JP7010568B2 - 植物の葉への画像の転写方法および画像を転写した葉の保存方法 - Google Patents
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Description
植物の生の葉に、ヨウ素デンプン反応を利用して、写真または絵などの図像を焼き付ける技術が知られている。まず、葛などの生きている植物の葉に、あらかじめ光を通さないインクで図像を描いた、透明のネガフィルムを張り付ける。それを日光または日光ライトにさらすと、フィルムを透過して、葉に光が当たる部分のみ、葉緑体で光合成が行われる。十分に光にあてたのち、葉を摘み取り、脱色処理を施して緑色色素を抜く。漂白された葉をヨウ素液につけ、液と光合成によって生成されたデンプンと反応させる。ヨウ素デンプン反応の結果、ネガフィルムの透明部分、光の当たっていた部分のみ赤紫色になり、遮光性のインクの影になった部分は脱色されたままになる。その結果、フィルムと反転した図像を葉に転写することができる。図像が転写された葉を素早く乾燥させ、空気の触れないよう密閉して押し花と同様に保存する。ヨウ素液の色素が不安定で長期保存に適さないため、主に、学校教育現場での理科の実験、社会教育現場での科学ワークショップなどに利用されている。
植物の葉の保存方法としては、以下のようなものが知られている。
特表平9-512789は、保存される植物材(葉を含む)を萎縮あるいは捩れから実質的に回避せしめる方法について記載している。当該文献に記載の方法は、1種またはそれ以上のC3~C6ジヒドロキシアルコールを40~95重量%で含有する水溶液中に40~95℃で植物材を浸漬する工程からなる(請求項1)。
-夜間には生成されたデンプンがなくなるため、日中の十時間ほどで十分な光合成を行えない種類の葉などは、使用に適さない。
-ヨウ素液による現像は、色素が不安定であるため、長期間の保存が困難である。
-転写後の葉自体の劣化を避けられない。
本発明はまた、画像を転写した葉の、新規な保存方法を提供することを目的とする。
限定されるわけではないが、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
植物の葉への画像の転写方法であって、
(1)画像が描かれた、または、印刷された透明若しくは半透明の平版を準備し、
(2)(1)の平版を植物の葉に密着させ、そして、
(3)光源に曝露する、
ことを含む、前記転写方法。
[態様2]
(3)の光源への曝露を、1時間~10日間行う、態様1に記載の方法。
[態様3]
(3)の光源への曝露を、1日~7日間行う、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
(2)または(3)の工程において、葉の乾燥を防ぐための処置を行う、態様1-3のいずれか1項に記載の方法。
[態様5]
(2)の工程において、さらに、防水性シートまたは保水性シートを、葉に密着させることを含む、態様4に記載の方法。
[態様6]
植物が、大きさが5cm2以上の葉を有するものである、態様1-5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
植物が、サトイモ科、イチョウ科、クワ科、マメ科、モクレン科、ブナ科、パパイア科、ラン科、ショウガ科、ハス科、トウダイグサ科、カキノキ科、キク科、バショウ科、ウコギ科、バラ科、キジカクシ科、トベラ科、バラ科、マタタビ科およびアオイ科からなる科から選択される植物である、態様1-6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8]
植物が、クワズイモ、イチョウ、イチジク、クズ、コブシ、クリ、パパイア、シラン、ミョウガ、ハス、ハマイヌビワ、シマグワ、アカメガシワ、ゲットウ、オオバギ、カキ、キク、バナナ、ヤツデ、ウメ、ギボウシ、トベラ、サクラ、アコウ、キウイ、サトイモ、ルドベキアおよびフヨウ、からなる群から選択される、態様1-7のいずれか1項に記載の方法。
[態様9]
平版が、ビニール、ガラス、印刷用紙、プラスチック、塩化ビニール板、ゲル及びゼラチンからなる群から選択される、態様1-8のいずれか1項に記載の方法。
[態様10]
画像を転写した葉の保存方法であって、
態様1-9のいずれか1項に記載の方法により画像を転写した葉を、アルコール、防腐剤および水を含む液に浸漬し、次いで、余分な液剤を除く、ことを含む、保存方法。
[態様11]
アルコールが多価アルコールである、態様10に記載の保存方法。
[態様12]
アルコールが、グルセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールおよびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、態様10に記載の保存方法。
[態様13]
防腐剤が、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、態様10-12のいずれか1項に記載の保存方法。
[態様14]
転写した葉の、アルコールおよび防腐剤を含む液への浸漬を、1日~10日間行う、態様10-13のいずれか1項に記載の保存方法。
[態様15]
転写した葉の、アルコールおよび防腐剤を含む液への浸漬を、冷暗所で行う、態様10-14のいずれか1項に記載の保存方法。
[態様16]
余分な液剤の除去後、さらに、密封処理を行う、態様10-15のいずれか1項に記載の保存方法。
本発明は、植物の葉への画像の転写方法に関する。本発明の方法は、
(1)画像が描かれた、または、印刷された透明若しくは半透明の平版を準備し、
(2)(1)の平版を植物の葉に密着させ、そして、
(3)光源に曝露する、
ことを含む。
光源の種類は特に限定されない。一態様において、非限定的に、日光、白色光、LEDライト、紫外線ライト、白熱電球等が含まれる。一態様において、光源は日光である。光源への曝露を行う温度は特に限定されない。非限定的に、一態様において、光源への曝露は、葉の緑は茶変する条件下で行うことが望ましい。葉の緑を茶変させるためには、例えば、一定の気温以上、例えば、15℃以上、20℃以上、22℃以上、25℃以上、28℃以上で光曝露を行う。あるいは、光源曝露後に緑色のまま保存した葉を用い、密封処理の際に、例えば、蝋引きの際に葉を熱しながら蝋を染み込ませることで、茶変を生じさせても良い。
1-転写前の原版。透明ビニールやガラスに遮光性のインクで描画する。または、OHPシートなどの透明印刷用紙に図像を印刷し、ラミネート加工などの耐水加工をする。
3-防水性のシートなど。葉の乾燥を防ぐため、防水性、保水性のあるものを葉の下に敷く。1,2,3を密着させ、1日~1週間ほど、光源にさらす。
5-葉の緑色色素が残っている部分
6-葉緑体が光によって破壊され、退色した部分
II.画像を転写した葉の保存方法
本発明は、画像を転写した葉の保存方法に関する。本発明の保存方法は、「植物の葉への画像の転写方法」により画像を転写した葉を、アルコール、防腐剤および水を含む液に浸漬し、次いで、余分な液剤を除く、ことを含む。
非限定的に、一態様において、余分な液剤の除去後、さらに、密封処理を行ってもよい。密封処理によりより長期間の(例えば、永続的、半永続的な)保存が可能である。非限定的に、密封処理は、例えば、蝋引き、ラミネート加工、透明樹脂、液剤への封入、透明平版に挟み込み、四方を閉じて密閉する等の方法によって行うことができる。蝋引きとは、蝋を熱源に溶かし、対象物に薄い皮膜を形成させる技術である。あるいは、アクリルなどの透明硬化剤に封入してもよい。
本実施例では、各種の葉を用いて転写および保存を行った。
平板としては、KOKUYO社製のインクジェットプリンタ用OHPフィルム、アイリスオーヤマ社製のラミネートフィルムを使用した。光は日光で、気温30℃程度、晴天の下、午前9時から転写を開始した。液浸に使用したアルコール、防腐剤は各々グリセリン、パラオキシ安息香酸エステルである。アルコール、水および防腐剤の割合は、重量比で1:1:0.01であった。
調べた葉のうち、クワズイモ、イチョウ、イチジク、クズ、コブシ、クリ、パパイア、シラン、ミョウガ、ハス、ハマイヌビワ、シマグワ、アカメガシワ、およびゲットウは、美しく転写され、保存の利く葉が得られた。オオバギ、カキ、キク、バナナ、ヤツデ、ウメ、ギボウシ、トベラ、サクラ、アコウ、キウイおよびサトイモは、葉によってややバラツキが見られたが、これらについても転写され、保存の利く葉が得られた。
実施例2 液浸のエチレングリコールを使用した場合の保存性
本実施例では、液浸のアルコールとして、グリセリンではなくエチレングリコールを使用し、保存性を調べた。防腐剤の種類、アルコール、防腐剤および水の割合は、実施例1と同条件であった。
実施例1の場合と同様に、余分な液剤の除去後、各葉に蝋引きの密封処理を施した。その後、15℃の条件下に30日間保存した。その結果、液浸のアルコールとしてエチレングリコールを使用した場合も、葉を安定して保存できることが確認された。
Claims (15)
- 植物の葉への画像の転写方法であって、
(1)画像が描かれた、または、印刷された透明若しくは半透明の平版を準備し、
(2)(1)の平版を植物の葉に密着させ、そして、
(3)光源にさらされた部分が白色になるまで、青色光ではない光源に曝露する、
ことを含み、ヨウ素液を使用しない、前記転写方法。 - (3)の光源への曝露を、1時間~10日間行う、請求項1に記載の方法。
- (3)の光源への曝露を、1日~7日間行う、請求項1または2に記載の方法。
- (2)または(3)の工程において、葉の乾燥を防ぐための処置を行う、請求項1-3のいずれか1項に記載の方法。
- (2)の工程において、さらに、防水性シートまたは保水性シートを、葉に密着させることを含む、請求項4に記載の方法。
- 植物が、大きさが5cm2以上の葉を有するものである、請求項1-5のいずれか1項に記載の方法。
- 植物が、サトイモ科、イチョウ科、クワ科、マメ科、モクレン科、ブナ科、パパイア科、ラン科、ショウガ科、ハス科、トウダイグサ科、カキノキ科、キク科、バショウ科、ウコギ科、バラ科、キジカクシ科、トベラ科、バラ科、マタタビ科およびアオイ科からなる科から選択される植物である、請求項1-6のいずれか1項に記載の方法。
- 植物が、クワズイモ、イチョウ、イチジク、クズ、コブシ、クリ、パパイア、シラン、ミョウガ、ハス、ハマイヌビワ、シマグワ、アカメガシワ、ゲットウ、オオバギ、カキ、キク、バナナ、ヤツデ、ウメ、ギボウシ、トベラ、サクラ、アコウ、キウイ、サトイモ、ルドベキアおよびフヨウ、からなる群から選択される、請求項1-7のいずれか1項に記載の方法。
- 平版が、ビニール、ガラス、印刷用紙、プラスチック、塩化ビニール板、ゲル及びゼラチンからなる群から選択される、請求項1-8のいずれか1項に記載の方法。
- 画像を転写した葉の保存方法であって、
請求項1-9のいずれか1項に記載の方法により画像を転写した葉を、アルコール、防腐剤および水を含む液に浸漬し、次いで、余分な液剤を除き、さらに、密封処理を行う、ことを含む、保存方法。 - アルコールが多価アルコールである、請求項10に記載の保存方法。
- アルコールが、グルセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールおよびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項10に記載の保存方法。
- 防腐剤が、パラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、安息香酸、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらの組み合わせ、からなる群から選択される、請求項10-12のいずれか1項に記載の保存方法。
- 転写した葉の、アルコールおよび防腐剤を含む液への浸漬を、1日~10日間行う、請求項10-13のいずれか1項に記載の保存方法。
- 転写した葉の、アルコールおよび防腐剤を含む液への浸漬を、冷暗所で行う、請求項10-14のいずれか1項に記載の保存方法。
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