以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の硬化性組成物は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとアクリル化合物とポリ塩化ビニルを含有することを特徴とする。以下、各成分について、詳細に説明する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(以下、単に「ウレタンプレポリマー」という場合もある。)について説明する。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、その樹脂中にイソシアネート基を1つ以上有する化合物である。イソシアネート基は、活性水素含有化合物(例えば、湿気等の水)と反応して尿素結合やウレタン結合を形成して架橋、硬化するとともに硬化後の組成物に被着面との良好な接着性を付与するものである。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を、イソシアネート基/活性水素(基)のモル比が1.2~10、好ましくは1.2~5となる範囲で一括あるいは逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして合成する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1,000以上、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、特に好ましくは2,000~10,000である。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を加え、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、有機イソシアネート化合物のイソシアネート基が湿気等の水と反応するとウレタンプレポリマーが増粘するため、事前に容器内を窒素ガスで置換することや窒素ガス気流下で反応を行うことが好ましい。
有機イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは、その化合物中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート、その他の芳香族ポリイソシアネートとして、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネートが挙げられる。また、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。またさらに、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合またはウレア結合を1つ以上有する変性イソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、有機ポリイソシアネートとともに、有機モノイソシアネートを用いることができる。すなわち、有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートの混合物を、上記有機イソシアネート化合物として用いることができる。有機モノイソシアネートは、その化合物中に1つのイソシアネート基を有する化合物であり、具体的には、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート、p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネートが挙げられる。
活性水素含有化合物は、その化合物中に1つ以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、高分子ポリオールや高分子ポリアミンの他、場合により鎖延長剤として用いる低分子ポリオール、低分子アミノアルコール、低分子ポリアミンや、ウレタンプレポリマーの変性用として用いる高分子や低分子のモノオールが挙げられる。本発明において、活性水素含有化合物としての高分子化合物とは数平均分子量が500以上の化合物、低分子化合物とは数平均分子量が500未満の化合物であることを意味する。
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、炭化水素系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオール、動植物系ポリオールが挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
高分子ポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で500以上、好ましくは1,000~40,000、より好ましくは1,000~20,000、特に好ましくは1,000~10,000である。
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸;これら酸の無水物あるいはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルの1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)あるいはプロピレンオキサイド(PO)付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、これらのポリカルボン酸、酸無水物、アルキルエステル、低分子のポリオール類に加えて、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類の1種以上との反応で得られるポリエステルアミドポリオールも挙げられる。
さらに、低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類を開始剤として、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールも挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられるのと同様の低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類、ポリカルボン酸の他; ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の1種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合(以下、「重合あるいは共重合」を「(共)重合」という。)させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムあるいはブロック共重合系ポリオール、さらに、上述のポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールが挙げられる。また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネート化合物を、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させた水酸基を有するポリオールも挙げられる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールのアルコール性水酸基の数は、1分子中に平均して2つ以上が好ましく、さらに2~4つが好ましく、特に2~3つが好ましい。
ポリオキシアルキレン系ポリオールは、その製造時に水素化セシウム、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド等のセシウムアルコキシド、水酸化セシウム等のセシウム系化合物、ジエチル亜鉛、塩化鉄、金属ポルフィリン、ホスファゼニウム化合物、複合金属シアン化錯体を触媒として使用することができる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体を触媒として使用して得られる、総不飽和度が0.1meq/g以下、さらに好ましくは0.08meq/g以下、特に好ましくは0.04meq/g以下、分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比=Mw/Mn〕が1.6以下、特に1.0~1.3のポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。このようなポリオキシアルキレン系ポリオールを用いることで、ウレタンプレポリマーの粘度を低下でき、硬化性組成物の硬化後のゴム物性が良好となる。
また、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、前記プロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールを使用することで、ウレタンプレポリマーを変性することができる。
なお、上述のポリオキシアルキレン系ポリオールあるいはポリオキシアルキレン系モノオールの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等で変性されていてもよいことを意味する。
ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの水酸基を含有する(メタ)アクリレート単量体類、他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体、必要に応じてラジカル重合開始剤を加えて共重合させたものが挙げられる。
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールが挙げられる。
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロインが挙げられる。
上述の活性水素含有化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、硬化性組成物の硬化後の伸び等のゴム物性や接着性が良好な点で、高分子ポリオールが好ましく、さらにポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリレート系ポリオールが好ましく、特にポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。
アクリル化合物について説明する。アクリル化合物は、その化合物中に1つ以上のアクリロイル基を有する化合物であり、炭素-炭素二重結合が光や熱により反応する。本発明の硬化性組成物に配合することで、熱硬化時に炭素-炭素二重結合が反応し硬化後の組成物が耐軟化性に優れるものとなる。
アクリル化合物としては、ビスフェノールFEO変性ジアクリレート、ビスフェノールAEO変性ジアクリレート等のビスフェノール型変性ポリアクリレート、フェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EOトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジグリセリンEO変性アクリレートが挙げられる。これらのうち、ビスフェノール型変性ポリアクリレートが好ましく、さらにビスフェノールFEO変性ジアクリレート、ビスフェノールAEO変性ジアクリレートが好ましい。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル化合物の配合量は、硬化性組成物全体の量に対して0.5~20質量%、好ましくは1~10質量%である。
ポリ塩化ビニルについて説明する。ポリ塩化ビニルは、本発明の硬化性組成物に耐熱性や揺変性を付与する目的で使用する。ポリ塩化ビニルの形態としては、配合のしやすさから粒子状や粉末状であることが好ましい。後述する式(1)で示すエステル化合物を用いてポリ塩化ビニルの分散体(プラスチックゾル)とすると、硬化性組成物を調製する際の分散性が容易となり、熱硬化時や熱硬化後の硬化物の耐熱性が向上する。また、硬化性組成物に揺変性が付与される。
ポリ塩化ビニルのプラスチックゾルとする方法は、従来公知の方法で行うことができる。具体的に例えば、ポリ塩化ビニルと式(1)で示すエステル化合物を常温で混合し、または必要に応じて加温し、ポリ塩化ビニルを式(1)で示すエステル化合物中で分散させてプラスチックゾルを作製する。ポリ塩化ビニルのプラスチックゾルは、予め式(1)で示すエステル化合物とポリ塩化ビニルを混合しプラスチックゾルを作製した後に硬化性組成物に配合してもよい。また、ウレタンプレポリマーと式(1)で示すエステル化合物とポリ塩化ビニルとアクリル化合物とその他の成分を混合し硬化性組成物の調製と同時に作製してもよい。さらに、上述のウレタンプレポリマーの原料と式(1)で示すエステル化合物とポリ塩化ビニルを混合しウレタンプレポリマーの合成と同時に作製してもよい。
ポリ塩化ビニルの配合量は、硬化性組成物全体に対し3質量%~30質量%である。
式(1)で示すエステル化合物について説明する。本発明におけるエステル化合物は、式(1)で示す化合物中に1~3つのエステル基を有する化合物である。
式中、nは1~3の整数であり、Rは脂肪族炭化水素基である。該脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐であってもよい。該脂肪族炭化水素基の炭素数の総数は20~60であり、nが2または3の場合、該脂肪族炭化水素基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
脂肪族炭化水素基としては、n-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、テトラドコシル基、ヘキサドコシル基、オクタドコシル基が挙げられる。
式(1)で示す化合物中の脂肪族炭化水素基の炭素数の総数は20~60、好ましくは20~40である。
式(1)で示すエステル化合物は、芳香族カルボン酸またはその無水物と、アルコールを反応させて得ることができる。
芳香族カルボン酸としては、具体的には、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびこれらの酸無水物が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルコールとしては、n-ブタノール、イソブタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、イソオクチルアルコール、n-ノナノール、イソノナノール、n-デカノール、イソデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、オクタデカノール、オクタコサノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノールが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
式(1)で示すエステル化合物は、硬化性組成物の粘度を低下させて作業性を向上させるとともに、硬化後の組成物のゴム物性を調整するために使用する。また、ポリ塩化ビニルや後述するポリウレア化合物の分散溶媒として有用であり、硬化性組成物中にポリ塩化ビニルやポリウレア化合物を配合した際に組成物中にブツやダマが発生しづらくなる。さらに、式(1)で示すエステル化合物を硬化性組成物に配合すると、硬化性組成物を熱硬化させたときの耐発泡性や耐軟化性に優れる。
式(1)で示すエステル化合物をポリ塩化ビニルやポリウレア化合物の分散溶媒として使用する場合について説明する。ポリ塩化ビニルやポリウレア化合物を式(1)で示すエステル化合物中に分散したポリ塩化ビニルの分散体(例えば、プラスチックゾル)やポリウレア化合物の分散体は本発明の硬化性組成物の揺変性を付与する目的で好適に使用することができる。ポリ塩化ビニルの分散体やポリウレア化合物の分散体を使用すると、硬化性組成物を打設または塗布した後の形状保持性に優れ、タレやスランプを防止することができる。
ポリ塩化ビニルやポリウレア化合物は一般的に凝集力が強く、これらの粒子(粉体)を硬化性組成物に配合し攪拌分散すると、硬化性組成物中にブツやダマが発生して外観が悪化することが多い。また、ポリ塩化ビニルやポリウレア化合物の分散が不十分であると硬化性組成物の揺変性も低下する場合がある。そのため、ポリ塩化ビニルやポリウレア化合物を式(1)で示すエステル化合物中に仕込み、必要に応じて加温しながら攪拌分散してポリ塩化ビニルやポリウレア化合物の分散体を作製することが好ましい。ポリウレア化合物の分散体はポリウレア化合物の合成と同時に分散させてもよい。ポリ塩化ビニルやポリウレア化合物の分散体を硬化性組成物に配合することでブツやダマの発生がなく外観が良好で揺変性に優れた硬化性組成物を得ることができる。
式(1)で示すエステル化合物の配合量は、硬化性組成物全体の量に対し3質量%~40質量%、好ましくは5質量%~30質量%である。
本発明の硬化性組成物は、さらにオキサゾリジン化合物を配合することができる。オキサゾリジン化合物は、酸素原子と窒素原子とを含む飽和5員環の複素環であるオキサゾリジン環を分子内に1つ以上、好ましくは1~6つ、特に好ましくは1~3つ有する化合物である。オキサゾリジン化合物は、湿気等の水と反応して加水分解し、オキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基を生成(再生)することで、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの潜在性硬化剤として機能するものである。ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が湿気等の水と反応すると尿素結合を形成して硬化する。この際、炭酸ガスも発生し、硬化物の中に炭酸ガスによる気泡が生じて外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下等の不具合を生じることがある。一方、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物を併用した硬化性組成物を水と反応させた場合は、水とオキサゾリジン化合物が優先的に反応し、オキサゾリジン化合物のオキサゾリジン環が2級アミノ基とアルコール性水酸基(活性水素基)を生成する。次に生成した活性水素基(特に2級アミノ基)がイソシアネート基と優先的に反応するため、水とイソシアネート基の反応による炭酸ガスの発生を抑制し、硬化性組成物の硬化時の発泡を防止することができる。硬化性組成物を熱硬化させる場合は、水とイソシアネート基の反応による炭酸ガスが短時間で発生するため硬化物に気泡が生じやすいが、オキサゾリジン化合物を配合することで発泡を抑制することができる。また、熱硬化させる場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水との反応よりもオキサゾリジン環から生成した2級アミノ基とアルコール性水酸基と優先的に反応し、これにより樹脂中の架橋が増えるため硬化物の耐熱性が向上する。
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに使用する有機ポリイソシアネートとして、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートを使用すると硬化性組成物の硬化が遅くなる場合がある。硬化性組成物にイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物を併用すると、硬化性組成物の硬化を速められ、後述する硬化促進触媒の使用量を低減することができる。
オキサゾリジン化合物としては、ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物、エステル基含有オキサゾリジン化合物、オキサゾリジンシリルエーテル化合物、カーボネート基含有オキサゾリジン化合物が挙げられる。これらのオキサゾリジン化合物は、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基と、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基や有機カルボン酸化合物のカルボキシル基とを反応させる等により得られる。これらのオキサゾリジン化合物のうち、製造し易いことからウレタン結合含有オキサゾリジン化合物が好ましい。
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、具体的には、アルカノールアミンの2級アミノ基と、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のカルボニル基との脱水縮合反応により得られるN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが挙げられる。この水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造方法としては、アルカノールアミンの2級アミノ基1モルに対し、アルデヒド化合物またはケトン化合物のカルボニル基を1モル以上、好ましくは1~1.5モル、さらに好ましくは1~1.2モル使用し、トルエン、キシレン等の溶媒中で、加熱、還流し、副生する水を除去しながら脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。過剰のアルデヒド化合物やケトン化合物は蒸留により除去することができる。
アルカノールアミンとしては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(2-ヒドロキシプロピル)アミンが挙げられる。ケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-tert-ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。アルデヒド化合物としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、3,5,5-トリメチルヘキシルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の製造の容易さと、硬化性組成物が硬化するときの耐発泡性に優れている点で、アルカノールアミンとしてはジエタノールアミンが好ましく、ケトン化合物またはアルデヒド化合物のうちアルデヒド化合物が好ましく、さらにイソブチルアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。
水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物としては、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-(1-メチルブチル)-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2-フェニル-3-(2-ヒドロキシエチル)オキサゾリジンが挙げられる。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物としては、有機ポリイソシアネートのイソシアネート基と水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物の水酸基とをイソシアネート基/水酸基のモル比が0.9~1.2、好ましくは0.95~1.05となるように使用し、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を加え、50~120℃の温度で反応させて得られるものが挙げられる。
ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造に用いられる有機ポリイソシアネートは、上述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造に用いられるのと同様のものが挙げられる。このうち、芳香脂肪族(アラルキル)ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが好ましく、特にキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
エステル基含有オキサゾリジン化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジカルボン酸またはポリカルボン酸の低級アルキルエステルとの反応によって得ることができる。
オキサゾリジンシリルエーテル化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物と、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの脱アルコール反応により得られる。
カーボネート基含有オキサゾリジン化合物は、上述の水酸基およびオキサゾリジン環を有する化合物とジアリルカーボネート等のカーボネートとを、ジエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを用いて反応させることによって得ることができる。
これらのオキサゾリジン化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、オキサゾリジン化合物は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応するアミノ基や水酸基等の活性水素含有官能基、あるいはイソシアネート基を有していないことが好ましい。これはウレタンプレポリマーとオキサゾリジン化合物を併用した際にウレタンプレポリマーの粘度上昇やオキサゾリジン化合物の発泡防止性能が低下するためである。但し、上述のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の製造において、モル比の選択により少量の活性水素含有官能基やイソシアネート基が分子内に残存する場合もあるが、この場合は本発明の目的を損なわない上で有していないとみなすことができる。なお、前記少量とは、分子内に残存する活性水素含有官能基またはイソシアネート基の量がオキサゾリジン化合物1g当たり、0.05ミリモル以下、さらに0.02ミリモル以下であることが好ましい。
オキサゾリジン化合物の配合量は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基1モルに対して、オキサゾリジン化合物が加水分解して生成(再生)する2級アミノ基の活性水素が0.1~1モル、さらに0.3~1モル、特に0.5~1モルであることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。添加剤は、硬化性組成物に配合して硬化性組成物の粘度調整、硬化促進、耐候性、耐熱性、揺変性、接着性等の性能を向上させるために使用する。具体的には、硬化促進触媒、可塑剤、安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化促進触媒は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが湿気等の水と反応して架橋硬化するのを促進させるために使用する。また、硬化性組成物にオキサゾリジン化合物を配合した場合は、オキサゾリジン化合物から生成した第2級アミノ基やアルコール性水酸基とウレタンプレポリマーのイソシアネート基との反応を促進させるために使用する。さらに、硬化促進触媒は、上述のウレタンプレポリマーの製造時の反応触媒としても使用することができる。なお、ウレタンプレポリマーの製造時の反応触媒として使用した場合は、ウレタンプレポリマー中に残存する反応触媒が硬化性組成物の硬化促進触媒として作用することもある。
硬化促進触媒としては、具体的には、金属系触媒、アミン系触媒が挙げられる。
金属系触媒としては、金属と有機酸との塩、有機金属と有機酸との塩、金属キレート化合物が挙げられる。金属と有機酸との塩としては、錫、ビスマス、ジルコニウム、亜鉛、マンガン等の各種金属とオクチル酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の有機酸との塩が挙げられる。具体的には、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、オクチル酸ビスマス、オクチル酸ジルコニウムが挙げられる。有機金属と有機酸との塩としては、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物が挙げられる。金属キレート化合物としては、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物である旭硝子社製EXCESTAR C-501、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガンが挙げられる。
アミン系触媒としては、3級アミン類が挙げられる。3級アミン類としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ〔2,2,2〕オクタン(DABCO)やこれらの三級アミン類と有機カルボン酸の塩が挙げられる。
これらの硬化促進触媒は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性組成物の硬化性に優れることから、金属と有機酸との塩、有機金属と有機酸との塩、金属キレート化合物が好ましく、さらに錫と有機酸との塩、ビスマスと有機酸との塩、有機錫と有機酸との塩、有機ビスマスと有機酸との塩、錫キレート化合物、ビスマスキレート化合物、鉄キレート化合物が好ましい。
硬化促進触媒の配合量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対して、好ましくは0.005~5質量部、特に好ましくは0.005~2質量部である。
上述の金属系触媒、アミン系触媒の他に、有機カルボン酸系触媒、燐酸エステル系触媒、p-トルエンスルホニルモノイソシアネート、p-トルエンスルホニルモノイソシアネートと水との反応物を使用することができる。有機カルボン酸系触媒、燐酸エステル系触媒、p-トルエンスルホニルモノイソシアネート、p-トルエンスルホニルモノイソシアネートと水との反応物は、硬化性組成物にオキサゾリジン化合物を配合した場合に、オキサゾリジン化合物のオキサゾリジン環の加水分解を促進させるものである。オキサゾリジン環の加水分解の促進により、生成した第2級アミノ基とアルコール性水酸基(活性水素基)がウレタンプレポリマーのイソシアネート基と反応し、硬化性組成物の硬化が促進される。
有機カルボン酸系触媒としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、2-エチルヘキサン酸(オクチル酸)、オクテン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β-不飽和カルボン酸、フタル酸、安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
燐酸エステル系触媒としては、正燐酸エステル化合物、亜燐酸エステル化合物が挙げられる。正燐酸エステル化合物としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート等の酸性燐酸エステル化合物が挙げられる。亜燐酸エステル化合物としては、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜憐酸トリエステル化合物、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等の亜燐酸ジエステル化合物が挙げられる。
p-トルエンスルホニルモノイソシアネートと水との反応物としては、硬化性組成物に配合する前にp-トルエンスルホニルモノイソシアネートと水とを予め反応させたもの、硬化性組成物を調製している間に水と反応させたもの、硬化性組成物の調製後に組成物中に存在する水と反応させたものが挙げられる。
可塑剤は、硬化性組成物の粘度を調整し、かつ硬化後の硬化物のゴム物性を調節するために使用する。
可塑剤としては、上述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成に使用されるのと同様のポリオキシアルキレン系ポリオールやポリオキシアルキレン系モノオールの水酸基をエーテル化、エステル化、ウレタン化した樹脂、ポリブタジエン、ブタジエンーアクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレンあるいはこれらの水添物等の炭化水素系重合体が挙げられる。
安定剤は、硬化性組成物の酸化、光劣化、熱劣化を防止して耐候性や耐熱性を向上させる目的で使用する。安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。また、ポリ塩化ビニルの熱による脱塩化水素を抑制するため、塩ビ用安定剤を配合することができる。これらの安定剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の分子量1,000未満の低分子量の化合物;コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物の他、ADEKA社製のアデカスタブLA-63P、LA-68LD等の分子量1,000以上の化合物が挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸の炭素数7~9のアルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノールが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤の配合量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対し、これらの合計量で0.1~10質量部である。
塩ビ用安定剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のリチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、カドミウム塩、バリウム塩等の金属石けん;カドミウム、亜鉛、バリウムカルシウム、錫、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等の金属成分を含む金属塩系安定剤;ラウレート系有機錫、マレエート系有機錫、メルカプタイド系有機錫等の有機錫系安定剤;アンチモン系有機錫;亜リン酸エステル;フェノール誘導体;多価アルコール;含窒素化合物;ケト化合物等の安定剤が挙げられる。
塩ビ用安定剤の配合量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対し、0.1~10質量部である。
充填剤は、硬化性組成物の増量や硬化物の物性補強を目的として使用する。具体的には、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカ等の合成シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン等の無機系バルーン状充填剤;あるいはこれらの表面を脂肪酸等の有機物で処理した充填剤;木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、熱可塑性または熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン等の粉末や中空体、サランマイクロバルーン等の有機系バルーン状充填;その他、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤が挙げられる。充填剤の粒径は、0.01~1,000μmである。
揺変性付与剤は、硬化性組成物に揺変性を付与し、硬化性組成物を垂直面や傾斜面に使用した際にタレ、スランプの発生を防止する目的や、硬化性組成物をビード塗布、クシ目ゴテ等で塗布した際に塗布形状を保持する目的で使用する。具体的には、微粉状シリカ、脂肪酸処理炭酸カルシウム等の無機揺変性付与剤;ポリウレア化合物、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機揺変性付与剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
微粉状シリカとしては、親水性シリカ、疎水性シリカが挙げられる。これらは、1種または2種を組み合わせて使用することができる。
親水性シリカとしては、石英や珪砂等を微粉砕した天然シリカ、乾式シリカや湿式シリカ等の合成シリカが挙げられる。乾式シリカは、四塩化珪素等のシラン系化合物を酸水素炎中で燃焼させて得られるものであり、ヒュームドシリカということもある。また、湿式シリカは、珪酸ソーダ水溶液を酸で中和し、水溶液中でシリカを析出させる沈降法シリカがあり、ホワイトカーボンということもある。
疎水性シリカは、親水性シリカのシラノール基をシリコーンオイル、シランカップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、クロロシラン類等と反応させてその表面を疎水化したものである。
微粉状シリカのBET比表面積は、10~500m2/g、好ましくは50~500m2/gである。微粉末シリカの平均一次粒子径は、1~100nmである。
ポリウレア化合物は、化合物中にウレア基(-NHCONH-)を2つ以上有する化合物であり、有機イソシアネート化合物とアミン化合物の反応によって得ることができる。
有機イソシアネート化合物としては、上述のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造に使用できるものと同様の有機イソシアネート化合物が挙げられる。揺変性付与効果に優れている点で、芳香族ポリイシアネートが好ましい。
アミン化合物は、分子内にアミノ基を1つ以上有する化合物である。アミン化合物としては、第1級アミノ基を有するアミン、第2級アミノ基を有するアミン、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアミンが挙げられる。
第1級アミノ基を有するアミンとしては、モノアミン、ジアミン、トリアミンが挙げられる。第1級アミノ基を有するモノアミンとしては、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、テトラデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリンが挙げられる。第1級アミノ基を有するジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロへキシルメタン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミンが挙げられる。第1級アミノ基を有するトリアミンとしては、トリ(メチルアミノ)へキサンが挙げられる。第2級アミノ基を有するモノアミンとしては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラウリルアミンが挙げられる。第2級アミノ基を有するジアミンとしては、N,N´-ジラウリルプロピルジアミン、N,N´-ジステアリルブチルジアミン、N-ブチル-N´-ラウリルエチルジアミン、N-ブチル-N´-ラウリルプロピルジアミン、N-ラウリル-N´-ステアリルブチルジアミンが挙げられる。第1級アミノ基と第2級アミノ基を有するアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチルアミノプロピルアミンが挙げられる。
これらのアミン化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、第1級アミノ基を有するアミンが好ましく、さらに第1級アミノ基を有するモノアミンが好ましい。
表面処理炭酸カルシウムとしては、脂肪酸表面処理炭酸カルシウムが挙げられる。脂肪酸表面処理炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウムの表面を、脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸有機塩等の脂肪酸類で処理したものである。
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、牛脂ステアリン酸、パーム核脂肪酸、部分硬化パーム脂肪酸、極度硬化パーム脂肪酸、ヤシ脂肪酸、部分硬化ヤシ脂肪酸、極度硬化ヤシ脂肪酸、パーム脂肪酸、パームステアリン酸、牛脂脂肪酸、部分硬化牛脂脂肪酸、極度硬化牛脂脂肪酸、大豆脂肪酸、部分硬化大豆脂肪酸、極度硬化大豆脂肪酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩が挙げられる。有機塩としては、アンモニウム塩が挙げられる。
脂肪酸表面処理炭酸カルシウムの市販品としては、丸尾カルシウム社製のシーレッツ200、カルファイン200、カルファイン200M、カルファイン500、カルファインN-40、カルファインN-350;白石工業社の白艶華CC、白艶華CCR、白艶華CCR-S、白艶華CCR-B、VIGOT-10、VIGOT-15、Viscolite-SV、Viscolite-OS、Viscolite EL-20;日東粉化工業社のNCC#3010、NCC#1010が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、揺変性付与効果が高い点で、脂肪酸または脂肪酸金属塩で表面処理した炭酸カルシウムが好ましい。
脂肪酸表面処理炭酸カルシウムの粒径は、0.01~1μm、好ましくは0.01~0.3μmである。脂肪酸表面処理炭酸カルシウムの粒径は、電子顕微鏡で測定される一次粒子径として求めることができる。脂肪酸表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積は5~200m2/g、好ましくは10~60m2/gである。粒径が0.01μmを下回るか、あるいはBET比表面積が200m2/gを超えると、硬化性組成物の粘度が高くなり作業性が悪化する。粒径が1μmを上回るか、あるいはBET比表面積が5m2/gを下回ると揺変性付与効果が低下する。
表面処理炭酸カルシウムの配合量は、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー100質量部に対し1~200質量部、好ましくは5~150質量部である。
接着性向上剤は、硬化性組成物の接着性の向上を目的として使用する。具体的には、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系等の各種カップリング剤またはその部分加水分解縮合物を挙げることができる。このうち、シラン系カップリング剤またはその部分加水分解縮合物が接着性に優れているため好ましい。
シラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基を含有する分子量500以下、好ましくは400以下の低分子化合物またはこれらシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で分子量200~3,000の化合物が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
貯蔵安定性向上剤(脱水剤)は、硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で使用する。具体的には、硬化性組成物中に存在する水と反応して脱水剤の働きをするビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウム、p-トルエンスルホニルモノイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
着色剤は、硬化性組成物を着色し、意匠性を付与する目的で使用する。具体的には、酸化チタンや酸化鉄等の無機系顔料、銅フタロシアニン等の有機系顔料、カーボンブラックが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶剤は、硬化性組成物の粘度を下げ、押出しや塗布の作業性を向上させる目的で使用する。有機溶剤としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、アクリル化合物、ポリ塩化ビニル、式(1)で示すエステル化合物、オキサゾリジン化合物、添加剤と反応しない有機溶剤であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、酢酸エチル等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン等のナフテン系溶剤;トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、有機溶剤はイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成の際に使用してもよく、硬化性組成物の調製の際に使用してもよい。
本発明の硬化性組成物は、湿気等の水との反応や熱により硬化、架橋するため、一液型硬化性組成物として使用することができる。また、本発明の硬化性組成物を主剤とし、ポリアミンやポリオール等の活性水素含有化合物を硬化剤とする二液型硬化性組成物としても使用できる。主剤と硬化剤の混合の手間がなく配合ミスによる硬化不良の発生もなく作業性に優れているため、一液型硬化性組成物として使用するのが好ましい。
さらに、本発明の硬化性組成物は、熱硬化させたときの耐軟化性に優れるから、熱硬化性組成物として使用することができる。なお、本発明において熱硬化性組成物とは、100℃以上で硬化させることが可能であり、熱硬化後に大きな物性低下(軟化)が生じない組成物である。
本発明の硬化性組成物は、金属板(例えば、鋼板)との接着性や塗料密着性にも優れるから、自動販売機、家電機器、産業機器、自動車、電車、重機等の金属板接合部に使用することができる。また、自動販売機、家電機器、産業機器、自動車、電車、重機等の金属部位の表面に塗料を塗布する際のアンダーコートとして使用することができる。本発明の硬化性組成物は、金属板や金属部位の表面に打設または塗布した後、上塗り塗料を塗布し、加熱により塗料を乾燥硬化させる工程と同時に硬化させることもできる。
以下、本発明について実施例等でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
[合成例1]イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーPU-1
攪拌機、温度計、窒素シール管および加温・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら有機溶剤(エクソールD110、エクソンモービル社製)を47.0g、ポリオキシプロピレントリオール(PML-S3008、旭硝子社製、数平均分子量8,370、総不飽和度0.005meq/g)を800.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(テグサジャパン社製、分子量222.2)を78.7g、反応触媒としてオクチル酸錫(日東化成社製)を0.1g仕込み、70~80℃に加温し反応させた。滴定によるイソシアネート基含有量が理論値1.85質量%以下となった時点で反応を終了し(実測値1.79質量%)、冷却してイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーPU-1を合成した。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーPU-1は、25℃での粘度が8,780mPa・sであり、常温で液体であった。
[合成例2]ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1
攪拌機、温度計、窒素シール管、エステル管、加熱・冷却装置付き反応容器に、ジエタノールアミン(分子量105)を435.0gとトルエンを183.0g仕込み、攪拌しながらイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を328.0g仕込み、窒素ガス気流下で110~150℃に加温し還流脱水反応を続け、副生する水(74.5g)を系外に取り出した。反応終了後、さらに減圧下(50~70hPa)で加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物であるN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジンを得た。
次いで、得られたN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジン659.0gに、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を348.0g加え、80℃で8時間加熱し、滴定による実測NCO含有量が0.0質量%になった時点で反応終点とし、分子内にオキサゾリジン環を2つ有するウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1を得た。ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1は常温で液体であった。
[調製例1]
ジフェニルメタンジイソシアネート100.0gをトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)300.0g中に溶解した溶液と、n-ブチルアミン55.0gをトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)320.0g中に溶解した溶液を常温において反応させてポリウレア化合物の分散ペーストP-1を得た。分散ペーストP-1は、ポリウレア化合物20質量%とトリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)80質量%からなる。
[調製例2]
ジフェニルメタンジイソシアネート100.0gをフタル酸ジイソデシル300.0g中に溶解した溶液と、n-ブチルアミン55.0gをフタル酸ジイソデシル320.0g中に溶解した溶液を常温において反応させてポリウレア化合物の分散ペーストP-2を得た。分散ペーストP-2は、ポリウレア化合物20質量%とフタル酸ジイソデシル80質量%からなる。
[実施例1]
加熱冷却装置および窒素シール管付き混練容器に、窒素気流下で、合成例1で得たイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーPU-1を100.0g、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)を16.1g、予め90~100℃の乾燥器中で乾燥して含有水分量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム(ホワイトンB、白石カルシウム社製)を108.0g、調製例1で得たポリウレア化合物の分散ペーストP-1を105.6g、ポリ塩化ビニル(VESTOLIT E7031、VESTOLIT社製)を48.3g、塩ビ用安定剤(アデカスタブSC-308E、ADEKA社製)を1.4g仕込み、内容物が均一になるまで攪拌混合した。この時点でポリ塩化ビニルはプラスチックゾルになった。次に、アクリル化合物(アロニックスM211B、ビスフェノールAEO変性(nは約2)ジアクリレート、東亞合成社製)を13.2g、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、BASF社製)を1.4g、ヒンダートアミン系光安定剤(サノールLS-292、三共社製)を1.4g、合成例2で得たウレタン結合含有オキサゾリジン化合物O-1を8.6g仕込み、内容物が均一になるまで攪拌、混合した。次いで、鉄(III)アセチルアセトネートを0.02g、p-トルエンスルホニルイソシアネートを0.5g仕込み、内容物が均一になるまで攪拌混合し、減圧脱泡し、容器に充填密封して、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
[実施例2]
実施例1において、トリメリット酸トリス(2-エチルヘキシル)の替わりにフタル酸ジイソデシルを16.1g仕込み、ポリウレア化合物の分散ペーストP-1の替わりにポリウレア化合物の分散ペーストP-2を105.6g仕込んだ以外は同様の操作を行い、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
[比較例1]
実施例1において、アクリル化合物を配合しなかった以外は同様の操作を行い、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
[比較例2]
実施例2において、アクリル化合物を配合しなかった以外は同様の操作を行い、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
[比較例3]
実施例1において、重質炭酸カルシウムを157.7g仕込み、ポリ塩化ビニル、塩ビ用安定剤、アクリル化合物を配合しなかった以外は同様の操作を行い、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
[比較例4]
実施例2において、重質炭酸カルシウムを157.7g仕込み、ポリ塩化ビニル、塩ビ用安定剤、アクリル化合物を配合しなかった以外は同様の操作を行い、硬化性組成物(シーリング材組成物)を調製した。
実施例1~2および比較例1~4の硬化性組成物の組成を表1に示す。
実施例1~2および比較例1~4の硬化性組成物を用いて下記の性能試験を行った。硬化性組成物の性能試験結果を表2に示す。
性能試験
[硬度]
アルマイトアルミの表面に硬化性組成物を幅5mm×高さ3mm×長さ100mmのビード状(断面は半楕円状)に打設した後、23℃50%RHで0.5時間、24時間または72時間養生し試験体とした。各養生後、180℃に設定したオーブンの中に試験体を45分間入れて熱硬化させた。熱硬化後、試験体を23℃50%RHで24時間静置した。硬化物(高さ3mmの箇所)の硬度をタイプAデュロメータで測定した。
表2に示すように、実施例1~2の硬化性組成物は、180℃の加熱養生において、硬度低下(軟化)は認められず、熱硬化時の耐軟化性に優れていることが分かる。一方、比較例1~4の硬化性組成物は、180℃の加熱養生において、硬度低下(軟化)が認められ、熱硬化時の耐軟化性が悪いことが分かる。
常態養生を行い加熱養生しない場合、実施例1~2および比較例1~4の硬化性組成物の耐軟化性は良好である。比較例1~4の硬化性組成物は、180℃の加熱養生(熱硬化時)において、熱の影響により硬度低下(軟化)が生じたと考えられる。
本発明の硬化性組成物は熱硬化時の耐軟化性に優れるから、熱硬化性組成物として有用である。また、本発明の硬化性組成物は、シーリング材組成物、防水材組成物、接着剤組成物、コーティング材組成物として使用することができる。