JP7011407B2 - 口腔用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、モノテルペンと、ホスホコリン基含有重合体と、水と、所定の総吸水値となるように配合されたシリカを含み、分散性が向上し且つ析出物の生成が抑制されている口腔用組成物に関する。
l-メントール等のモノテルペンは、清涼感の付与、抗炎症、血行促進等の作用があり、口腔用組成物において広く使用されている。
また、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体等のホスホコリン基含有重合体は、生体への親和性が高く、更に保湿性、口腔内への微生物の付着防止、歯肉炎の予防等の作用も報告されており、口腔用又は外用組成物において利用されている(例えば、特許文献1~3参照)。
また、シリカは増粘作用や研磨作用があり、モノテルペンやホスホコリン基含有重合体と同様に口腔用組成物に使用されている。しかしながら、従来、シリカと水とを含む口腔用組成物における製剤安定性についての検討は十分ではない。
特開2006-219450号公報 特開2011-153101号公報 特開2015-853号公報
本発明者は、モノテルペンとシリカと水とを含む口腔用組成物の製剤安定性について検討を行ったところ、口腔用組成物に含まれるシリカの吸水量とその配合量の兼ね合いによっては分散性不良が生じ、口腔用組成物の製剤安定性が低下するという新たな課題に直面した。その課題を解決すべく、ホスホコリン基含有重合体をさらに加えた口腔用組成物の製剤安定性について行ったところ、今度はモノテルペンが析出する課題にも直面した。即ち、モノテルペンとシリカと水とを含む口腔用組成物は、シリカの吸水量とその配合量との積(以下において、総吸水値と記載する場合がある)が所定範囲にある場合にあっては分散性不良の問題だけでなく、ホスホコリン基含有重合体を加えて分散性不良を解決したとしても析出物が生成するという特有の課題が存在することが明らかとなった。
そこで、本発明の目的は、モノテルペンと、所定の総吸水値となるように配合されたシリカと、水とを含む口腔用組成物において、分散性を向上し且つ析出物の生成も抑制できる製剤化技術を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、口腔用組成物において、モノテルペン、所定の総吸水値で配合されたシリカ、及び水と共に、ホスホコリン基含有重合体と塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムとを含有させることにより、シリカの分散性の向上と析出物の生成抑制とを総合的に解決できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)モノテルペンと、(B)ホスホコリン基含有重合体と、(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムと、(D)水と、(E)シリカとを含有し、前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である、口腔用組成物。
項2. 前記(A)成分が、l-メントールである、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 前記(B)成分が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. 前記(E)成分が増粘性シリカを含み、前記増粘性シリカの含有量が2.5重量%以上である、項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. 前記(E)成分が研磨性シリカを含み、前記研磨性シリカの含有量が5.5重量%以上である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6. (A)モノテルペン、(B)ホスホコリン基含有重合体、(D)水、及び(E)シリカを含み、前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物における当該(A)成分の析出を抑制するために使用される析出抑制剤であって、(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを有効成分とする、析出抑制剤。
項7. (A)モノテルペン、(B)ホスホコリン基含有重合体、(D)水、及び(E)シリカを含み、前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物において、当該(A)成分の析出を抑制する析出抑制方法であって、口腔用組成物に、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(D)成分と前記成分(E)と共に、(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを配合する、析出抑制方法。
本発明の口腔用組成物によれば、モノテルペンと、所定の総吸水値となるように配合されたシリカと、水とを含んでいながらも、シリカの分散性不良とモノテルペンの析出とを総合的に解決でき、優れた製剤安定性を有しているので、保存中に良好な外観形状を維持させることができる。
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は、モノテルペン(以下、(A)成分と表記することがある)と、ホスホコリン基含有重合体(以下、(B)成分と表記することがある)と、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウム(以下、(C)成分と表記することがある)と、水(以下、(D)成分と表記することがある)と、(E)シリカ(以下、(E)成分と表記することがある)とを含有することを特徴とする。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
(A)モノテルペン
本発明の口腔用組成物は、(A)成分として、モノテルペンを含有する。モノテルペンとは、分子内にイソプレン単位が2個含まれる構造を有し、清涼化作用等を有する公知の成分である。
本発明で使用されるモノテルペンの種類については、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、メントール、チモール、ゲラニオール、リナロール、ボルネオール、シネオール、テルピネオール等のアルコール系モノテルペン;シトラール、シトロネラール、ペリルアルデヒド、サフラナール等のアルデヒド系モノテルペン;カンフル、メントン、カルボメントン、ヨノン等のケトン系モノテルペン等が挙げられる。これらのモノテルペンは、光学異性体が存在する場合には、d体、l体、dl体のいずれであってもよい。
また、本発明では、モノテルペンとして、モノテルペンを含む精油の状態で使用してもよい。モノテルペンを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、メントールを含む精油としては、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。なお、本明細書における(A)成分の含有量や比率に関する記載は、(A)成分としてモノテルペンを含む精油を使用する場合は、当該精油に含まれるモノテルペン量に換算した値である。
本発明の口腔用組成物において、(A)成分として、1種のモノテルペンを単独で使用してもよく、2種以上のモノテルペンを組み合わせて使用してもよい。
これらの(A)成分の中でも、好ましくはアルコール系モノテルペン、更に好ましくはl-メントールが挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.01重量%以上、好ましくは0.01~6重量%、より一層好ましくは0.01~2重量%、更に好ましくは0.03~1重量%、特に好ましくは0.05~0.5重量%が挙げられる。
(B)ホスホコリン基含有重合体
本発明の口腔用組成物は、(B)成分として、ホスホコリン基含有重合体を含有する。ホスホコリン基含有重合体は、後述する所定の総吸水値で含まれる(E)シリカと共存させることによって、シリカの分散性を向上させることができる。
ホスホコリン基含有重合体とは、ホスホコリン基を含む単量体(以下、「ホスホコリン基含有単量体」と表記することがある)が重合したポリマーであり、保湿作用等を有する公知の成分である。
ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体の種類については、特に制限されないが、例えば、ホスホコリン基とビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体として、より具体的には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体の中でも、シリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体は、1種のホスホコリン基含有単量体からなる単重合体であってもよく、また2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
ホスホコリン基含有重合体が共重合体である場合、2種以上のホスホコリン基含有単量体からなる共重合体であってもよく、また少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体と少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体以外の単量体からなる共重合体であってもよい。
ホスホコリン基含有重合体に含まれるホスホコリン基含有単量体以外の単量体の種類については、薬学的に許容されるものであってホスホコリン基含有単量とラジカル重合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体以外の単量体として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体以外の単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体以外の単量体の中でも、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、更に好ましくはアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくはアルキル基の炭素数が3~5のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示す。
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体として、具体的には、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51)、2-メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル・メタクリル酸ナトリウム共重合体(ポリクオタニウム-65)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-64)、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム-61)等が挙げられる。なお、ホスホコリン基含有重合体に関する前記表記において、括弧内の名称は化粧品成分表示名称を示す。
本発明の口腔用組成物において、(B)成分として、1種のホスホコリン基含有重合体を使用してもよく、また2種以上のホスホコリン基含有重合体を組み合わせて使用してもよい。
これらの(B)成分の中でも、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;更に好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;特に好ましくは、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、(B)成分の総量で0.05~1重量%が挙げられる。保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、(B)成分の総量で、好ましくは0.05~0.5重量%、更に好ましくは0.05~0.3重量%、更に好ましくは0.05~0.25重量%が挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分の総量が0.008~100重量部が挙げられる。(A)成分に対する(B)成分の比率として、保湿作用を有効に発揮させつつシリカの分散性の向上効果をより一層向上させるという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分の総量が、好ましくは0.025~50重量部、更に好ましくは0.05~20、特に好ましくは0.1~10重量部重量部が挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(E)成分に対する(B)成分の比率については、(B)成分及び(E)成分の総吸水値に応じて定まるが、例えば、(E)成分の総量100重量部当たり、(B)成分の総量が0.1~40重量部が挙げられる。(E)成分に対する(B)成分の比率として、シリカの分散性向上効果をより一層向上させるという観点から、(E)成分の総量1重量部当たり、(B)成分の総量が、好ましくは0.1~20重量部、より好ましくは0.15~7.5重量部、より一層好ましくは0.15~2.5重量部、更に好ましくは0.15~1.25重量部が挙げられる。
(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウム
本発明の口腔用組成物は、(C)成分として、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含有する。このように塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含有させることによって、モノテルペンとホスホコリン基含有重合体を共存させて保存した際に生じるモノテルペンの析出物の生成を抑制することが可能になる。
塩化セチルピリジニウム及び塩化ベンザルコニウムは、共に第四級アミン化合物であり、口腔内細菌に対する殺菌作用を示す公知の薬剤である。
本発明の口腔用組成物において、(C)成分として、塩化セチルピリジニウム又は塩化ベンザルコニウムのいずれか一方を単独で使用してもよく、また、これらを組み合わせて使用してもよい。(C)成分の中でも、好ましくは塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(C)成分の含有量については、使用する(C)成分の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の総量で0.005重量%以上、好ましくは0.005~2重量%が挙げられる。
より具体的には、(C)成分として塩化セチルピリジニウムを使用する場合であれば、モノテルペンの析出物の生成抑制効果をより一層向上させるという観点から、塩化セチルピリジニウムの含有量として、通常0.01重量%以上、好ましくは0.01~2重量%、更に好ましくは0.01~1重量%、特に好ましくは0.01~0.5重量%が挙げられる。
また、(C)成分として塩化ベンザルコニウムを使用する場合であれば、モノテルペンの析出物の生成抑制効果をより一層向上させるという観点から、塩化ベンザルコニウムの含有量として、通常0.005重量%以上、好ましくは0.005~2重量%、更に好ましくは0.008~1重量%、特に好ましくは0.01~0.5重量%が挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(C)成分の総量が0.001重量部以上が挙げられる。
より具体的には、(C)成分として塩化セチルピリジニウムを使用する場合であれば、(A)成分に対する塩化セチルピリジニウムの比率として、モノテルペンの析出物の生成抑制効果をより一層向上させるという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、塩化セチルピリジニウムが0.002重量部以上、好ましくは0.005~200重量部、更に好ましくは0.01~34重量部、特に好ましくは0.02~10重量部が挙げられる。
また、(C)成分として塩化ベンザルコニウムを使用する場合であれば、(A)成分に対する塩化ベンザルコニウムの比率として、モノテルペンの析出物の生成抑制効果をより一層向上させるという観点から、(A)成分の総量1重量部当たり、塩化ベンザルコニウムが0.001重量部以上、好ましくは0.0025~200重量部、更に好ましくは0.008~34重量部、特に好ましくは0.02~10重量部が挙げられる。
(D)水
本発明の口腔用組成物は、基剤として水を含有する。前記(A)成分は、(B)成分と水存在下で共存する状態で保存すると、析出を生じる傾向を示すが、本発明の口腔用組成物によれば、このような(A)成分の析出を効果的に抑制することができる。また、後述の(E)成分は、所定の総吸水値となる含有量で水との共存下で保存すると、分散性不良でケーキング(振とうによる再分散が困難な沈積物の形成)や離水を生じる傾向を示すが、本発明の口腔用組成物によれば、このようなシリカの分散性をケーキングも離水も生じさせないほどに効果的に向上させることができる。
本発明の口腔用組成物において、(D)成分の含有量については、その製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、1~95重量%、好ましくは3~90重量%、更に好ましくは5~85重量%が挙げられる。
(E)シリカ
シリカは、無水ケイ酸または二酸化ケイ素と同義である。シリカは、増粘作用や汚れ除去作用を有する公知の成分である。
本発明の口腔用組成物において、(E)成分は、シリカの吸水量(mL/g)と口腔用組組成物中の含有量(重量%)との積(総吸水値)が7.4~48となるように含まれる。従って(E)成分としては、総吸水値が7.4~48の範囲内となる限り、任意の吸水量のシリカが任意の量で配合される。
本発明において吸水量とは、後述の実施例の「シリカの吸水量」で記載するとおり、JIS K5101-13-1(吸油量の測定法)に準じ、油の代わりに水で吸液することによって定義される。
(E)成分としては、増粘性シリカ及び研磨性シリカが挙げられる。増粘性シリカは、増粘作用を有する公知の成分であり、研磨性シリカは、汚れ除去作用を有する公知の成分である。増粘性シリカ及び研磨性シリカは、いずれか一方が単独で用いられてもよいし、双方が組み合わせられて用いられてもよい。増粘性シリカの吸水量としては、保形性等の観点から1.6mL/g以上であり、例えば1.6~5mL/g、好ましくは2~4mL/gが挙げられる。研磨性シリカは、増粘性シリカよりも吸水量が少ないシリカをいい、吸水量としては、汚れ除去性等の観点から、好ましくは1.5mL/g以下、例えば0.2~1.5mL/g、より好ましくは0.5~1.4mL/gが挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、(E)成分の含有量の下限としては、総吸水値が所定の範囲内となる限り特に限定されず、保形性及び/又は汚れ除去性並びに分散性等の観点から、(E)成分の総量で例えば2.5重量%以上、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上が挙げられる。また、(E)成分の含有量の上限としては、総吸水値が所定の範囲内となる限り特に限定されず、保形性及び/又は汚れ除去性並びに分散性等の観点から、(E)成分の総量で例えば45重量%以下、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下が挙げられる。
本発明の口腔用組成物が(E)成分として増粘性シリカを含む場合、増粘性シリカの含有量としては保形性等の観点から例えば2.5重量%以上、好ましくは3重量%以上20重量%以下、より好ましくは4重量%以上15重量%以下、更に好ましくは4重量%以上10重量%以下が挙げられる。
本発明の口腔用組成物が(E)成分として研磨性シリカを含む場合、研磨性シリカの含有量としては汚れ除去性等の観点から例えば5.5重量%以上、好ましくは6重量%以上30重量%以下、より好ましくは6重量%以上20重量%以下、更に好ましくは6重量%以上15重量%以下が挙げられる。また、研磨性シリカの平均粒子径としては、例えば1~50μm、好ましくは2~20μmが挙げられる。なお、平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定の体積基準の積算分率における50%径(D50)である。
その他の成分
本発明の口腔用組成物は、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、血行促進剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等が挙げられる。
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。
局所麻酔剤としては、例えば、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等が挙げられる。
血行促進剤としては、例えば、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n-ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、等が挙げられる。
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の口腔用組成物において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
pH
また、本発明の口腔用組成物のpHについては、口腔内への適用が許容される範囲で適宜設定すればよいが、例えば、4~8、好ましくは5~7.5、更に好ましくは6~7が挙げられる。ここで、pHとは、25℃の温度条件下で測定される値である。
製剤形態
本発明の口腔用組成物の剤型については、口腔内への適用が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
本発明の口腔用組成物の製剤形態については、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、更に好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液が挙げられる。
また、本発明の口腔用組成物の性状については、特に制限されないが、透光性、とりわけ透明性(有色透明及び無色透明の双方を含む)であることが望ましい。透光性(特に、透明性)を有する口腔用組成物では、生成した析出物が視認され易く、外観の悪化を感じ易くなるが、本発明の口腔用組成物では、析出物の生成を抑制できるので、透光性(特に、透明性)を有する性状であっても、良好な外観を維持することができる。
2.モノテルペンの析出抑制剤、及びモノテルペンの析出抑制方法
前述するように、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムは、モノテルペン、ホスホコリン基含有重合体、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物において、モノテルペンの析出を抑制することができる。従って、本発明は、更に、モノテルペン、ホスホコリン基含有重合体、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物におけるモノテルペンの析出を抑制するために使用される析出抑制剤であって、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを有効成分とする析出抑制剤を提供する。また、本発明は、モノテルペン、ホスホコリン基含有重合体、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物におけるモノテルペンの析出を抑制する析出抑制方法であって、口腔用組成物に、モノテルペン、ホスホコリン基含有重合体、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水と共に、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを配合する、析出抑制方法を提供する。
前記析出抑制剤は塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムの添加剤としての用途であり、また、前記析出抑制方法は、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを利用して、モノテルペン、ホスホコリン基含有重合体、所定の総吸水値で配合されるシリカ及び水を含む口腔用組成物におけるモノテルペンの析出を抑制する方法である。
前記析出抑制剤及び析出抑制方法において、使用する成分の種類や使用量、口腔用組成物の形態等については、前記「1.口腔用組成物」の欄に示す通りである。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例
表1~表13に示す組成の液剤を調製し、得られた液剤5mLをガラス製スクリュー管瓶(容量6mL)に充填し、遮光条件下で室温(25℃)で1日間静置した。1日間静置後の各液剤の外観を観察し、以下に示す判定基準に従って析出物生成およびシリカ分散の程度を評価した。なお、表中の各成分の含有量の単位は、重量%である。
<析出物の生成の程度の判定基準>
◎:析出物は全く認められず、澄明な状態が維持できている。
○:僅かにだけ析出物が生成していたが、全体的に澄明な状態が維持できている。
×:析出物が多く生成しており、澄明な状態が失われている。
××:析出物が著しく多く生成しており、澄明な状態が失われている。
なお、l-メントールの析出は、液面付近における針状の結晶を視認することにより確認した。
<シリカの分散の程度の判定基準>
(1)ケーキング
○:1日静置後に、上下に激しく20回振って撹拌させた際、全てのシリカが溶液中に分散される。
×:1日静置後に、上下に激しく20回振って撹拌させた際、容器底部に一部のシリカが分散せずに凝集した状態で付着している。
(2)分散度
1日静置後の、液剤全体が占める高さに対するシリカ分散領域(白濁部位)が占める高さの比率を「分散度」とした。さらに、シリカのみを同じ含有濃度で精製水に分散させた液剤を「参照用液剤」(例えば、実施例1における参照用液剤はシリカ4%分散液であり、実施例3における参照用液剤はシリカ5%分散液というように、評価対象となる液剤と同じシリカを同じ総吸水値で含むシリカ単独分散液をいう)とし、参照用液剤を一日放置後の、参照用液剤全体が占める高さに対するシリカ分散領域(白濁部位)が占める高さの比率を「参照用分散度」とした。参照用分散度を100とした場合の各溶剤の分散度の値を「相対分散度」として導出し、分散性の指標の1つとした。(したがって、比較例における相対分散度は全て100である。)これによって、シリカの絶対含有量による分散性評価への影響を排除した。
分散度の計算式:(液剤中のシリカ分散領域の高さ)/(液剤全体の高さ)
相対分散度の計算式:(評価対象となる各液剤の分散度)/(シリカのみを精製水に分散させた参照用液剤の分散度)×100
なお、シリカの含有量が比較的多く分散度が100となる場合については相対分散度が計算できないため「○」評価とし、ケーキングの有無で分散性を評価した。
シリカの総吸水値を求めるための吸水量(mL/g)は、JIS K5101-13-1(吸油量の測定法)を参考にして以下のように定義した。即ち、測定試料(シリカ)1gをガラス版の上に置き、精製水を4,5滴ずつ徐々に加え、その都度パレットナイフで精製水を試料に練り込み;これを繰り返し、試料が塊になるまで精製水の滴下を続け;さらに、精製水を1滴ずつ塊に滴下して、均一になるまで練りこむ作業を、試料が滑らかなペースト状になるまで繰り返し(この場合においてペースト状とは、水分過不足のない状態をいい、具体的には、パレットナイフでガラス板に塗り広げたときに塗り広げられた試料に割れ目が生じず、さらにパレットナイフで1つの塊としてまとめ直すこともできる性状をいう);当該ペースト状になるまでに要した水量(ml)を吸水量とした。
シリカとして増粘性シリカを用いた場合に得られた結果を表1~表3に示す。(別の増粘性シリカを用いた場合に得られた結果は表8~10、13を参照。)シリカの総吸水値が7.4未満である液剤(参考例1,2)であればケーキングが起らないが、総吸水値が7.4~48の範囲内である液剤(比較例1,2,4,5,6,7,10,11,13,14)になるとケーキングが起こる。さらに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(比較例3,6,9,12,15)では、ケーキングは起こらなくなるがl-メントールが析出する。これに対して、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と共に塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含む液剤(実施例1~10)では、ケーキングが抑制でき、相対分散度が計算可能な場合にあっては全て相対分散度が向上していることでシリカの良好な分散状態を維持できているとともに、l-メントールの析出も抑制できており、澄明な外観性状を維持できていた。
Figure 0007011407000001
Figure 0007011407000002
Figure 0007011407000003
シリカとして研磨性シリカを用いた場合に得られた結果を表4~表7に示す。(別の研磨性シリカを用いた場合に得られた結果は表8、11~13を参照。)シリカの総吸水値が7.4未満である液剤(参考例3,4)であればケーキングが起らないが、総吸水値が7.4~48の範囲内である液剤(比較例26,27,29,30,32,33,35,36,38,39,41,42)になるとケーキングが起こる。さらに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(比較例28,31,34,37,40,43)では、ケーキングは起こらなくなるがl-メントールが析出する。これに対して、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と共に塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含む液剤(実施例11~22)では、ケーキングが抑制でき、相対分散度が計算可能な場合にあっては全て相対分散度が向上していることでシリカの良好な分散状態を維持できているとともに、l-メントールの析出も抑制できており、澄明な外観性状を維持できていた。
Figure 0007011407000004
Figure 0007011407000005
Figure 0007011407000006
Figure 0007011407000007
シリカとして別の増粘性シリカ又は別の研磨性シリカを用いた場合に得られた結果を表8~表13に示す。シリカの総吸水値が7.4未満である液剤(参考例5~12)であればケーキングが起らないが、総吸水値が7.4~48の範囲内である液剤(比較例44,45,47,48,50,51,53,54,56,57,59,60,62,63,65,66,68,69,71,72,74,75,77,78)になるとケーキングが起こる。さらに2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(比較例46,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79)では、ケーキングは起こらなくなるがl-メントールが析出する。これに対して、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と共に塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含む液剤(実施例23~34)では、ケーキングが抑制でき、相対分散度が計算可能な場合にあっては全て相対分散度が向上していることでシリカの良好な分散状態を維持できているとともに、l-メントールの析出も抑制できており、澄明な外観性状を維持できていた。
Figure 0007011407000008
Figure 0007011407000009
Figure 0007011407000010
Figure 0007011407000011
Figure 0007011407000012
Figure 0007011407000013
製剤例1
表14に示す組成の練歯磨剤を製造した。得られた練歯磨剤をチューブ容器に入れて保存した。以下に示す判定基準に従って、析出物生成及びシリカ分散の程度を評価した。なお、表中の各成分の含有量の単位は、重量%である。
<析出物の生成の程度の判定基準>
チューブ容器に入れた練歯磨剤を、遮光条件下、4℃で1か月静置した後、容器から内容物を取り出して広げ、析出物の有無を目視にて確認した。
◎:析出が認められなかった。
×:析出が認められた。
なお、l-メントールの析出の有無は、針状の結晶を視認できるか否かにより判断した。
<シリカの分散の程度の判定基準>
チューブ容器に入れた練歯磨剤を、遮光条件下、50℃で1か月静置した後、容器を切り開き、製剤表面の離水を目視にて確認した。
◎:離水が認められない、または、やや表面が濡れている程度である。
×:離水が認められた。
表14に示す通り、得られた口腔用組成物については、保存後に析出物の生成が抑制されており、かつ、離水も抑制されていたためシリカが良好に分散していた。
Figure 0007011407000014
製剤例2
表15に示す組成の練歯磨剤を製造した。なお、表中の各成分の含有量の単位は、重量%である。得られた口腔用組成物については、いずれも保存後に析出物の生成が抑制されており、かつ、離水も抑制されていたためシリカが良好に分散していた。
Figure 0007011407000015
参考試験例
表16に示す組成の液剤を50℃の温度条件下で調製し、得られた液剤5mLをガラス製スクリュー管瓶(容量6mL)に充填し、遮光条件下で、4℃で3日間静置した。3日間静置後の各液剤の外観を観察し、以下に示す判定基準に従って、析出物の生成の程度を評価した。なお、調製直後の液剤は、いずれも析出物が認められず、澄明な外観であった。
<析出物の生成の程度の判定基準>
◎:析出物は全く認められず、澄明な状態が維持できている。
○:僅かにだけ析出物が生成していたが、全体的に澄明な状態が維持できている。
×:析出物が多く生成しており、澄明な状態が失われている。
××:析出物が著しく多く生成しており、澄明な状態が失われている。
得られた結果を表16に示す。l-メントールを単独で含む液剤(参考例21)では、保存後に析出物の生成は認められなかった。一方、l-メントールと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を含む液剤(比較例81及び82)では、保存後に析出物の生成が認められた。これに対して、l-メントールと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と共に、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを含む液剤(参考実施例1~7)では、保存後に析出物の生成を抑制できており、澄明な外観性状を維持できていた。
一方、l-メントールと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体と共に、塩化ベンゼトニウムを含む液剤(比較例83及び84)では、保存後に析出物の生成を抑制できていなかった。即ち、これらの結果から、l-メントールと2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の共存下で生じる保存後の析出抑制効果は、第四級アンモニウム塩の中でも、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを選択することによって獲得できる特有の効果であることが明らかとなった。なお、参考試験例と同様の方法で表16に示す組成の液剤を調製し、遮光条件下で、25℃で3日間静置して評価したところ、析出物の生成の程度について同様の傾向が見られた。
Figure 0007011407000016

Claims (7)

  1. (A)モノテルペンと、(B)ホスホコリン基含有重合体と、(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムと、(D)水と、(E)シリカとを含有し、
    前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である、口腔用組成物。
  2. 前記(A)成分が、l-メントールである、請求項1に記載の口腔用組成物。
  3. 前記(B)成分が、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
  4. 前記(E)成分が増粘性シリカを含み、前記増粘性シリカの含有量が2.5重量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
  5. 前記(E)成分が研磨性シリカを含み、前記研磨性シリカの含有量が5.5重量%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
  6. (A)モノテルペン、(B)ホスホコリン基含有重合体、(D)水、及び(E)シリカを含み、前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物における当該(A)成分の析出を抑制するために使用される析出抑制剤であって、
    (C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを有効成分とする、析出抑制剤。
  7. (A)モノテルペン、(B)ホスホコリン基含有重合体、(D)水、及び(E)シリカを含み、前記(E)成分の吸水量(mL/g)と含有量(重量%)との積が7.4~48である口腔用組成物において、当該(A)成分の析出を抑制する析出抑制方法であって、
    口腔用組成物に、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(D)成分と前記成分(E)と共に、(C)塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウムを配合する、析出抑制方法。
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