JP2007099618A - 強誘電体薄膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 Si単結晶基板上に強誘電体薄膜を形成するに際し、膜内の応力を制御して自発分極値の低下を防ぐことを目的とする。
【解決手段】 Si単結晶基板上に形成された強誘電体材料からなるエピタキシャル強誘電体薄膜であり、この強誘電体薄膜の結晶面のうち、前記Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、Z面間の距離をzとし、強誘電体薄膜構成材料のバルク状態でのZ面間の距離をzF0としたとき、0.980≦z/zF0≦1.010であり、前記強誘電体材料が、ペロブスカイト型結晶構造を有する、化学式ABO(AはCa、Ba、Sr、K、Na、Li、LaおよびCdから選ばれた1種以上であり、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれた1種以上である)で表される化合物又は希土類元素含有チタン酸鉛であり、厚さが2〜100nmである強誘電体薄膜。
【選択図】 なし

Description

本発明は、Si基板上に形成された強誘電体薄膜に関する。
半導体結晶基板であるSi基板上に、超電導膜、誘電体膜、強誘電体膜等を形成、集積化した電子デバイスが考案されている。半導体と超伝導体、誘電体、強誘電体を組み合わせることにより、例えば、半導体と超伝導体との組み合わせでは、SQUID、ジョセフソン素子、超電導トランジスタ、電磁波センサーおよび超電導配線LSI等が挙げられ、半導体と誘電体との組み合わせでは、集積度のさらに高いLSI、SOI技術による誘電体分離LSI、半導体と強誘電体との組み合わせでは、不揮発性メモリー、赤外線センサー、光変調器、および光スイッチOEIC(光・電子集積回路:OPTO−ELECTRONIC INTEGRATED CIRCUITS)等が試作されている。
これらの電子デバイスにおいて、最適なデバイス特性およびその再現性を確保するためには、超電導体材料、誘電体材料、強誘電体材料として単結晶を用いることが必要である。多結晶体では粒界による物理量の撹乱のため、良好なデバイス特性を得ることが難しい。このことは薄膜材料についても同様であり、できるだけ完全な単結晶に近いエピタキシャル膜が望まれる。
したがって、近年、上述した応用を目的として、エピタキシャル膜の検討がなされている。例えば、J.A.P.76(12),15,7833(1994)(非特許文献1)には、MgO基板上に形成した強誘電体エピタキシャル膜が記載されている。
ただし、実際のデバイスに応用するためには、半導体と強誘電体との集積化を可能にする必要があるが、MgO基板をSiデバイス中に組み込むことは極めて困難である。しかし、Si(100)基板上に結晶性の良好なBaTiO(001)単一配向膜を形成するなど、Si単結晶基板上に単一配向強誘電体薄膜を形成することも極めて困難である。これに対し本発明者らは、特願平8−217884号等においてSi単結晶基板上に強誘電体のエピタキシャル薄膜を容易に形成できる方法を提案している。
しかし、Si基板上に形成された強誘電体薄膜の特性は、通常、強誘電体本来の特性から算出される特性より大きく劣る。強誘電体の特性、例えば、誘電率、キュリー温度、抗電界、残留分極は、強誘電体が有する応力により変化する。そして、薄膜化した強誘電体では、成膜にともなって応力が発生しやすいので、優れた特性を有する強誘電体薄膜を形成するには、応力の制御が重要である。Si基板上において薄膜化した強誘電体の特性劣化についても、応力の影響が大きいと考えられる。
例えば、上記J.A.P.76(12),15,7833(1994)やA.P.L59(20),11,2524(1991)(非特許文献2)では、Si単結晶基板ではなくMgO単結晶基板を用いた場合についてではあるが、膜面内の二次元応力が強誘電体特性に強く影響を及ぼすことが指摘されている。応力発生の主要な原因は、下地である基板と強誘電体との物性の違い、例えば、熱膨張係数差や格子定数差などである。このため、強誘電体薄膜をデバイスに応用するためには、上述した応力を制御しなくては、望ましい強誘電性を安定に得ることはできない。
ところで、本発明者らは、特願平8−186625号において、チタン酸鉛(PbTiO)に所定の希土類元素を添加した希土類元素含有チタン酸鉛からなる強誘電体を、結晶性が良好でかつ組成ずれが小さい薄膜としてSi単結晶基板上に形成できる方法を提案している。しかし、希土類元素含有チタン酸鉛をSi単結晶基板上に単一配向膜として形成することは難しく、単一配向膜として形成できた場合でも、それに期待される強誘電体特性を得ることが困難であった。
チタン酸鉛系強誘電体には、このほかPbTiO、PLT(La添加PbTiO)、PZT(PbZrO−PbTiO固溶体)、PLZT(La添加PbZrO−PbTiO固溶体)などがあるが、強誘電体特性、特に自発分極値の大きさにおいてはPbTiOが最も優れている。PbTiO系強誘電体は分極軸が[001]方向なので、強誘電特性の点では(001)単一配向膜であることが好ましい。しかし、純粋なPbTiOをSi単結晶基板上に(001)単一配向膜として形成できたという報告はない。Si基板上にPbTiO薄膜を形成すると、(001)配向結晶と(100)配向結晶とが混在したドメイン構造が形成されて、強誘電体特性が単結晶よりも著しく低くなり、MgO基板上に形成した場合よりも特性が低くなってしまう。このため、バルク材のときの強誘電体特性が優れているにもかかわらず、純粋なPbTiOは薄膜としては用いられず、PZTやPLZT等が用いられているのが現状である。
上述したように、希土類元素含有チタン酸鉛をSi単結晶基板上に単一配向膜として形成することは難しく、単一配向膜とできても期待される強誘電体特性は得られない。また、純粋なPbTiOをSi単結晶基板上に単一配向膜として形成することは、不可能であった。Si単結晶基板を用いた場合のこのような問題の原因は、以下のように考えられる。
SiおよびMgOはいずれもPbTiOよりも熱膨張係数が小さいが、特に、Siの熱膨張係数は2.6×10−6/℃であり、MgOの熱膨張係数(14×10−6/℃)に比べ著しく小さい。したがって、例えばPbTiO薄膜の形成温度を600℃とすると、形成後に室温まで冷却する過程でPbTiO薄膜の収縮をSi基板が阻害することになり、PbTiO薄膜にはその面内に比較的大きな二次元の引っ張り応力が生じてしまう。二次元引っ張り応力の大きな膜では、後述するように自発分極値の低下が生じる。そして、この引っ張り応力を緩和しようとして、PbTiOは(001)配向結晶と(100)配向結晶とが混在する膜となり、自発分極値の低下が著しくなると考えられる。また、希土類元素含有チタン酸鉛では、(001)単一配向の膜となったときには大きな引っ張り応力が存在することになるため、(001)配向と(100)配向とが混在している膜よりも強誘電体特性が低くなってしまう。
J.A.P.76(12),15,7833(1994) A.P.L59(20),11,2524(1991)
上記したように、Si単結晶基板上に形成した現状の強誘電体薄膜、特にPbTiO薄膜では、膜面内に二次元の大きな引っ張り応力が残留し、十分な自発分極値を得ることができない。
そこで本発明では、Si単結晶基板上に強誘電体薄膜、特にPbTiO強誘電体薄膜を形成するに際し、膜内の応力を制御して自発分極値の低下を防ぐことを目的とする。半導体であるSi単結晶基板上に自発分極値の大きな強誘電体薄膜が形成できれば、不揮発性メモリー、赤外線センサー、光変調器および光スイッチOEIC、分極反転を利用した記録媒体などの各種分野に適用する際に、極めて有用である。
このような目的は、(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) Si単結晶基板上に形成された強誘電体材料からなるエピタキシャル強誘電体薄膜であり、この強誘電体薄膜の結晶面のうち、前記Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、Z面間の距離をzとし、強誘電体薄膜構成材料のバルク状態でのZ面間の距離をzF0としたとき、0.980≦z/zF0≦1.010であり、前記強誘電体材料が、ペロブスカイト型結晶構造を有する、化学式ABO(AはCa、Ba、Sr、K、Na、Li、LaおよびCdから選ばれた1種以上であり、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれた1種以上である)で表される化合物又は希土類元素含有チタン酸鉛であり、厚さが2〜100nmである強誘電体薄膜。
(2) 前記Si単結晶基板との間に、エピタキシャル薄膜であるバッファ薄膜が設けられている上記(1)の強誘電体薄膜。
(3) 前記バッファ薄膜が導電性である上記(2)の強誘電体薄膜。
(4) 前記バッファ薄膜において、前記Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、このZ面の面内における格子定数をxとし、前記強誘電体薄膜構成材料のバルク状態での前記Z面の面内における格子定数をxF0としたとき、強誘電体薄膜形成時の温度においてxおよびxF0が式 1.000<mxF0/nx≦1.050(上記式において、nおよびmは1以上の整数である)を満足する上記(2)または(3)の強誘電体薄膜。
(5) 前記強誘電体材料が、希土類元素含有チタン酸鉛である上記(1)〜(4)のいずれかの強誘電体薄膜。
(6) 前記希土類元素含有チタン酸鉛が、R(Rは、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Yb、Y、Sm、Gd、ErおよびLaから選択された少なくとも1種の希土類元素)、Pb、TiならびにOを含有し、原子比率が(Pb+R)/Ti=0.8〜1.3、Pb/(Pb+R)=0.5〜0.99の範囲にあるものである上記(5)の強誘電体薄膜。
(7) Tiの60原子%以下がZr、Nb、Ta、HfおよびCeの少なくとも1種で置換されている上記(6)の強誘電体薄膜。
本発明によれば、エピタキシャル強誘電体薄膜中の結晶格子を、膜に平行な結晶面の間隔が伸びるように歪ませるか、あるいは、ほぼ無歪みの状態とすることにより、ドメイン構造をとらない(001)単一配向膜として、強誘電体薄膜の自発分極値の増大、あるいは自発分極値の低下防止を可能とする。次に、理論的考察および実験データに基づいて、本発明の作用および効果について詳細に述べる。
まず、はじめに、強誘電体材料のバルク単結晶における自発分極特性について考察する。強誘電体材料をPbTiOとする。PbTiO結晶は、室温においてa軸の格子定数が0.3904nm、c軸の格子定数が0.4152nmの正方晶の結晶であり、[001]方向に分極軸をもつ。この結晶に格子のc面に平行な面内方向に二次元の応力を発生させ、その場合の自発分極値PsをDevonshire熱力学関係式を用いて計算した結果を、図1に示す。図中においてマイナスの符号の二次元応力は圧縮応力、プラスの符号をもつものは引っ張り応力を表す。この図から、自発分極は、二次元圧縮応力の増大にともなって増大し、二次元引っ張り応力の増大にともなって減少することがわかる。
次に、Si基板上にエピタキシャル成長したPbTiO薄膜について考える。薄膜の形成温度が600℃のときに(001)配向の単結晶薄膜が得られるとすると、このときPbTiO結晶格子のc面は、基板表面に現れる結晶面と平行に位置することになる。PbTiOとSiとは熱膨張係数が異なるため、成膜温度から室温まで冷却する過程でPbTiO薄膜の面内に二次元応力が発生する。Siの熱膨張係数は2.6×10−6/℃であり、この係数にしたがい、Si基板表面は600℃から室温までの冷却過程において二次元的に収縮を起こす。一方、PbTiO薄膜も、Si基板表面の収縮に伴って収縮するが、このときPbTiO結晶に生じるa軸方向およびb軸方向の収縮は、PbTiOの熱膨張係数にしたがって生じる収縮に比べ、著しく小さい。これは、Siの熱膨張係数がPbTiOのそれに比べ著しく小さいからである。このため、冷却後、PbTiO薄膜には引っ張り応力が生じている。
このように、Si基板上に形成されたPbTiO薄膜には面内に二次元の引っ張り応力が生じているため、図1からわかるように、自発分極値がバルクの単結晶よりも小さくなってしまう。なお、実際には、この引っ張り応力を緩和するために、PbTiO薄膜は(001)配向結晶と(100)配向結晶とが混在した膜となる。
本発明では、PbTiOなどの強誘電体について、薄膜化したときの自発分極低下を抑えることを目的とする。この目的を達成するため、基板との熱膨張係数の差に起因して生じる強誘電体薄膜の引っ張り応力を低減または実質的にゼロとする。これにより、自発分極値の劣化を防ぐことができる。また、本発明では、強誘電体薄膜に圧縮応力を生じさせることもでき、この場合には自発分極値を増大させることができる。
本発明における強誘電体薄膜の応力制御は、具体的にはSi単結晶基板と強誘電体薄膜との間にバッファ薄膜を設けることにより行う。ここでは、強誘電体材料としてPbTiOを、バッファ薄膜構成材料としてPtを用いた場合を例に挙げて説明する。
まず、Si(100)単結晶上にPt薄膜をエピタキシャル成長させたSi(100)/Pt(001)積層構造体を基板とし、この上にPbTiO(001)薄膜をエピタキシャル成長させる場合について考える。PbTiO薄膜形成時の基板温度を600℃とすると、600℃における格子定数はPtバルク体が0.3942nm、PbTiOバルク体が0.3968nmであるから、両者間にはミスフィットと呼ばれる格子定数差が存在する。
基板とエピタキシャル成長薄膜との間にミスフィットが存在する場合の薄膜結晶格子の一般的な変形パターンについて、図2を用いて説明する。図2において、(a)は、基板と薄膜とが独立した系となっている場合を示し、(b)は、薄膜が弾性歪みでミスフィットを吸収する場合を示し、(c)は、転位によってミスフィットを吸収する場合を示す。(b)では薄膜の結晶格子がc軸方向で伸び、a軸およびb軸方向では収縮している。すなわち、この状態では、薄膜の結晶格子に二次元の圧縮応力が生じている。(b)の状態は、膜が薄い場合に生じる。(c)に示すように転位によりミスフィットが完全に吸収されれば、(a)に示す状態と同じ格子定数を有する無応力の薄膜となる。(c)の状態は、膜が厚い場合に生じる。
このように、Si/Ptを基板として成膜温度600℃でPbTiO薄膜を形成すると、成膜温度に保持した状態ではPbTiO薄膜は二次元圧縮応力が存在するか、無応力状態である。しかし、前述したように、成膜温度から室温まで冷却する過程で、SiとPbTiOとの熱膨張係数の大きな差に起因して、PbTiO薄膜には二次元の引っ張り応力を生じさせる力が働く。このため、成膜温度において図2(c)に示されるような無応力状態であると、室温では引っ張り応力が生じてしまい、自発分極が小さくなってしまう。一方、成膜温度において図2(b)に示されるような圧縮応力が生じている状態であると、冷却に伴う引っ張り応力の発生をキャンセルすることができる。
そこで本発明では、Si単結晶基板の熱膨張係数の小ささを考慮して、成膜温度におけるバッファ薄膜と強誘電体薄膜との間の格子定数のミスフィットが適当となるように両者の組み合わせを選択する。これにより、強誘電体薄膜の圧縮応力を、冷却の際のSi単結晶基板の影響をキャンセルできるような適当な値とすることができ、Si基板上において室温で実質的に無応力状態の強誘電体薄膜、または室温で圧縮応力が生じている強誘電体薄膜を実現できる。このため、本発明によれば、PbTiO薄膜をSi単結晶基板上に(001)配向のエピタキシャル膜として形成することが可能となる。したがって、本発明によれば、デバイスに応用する際に極めて重要なSi単結晶基板を用いて、その上に自発分極の極めて大きな強誘電体薄膜を形成することが可能となる。
これに対し、従来知られているMgO基板と強誘電体薄膜との組み合わせでは、両者の間の熱膨張係数の差がSi基板を用いる場合に比べ著しく小さい。このため、成膜温度からの冷却過程における基板と強誘電体薄膜との収縮の違いを考慮して成膜温度における両者のミスフィットの程度を限定する必要はなく、実際、そのような提案は従来なされていない。
また、膜を厚く形成した場合には転位が生じやすく、このためミスフィットによる圧縮応力が緩和されやすい。MgO基板を用いた場合、成膜温度で多少の転位が生じてミスフィットによる圧縮応力が緩和されたとしても、冷却中に生じる引っ張り応力が小さいので、室温まで冷却したときに大きな引っ張り応力が存在することはない。このため、MgO基板を用いた場合には、強誘電体薄膜が厚く転位が生じやすい条件でも、最終的に大きな引っ張り応力が生じることはない。これに対し本発明では、Si基板を用いるので冷却時に基板の収縮により生じる引っ張り応力が大きい。したがって、成膜時に大きな圧縮応力が生じていなければならない。このため本発明では、強誘電体薄膜を薄くして、転位の発生によるミスフィット緩和を防ぐ。
誘電体薄膜を形成する際に膜応力を制御して特性改善をはかることは、例えば特開平8−195328号公報に記載されている。同公報記載の第1の発明は、キャパシタ電極と常誘電体ペロブスカイト結晶の薄膜からなるキャパシタ誘電体膜において、誘電体膜とキャパシタ電極との界面がなす面に平行な方向の結晶面の間隔が長くなるように結晶格子を歪ませ、一方、キャパシタ誘電体膜が、キャパシタ電極と強誘電体ペロブスカイト結晶とからなる場合には、前記結晶面の間隔が短くなるように結晶格子を歪ませるというものである。すなわち、この発明は、常誘電体薄膜では膜面内に圧縮応力を存在させ、強誘電体薄膜では膜面内に引っ張り応力を存在させるものである。強誘電体に引っ張り応力を生じさせると、誘電率は向上するが自発分極が低下する。同公報記載の発明は、通常のDRAMなどに適用することを目的として誘電率の向上を目指すものであり、強誘電体メモリーに適用することを目的として自発分極値の向上を目指すものではない。
同公報にはSi単結晶基板を用いた実施例も記載されているが、同公報の実施例において誘電体膜が(001)配向しているのは、MgO(001)膜上にPt(001)膜を積層し、この上に誘電体膜(KTaO)を形成した場合(第6の実施例)だけである。
また、特開平8−139292号公報にも、強誘電体薄膜の応力を制御することにより、特性を改善する発明が記載されている。
同公報の請求項1に記載された発明は、少なくとも表面が正方晶系の(001)面または立方晶系に属する結晶構造を有する導電性材料からなる導電性基板と、この導電性基板の上にエピタキシャル成長した正方晶系または立方晶系に属するペロブスカイト型結晶構造を有する誘電性材料からなる誘電体膜と、この誘電体膜の上に形成された上部電極とを具備した薄膜キャパシタにおいて、前記誘電性材料本来のキュリー温度が150℃以下で、ペロブスカイト型結晶構造のa軸長で表される誘電性材料本来の格子定数aと正方晶系または立方晶系の結晶構造のa軸長で表される導電性材料本来の格子定数aとが、1.002≦a/a≦1.015の関係式を満足する薄膜キャパシタである。また、同公報の請求項7に記載された発明は、第1の電極と、この第1の電極上にエピタキシャル成長した正方晶系または六方晶系のペロブスカイト型結晶構造である誘電性材料からなる誘電体膜と、この誘電体膜の上に形成された第2の電極とを具備した薄膜キャパシタにおいて、前記誘電体膜の膜厚が15nm以上であり、エピタキシャル成長後の誘電性材料のc軸長Ceと、このc軸長Ceに対応するエピタキシャル成長前の誘電性材料本来の正方晶系のc軸長または六方晶系a軸長Coとが、Ce/Co≧1.02の関係式を満足する薄膜キャパシタである。
同公報記載の薄膜キャパシタは、同公報の作用の欄に示されるように、ペロブスカイト型結晶構造を有する格子のa軸が縮みc軸が伸びた強誘電体薄膜を有するものである。同公報では、残留分極およびその温度依存性を改善できることなどを効果としている。
このような強誘電体薄膜を得るために、同公報では、Si基板表面に形成した絶縁層(酸化Si層)上に単結晶Si層を形成し、その上に、ニッケルケイ化物等からなるバリア層やPt等からなる下部電極などを介して強誘電体薄膜を形成している。単結晶Si層の形成方法としては、単結晶Si層を直接選択成長させる方法と、まず、アモルファスSi層を選択成長させ、次いで、アニールによりSi基板界面より固相成長を通じて単結晶化させる方法とが記載されている。
しかし、本発明者らの研究によれば、同公報記載の方法を用いても表面性の良好なSi単結晶層を得ることはできず、したがって、その上に結晶性の良好な強誘電体薄膜を得ることができなかった。そして、同公報の請求項7で限定されているc軸長比(Ce/Co)も実現できなかったが、同公報の実施例においてもc軸長比が記載されているのはMgO等の酸化物基板を用いた場合だけである。
同公報の実施例のうちSi単結晶基板を用いた旨の明示があるのは実施例7、8、9だけである。実施例7では、Si単結晶基板上に厚さ400nmのTiN膜、この上に下部電極として厚さ200nmのCa0.50.5TiO膜を形成し、この上に厚さ200nmのBa0.5Sr0.5TiO誘電体膜を形成しており、また、実施例8では誘電体膜の厚さを100nmとしており、また、実施例9では誘電体膜の組成をBa0.45La0.05Sr0.5TiOに変更している。これらの実施例では、各膜を形成した時点では下部電極および誘電体膜は非晶質であり、赤外線ランプアニール装置を用いた700℃、1分間のアニールを行った結果、単結晶化したとしている。しかし、本発明のようにSi単結晶基板側から順に薄膜をエピタキシャル成長させて最終的に単結晶の強誘電体薄膜を形成する方法と異なり、非晶質膜の積層体を同時にアニールする方法では、上述したミスフィットの利用が不可能である。このため、同公報に記載されたアニールを利用する方法では、強誘電体薄膜の単結晶化が難しいか、不可能であると思われる。実際、同公報の実施例7〜9には、c軸長比は記載されておらず、単一配向膜が得られた旨の記載もない。
このように、本発明はMgO基板上の強誘電体薄膜の応力を制御する従来の技術とは異なり、Si単結晶基板上において強誘電体薄膜、特にPbTiO薄膜をエピタキシャル膜として形成することを可能としたものであり、従来なし得なかった効果を実現するものである。
本発明により得られる自発分極値の大きな強誘電体薄膜は、不揮発性メモリー、赤外線センサー、光変調器、光スイッチOEIC、分極反転を利用する記録媒体などの各種分野において、優れた特性を発揮する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
強誘電体薄膜
結晶格子の歪み
本発明の強誘電体薄膜は、Si単結晶基板上に形成されたエピタキシャル薄膜である。本発明の強誘電体薄膜において、Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、Z面間の距離をzとし、強誘電体薄膜構成材料のバルク状態でのZ面間の距離をzF0としたとき、0.980≦z/zF0≦1.010であり、好ましくは0.982≦z/zF0≦1.010である。そして、強誘電体材料が後述するBaTiOまたは希土類元素含有チタン酸鉛であるときには0.988≦z/zF0であることがより好ましく、PbTiOであるときにはz/zF0≦1.000であることがより好ましい。このように、本発明の強誘電体薄膜では、バルク状態に対しZ面の間隔がほとんど同じであるか、長くなるように結晶格子が歪んでいる。
結晶格子の歪みがゼロに近い強誘電体薄膜、すなわち応力がほとんど生じていない強誘電体薄膜では、応力緩和が生じず、したがって、自発分極は経時変化を生じない。また、強誘電体薄膜結晶にドメイン構造や欠陥が生じないので、高品質の結晶が得られる。また、z/zF0が1を超えている強誘電体薄膜には圧縮応力が生じているので、自発分極の値が大きくなる。
これに対し、薄膜化したときにZ面の間隔が短くなりすぎると、すなわち膜面内において二次元引っ張り応力が大きくなりすぎると、上述したように自発分極の値が小さくなってしまう。一方、Z面の間隔に上限を設ける理由は以下のとおりである。Z面の間隔が広くなるほど、Z面内に存在する結晶軸間の距離が小さくなるので、Z面内における二次元圧縮応力が大きくなる。その結果、図1に示されるように自発分極値が大きくなるので、好ましい。しかし、本発明では、熱膨張係数の小さいSi基板を用いるため、強誘電体薄膜形成後に圧縮応力が存在していたとしても、室温まで冷却する際に圧縮応力が緩和されてしまう。このため、室温において上記範囲を超える圧縮応力を得ようとすると、強誘電体薄膜形成時に圧縮応力が著しく大きくなるようにしなければならず、形成条件に無理が生じ、エピタキシャル膜の形成が不可能となってしまう。このような理由から、Si基板を用いる本発明では、Z面の間隔を表すz/zF0の上限を上記値とする。
厚さ
強誘電体薄膜の厚さは、一般に、好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、さらに好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下であるが、PbTiO薄膜をエピタキシャル膜とする場合には、30nm以下、好ましくは20nm以下である。強誘電体薄膜形成後に室温まで冷却したときに、Z面の間隔が上記したようにバルク材料とほぼ同じとなるか、バルク材料より広くなるように結晶格子が歪んでいるためには、強誘電体薄膜形成時に膜面内において圧縮応力が生じていなければならない。この圧縮応力は、ミスフィットを膜の弾性歪みで吸収することにより生じさせることができる。強誘電体薄膜が厚すぎると、エピタキシャル成長時にミスフィットを弾性歪みで吸収できず、転位による歪み吸収が行われるようになり、膜面内の二次元圧縮応力を効果的に生じさせることができなくなる。圧縮応力を生じさせるためには強誘電体薄膜が薄いほうがよいが、強誘電性は結晶格子の骨格と原子の配置とに依存して発現するため、厚さは最低でも2nm(5格子分)、好ましくは5nmは必要と考えられる。
強誘電体材料
強誘電体薄膜に用いる材料は特に限定されず、強誘電性を有するものから適宜選択すればよいが、例えば以下の材料が好適である。
(A)ペロブスカイト型材料:BaTiO;PbTiO、希土類元素含有チタン酸鉛、PZT(ジルコンチタン酸鉛)、PLZT(ジルコンチタン酸ランタン鉛)等のPb系ペロブスカイト化合物;Bi系ペロブスカイト化合物など。以上のような単純、複合、層状の各種ペロブスカイト化合物。
(B)タングステンブロンズ型材料:SBN(ニオブ酸ストロンチウムバリウム)、PBN(ニオブ酸鉛バリウム)等のタングステンブロンズ型酸化物など。
(C)YMnO系材料:希土類元素(ScおよびYを含む)とMnとOとを含み、六方晶系YMnO構造をもつ酸化物など。例えば、YMnO、HoMnO等。
以下、これらの強誘電体材料について説明する。
(A)ペロブスカイト型材料のうち、BaTiOや、PbTiO等の鉛系ペロブスカイト化合物などは、一般に化学式ABOで表される。ここで、AおよびBは各々陽イオンを表す。AはCa、Ba、Sr、Pb、K、Na、Li、LaおよびCdから選ばれた1種以上であることが好ましく、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明では、これらのうちから、使用温度において強誘電性を示すものを目的に応じて適宜選択して用いればよい。
こうしたペロブスカイト型化合物における比率A/Bは、好ましくは0.8〜1.3であり、より好ましくは0.9〜1.2である。
A/Bをこのような範囲にすることによって、誘電体の絶縁性を確保することができ、また結晶性を改善することが可能になるため、誘電体特性または強誘電特性を改善することができる。これに対し、A/Bが0.8未満では結晶性の改善効果が望めなくなり、またA/Bが1.3を超えると均質な薄膜の形成が困難になってしまう。このようなA/Bは、成膜条件を制御することによって実現する。
なお、本明細書では、PbTiOなどのようにABOにおけるOの比率xをすべて3として表示してあるが、xは3に限定されるものではない。ペロブスカイト材料によっては、酸素欠陥または酸素過剰で安定したペロブスカイト構造を組むものがあるので、ABOにおいて、xの値は、通常、2.7〜3.3程度である。なお、A/Bは、蛍光X線分析法から求めることができる。
本発明で用いるABO型のペロブスカイト化合物としては、A1+5+、A2+4+、A3+3+、ABO、A(B’0.67B”0.33)O、A(B’0.33B”0.67)O、A(B0.5 +30.5 +5)O、A(B0.5 2+0.5 6+)O、A(B0.5 1+0.5 7+)O、A3+(B0.5 2+0.5 4+)O、A(B0.25 1+0.75 5+)O、A(B0.5 3+0.5 4+)O2.75、A(B0.5 2+0.5 5+)O2.75等のいずれであってもよい。
具体的には、PZT、PLZT等のPb系ペロブスカイト化合物、CaTiO、BaTiO、PbTiO、KTaO、BiFeO、NaTaO、SrTiO、CdTiO、KNbO、LiNbO、LiTaO、およびこれらの固溶体等である。
なお、上記PZTは、PbZrO−PbTiO系の固溶体である。また、上記PLZTは、PZTにLaがドープされた化合物であり、ABOの表記に従えば、(Pb0.890.91La0.110.09)(Zr0.65Ti0.35)Oで示される。
また、層状ペロブスカイト化合物のうちBi系層状化合物は、一般に式 Bim−13m+3で表わされる。上記式において、mは1〜5の整数、Aは、Bi、Ca、Sr、Ba、Pbおよび希土類元素(ScおよびYを含む)のいずれかであり、Bは、Ti、TaおよびNbのいずれかである。具体的には、BiTi12、SrBiTa、SrBiNbなどが挙げられる。本発明では、これらの化合物のいずれを用いてもよく、これらの固溶体を用いてもよい。
本発明に用いることが好ましいペロブスカイト型化合物は、チタン酸塩ないしチタン酸塩含有ペロブスカイト型化合物、例えばBaTiO、SrTiO、PLZT、PZT、CaTiO、PbTiO、希土類元素含有チタン酸鉛等であり、より好ましいものはBaTiO、SrTiO、PZT、PbTiO、希土類元素含有チタン酸鉛であり、特に好ましいものは、PbTiO、R(Rは、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Yb、Y、Sm、Gd、ErおよびLaから選択された少なくとも1種の希土類元素)、Pb、TiならびにOを含有する希土類元素含有チタン酸鉛である。特にPbTiOは、自発分極、誘電率、キューリー点の点でメモリに好適である。そして、本発明では、従来は不可能であったPbTiOのエピタキシャル膜化を実現できる。エピタキシャル膜化により、単一配向ではない従来のPbTiO薄膜で問題であったリークや、分極反転による疲労特性の悪さが改善でき、PbTiO本来の高特性を利用できる。
本発明では、希土類元素含有チタン酸鉛として、原子比率が(Pb+R)/Ti=0.8〜1.3、Pb/(Pb+R)=0.5〜0.99の範囲、好ましくは(Pb+R)/Ti=0.9〜1.2、Pb/(Pb+R)=0.7〜0.97の範囲にある組成のものを用いることが好ましい。この組成の希土類元素含有チタン酸鉛は、特願平8−186625号に開示されている。希土類元素を上記比率でPbTiOに添加することにより、Ecを低下させることができ、しかも、それに伴なう残留分極値Prの減少を抑えることが可能となる。また、上記組成では、半導体化を生じさせにくい希土類元素を添加するので、リークのより少ない強誘電体薄膜が実現する。また、本発明者らは、添加する希土類元素の種類と量とが、分極反転の疲労特性に影響していることをつきとめた。上記組成では、希土類元素の種類と量とを最適なものとしてあるので、繰り返し特性に優れた強誘電体薄膜が実現する。
Rは、PbTiO材で構成される基本ペロブスカイトのAサイトに位置するPbと置換し、結晶を変形させる。PbTiOは、a軸:3.897A、c軸:4.147Aの正方晶型のペロブスカイト構造であり、c軸方向に分極軸を持つ。この結晶変形は、a軸とc軸との比を減少させるので、わずかに自発分極を減少させるが、分極反転に必要とされる電圧(Ec)を低下させることができる。一方、R以外の希土類元素、例えば、Ceでは、PbTiOのBサイトに位置する元素と置換するので、結晶の変形が効果的に行えず、自発分極が極端に低下するためデバイス応用に好ましくない。
希土類元素含有チタン酸鉛において、(Pb+R)/Tiが小さすぎると結晶性の改善効果が望めなくなり、(Pb+R)/Tiが大きすぎると均質な薄膜の形成が困難になってしまう。また、(Pb+R)/Tiを上記範囲とすることにより、良好な誘電特性が得られる。Pb/(Pb+R)が小さすぎると、自発分極が小さくなってしまうと同時に誘電率も1000以上と大きくなってしまう。一方、Pb/(Pb+R)が大きすぎると、希土類元素の添加効果、すなわちEcの低下効果が不十分となる。Pb/(Pb+R)を上記範囲とすることは、強誘電体薄膜の形成条件を後述するように制御することによって容易に実現できる。Pb、TiおよびRの含有率は、蛍光X線分析法により求めることができる。
チタン酸鉛は、一般にPb:Ti:O=1:1:3であるが、本発明では添加するRの種類および量によって酸素の比率は異なり、通常、2.7〜3.3程度である。
なお、希土類元素含有チタン酸鉛では、Tiの60原子%以下がZr、Nb、Ta、HfおよびCeの少なくとも1種で置換されていてもよい。
(B)タングステンブロンズ型材料としては、強誘電体材料集のLandoit−BorensteinVol.16記載のタングステンブロンズ型材料が好ましい。具体的には、(Ba,Sr)Nb、(Ba,Pb)Nb、PbNb、PbTa、BaTa、PbNb11、PbNb、SrNb、BaNb等やこれらの固溶体が好ましく、特に、SBN{(Ba,Sr)Nb}やPBN{(Ba,Pb)Nb}、が好ましい。
(C)YMnO系材料は、化学式RMnOで表せる。Rは希土類元素(ScおよびYを含む)から選ばれた1種以上であることが好ましい。YMnO系材料における比率R/Mnは、好ましくは0.8〜1.2であり、より好ましくは0.9〜1.1である。このような範囲にすることにより、絶縁性を確保することができ、また結晶性を改善することが可能になるため、強誘電特性を改善することができる。これに対し、比率R/Mnが0.8未満、1.2をこえる範囲では、結晶性が低下する傾向がある。また特に、比率R/Mnが1.2をこえる範囲では、強誘電性が得られず、常誘電的特性になる傾向があり、分極を利用した素子への応用が不可能になってくることがある。このようなR/Mnは、成膜条件を制御することによって実現する。なお、R/Mnは、蛍光X線分析法から求めることができる。YMnO系材料の誘電率は、バルクで10〜50程度、薄膜で10〜100程度である。
本発明に用いることが好ましいYMnO系材料は、結晶構造が六方晶系のものである。YMnO系材料は、六方晶系の結晶構造を持つものと斜方晶系の結晶構造を持つものとが存在する。強誘電性を得るためには、六方晶系の結晶材料とする必要がある。具体的には、組成が実質的にYMnO、HoMnO、ErMnO、YbMnO、TmMnO、LuMnOであるものか、これらの固溶体などである。
結晶配向
強誘電体薄膜は、分極軸が基板面と垂直方向に配向した結晶化膜であることが望ましいが、本発明では後述するようなエピタキシャル膜を形成することができるので、極めて優れた強誘電体特性が実現する。具体的には、ペロブスカイト型材料では(001)配向のエピタキシャル膜とすることが可能であり、タングステンブロンズ型材料では(001)配向のエピタキシャル膜とすることが可能であり、六方晶YMnO系材料では(0001)配向のエピタキシャル膜とすることが可能である。
ペロブスカイト型材料から構成される強誘電体薄膜は、Si(100)基板の表面に形成することが好ましい。この場合の強誘電体薄膜とSi基板との好ましい結晶軸方位関係は、以下の通りである。なお、Siは立方晶である。強誘電体薄膜が(001)単一配向である場合、強誘電体[100]//Si[010]である。すなわち、強誘電体薄膜とSi基板とは、面内に存在する軸同士も平行であることが好ましい。
タングステンブロンズ型材料から構成される強誘電体薄膜も、Si(100)基板の表面に形成することが好ましい。この場合の強誘電体薄膜とSi基板との好ましい結晶軸方位関係は、強誘電体[100]//Si[010]である。
六方晶YMnO系材料から構成される(0001)配向の強誘電体薄膜は、Si(111)基板の表面に形成することが好ましい。ただし、後述するように(111)配向のバッファ薄膜や(111)配向の電極層を設ければ、Si(100)基板上に(0001)配向の六方晶YMnO系強誘電体薄膜を形成することができる。
なお、本明細書においてエピタキシャル膜とは、第一に、単一配向膜である必要がある。この場合の単一配向膜とは、X線回折による測定を行ったとき、目的とする面以外のものの反射のピーク強度が目的とする面の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である膜である。例えば、(001)単一配向膜、すなわちc面単一配向膜では、膜の2θ−θX線回折で(00L)面以外の反射ピークの強度が、(00L)面反射の最大ピーク強度の10%以下、好ましくは5%以下である。なお、本明細書において(00L)は、(001)や(002)などの等価な面を総称する表示である。また、同様に、(100)単一配向膜では(100)面や(200)面などの等価な面すべての反射について考え、(111)単一配向膜では(111)面や(222)面などの等価な面すべての反射について考える。第二に、膜面内をX−Y面とし、膜厚方向をZ軸としたとき、結晶がX軸、Y軸およびZ軸方向にともに揃って配向している必要がある。このような配向は、RHEED評価でスポットまたはストリークパターンを示すことで確認できる。これらの条件を満足すれば、エピタキシャル膜といえる。なお、RHEEDとは、反射高速電子線回折(Reflction High Energy Electron Diffraction)であり、RHEED評価は、膜面内における結晶軸の配向の指標である。
バッファ薄膜
強誘電体薄膜をペロブスカイト型材料、タングステンブロンズ型材料またはYMnO系材料から構成する場合、強誘電体薄膜と基板との間には、以下に説明する酸化物中間層および/または電極層をバッファ薄膜として設ける。バッファ薄膜とは、上述したように、強誘電体薄膜の応力制御のために基板と強誘電体薄膜との間に設けられる薄膜である。なお、酸化物中間層は、絶縁体としても機能する。
強誘電体薄膜がペロブスカイト型材料またはタングステンブロンズ型材料から構成される場合、酸化物中間層は、下記酸化ジルコニウム系層からなるか、さらに下記希土類酸化物系層または下記ペロブスカイト下地層を含むか、下記希土類酸化物系層および下記ペロブスカイト下地層の両方を含むことが好ましい。積層順序は、酸化ジルコニウム系層→強誘電体薄膜であるか、酸化ジルコニウム系層→希土類酸化物系層→強誘電体薄膜であるか、酸化ジルコニウム系層→ペロブスカイト下地層→強誘電体薄膜であるか、酸化ジルコニウム系層→希土類酸化物系層→ペロブスカイト下地層→強誘電体薄膜である。
強誘電体薄膜がYMnO系材料から構成される場合、酸化物中間層は酸化ジルコニウム系層または希土類酸化物系層から構成されることが好ましい。
バッファ薄膜としての電極層は、基板と強誘電体薄膜との間に設けられる。上記した酸化物中間層を設ける場合には、電極層は酸化物中間層と強誘電体薄膜との間に設けられる。
バッファ薄膜としての電極層は、金属から構成されることが好ましいが、金属以外の導電性材料で構成されていてもよい。電極層は、強誘電体薄膜の下側の電極として機能する。また、電極層は、強誘電体薄膜との間の格子整合性が良好なので、結晶性の高い強誘電体薄膜が得られる。
バッファ薄膜において、Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、このZ面の面内における格子定数をxとし、強誘電体薄膜構成材料のバルク状態での前記Z面の面内における格子定数をxF0としたとき、強誘電体薄膜形成時の温度においてxおよびxF0は、式 1.000<mxF0/nx≦1.050を満足することが好ましく、式 1.000<mxF0/nx≦1.020を満足することがより好ましく、式 1.005≦mxF0/nx≦1.010を満足することがさらに好ましい。上記式において、nおよびmは1以上の整数である。xF0>xの場合、m=n=1としたときに上記式を満足することが好ましいが、m<nであってもよい。この場合のmとnとの組み合わせ(m,n)は、例えば(2,3)、(2,5)、(3,4)、(3,5)、(4,5)などが好ましい。一方、xF0<xのときは、m>nとする必要がある。この場合の(m,n)としては、例えば(3,2)、(5,2)、(4,3)、(5,3)、(5,4)などが好ましい。これら以外の組み合わせでは、強誘電体薄膜のエピタキシャル成長による圧縮応力蓄積が難しくなる。なお、複合ペロブスカイト型化合物を用いた場合の(m,n)も上記と同様であるが、この場合の格子定数x、xF0には、単純ペロブスカイト構造を基本とした単位格子の格子定数を用いる。なお、複合ペロブスカイト型化合物自体の格子定数は、その単位格子の整数倍(通常、最大5倍程度)である。
このような条件を満足する強誘電体薄膜とバッファ薄膜とを選択することにより、強誘電体薄膜の形成温度において強誘電体薄膜の格子とバッファ薄膜の格子との間のミスフィットを利用し、形成温度で強誘電体薄膜面内に二次元圧縮応力を生じさせることができる。膜形成時に二次元圧縮応力が生じているため、冷却時にSi基板との間の熱膨張率の差により生じる二次元引っ張り応力をキャンセルすることができる。このため、条件を合わせることにより無応力状態の強誘電体薄膜または圧縮応力を有する強誘電体薄膜を得ることが可能となるので、自発分極値の大きな強誘電体薄膜を実現することができる。
上記式においてmxF0/nxが1以下になると、冷却時に生じる引っ張り応力をキャンセルできなくなり、本発明の効果が得られない。一方、mxF0/nxが大きすぎると、バッファ薄膜上に強誘電体薄膜をエピタキシャル成長させることが困難となり、強誘電体薄膜に所定の圧縮応力を生じさせることが難しくなる。
例えば、バッファ薄膜材料として後述するZrOを用い、強誘電体薄膜材料としてBaTiOを用いた場合、600℃でSi基板上に形成したZrO(001)膜の面内の格子定数(x)は0.519nmであり、600℃でのBaTiOバルク材料の格子定数(xF0)は0.403nmである。したがって、格子定数のずれ(ミスフィット)は、xF0/x=0.776となり、上記式においてnおよびmをいずれも1としたときには上記式を満足しない。しかし、実際はそれぞれの整数倍(BaTiO4格子とZrO3格子)で格子が整合する。すなわち、上記式においてm=4かつn=3とすれば、1.612/1.557=1.035となり、上記式を満足する。
以下、バッファ薄膜として用いられる酸化物中間層および電極層について詳細に説明する。
酸化物中間層
酸化ジルコニウム系層
酸化ジルコニウム系層は、酸化ジルコニウムを主成分とするか、希土類元素(ScおよびYを含む)により安定化された酸化ジルコニウム(安定化ジルコニア)を主成分とする。この層を設けることにより、その上に設けられる電極層や強誘電体薄膜の剥離を防止できる。また、この層は、強誘電体との格子整合性がよいため、結晶性の高い強誘電体薄膜が得られる。
酸化ジルコニウムおよび安定化ジルコニアは、Zr1−x2−δ(RはScおよびYを含む希土類元素である)で表わされる組成のものが好ましい。xおよびδについては、後述する。Rとしては、Y、Pr、Ce、Nd、Gd、Tb、Dy、HoおよびErから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
酸化ジルコニウム系層は、単一の結晶配向を有していることが望ましい。これは、複数の結晶面を有する層においては粒界が存在するため、その上の電極層や強誘電体薄膜のエピタキシャル成長が不可能になるためである。具体的には、(001)配向の電極層や強誘電体薄膜を形成しようとする場合、酸化ジルコニウム系層は、正方晶または単斜晶の(001)単一配向であるか、立方晶の(100)単一配向であることが好ましく、また、(111)配向の電極層や(0001)配向の強誘電体薄膜を形成しようとする場合、酸化ジルコニウム系層は(111)単一配向であることが好ましく、いずれの場合でもエピタキシャル膜であることがより好ましい。このような良好な結晶性の酸化ジルコニウム系層が形成できれば、粒界による物理量の攪乱等がなくなり、酸化ジルコニウム系層上に良質の電極層や強誘電体薄膜が得られる。
Si(100)基板表面に、酸化物中間層(Zr1−x2−δ)が積層されているとき、これらの結晶方位関係は、Zr1−x2−δ(001)//Si(100)であることが好ましい。
また、Si(111)基板表面に、酸化物中間層(Zr1−x2−δ)が積層されているとき、これらの結晶方位関係は、Zr1−x2−δ(111)//Si(111)であることが好ましい。
ZrOは高温から室温にかけて立方晶→正方晶→単斜晶と相転移を生じる。立方晶を安定化するために希土類元素を添加したものが、安定化ジルコニアである。Zr1−x2−δ膜の結晶性はxの範囲に依存する。Jpn.J.Appl.Phys.27(8)L1404−L1405(1988)に報告されているように、xが0.2未満である組成域では正方晶または単斜晶の結晶になる。これまで、xが0.2以上の立方晶領域では単一配向のエピタキシャル膜が得られている。ただし、xが0.75を超える領域では、立方晶ではあるが、例えば(100)単一配向は得られず、(111)配向の結晶が混入する。一方、正方晶または単斜晶となる領域では、J.Appl.Phys.58(6)2407−2409(1985)にも述べられているように、得ようとするもの以外の配向面が混入し、単一配向のエピタキシャル膜は得られていない。
したがって、立方晶(100)単一配向とするためには、Zr1−x2−δにおいてxは0.2〜0.75であることが好ましい。この場合のxのより好ましい範囲は、0.2〜0.50である。酸化ジルコニウム系層がエピタキシャル膜であれば、その上に形成される電極層や強誘電体薄膜をエピタキシャル成長させやすい。一方、(111)基板を用いて(111)単一配向とする場合には、xは0.75超であってよい。なお、xが1のときは、後述する希土類酸化物層となる。
安定化ジルコニアが含む希土類元素は、Si基板の格子定数および酸化ジルコニウム系層上に設けられる層の格子定数と、酸化ジルコニウム系層の格子定数とを好ましくマッチングさせるために、その種類および添加量が選択される。希土類元素の種類を固定したままxを変更すれば格子定数を変えることができるが、xだけの変更ではマッチングの調整可能領域が狭い。ここで、例えばYに替えてPrを用いると、格子定数を大きくすることが可能であり、マッチングの最適化が容易となる。
なお、酸素欠陥を含まない酸化ジルコニウムは、化学式ZrOで表わされるが、希土類元素を添加した酸化ジルコニウムは、添加した希土類元素の種類、量および価数により酸素の量が変化し、Zr1−x2−δにおけるδは、通常、0〜0.5となる。
Zr1−x2−δにおいてxが0.2未満である領域、特に、酸素を除く構成元素中におけるZrの比率が93mol%を超える高純度の組成域では、上述したように結晶性が良好とはならず、また、良好な表面性も得られていなかった。しかし、本発明者らが検討を重ねた結果、後述する製造方法を適用することにより、上記した単一配向、さらにはエピタキシャル成長が可能となり、表面性も良好な値が得られることがわかった。高純度のZrO膜は、絶縁抵抗が高くなり、リーク電流が小さくなることから、絶縁特性を必要とする場合には好ましい。
したがって、良好な結晶性および表面性が得られる場合には、酸化ジルコニウム系層中の酸素を除く構成元素中におけるZrの比率は、好ましくは93mol%超、より好ましくは95mol%以上、さらに好ましくは98mol%以上、最も好ましくは99.5mol%以上である。酸素およびZrを除く構成元素は、通常、希土類元素やPなどである。なお、Zrの比率の上限は、現在のところ99.99mol%程度である。また、現在の高純度化技術ではZrOとHfOとの分離は難しいので、ZrOの純度は、通常、Zr+Hfでの純度を指している。したがって、本明細書におけるZrOの純度は、HfとZrとを同元素とみなして算出された値であるが、HfOは本発明における酸化ジルコニウム系層においてZrOと全く同様に機能するため、問題はない。
なお、酸化物中間層を形成する場合、酸化物中間層中の酸素がSi等からなる基板の表面付近に拡散し、基板表面付近が浅く(例えば5nm程度以下)酸化されてSiOなどの酸化層が形成されることがある。また、成膜の方法によっては、酸化物中間層形成時にSi等の基板の表面にSi酸化物層等が残留する場合がある。
希土類酸化物系層
希土類酸化物系層は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの少なくとも1種、特に、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、HoおよびErの少なくとも1種を含有する希土類酸化物から実質的に構成されていることが好ましい。なお、2種以上の希土類元素を用いるとき、その比率は任意である。
希土類酸化物系層は、基板の面配向によらず(111)配向を示す。すなわち、例えば、Si(100)基板でもSi(111)基板でも立方晶(111)配向となる。このため、YMnO系材料から構成される強誘電体薄膜を形成する場合に好適である。
希土類酸化物系層としては、特にSc(111)層が好ましい。Sc(111)の格子定数0.3418nmに対しYMnO(0001)層面内のMnの配列間隔は0.3540nmであるため、両者が格子整合して、ミスフィットによる圧縮応力がYMnO(0001)層形成時に発生する。
ただし、希土類酸化物系層を(001)配向の酸化ジルコニウム系層の上に形成した積層構造の場合には、希土類酸化物系層は(001)配向となるので、この場合は、ペロブスカイト型材料またはタングステンブロンズ型材料から構成される強誘電体薄膜の形成に好適である。酸化物中間層として上記した安定化ジルコニアを用いたときには、C−V特性にヒステリシスがみられ、この点においてZrO高純度膜に劣る。この場合、酸化ジルコニウム系層上に希土類酸化物系層を積層することにより、C−V特性のヒステリシスをなくすことができる。また、希土類酸化物系層を積層することにより、強誘電体薄膜との間での格子整合のマッチングがより良好となる。希土類酸化物系層が積層されている場合、酸化ジルコニウム系層は、元素分布が均一な膜であってもよく、膜厚方向に組成が変化する傾斜構造膜であってもよい。傾斜構造膜とする場合、基板側から希土類酸化物系層側にかけて、酸化ジルコニウム系層中の希土類元素含有率を徐々または段階的に増大させると共に、Zr含有率を徐々または段階的に減少させる。このような傾斜構造膜とすることにより、酸化ジルコニウム系層と希土類酸化物系層との間の格子のミスフィットが小さくなるか、あるいは存在しなくなり、希土類酸化物系層を高結晶性のエピタキシャル膜とすることが容易となる。このような積層構造の場合、希土類酸化物系層に添加する希土類元素は、酸化ジルコニウム系層に添加する希土類元素と同一のものを用いることが好ましい。
酸化ジルコニウム系層および希土類酸化物系層には、特性改善のために添加物を導入してもよい。例えば、これらの層にCaやMgなどのアルカリ土類元素をドーピングすると、膜のピンホールが減少し、リークを抑制することができる。また、AlおよびSiは、膜の抵抗率を向上させる効果がある。さらに、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属元素は、膜中において不純物による準位(トラップ準位)を形成することができ、この準位を利用することにより導電性の制御が可能になる。
ペロブスカイト下地層
ペロブスカイト下地層は、強誘電体薄膜の説明において述べたABO型のペロブスカイト型化合物から構成される。ペロブスカイト下地層は、ペロブスカイト型化合物またはタングステンブロンズ型化合物からなる強誘電体薄膜の結晶性を高めるために、必要に応じて設けられる。ペロブスカイト下地層の構成材料は、好ましくはBaTiO、SrTiOまたはこれらの固溶体であり、より好ましくはBaTiOである。ペロブスカイト下地層は、酸化ジルコニウム系層や希土類酸化物系層との間の格子整合性が良好であって、かつ強誘電体薄膜構成材料とは異なる化合物から構成される。
例えば、前述した希土類含有チタン酸鉛からなる強誘電体薄膜を、酸化ジルコニウム系層または希土類酸化物系層に接して形成する場合、前述した好ましい結晶配向を有する強誘電体薄膜を得ることは難しいが、BaTiO等からなるペロブスカイト下地層を介して希土類含有チタン酸鉛の強誘電体薄膜を形成することにより、目的とする結晶配向を実現することができる。
また、後述する電極層を、酸化ジルコニウム系層または希土類酸化物系層に接して形成する場合、後述するような正方晶(001)配向または立方晶(100)配向の電極層を得ることは難しいが、BaTiO等からなるペロブスカイト下地層を介して電極層を形成することにより、目的とする結晶配向を実現することができる。
ペロブスカイト下地層は、正方晶であるときは(001)単一配向、すなわち基板表面と平行にc面が単一に配向したものであることが好ましく、立方晶であるときは(100)単一配向、すなわち基板表面と平行にa面が単一に配向したものであることが好ましく、いずれの場合でもエピタキシャル膜であることがより好ましい。
そして、酸化ジルコニウム系層とペロブスカイト下地層との結晶方位関係は、ペロブスカイト(001)//Zr1−x2−δ(001)//Si(100)、かつペロブスカイト[100]//Zr1−x2−δ[100]//Si[010]であることが好ましい。なお、これは各層が正方晶の場合であるが、各層が立方晶である場合でも、膜面内において軸同士が平行であることが好ましいという点では同様である。
電極層
電極層を構成する金属としては、Au、Pt、Ir、Os、Re、Pd、RhおよびRuの少なくとも1種を含有する金属単体または合金が好ましい。金属以外の導電性材料としては、導電性酸化物が好ましく、特に、以下の導電性酸化物を含む材料が好ましい。
NaCl型酸化物:TiO,VO,NbO,RO1−x(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)、0≦x<1),LiVO等。
スピネル型酸化物:LiTi,LiMTi2−x(ここで、M=Li,Al,Cr,0<x<2),Li1−xTi(ここで、M=Mg,Mn,0<x<1),LiV,Fe,等。
ペロブスカイト型酸化物:ReO,WO,MReO(ここで、M金属,0<x<0.5),MxWO(ここで、M=金属,0<x<0.5),A32112(ここで、A=K,Rb,Tl),NaTa1−y(ここで、0≦x<1,0<y<1),RNbO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),Na1−xSrNbO(ここで、0≦x≦1),RTiO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),Can+1Ti3n+1−y(ここで、n=2,3,...,y>0),CaVO,SrVO,R1−xSrVO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)、0≦x≦1),R1−xBaVO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)、0≦x≦1),Srn+13n+1−y(ここで、n=1,2,3....,y>0),Ban+13n+1−y(ここで、n=1,2,3....,y>0),RBaCu13−y(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)、0≦y),RSrCu15(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),RSrCu6.2(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),R1−xSrVO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),CaCrO,SrCrO,RMnO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),R1−xSrMnO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1),R1−xBaMnO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1),Ca1−xMnO3−y(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1,0≦y),CaFeO,SrFeO,BaFeO,SrCoO,BaCoO,RCoO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),R1−xSrCoO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1),R1−xBaCoO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1),RNiO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),RCuO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),RNbO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),Nb1229,CaRuO,Ca1−xRu1−yMn(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦x≦1,0≦y≦1),SrRuO,Ca1−xMgRuO(ここで、0≦x≦1),Ca1−xSrRuO(ここで、0<x<1),BaRuO,Ca1−xBaRuO(ここで、0<x<1),(Ba,Sr)RuO,Ba1−xRuO(ここで、0<x≦1),(R,Na)RuO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),(R,M)RhO(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),M=Ca,Sr,Ba),SrIrO,BaPbO,(Ba,Sr)PbO3−y(ここで、0≦y<1),BaPb1−xBi(ここで、0<x≦1),Ba1−xBiO(ここで、0<x≦1),Sr(Pb,Sb)O3−y(ここで、0≦y<1),Sr(Pb,Bi)O3−y(ここで、0≦y<1),Ba(Pb,Sb)O3−y(ここで、0≦y<1),Ba(Pb,Bi)O3−y(ここで、0≦y<1),MMoO(ここで、M=Ca,Sr,Ba),(Ba,Ca,Sr)TiO3−x(ここで、0≦x),等。
層状ペロブスカイト型酸化物(KNiF型を含む):Rn+1Ni3n+1(ここで、R:Ba,Sr,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,n=1〜5の整数),Rn+1Cu3n+1(ここで、R:Ba,Sr,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,n=1〜5の整数),SrRuO,SrRhO,BaRuO,BaRhO,等。
パイロクロア型酸化物:R7−y(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦y<1),TlMn7−y(ここで、0≦y<1),RMo7−y(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む),0≦y<1),RRu7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),Bi2−xPbPt2−xRu7−y(ここで、0≦x≦2,0≦y<1),Pb(Ru,Pb)O7−y(ここで、0≦y<1),RRh7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),RPd7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),RRe7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),ROs7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),RIr7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1),RPt7−y(ここで、R:Tl,Pb,Bi,Cd,希土類(ScおよびYを含む)のうち一種類以上,0≦y<1)等。
その他の酸化物:RRe19(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),RRu19(ここで、R:一種類以上の希土類(ScおよびYを含む)),BiRu11,V,Ti,Rh,VO,CrO,NbO,MoO,WO,ReO,RuO,RhO,OsO,IrO,PtO,PdO,V,V2n−1(n=4から9の整数),SnO2−x(ここで、0≦x<1),LaMo,(M,Mo)O(ここで、M=Na,K,Rb,Tl),Mo3n−1(n=4,8,9,10),Mo1747,Pd1−xLiO(ここで、x≦0.1)等。Inを含む酸化物。
これらのうち特に、Inを含む酸化物または導電性ペロブスカイト酸化物が好ましく、特にIn、In(Snドープ)、RCoO、RMnO、RNiO、RCuO、(R,Sr)CoO、(R,Sr,Ca)RuO、(R,Sr)RuO、SrRuO、(R,Sr)MnO(Rは、YおよびScを含む希土類)、およびそれらの関連化合物が好ましい。
(001)配向の強誘電体薄膜を形成しようとする場合、電極層は正方晶(001)単一配向であるか、立方晶(100)単一配向であることが好ましく、また、六方晶(0001)配向の強誘電体薄膜を形成しようとする場合、電極層は(111)単一配向であることが好ましく、いずれの場合でも電極層はエピタキシャル膜であることがより好ましい。
正方晶(001)配向または立方晶(100)配向の電極層を形成しようとする場合、酸化物中間層は(001)配向であることが好ましく、(111)配向の電極層を形成しようとする場合、酸化物中間層は(111)配向であることが好ましい。ただし、電極層が金属から構成される場合には、(001)配向のバッファ薄膜上に(111)配向の電極層を形成することができる。電極層が金属から構成される場合に電極層を確実に(001)配向とするためには、上記したペロブスカイト下地層を設けることが好ましい。
Si単結晶基板、電極層および強誘電体薄膜の間の結晶軸方位関係は、ペロブスカイトまたはタングステンブロンズ[100]//電極層[100]//Si[010]であることが好ましい。また、面方位関係はペロブスカイトまたはタングステンブロンズ(001)//電極層(001)//Si(100)であることが好ましい。なお、これは電極層が正方晶の場合であるが、電極層が立方晶である場合でも、膜面内において軸同士が平行であることが好ましいという点では同様である。
電極層の比抵抗は、10−7〜10−2Ωcmであることが好ましい。また、電極層は、超電導材料から構成されていてもよい。
基板
前述したように、Si単結晶基板としては、Si(100)面またはSi(111)面を表面に有するものを用いることが好ましい。
各層の結晶性、表面性および厚さ
バッファ薄膜、すなわち酸化物中間層を構成する各層および電極層は、その上に形成される層の結晶性を向上させるために、結晶性が良好でかつ表面が分子レベルで平坦であることが好ましい。また、強誘電体薄膜も、上記した理由により、高結晶性で表面が平坦であることが好ましい。
各層の結晶性は、XRD(X線回折)における反射ピークのロッキングカーブの半値幅や、RHEEDによる像のパターンで評価することができる。また、表面性は、RHEED像のストリーク性、およびAFMで測定した表面粗さ(十点平均粗さ)で評価することができる。
強誘電体薄膜、電極層および酸化物中間層は、X線回折による(002)面の反射のロッキングカーブの半値幅が1.50°以下となる程度の結晶性を有していることが好ましい。また、AFMにより測定される表面粗さRz(十点平均粗さ、基準長さ500nm)は、酸化物中間層では好ましくは2nm以下、より好ましくは0.60nm以下であり、電極層では好ましくは10nm以下であり、強誘電体薄膜では2nm以下、好ましくは0.60nm以下である。なお、このような表面粗さは、各層の表面の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の領域で実現していることが望ましい。上記表面粗さは、基板全面にわたって各層を形成したときに、面積10cm以上の領域にわたって平均に分布した任意の10箇所以上を測定しての値である。本明細書において、薄膜表面の例えば80%以上でRzが2nm以下であるとは、上記のように10箇所以上を測定したときにその80%以上の箇所でRzが2nm以下であることを意味する。なお、表面粗さRzは、JIS B 0610に規定されている。
ロッキングカーブの半値幅およびRzの下限値は特になく、小さいほど好ましいが、現在のところ、ロッキングカーブの半値幅の下限値は、一般に0.7°程度、特に0.4°程度、上記Rzの下限値は0.10nm程度である。
また、RHEED像がストリークであって、しかもシャープである場合、各層の結晶性および表面平坦性が優れていることになる。
電極層の厚さは、一般に好ましくは50〜500nm程度であるが、結晶性および表面性が損なわれない程度に薄いことが好ましい。
酸化物中間層の厚さは、一般に好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜50nmであるが、結晶性、表面性を損なわない程度に薄いことが好ましい。また、酸化物中間層を絶縁層として用いる場合の厚さは、50〜500nm程度であることが好ましい。なお、酸化物中間層を多層構成とする場合、各層の厚さは0.5nm以上であることが好ましく、かつ酸化物中間層全体の厚さは上記範囲とすることが好ましい。
製造方法
強誘電体薄膜、酸化物中間層および電極層の形成方法は特に限定されず、Si基板上にこれらを単一配向膜やエピタキシャル膜として形成可能な方法であればよいが、好ましくは蒸着法、特に、特願平7−219850号、特願平7−240607号、特願平8−186625号等に開示されている蒸着法を用いることが好ましい。
以下、製造方法の具体例として、強誘電体薄膜に希土類元素含有チタン酸鉛を用いた場合について説明する。
強誘電体薄膜の形成方法
この製造方法を実施するにあたっては、図6に示したような蒸着装置1を用いることが望ましい。ここでは、PbTiOにGdを添加した組成であるPGT薄膜を例に挙げて説明するが、他の希土類含有チタン酸鉛系強誘電体材料からなる薄膜も、同様にして製造することができる。
蒸着装置1は、真空ポンプPが設けられた真空槽1aを有し、この真空槽1a内には、下部に基板2を保持するホルダ3が配置されている。このホルダ3は、回転軸4を介してモータ5に接続されており、このモータ5によって回転され、基板2をその面内で回転させることができるようになっている。上記ホルダ3は、基板2を加熱するヒータ6を内蔵している。
蒸着装置1は、酸化性ガス供給装置7を備えており、この酸化性ガス供給装置7の酸化性ガス供給口8は、上記ホルダ3の直ぐ下方に配置されている。これによって、酸化性ガスは、基板2近傍でその分圧が高くされるようになっている。ホルダ3のさらに下方には、PbO蒸発部9、TiO蒸発部10および希土類元素蒸発部11が配置されている。これら各蒸発部には、それぞれの蒸発源の他に、蒸発のためのエネルギーを供給するためのエネルギー供給装置(電子線発生装置、抵抗加熱装置等)が配置されている。
鉛蒸発源として酸化物(PbO)を用いる理由は、高温の基板上ではPbの蒸気圧が高いため、蒸発源にPbを用いると再蒸発して基板表面に付着しにくいが、PbOを用いると付着率が高まるからであり、TiOを用いる理由も、同様に付着率が高いからである。TiOの替わりにTiを用いた場合、TiはPbOよりも酸化されやすいため、PbOはTiに酸素を奪われてPbとなり、これが再蒸発してしまうので好ましくない。
なお、TiOにおけるxは、好ましくは1≦x<1.9、より好ましくは1≦x<1.8、さらに好ましくは1.5≦x≦1.75、特に好ましくは1.66≦x≦1.75である。このようなTiOは熱エネルギーを加えると真空槽内で溶融し、安定した蒸発速度が得られる。これに対しTiOは、熱エネルギーを加えると真空槽内で酸素を放出しながらTiOへと変化してゆくため、真空槽内の圧力変動が大きくなり、また、安定した蒸発速度が得られないため、組成制御が不可能である。
まず、上記ホルダに基板をセットする。基板材料には、前述した各種のものを用いることができるが、これらのうちではSi単結晶基板が好ましい。特にSi単結晶の(100)面を基板表面になるように用いることが好ましい。また、前記した酸化ジルコニウム系層、希土類酸化物系層、ペロブスカイト下地層、電極層などを形成した単結晶板を基板として用いることも好ましい。
この製造方法では、均質な強誘電体薄膜を大面積基板、例えば10cm以上の面積を持つ基板上に形成することができる。これにより、強誘電体薄膜を有する電子デバイスや記録媒体を、従来に比べて極めて安価なものとすることができる。なお、基板の面積の上限は特にないが、現状では400cm程度である。現状の半導体プロセスは2〜8インチのSiウエハー、特に6インチタイプのウエハーを用いたものが主流であるが、この方法ではこれに対応が可能である。また、ウエハー全面ではなく、部分的にマスク等で選択して強誘電体薄膜を形成することも可能である。
次に、基板を真空中で加熱し、PbO、TiOおよびGdと、酸化性ガスとを基板表面に供給することにより、強誘電体薄膜を形成していく。
加熱温度は、500〜700℃、特に550〜650℃とすることが好ましい。500℃未満であると、結晶性の高い強誘電体薄膜が得られにくい。700℃を超えると、鉛蒸気と基板のSi等とが反応し、結晶性の鉛系強誘電体膜が得られにくい。また、Pt等の電極層上に強誘電体薄膜を形成する場合にも、Ptとの反応が生じてしまう。
上記酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、原子状酸素、NO、ラジカル酸素等を用いることができるが、酸化性ガスの一部または大部分をラジカル化した酸素とすることが好ましい。
ここでは、ECR酸素源によるラジカル酸素を用いる場合について説明する。
真空ポンプで継続的に真空槽内を排気しながら、ECR酸素源から大部分がラジカル化した酸素ガスを真空蒸着槽内に継続的に供給する。基板近傍における酸素分圧は、10−3〜10−1Torr程度であることが好ましい。酸素分圧の上限を10−1Torrとしたのは、真空槽内にある蒸発源中の金属を劣化させることなく、かつその蒸発速度を一定に保つためである。真空蒸着槽に酸素ガスを導入するに際しては、基板の表面にその近傍からガスを噴射し、基板近傍だけに高い酸素分圧の雰囲気をつくるとよく、これにより少ないガス導入量で基板上での反応をより促進させることができる。このとき真空槽内は継続的に排気されているので、真空槽のほとんどの部分は10−4〜10−6Torrの低い圧力になっている。酸素ガスの供給量は、2〜50cc/分、好ましくは5〜25cc/分である。酸素ガスの最適供給量は、真空槽の容積、ポンプの排気速度その他の要因により決まるので、あらかじめ適当な供給量を求めておく。
各蒸発源は、電子ビーム等で加熱して蒸発させ、基板に供給する。成膜速度は、好ましくは0.05〜1.00nm/s、より好ましくは0.100〜0.500nm/sである。成膜速度が遅すぎると成膜速度を一定に保つことが難しくなり、膜が不均質になりやすい。一方、成膜速度が速すぎると、形成される薄膜の結晶性が悪く表面に凹凸が生じてしまう。
TiOおよびGdは、供給したほぼ全量が基板上に成長するPGT結晶に取り込まれるので、目的とする組成比に対応した比率の蒸発速度で基板上に供給すればよい。しかし、PbOは蒸気圧が高いので組成ずれを起こしやすく、制御が難しい。これまで鉛系の強誘電体材料では、組成ずれがなく、より単結晶に近い薄膜は得られていない。本発明では、このPbOの特性を逆に利用し、PbO蒸発源からの基板への供給量比を、形成されるPGT膜結晶における比率に対し過剰とする。過剰供給の度合いは、蒸発源から供給されるPbとTiとの原子比Pb/Ti=E(Pb/Ti)、と、形成された強誘電体薄膜の組成におけるPbとTiとの原子比Pb/Ti=F(Pb/Ti)、との関係が、E(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)=1.5〜3.5、好ましくはE(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)=1.7〜2.5、より好ましくはE(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)=1.9〜2.3となるものである。過剰なPbOあるいはペロブスカイト構造に組み込まれないPbOは基板表面で再蒸発し、基板上にはペロブスカイト構造のPGT膜だけが成長することになる。E(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)が小さすぎると、膜中にPbを十分に供給することが困難となり、膜中の(Pb+R)/Tiの比率が低くなりすぎて結晶性の高いペロブスカイト構造とならない。一方、E(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)が大きすぎると、膜中の(Pb+R)/Tiの比率が大きくなりすぎて、ペロブスカイト相の他に他のPbリッチ相が出現し、ペロブスカイト単相構造が得られなくなる。
以上説明したように、PbOおよびTiOを蒸発源として用いて付着率を高め、ラジカル酸素により強力に酸化し、かつ基板温度を所定範囲に設定することにより、Pbの過不足のないほぼストイキオメトリのPGT結晶が基板上に自己整合的に成長する。この方法は、ストイキオメトリの鉛系ペロブスカイト結晶薄膜を製造する画期的な方法であり、結晶性の極めて高い強誘電体薄膜が得られる。
成膜面積が10cm程度以上である場合、例えば直径2インチの基板の表面に成膜するときには、図6に示すように基板を回転させ、酸化性ガスを基板表面の全域に万遍なく供給することにより、成膜領域全域で酸化反応を促進させることができる。これにより、大面積でしかも均質な膜の形成が可能となる。このとき、基板の回転数は10rpm以上であることが望ましい。回転数が低いと、基板面内で膜厚の分布が生じやすい。基板の回転数の上限は特にないが、通常は真空装置の機構上120rpm程度となる。
以上、強誘電体薄膜の製造方法の詳細を説明したが、この製造方法は、従来の真空蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレージョン法などとの比較において特に明確なように、不純物の介在の余地のない、しかも制御しやすい操作条件下で実施しうるため、再現性よく完全性が高い目的物を大面積で得るのに好適である。
さらに本方法においてMBE装置を用いても、全く同様にして目的とする薄膜を得ることができる。
以上では、希土類元素添加チタン酸鉛系の薄膜を製造する方法について述べたが、この方法は、希土類元素を添加しないPT系材料や、PZT系材料などにも適用でき、これらの場合でも同様な効果が得られる。また、Bi系酸化物薄膜にも適用できる。Bi系酸化物薄膜においても、真空中でBiの蒸気圧が高いために、これまで組成制御が不十分であったが、この方法においてPbO蒸発源をBi蒸発源に替えることで同様に製造できることを確認している。Bi系の場合も、Biが過不足無く自己整合的に結晶に取り込まれ、ストイキオメトリの強誘電体薄膜結晶が得られる。
Si基板表面処理
Si単結晶基板を用いる場合、バッファ薄膜の形成前に、基板に表面処理を施すことが好ましい。以下に、表面処理の必要性について説明する。
結晶表面の数原子層における表面構造は、バルク(3次元的な大きな結晶)の結晶構造を切断したときに考えられる仮想的な表面の原子配列構造とは一般に異なる。これは、片側の結晶がなくなることにより表面に現れた原子の周囲の状況が変化し、これに対応してエネルギーのより低い安定な状態になろうとするからである。その構造変化は、主として、原子位置の緩和に留まる場合と、原子の組み換えが生じ、再配列構造を形成する場合とがある。前者はほとんどの結晶表面で存在する。後者は一般に表面に超格子構造を形成する。バルクの表面構造の単位ベクトルの大きさをa、bとするとき、ma、nbの大きさの超格子構造が生じた場合、これをm×n構造とよぶ。
Si基板上に酸化物薄膜をエピタキシャル成長させるためには、Si基板表面の構造が安定で、かつSi基板表面が、その結晶構造情報を、成長させる酸化物薄膜へ伝える役割を果たさなければならない。バルク結晶構造を切断したときに考えられる原子配列構造は1×1構造なので、酸化物薄膜をエピタキシャル成長させるための基板の表面構造は、安定な1×1構造であることが必要である。
しかし、清浄化されたSi(100)の表面は、後述するように、1×2または2×1構造となり、Si(111)の表面は、7×7または2×8構造の大きな単位メッシュをもつ複雑な超構造となってしまうため、好ましくない。
また、これらの清浄化されたSi表面は、反応性に富み、特に、酸化物薄膜をエピタキシャル形成する温度(700℃以上)では、真空中の残留ガス、とくに炭化水素と反応をおこし、表面にSiCが形成されることにより基板表面が汚染され、表面結晶が乱れる。したがって、酸化物薄膜の形成に際しては、反応性に富んだSi表面を保護する必要がある。
このようなことから、Si単結晶基板に、以下の方法で表面処理を施すことが好ましい。
この方法では、まず、表面が清浄化されたSi単結晶基板を、図6に示すホルダにセットして真空槽中に配置し、酸化性ガスを導入しつつ加熱して、基板表面にSi酸化物層を形成する。酸化性ガスとしては、上記した強誘電体薄膜の場合と同様なものを用いることができるが、空気を用いてもよい。Si酸化物層は、基板表面を再配列、汚染などから保護するためのものである。Si酸化物層の厚さは、0.2〜10nm程度とすることが好ましい。厚さが0.2nm未満であると、Si表面の保護が不完全となるからである。上限を10nmとした理由は、後述する。
上記の加熱は、300〜700℃の温度に、0〜10分間程度保持して行う。このとき、昇温速度は、30〜70℃/分程度とする。温度が高すぎたり、昇温速度が速すぎたりすると、Si酸化物層の形成が不十分になり、逆に、温度が低すぎたり、保持時間が長すぎると、Si酸化物層が厚くなりすぎてしまう。
酸化性ガスの導入は、例えば酸化性ガスとして酸素を用いる場合、真空槽内を当初1×10−7〜1×10−4Torr程度の真空にし、酸化性ガスの導入により、少なくとも基板近傍の雰囲気中の酸素分圧が1×10−4〜1×10−1Torrとなるようにして行うことが好ましい。
上記工程後、真空中で加熱する。基板表面のSi結晶は、Si酸化物層により保護されているので、残留ガスである炭化水素と反応してSiCが形成されるなどの汚染が発生しない。加熱温度は、600〜1200℃、特に700〜1100℃とすることが好ましい。600℃未満であると、Si単結晶基板表面に1×1構造が得られない。1200℃を超えると、Si酸化物層によるSi結晶の保護が十分ではなくなり、Si単結晶基板の結晶性が乱れてしまう。
次いで、Zrおよび酸化性ガスか、Zr、希土類元素(ScおよびYを含む)および酸化性ガスを、基板表面に供給する。この過程で、Zr等の金属は前工程で形成したSi酸化物層を還元し、除去することになる。同時に露出したSi結晶表面にZrおよび酸素、またはZr、希土類元素および酸素により、1×1の表面構造が形成される。
表面構造は、RHEEDによる像のパターンで調べることができる。例えば、好ましい構造である1×1の表面構造の場合、電子線入射方向が[110]で図7(a)に示すような1倍周期C1の完全なストリークパターンとなり、入射方向を[1−10]にしても全く同じパターンとなる。一方、Si単結晶清浄表面は、たとえば(100)面の場合1×2または2×1であるか、1×2と2×1とが混在している表面構造となる。このような場合には、RHEEDのパターンは、電子線の入射方向[110]または[1−10]のいずれか、または両方で、図7(b)に示すような1倍周期C1と2倍周期C2とを持つパターンになる。1×1の表面構造においては、上記RHEEDのパターンでみて、入射方向が[110]および[1−10]の両方で、2倍周期C2が見られない。
なお、Si(100)清浄表面も1×1構造を示す場合があり、われわれの実験でも何度か観察された。しかし、1×1を示す条件は不明確であり、安定に再現性よく1×1をSi清浄面で得ることは、現状では不可能である。1×2、2×1、1×1いずれの構造の場合であっても、Si清浄面は真空中、高温で汚染されやすく、特に残留ガス中に含まれる炭化水素と反応してSiCが形成されて、基板表面の結晶が乱れやすい。
Zr、またはZrおよび希土類元素は、これらを酸化性雰囲気中で蒸着して酸化物膜を形成したときの膜厚が0.3〜10nm、特に3〜7nm程度となるように供給することが好ましい。このような供給量の表示を、以下、酸化物換算での供給量という。酸化物換算での供給量が0.3nm未満では、Si酸化物の還元の効果が十分に発揮できず、10nmを超えると表面に原子レベルの凹凸が発生しやすくなり、表面の結晶の配列が凹凸により1×1構造でなくなることがある。上記Si酸化物層の厚さの上限の好ましい値を10nmとした理由は、10nmを超えると、上記のように金属を供給してもSi酸化物層を十分に還元できなくなる可能性がでてくるからである。
酸化性ガスとして酸素を用いる場合は、2〜50cc/分程度供給することが好ましい。酸化性ガスの最適供給量は、真空槽の容積、ポンプの排気速度その他の要因で決まるので、あらかじめ最適な供給量を求めておく。
酸化ジルコニウム系層、希土類酸化物系層の形成方法
バッファ薄膜のうち酸化ジルコニウム系層は、本出願人がすでに特願平7−93024号において提案した方法で形成することが好ましい。
酸化ジルコニウム系層の形成にあたっては、まず、基板を加熱する。成膜時の加熱温度は酸化ジルコニウムの結晶化のために400℃以上であることが望ましく、750℃以上であれば結晶性に優れた膜が得られ、特に分子レベルの表面平坦性を得るためには850℃以上であることが好ましい。なお、単結晶基板の加熱温度の上限は、1300℃程度である。
次いで、Zrを電子ビーム等で加熱し蒸発させ、基板表面に供給すると共に、酸化性ガスおよび必要に応じ希土類元素を基板表面に供給して、酸化ジルコニウム系薄膜を形成する。成膜速度は、好ましくは0.05〜1.00nm/s、より好ましくは0.100〜0.500nm/sとする。成膜速度が遅すぎると成膜速度を一定に保つことが難しくなり、一方、成膜速度が速すぎると、形成される薄膜の結晶性が悪くなり、表面に凹凸が生じてしまう。
なお、酸化性ガスの種類、その供給量、基板近傍の酸素分圧、基板の回転等の各種条件については、上記した強誘電体薄膜形成の場合と同様である。
酸化ジルコニウム系層の上に希土類酸化物系層を積層する場合、蒸発源として希土類元素だけを用いればよい。このときの酸化性ガスの導入条件や基板の温度条件等は、酸化ジルコニウム系層の場合と同様とすればよい。両薄膜において同一の希土類元素を使用する場合には、酸化ジルコニウム系層が所定の厚さに形成されたときにZrの供給を停止し、希土類金属だけを引き続いて供給することにより、連続して希土類酸化物系層を形成することができる。また、酸化ジルコニウム系薄膜を傾斜構造とする場合には、Zrの供給量を徐々に減らし、最後にはゼロとして、希土類酸化物系層の形成に移行すればよい。
ペロブスカイト下地層の形成方法
ペロブスカイト下地層としてBaTiO膜を形成する場合について説明する。
酸化ジルコニウム系層または希土類酸化物系層を成膜した後、加熱および酸化性ガスの導入を続けながら、BaおよびTiを基板表面に供給する。供給量は、Ba:Ti=1:1となるようにすることが好ましい。成膜時の蒸着基板の温度および成膜初期のBa/Ti供給量比は、BaTiO膜の配向性に影響を及ぼす。BaTiO膜、酸化ジルコニウム系層(Zr1−x2−δ)およびSi(100)基板の結晶方位関係が、前述した好ましい関係、すなわち、BaTiO(001)//Zr1−x2−δ(001)//Si(100)、かつBaTiO[100]//Zr1−x2−δ[100]//Si[010]となるようにするためには、BaTiO成膜時における加熱温度は800〜1300℃、好ましくは900〜1200℃が望ましい。また、成長初期のBa/Ti供給量比は、1〜0、好ましくは1〜0.8とすることが望ましい。すなわち、成長初期にはTi過剰にすることが好ましい。なお、Ba/Ti供給量比が0であるとは、成長初期にはTiのみの供給であってもよいことを示す。加熱温度が高すぎると、薄膜積層体に相互拡散が生じ、結晶性が低下してしまう。一方、加熱温度が低すぎたり、成長初期のBa/Ti比が適切でなかったりすると、形成されるBaTiO膜が目的とする(001)配向ではなく(110)配向になるか、または(001)配向BaTiO膜に(110)配向結晶が混在してしまう。成長初期には、供給されたBaが下地の酸化ジルコニウム系層と反応して、目的の配向を有するBaTiOが得られにくい。成長初期にTi過剰とするのは、Baと酸化ジルコニウムとの反応を避けるためである。なお、ここでいう成長初期とは、膜厚が1nm程度以下である範囲内である。
ペロブスカイト下地層形成時の成膜速度、酸化性ガスの種類、その供給量、基板近傍の酸素分圧、基板の回転等の各種条件については、上記した酸化ジルコニウム系層形成の場合と同様である。
酸化ジルコニウム系層や希土類酸化物系層、ペロブスカイト下地層の上記形成方法は、上記した強誘電体薄膜の場合と同様に、従来の真空蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレージョン法などとの比較において特に明確なように、不純物の介在の余地のない、しかも制御しやすい操作条件下で実施しうるため、再現性よく完全性が高い目的物を大面積で得るのに好適である。上記方法においてMBE装置を用いても、全く同様にして目的とする薄膜を得ることができる。
電極層の形成方法
電極層を金属から構成する場合、蒸着により形成することが好ましい。蒸着時の基板温度は、500〜750℃とすることが好ましい。基板温度が低すぎると、結晶性の高い膜が得られず、基板温度が高すぎると膜の表面の凹凸が大きくなってしまう。なお、蒸着時に真空槽内に微量の酸素を流しながらRfプラズマを導入することにより、さらに結晶性を向上させることができる。具体的には、例えばPt薄膜において、(001)配向中に(111)配向が混入することを防ぐ効果がある。
電極層をInを含む酸化物または導電性ペロブスカイト酸化物から構成する場合、上記した強誘電体薄膜やペロブスカイト下地層の形成方法を利用することが好ましく、この他、反応性多元蒸着法やスパッタ法を利用することもできる。
本発明では、強誘電体薄膜がエピタキシャル膜であるので、その表面の平坦度が良好となるが、強誘電体薄膜の組成や形成方法によっては十分な平坦度が得られないこともある。そのような場合には、強誘電体薄膜表面を研磨して平坦化することができる。研磨には、アルカリ溶液等を用いる化学的研磨、コロイダルシリカ等を用いる機械的研磨、化学的研磨と機械的研磨との併用などを用いればよい。
強誘電体薄膜表面を研磨すると、研磨歪が残留することがある。強誘電体の電気的特性は応力により大きく変化するため、研磨歪を除去するために、必要に応じて強誘電体薄膜にアニールを施すことが好ましい。アニールは、好ましくは300〜850℃、より好ましくは400〜750℃で、好ましくは1秒間〜30分間、より好ましくは5〜15分間行う。
なお、研磨を行わない場合でも、強誘電体特性を向上させるために、必要に応じてアニールを施してもよい。この場合のアニールは、好ましくは300℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは650℃以上、かつ好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下で、好ましくは1秒間〜30分間、より好ましくは5〜15分間行う。
以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
特願平7−219850号、特願平7−24060号に記載された方法に準じ、以下のようにして強誘電体薄膜を形成した。
酸化物薄膜を成長させる単結晶基板として、その表面が(100)面となるように切断して鏡面研磨したSi単結晶ウエハー(直径2インチ)を用いた。このウエハー表面を40%フッ化アンモニウム水溶液により、エッチング洗浄した。
真空槽内に設置された回転および加熱機構を備えた基板ホルダーに上記単結晶基板を固定し、真空槽を10−6Torrまで油拡散ポンプにより排気した後、基板洗浄面をSi酸化物を用いて保護するため、基板を20rpmで回転させ、酸素を基板付近にノズルから25cc/分の割合で導入しつつ、600℃に加熱した。これにより基板表面が熱酸化され、基板表面に厚さ約1nmのSi酸化物膜が形成された。
次いで、基板を900℃に加熱し、回転させた。回転数は20rpmとした。このとき、ノズルから酸素ガスを25cc/分の割合で導入し、前記基板上に金属Zrを蒸発源から蒸発させることにより、ZrOの膜厚に換算して5nmとなるように供給し、1×1の表面構造を備えるSi表面処理基板を得た。
さらに、基板温度を900℃、基板回転数を20rpmとし、ノズルから酸素ガスを25cc/分の割合で導入した状態で、Si表面処理基板表面に金属Zrを蒸発源から供給することにより、厚さ10nmのZrO膜を形成した。このZrO膜の900℃における面内格子定数を測定したところ、0.517nmであった。
次いで、ZrO膜を形成した基板を蒸着基板として、BaTiO膜を形成した。蒸着基板は、900℃に加熱し、20rpmで回転させた。このとき、ノズルから酸素ガスを25cc/分の割合で導入し、基板上に金属Baと金属Tiとを蒸発源から蒸発させることにより、BaTiO膜を形成した。成膜初期には、TiだけをTiO膜の厚さに換算して0.5nmとなるように供給し、次いで、成膜速度を0.05nm/sとしてBaTiO膜の厚さに換算して2nmとなるようにTiおよびBaを供給し、次いで、成膜速度を0.2nm/sに上げ、図3に示す厚さのBaTiO膜とし、Si(100)/ZrO(001)(10nm)/BaTiO(001)エピタキシャル構造体を作製した。
BaTiOバルク材の900℃における格子定数(xF0)は0.405nmであり、一方、上記ZrO膜の900℃における面内の格子定数(x)は上記のように0.517nmであるから、式 mxF0/nxにおいてm=4、n=3とすると、格子定数のずれ(ミスフィット)を表すこの式の値は1.620/1.551=1.044となり、本発明範囲内であることがわかる。また、X線回折およびRHEEDによる測定の結果、基板上に形成した薄膜のすべてが(001)配向のエピタキシャル膜であることが確認された。
形成した各BaTiO膜について、X線回折における(001)面反射からc軸の格子定数(c面間隔)を、また、(001)面反射および(303)面反射からa軸の格子定数(a面間隔)を求めた。図3に、BaTiO膜の厚さと、各面間隔との関係を示す。図3には、無歪みのBaTiOの面間隔、すなわち、BaTiOバルク材の面間隔(a面間隔:0.39932nm、c面間隔:0.40347nm)を点線で示してある。
図3から、強誘電体薄膜が薄くなるにしたがい無歪み状態に近くなっていくことがわかる。また、膜厚が50nm以下のときには、格子歪みが本発明範囲に収まっていることがわかる。
実施例2
実施例1で作製したエピタキシャル構造体の上に、700℃でPt金属を蒸着してPt膜を形成し、Si(100)/ZrO(001)(10nm)/BaTiO(001)(100nm)/Pt(001)(100nm)エピタキシャル構造体を得た。このPt膜の600℃における面内の格子定数を測定したところ、0.394nmであった。
さらに、このエピタキシャル構造体を蒸着基板として、強誘電体材料であるPr含有チタン酸鉛(以下、PPTという)を蒸着し、PPT膜を形成した。具体的には、まず、基板を600℃に加熱し、20rpmで回転させた。そして、ECR酸素源からラジカル酸素ガスを10cc/分の割合で導入し、基板上にPbO、TiO(x=1.67)およびPrをそれぞれの蒸発源から蒸発させることにより、図4に示す厚さのPPT膜を形成した。蒸発源からの供給は、PbO:Pr:TiOのモル比が2:0.1:1となるように制御しながら行った。すなわち、E(Pb/Ti)=2.0とした。
このPPT膜の組成(原子比)を蛍光X線分析により調べたところ、(Pb+Pr)/Ti=1.00、Pb/(Pb+Pr)=0.92であった。この組成ではF(Pb/Ti)=0.92となるので、E(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)=2.2となる。
PPTバルク材の600℃における格子定数は0.396nmであり、一方、PPT膜の下に存在するPt膜の600℃における格子定数は上記したように0.394nmなので、式 mxF0/nxにおいてmおよびnを共に1とすると、格子定数のずれを表すこの式の値は0.396/0.394=1.0051となり、本発明範囲内であることがわかる。また、X線回折およびRHEEDによる測定の結果、基板上に形成した薄膜のすべてが(001)配向のエピタキシャル膜であることが確認された。
形成した各PPT膜について、a面間隔およびc面間隔を実施例1と同様にして求めた。図4に、PPT膜の厚さと各面間隔との関係を示す。図4には、無歪みのPPTの面間隔、すなわち、PPTバルク材の面間隔も示してある。
図4において、厚さが9.9nmのPPT膜では、c面間隔が無歪みのときのc面間隔に対し1.0015(0.4026/0.4020)倍大きくなるように格子が歪んでおり、同様にして算出された格子歪みは、厚さ16.4nmでは0.9978倍、厚さ29.0nmでは0.9935倍、厚さ47.2nmでは0.9913倍、厚さ100.0nmでは0.9891倍であり、いずれも本発明における好ましい範囲内に収まっている。
各エピタキシャル構造体のPPT膜表面に、蒸着法とリソグラフィー法とを用いて直径50μmのAl電極を形成し、Pt膜からリードを取り出し、ソーヤタワー回路を用いて自発分極を測定した。この結果、PPT膜の厚さが300nm(無歪みのときのc面間隔の0.9818倍)である構造体では自発分極が30μC/cmであったのに対し、厚さ47.2nm(無歪みのときのc面間隔の0.9913倍)のものでは40μC/cm、厚さ9.9nm(無歪みのときのc面間隔の1.0015倍)のものでは55μC/cmであった。
この結果から、PPT膜が薄くなるほど成膜時にPPT膜の二次元圧縮応力が増大し、これにともない、室温まで冷却したときの自発分極値が増大することがわかる。
参考例1
実施例2と同様にして、Si(100)/ZrO(001)(10nm)/BaTiO(001)(100nm)/Pt(001)(100nm)エピタキシャル構造体を得た。
さらに、このエピタキシャル構造体を蒸着基板として、PbTiO膜を蒸着法により形成した。具体的には、まず、基板を600℃に加熱し、20rpmで回転させた。そして、ECR酸素源からラジカル酸素ガスを10cc/分の割合で導入し、基板上にPbOおよびTiO(x=1.67)をそれぞれの蒸発源から蒸発させることにより、図5に示す厚さのPbTiO膜を形成した。蒸発源からの供給は、PbO:TiOのモル比が2:1となるように制御しながら行った。すなわち、E(Pb/Ti)=2.0とした。
このPbTiO膜の組成(原子比)を蛍光X線分析により調べたところ、Pb/Ti=1.00、であった。したがって、E(Pb/Ti)/F(Pb/Ti)=2.0となる。
PbTiOバルク材の600℃における格子定数は0.397nmであり、一方、PbTiO膜の下に存在するPt膜の600℃における格子定数は上記したように0.394nmなので、式 mxF0/nxにおいてmおよびnを共に1とすると、格子定数のずれを表すこの式の値は0.397/0.394=1.0076となり、本発明範囲内であることがわかる。
形成した各PbTiO膜について、a面間隔およびc面間隔を実施例1と同様にして求めた。図5に、PbTiO膜の厚さと各面間隔との関係を示す。図5には、無歪みのPbTiOの面間隔、すなわち、PbTiOバルク材の面間隔も示してある。
図5から、厚さ5〜100nmでは、c面の面間隔が無歪みのときのc面の面間隔の0.984〜0.989倍であり、いずれも本発明範囲内に収まっている。しかし、厚さが50nmおよび100nmのPbTiO膜では、ドメイン形成が認められた。すなわち、X線回折において、(001)面のピーク以外に(100)面のピークが認められ、本明細書で定義するエピタキシャル膜とはなっていなかった。これに対し厚さが5〜30nmのPbTiO膜では、X線回折において(001)単一配向であることが確認され、また、RHEEDによりストリーク状のパターンが認められたので、エピタキシャル膜であることがわかった。
各エピタキシャル構造体のPbTiO膜表面に、蒸着法とリソグラフィー法とを用いて直径50μmのAl電極を形成し、Pt膜からリードを取り出し、ソーヤタワー回路を用いて自発分極を測定した。この結果、PbTiO膜の厚さが20nmである構造体ではリークがなく測定が可能であり、自発分極は60μC/cmであった。また、5〜30nmの厚さにおいて、これとほぼ同じ自発分極値が得られた。これに対しPbTiO膜の厚さを50〜300nmとしたときには、(001)配向と(100)配向とが混在し、自発分極は20〜40μC/cmと小さかった。
この結果から、PbTiOの厚さが30nm以下であれば、従来のPbTiO膜で形成されやすかったドメイン構造が形成されずにエピタキシャル膜となるので、リークが生じず、また、二次元引っ張り応力を減少させやすくなるので、自発分極が増大することがわかる。
強誘電体(PbTiO)薄膜の二次元応力と自発分極との関係を示すグラフである。 (a)、(b)および(c)は、単結晶基板とその上に形成されたエピタキシャル薄膜との間に格子定数のずれ(ミスフィット)が存在した場合における薄膜結晶格子の変形を、模式的に表す説明図である。 Si(100)/ZrO(001)(10nm)基板上に形成したBaTiO膜について、膜の厚さとa面間隔およびc面間隔との関係を示すグラフである。 Si(100)/ZrO(001)(10nm)/BaTiO(001)(100nm)/Pt(001)(100nm)基板上に形成したPPT(Pr添加チタン酸鉛)膜について、膜の厚さとa面間隔およびc面間隔との関係を示すグラフである。 Si(100)/ZrO(001)(10nm)/BaTiO(001)(100nm)/Pt(001)(100nm)基板上に形成したPbTiO膜について、膜の厚さとa面間隔およびc面間隔との関係を示すグラフである。 本発明の強誘電体薄膜の形成に用いられる蒸着装置の一例を示す説明図である。 (a)は1×1の表面構造のRHEEDパターンを示す模式図であり、(b)は2×1、1×2あるいはこれらが混在している場合のRHEEDパターンを示す模式図である。
符号の説明
1…蒸着装置、1a…真空槽、2…基板、3…ホルダ、4…回転軸、5…モータ、6…ヒータ、7…酸化性ガス供給装置、8…酸化性ガス供給口、9…PbO蒸発部、10…TiO蒸発部、11…希土類元素蒸発部。

Claims (7)

  1. Si単結晶基板上に形成された強誘電体材料からなるエピタキシャル強誘電体薄膜であり、
    この強誘電体薄膜の結晶面のうち、前記Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、Z面間の距離をzとし、強誘電体薄膜構成材料のバルク状態でのZ面間の距離をzF0としたとき、0.980≦z/zF0≦1.010であり、
    前記強誘電体材料が、ペロブスカイト型結晶構造を有する、化学式ABO(AはCa、Ba、Sr、K、Na、Li、LaおよびCdから選ばれた1種以上であり、BはTi、Zr、TaおよびNbから選ばれた1種以上である)で表される化合物又は希土類元素含有チタン酸鉛であり、
    厚さが2〜100nmである強誘電体薄膜。
  2. 前記Si単結晶基板との間に、エピタキシャル薄膜であるバッファ薄膜が設けられている請求項1の強誘電体薄膜。
  3. 前記バッファ薄膜が導電性である請求項2の強誘電体薄膜。
  4. 前記バッファ薄膜において、前記Si単結晶基板表面の結晶面に平行な結晶面をZ面とし、このZ面の面内における格子定数をxとし、前記強誘電体薄膜構成材料のバルク状態での前記Z面の面内における格子定数をxF0としたとき、強誘電体薄膜形成時の温度においてxおよびxF0が式 1.000<mxF0/nx≦1.050(上記式において、nおよびmは1以上の整数である)を満足する請求項2または3の強誘電体薄膜。
  5. 前記強誘電体材料が、希土類元素含有チタン酸鉛である請求項1〜4のいずれかの強誘電体薄膜。
  6. 前記希土類元素含有チタン酸鉛が、R(Rは、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Yb、Y、Sm、Gd、ErおよびLaから選択された少なくとも1種の希土類元素)、Pb、TiならびにOを含有し、原子比率が(Pb+R)/Ti=0.8〜1.3、Pb/(Pb+R)=0.5〜0.99の範囲にあるものである請求項5の強誘電体薄膜。
  7. Tiの60原子%以下がZr、Nb、Ta、HfおよびCeの少なくとも1種で置換されている請求項6の強誘電体薄膜。
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