JP7012553B2 - 磁性発泡体及びその製造方法 - Google Patents
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熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独又は二種以上組み合わせてもよい。
本発明の磁性発泡体は、真比重6g/cm3以下の磁性粒子(低比重磁性粒子)を含むため、トレードオフの関係にある強い磁性と高い発泡性とを両立できるが、その理由は、低比重磁性粒子を含むことにより、発泡体中で磁性粒子を適度に局在化でき、磁力を向上できるためであると推定できる。さらに、低比重磁性粒子の粒径を制御することにより、空隙の壁面やスキン層付近に低比重磁性粒子が局在化し、かつ適度に低比重磁性粒子が凝集した海島構造を形成するためか、発泡性を損なわず、低比重の磁性粒子であるにも拘わらず、磁力を効果的に向上できると推定できる。
本発明の磁性発泡体は、真比重が6g/cm3を超える高比重磁性粒子をさらに含んでいてもよい。高比重磁性粒子の真比重は6g/cm3を超えていればよく(例えば6g/cm3を超えて23g/cm3以下)、例えば6.1~10g/cm3、好ましくは6.3~9.5g/cm3、さらに好ましくは6.5~9g/cm3(特に7~8.5g/cm3)程度である。
本発明の磁性発泡体は、前記熱可塑性樹脂及び磁性粒子を含む発泡性樹脂組成物を発泡して得られ、発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含んでいてもよい。
本発明の磁性発泡体は、発泡核剤をさらに含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩又は炭酸水素塩など)、有機酸又はその塩(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
本発明の磁性発泡体は、収縮防止剤をさらに含んでいてもよい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどのC8-24脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8-24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の磁性発泡体は、他の添加剤として、慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などが挙げられる。これら慣用の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の磁性発泡体の発泡倍率は、3倍以上(例えば3~70倍)であればよく、例えば3.1~60倍、好ましくは3.5~50倍、さらに好ましくは5~45倍(特に10~40倍)程度である。本発明では、磁性粒子を含むにも拘わらず、高い発泡倍率も可能であり、例えば10倍以上(特に20倍以上)の発泡倍率も可能であり、例えば10~70倍、好ましくは20~60倍、さらに好ましくは30~50倍(特に35~45倍)程度であってもよい。発泡倍率が低すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
本発明の磁性発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂及び低比重磁性粒子を含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する方法であればよく、慣用の方法を利用できるが、通常、前記樹脂組成物を溶融混練し、発泡成形する方法である。
LDPE:低密度ポリエチレン、東ソー(株)製「170」
イソブタン(発泡剤):市販品
発泡核剤:タルク、永和化成(株)製「EE275」
収縮防止剤:ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」
還元鉄粉:パウダーテック(株)製「RD-C」、体積平均粒径30μm、真比重7.04g/cm3。
フェライト原料として、Fe2O3とSrCO3とを、Fe2O3/SrCO3=5.75/1のモル比で用い、これらの原料をヘンシェルミキサーで10分混合した。得られた混合物を、固定式電気炉を用い、大気中、1100℃で4時間(ピーク)本焼成し、Srフェライト粉を得た。
MnOとMgOとFe2O3とSrOとが、MnO/MgO/Fe2O3/SrO=39/11/50/0.5のモル比になるように原料を秤量し、乾式のメディアミルで5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料としては四酸化三マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを、SrO原料としては、炭酸ストロンチウムをそれぞれ用いた。
フェライト粒子の体積平均粒径は、マイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製「Model9320-X100」)を用いてレーザー回折散乱法により測定した。屈折率は2.42とし、25±5℃、湿度55±15%の環境下で測定を行った。体積平均粒径(メジアン径)は、体積分布モード、ふるい下表示での累積50%粒子径である。なお、分散媒としては水を用いた。
フェライト粒子の真比重は、JIS R9301-2-1に準拠して、ウルトラ・ピクノメーター(ユアサアイオニクス(株)製)を用いて、ピクノメータ方式で測定した。
実施例及び比較例で得られた発泡体の真密度(g/cm3)は、JIS K7112に準じて測定した。
発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。
実施例及び比較例で得られた発泡体を、予め重量を測定し、水中に静置した後、-400mmHgの減圧下に1分間放置して、連続気泡構造の中に水を浸透させた。減圧状態から大気圧力に戻し、発泡体の表面に付着した水を除去して重量を測定した後、下記式(1)により算出した。
(式中、w2は吸水後の発泡体重量、w1は吸水前の発泡体重量、d1は発泡体の見掛密度、d2は発泡体に使用されている樹脂組成物の見掛密度、d3は測定時の水の密度を示す)。
発泡体の断面を走査型電子顕微鏡又はデジタル顕微鏡(スカラ(株)製)で観察し、TD方向及びMD方向の気泡径を任意の10箇所で測定し、平均値を気泡径とした。また、各々の気泡径は、長径と短径との平均値とした。
電子顕微鏡(スカラ(株)製)及びファイリング&2次元計測ソフトウェア((株)アートレイ製「AR-CNVMF」)を用いて、TD方向のスキン層の厚みを任意の10箇所で測定し、平均値をスキン層の平均厚みとした。
振動試料型磁気測定装置(型式:VSM-C7-10A、東英工業(株)製)を用いた。発泡体の測定試料は、内径5mm、高さ2mmのセルに圧縮して詰めて上記装置にセットした。測定は、印加磁場を加え、10K・1000/4π・A/mまで掃引した。次いで、印加磁場を減少させ、ヒステリシスカーブを作製した。このカーブのデータより飽和磁化、残留磁化及び保磁力を求めた。
磁性発泡体の観察は、FE-SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製「SU-8020」)を用いて、LAモード、検出器はUpperを使用し、WDは8mm、加速電圧1kV、倍率450倍で行った。磁性発泡体は、金蒸着せず、そのままFE-SEMのサンプルホルダーにセットし、LAモードで撮影することにより、磁性発泡体において、樹脂のみの領域が暗く、磁性粒子が存在する部分は明るく撮影できるように調整した。
実施例で得られた磁性発泡体を縦200mm×横200mm×厚み5mmに切り出し、IEC62333に準拠した伝送減衰率測定方法(マイクロストリップライン)にて測定した。
1~18GHz
(測定用冶具)
マイクロストリップライン冶具
(ネットワークアナイライザ)
Anritsu37247C。
LDPE100重量部、発泡核剤1重量部及び収縮防止剤3重量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス10重量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けた円形状の金型から押出し、発泡体を得た。得られた発泡体は、略円状断面の平均径が16.1mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.022mmであった。
(マスターバッチの調製)
LDPE30重量部とハードフェライト粒子70重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:70重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE95重量部及びマスターバッチ5重量部を用いる以外は比較例1と同様の方法で発泡体を製造した。得られた発泡体(フェライト粒子含量:3.4重量%)は、略円状断面の平均径が16mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.021mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE90重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ10重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:6.7重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.2mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.018mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE80重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ20重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:13.5重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.6mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE70重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ30重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:20.2重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE60重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ40重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:26.9重量%)を製造した。略円状断面の平均径が15.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.013mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE50重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ50重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:33.7重量%)を製造した。略円状断面の平均径が12.8mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.012mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE40重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ60重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:40.4重量%)を製造した。略円状断面の平均径が12.1mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.010mmであった。
LDPE100重量部の代わりに、LDPE30重量部及び実施例1で得られたマスターバッチ70重量部を用いる以外は比較例1と同様にして発泡体(フェライト粒子含量:47.1重量%)を製造した。略円状断面の平均径が8.6mmである円柱状であり、スキン層の平均厚みは0.011mmであった。
(マスターバッチの調製)
LDPE30重量部とソフトフェライト粒子70重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:70重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
LDPE40重量部、得られたマスターバッチ60重量部、発泡核剤1重量部及び収縮防止剤3重量部を含む樹脂組成物を押出機に投入し、この押出機の途中からイソブタンガス10重量部を注入した後、発泡適正温度まで冷却し、先端に取り付けたサーキュラーダイから押出し、筒状の発泡体を得た。得られた筒状の発泡体を切り開くことにより、シート状の発泡成形体(フェライト粒子含量:40.4重量%)を得た。シート厚みが0.7mmであり、スキン層の平均厚みは0.021mmであった。
(マスターバッチの調製)
LDPE40重量部とソフトフェライト粒子30重量部と還元鉄粉30重量部とをボールミルに投入して10分間回転しながら混合後、得られた混合物をホッパーからKRCニーダー((株)栗本鐵工所製)に連続的に投入することで溶融混練し、連続的に排出される混合物(フェライト粒子の含有割合:30重量%)を水で冷却したのちペレタイザーで切断することでマスターバッチを調製した。
マスターバッチの種類を得られたマスターバッチに変更する以外は実施例9と同様にしてシート状の発泡体(フェライト粒子含量:8.7重量%)を製造した。シート厚みは0.8mmであり、スキン層の平均厚みは0.013mmであった。
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下及び平均粒径0.3~40μmの磁性粒子とを含み、全表面の80%以上の面積がスキン層で被覆され、かつ発泡倍率が3倍以上である磁性発泡体。
- 磁性粒子が複合金属酸化物粒子である請求項1記載の磁性発泡体。
- 磁性粒子がフェライト粒子である請求項1又は2記載の磁性発泡体。
- 熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の磁性発泡体。
- 熱可塑性樹脂と磁性粒子との重量割合が、熱可塑性樹脂/磁性粒子=97/3~20/80である請求項1~4のいずれかに記載の磁性発泡体。
- 発泡倍率が20倍以上である請求項1~5のいずれかに記載の磁性発泡体。
- 連続気泡率が0.1~90体積%である請求項1~6のいずれかに記載の磁性発泡体。
- 真密度が1~3g/cm3である請求項1~7のいずれかに記載の磁性発泡体。
- 熱可塑性樹脂と真比重6g/cm3以下及び平均粒径0.3~40μmの磁性粒子とを含む発泡性樹脂組成物を発泡成形する請求項1~8のいずれかに記載の磁性発泡体の製造方法。
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