JP7011760B2 - 膜構造体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、膜構造体及びその製造方法に関する。
基板と、基板上に形成された導電膜と、導電膜上に形成された圧電膜と、を有する膜構造体として、基板と、基板上に形成された白金を含む導電膜と、導電膜上に形成されたチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、即ちPb(Zr1-xTi)O(0<x<1)を含む圧電膜と、を有する膜構造体が知られている。このような膜構造体を加工して圧電素子が形成される。この膜構造体が有する基板として、シリコン基板を用いることができる。
特開2015-154015号公報(特許文献1)には、強誘電体セラミックスにおいて、(200)に配向したZrO膜と、ZrO膜上に形成され、(200)に配向したPt膜と、Pt膜上に形成された圧電体膜と、を具備する技術が開示されている。
特開2015-154015号公報
シリコン基板上に酸化ジルコニウム(ZrO)膜を直接形成する場合、形成されたZrO膜の結晶性が低くなり、ZrO膜を良好にエピタキシャル成長できない場合がある。このような場合、ZrO膜上に導電膜を良好にエピタキシャル成長させることができず、導電膜上に圧電膜を良好にエピタキシャル成長させることができない。PZTを含む圧電膜では、例えば分極方向に平行な方向、又は、分極方向と一定の角度を有する方向に沿った電界が印加される場合に、圧電定数が大きい。そのため、圧電膜が良好にエピタキシャル成長していない場合、圧電膜全体で分極方向が揃わないため、圧電膜の圧電定数を増加させることができず、圧電素子の特性が低下する。
本発明は、上述のような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、シリコン基板上に形成された導電膜と、導電膜上に形成された圧電膜と、を有する膜構造体において、圧電膜の圧電定数を増加させることができる膜構造体を提供することを目的とする。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本発明の一態様としての膜構造体の製造方法は、シリコン基板を用意する(a)工程と、シリコン基板上にジルコニウムを含む第1膜を形成する(b)工程と、(b)工程の後、シリコン基板上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウムを含む第2膜を形成する(c)工程と、を有する。また、膜構造体の製造方法は、第2膜上にエピタキシャル成長した白金を含む第1導電膜を形成する(d)工程と、第1導電膜上にエピタキシャル成長した圧電膜を形成する(e)工程と、を有する。
また、他の一態様として、シリコン基板は、(100)面よりなる主面を有してもよい。(c)工程では、主面上にエピタキシャル成長し、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムを含む第2膜を形成し、(d)工程では、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金を含む第1導電膜を形成してもよい。
また、他の一態様として、(b)工程では、第1膜を蒸着法により形成し、(c)工程では、第2膜を蒸着法により形成してもよい。
また、他の一態様として、(b)工程では、5~10nmの厚さを有する第1膜を、650~700℃の温度で形成してもよい。
また、他の一態様として、(c)工程では、500~600℃の温度で第2膜を形成してもよい。
また、他の一態様として、(c)工程では、8~12nmの厚さを有する第2膜を形成してもよい。
また、他の一態様として、(e)工程では、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を形成してもよい。
また、他の一態様として、(e)工程では、菱面体晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含む圧電膜を形成してもよい。
また、他の一態様として、当該膜構造体の製造方法は、圧電膜上に第2導電膜を形成する(f)工程を有してもよい。
本発明の一態様としての膜構造体は、シリコン基板と、シリコン基板上に形成されたジルコニウムを含む第1膜と、第1膜上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウムを含む第2膜と、第2膜上にエピタキシャル成長した白金を含む第1導電膜と、第1導電膜上にエピタキシャル成長した圧電膜と、を有する。
また、他の一態様として、シリコン基板は、(100)面よりなる主面を有し、第2膜は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムを含み、第1導電膜は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金を含んでもよい。
また、他の一態様として、第1膜は、5~10nmの厚さを有し、第2膜は、8~12nmの厚さを有してもよい。
また、他の一態様として、圧電膜は、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含んでもよい。
また、他の一態様として、圧電膜は、菱面体晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含んでもよい。
また、他の一態様として、当該膜構造体は、圧電膜上に形成された第2導電膜を有してもよい。
本発明の一態様を適用することで、シリコン基板上に形成された導電膜と、導電膜上に形成された圧電膜と、を有する膜構造体において、圧電膜の圧電定数を増加させることができる。
実施の形態の膜構造体の断面図である。 実施の形態の膜構造体が上部電極としての導電膜を有する場合の、膜構造体の断面図である。 実施の形態の膜構造体に含まれる配向膜がエピタキシャル成長した状態を説明する図である。 膜構造体に含まれる配向膜がエピタキシャル成長していない状態を説明する図である。 実施の形態の膜構造体の配向膜が二層構造を有する場合の、膜構造体の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。 実施の形態の変形例の膜構造体の断面図である。 ZrO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。 ZrO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。 実施例1~20のθ-2θスペクトルで観察されたピークを、Zr膜の厚さ、及び、Zr膜を形成する際の基板温度で分類して整理した表を示す。 実施例21~40のθ-2θスペクトルで観察されたピークを、Zr膜の厚さ、及び、Zr膜を形成する際の基板温度で分類して整理した表を示す。 実施例41~60のθ-2θスペクトルで観察されたピークを、Zr膜の厚さ、及び、Zr膜を形成する際の基板温度で分類して整理した表を示す。 SRO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。 PZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
(実施の形態)
<膜構造体>
初めに、本発明の一実施形態である実施の形態の膜構造体について説明する。図1は、実施の形態の膜構造体の断面図である。図2は、実施の形態の膜構造体が上部電極としての導電膜を有する場合の、膜構造体の断面図である。
図1に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、導電膜14と、圧電膜15と、を有する。配向膜12は、基板11上に形成されている。導電膜13は、配向膜12上に形成されている。導電膜14は、導電膜13上に形成されている。圧電膜15は、導電膜14上に形成されている。
なお、図2に示すように、本実施の形態の膜構造体10は、導電膜16を有してもよい。導電膜16は、圧電膜15上に形成されている。このとき、導電膜13及び14は、下部電極としての導電膜であり、導電膜16は、上部電極としての導電膜である。これにより、圧電膜15に、厚さ方向に電界を印加することができる。
基板11は、例えばシリコン(Si)単結晶よりなるシリコン基板である。なお、基板11は、主面としての上面11aを有する。
配向膜12は、例えば基板11の上面11a上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウム(ZrO)を含む。導電膜13は、金属を含み、例えば配向膜12上にエピタキシャル成長した白金(Pt)を含む。導電膜14は、導電膜13上にエピタキシャル成長している。圧電膜15は、導電膜14上にエピタキシャル成長している。
ここで、基板11の主面としての上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向としたとき、ある膜がエピタキシャル成長しているとは、その膜が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にも配向していることを意味する。
基板11上に配向膜12がエピタキシャル成長せず、配向膜12上に導電膜13がエピタキシャル成長していない場合、導電膜13上に導電膜14をエピタキシャル成長させることができず、導電膜14上に圧電膜15をエピタキシャル成長させることができない。圧電膜15では、例えば分極方向に平行な方向、又は、分極方向と一定の角度を有する方向に沿った電界が印加される場合に、圧電定数d33及びd31が大きい。そのため、圧電膜15がエピタキシャル成長していない場合、圧電膜15全体で分極方向が揃わないため、圧電膜15の圧電定数d33及びd31を増加させることができず、圧電素子の特性が低下する。
一方、本実施の形態では、基板11上に配向膜12がエピタキシャル成長し、配向膜12上に導電膜13がエピタキシャル成長しているので、導電膜13上に導電膜14をエピタキシャル成長させることができ、導電膜14上に圧電膜15をエピタキシャル成長させることができる。そのため、圧電膜15全体で分極方向を揃えることができ、圧電膜15の圧電定数d33及びd31を増加させることができ、圧電素子の特性を向上させることができる。
好適には、導電膜14は、金属酸化物を含み、配向膜12上にエピタキシャル成長したルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO、以下、SROともいう。)を含む。また、圧電膜15は、導電膜13上に、導電膜14を介してエピタキシャル成長したチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1)、以下、PZTともいう。)を含む。
圧電膜15がPZTを含むことにより、圧電膜15の圧電定数を、圧電膜15がPZTを含まない場合に比べ、大きくすることができる。
また、導電膜14に含まれるSROが、圧電膜15に含まれるPZTの結晶構造であるペロブスカイト構造と同様の結晶構造を有する。そのため、圧電膜15に含まれるPZTが一定の方向に配向しやすくなる。また、圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造、又は、菱面体晶の結晶構造を有するので、圧電膜15に含まれるPZTが一定の方向に配向しやすくなり、分極方向が一定の方向に揃いやすくなって、圧電特性が向上する。
なお、後述する図12を用いて説明するように、膜構造体10は、導電膜14を有さなくてもよく、圧電膜15は、導電膜13上に直接形成されていてもよい。この場合、圧電膜15は、SROを含む導電膜14上に形成されている場合に比べれば配向しにくくはなるものの、白金を含む導電膜13上でも一定の方向に配向することができる。
好適には、基板11に含まれるシリコン単結晶は、立方晶の結晶構造において(100)面よりなる主面としての上面11aを有する。配向膜12に含まれる酸化ジルコニウム(ZrO)は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向している。導電膜13に含まれる白金(Pt)は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向している。
これにより、導電膜14に含まれるSROが疑立方晶の結晶構造を有する場合に、導電膜14を基板11上で(100)配向させることができる。また、圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造を有する場合に、圧電膜15を基板11上で(001)配向させることができ、圧電膜15に含まれるPZTが、菱面体晶の結晶構造を有する場合に、圧電膜15を基板11上で(100)配向させることができる。
ここで、配向膜12が(100)配向している、とは、立方晶の結晶構造を有する配向膜12の(100)面が、シリコン単結晶よりなる基板11の、(100)面よりなる主面としての上面11aに沿っていることを意味する。また、配向膜12が(100)配向している、とは、好適には、配向膜12の(100)面が、シリコン単結晶よりなる基板11の、(100)面よりなる上面11aに平行であることを意味する。また、配向膜12の(100)面が基板11の(100)面よりなる上面11aに平行であるとは、配向膜12の(100)面が基板11の上面11aに完全に平行な場合のみならず、基板11の上面11aに完全に平行な面と配向膜12の(100)面とのなす角度が20°以下であるような場合を含む。
なお、バルク材料としての酸化ジルコニウムは、室温では単斜晶の結晶構造を有し、室温から温度を上昇させると、約1170℃で相転移して正方晶の結晶構造を有するようになり、更に温度を上昇させると、約2370℃で相転移して立方晶の結晶構造を有するようになる。しかし、配向膜12に含まれる酸化ジルコニウムは、上下の膜又は基板から応力が印加されているため、配向膜12に含まれる酸化ジルコニウムの相転移の挙動は、バルク材料としての酸化ジルコニウムの相転移の挙動とは異なる。また、配向膜12の厚さが数10nm程度以下と薄いため、配向膜12に含まれる酸化ジルコニウムの結晶構造が、正方晶の結晶構造か、立方晶の結晶構造かを精度良く区別することは困難である。
従って、以下では、配向膜12に含まれる酸化ジルコニウムが正方晶の結晶構造を有する場合を、当該酸化ジルコニウムが立方晶の結晶構造を有する場合とみなすことがある。即ち、本願明細書では、配向膜12に含まれる酸化ジルコニウムが立方晶の結晶構造を有する場合には、実際に立方晶の結晶構造を有する場合と、実際には立方晶の結晶構造ではなく正方晶の結晶構造を有する場合と、が含まれるものとする。
また、同様に、以下では、導電膜14に含まれるSROが、斜方晶の結晶構造を有する場合を、当該SROが擬立方晶の結晶構造を有する場合とみなし、更に、当該SROが立方晶の結晶構造を有する場合とみなすことがある。即ち、本願明細書では、導電膜14に含まれるSROが立方晶の結晶構造を有する場合には、実際に立方晶の結晶構造を有する場合と、実際には立方晶の結晶構造ではなく斜方晶、即ち擬立方晶の結晶構造を有する場合と、が含まれるものとする。
好適には、圧電膜15は、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向している。Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1)におけるxが0.48<x<1を満たすことにより、圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造を有し、エピタキシャル成長しやすくなり、(001)配向しやすくなる。そして、正方晶の結晶構造を有するPZTが(001)配向している場合、[001]方向に平行な分極方向と、圧電膜15の厚さ方向に平行な電界方向とが互いに平行になるので、圧電特性が向上する。即ち、正方晶の結晶構造を有するPZTでは、[001]方向に沿った電界が印加される場合に、大きな圧電定数d33及びd31が得られる。そのため、圧電膜15の圧電定数を、更に大きくすることができる。
或いは、好適には、圧電膜15は、菱面体晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向している。Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1)におけるxが0.20<x≦0.48を満たすことにより、圧電膜15に含まれるPZTが、菱面体晶の結晶構造を有し、エピタキシャル成長しやすくなり、(100)配向しやすくなる。そして、菱面体晶の結晶構造を有するPZTが(100)配向している場合、当該PZTは、いわゆるエンジニアードドメイン構造を有し、[111]方向と等価な各方向に平行な分極方向と、圧電膜15の厚さ方向に平行な電界方向との角度が、いずれの分極ドメインでも互いに等しくなるので、圧電特性が向上する。即ち、菱面体晶の結晶構造を有するPZTでは、[100]方向に沿った電界が印加される場合に、大きな圧電定数d33及びd31が得られる。そのため、圧電膜15の圧電特性を、更に大きくすることができる。
図3は、実施の形態の膜構造体に含まれる配向膜がエピタキシャル成長した状態を説明する図である。一方、図4は、膜構造体に含まれる配向膜がエピタキシャル成長していない状態を説明する図である。なお、図3では、基板11、配向膜12、導電膜13及び14、並びに、圧電膜15の各層を、模式的に示し、図4では、基板11及び配向膜12を、模式的に示している。
基板11に含まれるSiの格子定数、配向膜12に含まれるZrOの格子定数、導電膜13に含まれるPtの格子定数、導電膜14に含まれるSROの格子定数、圧電膜15に含まれるPZTの格子定数を、表1に示す。
Figure 0007011760000001
表1に示すように、Siの格子定数は、0.543nmであり、ZrOの格子定数は、0.514nmであり、Siの格子定数に対するZrOの格子定数の不整合は5.3%と小さいため、Siの格子定数に対するZrOの格子定数の整合性がよい。そのため、図3に示すように、ZrOを含む配向膜12を、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面よりなる主面上にエピタキシャル成長させることができる。従って、ZrOを含む配向膜12を、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、配向膜12の結晶性を向上させることができる。
また、表1に示すように、ZrOの格子定数は、0.514nmであり、Ptの格子定数は、0.392nmであるものの、Ptが平面内で45°回転すると、対角線の長さは、0.554nmとなり、ZrOの格子定数に対する当該対角線の長さの不整合は7.8%と小さいため、ZrOの格子定数に対するPtの格子定数の整合性がよい。そのため、図3に示すように、Ptを含む導電膜13を、ZrOを含む配向膜12の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、導電膜13の結晶性を向上させることができる。
また、表1に示すように、Ptの格子定数は、0.392nmであり、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、Ptの格子定数に対するSROの格子定数の不整合は0.51%以下と小さいため、Ptの格子定数に対するSROの格子定数の整合性がよい。そのため、SROを含む導電膜14を、Ptを含む導電膜13の(100)面上に、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができ、導電膜14の結晶性を向上させることができる。
また、表1に示すように、SROの格子定数は、0.390~0.393nmであり、PZTの格子定数は、0.401nmであり、SROの格子定数に対するPZTの格子定数の不整合は2.0~2.8%と小さいため、SROの格子定数に対するPZTの格子定数の整合性がよい。そのため、PZTを含む圧電膜15を、SROを含む導電膜14の(100)面上に、正方晶の結晶構造で(001)配向、又は、菱面体晶の結晶構造で(100)配向させることができ、圧電膜15の結晶性を向上させることができる。
一方、図4に示すように、ZrOを含む配向膜12が、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面よりなる主面上にエピタキシャル成長していない状態では、例えばZrOを含む配向膜12は、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面上に、例えば立方晶の結晶構造で(111)配向している。そのため、配向膜12の結晶性を向上させることができない。
また、図4に示すように、ZrOを含む配向膜12が、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面よりなる主面上にエピタキシャル成長していない状態では、図4では図示を省略するものの、Ptを含む導電膜13は、例えば立方晶の結晶構造で(111)配向している。そのため、導電膜13の結晶性を向上させることができない。そして、Ptを含む導電膜13が、例えば立方晶の結晶構造で(111)配向している状態では、SROを含む導電膜14を、立方晶の結晶構造で(100)配向させることができず、PZTを含む圧電膜15を、正方晶の結晶構造で(001)配向、又は、菱面体晶の結晶構造で(100)配向させることができない。
好適には、配向膜12は、13~22nmの厚さを有する。配向膜12の厚さが13nm未満の場合、配向膜12の厚さが薄すぎるため、基板11上に配向膜12がエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12の厚さが13nm未満の場合、配向膜12の一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、配向膜12の厚さが22nmを超える場合も、配向膜12の厚さが厚すぎるため、基板11上に配向膜12がエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12の厚さが22nmを超える場合も、配向膜12の一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
図5は、実施の形態の膜構造体の配向膜が二層構造を有する場合の、膜構造体の断面図である。
配向膜12は、膜12aと、配向膜12bと、を含んでもよい。膜12aは、基板11上に形成されたジルコニウムを含むが、膜12aに含まれるジルコニウムは、酸化されておらず、金属ジルコニウムである。即ち、膜12aは、ジルコニウムを含む金属膜である。一方、配向膜12bは、膜12a上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウムを含む。従って、図1及び図2に示した配向膜12は、図5に示す配向膜12bに相当する。
配向膜12bが、膜12aを介して基板11上に形成される場合、配向膜12bが、膜12aを介さずに基板11上に形成される場合よりも、エピタキシャル成長しやすくなる。そのため、ZrOを含む配向膜12bを、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面よりなる主面としての上面11a上に、より安定してエピタキシャル成長させることができる。従って、ZrOを含む配向膜12を、シリコン単結晶を含む基板11の(100)面上に、より安定して(100)配向させることができ、配向膜12の結晶性をより向上させることができる。
ただし、ZrOを含む配向膜12bが形成される際に、膜12aに含まれるZrが酸化されることにより、膜12aが消滅して配向膜12bになることがある。このような場合には、図1に示すように、基板11上に配向膜12bが直接形成され、基板11上に直接形成された配向膜12bのみを含む配向膜12が形成されることになる。
好適には、膜12aは、5~10nmの厚さを有する。膜12aの厚さが5nm未満の場合、膜12aの厚さが薄すぎるため、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、膜12aの厚さが5nm未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、膜12aの厚さが10nmを超える場合も、膜12aの厚さが厚すぎるため、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、膜12aの厚さが10nmを超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
好適には、配向膜12bは、8~12nmの厚さを有する。配向膜12bの厚さが8nm未満の場合、配向膜12bの厚さが薄すぎるため、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12bの厚さが8nm未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、配向膜12bの厚さが12nmを超える場合も、配向膜12bの厚さが厚すぎるため、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12bの厚さが12nmを超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
なお、本実施の形態の膜構造体10は、導電膜14及び圧電膜15を有さず、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、のみを有するものでもよい。このような場合でも、膜構造体10上に、圧電膜15と、上部電極としての導電膜16が形成されることにより、導電膜13と導電膜16とにより上下から挟まれた圧電膜15を有する圧電素子を容易に形成することができる。
<膜構造体の製造方法>
次に、本実施の形態の膜構造体の製造方法を説明する。図6~図11は、実施の形態の膜構造体の製造工程中の断面図である。
まず、図6に示すように、シリコン基板としての基板11を用意する(ステップS1)。
好適には、基板11は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)面よりなる主面としての上面11aを有する。また、基板11の上面11a上には、自然酸化膜としてのSiO膜などの酸化膜が形成されていてもよい。
なお、基板11として、シリコン基板以外の各種の基板を用いることができ、例えばシリコン以外の各種の半導体単結晶よりなる基板などを用いることができる。
図6に示すように、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向とする。
次に、図7に示すように、膜12aを形成する(ステップS2)。このステップS2では、基板11上に、ジルコニウムを含む膜12aを形成する。
ステップS2では、電子ビーム蒸着法を用いて配向膜12を形成する場合を例示して説明するが、例えばスパッタリング法など各種の方法を用いて形成することができる。
ステップS2では、まず、基板11を、電子ビーム蒸着装置の真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内の圧力を、例えば2.1×10-5Paなどの一定の真空雰囲気下に調整した状態で、基板11を例えば600~750℃に加熱する。
ステップS2では、次に、ジルコニウム(Zr)単結晶の蒸着材料を用いた電子ビーム蒸着法によりZrを蒸発させる。このとき、蒸発したZrが、ジルコニウム(Zr)膜となって成膜される。そして、基板11上に、例えば20nm以下の厚さを有するジルコニウムを含む膜12aが形成される。なお、膜12aに含まれるジルコニウムは、酸化されておらず、金属ジルコニウムである。即ち、膜12aは、ジルコニウムを含む金属膜である。
好適には、ステップS2では、5~10nmの厚さを有する膜12aを形成する。膜12aの厚さが5nm未満の場合、膜12aの厚さが薄くなり、基板11上に配向膜12b(後述する図8参照)がエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、膜12aの厚さが5nm未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、膜12aの厚さが10nmを超える場合も、膜12aの厚さが厚くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、膜12aの厚さが10nmを超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
好適には、ステップS2では、膜12aを、650~700℃の温度で形成する。基板11の温度が650℃未満の場合、基板11の温度が低くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、基板11の温度が650℃未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、基板11の温度が700℃を超える場合、基板11の温度が高くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、基板11の温度が700℃を超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
次に、図8に示すように、配向膜12bを形成する(ステップS3)。このステップS3では、膜12a上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウムを含む配向膜12bを形成する。
ステップS3においても、ステップS2と同様に、電子ビーム蒸着法を用いて配向膜12を形成する場合を例示して説明するが、例えばスパッタリング法など各種の方法を用いて形成することができる。
ステップS3では、まず、基板11を、電子ビーム蒸着装置の真空チャンバー内に設置し、真空チャンバー内に、例えば10sccmの流量で酸素(O)ガスを流し、真空チャンバー内の圧力を例えば7.0×10-3Paに調整した状態で、基板11を例えば500~600℃に加熱する。
ステップS3では、次に、ジルコニウム(Zr)単結晶の蒸着材料を用いた電子ビーム蒸着法によりZrを蒸発させる。このとき、蒸発したZrが膜12a上で酸素と反応することにより、酸化ジルコニウム(ZrO)膜となって成膜される。そして、単層膜としてのZrO膜よりなる配向膜12bが形成される。そして、ジルコニウムを含む膜12a上にエピタキシャル成長した、酸化ジルコニウムを含む配向膜12bが形成される。
配向膜12bは、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる主面としての上面11a上に、膜12aを介して、エピタキシャル成長する。配向膜12は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウム(ZrO)を含む。即ち、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる上面11a上に、膜12aを介して、(100)配向した酸化ジルコニウム(ZrO)を含む配向膜12が、形成される。
前述した図6を用いて説明したように、シリコン単結晶よりなる基板11の(100)面よりなる上面11a内で互いに直交する2つの方向を、X軸方向及びY軸方向とし、上面11aに垂直な方向をZ軸方向とする。このとき、ある膜がエピタキシャル成長するとは、その膜が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のいずれの方向にも配向することを意味する。
好適には、ステップS3では、8~12nmの厚さを有する配向膜12bを形成する。配向膜12bの厚さが8nm未満の場合、配向膜12bの厚さが薄くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12bの厚さが8nm未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、配向膜12bの厚さが12nmを超える場合も、配向膜12bの厚さが厚くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、配向膜12bの厚さが12nmを超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
前述したように、好適には、ステップS3では、配向膜12bを、500~600℃の温度で形成する。基板11の温度が500℃未満の場合、基板11の温度が低くなり、例えば膜12a上でジルコニウム原子及び酸素原子が再配置されにくくなることなどにより、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、基板11の温度が500℃未満の場合、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
また、基板11の温度が600℃を超える場合、基板11の温度が高くなり、基板11上に配向膜12bがエピタキシャル成長しやすくなる効果が小さくなる。従って、基板11の温度が600℃を超える場合も、配向膜12bの一部が、(100)配向せず、(111)配向する。
ZrOを含む配向膜12bが形成される際に、膜12aに含まれるZrが酸化されることにより、膜12aが消滅して配向膜12bになることがある。このような場合には、図9に示すように、基板11上に配向膜12bが直接形成され、基板11上に直接形成された配向膜12bのみを含む配向膜12が形成されることになる。そして、好適には、5~10nmの厚さを有する膜12aと、8~12nmの厚さを有する元々の配向膜12bとにより、合計13~22nmの厚さを有する新たな配向膜12bを含む配向膜12が形成される。以後の説明では、図9に示すように、ステップS3において、基板11上に配向膜12bが直接形成された場合を例示して説明する。
次に、図10に示すように、導電膜13を形成する(ステップS4)。このステップS4では、配向膜12b上にエピタキシャル成長した、下部電極の一部としての導電膜13を形成する。導電膜13は、金属よりなる。金属よりなる導電膜13として、例えば白金(Pt)を含む導電膜が用いられる。
導電膜13として、Ptを含む導電膜を形成する場合、配向膜12上に、550℃以下の温度、好ましくは400℃の温度で、スパッタリング法により、エピタキシャル成長した導電膜13を、下部電極の一部として形成する。Ptを含む導電膜13は、配向膜12b上にエピタキシャル成長する。また、導電膜13に含まれる白金は、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向する。
なお、金属よりなる導電膜13として、白金(Pt)を含む導電膜に代えて、例えばイリジウム(Ir)を含む導電膜を用いることもできる。
次に、図11に示すように、導電膜14を形成する(ステップS5)。このステップS5では、導電膜13上にエピタキシャル成長した、下部電極の一部としての導電膜14を形成する。導電膜14は、金属酸化物よりなる。金属酸化物よりなる導電膜14として、例えばルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO:SRO)を含む導電膜が用いられる。
導電膜14として、SROを含む導電膜を形成する場合、導電膜13上に、600℃程度の温度で、スパッタリング法により、エピタキシャル成長した導電膜14を、下部電極の一部として形成する。SROを含む導電膜14は、導電膜13上にエピタキシャル成長する。また、導電膜14に含まれるSROは、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向する。
なお、金属酸化物よりなる導電膜14として、SROを含む導電膜に代えて、例えばチタン酸ルテニウム酸ストロンチウム(Sr(TiRu1-y)O(0≦y≦0.4))を含む導電膜を用いることもできる。
次に、図1に示すように、圧電膜15を形成する(ステップS6)。このステップS6では、例えばゾルゲル法などの塗布法又はスパッタリング法により、導電膜14上に、エピタキシャル成長したチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1):PZT)を含む圧電膜15を形成する。
また、ゾルゲル法により圧電膜15を形成する場合、ステップS6では、まず、導電膜14上に、鉛、ジルコニウム及びチタンを含有する溶液を塗布することにより、PZTの前駆体を含む膜を形成する工程を、複数回繰り返す。これにより、互いに積層された複数の膜を含む膜を形成する。
そして、ゾルゲル法により圧電膜15を形成する場合、ステップS6では、次に、膜を熱処理して前駆体を酸化して結晶化することにより、PZTを含む圧電膜15を形成する。
好適には、圧電膜15は、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向する。Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1)におけるxが0.48<x<1を満たすことにより、圧電膜15に含まれるPZTが、正方晶の結晶構造を有し、エピタキシャル成長しやすくなり、(001)配向しやすくなる。そして、正方晶の結晶構造を有するPZTが(001)配向している場合、[001]方向に平行な分極方向と、圧電膜15の厚さ方向に平行な電界方向とが互いに平行になるので、圧電特性が向上する。即ち、正方晶の結晶構造を有するPZTでは、[001]方向に沿った電界が印加される場合に、大きな圧電定数d33及びd31が得られる。そのため、圧電膜15の圧電定数を、更に大きくすることができる。
或いは、好適には、圧電膜15は、菱面体晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向する。Pb(Zr1-xTi)O(0<x<1)におけるxが0.20<x≦0.48を満たすことにより、圧電膜15に含まれるPZTが、菱面体晶の結晶構造を有し、エピタキシャル成長しやすくなり、(100)配向しやすくなる。そして、菱面体晶の結晶構造を有するPZTが(100)配向している場合、当該PZTは、いわゆるエンジニアードドメイン構造を有し、[111]方向と等価な各方向に平行な分極方向と、圧電膜15の厚さ方向に平行な電界方向との角度が、いずれの分極ドメインでも互いに等しくなるので、圧電特性が向上する。即ち、菱面体晶の結晶構造を有するPZTでは、[100]方向に沿った電界が印加される場合に、大きな圧電定数d33及びd31が得られる。そのため、圧電膜15の圧電特性を、更に大きくすることができる。
このようにして、図1に示す膜構造体10が形成される。なお、配向膜12bを形成する際に、膜12aが消滅せずに残る場合、図5に示す膜構造体10が形成される。
シリコン基板としての基板11上に酸化ジルコニウム(ZrO)を含む配向膜12bを直接形成する場合、形成されたZrO膜の結晶性が低くなり、配向膜12bを良好にエピタキシャル成長できない場合がある。このような場合、配向膜12b上に導電膜13を良好にエピタキシャル成長させることができず、導電膜13上に圧電膜15を良好にエピタキシャル成長させることができない。圧電膜15では、例えば分極方向に平行な方向、又は、分極方向と一定の角度を有する方向に沿った電界が印加される場合に、圧電定数d33及びd31が大きい。そのため、圧電膜15が良好にエピタキシャル成長していない場合、圧電膜15全体で分極方向が揃わないため、圧電膜15の圧電定数d33及びd31を増加させることができず、圧電素子の特性が低下する。
一方、本実施の形態では、基板11上にジルコニウム(Zr)を含む膜12aを形成した後、基板11上にZrOを含む配向膜12bをエピタキシャル成長させる。膜12aに含まれるジルコニウムは、酸化されておらず、金属ジルコニウムである。このような場合、基板11上にZrOを含む配向膜12bを直接形成する場合に比べ、配向膜12を良好にエピタキシャル成長させることができる。そのため、配向膜12b上に導電膜13を良好にエピタキシャル成長させ、導電膜13上に圧電膜15を良好にエピタキシャル成長させることができる。従って、圧電膜15全体で分極方向を揃えることができ、圧電膜15の圧電定数d33及びd31を増加させることができ、圧電素子の特性を向上させることができる。
なお、圧電膜15を形成した後、ステップS7として、圧電膜15上に、上部電極としての導電膜16(図2参照)を形成してもよい。これにより、圧電膜15上に厚さ方向に電界を印加することができる。
<実施の形態の変形例>
実施の形態では、図1に示したように、導電膜13上に導電膜14を介して圧電膜15が形成されていた。しかし、導電膜13上に、導電膜14を介さずに圧電膜15が直接形成されていてもよい。このような例を、実施の形態の変形例として説明する。
図12は、実施の形態の変形例の膜構造体の断面図である。
図12に示すように、本変形例の膜構造体10は、基板11と、配向膜12と、導電膜13と、圧電膜15と、を有する。配向膜12は、基板11上に形成されている。導電膜13は、配向膜12上に形成されている。圧電膜15は、導電膜13上に形成されている。
即ち、本変形例の膜構造体10は、導電膜13上に、導電膜14(図1参照)を介さずに圧電膜15が直接形成されている点を除いて、実施の形態の膜構造体10と同様である。
Ptを含む導電膜13上に、SROを含む導電膜14(図1参照)を介さずにPZTを含む圧電膜15が形成されている場合、Ptを含む導電膜13上に、SROを含む導電膜14(図1参照)を介してPZTを含む圧電膜15が形成されている場合に比べ、圧電膜15の結晶性は低下する。しかし、Ptを含む導電膜13上に、SROを含む導電膜14(図1参照)を介さずにPZTを含む圧電膜15が形成されている場合も、配向膜12上に導電膜13が配向又はエピタキシャル成長しやすい。そのため、導電膜13上に形成される圧電膜15もある程度配向又はエピタキシャル成長しやすくなり、圧電膜15の結晶性をある程度向上させることができる。
なお、本変形例の膜構造体10も、実施の形態の膜構造体10と同様に、導電膜16(図2参照)を有してもよい。
以下、実施例に基づいて本実施の形態を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1~60)
以下では、実施の形態で図1を用いて説明した膜構造体10を、実施例1~60の膜構造体として形成した。また、実施例1~60の膜構造体は、膜12a(図7参照)の厚さ、膜12aを形成する際の基板温度、及び、配向膜12b(図8参照)を形成する際の基板温度の各々を変更しながら形成したものである。
まず、図6に示したように、基板11として、(100)面よりなる主面としての上面11aを有し、6インチのシリコン基板よりなるウェハを用意した。
次に、図7に示したように、基板11上に、膜12aとして、ジルコニウム(Zr)膜を、電子ビーム蒸着法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
装置 : 電子ビーム蒸着装置
圧力 : 2.10×10-5Pa
蒸着源 : Zr
加速電圧/エミッション電流 : 7.5kV/1.50mA
厚さ : 20nm以下
成膜速度 : 0.005nm/s
酸素流量 : 0sccm
基板温度 : 600~750℃
次に、図8に示したように、配向膜12として、酸化ジルコニウム(ZrO)膜を、電子ビーム蒸着法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
装置 : 電子ビーム蒸着装置
圧力 : 7.00×10-3Pa
蒸着源 : Zr+O
加速電圧/エミッション電流 : 7.5kV/1.80mA
厚さ : 10nm
成膜速度 : 0.005nm/s
酸素流量 : 10sccm
基板温度 : 500~600℃
ここで、実施例1~60の各実施例におけるZr膜の厚さ、Zr膜を形成する際の基板温度、及び、ZrO膜を形成する際の基板温度を、表2~表4に示す。表2に示す実施例1~20は、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合である。表3に示す実施例21~40は、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合である。そして、表4に示す実施例41~60は、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合である。なお、前述したように、実施例1~60の各実施例におけるZrO膜の厚さは、10nmである。また、表2~表4では、ZrO膜の結晶性の評価結果を、一重丸と二重丸とにより示す。二重丸の場合、一重丸の場合よりも、結晶性が高いことを示す。
Figure 0007011760000002
Figure 0007011760000003
Figure 0007011760000004
実施例1~60について、ZrO膜までが形成された膜構造体のX線回折(X-ray Diffraction:XRD)法によるθ-2θスペクトルを測定した。図13及び図14は、ZrO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。図13及び図14の各々のグラフの横軸は、角度2θを示し、図13及び図14の各々のグラフの縦軸は、X線の強度を示す。
なお、図13は、Zr膜の厚さが7nmであり、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃であり、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃である場合を例示する。また、図14は、Zr膜の厚さが7nmであり、Zr膜を形成する際の基板温度が750℃であり、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃である場合を例示する。また、図13及び図14において、T-ZrOは、正方晶のZrOを意味し、M-ZrOは、単斜晶のZrOを意味する。なお、前述したように、正方晶のZrOが立方晶のZrOに含まれるものとする。
図13に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、正方晶の結晶構造を有するZrOの(200)に相当するピークが観察された。そのため、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したZrOを含むことが分かった。
また、図13に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、正方晶の結晶構造を有するZrOの(200)に相当するピーク以外のピークは観察されなかった。そのため、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)面以外の面で配向したZrO、又は、単斜晶の結晶構造を有するZrOを、少なくとも検出限界以上の含有比としては含まないことが分かった。
一方、図14に示す例でも、θ-2θスペクトルにおいて、正方晶の結晶構造を有するZrOの(200)に相当するピークが観察された。そのため、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したZrOを含むことが分かった。
ただし、図14に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、正方晶の結晶構造を有するZrOの(200)に相当するピーク以外のピークとして、正方晶の結晶構造を有するZrOの(111)に相当するピーク、及び、単斜晶の結晶構造を有するZrOの(111)に相当するピークが観察された。そのため、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したZrOに比べれば含有比としては少ないものの、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(111)配向したZrO、及び、単斜晶の結晶構造を有し、且つ、(111)配向したZrOを、ある程度含むことが分かった。
前述したように、実施例1~60の膜構造体は、Zr膜の厚さ、Zr膜を形成する際の基板温度、及び、ZrO膜を形成する際の基板温度の各々を変更して形成したものである。このような実施例1~60の膜構造体について測定したθ-2θスペクトルにおいて観察されたピークを、Zr膜の厚さ、Zr膜を形成する際の基板温度、及び、ZrO膜を形成する際の基板温度で分類して整理した。図15~図17は、実施例1~60のθ-2θスペクトルで観察されたピークを、Zr膜の厚さ、及び、Zr膜を形成する際の基板温度で分類して整理した表を示す。図15~図17の各々は、ZrO膜を形成する際の基板温度が、500℃、550℃及び600℃のいずれかである場合を示す。また、図15~図17の各々の各列は、互いに異なるZr膜の厚さに対応し、図15~図17の各々の各行は、互いに異なるZr膜を形成する際の基板温度に対応している。
まず、図15に示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合には、Zr膜の厚さが20nm以下で、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が600~750℃の場合、(100)配向したZrOのピーク(図15においてZrO(200)と記載)が観察された。一方、図15では図示を省略するが、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合には、Zr膜の厚さが20nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が600℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が750℃を超える場合に、(100)配向したZrOのピークが観察されなかった。
また、図16に示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合には、Zr膜の厚さが20nm以下で、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が600~750℃の場合、(100)配向したZrOのピーク(図16においてZrO(200)と記載)が観察された。一方、図16では図示を省略するが、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合には、Zr膜の厚さが20nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が600℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が750℃を超える場合に、(100)配向したZrOのピークが観察されなかった。
また、図17に示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合には、Zr膜の厚さが20nm以下で、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が600~750℃の場合、(100)配向したZrOのピーク(図17においてZrO(200)と記載)が観察された。一方、図17では図示を省略するが、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合には、Zr膜の厚さが20nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が600℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が750℃を超える場合に、(100)配向したZrOのピークが観察されなかった。
また、図15~図17では図示を省略するが、図15~図17に示す実施例1~60以外の実施例として、他の条件は全て同じにし、5nm又は20nmの厚さを有するZrO膜を形成した場合についても、10nmの厚さを有するZrO膜を形成した場合と全く同様の結果が得られた。
以上の結果より、少なくとも、20nm以下の厚さを有する、ジルコニウムを含む膜12aを、600~750℃の温度で形成し、且つ、5~20nmの厚さを有する酸化ジルコニウムを含む配向膜12bを、500~600℃の温度で形成する場合に、(100)配向したZrOのピークが観察されることが分かった。このような場合、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムをより多く含む。
また、図15にハッチングを付して示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合には、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合、(100)配向したZrOのピーク以外のピークは観察されなかった。一方、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合には、Zr膜の厚さが5nm未満の場合、Zr膜の厚さが10nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が650℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃を超える場合に、ZrO(100)以外のピークが観察された。観察されたピークは、例えば(111)配向したZrOのピーク(図15においてZrO(111)と記載)、(111)配向したZrOのピーク(図15においてZrO(111)と記載)、(101)配向したZrOのピーク(図15においてZrO(101)と記載)であった。
なお、ZrO膜を形成する際の基板温度が500℃の場合の上記の結果については、表2の「ZrO膜の結晶性」の欄には、以下のように示されている。即ち、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合(実施例7~9、12~14)、結晶性の評価結果が一重丸よりも優れた二重丸で示されている。一方、それ以外の場合(実施例1~6、10、11、15~20)、結晶性の評価結果が一重丸で示されている。
また、図16にハッチングを付して示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合には、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合、(100)配向したZrOのピーク以外のピークは観察されなかった。一方、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合には、Zr膜の厚さが5nm未満の場合、Zr膜の厚さが10nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が650℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃を超える場合に、ZrO(100)以外のピークが観察された。観察されたピークは、例えば(111)配向したZrOのピーク(図16においてZrO(111)と記載)、(111)配向したZrOのピーク(図16においてZrO(111)と記載)、(101)配向したZrOのピーク(図16においてZrO(101)と記載)であった。
なお、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃の場合の上記の結果については、表3の「ZrO膜の結晶性」の欄には、以下のように示されている。即ち、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合(実施例27~29、32~34)、結晶性の評価結果が一重丸よりも優れた二重丸で示されている。一方、それ以外の場合(実施例21~26、30、31、35~40)、結晶性の評価結果が一重丸で示されている。
また、図17にハッチングを付して示すように、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合には、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合、(100)配向したZrOのピーク以外のピークは観察されなかった。一方、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合には、Zr膜の厚さが5nm未満の場合、Zr膜の厚さが10nmを超える場合、Zr膜を形成する際の基板温度が650℃未満の場合、又は、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃を超える場合に、ZrO(100)以外のピークが観察された。観察されたピークは、例えば(111)配向したZrOのピーク(図17においてZrO(111)と記載)、(111)配向したZrOのピーク(図17においてZrO(111)と記載)、(101)配向したZrOのピーク(図17においてZrO(101)と記載)であった。
なお、ZrO膜を形成する際の基板温度が600℃の場合の上記の結果については、表4の「ZrO膜の結晶性」の欄には、以下のように示されている。即ち、Zr膜の厚さが5~10nmで、且つ、Zr膜を形成する際の基板温度が650~700℃の場合(実施例47~49、52~54)、結晶性の評価結果が一重丸よりも優れた二重丸で示されている。一方、それ以外の場合(実施例41~46、50、51、55~60)、結晶性の評価結果が一重丸で示されている。
なお、図15~図17において、「ZrO(200)弱」と記載されたピーク強度は、5.0×10cps未満であり、それ以外の「ZrO(200)」と記載されたピーク強度の1/2未満であることを意味する。
また、図15~図17では図示を省略するが、実施例1~60以外の実施例として、8nm又は12nmの厚さを有するZrO膜を形成した場合についても、10nmの厚さを有するZrO膜を形成した場合と全く同様の結果が得られた。
以上の結果より、5~10nmの厚さを有する、ジルコニウムを含む膜12aを、650~700℃の温度で形成し、且つ、8~12nmの厚さを有する酸化ジルコニウムを含む配向膜12bを、500~600℃の温度で形成することが好ましいことが分かった。このような条件の場合、配向膜12bが、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムをより多く含むことができる。
ジルコニウム(Zr)は、シリコン(Si)よりも酸化しやすく、イオン化しやすい。そのため、5~10nmの厚さを有する、ジルコニウムを含む膜12aを、650~700℃の温度で形成し、且つ、8~12nmの厚さを有する酸化ジルコニウムを含む配向膜12bを、500~600℃の温度で形成することにより、シリコン基板である基板11の上面11aに存在する自然酸化膜(SiO)をより完全に除去することができる。そのため、酸化ジルコニウム(Zr)を含む配向膜12bを、基板11の上面11a上に直接エピタキシャル成長させることができる。
なお、実施例1~60では、ZrOを含む配向膜12bが形成される際に、膜12aに含まれるZrが酸化されることにより、膜12aが消滅して配向膜12bになった。そのため、基板11上に配向膜12bが直接形成され、基板11上に直接形成された配向膜12bのみを含む配向膜12が形成された。
次に、図10に示したように、配向膜12上に、導電膜13として、白金(Pt)膜を、スパッタリング法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
装置 : DCスパッタリング装置
圧力 : 3.20×10-2Pa
蒸着源 : Pt
電力 : 100W
厚さ : 100nm
成膜速度 : 0.14nm/s
Ar流量 : 16sccm
基板温度 : 400℃
ZrO膜のθ-2θスペクトルにおいて、ZrO(200)のピーク以外に、ZrO(111)、ZrO(111)及びZrO(101)のピークが観察された場合、Pt膜のθ-2θスペクトルにおいて、Pt(200)のピーク以外に、Pt(111)のピークが観察された。一方、ZrO膜のθ-2θスペクトルにおいて、ZrO(200)のピーク以外に、ZrO(111)、ZrO(111)及びZrO(101)のピークが観察されない場合、Pt膜のθ-2θスペクトルにおいて、Pt(200)のピーク以外に、Pt(111)のピークが観察されず、導電膜13の結晶性を向上させることができる。
次に、図11に示したように、導電膜13上に、導電膜14として、SRO膜を、スパッタリング法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
パワー : 300W
ガス : Ar
圧力 : 1.8Pa
基板温度 : 600℃
成膜速度 : 0.11nm/s
厚さ : 20nm
実施例1~60について、SRO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルを測定した。図18は、SRO膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。図18のグラフの横軸は、角度2θを示し、図18のグラフの縦軸は、X線の強度を示す。
なお、図18は、Zr膜の厚さが7nmであり、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃であり、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃である場合を例示する。
図18に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、立方晶の結晶構造を有するPtの(200)に相当するピークが観察された。そのため、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したPtを含むことが分かった。
また、図18に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、立方晶の結晶構造を有するSROの(100)に相当するピークが観察された。そのため、導電膜13が、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したSROを含むことが分かった。
次に、図1に示したように、導電膜14上に、圧電膜15として、Pb(Zr0.52Ti0.48)O膜(PZT膜)を積層した積層膜を、塗布法により形成した。この際の条件を、以下に示す。
Pb、Zr、及びTiの有機金属化合物をPb:Zr:Ti=100+δ:52:48の組成比になるように混合し、エタノールと2-n-ブトキシエタノールの混合溶媒に、Pb(Zr0.52Ti0.48)Oとしての濃度が0.35mol/lになるように溶解させた原料溶液を調整した。ここでδは、後の熱処理プロセスにおいてPb酸化物が揮発することを加味した余剰Pb量であり、本実施例においてδ=20である。そして、原料溶液には更に20gの重量の、K値が27~33のポリピロリドンを溶解させた。
次に、調製した原料溶液のうち3mlの原料溶液を、6インチのウェハよりなる基板11上に滴下し、3000rpmで10秒間回転させ、基板11上に原料溶液を塗布することにより、前駆体を含む膜を形成した。そして、200℃の温度のホットプレート上に、基板11を30秒間載置し、更に450℃の温度のホットプレート上に、基板11を30秒間載置することにより、溶媒を蒸発させて膜を乾燥させた。その後、0.2MPaの酸素(O)雰囲気中、600~700℃で60秒間熱処理して前駆体を酸化して結晶化させることにより、100nmの膜厚を有する圧電膜を形成した。この原料溶液の塗布から結晶化までの工程を例えば5回繰り返すことにより、例えば500nmの膜厚を有するPZT膜を形成した。
実施例1~60について、PZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルを測定した。図19は、PZT膜までが形成された膜構造体のXRD法によるθ-2θスペクトルの例を示すグラフである。図19のグラフの横軸は、角度2θを示し、図19のグラフの縦軸は、X線の強度を示す。
なお、図19は、Zr膜の厚さが7nmであり、Zr膜を形成する際の基板温度が700℃であり、ZrO膜を形成する際の基板温度が550℃である場合を例示する。
また、図19に示す例では、θ-2θスペクトルにおいて、正方晶の結晶構造を有するPZTの(001)及び(002)に相当するピークが観察された。そのため、圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZTを含むことが分かった。
また、PZT膜を、塗布法により形成する場合、基板温度として、従来に比べて広い600~700℃の温度範囲で形成した場合に、図19に示す例と同様に、圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZTを含むことが分かった。
なお、実施例1~60とは別に、圧電膜15として、PZT膜を、塗布法に代えて、スパッタリング法により形成しても、全く同様の結果が得られた。圧電膜15として、PZT膜をスパッタリング法により形成する際の条件を、以下に示す。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
パワー : 2500W
ガス : Ar/O
圧力 : 0.14Pa
基板温度 : 425~525℃
成膜速度 : 0.63nm/s
PZT膜を、塗布法に代えて、スパッタリング法により形成する場合も、基板温度として、従来に比べて広い425~525℃の温度範囲で形成した場合に、図19に示した例と同様に、圧電膜15が、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したPZTを含むことが分かった。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
10 膜構造体
11 基板
11a 上面
12、12b 配向膜
12a 膜
13、14、16 導電膜
15 圧電膜

Claims (8)

  1. (a)シリコン基板を用意する工程、
    (b)前記シリコン基板上にジルコニウムを含む第1膜を形成する工程、
    (c)前記(b)工程の後、前記シリコン基板上にエピタキシャル成長した酸化ジルコニウムを含む第2膜を形成する工程、
    (d)前記第2膜上にエピタキシャル成長した白金を含む第1導電膜を形成する工程、
    (e)前記第1導電膜上にエピタキシャル成長した圧電膜を形成する工程、
    を有し、
    前記(b)工程では、5~10nmの厚さを有する前記第1膜を、650~700℃の温度で形成する、膜構造体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記シリコン基板は、(100)面よりなる主面を有し、
    前記(c)工程では、前記主面上にエピタキシャル成長し、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した酸化ジルコニウムを含む前記第2膜を形成し、
    前記(d)工程では、立方晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向した白金を含む前記第1導電膜を形成する、膜構造体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記(b)工程では、前記第1膜を蒸着法により形成し、
    前記(c)工程では、前記第2膜を蒸着法により形成する、膜構造体の製造方法。
  4. 請求項3に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記(c)工程では、500~600℃の温度で前記第2膜を形成する、膜構造体の製造方法。
  5. 請求項4に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記(c)工程では、8~12nmの厚さを有する前記第2膜を形成する、膜構造体の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記(e)工程では、正方晶の結晶構造を有し、且つ、(001)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含む前記圧電膜を形成する、膜構造体の製造方法。
  7. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の膜構造体の製造方法において、
    前記(e)工程では、菱面体晶の結晶構造を有し、且つ、(100)配向したチタン酸ジルコン酸鉛を含む前記圧電膜を形成する、膜構造体の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の膜構造体の製造方法において、
    (f)前記圧電膜上に第2導電膜を形成する工程、
    を有する、膜構造体の製造方法。
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