験を行なったところ、高強度繊維を8cm突出させた際の垂れ下がり距離は12.9mmであった。繊維直径は0.317mmであったので、垂れ下がり距離と繊維直径を乗じた数値は4.09(mm)であった。このことから、実施例1の高強度繊維は、引張り破断強度、摩擦耐性、及び剛性が良好であることがわかる。
図5Aは、編み込み延伸により調製した実施例1の高強度繊維の断面SEM写真であり、図5Bは、編み込み延伸により調製した実施例1の高強度繊維の、50回摩擦試験後の断面SEM写真である。図5Aから、複数の短冊状フィルム片が互いに融着していることがわかる。また、磨耗試験後も、融着状態が維持されていることがわかる。
[実施例2~9]
実施例1において、編み込み条件、延伸比を下記表1に記載の条件に変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2~9の高強度繊維を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。
結果を下記表1に示す。
Figure 0007014354000002
表1の結果より、実施例1~9の高強度繊維はいずれも、引張り強度(直線強度)が高く、剛性が良好であり、摩擦試験後の強度保持率が高いことから、引張り強度のみならず、剛性及び摩擦耐性が良好であることがわかる。
なお、前延伸処理を行った実施例8及び実施例9について、さらに既述の方法にて結節強度を測定した。
その結果、実施例8の高強度繊維は、引張り強度が197MPaに対し、結節強度は189MPaであり、結節強度の保持率は95.9%であった。また、実施例9の高強度繊維は、引張り強度が256MPaに対し、結節強度は254MPaであり、結節強度の保持率は99.1%であった。
これらの結果より、実施例8及び実施例9の延伸処理後編み込み延伸により得られた高強度繊維は、引張り強度、剛性及び摩擦耐性に加え、結節強度も良好であることが確認された。
図6Aは、編み込み延伸により調製した実施例2の高強度繊維の断面SEM写真であり、図6Bは、実施例2の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。図6Aから、複数の短冊状フィルム片が互いに融着していることがわかる。また、磨耗試験後も、融着状態が維持されていることがわかる。延伸比を制御することで、実施例1よりも高い強度保持率を示すことが確認できた。
図7Aは、編み込み延伸により調製した実施例3の高強度繊維の断面SEM写真であり、図7Bは、実施例3の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。図7Aおよび図7Bから、編み込み回数を少なくすると融着状態はやや悪くなる傾向があることがわかる。
図8Aは、編み込み延伸により調製した実施例4の高強度繊維の断面SEM写真であり、図8Bは、実施例5の高強度繊維の断面SEM写真であり、図8Cは、実施例6の高強度繊維の断面SEM写真である。より好適な範囲に比較し、編み込み回数が多くなったり、短冊幅をより狭くしたりした場合には、融着状態にやや劣ることがわかる。しかし、いずれも実用上の問題はないレベルである。
図9Aは、編み込み延伸により調製した実施例9の高強度繊維の断面SEM写真であり、図9Bは、その側面SEM写真であり、図9Cは、実施例9の高強度繊維の、50回摩擦試験後の断面SEM写真であり、図9Dはその側面SEM写真である。図9A~図9Dより、前延伸を行うことで、短冊状フィルム片の融着状態が良化し、性能がより向上することがわかる。
また、側面SEM写真から、実施例9の高強度繊維は短冊状フィルム片で構成されていることがわかる。すなわち、編み込み延伸処理により得られた高強度繊維については、断面SEM写真では融着界面が不明瞭であっても、側面SEM写真を撮影することで、短冊状フィルム片で構成されていると判断することができる。
[実施例10]
市販UHMW-PEシート(作新工業(株)、Saxinニューライト550M)を用いて、実施例1と同様にして工程(B)までを行ない、長さ200mm、幅2mmの短冊状フィルム片を得た。
切り出した短冊状フィルム片3本を、長さ200mmに撚り回数が10回となるように撚りをかけ、製紐した。(工程(C))。撚り製紐した試料には、5mm毎にマーク線を引いた。
撚り製紐した試料を3本選択し、初期長30mmで既述の万能試験機の把持部に固定し、延伸温度150℃で5分間保持した後、延伸速度20mm/minで溶融一軸延伸を行った。(工程(D))。
溶融延伸過程において、3試料のうち2試料が破断したところを最大延伸倍率とした。そして、延伸前後でのマーク線間の長さから最大延伸倍率を算出した。撚り延伸繊維の最大延伸倍率は5倍、総延伸比は180倍であった。
(高強度繊維の評価)
得られた実施例10の高強度繊維の引張り破断強度を既述の方法で測定したところ、154MPaであった。また、50回摩擦試験後の破断強度は133MPaであり、86.4%の保持率であった。
また、曲げ硬さ試験を行なったところ、高強度繊維を8cm突出させた際の垂れ下がり距離は5.1mmであった。繊維直径は0.323mmであったので、垂れ下がり距離と繊維直径を乗じた数値は1.65(mm)であった。
このことから、実施例10の高強度繊維は、引張り破断強度、剛性及び結節強度保持性能が良好であることがわかる。
[実施例11~16]
実施例10において、撚り条件、延伸比を下記表2に記載の条件に変えた以外は、実施例10と同様にして実施例11~16の高強度繊維を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。
結果を下記表2に示す。
Figure 0007014354000003
表2の結果より、実施例10~16の高強度繊維はいずれも、引張り強度のみならず、剛性及び摩擦耐性が良好であることがわかる。
なお、前延伸処理を行った実施例13及び前延伸処理を行い、かつ、フィルム片の撚り回数を変えた実施例14について、さらに既述の方法にて結節強度を測定した。
その結果、実施例13の高強度繊維は、引張り強度が406MPaに対し、結節強度は177MPaであり、保持率は43.6%であった。また、実施例14の高強度繊維は、引張り強度が343MPaに対し、結節強度は146MPaであり、保持率は42.7%であった。
この結果より、実施例13及び実施例14の延伸処理後撚り延伸により得られた高強度繊維は、引張り強度が極めて高く、剛性及び摩擦耐性が良好であり、さらに、結節強度の保持率も40%以上と、良好であることが確認された。
図10Aは、撚り延伸により調製した実施例10の高強度繊維の断面SEM写真であり、図10Bは、その側面SEM写真であり、図10Cは、実施例10の高強度繊維の、50回摩擦試験後の断面SEM写真である。図10A~図10Cから、撚り延伸により製造された高強度繊維は、編み込み延伸による高強度繊維と同様に、複数の短冊状フィルム片が互いに融着して良好な性能を有することがわかる。
図11Aは、撚り延伸により調製した実施例11の高強度繊維の断面SEM写真であり、図11Bは、実施例11の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。
図12Aは、撚り延伸により調製した実施例12の高強度繊維の断面SEM写真であり、図12Bは、実施例12の高強度繊維の、200回摩擦試験後の断面SEM写真である。図11A~図12Bから、撚り延伸による高強度繊維は過酷な条件の磨耗試験においても融着状態が維持されていることがわかる。
図13Aは、撚り延伸により調製した実施例13の高強度繊維の断面SEM写真であり、図13Bは、その側面SEM写真であり、図13Cは、実施例13の高強度繊維の、50回摩擦試験後の側面SEM写真である。図13A~図13Cから、延伸処理後撚り延伸により製造された高強度繊維は、延伸処理後編み込み延伸による高強度繊維と同様に、複数の短冊状フィルム片が互いに融着して良好な性能を有することがわかる。すなわち、撚り延伸処理により得られた高強度繊維についても、断面SEM写真では融着界面が不明瞭であっても、側面SEM写真を撮影することで、短冊状フィルム片で構成されていると判断することができる。
図14Aは、延伸処理後撚り延伸により調製した実施例14の高強度繊維の断面SEM写真であり、図14Bは、実施例14の高強度繊維の、50回摩擦試験後の断面SEM写真である。図14A~図14Bから、撚り回数が少ないと、摩擦試験後に繊維断面が扁平に変形することがわかる。
図15は、延伸処理後撚り延伸により調製した実施例16の高強度繊維の断面SEM写真である。図15から、短冊状フィルム片の本数を増やしても、撚り延伸による融着は可能であり、高強度繊維が得られることがわかる。
[実施例17~実施例18]
まず、UHMW-PEフィルムを成形した。図16に示すように、直径110mmφ×厚さ2mmの円盤状ステンレス板(1)の上に厚さ125μmの離型用ポリイミドフィルム(2)を置き、次に直径110mmφ×厚さ0.40mmの円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓(図16中、領域Aと表示)をくり抜いたもの(3)を置き、その矩形窓A内に粉末状UHMW-PE原料(三井化学製Hizex Million 340M、粘度平均分子量330万、平均粒子径150μm)を約3.0g置いた。その上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜(4)を置き、さらにその上に直径110mmφ×厚さ2mmの円盤状ステンレス板(5)を置いた。
これら全体を室温(25℃)にて真空チャンバー内に設置されたプレス機((株)ボールドウィン製)中の上下板の間に置き、1×10-1Torrまでロータリーポンプで減圧後、上下のプレス板の間隔を応力がかからないようになるべく近付け、150℃に加熱し、150℃に温度を維持して5分間保持し、その後、4.5MPa(シリンダー圧力60MPa)の圧力でプレスした状態で、ヒーター電源を切って減圧状態にて室温(25℃)まで徐冷した。その後、真空チャンバーを開けてUHMW-PEフィルムを取り出した。得られたUHMW-PEフィルムの厚みは約0.50mmであった。
次に、上記のUHMW-PEフィルムと同様に、HDPEフィルムに成形した。HDPE原料としては粉末状の日本ポリオレフィン社製J-REX KX285N(重量平均分子量10万、平均粒子径300μm)を用いた。ただし、上記(3)の「円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの」の厚みを0.50mmとした。得られたHDPEフィルムの厚みは約0.50mmであった。
また、上記(3)の「円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの」の厚みを0.70mmとすることで、厚み約0.80mmのUHMW-PEフィルムも成形した。この際、この粉末状UHMW-PE原料の使用量は約6gであった。
さらに、上記(3)の「円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの」の厚みを0.20mmとすることで、厚み約0.20mmのHDPEフィルムも成形した。この際、この粉末状HDPE原料の使用量は約1.5gであった。
これらのUHMW-PEフィルムとHDPEフィルムを1枚ずつ(合計2枚)重ね合わせ、これを上記(3)の「円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの」にセットし、150℃でプレス成形を行った。
この際、UHMW-PEフィルムとHDPEフィルムの厚みがともに約0.50mmのときは、上記(3)の「円盤状ステンレス板に70mm×70mmの矩形窓をくり抜いたもの」の厚みは1.00mmになるようにした。得られた積層フィルムの厚みは約1.00mmであった。
同様に、UHMW-PEフィルムの厚みが約0.80mm、HDPEフィルムの厚みが約0.20mmの組み合わせについても、厚みは約1.00mmの積層フィルムを成形した。
調製した積層フィルム内のUHMW-PE層とHDPE層の厚みを確認するために、SEM観察を行った。その結果、UHMW-PEフィルムの厚みが約0.80mmでHDPEフィルムの厚みが約0.20mmのときは、前者と後者の厚み比率は80:20であった。このフィルムを積層フィルム(I)とした
一方、UHMW-PEフィルムとHDEPフィルムの厚みがともに約0.50mmのときは、UHMW-PE層とHDPE層の厚み比率は50:50であった。このフィルムを積層フィルム(II)とした。
得られた積層フィルム(I)及び(II)を用いて、実施例1と同様にして工程(C)までを行ない、長さ200mm、幅2mmの短冊状フィルム片を得た。
得られた短冊状フィルム片を用いて、上記表2に記載の条件で、実施例10と同様にして撚り延伸を行って、積層フィルム(I)を原料として実施例17の高強度繊維を得、積層フィルム(II)を原料として実施例18の高強度繊維を得た。
得られた高強度繊維について、実施例1と同様にして評価を行い、結果を上記表2に併記した。
表2の結果より、実施例17~18の高強度繊維はいずれも、引張り強度のみならず、剛性及び摩擦耐性が良好であることがわかる。
図17Aは、実施例17の高強度繊維の側面SEM写真およびその部分拡大図である。UHMW-PE層とHDPE層の厚み比率が80:20である積層フィルムを原料とした実施例17では、融着が良好であり、磨耗試験後の強度保持率にも優れていた。
図17Bは、実施例18の高強度繊維の側面SEM写真およびその部分拡大図である。UHMW-PE層とHDPE層の厚み比率が80:20である積層フィルムを原料とした実施例17と比較して、実施例18の高強度繊維はHDPEの含有比率が高いため(50:50)、融着がより良好であり、平滑性に優れていることがわかる。ただし、UHMW-PEの相対比率が高い実施例17の方が、実施例18よりも、引張り強度、摩擦耐性がより良好であった。
[比較例1]
工程(B)までは、実施例1と同様に、短冊状フィルム片を調製し、その後、工程(C)を行わず、短冊状フィルム片1本に対して、工程(D)を延伸比4倍まで施して、総延伸比144倍とした。得られた1枚の短冊状のフィルム片を比較例1の高強度繊維として、実施例1と同様に、引張り破断強度、曲げ硬さ試験による垂れ下がり距離、50回摩擦試験後の破断強度を測定した。結果を下記表3に示す。
その結果、剛性の値は34.37mmと著しく劣り、また、摩擦試験後の強度保持率も40%未満であった。このことから、短冊状フィルム片を複数本製紐せず、単独(1枚)で用いた場合には、本開示の高強度繊維として所望の性能を有しないことがわかった。
図18は、比較例1の短冊状フィルム片(工程(D)後)の断面SEM写真である。図18から明らかなように、短冊状フィルム片は、延伸後も板状の形状を保持していた。
[比較例2]
東洋紡製ダイニーマ(超高分子量ポリエチレンのゲル紡糸繊維)の60デニールを4束用い、これらを4つ打ち(四つ編み)して製紐した。
この際の編み回数は、30mmに8回になるように調整した。
得られたマルチフィラメント製紐を比較例2の高強度繊維とし、実施例1と同様にして破断強度、曲げ硬さ試験による垂れ下がり距離、50回摩擦試験後の破断強度を測定した。結果を下記表3に示す。
その結果、剛性の値は22.71mmと著しく劣り、また、摩擦試験後の強度保持率も40%未満であった。このことから、ゲル紡糸繊維のマルチフィラメント製紐による繊維は、本開示の高強度繊維のようなモノフィラメント特有の性能を有しないことがわかった。
なお、比較例2の繊維について、既述の方法にて結節強度を測定した。
その結果、比較例2の高強度繊維は、引張り強度が1850MPaと高い値を示したが、結節強度は605MPaであり、保持率は32.7%であり、結節強度の保持率が低いことが確認された。
図19Aは、比較例2の高強度繊維の側面SEM写真であり、図19Bは、摩擦試験後の比較例2の高強度繊維の側面SEM写真である。図19Aと図19Bとの対比より、摩擦試験後は、多数のフィラメントが摩擦により切断されており、このため、摩擦後の強度保持率が低くなったことがわかる。
Figure 0007014354000004
[参考例1~4]
参考例として、市販のクレハ製モノフィラメント釣り糸「シーガー」(ポリフッ化ビニリデン原料)の0.4号、1.5号、3.5号、5号を用いて、実施例1と同様にして曲げ剛性試験を行った。結果を表3に示す。
表3の結果より、垂れ下がり距離と繊維直径を乗じた数値は2.5~3.1(mm)であり、本開示の曲げ剛性と同程度の値であった。したがって、「垂れ下がり距離に繊維直径を乗じた数値」は曲げ剛性の指標として適切であることがわかった。

Claims (16)

  1. 超高分子量ポリエチレン原料を含む高強度繊維であり、
    直径が0.289mm以上1mm以下であり、
    引張り破断強度が100MPa以上であり、
    かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5(mm)以下である高強度繊維
    -曲げ硬さ試験-
    25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
  2. 超高分子量ポリエチレン原料からなる請求項1に記載の高強度繊維
  3. 超高分子量ポリエチレン原料を含む短冊状フィルム片を複数含み、前記短冊状フィルム片は、互いに界面で融着しており、
    直径が1mm以下であり、
    引張り破断強度が100MPa以上であり、
    かつ、下記曲げ硬さ試験により測定した垂れ下がり距離(mm)と繊維直径(mm)を乗じた数値が5(mm)以下である高強度繊維
    -曲げ硬さ試験-
    25℃65%RHの雰囲気下で、矩形の硬質試験台上に高強度繊維を置き、硬質試験台の端面から高強度繊維を8cm突出させ、端面から下方へ降下した高強度繊維先端と、硬質試験台表面の高さと、の距離を測定して、測定した値を垂れ下がり距離(mm)とする。
  4. 結節強度が引張り破断強度の40%以上である請求項3に記載の高強度繊維
  5. 超高分子量ポリエチレン原料の粘度平均分子量が100万~1200万である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の高強度繊維
  6. 撚り紐又は組紐の組織を有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の高強度繊維
  7. 超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程、
    前記工程で得られた超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを、短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る工程、
    前記短冊状のフィルム片を、複数本編むか又は複数本撚ることで、短冊状のフィルム片を製紐する工程、及び、
    前記短冊状のフィルムの融点以上の温度にて、製紐された短冊状のフィルム片を、長手方向に一軸に延伸する工程、
    を含む高強度繊維の製造方法。
  8. 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程は、超高分子量ポリエチレン原料粉末をプレス成形する工程及び超高分子量ポリエチレン原料粉末をロール成形する工程の少なくともいずれかを含む請求項7に記載の高強度繊維糸の製造方法。
  9. 前記短冊状のフィルム片の長手方向に直交する断面において、断面の最短片の長さに対する最長辺の長さの比が、1.1~100である請求項7又は請求項8に記載の高強度繊維の製造方法。
  10. 前記短冊状に切断して短冊状のフィルム片を得る工程の前に、
    前記工程で得られた超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムの一方向に規定したx軸および、前記x軸と垂直方向に規定したy軸の少なくとも一方の軸方向に延伸処理する工程をさらに含む、請求項7~請求項9のいずれか1項に記載の高強度繊維の製造方法。
  11. 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを延伸処理する工程が、前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムの融点以上の温度で行われる請求項10に記載の高強度繊維の製造方法。
  12. 前記短冊状のフィルム片を製紐する工程の前に、
    前記短冊状のフィルム片を得る工程により得られた前記短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程をさらに含む請求項~請求項11のいずれか1項に記載の高強度繊維の製造方法。
  13. 前記短冊状のフィルム片を、前記短冊状のフィルム片の長手方向に延伸処理する工程が、前記短冊状のフィルム片の融点以上の温度で行われる請求項12に記載の高強度繊維の製造方法。
  14. 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程が、
    超高分子量ポリエチレン原料からなる超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程である請求項~請求項13のいずれか1項に記載の高強度繊維の製造方法。
  15. 前記超高分子量ポリエチレン原料を含むフィルムを得る工程が、
    超高分子量ポリエチレン原料からなる超高分子量ポリエチレンフィルムを得る工程、
    前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムを得る工程、及び、
    前記超高分子量ポリエチレンフィルムと、前記超高分子量ポリエチレン原料よりも低分子量のポリエチレン原料を含むポリエチレンフィルムと、を積層する工程を含む請求項~請求項13のいずれか1項に記載の高強度繊維の製造方法。
  16. 前記短冊状のフィルム片を製紐する工程が、3本~10本から選択される本数の短冊状のフィルム片を用いて製紐する工程である請求項~請求項15のいずれか1項に記載の高強度繊維の製造方法。
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