本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、発電工程を含み、前記発電工程は、太陽光発電を行い、前記電気分解工程において、前記発電工程により発電された電力を利用して前記電気分解を行う。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、第1の蓄電工程を含み、前記第1の蓄電工程は、前記電気分解工程において発生した水素を水素燃料電池に供給し、前記電気分解工程において、さらに、前記第1の蓄電工程により水素が供給された前記水素燃料電池の電力を利用して、前記電気分解を行う。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、第2の蓄電工程を含み、前記第2の蓄電工程は、前記太陽光発電により発電された電力を蓄電池に供給し、前記電気分解工程において、さらに、前記第2の蓄電工程により電力が供給された前記蓄電池の電力を利用して、前記電気分解を行う。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、切替工程を含み、前記切替工程は、前記電気分解工程において利用する電力の切替えを行い、前記切替えが、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力、前記蓄電池の電力からなる群から選択される1つまたは2~3つの組合せのいずれかへの切替えである。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方が、塩化カルシウムである。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記接触工程において、前記気体を前記混合液中に送入することにより、前記混合液と前記気体とを接触させる。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、濃度調整工程を含み、前記濃度調整工程は、前記混合液のpHを検出し、検出された前記pHに基づき、前記混合液における水酸化ナトリウムの濃度を0.2N以下に維持する。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記混合液における前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.05N以上である。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方が、塩化カルシウムであり、前記混合液における前記塩化カルシウムの濃度が、0.05mol/L以上である。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、前記混合液の温度が、70℃以上である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、さらに、太陽光発電装置を含み、前記電解室において、前記太陽光発電装置により発電された電力を利用して前記電気分解可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、さらに、水素燃料電池を含み、前記電解室において発生した水素を、前記水素燃料電池に供給可能であり、前記電解室において、さらに、前記水素燃料電池の電力を利用して、前記電気分解可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、さらに、蓄電池を含み、前記太陽光発電により発電された電力を前記蓄電池に供給可能であり、前記電解室において、さらに、前記蓄電池の電力を利用して、前記電気分解可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、さらに、切替部を含み、前記切替部は、前記電解室において利用する電力の切替えを行い、前記切替えが、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力、前記蓄電池の電力からなる群から選択される1つまたは2~3つの組合せのいずれかへの切替えである。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、前記気液混合手段は、前記反応室内に挿入され、挿入端部において複数の孔が設けられており、前記複数の孔から、前記反応室内の前記二酸化炭素固定剤中に、前記気体を放出可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、前記気液混合手段は、液体循環流路、およびポンプを含み、前記液体循環流路は、液体吸込端部および液体放出端部を含み、前記液体吸込端部は、前記電解室内に挿入されており、前記液体放出端部は、前記反応室内に挿入されており、前記ポンプにより、前記二酸化炭素固定剤を前記液体吸込端部から吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、前記液体放出端部から放出可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、前記液体循環流路が、さらに、気液混合部材を含み、前記気液混合部材は、前記液体循環流路を流れる液体に前記気体を混合可能である。
本発明の二酸化炭素の固定装置は、例えば、前記反応容器が、第1反応容器、および第2反応容器を含み、前記第1反応容器が、前記反応室を含み、前記第2反応容器が、前記電解室を含む。
本発明において、「二酸化炭素の固定(固定化ともいう。)」は、例えば、二酸化炭素を含む気体から、二酸化炭素を除去することにより、前記気体中の二酸化炭素濃度を低減させることをいう。
本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態には限定されない。なお、以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。また、各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用できる。さらに、各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。本明細書で使用する用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で用いることができる。
[実施形態1]
(二酸化炭素の固定方法)
本発明の二酸化炭素の固定方法は、接触工程、および電気分解工程を含み、前記接触工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)、および水酸化カリウム(KOH)の少なくとも一方を含み、さらに、第2族元素(アルカリ土類金属)の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を含む混合液と、二酸化炭素(CO2)を含む気体とを接触させ、前記電気分解工程は、前記接触後の前記混合液を電気分解することにより、電気分解後混合液とし、前記接触工程において、前記電気分解後混合液を、前記混合液として再利用する。本発明の二酸化炭素の固定方法において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
前記第2族元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムがあげられ、中でも、例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムがあげられる。前記第2族元素の塩化物は、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウムがあげられる。
前記2価の金属元素は、特に制限されず、例えば、亜鉛があげられる。前記2価の金属元素の塩化物は、例えば、塩化亜鉛があげられる。
以下の説明において、前記混合液が、水酸化ナトリウム(NaOH)、および水酸化カリウム(KOH)の少なくとも一方として、水酸化ナトリウムを含み、前記第2族元素(アルカリ土類金属)の塩化物として、塩化カルシウムを含む場合を例にあげて、説明を行う。ただし、本発明は、これには制限されない。
以下に、まず、前記接触工程について説明する。前記接触工程は、水酸化ナトリウム(NaOH)を含み、さらに、塩化カルシウム(CaCl2)を含む混合液と、二酸化炭素(CO2)を含む気体とを接触させる。前記接触工程において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
なお、本発明の二酸化炭素の固定方法において、後述するように、前記電気分解工程は、前記接触後の前記混合液を電気分解することにより、電気分解後混合液とする。そして、前記接触工程において、前記電気分解後混合液を、前記混合液として再利用する。
本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、前記接触工程を含むことにより、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムと、二酸化炭素とを反応させ、炭酸カルシウム(CaCO3)を生じさせることで、二酸化炭素を固定することができる。本発明によれば、例えば、固体の状態で、二酸化炭素を固定することができる。これにより、例えば、より安定性の高い状態で、二酸化炭素を固定することができる。また、例えば、取扱いが容易になる。
前記二酸化炭素を含む気体は、特に制限されず、例えば、燃焼排ガス、室内空気、および大気等があげられる。
前記二酸化炭素を含む気体における二酸化炭素の濃度は、特に制限されず、例えば、0~100%である。なお、後述するように、本発明によれば、低濃度の二酸化炭素であっても、固定することができる。また、100%の二酸化炭素のバブリングにより、前記混合液において、白色沈殿が形成されることから、本発明は、高濃度の二酸化炭素固定においても、効果を得ることができる。
前記二酸化炭素を含む気体の温度は、特に制限されず、例えば、0℃以下の低温、大気中の気温や室温の一般的な温度、100℃未満、および120~200℃の高温でもよい。なお、前記気体の温度は、水の蒸発を防ぐ観点から、低温であってもよい。ただし、本発明は、例えば、前記二酸化炭素を含む気体が高熱であっても、適用することができる。
前記二酸化炭素を含む気体は、例えば、二酸化炭素以外の物質を含んでいてもよい。前記二酸化炭素以外の物質は、特に制限されず、例えば、SOx、NOx、O2、ダスト等があげられる。なお、本発明において、前記混合液は、例えば、基本的に、アルカリ性であることから、前記混合液と酸性の前記物質等とにおいて、中和反応が起こると考えられる。ただし、本発明はこれには制限されない。
前記混合液は、前述のように、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む。前記混合液の作製方法は、特に制限されず、例えば、低濃度混合があげられる。前記低濃度は、例えば、前記混合前の水酸化ナトリウムの濃度として、5N未満があげられる。前記低濃度混合によれば、例えば、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の沈殿の形成を防ぐことができる。前記混合液の作製方法は、具体的には、例えば、0.1Nの水酸化ナトリウム溶液、および0.1mol/Lの塩化カルシウム溶液を、容器内にそれぞれ入れた後、混合することにより作製することができる。
前記混合液において、前記水酸化ナトリウムの濃度は、特に制限されず、例えば、0.01N以上、および0.05N以上、ならびに、0.2N以下、0.2N未満、および0.1N以下である。なお、前記濃度の単位「N」は、規定度を示し、水酸化ナトリウムの場合、0.01Nは、0.01mol/Lである。前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.01N以上、および0.05N以上であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。また、前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.2N未満、および0.1N以下であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。
なお、後述する実施例において示すように、前記水酸化ナトリウムの濃度が、0.2N以上では、前記接触において、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により、水酸化カルシウムの沈殿が生じることで、前記接触による炭酸カルシウムの合成量が減少すると考えられる。
このため、例えば、本発明の二酸化炭素の固定方法は、さらに、濃度調整工程を含み、前記濃度調整工程は、前記混合液のpHを検出し、検出された前記pHに基づき、前記混合液における水酸化ナトリウムの濃度を0.2N以下に維持してもよい。前記pHの検出は、既知のpH検出手段を用いて実施できる。前記濃度調整工程において、前記検出されたpHと水酸化ナトリウムの濃度との対応づけは、例えば、予め測定した値を参照して行うことができる。前記予め測定した値は、例えば、滴定曲線を用いて取得することができる。具体的には、一例として、実際に滴定を行ったところ、水酸化ナトリウムの濃度が0.15Nの場合、pH13.00であり、0.20Nの場合、pH13.17であり、0.25Nの場合、pH13.26であり、0.30Nの場合、pH13.32であった。したがって、前記滴定の結果に基づけば、前記濃度調整工程において、例えば、前記pHが、13.17以下である場合、水酸化ナトリウムの濃度が0.2N以下であると判断することができる。ただし、これには制限されない。前記混合液における水酸化ナトリウムの濃度の調整は、前記混合液に水酸化ナトリウム溶液、および蒸留水を投入する等により実施できる。前記水酸化ナトリウム溶液は、例えば、後述する、前記電気分解工程後の電気分解後混合液でもよい。
一方、このことは、言い換えると、本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、前記混合液において、高濃度の水酸化ナトリウムが含まれる場合でも、塩化カルシウムと前記高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により、水酸化カルシウムの沈殿が生じることで、前記混合液における水酸化ナトリウムの濃度を低下させることが可能であることを意味する。したがって、本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、例えば、高熱による、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムが発生した場合でも、その濃度を低下させることができ、有害な気体の発生を抑制することができる。
前記混合液において、前記塩化カルシウムの濃度は、特に制限されず、例えば、0.005mol/L以上、および0.05mol/L以上、ならびに、0.5mol/L以下、0.5mol/L未満、および0.1mol/L以下である。前記塩化カルシウムの濃度が、前記範囲内であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。
前記混合液の温度は、特に制限されず、例えば、30~100℃、70℃以上、70℃~80℃、70℃である。なお、本発明によれば、前述のように、例えば、高熱による、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムが発生した場合でも、その濃度を低下させることができる。このため、本発明は、例えば、前記混合液が高熱であっても、適用することができる。
前記混合液のpHは、特に制限されず、例えば、0.05Nの水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの塩化カルシウムとを含む前記混合液のpHは、約12である。なお、前記濃度調整工程を含む場合、前記pHは、前述の通りである。
前記接触工程において、前記混合液と、前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる方法は、特に制限されず、例えば、前記混合液中に前記気体を送入することにより接触させる、前記混合液を静置または前記混合液に流れを発生させた状態で接触させる、前記混合液を霧状にした状態で接触させる、前記気体を環流させた状態で接触させる等の方法があげられる。「前記混合液に流れを発生させた状態で接触させる」とは、例えば、前記混合液を振とうさせた状態で接触させてもよいし、容器内において、前記混合液を流すことにより接触させてもよい。前記混合液を流す場合、前記混合液を一方向に流してもよいし、環流させてもよい。また、後述するように、液体循環流路およびポンプを含む気液混合手段により接触させてもよい。
前記混合液中に前記気体を送入することにより、前記混合液と前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる場合、前記気体を「送入」するとは、例えば、「バブリング」するということもできる。前記バブリングの条件は、特に制限されず、例えば、10mLの試験管に、3mLの0.1Nの水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、二酸化炭素(小池工業社製)を用いて、10秒間(約20cm3)、バブリングをすることができる。なお、前記バブリングは、例えば、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させることができる。また、例えば、水槽生物用のバブリング装置(製品名:ブクブク、コトブキ工芸株式会社製)を用いることができる。また、例えば、バブリング装置(製品名:Micro bubbler(F-1056-002)、フロント工業株式会社製)を用いることができる。前記バブリングを行う時間は、例えば、形成された沈殿が、さらなる反応により消失しない範囲で、適宜設定することができ、例えば、5秒~60秒間、5秒~40秒間、5秒~30秒間、および1~2分間、ならびに、1.5時間、9時間、および12時間等とすることができる。
前記接触工程において、前記混合液中に前記気体を送入することにより、前記気体を、バブルにして前記混合液中に送入することができる。前記バブルのサイズ(直径)は、例えば、前記気体を送入する送入口の大きさに応じて決まる。例えば、前記気体を、多孔質構造体から送入する場合、前記バブルのサイズは、前記多孔質構造体の細孔の大きさに応じて決まる。
前記バブル(泡、気泡)のサイズ、および個数濃度等は、適宜設定でき、特に制限されない。前記バブルのサイズは、例えば、センチメートル、ミリメートル、マイクロメートル、ナノメートルのオーダーにすることができる。前記バブルは、例えば、ファインバブルを含む。前記ファインバブルは、球相当直径が100μm以下のバブルである。前記ファインバブルは、その内訳として、直径が1~100μmのバブルであるマイクロバブル、および、直径が1μm以下のバブルであるウルトラファインバブル(ナノバブルともいう。)を含む。前記バブルを、ファインバブル等の小さいサイズに設定することにより、例えば、バブルの表面積をより大きくすることができ、前記接触工程における反応を促進することができる。前記バブルを、ファインバブルより大きいサイズに設定することにより、例えば、前記気体の送入に必要なガス圧を低減することができる。
前記バブルのサイズは、例えば、一般的な方法により測定できる。具体的には、例えば、前記バブルおよび所定のスケールを含む写真を撮影し、前記写真における前記バブルのサイズと前記スケールとを比較することにより、前記バブルのサイズを測定することができる。また、レーザ回折・散乱法、動的光散乱法、粒子軌跡解析法、共振式質量測定法、電気的検知帯法、動的画像解析法、および遮光法等の、粒子径分布測定手法を利用することができる。
前記接触工程において、前記混合液を静置させた状態で、前記混合液と前記気体とを接触させる場合、前記接触させる条件は、特に制限されず、例えば、容積2Lの一般的な形状のペットボトル(市販のもの)内を大気と平衡にした後、前記ペットボトルに、10mLの前記混合液を入れ、前記ペットボトルを、底面が下になるようにして立てて静置することができる。前記接触時間は、例えば、前記接触後、15分、30分、および60分、ならびにオーバーナイトでの接触とすることができる。
前記接触工程において、「前記混合液に流れを発生させた状態で、前記混合液と前記気体とを接触させる」とは、例えば、前記混合液を振とうさせた状態で、前記混合液と前記気体とを接触させてもよいし、容器内において、前記混合液を流すことにより、前記混合液と前記気体とを接触させてもよいし、容器内の空間に、前記容器の上部(天井等)等から、前記混合液を添加する(例えば、シャワー状または霧状に添加する)ことにより、前記混合液と前記気体とを接触させてもよい。
前記接触工程において、前記混合液を振とうさせた状態で、前記混合液と前記気体とを接触させる場合、前記振とうの条件は、特に制限されず、例えば、10mLの前記混合液を入れた八角柱プラスチックボトル(市販のもの)を、シェイカー(BR-21UM、TAITEK製)を用いて、120rpmの条件で、振とうすることができる。また、前記振とうの条件は、例えば、50mLの前記混合液を入れた容積2Lの容器を、30秒間の振とうを1回として、1~4回、成人男性の手で、激しく振とうすることができる。前記1~4回の振とうは、例えば、それぞれ、前記接触直後、30秒後、2分後、5分後、4時間後に行うことができる。
前記接触工程において、前記混合液を霧状にした状態で、前記混合液と前記気体とを接触させる場合、前記接触させる条件は、特に制限されず、例えば、前記気体を入れた容積2Lの容器に、約4mLの前記混合液を、噴霧器(市販のもの)を用いて、5秒間隔で10回噴霧することができる。前記霧状の前記混合液は、例えば、容器の上部から、前記容器内の空間に、シャワー状または霧状に添加してもよい。
前記接触工程は、例えば、第1の接触工程および第2の接触工程を含み、前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加してもよい。
前記第1の接触工程は、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させる。前記第1の接触工程により、水酸化ナトリウムと二酸化炭素との反応により、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)や炭酸ナトリウム(Na2CO3)が生じ、二酸化炭素を固定(吸収)することができる。
前記第1の接触工程において、塩化カルシウムは未添加である。このため、本発明によれば、前記第1の接触工程において、例えば、高濃度(例えば、0.2N以上)の水酸化ナトリウムを用いた場合でも、塩化カルシウムとの反応により水酸化カルシウムが生じない。このため、続く前記第2の接触工程において、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じることを防ぐことができ、より多くの二酸化炭素を固定できる。
前記第1の接触工程によれば、例えば、水酸化ナトリウムの濃度を、0.2N以下、0.2N未満、および0.1N以下にすることができる。これにより、例えば、前記第2の接触工程において、水酸化カルシウムの形成を抑制でき、より多くの二酸化炭素を固定できる。
前記第1の接触工程において、前記溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させるための接触手段は、特に制限されず、前述の、前記混合液と、前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる方法についての記載を援用することができる。
前記第2の接触工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加する。前記第2の接触工程により、前記第1の接触工程により生成した炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムと塩化カルシウムとを反応させることにより、炭酸カルシウムを生じさせ、二酸化炭素を固定することができる。
前記第2の接触工程において、前記二酸化炭素を含む気体との接触を終了させてもよい。また、前記二酸化炭素を含む気体と接触させながら、前記第2の接触工程を行ってもよい。
前記第2の接触工程において、前記添加後の混合液における、前記塩化カルシウムの濃度は、特に制限されず、例えば、0.005mol/L以上、および0.05mol/L以上、ならびに、0.5mol/L以下、0.5mol/L未満、および0.1mol/L以下である。前記塩化カルシウムの濃度が、前記範囲内であることにより、例えば、より多くの二酸化炭素を固定できる。
前記第2の接触工程において、前記添加後の混合液のpHは、特に制限されず、例えば、0.05Nの水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの塩化カルシウムとを含む前記混合液のpHは、約12である。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、希釈工程を含み、前記希釈工程は、前記第1の接触工程後、前記溶液を希釈してもよい。前記希釈する方法は、特に制限されず、例えば、蒸留水を添加することができる。前記希釈の割合は、適宜設定でき、例えば、1/10に希釈することができる。前記希釈工程により、例えば、水酸化ナトリウムの濃度を、0.2N以下、0.2N未満、および0.1N以下にすることができる。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、温度保持工程を含み、前記温度保持工程は、前記混合液の温度を高温となるように保持可能である。前記高温は、例えば、70~100℃、70℃~80℃、70℃以上、70℃である。前記温度保持工程は、一般的な加温装置等により実施できる。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、冷却工程を含み、前記冷却工程は、前記接触工程後、前記混合液を冷却してもよい。前記冷却工程において、例えば、高温の前記混合液を、5℃~常温に冷却することができる。前記高温は、例えば、前述の通りである。前記冷却工程は、一般的な冷却装置等により実施できる。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、生成物回収工程を含み、前記生成物回収工程は、前記接触工程後、前記混合液中の反応生成物を回収してもよい。前記反応生成物は、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)である。前記生成物回収工程は、例えば、固体の炭酸カルシウムを回収することができる。前記生成物回収工程は、例えば、フィルター等により、濾過してもよい。前記フィルターは、特に制限されず、例えば、無漂白コーヒーフィルター(カナエ紙工株式会社製)があげられる。
なお、本発明者は、前記接触工程により生じた前記反応生成物が、反応容器や前記気液混合手段等に、固着する傾向があることを見出した。このため、前記生成物回収工程は、前記固着した前記反応生成物を混合液中に混在化させる混在化工程、および前記混在化させた反応生成物を分離する分離工程を含んでもよい。前記混在化工程は、例えば、前記反応生成物をかき取ってもよいし、前記反応生成物を薬剤(例えば、塩酸(HCl))等により可溶化してもよい。
前記接触工程において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させるための接触手段は、後述する、固定化二酸化炭素の製造装置の記載を援用することができる。
つぎに、前記電気分解工程について説明する。前記電気分解工程は、前記接触後の前記混合液を電気分解することにより、電気分解後混合液とする。前記電気分解工程において、その他の構成及び条件は、特に制限されない。
本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、前記電気分解工程を含むことにより、前記接触工程において生じた塩化ナトリウム(NaCl)を電気分解し、水酸化ナトリウム(NaOH)を生成することができる。そして、水酸化ナトリウムを含む前記電気分解後混合液を、前記接触工程において再利用することにより、循環型の二酸化炭素の固定方法とすることができる。
前記電気分解工程は、前記接触工程において生じた塩化ナトリウム(NaCl)を電気分解できればよく、条件等は、特に制限されず、例えば、後述する実施例の記載を参照することができる。前記電気分解工程は、前記混合液に電圧をかけることで、陰極で還元反応、陽極で酸化反応を起こし、前記混合液中の塩化ナトリウムを化学分解することができる。そして、陽極付近において塩素(Cl2)が生じ、陰極付近において水素(H2)が生じ、前記電気分解後混合液中には水酸化ナトリウムが生成される。
前記電気分解工程は、例えば、太陽光発電により発電された電力を利用して前記電気分解を行ってもよい。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、さらに、発電工程を含み、前記発電工程は、太陽光発電を行ってもよい。そして、前記電気分解工程において、前記発電工程により発電された電力を利用して前記電気分解を行ってもよい。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、さらに、第1の蓄電工程を含み、前記第1の蓄電工程は、前記電気分解工程において発生した水素(H2)を水素燃料電池に供給してもよい。そして、前記電気分解工程において、前記第1の蓄電工程により水素が供給された前記水素燃料電池の電力を利用して、前記電気分解を行ってもよい。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、さらに、第2の蓄電工程を含み、前記第2の蓄電工程は、前記太陽光発電により発電された電力を蓄電池に供給してもよい。そして、前記電気分解工程において、さらに、前記第2の蓄電工程により電力が供給された前記蓄電池の電力を利用して、前記電気分解を行ってもよい。「蓄電池」は、例えば、「二次電池」ともいう。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、さらに、切替工程を含み、前記切替工程は、前記電気分解工程において利用する電力の切替えを行ってもよい。前記切替えは、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力、前記蓄電池の電力からなる群から選択される1つまたは2~3つの組合せのいずれかへの切替えである。前記切替えは、前記太陽光発電により発電された電力への切替え、前記水素燃料電池の電力への切替え、前記蓄電池の電力への切替え、前記太陽光発電により発電された電力および前記水素燃料電池の電力への切替え、前記水素燃料電池の電力および前記蓄電池の電力への切替え、前記太陽光発電により発電された電力および前記蓄電池の電力への切替え、ならびに、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力および前記蓄電池の電力への切替え、のいずれかへの切替えである。
前記切替工程は、所定の条件に基づき、前記切替えを行うことができる。前記所定の条件は、例えば、照度、時間帯、および前記太陽光発電により発電された電力量等があげられる。これにより、例えば、照度が低い場合、時間帯が夜間である場合、および前記太陽光発電により発電された電力量が少ない場合等に、前記電気分解工程において、前記水素燃料電池の電力、および前記蓄電池の電力を利用して、前記電気分解を行うことができる。
太陽光発電により発電された電力、水素燃料電池に蓄電された電力、および前記蓄電池の電力は、例えば、前記電気分解以外の電力として用いられてもよい。具体的には、例えば、前記接触工程における前記気体の送入(バブリング)、ポンプの駆動、前記混合液の振とう、およびフィルターによる濾過等に用いられてもよい。また、後述する制御部による、二酸化炭素の固定装置の制御等に用いられてもよい。
実施形態2の説明にて後述するように、本発明の二酸化炭素の固定方法において、太陽光発電により発電された電力、および水素燃料電池に蓄電された電力を利用することにより、持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals)(2015年9月の国連サミットで採択された目標)を達成するための、二酸化炭素の総量削減に向けた国際的な取り組みにおいて、より優れた効果を発揮することができる。
前記電気分解工程において、前記接触後の前記混合液を電気分解することにより、電気分解後混合液とする電気分解手段は、後述する、二酸化炭素の固定装置の記載を援用することができる。なお、後述する、二酸化炭素の固定装置において、電解室が、隔壁により、陽極室および陰極室に分けられている場合を示す。ただし、これには制限されず、前記電気分解手段は、隔壁(隔膜)を用いない形態でもよい。具体的には、例えば、人体への影響を考慮したうえで、隔膜を用いずに、陰極に水銀を用いることも可能である。
そして、本発明の二酸化炭素の固定方法は、前述のように、前記接触工程において、前記電気分解後混合液を、前記混合液として再利用する。
前記接触工程において、前記電気分解後混合液を、前記混合液として再利用するための構成は、特に制限されず、後述する、固定化二酸化炭素の製造装置の記載を参照することができる。
前記接触工程、および、前記電気分解工程は、例えば、まず、前記接触工程を実施し、つぎに、前記電気分解工程を実施し、その後、前記接触工程において、前記電気分解後混合液を再利用してもよい。この場合、例えば、まず、1回目の前記接触工程において、水酸化ナトリウムを含み、さらに、塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させる。つぎに、前記電気分解工程において、前記接触後の前記混合液を電気分解することにより、電気分解後混合液とする。その後、2回目の前記接触工程において、前記電気分解後混合液を、前記混合液として再利用する。
本発明の二酸化炭素の固定方法は、例えば、さらに、前記接触工程の前に、塩化ナトリウム溶液を電気分解することにより、水酸化ナトリウムを生成する電気分解工程を含んでもよい。この場合、例えば、まず、前記塩化ナトリウムを電気分解する工程により、水酸化ナトリウムを生成し、その後、前記接触工程、および前記電気分解工程を、前述のようにして行うことができる。この場合、本発明の二酸化炭素の固定方法によれば、水酸化ナトリウムを用意することなく、二酸化炭素を固定し、炭酸カルシウム、水素、および塩素にすることができる。
前記各工程は、前記順番で行ってもよいし、並行して行ってもよい。前記各工程は、例えば、繰り返し行うことができる。
前記各工程において、例えば、次の工程に進むか否かの判定を行ってもよい。前記判定は、特に制限されず、例えば、前記二酸化炭素固定剤や気体中における、所定の物質(例えば、水酸化ナトリウム、二酸化炭素、水素、塩素)の濃度、pH、濁度、電圧、および水圧等の測定値、ならびに経過時間等に基づき、行うことができる。前記判定は、コンピュータにより行ってもよいし、作業者によるものでもよい。次の工程に進む場合、例えば、後述する、ポンプ53、70および81、流量調整手段54、64および82、陽極121Aおよび陰極121B、二酸化炭素固定剤投入手段20A~C、ならびに気体送入手段30等を、コンピュータおよび作業者等により、操作することができる。
(固定化二酸化炭素の製造方法)
本発明の固定化二酸化炭素の製造方法は、前述のように、二酸化炭素を固定化する固定化工程を含み、前記固定化工程が、本発明の二酸化炭素の固定方法により実施される。本発明の固定化二酸化炭素の製造方法は、前記固定化工程を含むことが特徴であって、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の二酸化炭素の固定方法は、前述の通りである。前記固定化工程の条件等は、特に制限されず、例えば、本発明の二酸化炭素の固定方法における記載と同様である。
[実施形態2]
(二酸化炭素の固定装置)
図1は、本実施形態の二酸化炭素の固定装置1を横方向から見た場合の一例を示す模式断面図である。なお、図1において、二酸化炭素の固定装置1の内部を透視的に図示している。図1に示すように、二酸化炭素の固定装置1は、反応容器10、二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20B、ならびに気液混合手段として、気体送入手段30を含む。また、二酸化炭素の固定装置1は、気体取出部40A~C、および液体取出部50を含む。図1において、反応容器10に、後述する二酸化炭素固定剤が収容されている。また、気体送入手段30から、反応室11内の前記二酸化炭素固定剤中に、二酸化炭素を含む気体を送入している。さらに、電解室12において、前記二酸化炭素固定剤の電気分解を行っており、これにより、陽極121A、および陰極121Bから、それぞれ、気体の泡が発生している。
図1に示すように、反応容器10は、反応室11、および電解室12を含む。電解室12は、陽極室12A、および陰極室12Bを含む。本実施形態において、陽極室12A、および陰極室12Bは、隔壁13Aおよび隔壁13Bにより分けられており、隔壁13Aと隔壁13Bとの間が反応室11になっている。また、陽極室12A、反応室11、および陰極室12Bは、隔壁13Aおよび隔壁13Bの非設置部分において、接続している。これにより、反応室11から陽極室12Aおよび陰極室12Bに、ならびに、陽極室12Aおよび陰極室12Bから反応室11に、それぞれ送液可能である。なお、本実施形態の二酸化炭素の固定装置1において、電解室12が、反応室11を含むということもできる。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置1は、前記構成であることにより、反応室11において、前記二酸化炭素固定剤と二酸化炭素とを反応させ、反応室11から電解室12に、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を送液可能であり、電解室12において、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を電気分解し、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、電解室12から反応室11に送液可能であり、反応室11において、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、前記二酸化炭素固定剤として再利用可能である。
反応容器10は、反応室11において二酸化炭素固定剤を収容可能であり、電解室12において前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を電気分解可能であればよく、特に制限されない。反応容器10の材質は、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス等があげられる。反応容器10の材質、容量、大きさ、高さ、および形状等は、適宜設定できる。
前記二酸化炭素固定剤は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、および水酸化カリウム(KOH)の少なくとも一方を含む液体である。前記水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムの少なくとも一方は、例えば、水酸化ナトリウムである。また、前記二酸化炭素固定剤は、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、および塩化カリウム(KCl)の少なくとも一方を含む液体でもよい。この場合、電気分解により、それぞれ、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムを生成できる。
前記二酸化炭素固定剤は、第1固定剤として、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムの少なくとも一方を含み、さらに、第2固定剤として、第2族元素(アルカリ土類金属)の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方を含んでもよい。前記第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物の少なくとも一方は、例えば、塩化カルシウム(CaCl2)である。
電解室12は、陽極室12A、および陰極室12Bを含む。陽極室12A、および陰極室12Bは、それぞれ、陽極121A、および陰極121Bが設けられている。陽極121A、および陰極121Bは、特に制限されず、例えば、白金コーテッドチタン網目電極(田中金属社製)を用いることができる。陽極121A、および陰極121Bは、それぞれ、導線により、電源装置(図示せず)に接続されている。前記電源装置は、後述する、太陽光発電装置100があげられる。また、例えば、整流器YG-1502D+(YAOGONG社製)、および直流電源装置、STP3010H、深セン天源電源株式会社製等を用いることができる。
電解室12は、例えば、太陽光発電により発電された電力を利用して前記電気分解可能であってもよい。
二酸化炭素の固定装置1は、図48に示すように、さらに、太陽光発電装置100を含んでもよい。そして、電解室12において、太陽光発電装置100により発電された電力を利用して前記電気分解可能であってもよい。太陽光発電装置100は、特に制限されず、既知の太陽光発電装置を用いることができる。
二酸化炭素の固定装置1は、図49(A)および(B)に示すように、さらに、水素燃料電池200を含んでもよい。そして、電解室12において発生した水素(H2)を、水素燃料電池200に供給可能であり、電解室12において、水素燃料電池200の電力を利用して、前記電気分解可能であってもよい。水素燃料電池200は、特に制限されず、既知の水素燃料電池を用いることができる。
二酸化炭素の固定装置1が、太陽光発電装置100および水素燃料電池200を含むことにより、例えば、図49(A)に示すように、日中は、太陽光発電装置100により発電された電力を利用して、電解室12において前記電気分解を行い、且つ、前記電気分解により発生した水素を水素燃料電池200に供給し、図49(B)に示すように、夜間や太陽光が十分でない場合は、水素燃料電池200に蓄電された電力を利用して、電解室12において前記電気分解を行うことができる。
二酸化炭素の固定装置1は、図50(A)および(B)に示すように、さらに、蓄電池300を含んでもよい。そして、図50(A)に示すように、前記太陽光発電により発電された電力を蓄電池300に供給可能であり、図50(B)に示すように、電解室12において、さらに、蓄電池300の電力を利用して、前記電気分解可能であってもよい。蓄電池300は、特に制限されず、既知の蓄電池を用いることができる。
二酸化炭素の固定装置1が、太陽光発電装置100および蓄電池300を含むことにより、例えば、図50(A)に示すように、日中は、太陽光発電装置100により発電された電力を利用して、電解室12において前記電気分解を行い、且つ、前記太陽光発電により発電された電力を蓄電池300に供給し、図50(B)に示すように、夜間や太陽光が十分でない場合は、蓄電池300に蓄電された電力を利用して、電解室12において前記電気分解を行うことができる。
二酸化炭素の固定装置1は、さらに、切替部(図示せず)を含んでもよい。後述する制御部が、例えば、前記切替部として機能することができる。そして、前記切替部は、電解室12において利用する電力の切替えを行ってもよい。前記切替えは、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力、前記蓄電池の電力からなる群から選択される1つまたは2~3つの組合せのいずれかへの切替えである。前記切替えは、前記太陽光発電により発電された電力への切替え、前記水素燃料電池の電力への切替え、前記蓄電池の電力への切替え、前記太陽光発電により発電された電力および前記水素燃料電池の電力への切替え、前記水素燃料電池の電力および前記蓄電池の電力への切替え、前記太陽光発電により発電された電力および前記蓄電池の電力への切替え、ならびに、前記太陽光発電により発電された電力、前記水素燃料電池の電力および前記蓄電池の電力への切替え、のいずれかへの切替えである。前記切替部は、例えば、図49(A)および(B)、ならびに図50(A)および(B)のいずれの経路により電力を供給するかを切替えることができる。
前記切替部は、所定の条件に基づき、前記切替えを行うことができる。前記所定の条件は、例えば、照度、時間帯、および前記太陽光発電により発電された電力量等があげられる。
太陽光発電装置100、水素燃料電池200、蓄電池300からの送電は、それぞれ、既知の電線等の手段により行うことができる。太陽光発電装置100、水素燃料電池200、蓄電池300から、それぞれ、例えば、反応容器10の電極室12内に設けられた陽極121A、および陰極121Bに、電力が供給される。
二酸化炭素の固定装置1は、例えば、太陽光発電装置100と、反応容器10、二酸化炭素固定剤投入手段20、および気体送入手段30を含む装置と、水素燃料電池200と、蓄電池300とが、電気的に接続可能なシステムでもよいし、前記各部を含む、1つの二酸化炭素の固定装置でもよい。
二酸化炭素の固定装置1は、例えば、さらに、二酸化炭素の固定装置1の全体の制御を担う制御部として、中央演算装置(CPU等)を含んでもよい。
太陽光発電により発電された電力、水素燃料電池に蓄電された電力、および蓄電池に蓄電された電力は、例えば、前記電気分解以外の電力として用いられてもよい。具体的には、例えば、気体送入手段30からの前記気体の送入(バブリング)、後述するポンプ70の駆動、前記混合液の振とう、フィルター51による濾過、および、前記制御部による、二酸化炭素の固定装置の制御等に用いられてもよい。
二酸化炭素の固定装置1が、太陽光発電により発電された電力を利用することにより、例えば、二酸化炭素の排出を伴う電力を使用せずに二酸化炭素の固定を行うことができるため、より効果的に二酸化炭素の低減を図ることができる。また、送電設備の無い場所であっても、二酸化炭素の固定を行うことができる。
さらに、二酸化炭素の固定装置1が、太陽光発電により発電された電力、および水素燃料電池に蓄電された電力を利用することにより、前記太陽光発電により発電された電力を利用することによる効果に加えて、さらに、例えば、日中、太陽光発電装置100により過剰に生産された電力についても、ピークカットにより無駄にすることなく、蓄電することができ、また、夜間等においても、二酸化炭素の固定を行うことができる。
このように、二酸化炭素の固定装置1が、太陽光発電により発電された電力、および水素燃料電池に蓄電された電力を利用することにより、持続可能な開発目標(SDGs、Sustainable Development Goals)(2015年9月の国連サミットで採択された目標)を達成するための、二酸化炭素の総量削減に向けた国際的な取り組みにおいて、より優れた効果を発揮することができる。
隔壁13Aおよび隔壁13Bは、特に制限されず、例えば、プラスチック、セラミックス、およびガラス等があげられる。なお、本実施形態において、前述のように、隔壁13Aおよび隔壁13Bは、非設置部分があり、前記非設置部分において、陽極室12A、反応室11、および陰極室12Bが接続している。ただし、これには制限されず、隔壁13Aおよび隔壁13Bをイオン交換膜により形成する場合等においては、前記非設置部分を設けなくてもよい。
二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは、反応容器10に、前記二酸化炭素固定剤を投入可能である。二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは、パイプ、ホース等でもよい。また、二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは、反応容器10の開口であり、前記開口から、例えば、作業者等により、前記二酸化炭素固定剤を投入可能でもよい。
本実施形態において、二酸化炭素固定剤投入手段20Aは、陽極室12Aの上部に設けられ、二酸化炭素固定剤投入手段20Bは、陽極室12Aの下部に設けられている。ただし、これらには制限されない。また、二酸化炭素の固定装置1は、1つの二酸化炭素固定剤投入手段20を含んでもよい。
また、本実施形態において、二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは、陽極室12A側に設けられている。ただし、これには制限されず、例えば、二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは陰極室12B側に設けられていてもよい。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置1において、一例として、二酸化炭素固定剤投入手段20Aから塩化ナトリウムを投入し、二酸化炭素固定剤投入手段20Bから塩化カルシウムを投入することができる。ただし、これには制限されず、二酸化炭素固定剤投入手段20Aおよび20Bは、前述の二酸化炭素固定剤の少なくともいずれかを投入することができればよい。また、後述するように、蒸留水等の水を投入可能でもよい。
前述のように、本実施形態の二酸化炭素の固定装置1は、前記気液混合手段として、気体送入手段30を含む。気体送入手段30は、図1に示すように、反応室11内に挿入され、挿入端部31において複数の孔が設けられており、前記複数の孔から、反応室11内の前記二酸化炭素固定剤中に、二酸化炭素を含む気体を送入可能である。これにより、前記二酸化炭素固定剤に、前記気体を混合することができる。
気体送入手段30の材質、長さ、太さ、および形状等は、適宜設定できる。気体送入手段30は、例えば、パイプ、ホース等の管状構造があげられる。
挿入端部31は、例えば、プラスチック、セラミックス、金属、ガラス、および多孔質材料により形成できる。前記多孔質材料としては、例えば、エアストーンがあげられる。前記複数の孔の個数、大きさ、および形状は、特に制限されず、所望の反応速度、および前記気体のガス圧等に応じて、適宜設定できる。
本実施形態において、挿入端部31は、反応室11の下部に設けられている。前記「下部」は、前記液面よりも下であり、例えば、第1反応容器10内の空間の下半分の位置等があげられる。挿入端部31が、例えば、より下部に設けられることで、挿入端部31と液面との距離がより大きくなることで、挿入端部31から送入された前記気体が液面に到達するまでの距離がより長くなり、反応量を増やすことができる。
挿入端部31は、例えば、撥水剤、および電気的に陰性の材料の少なくとも一方によりコーティングされている。前記撥水剤は、防水剤ということもできる。前記撥水剤は、炭酸イオン(CO3
2-)を嫌う性質がある。前記電気的に陰性の材料は、例えば、マイナスチャージしたイオン交換樹脂があげられる。挿入端部31の前記コーティングは、例えば、フッ素樹脂系防水スプレー(製品名 ロックタイト、品番DBS-422、ヘンケルジャパン株式会社製)を用いて、挿入端部31に対して数回スプレーし、30分ほど放置することができる。前記コーティングにより、挿入端部31付近に反応生成物が固着することを防ぐことができ、前記反応生成物の固着による反応の抑制を防ぐことができる。なお、前記反応生成物の固着による反応の抑制は、二酸化炭素を含む気体と、塩化カルシウムを含まない水酸化ナトリウム溶液とを接触させる場合には、問題とはならない。一方、溶液中に水酸化ナトリウムと塩化カルシウムが共存する状態では、二酸化炭素を含む気体と前記溶液との接触により、二酸化炭素と水酸化物イオン(OH-)とが反応し、これにより生じた炭酸イオン(CO3
2-)がさらにカルシウムイオン(Ca2+)と反応することにより、炭酸カルシウムが生じる。そして、これらの反応が速い反応であることから、挿入端部31付近に前記反応生成物が固着すると考えられる。このような、前記反応生成物の固着は、本発明者が独自に見出した問題である。
前記気液混合手段は、反応室11に収容された前記二酸化炭素固定剤に、二酸化炭素を含む気体を混合可能であればよく、特に制限されない。前記気液混合手段のその他の例については、後述する。
気体取出部40A~Cは、それぞれ、陽極室12A、反応室11、および陰極室12Bから気体を取出すことができる。気体取出部40A~Cは、パイプ、ホース等でもよいし、反応容器10の開口でもよい。陽極室12A、および陰極室12Bの気体取出部40AおよびBからは、例えば、それぞれ、塩素(Cl2)、および水素(H2)を取出すことができる。反応室11の気体取出部40Cからは、例えば、前記二酸化炭素固定剤との前記接触により、二酸化炭素が除去された前記二酸化炭素を含む気体が、排出される。
液体取出部50は、反応容器10に含まれる反応後の前記二酸化炭素固定剤、および反応生成物等を取出すことができる。液体取出部50は、図1に示すように、反応容器10の底部における傾斜面であり、前記傾斜面の最下部に、パイプ、ホース等が接続されている。ただし、これには制限されず、液体取出部50は、前記二酸化炭素固定剤、および反応生成物等を取出すことができればよい。前記生成物は、例えば、前述のように、炭酸カルシウム(CaCO3)、および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)があげられる。
本実施形態において、液体取出部50は、フィルター51を含む。フィルター51は、例えば、フィルタープレス方式と呼ばれる、濾布を積層させて圧力を掛けて濾す装置、および、濾過器の中に濾布またはカートリッジを入れて濾す装置等でもよい。フィルター51は、例えば、1μm以上、および1μmの濾過度のものを用いることができる。フィルター51は、具体的には、例えば、無漂白コーヒーフィルター(カナエ紙工株式会社製)があげられる。炭酸カルシウムは、前述のように、固体であることから、例えば、液体取出部50がフィルター51を含むことで、固体の前記反応生成物を前記二酸化炭素固定剤から分離して取得することができる。
(変形例1)
本変形例の二酸化炭素の固定装置1は、図2に示すように、前記気液混合手段として、液体循環流路60、およびポンプ70を含む。液体循環流路60は、液体吸込端部61および液体放出端部62を含み、液体吸込端部61は、陰極室12Bに接続されており、液体放出端部62は、反応室11内に挿入されており、ポンプ70により、前記二酸化炭素固定剤を液体吸込端部61から吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、液体放出端部62から放出可能である。
液体循環流路60は、特に制限されず、例えば、パイプ、ホース等があげられる。
本変形例において、液体循環流路60は、さらに、気液混合部材として、アスピレーター63を含み、アスピレーター63により、液体循環流路60を流れる液体に、二酸化炭素を含む気体を混合可能である。なお、本変形例において、アスピレーター63が、液体放出端部62を兼ねている。アスピレーター63は、液体の噴流を利用して、前記液体に、前記気体を巻き込むことができる。アスピレーター63は、例えば、前記気体を取込むためのホースを取付けたものでもよい。アスピレーター63は、具体的には、例えば、アスピレーター(水流ポンプ)金属製(品番1-689-02、アズワン社製)、およびアスピレーター(水流ポンプ)金属製(品番1-689-04、アズワン社製)等があげられる。前記気液混合部材は、特に制限されず、例えば、ミキサー等でもよい。図2において、アスピレーター63に接続したホースにより、外部から、二酸化炭素を含む気体を取込むことができる。そして、アスピレーター63により、前記取込んだ気体を、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤に混合することができる。
本変形例において、液体循環流路60は、流量調整手段64を含む。流量調整手段64は、特に制限されず、例えば、コック、バルブ等があげられる。
本変形例において、液体吸込端部61は、陰極室12B側に設けられている。ただし、これには制限されず、例えば、液体吸込端部61は、陽極室12A側に設けられていてもよい。
液体吸込端部61は、例えば、濾過手段を含んでもよい。前記濾過手段は、前記二酸化炭素固定剤に含まれる固体成分を除去可能である。前記濾過手段は、前記二酸化炭素固定剤に含まれる固体成分を除去可能であればよく、特に制限されない。前記濾過手段は、例えば、液体循環流路60のパイプの径等に合わせて、市販のストレーナー等を適宜使用することができる。これにより、例えば、比較的大きな浮遊物や固化した沈殿物等の液体循環流路60への流入を防止し、ポンプ70の故障(インペラーの破損等)を防止することができる。
前述のように、本変形例において、アスピレーター63が、液体放出端部62を兼ねている。ただし、これには制限されず、アスピレーター63が、液体循環流路60の途中に設けられていてもよい。この場合、液体放出端部62は、例えば、プラスチック、セラミックス、金属、ガラス、および多孔質材料により形成できる。また、液体循環流路60の端部でもよい。
液体放出端部62は、例えば、反応室11の上部から、反応室11内に、シャワー状または霧状に前記二酸化炭素固定剤を放出してもよい。前記シャワー状または霧状に放出する構成としては、一般的なスプレー等を用いることができる。
本変形例において、液体放出端部62は、反応室11の上部に設けられている。前記「上部」は、前記液面よりも上であり、例えば、第1反応容器10内の空間の上半分の位置等があげられる。ただし、これには制限されず、例えば、液体放出端部62が、反応室11の下部に設けられ、前記吸込んだ液体を、反応室11に収容された前記二酸化炭素固定剤中に、放出可能でもよい。
液体放出端部62は、例えば、複数の孔が設けられており、前記複数の孔から、反応室11内の前記二酸化炭素固定剤中に、前記二酸化炭素固定剤を放出可能でもよい。前記複数の孔の個数、大きさ、および形状は、特に制限されず、所望の反応速度、および前記放出される液体の圧力等に応じて、適宜設定できる。
また、液体放出端部62は、例えば、反応室11に収容された前記二酸化炭素固定剤中に、前記気体を水平方向に噴射可能でもよい。これにより、例えば、前記噴射された二酸化炭素固定剤と反応室11内の前記二酸化炭素固定剤との接触時間をより長くすることができる。
ポンプ70は、例えば、液体循環流路60を流れる液体に圧力を加えることができる。ポンプ70は、特に制限されず、一般的なものを使用することができる。
なお、本変形例において、液体循環流路60は、アスピレーター63を含まなくてもよい。この場合、例えば、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、液体放出端部62から、反応室11内に収容された前記二酸化炭素固定剤の液面に勢いよく噴出させることで、前記噴出された前記二酸化炭素固定剤に、第1反応容器10内に存在する前記気体が巻き込まれるため、前記二酸化炭素固定剤と前記気体とを混合することができる。
前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を勢いよく噴出するための構成は、上記液体放出端部62の構成に代えて、または加えて、例えば、ポンプ70により加える圧力を高くする、液体放出端部62の噴出口の大きさを小さくする等により、適宜設定することができる。
また、この場合、二酸化炭素の固定装置1は、第1反応容器10内に前記気体を取入れるための気体取入手段を含んでもよい。前記気体取入手段は、第1反応容器10に設けられた開口でもよいし、パイプ、ホース等でもよい。前記気体取入手段は、例えば、前記気体を反応室11内に取入れることができる。
(変形例2)
本変形例の二酸化炭素の固定装置1は、図3(A)に示すように、液体取出部50が、さらに、液体放出部52、ポンプ53、流量調整手段54を含む。液体放出部52は、反応室11内に挿入されており、ポンプ53により、前記二酸化炭素固定剤を液体取出部50から吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、液体放出部52から放出可能である。
液体放出部52は、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を放出可能であればよく、特に制限されない。液体放出部52は、例えば、変形例1における、液体放出端部62の記載を参照することができる。
ポンプ53、および流量調整手段54は、それぞれ、例えば、変形例1における、ポンプ70、および流量調整手段64の記載を参照することができる。
なお、本変形例の二酸化炭素の固定装置1は、図3(B)に示すように、液体取出部50が、前記気液混合手段を兼ねてもよい。図3(B)において、二酸化炭素の固定装置1は、変形例1における前記気液混合手段である液体循環流路60に代えて、液体取出部50を含み、変形例1における液体放出端部62に代えて、液体放出部52を含む。
本変形例の二酸化炭素の固定装置1によれば、まず、液体取出部50により、反応容器10に含まれる反応後の前記二酸化炭素固定剤、および反応生成物等を取出す。つぎに、フィルター51により、前記二酸化炭素固定剤中の前記反応生成物等を分離する。つぎに、液体放出部52により、前記反応生成物等が分離された前記二酸化炭素固定剤を、再度、容器10に放出する。これにより、前記反応生成物等が分離された二酸化炭素固定剤を、再利用することができる。
[実施形態3]
(二酸化炭素の固定装置)
図4は、本実施形態の二酸化炭素の固定装置2を横方向から見た場合の一例を示す模式断面図である。なお、図4において、二酸化炭素の固定装置2の内部を透視的に図示している。図4(A)に示すように、二酸化炭素の固定装置2は、第1反応容器10A、および第2反応容器10Bを含み、第1反応容器10Aが、反応室11であり、第2反応容器10Bが、電解室12である。また、第1反応容器10Aから第2反応容器10Bに、容器連通流路80Aにより送液可能であり、第2反応容器10Bから第1反応容器10Aに、容器連通流路80Bにより送液可能である。これらの点以外は、前記実施形態と同様である。
図4(A)に示すように、電解室12は、陽極室12A、中間室12C、および陰極室12Bを含む。本実施形態において、陽極室12A、および陰極室12Bは、隔壁13Aおよび隔壁13Bにより分けられており、隔壁13Aと隔壁13Bとの間が中間室12Cになっている。また、陽極室12A、中間室12C、および陰極室12Bは、隔壁13の非設置部分において接続している。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置2は、前記構成であることにより、反応室11において、前記二酸化炭素固定剤と二酸化炭素とを反応させ、反応室11から電解室12に、容器連通流路80Aにより、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を送液可能であり、電解室12において、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を電気分解し、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、容器連通流路80Bにより、電解室12から反応室11に送液可能であり、反応室11において、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、前記二酸化炭素固定剤として再利用可能である。
第2反応容器10Bにおいて、陽極室12A、中間室12C、および陰極室12Bは、特に制限されず、前述の、陽極室12A、および陰極室12Bについての記載を参照できる。中間室12Cは、電極が設けられていない点以外は、陽極室12A、および陰極室12Bと同様である。
容器連通流路80Aは、特に制限されず、パイプ、ホース等があげられる。容器連通流路80Aは、図4(A)に示すように、ポンプ81A、および流量調整手段82Aを含んでもよい。ポンプ81A、および流量調整手段82Aは、前述の、ポンプ70、および流量調整手段64と同様である。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置2は、図4(A)に示すように、第1反応容器10Aが、液体取出部50を含む。液体取出部50は、フィルター51を含む。
液体取出部50は、例えば、実施形態2の変形例2に記載したように、さらに、液体放出部52、ポンプ53、流量調整手段54を含み、液体放出部52が、第2反応容器10Bに接続されてもよい。これにより、前記反応生成物等が分離された前記二酸化炭素固定剤を、第2反応容器10Bに放出し、再利用することができる。
なお、この場合、液体取出部50が、容器連通流路80Aを兼ねてもよい。すなわち、図4(A)において、二酸化炭素の固定装置2が、容器連通流路80Aに代えて、液体取出部50を含んでもよい。
容器連通流路80Bは、図4(A)に示すように、ポンプ81B、および流量調整手段82Bを含んでもよい。ポンプ81B、および流量調整手段82Bは、前述の、ポンプ70、および流量調整手段64と同様である。
つぎに、図4(B)に、本実施形態の二酸化炭素の固定装置2の別の形態を示す。この形態において、二酸化炭素の固定装置2は、容器連通流路80Bが、前記気液混合手段を兼ねている。容器連通流路80Bは、アスピレーター83を含む。この点以外は、図4(A)の形態と同様である。
本形態において、容器連通流路80Bは、液体循環流路60の記載を参照することができる。
容器連通流路80Bは、気液混合部材として、アスピレーター83を含み、アスピレーター83により、容器連通流路80Bを流れる液体に、二酸化炭素を含む気体を混合可能である。アスピレーター83は、前述の、アスピレーター63と同様である。
本実施形態において、アスピレーター83が、容器連通流路80Bの液体放出端部を兼ねている。ただし、これには制限されず、アスピレーター83が、容器連通流路80Bの途中に設けられていてもよい。この場合、前記液体放出端部は、例えば、プラスチック、セラミックス、金属、ガラス、および多孔質材料により形成できる。また、容器連通流路80Bの端部でもよい。
容器連通流路80Bの前記液体放出端部は、例えば、反応室11の上部から、反応室11内に、シャワー状または霧状に前記二酸化炭素固定剤を放出してもよい。前記シャワー状または霧状に放出する構成としては、一般的なスプレー等を用いることができる。
前記二酸化炭素固定剤をシャワー状または霧状に放出することによる効果として、以下の点があげられる。前述のように、前記気体と前記二酸化炭素固定剤との接触において、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により、水酸化カルシウムの沈殿が生じることで、前記接触による炭酸カルシウムの合成量が減少する可能性がある。これに対し、前記二酸化炭素固定剤をシャワー状または霧状に放出することで、まず、前記液体放出端部から放出される前記二酸化炭素固定剤に含まれる水酸化ナトリウムと反応室11内の前記気体とが接触することにより反応し(前記第1の接触工程)、その後、前記反応による生成物(炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウム)と反応室11内の前記二酸化炭素固定剤に含まれる塩化カルシウムとが反応する。このため、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じることを防ぐことができ、より多くの二酸化炭素を固定できる。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置2は、反応室11および電解室12にそれぞれ対応する第1反応容器10Aおよび第2反応容器10Bを用いた、二槽式の固定装置である。このため、電解室12において高濃度の水酸化ナトリウムが生じた場合においても、反応室11への流量の調整や、前述のような、放出形態の調整等により、反応室11における高濃度の水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの接触を防ぐことができる。このため、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じることを防ぐことができる。以上から、本実施形態の二酸化炭素の固定装置2は、発電所等のように、高濃度の二酸化炭素が排出される場合に適していると考えられる。
[実施形態4]
(二酸化炭素の固定装置)
図5は、本実施形態の二酸化炭素の固定装置3を横方向から見た場合の一例を示す模式断面図である。なお、図5において、二酸化炭素の固定装置3の内部を透視的に図示している。図5(A)に示すように、二酸化炭素の固定装置3は、第1反応容器10A、および第2反応容器10Bを含み、第1反応容器10Aが、第2反応室11Bであり、第2反応容器10Bが、電解室12(陽極室12A、および陰極室12B)ならびに第1反応室11Aを含む。第2反応容器10Bにおいて、陽極室12Aと第1反応室11Aとは、前記非設置部分を設けずに、陽イオン交換膜である隔壁13Aにより分けられている。また、第2反応容器10Bから第1反応容器10Aに、容器連通流路80により送液可能である。第1反応容器10Aには、液体取出部50が設けられている。液体取出部50の液体放出部52は、陽極室12A内に挿入されており、ポンプ53により、液体取出部50から前記二酸化炭素固定剤を吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、液体放出部52から放出可能である。また、陰極室12Bは、二酸化炭素固定剤投入手段20Cを含む。これらの点以外は、前記実施形態と同様である。
陽イオン交換膜である隔壁13Aは、特に制限されず、具体的には、例えば、Nafion(登録商標)N324等があげられる。また、人体への影響を考慮したうえで、石綿(アスベスト)を用いることもできる。
二酸化炭素固定剤投入手段20Cは、前述の、二酸化炭素固定剤投入手段20AおよびBと同様である。二酸化炭素固定剤投入手段20Cは、例えば、蒸留水を投入することができる。これにより、例えば、電気分解に必要な水を補給することができる。また、電気分解により第2反応容器10B内に生成した水酸化ナトリウムの濃度を、調整することができる。
本実施形態において、容器連通流路80は、第2反応容器10Bの陰極室12Bから、第1反応容器10Aに送液可能である。これにより、例えば、塩素の混入を防止することができる。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置3は、前記構成であることにより、第1反応室11Aおよび第2反応室11Bにおいて、前記二酸化炭素固定剤と二酸化炭素とを反応させ、第2反応室11Bから電解室12に、液体取出部50により、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を送液可能であり、電解室12において、前記反応後の前記二酸化炭素固定剤を電気分解し、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、電解室12から第1反応室11Aに送液可能であり、第1反応室11Aおよび第2反応室11Bにおいて、前記電気分解後の前記二酸化炭素固定剤を、前記二酸化炭素固定剤として再利用可能である。
また、本実施形態の二酸化炭素の固定装置3は、前記構成であることにより、第1反応室11Aにおいて、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ(前記第1の接触工程)、前記第1の接触工程後、第2反応室11Bにおいて、前記溶液に、塩化カルシウムを添加することができる(前記第2の接触工程)。前記第1の接触工程、および前記第2の接触工程は、前述の通りである。
本実施形態の二酸化炭素の固定装置3によれば、例えば、第1反応室11Aにおいて、前記第1の接触工程によっては、前記反応生成物である炭酸カルシウム(CaCO3)が生じない。このため、前記接触工程により生じた前記反応生成物が、反応容器(第2反応容器10B)や前記気液混合手段(気体送入手段30)等に固着する、という前記問題を防ぐことができる。
また、本実施形態の二酸化炭素の固定装置3によれば、前述のように、陽極室12Aと第1反応室11Aとが、前記非設置部分を設けずに、陽イオン交換膜である隔壁13Aにより分けられている。このため、陽極室12A側で生じた塩化物イオン(Cl-)が第1反応室11A側に移動することを防ぐことができる。これにより、例えば、前記塩化物イオンと前記電気分解により生じた水酸化ナトリウム(NaOH)とが反応してNaClOが生じ第1反応室11Aにおける水酸化ナトリウム濃度が低下する、という問題を防ぐことができる。また、例えば、陽極室12A側で生成した塩素(Cl2)と第1反応室11Aの前記二酸化炭素を含む気体とが混合することを防ぐことができる。
つぎに、図5(B)に、本実施形態の二酸化炭素の固定装置3の別の形態を示す。図5(B)に示すように、二酸化炭素の固定装置3は、前記気液混合手段として、液体循環流路60、およびポンプ70を含む。液体循環流路60は、液体吸込端部61、アスピレーターである液体放出端部62、および流量調整手段64を含み、液体吸込端部61は、陰極室12Bに接続されており、液体放出端部62は、第1反応室11A内に挿入されており、ポンプ70により、前記二酸化炭素固定剤を液体吸込端部61から吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、液体放出端部62から放出可能である。この点以外は、図5(A)の形態と同様である。
つぎに、本実施形態の二酸化炭素の固定装置3を用いて、前記二酸化炭素の固定方法を実施する場合について、説明する。
まず、後述の工程(S101)に先立って、前記二酸化炭素固定剤として、第2反応容器10Bの二酸化炭素固定剤投入手段20Bから、塩化ナトリウムを含む溶液を投入し、二酸化炭素固定剤投入手段20Cから、水を注入する(START)。そして、前記溶液について、電源装置に接続した陽極121A、および陰極121Bにより、電気分解を行うことにより、水酸化ナトリウム溶液を生成する(S100)。
つぎに、気体送入手段30から、第2反応容器10Bの第1反応室11A内の前記二酸化炭素固定剤中に、二酸化炭素を含む気体を送入する(S101;前記第1の接触工程)。
つぎに、前記第1の接触工程による反応後の前記二酸化炭素固定剤を、第2反応容器10Bから第1反応容器10Aに、容器連通流路80により送液する(S102)。前記第1の接触工程による反応後の前記二酸化炭素固定剤は、例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含む溶液である。
つぎに、第1反応容器10Aの二酸化炭素固定剤投入手段20Aから、前記二酸化炭素固定剤における前記第2固定剤として、塩化カルシウムを添加する(S103;前記第2の接触工程)。
つぎに、ポンプ53により、液体取出部50から、前記第2の接触工程による反応後の前記二酸化炭素固定剤を吸込み、前記吸込んだ二酸化炭素固定剤を、陽極室12A内に挿入された液体放出部52から放出する(S104)。前記第2の接触工程による反応後の前記二酸化炭素固定剤は、例えば、塩化ナトリウムを含む溶液である。
なお、前記工程(S104)において、フィルター51により、固体の前記反応生成物を前記二酸化炭素固定剤から分離することができる。前記固体の前記反応生成物は、例えば、炭酸カルシウムである。
つぎに、液体放出部52から放出された前記塩化ナトリウムを含む溶液について、前記工程(S100)と同様にして、電気分解を行うことにより、水酸化ナトリウム溶液を生成する(S105)。
そして、前記工程(S105)後、前記工程(S101)以降の工程を、繰り返し行うことができる。前記各工程は、前記順番で行ってもよいし、並行して行ってもよい。
以上により、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムと、二酸化炭素とを反応させ、炭酸カルシウムを生じさせることで、二酸化炭素を固定することができる。また、前記反応により生じる塩化ナトリウムの電気分解を行うことにより、前記各工程による反応を、繰り返し行うことができる。
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
[実施例1]
塩化ナトリウム(NaCl)溶液を電気分解した後、塩化カルシウム(CaCl2)を添加することにより、炭酸カルシウム(CaCO3)が形成されることを確認した。
電気分解装置を、以下のようにして作製した。図6に示すように、容器として、容積500mlのプラスチック製のタッパウェアー(市販のもの、大きさ:12x9x5cm)を用いた。前記容器の蓋に、空気孔(直径7mm程度)、陰極板への導線孔(直径7mm程度)、および陽極板への導入孔(直径1.7cm程度)を、1箇所ずつ形成した。前記陽極板、および前記陰極板として、それぞれ、5x5cmの白金コーテッドチタン網目電極(田中金属社製)を用いた。2Lのペットボトル(市販のもの)を切断し、前記ペットボトルの口部が含まれる部材を作製した。前記陽極板の導線を、前記部材の前記口部に通した。前記導線に、前記陽極板を接続し、前記陽極板が前記部材に囲まれた状態にした。また、前記部材の前記口部を、前記容器における前記陽極板への導入孔に嵌入させて設置し、前記陽極板から発生する塩素(Cl2)を前記容器の外部に放出させるようにした。これにより、前記容器内の気体への塩素の混入を防止した。前記陽極板の導線、および前記陰極板の導線を、それぞれ、電源装置(整流器YG-1502D+(YAOGONG社製))に接続した。
塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)を、蒸留水で希釈し、10%の塩化ナトリウム溶液を作製した。また、塩化カルシウム(和光純薬工業社製)を、蒸留水に溶解し、0.1mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。
200mLの10%の前記塩化ナトリウム溶液を、前記電気分解装置の前記容器に入れ、前記電源装置を用いて、約8V、1.5Aの条件で、約1時間通電した。前記通電において、100Vの交流を直流に変換して使用した。前記通電前、および前記通電後に、前記溶液のpHを測定した。
この結果、前記通電前、および前記通電後における、前記溶液のpHは、それぞれ、7.5、および11.0であった。このことから、前記通電により、塩化ナトリウムが電気分解され、水酸化ナトリウム(NaOH)が生成したことが示された。
さらに、前記通電後、前記容器内における前記陰極板の近くの前記溶液を採取した。10mLの試験管に、1mlの前記採取した溶液と、1mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れ、混合した。また、コントロールとして、前記通電を行わずに、1mlの10%の前記塩化ナトリウム溶液と0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを、同様にして混合した。前記混合後の混合液における沈殿形成の有無を、目視で確認した。
この結果を、図7に示す。図7は、前記混合液の写真であり、左が、コントロール、右が、前記通電後を示す。図7に示すように、前記通電を行った結果、前記混合液において、白色沈殿が形成された。一方、前記通電を行わなかった場合、前記混合液において、沈殿は形成されなかった。前記形成された白色沈殿は、前記電気分解で生成した水酸化ナトリウムが、空気中の二酸化炭素(CO2)と反応(吸収)することにより、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が生成され、この炭酸ナトリウムが、塩化カルシウムと反応したことにより生じた、炭酸カルシウムであると考えられる。
以上のように、塩化ナトリウム溶液を電気分解した後、塩化カルシウムを添加することにより、炭酸カルシウムが形成されることを確認できた。
[実施例2]
条件を変えて、塩化ナトリウム溶液を電気分解した後、塩化カルシウムを添加することにより、炭酸カルシウムが形成されることを確認した。
電気分解装置を、以下のようにして作製した。図8に示すように、容器として、容積1.85Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。前記容器の蓋に、空気孔(直径数mm程度)、陰極板への導線孔(直径2cm程度)、および陽極板への導入孔(直径2cm程度)を、1箇所ずつ形成した。前記陽極板、および前記陰極板は、前記実施例1と同様のものを用いた。また、前記実施例1と同様にして、前記部材を2つ作製し、前記部材に、それぞれ、前記陽極板、および前記陰極板を取付け、前記容器の導入孔にそれぞれ設置した。前記陽極板、および前記陰極板を、電源装置(直流電源装置、STP3010H、深セン天源電源株式会社製)に接続した。さらに、図8に示すように、前記容器に、バブリング装置のホースを挿入するための小孔を設け、水槽生物用のバブリング装置(製品名:ブクブク(セットに含まれるエアポンプ、ホース、およびエアストーンを組立てたもの)、コトブキ工芸株式会社製)を設置し、バブリングを行えるようにした。
実施例1と同様にして、10%の塩化ナトリウム溶液、および0.1mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。
700mLの10%の前記塩化ナトリウム溶液を、前記電気分解装置の前記容器に入れ、前記電源装置を用いて、22時間通電することにより、電気分解を行った。前記電気分解の条件は、通電開始時点で9.65V、0.9A、および通電から22時間後の時点で9.80V、1.5Aであった。前記通電後、前記溶液を電気分解液として採取した。0.25mlの前記電気分解液に、0.75mlの蒸留水を加えて希釈し、さらに、1mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を加え、混合液とした。前記混合液に、二酸化炭素(CO2100%、小池工業社製)をバブリングすることにより、接触させた。前記バブリングは、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させた。前記バブリングの条件は、40ml、10秒間とした。前記接触後、前記混合液を3,000rpm、10分間の条件で遠心し、沈殿物を分離させた。その後、前記試験管の上澄みをアスピレーターで除去した。そして、前記接触前および後に、前記試験管の重量を測定し、前記接触前および後における前記重量の差を、沈殿量として算出した。なお、前記接触前および後における前記試験管を目視で確認したところ、前記接触前の混合液は、無色透明であり、前記接触後の前記混合液は、白濁していた。
この結果を、図9に示す。図9は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図9において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、合計6サンプルの測定値の平均値とした。図9に示すように、前記電気分解後の混合液に二酸化炭素を接触させた結果、前記沈殿が生じた。
つぎに、参考実験として、以下の実験を行った。前記容器として、後述する参考例8に記載のパイプを用いた。200mlの前記電気分解液(前記通電後の前記塩化ナトリウム溶液)を、前記パイプに入れ、前記電気分解液に、前記バブリング装置を用いて、同様にして、空気をバブリングすることにより接触させた。前記接触後、前記パイプの上部空間(高さ約14cm)における気体について、二酸化炭素モニター(RI-85、RIKEN KEIKI製)を用いて、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
この結果を、図10に示す。図10は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図10において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Air)、および前記接触後の前記パイプの上部空間における気体(Electrolyzed Water)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図10に示すように、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少し、ゼロになった。
つぎに、前記空気に代えて、前記空気に前記二酸化炭素を混合することにより二酸化炭素濃度を12~18%にした混合空気を用いた以外は同様にして、実験を行った。
この結果を、図11に示す。図11は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図11において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、前記混合空気(CO2)、および前記接触後の前記パイプの上部空間における気体(Electrolyzed Water)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図11に示すように、前記混合空気の二酸化炭素濃度の平均値が15%であったのに対し、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度の平均値が4%に減少した。
さらに、条件を変えて、以下の実験を行った。1Lの10%の前記塩化ナトリウム溶液を、前記電気分解装置の前記容器に入れ、前記電源装置を用いて、20時間通電することにより、電気分解を行った。前記電気分解の条件は、通電開始時点で9.64V、0.92A、および通電から20時間後の時点で9.62V、1.2Aであった。その後、前記容器内の前記電気分解液に、前記バブリング装置を用いて、空気をバブリングすることにより接触させた。
この結果、前記空気の二酸化炭素濃度が458PPMであったのに対し、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が80PPMに減少した。前記接触後の前記二酸化炭素濃度がゼロにならなかった理由としては、水酸化ナトリウムの濃度が低かった、および、前記電気分解液の液面の高さが前記パイプを用いた場合と比較して低かった等が考えられる。
以上のように、条件を変えて、塩化ナトリウム溶液を電気分解した後、塩化カルシウムを添加することにより、炭酸カルシウムが形成されることを確認できた。
[実施例3]
気液混合手段の挿入端部を、撥水剤でコーティングすることにより、前記挿入端部への反応生成物の固着を抑制できることを確認した。
実施例2に記載の前記バブリング装置のセットに含まれる前記エアストーンに対し、フッ素樹脂系防水スプレー(製品名 ロックタイト、品番DBS-422、ヘンケルジャパン株式会社製)を用いて、数回スプレーした後、約30分静置することにより、コーティング処理を行った。その後、前記バブリング装置(以下、「処理済みのバブリング装置」ともいう)を組立てた。コントロールとして、未処理の前記エアストーンを用いて、同様にして、前記バブリング装置(以下、「コントロールのバブリング装置」ともいう)を組立てた。
等量の0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを混合し、混合液を作製した。前記水酸化ナトリウム溶液は、1Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を、蒸留水で希釈することにより作製した。
容器として、容積1.85Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。前記容器に、1Lの前記混合液を入れ、さらに、前記処理済みのバブリング装置、および前記コントロールのバブリング装置をそれぞれ用いて、24時間、空気をバブリングすることにより接触させた。
前記接触後、前記エアストーンを、約1分間、空気中で作動させ、前記エアストーンの内部空間に含まれる水分を除去した。さらに、前記エアストーンを前記チューブから取外し、1日以上室温下で静置し、前記エアストーンの内部空間に残されている水分を完全に除去した。その後、前記エアストーンの重量を測定し、前記接触後の前記エアストーンの重量から、前記接触前の前記エアストーンの重量を減算することにより、反応生成物である炭酸カルシウムの固着量を算出した。なお、反応生成物のうち、塩化ナトリウムは、本実験における濃度においては沈殿を形成しないことを、別に確認した。
この結果を、図12に示す。図12は、前記エアストーンに固着した炭酸カルシウムの重さを示すグラフである。図12において、縦軸は、前記エアストーンあたりの炭酸カルシウムの重量(g)を示し、横軸は、左から、コントロール(Control)、および前記処理済み(フッ素樹脂加工)を示す。なお、前記炭酸カルシウムの重量の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図12に示すように、コーティング処理を行ったエアストーンは、コントロールと比較して、固着量が大きく減少していた。
以上のように、気液混合手段の挿入端部を、撥水剤でコーティングすることにより、前記挿入端部への反応生成物の固着を抑制できることを確認できた。
[実施例4]
気液混合手段の挿入端部を、撥水剤によりコーティングすることにより、より長時間の接触後においても、前記挿入端部への反応生成物の固着を抑制できることを確認した。また、混合液中の反応生成物を濾別した。
前記エアストーンとして、エアストーン(直径3cm、製品名 Air ball M size、Pet one社製)を用いた以外は実施例3と同様にして、前記エアストーンのコーティング処理を行った。その後、実施例3と同様にして、前記バブリング装置、およびコントロールのバブリング装置を組立てた。
実施例3と同様にして、0.05Nの水酸化ナトリウム、および0.05mol/Lの塩化カルシウムを含む混合液を作製した。
実施例3と同様にして、前記容器に、1Lの前記混合液を入れ、前記処理済みのバブリング装置、および前記コントロールのバブリング装置をそれぞれ用いて、24時間、空気をバブリングすることにより接触させた。その後、前記混合液を、新しい液に交換し、さらに、24時間、空気をバブリングすることにより接触させた。なお、前記接触後、肉眼により、前記容器の壁面、底部、ならびに、前記エアストーンの表面のデコボコ内および内部空間等に、反応生成物である炭酸カルシウムが固着していることを確認することができた。一方、前記混合液においては、明らかな白濁は認められなかった。
前記接触後、前記エアストーンを、約2分間、空気中で作動させ、前記エアストーンの内部空間に含まれる水分を除去した。さらに、前記エアストーンを前記チューブから取外し、1~12日間、室温下で静置し、前記エアストーンの内部空間に残されている水分を完全に除去した。その後、前記エアストーンの重量を測定し、前記接触後の前記エアストーンの重量から、前記接触前の前記エアストーンの重量を減算することにより、反応生成物である炭酸カルシウムの固着量を算出した。
この結果を、図13および図14に示す。図13は、前記接触後の前記エアストーンの写真である。図13において、左は、コントロール、右は、前記処理済みの前記エアストーンを示す。図13に示すように、コーティング処理を行ったエアストーンは、コントロールと比較して、固着量が減少していた。
図14は、前記エアストーンに固着した炭酸カルシウムの重さを示すグラフである。図14において、縦軸は、前記エアストーンあたりの炭酸カルシウムの重量(g)を示し、横軸は、左から、コントロール(未処理)、および前記処理済み(処理)を示す。なお、前記炭酸カルシウムの重量の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図14に示すように、コーティング処理を行ったエアストーンは、コントロールと比較して、固着量が減少していた。
つぎに、前記接触後の前記混合液について、反応生成物の濾別を行った。フィルターとして、無漂白コーヒーフィルター(カナエ紙工株式会社製)を用い、一般的な形状の漏斗に設置した。
前記接触後の前記混合液を含む前記容器に対し、作業者により前記容器内をかきとることにより、前記混合液中に、前記固着した反応生成物が含まれるようにした。そして、全量(1L)の前記混合液を、数分かけて、前記フィルターに通した。
この結果、全量の前記混合液を、目詰まりすることなく、前記フィルターに通すことができた。そして、前記フィルター上において、前記反応生成物の残渣が存在することを、肉眼で確認することができた。
以上のように、気液混合手段の挿入端部を、撥水剤によりコーティングすることにより、より長時間の接触後においても、前記挿入端部への反応生成物の固着を抑制できることを確認できた。また、混合液中の反応生成物を濾別できた。
[参考例1]
容器内において、水酸化ナトリウム(NaOH)、および塩化カルシウム(CaCl2)を含む混合液と、二酸化炭素(CO2)を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
1Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を、それぞれ、0.01、0.02、0.1、0.2、および0.4Nとなるように蒸留水で希釈し、前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液を作製した。また、1mol/Lの塩化カルシウム溶液(和光純薬工業社製)を、それぞれ、0.01、0.02、0.1、0.2、および1(無希釈)mol/Lとなるように蒸留水で希釈し、前記各濃度の塩化カルシウム溶液を作製した。
10mLの試験管に、3mLの前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、二酸化炭素(CO2100%、小池工業社製)をバブリングすることにより、接触させた。前記バブリングは、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させた。前記バブリングの条件は、10秒間(約20cm3)とした。前記接触後、前記混合液を3,000rpm、10分間の条件で遠心した。そして、前記接触前および後に、前記試験管の重量を測定し、前記接触前および後における前記重量の差を、沈殿量として算出した。なお、後述するように、前記二酸化炭素との接触を行うよりも前に沈殿が生じた場合は、前記沈殿を除去した後、前記接触を行った。
この結果を、図15および図16に示す。図15は、前記二酸化炭素との接触前および接触後における、0.05Nの水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの塩化カルシウムとを含む混合液の写真であり、図中、左が、前記接触前、右が、前記接触後の試験管の様子を示す。図15に示すように、二酸化炭素を接触させることにより、前記混合液において、炭酸カルシウム(CaCO3)の白色沈殿が生じた。なお、前記混合液において、10秒間の前記バブリングが終了するよりも前に、白濁が生じていた。
図16は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図16において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液における水酸化ナトリウム濃度(N)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図16に示すように、水酸化ナトリウム濃度が0.01N以上において、二酸化炭素を接触させた結果、前記沈殿が生じた。そして、前記濃度が0.05Nにおいて、前記沈殿の量が大きく増加し、0.1Nにおいて、前記沈殿の量が最大であった。一方、前記濃度が0.2Nにおいて、前記0.1Nにおける値と比較して、前記沈殿の量が減少した。前記濃度が0.05~0.2N、および0.05~0.1Nにおいて、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
なお、水酸化ナトリウム濃度が0.2Nの場合、二酸化炭素との前記接触前において、前記混合液中に白色沈殿の形成がみられた。この白色沈殿は、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により生じた、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)であると考えられる。このため、前記濃度が0.2Nにおいて、前記沈殿の量が減少した理由としては、塩化カルシウムと高濃度の水酸化ナトリウムとの反応により水酸化カルシウムが生じたことで、前記接触による炭酸カルシウムの合成量が減少したためと考えられる。
つぎに、3mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、3mLの前記各濃度の前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液を作製した以外は同様にして、前記接触を行った。
この結果を、図17に示す。図17は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図17において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液における塩化カルシウム濃度(mol/L)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図17に示すように、全ての塩化カルシウム濃度において、二酸化炭素を接触させた結果、前記沈殿が生じた。そして、前記濃度が0.05mol/Lにおいて、前記沈殿の量が大きく増加し、0.1mol/Lにおいて、前記沈殿の量が最大であった。前記塩化カルシウム濃度が0.05~0.5mol/Lにおいて、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
なお、前記塩化カルシウム濃度が0.2~0.5mol/Lの場合、二酸化炭素との前記接触前において、前記混合液中に白色沈殿の形成がみられた。そして、この白色沈殿は、前記接触において、二酸化炭素を添加することにより、消失した。一方、前記塩化カルシウム濃度が、0.1mol/Lおよび0.05mol/Lの場合、前記混合液中に沈殿の形成がみられ、且つ、前記接触を行っても、前記沈殿は消失しなかった。
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
[参考例2]
水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液と、塩化カルシウム(CaCl2)を含む溶液とを混合し、水酸化ナトリウムの濃度が沈殿形成の有無に関係することを確認した。
10mLの試験管に、3mLの水酸化ナトリウム溶液を入れた後、3mLの塩化カルシウム溶液を添加し、混合液を作製した。前記混合液において、水酸化ナトリウム濃度は、0.2N、および0.25N、塩化カルシウム濃度は、0.05mol/Lとした。前記混合後、前記試験管の写真を撮影した。
この結果を図18に示す。図18は、水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとを含む混合液の写真であり、図中、左の4本の試験管が、0.2Nの水酸化ナトリウムを用いた場合、右の4本の試験管が、0.25Nの水酸化ナトリウムを用いた場合を示す。図18に示すように、0.25Nの水酸化ナトリウムを用いた場合、実験を行った4本すべての前記混合液において、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の生成による白濁が確認された。一方、0.2Nの水酸化ナトリウムを用いた場合、実験を行った4本中1本の試験管において、前記混合液にわずかに白濁が生じたが、残りの3本の前記混合液においては、白濁は確認されなかった。
以上から、水酸化ナトリウムを含む溶液と、塩化カルシウムを含む溶液とを混合し、水酸化ナトリウムの濃度が沈殿形成の有無に関係することが確認できた。
[参考例3]
容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を静置または振とうさせた状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
等量の0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを混合し、混合液を作製した。容積2Lの一般的な形状のペットボトル(市販のもの)内を大気と平衡にした後、前記ペットボトルに、10mLの前記混合液を入れた。前記ペットボトルを、底面が下になるようにして立てて静置し、前記混合液と二酸化炭素とを接触させた。前記接触後、0分(前記接触直後)、15分、30分、および60分後、ならびにオーバーナイトでの接触後に、二酸化炭素モニター(RI-85、RIKEN KEIKI製)を用いて、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
この結果を、図19に示す。図19は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図19において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記接触後の経過時間(分)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、前記接触後、0分(前記接触直後)、15分、30分、および60分後については、合計4サンプルの測定値の平均値とした。なお、前記オーバーナイトでの接触後においては、合計6サンプルの測定値が、いずれも0PPMであった。図19に示すように、前記接触により、前記接触後の経過時間に応じて、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。また、前記オーバーナイトでの接触後、前記二酸化炭素濃度の値が、0PPMとなったことから、本発明によれば、低濃度の二酸化炭素であっても、固定できることがわかった。
つぎに、前記ペットボトルに代えて、図20に示す形状の八角柱プラスチックボトルを用いた点、および、前記八角柱プラスチックボトルを、側面が下になるようにして横倒しにして静置した、または、前記八角柱プラスチックボトルを前記横倒しにした状態で振とうした点以外は同様にして、5分間、前記接触を行った。図20(A)は、前記八角柱プラスチックボトルを側面から見た図であり、(B)は、前記八角柱プラスチックボトルを底面から見た図である。前記振とうは、シェイカー(BR-21UM、TAITEK製)を用いて、120rpmの条件で振とうした。
この結果を、図21に示す。図21は、前記接触後の前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図21において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、前記静置による接触後、前記振とうによる接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図21に示すように、前記振とうによる接触により、前記接触直後と比較して、前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。特に、前記振とうによる接触により、前記接触直後と比較して、前記八角柱プラスチックボトル内の二酸化炭素濃度が1/6程度まで大きく減少しており、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
なお、前述のように、前記振とうによる接触により、前記静置による接触を行った場合と比較して、前記二酸化炭素濃度がより大きく減少した。この理由としては、前記振とうにより、前記混合液の表面積が増加し、より多くの前記二酸化炭素を含む気体と接触できるようになったためと考えられる。また、前記八角柱プラスチックボトルは、一般的な形状のペットボトルとの比較において、底部がより平面的であり、且つ短寸であるため、より前記混合液の表面積が増加したと考えられる。
つぎに、前記振とうの条件を変えて、前記接触を行った。前記八角柱プラスチックボトルに代えて、容積2Lの前記一般的な形状のペットボトルを用いた。前記接触の12時間前に、前記ペットボトルのふたを開け、前記ぺットボトルの口部にパスツールピぺットの先端を挿入し、前記先端から二酸化炭素を注入した。そして、前記ペットボトルに、50mLの前記混合液を入れた後、30秒間の振とうを1回として、1~6回、成人男性の手で、激しく振とうした。なお、前記1回目の前記振とうによる接触は、前記接触直後に行い、前記2~6回目の前記振とうによる接触は、それぞれ、前記接触直後から2分経過後、5分経過後、15分経過後、30分経過後、および60分経過後に行った。そして、前記1~6回の前記接触後に、それぞれ、二酸化炭素検出器(XP-3140、COSMO製)を用いて、二酸化炭素濃度を測定した。
また、前記6回目の接触後、さらに、50mLの前記混合液を加え、30秒間激しく振とうした後、二酸化炭素の濃度を測定した。その後、さらに、24時間静置した後、二酸化炭素の濃度を測定した。また、前記24時間静置後、さらに、50mLの前記混合液を加え、30秒間激しく振とうした後、二酸化炭素の濃度を測定した。
この結果を、図22に示す。図22は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図22において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、1回目の前記振とうによる接触後(30秒)、2回目の前記振とうによる接触後(2分)、3回目の前記振とうによる接触後(5分)、4回目の前記振とうによる接触後(15分)、5回目の前記振とう後(30分)、6回目の前記振とう後(60分)、混合液追加後、24時間静置後、混合液再追加後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図22に示すように、1回目の前記接触後(30秒)において、前記接触直後(0分)と比較して、二酸化炭素の濃度は大きく減少した。その後、2~6回目の前記接触後において、二酸化炭素の濃度は緩やかに減少した。一方、前記混合液の追加により、急激な更なる二酸化炭素濃度の減少を引き起こした。前記混合液の再追加においても、二酸化炭素濃度の顕著な減少が見られた。このように、高濃度の二酸化炭素濃度の状態であっても、前記混合液を再度添加することにより、二酸化炭素濃度の減少を引き起こすことが確認された。
さらに、前記振とうの条件を変えて、前記接触を行った。前記ペットボトルに代えて、図31に示す、容積1.85Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。なお、図31において、前記プラスチックボックスの内部を透視的に図示している。前記プラスチックボックスに、500mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、500mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れた後、ハンドミキサー(HM-20,60W、TOSHIBA製)を用いて、フル回転(数字3、「あわだてる-卵白をきめこまかくあわだてる」モード)させることにより、前記接触を行った。そして、前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。前記接触開始から約2分後に、二酸化炭素濃度がほぼ一定になったことを確認し、前記接触を終了した。前記接触終了時の二酸化炭素濃度の測定値を取得した。また、コントロールとして、前記プラスチックボックス外の空気の二酸化炭素濃度を測定した。
この結果を、図32に示す。図32は、前記接触後の前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図32において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、コントロール、および前記接触終了時を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図32に示すように、前記接触後において、コントロールと比較して、二酸化炭素の濃度は大きく減少した。
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を静置または振とうさせた状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
[参考例4]
容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
参考例3と同様にして、前記水酸化ナトリウムと前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記容積2Lの一般的な形状のペットボトルを用い、参考例3と同様にして、前記ペットボトル内を大気と平衡にした。その後、前記ペットボトルに、約4mLの前記混合液を、噴霧器(市販のもの)を用いて、5秒間隔で10回噴霧することにより、前記混合液と二酸化炭素とを接触させた。前記接触は、図23に示すように、前記ペットボトルを、側面が下になるようにして横向きにして使用し、水平方向に前記噴霧を行った。前記接触後直ちに、参考例3と同様にして、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
この結果を、図24に示す。図24は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図24において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触直後(0分)、前記噴霧による接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図24に示すように、前記噴霧による接触により、前記接触直後と比較して、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が1/6程度まで大きく減少した。
このように、前記噴霧による接触により、短時間で、前記二酸化炭素濃度が大きく減少した。この理由としては、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、前記混合液の表面積が大きく増加し、より多くの前記二酸化炭素を含む気体と接触できるようになったためと考えられる。
つぎに、前記噴霧の条件を変えて、前記接触を行った。前記接触を行うための接触手段は、以下のようにして作製した。図25に示すように、牛乳パックである箱(市販のもの)2個をL字型に連結し、下部の前記箱の側面の2箇所に、部分的に切取ることにより孔を開け、前記孔からシリコンチューブを挿入することにより、空気注入部、および二酸化炭素注入部をそれぞれ設けた。また、下部の前記箱の上面に、同様にして孔を開け、前記噴霧器から、前記箱の内部に前記混合液を噴霧できるようにした。上部および下部の前記箱の連結部は、それぞれ、大きな切り口を開けることで、下部の箱から上部の箱に二酸化炭素が上昇できるようにした。前記連結部には、4重のガーゼ(市販のもの)により、ガーゼ層を設けた。上部の前記箱の上面は、開放させた。また、上部の前記箱の側面に、同様にして孔を開け、二酸化炭素濃度検出器(XP-3140、COSMO製)のノズルを設置した。
前記空気注入部からの空気の流量を、約100cm3/秒、前記二酸化炭素注入部からの二酸化炭素の流量を、10cm3/秒として、二酸化炭素濃度の測定値が一定になるまで、注入を行った。その後、前記噴霧器から、前記混合液を、10回連続で噴霧した。前記混合液の噴霧量は、10回で合計約4mLであった。前記噴霧後、約20秒後に、二酸化炭素濃度の測定値が最低値となった。
この結果を、図26に示す。図26は、前記接触後約20秒後に、前記二酸化炭素の測定値が最低値となった時の、前記箱内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図26において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、前記接触前、前記噴霧による接触後を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計10サンプルの測定値の平均値とした。図26に示すように、前記噴霧による接触により、前記接触前と比較して、前記箱内の二酸化炭素濃度が減少した。
このように、前記接触手段が開放系である場合においても、前記混合液により、二酸化炭素を吸収できることが確認できた。さらに、噴霧した前記混合液の量が、約4mLという少量であったことから、前記混合液の量が少量であっても、高濃度の二酸化炭素濃度を十分に下げることができることがわかった。このことから、本発明の反応系は、反応効率が極めて優れているといえる。
以上のように、容器内において、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記混合液を霧状にした状態で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
[参考例5]
水酸化ナトリウム(NaOH)を含む溶液と、二酸化炭素(CO2)を含む気体とを接触させる第1の接触工程、および前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウム(CaCl2)を添加する第2の接触工程により、二酸化炭素を固定できることを確認した。
水酸化ナトリウムを含む溶液として、1Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いた。また、1mol/Lの塩化カルシウム溶液(和光純薬工業社製)を、蒸留水で希釈し、0.1mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。
10mLの試験管に、5mlの1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、二酸化炭素(CO2100%、小池工業社製)をバブリングすることにより、接触させた(第1の接触工程)。前記バブリングは、パスツールピペットの先端から、二酸化炭素を噴出させた。前記バブリングの条件は、2cm3/秒、40秒間とした。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、ミリメートル~センチメートルのオーダーであった。
つぎに、前記第1の接触後の前記溶液を、所定の濃度(0.1Nおよび0.05N)となるように蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mLの前記希釈後の前記溶液を入れ、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記接触後、前記添加後の混合液を3,000rpm、10分間の条件で遠心した。そして、前記接触前および後に、前記試験管の重量を測定し、前記接触前および後における前記重量の差を、沈殿量として算出した。
また、二酸化炭素の吸収に対する水酸化ナトリウムの濃度効果をみるため、以下の実験を行った。1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を、前記所定の濃度(0.1Nおよび0.05N)となるように、蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mlの前記所定の濃度の水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた(第1の接触工程)。前記バブリングの条件は、2cm3/秒、20秒間とした。そして、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記添加後、同様にして、沈殿量を算出した。
これらの結果を、図27に示す。図27は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図27において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示し、左のグラフは、前記第1工程を1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果(「High Concentration」)を示し、右のグラフは、前記第1工程を前記希釈後の前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果(「Low Concentration」)を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、4サンプルの測定値の平均値とした。図27に示すように、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果、前記第1の接触工程をいずれの濃度で行った場合も、前記沈殿が生じた。また、前記第1の接触工程を高濃度で行った場合、前記沈殿の量がより多かった。
さらに、前記第1工程で生成した炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)および炭酸ナトリウム(Na2CO3)が、前記第2工程において塩化カルシウムと反応し、沈殿を生じることを確認した。
前述と同様にして、0.5mol/Lの塩化カルシウム溶液を作製した。10mLの試験管に、1mlの1Nの炭酸水素ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)、1mlの蒸留水、2mlの0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を入れ、ボルテックスミキサーを用いて混合した。その後、生成した沈殿について、前述と同様にして、沈殿量を算出した。
また、同様にして、2mlの0.5mol/Lの炭酸ナトリウム溶液(和光純薬工業製)、2mlの0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を混合し、生成した沈殿について、沈殿量を算出した。
この結果を、図28に示す。図28は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図28において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各サンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図28に示すように、前記炭酸水素ナトリウム溶液および前記炭酸ナトリウム溶液は、それぞれ、前記塩化カルシウム溶液との反応により、沈殿を生じた。
以上から、水酸化ナトリウムを含む溶液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させる第1の接触工程、および前記第1の接触工程後、前記溶液に、塩化カルシウムを添加し、さらに、前記添加後の混合液と、前記二酸化炭素を含む気体とを接触させる第2の接触工程により、二酸化炭素を固定できることが確認できた。また、前記第1工程で生成した炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが、前記第2工程において塩化カルシウムと反応し、沈殿を生じることが確認できた。
[参考例6]
前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液の濃度を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認した。
参考例5と同様にして、1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いた。さらに、前記水酸化ナトリウムを含む溶液として、5Nの水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社製)を用いた。また、参考例5と同様にして、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。
1Nおよび5Nの前記水酸化ナトリウム溶液、ならびに、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いて、参考例5と同様にして、前記第1の接触工程、および前記第2の接触工程を行った。ただし、5Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合のみ、前記第1の接触工程における前記バブリング時間を、20秒間に代えて、50秒間とした。そして、参考例5と同様にして、沈殿量を算出した。
この結果を、図29に示す。図29は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図29において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示し、左のグラフは、前記第1工程を1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果を示し、右のグラフは、前記第1工程を5Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いて行った結果を示し、それぞれにおいて、左は、0.1mol/L前記塩化カルシウム溶液を用いて行った結果、右は、0.5mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いて行った結果を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各サンプルについて、合計5サンプルの測定値の平均値とした。図29に示すように、前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液をいずれの濃度にした場合も、前記沈殿が生じた。前記水酸化ナトリウム溶液の濃度を、1Nおよび5Nにした結果、両者間でほぼ同じ値が得られた。前記塩化カルシウム溶液の濃度を、0.1mol/Lおよび0.5mol/Lにした結果、0.5mol/Lでは、0.1mol/Lにした場合と比較して、いずれの前記水酸化ナトリウム溶液の濃度においても、前記沈殿量が約半分の値であった。0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を用いることにより、より多くの二酸化炭素を固定できることが確認できた。
以上から、前記水酸化ナトリウム溶液および前記塩化カルシウム溶液の濃度を変えても、二酸化炭素を固定できることが確認できた。
[参考例7]
前記第1の接触工程における二酸化炭素を含む気体との接触時間を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認した。また、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行わずに、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させ、結果を比較した。
参考例5と同様にして、1Nの水酸化ナトリウム溶液を用いた。また、0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。
前記バブリングの条件を、5、10、20、30、60秒間とした以外は参考例5と同様にして、前記第1の接触工程を行った。
つぎに、前記第1の接触後の前記溶液に、濃度が約0.1N(初濃度を基準にした概算値)となるように、9mLの蒸留水を加えて希釈した。10mLの試験管に、3mLの前記希釈後の前記溶液を入れ、前記溶液に、3mlの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を添加した(第2の接触工程)。前記接触後、参考例5と同様にして、前記混合液を遠心した。そして、参考例5と同様にして、沈殿量を算出した。
また、比較例として、以下の実験を行った。1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を、0.1Nとなるように、蒸留水で希釈した。10mLの試験管に、3mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液と、3mlの0.1Nの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、前述と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた。前記添加後、同様にして、沈殿量を算出した。
これらの結果を、図30に示す。図30は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図30において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、バブリング時間を示し、それぞれ、左のグラフは、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果を示し、右のグラフは、比較例の結果を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、合計3回の測定値の平均値とした。図30に示すように、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果、いずれのバブリング時間においても、前記沈殿が生じた。5秒~30秒間のバブリングにおいて、ほぼ同程度の沈殿量が得られた。60秒間のバブリングを行っても、やや減少したものの、十分な量の沈殿量が得られた。前記比較例の場合、5秒~10秒間のバブリングにおいて、前記沈殿が生じたが、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った結果と比較して、沈殿量は半分以下であった。さらに、20秒以上のバブリングを行うと、沈殿量は大きく減少した。
以上から、前記第1の接触工程における二酸化炭素を含む気体との接触時間を変えても、二酸化炭素を固定できることを確認できた。また、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行った場合、前記第1の接触工程および前記第2の接触工程を行わずに、水酸化ナトリウムおよび塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させた場合と比較して、より効率よく二酸化炭素を固定できることが分かった。
[参考例8]
水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
参考例6と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。500mlの前記混合液を、プラスチックボトル(市販のもの、幅7.5cm、奥行7.5cm、高さ12cm)に入れ、図33に示すように、前記混合液に、水槽生物用のバブリング装置(製品名:ブクブク(セットに含まれるエアポンプ、ホース、およびエアストーンを組立てたもの)、コトブキ工芸株式会社製)を用いて、空気をバブリングすることにより接触させた。なお、図33において、前記プラスチックボトルの内部を透視的に図示している。前記バブリングは、20cm3/秒の条件で、9時間、および12時間行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、マイクロメートル~ミリメートルのオーダーであった。前記接触後、5mLの前記混合液を取得し、3,000rpm、10分間の条件で遠心した後、沈殿物を秤量した。また、前記空気に代えて、前記空気に前記二酸化炭素を混合することにより二酸化炭素濃度を15%にした混合空気を用い、前記バブリングを1.5時間行った以外は同様にして、実験を行った。
この結果を、図34に示す。図34は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図34において、縦軸は、前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、各実験条件を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図34に示すように、前記空気、および前記混合空気のバブリングにより、沈殿が生じた。前記空気のバブリングにおいて、時間経過に応じて、沈殿量が増加していた。
つぎに、容器の形態を変えて、実験を行った。前記容器として、前記プラスチックボトルに代えて、直径40mm、高さ50cmの塩化ビニル製のパイプ(市販のもの)を用いた。前記パイプは、底部となる一端にパイプキャップ(市販のもの)を取付けた。図35は、前記パイプの形態を説明する概略図である。なお、図35において、前記パイプの内部を透視的に図示している。また、参考例5と同様にして、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液および0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液を作製した。250mlの前記水酸化ナトリウム溶液および250mlの前記塩化カルシウム溶液を、前記パイプに入れ、前記混合液に、前述と同様にして、約1分間、空気をバブリングすることにより接触させた。前記接触後、前記パイプの上部空間(高さ約14cm)における気体について、参考例6と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
この結果を、図36に示す。図36は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図36において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Air)、および前記パイプの上部空間における気体(Inner Pipe)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計9サンプルの測定値の平均値とした。図36に示すように、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。
つぎに、前記空気に代えて、前記空気に前記二酸化炭素を混合することにより二酸化炭素濃度を10%にした混合空気を用いた以外は同様にして、実験を行った。
この結果を、図37に示す。図37は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図37において、縦軸は、二酸化炭素濃度(%)を示し、横軸は、左から、各実験条件を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図37に示すように、前記接触により、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が減少した。
つぎに、前記混合液の量を変えて、実験を行った。参考例6と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記パイプに、100、200、300、400、および500mlの前記混合液を入れ、前記混合液に、前述と同様にして、1~2分間、空気をバブリングすることにより接触させた。なお、前記各条件において、前記パイプの底面からの前記混合液の液面の高さは、それぞれ、7、14、22、29、36cmであった。前記接触後、前記パイプの上部空間(前記パイプの上端から約10cmの位置)における気体について、参考例6と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
この結果を、図38に示す。図38は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図38において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Control)、および前記液面の高さを示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図38に示すように、前記接触により、前記液面の高さが、7cmであっても、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。また、前記液面の高さ(前記混合液の量)が大きくなるに従って、二酸化炭素濃度はより減少した。
つぎに、前記接触の形態を変えて、実験を行った。参考例6と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。前記パイプに、500mlの前記混合液を入れ、前述と同様にして、1~2分間、空気をバブリングすることにより接触させた。一方、前記接触において、前記バブリング装置の前記ホースの先端に接続した前記エアストーンを取り外して、前記ホース(直径約5mm、シリコン製)から直接空気をバブリングすることにより接触させた以外は同様にして、実験を行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、ミリメートル~センチメートルのオーダーであった。前記接触後、前述と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。また、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
この結果を、図39に示す。図39は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図39において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記空気(Control)、前記エアストーンからバブリングした場合(Ball)、および前記ホースからバブリングした場合(Tube)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図39に示すように、前記エアストーンからバブリングすることにより、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が大きく減少した(4.27%まで減少)。一方、前記ホースからバブリングした場合、二酸化炭素濃度は減少した(69.49%まで減少)が、前記エアストーンからバブリングした場合と比較して、減少量は少なかった。このことから、前記バブリングにおけるバブルのサイズが小さいことが、二酸化炭素の吸収において重要であることがわかった。
以上のように、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、前記気体を前記混合液中にバブリングすることにより接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。
[参考例9]
水酸化ナトリウムを含む溶液と二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を吸収できることを確認した。
参考例5と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウム溶液を作製した。前記容積2Lの一般的な形状のペットボトルを用い、参考例6と同様にして、前記ペットボトル内を大気と平衡にした。その後、前記ペットボトルに、10mLの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、静置することにより、前記溶液と大気中の二酸化炭素とを接触させた。前記接触後、0分(接触直後)、15分、30分、60分後に、参考例6と同様にして、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を測定した。
この結果を、図40に示す。図40は、前記接触後の前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図40において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記接触後の経過時間(分)を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図40に示すように、前記接触により、前記接触直後と比較して、15分、30分、60分後に、前記ペットボトル内の二酸化炭素濃度が減少した。
つぎに、前記接触の形態を変えて、前記接触を行った。前記ペットボトルに代えて、図41に示す、容積2Lのプラスチックボックス(市販のもの)を用いた。なお、図41において、前記プラスチックボックスの内部を透視的に図示している。前記プラスチックボックスに、500mLの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れた後、図41に示すように、前記プラスチックボックスの上面をプラスチック製のプレートで覆った。前記溶液に、バブリング装置(製品名:Micro bubbler(F-1056-002)、フロント工業株式会社製)を用いて、空気をバブリングすることにより接触させた。前記バブリングは、20cm3/秒の条件で行った。前記バブリングにおけるバブルのサイズを、スケールと比較することにより目視で測定した結果、マイクロメートル~ミリメートルのオーダーであった。そして、前記接触開始直後(0分)、5分後、10分後、および15分後に、前記プラスチックボックス内の上部空間の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。
この結果を、図42に示す。図42は、前記接触後の前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図42において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、左から、前記接触開始直後(0 time)、5分後(5 min)、10分後(10 min)、および15分後(15 min)を示す。図42に示すように、前記接触開始から5分後には、前記プラスチックボックス内の二酸化炭素濃度が大きく減少した。その後、前記接触後の経過時間に応じて、二酸化炭素濃度は徐々に減少した。
つぎに、容器の形態を変えて、実験を行った。前記容器として、前記プラスチックボトルに代えて、参考例8に記載の前記パイプを用いた。前記パイプに、200mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を入れ、前記溶液に、前述と同様にして、二酸化炭素濃度を10%にした前記混合空気をバブリングすることにより接触させた。そして、前記接触開始から5分後まで継続して、前記パイプ内の上部空間の二酸化炭素濃度を、前記二酸化炭素モニターを用いて測定した。また、1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた以外は同様にして、2分後まで二酸化炭素濃度を測定した。
この結果を、図43に示す。図43は、前記接触開始から2分後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図43において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、前記水酸化ナトリウム溶液の濃度を示す。図43に示すように、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が、前記接触開始直後から急速に減少し、2分後において、前記接触開始直後の値と比較して、7.5%まで減少した。その後、前記接触開始から5分後まで、前記濃度はほぼ一定の値であった。また、1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を用いた場合、同様に、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が、前記接触開始直後から急速に減少し、2分後において、「0」になった。
以上のように、水酸化ナトリウムを含む溶液と二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を吸収できることを確認できた。
[参考例10]
水酸化ナトリウムを含み、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物を含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物として、塩化マグネシウム(MgCl2、和光純薬工業社製)、塩化亜鉛(ZnCl2、和光純薬工業社製)、塩化ストロンチウム(SrCl2、和光純薬工業社製)、塩化バリウム(BaCl2、和光純薬工業社製)を用いた。前記塩化物を、それぞれ、蒸留水で希釈し、0.1mol/Lの各金属塩化物溶液を作製した。また、参考例5と同様にして、0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液を作製した。
2mLの前記各金属塩化物溶液と、1mLの前記水酸化ナトリウム溶液を混合した。前記混合液に、参考例5と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより、接触させた。前記混合後、および前記二酸化炭素との接触後、参考例5と同様にして、沈殿量を算出した。
この結果を、図44に示す。図44は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図44において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、前記混合液に含まれる各金属塩化物を示し、それぞれ、左のグラフが前記混合後、右のグラフが前記二酸化炭素との接触後を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記各混合液のサンプルについて、合計4サンプルの測定値の平均値とした。図44に示すように、前記塩化マグネシウム溶液および前記塩化亜鉛溶液を用いた場合、前記混合後、沈殿量が大きく増加し、前記二酸化炭素との接触後、沈殿量が減少した。また、前記塩化ストロンチウム溶液および前記塩化バリウム溶液を用いた場合、前記混合後、沈殿量が増加し、前記二酸化炭素との接触後、沈殿量がさらに増加した。
つぎに、前記第2族元素の塩化物、および前記2価の金属元素の塩化物を用いて、前記接触後の二酸化炭素濃度を測定した。
前記容器として、参考例8に記載の前記パイプを使用した。50mlの0.1Nの前記水酸化ナトリウム溶液および50mlの0.1mol/Lの各金属塩化物溶液を、前記パイプに入れ、前記混合液に、前記参考例8と同様にして、空気をバブリングすることにより接触させた。前記接触後、前記パイプの上部空間(高さ約14cm)における気体について、参考例6と同様にして、二酸化炭素濃度を測定した。前記測定において、前記接触から2~3分後に、二酸化炭素濃度の値がほぼ一定になったことを確認し、この値を測定値とした。また、コントロールとして、前記空気の二酸化炭素濃度を、同様にして測定した。
この結果を、図45に示す。図45は、前記接触後の前記パイプ内の二酸化炭素濃度を示すグラフである。図45において、縦軸は、二酸化炭素濃度(PPM)を示し、横軸は、各金属塩化物を示す。なお、前記二酸化炭素濃度の値は、合計3サンプルの測定値の平均値とした。図45に示すように、前記接触により、いずれの金属塩化物を用いた場合においても、コントロールの値と比較して、前記パイプ内の二酸化炭素濃度が減少した。特に、前記塩化ストロンチウム溶液および前記塩化バリウム溶液を用いた場合、前記二酸化炭素濃度が大きく減少した。
以上のように、水酸化ナトリウムを含み、さらに、第2族元素の塩化物、および2価の金属元素の塩化物を含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。
[参考例11]
水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、所定の温度条件下で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認した。
参考例6と同様にして、0.05Nの前記水酸化ナトリウムと0.05mol/Lの前記塩化カルシウムとを含む混合液を作製した。10mLの試験管に、3mLの前記各濃度の水酸化ナトリウム溶液と、3mLの0.1mol/Lの前記塩化カルシウム溶液とを入れて混合し、前記混合液に、参考例5と同様にして、二酸化炭素をバブリングすることにより接触させた。前記バブリングは、2cm3/秒の条件で、10秒間行った。前記接触において、前記混合液の温度を、Unithermo Shaker NTS-120, EYLEA, (Tokyo Rikakikai Co., Ltd.)を用いて、それぞれ、5℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃に保持した。前記接触後、参考例5と同様にして、沈殿量を算出した。
この結果を、図46に示す。図46は、前記二酸化炭素との接触により、前記混合液において生じた沈殿の重さを示すグラフである。図46において、縦軸は、試験管あたりの前記沈殿の重さ(g)を示し、横軸は、温度を示す。なお、前記沈殿の重さの値は、前記温度ごとに、実験を3~5回行い、各実験において4~8サンプルの測定値を取得し、これらの測定値の平均値とした。図46に示すように、いずれの温度条件下においても、前記二酸化炭素との接触後、沈殿が生成した。前記沈殿量は、前記混合液の温度が5℃から60℃の間では、ほぼ一定の値であり、70℃において大きく増加した。前記混合液の温度が80℃においても、5℃から60℃の間における前記一定の値よりも大きい値が得られた。
以上のように、水酸化ナトリウム、および塩化カルシウムを含む混合液と、二酸化炭素を含む気体とを、所定の温度条件下で接触させることにより、二酸化炭素を固定できることを確認できた。特に、前記二酸化炭素の固定が、高温での処理に適していることを確認できた。
[参考例12]
本発明の二酸化炭素の固定装置を用いて、二酸化炭素を固定できることを確認した。
図47に示す二酸化炭素の固定装置を、以下のようにして作製した。第1反応容器10として、大きさ(高さ73cm、奥行き41cm、幅51cm)、容量約76Lのプラスチック製の容器を用いた。第1反応容器10を、金属製のラック(市販のもの)に設置した。液体循環流路30として、ホース(市販のもの)、およびパイプ(市販のもの)を用い、前記ホースおよび前記パイプを、それぞれ、ポンプ40(Iwaki Magnet Pump MD-100R-5M)に接続した。ポンプ40は、前記ラックの上部の空間(収容部50)に設置した。前記パイプの液体吸込端部310には、ストレーナー(市販のもの)を接続し、前記ホースの液体放出端部320には、アスピレーター(品番1-689-04、アズワン社製)を接続し、それぞれ、第1反応容器10内に設置した。また、前記アスピレーターには、気体取込み用のホースXを接続し、ホースXの他端を、前記ラックの天井に設けた穴から外部に通した。これにより、前記外部から取込んだ大気が、前記アスピレーターにより液体循環流路30内の液体に取込まれ、液体放出端部320から噴出されるようにした。
また、第1反応容器10の上部空間の側面部に、液面から7cmの位置となるように穴(直径6cm)(図示せず)を設け、前記穴に塩化ビニル製のパイプを通し、前記上部空間の気体を第1反応容器10外に放出させた。そして、前記放出させた気体中の二酸化炭素濃度を、二酸化炭素モニター(GX-6000、RIKEN KEIKI製)により測定した。
第1反応容器10に、40Lの水を入れた後、2Lの1Nの水酸化ナトリウム溶液を、作業者により投入した。前記投入後すぐに、ポンプ40を作動させ、ポンプ40により、前記溶液を液体吸込端部310から吸込み、前記吸込んだ前記溶液を液体放出端部320から放出させた。その後すぐに、2Lの1mol/Lの塩化カルシウムを含む溶液を、作業者により投入した。前記投入後、気体の出入りを防ぐため、第1反応容器10の蓋を閉じた。前記塩化カルシウムを含む溶液の投入時点を0分とし、経過時間を測定した。
この結果、前記投入時点(0分)において、前記二酸化炭素濃度は400PPMであった。そして、前記投入直後から、前記二酸化炭素濃度は急激に低下し、前記投入から20秒後における前記二酸化炭素濃度は280PPM、30秒後における前記二酸化炭素濃度は260PPM、40秒後における前記二酸化炭素濃度は220PPM、50秒後における前記二酸化炭素濃度は200PPM、60秒後における前記二酸化炭素濃度は180PPM、1分20秒後における前記二酸化炭素濃度は160PPM、1分40秒後における前記二酸化炭素濃度は140PPM、2分後における前記二酸化炭素濃度は100PPM、2分20秒後における前記二酸化炭素濃度は80PPM、2分40秒後における前記二酸化炭素濃度は60PPM、3分後における前記二酸化炭素濃度は40PPM、3分20秒後における前記二酸化炭素濃度は20PPMであった。そして、前記投入から3分45秒後に、前記二酸化炭素濃度は0PPMになった。その後、前記投入から10分後まで測定を行ったところ、いずれの経過時間においても、前記二酸化炭素濃度は0PPMであった。
以上のように、本発明の二酸化炭素の固定装置を用いて、二酸化炭素を固定できることを確認できた。
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。