以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1の実施形態>
<作業車両(トラクタ)1の全体構成>
まず、図1を参照して第1の実施形態に係る作業車両1の全体構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る作業車両1の説明図であり、作業車両1の概略左側面図である。なお、以下では、作業車両1としてトラクタを例に説明する。
作業車両であるトラクタ1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクタである。また、トラクタ1は、操縦者(作業者ともいう)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する制御部40(図2参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。
また、以下において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクタ1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール9に向かう方向である(図1参照)。
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクタ1の操縦者(「作業者」ともいう)が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクタ1を指して「機体」という場合がある。
図1に示すように、トラクタ1は、走行車体2と、作業機Wとを備える。走行車体2は、車体フレーム3と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。トラクタ1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。エンジンEは、トラクタ1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール9などを備える。操縦部7は、走行車体2の上部に設けられたキャビン7aに覆われることで形成されてもよい。操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、操舵輪である前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)を備える。
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッションは、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪である後輪5や、後述するPTO(Power Take-off)軸11へ伝達する。
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機Wが連結され、作業機Wを駆動する動力を伝達するPTO軸11がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸11は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機Wへ伝達する。
また、走行車体2の後部には、作業機Wを昇降させる昇降装置12が設けられる。昇降装置12は、作業機Wを上昇させることで、作業機Wを非作業位置に移動させる。また、昇降装置12は、作業機Wを下降させることで、作業機Wを対地作業位置に移動させる。昇降装置12は、油圧式の昇降シリンダ121と、リフトアーム122と、リフトロッド123と、ロアリンク124と、トップリンク125とを備える。
リフトアーム122は、昇降シリンダ121に作動油が供給されると、回動支点となる軸AXまわりに作業機Wを上昇させるように回動し、昇降シリンダ121から作動油が排出されると、軸AXまわりに作業機Wを下降させるように回動する。なお、リフトアーム122の基部(軸AX付近)には、リフトアーム122の回動角度を検知するリフトアームセンサ26が設けられる。作業機Wの高さは、リフトアームセンサ26の検知結果に基づいて算出される。
また、リフトアーム122は、リフトロッド123を介してロアリンク124に連結される。このように、昇降装置12は、ロアリンク124とトップリンク125とで、走行車体2に対して作業機Wを昇降可能に連結する。
作業機Wは、圃場内で作業を行う機械である。図1に示す例では、作業機Wは、圃場において耕耘作業を行うロータリ耕耘機W1である。ロータリ耕耘機W1は、PTO軸11から伝達された動力によって耕耘爪61が回転することで、圃場面(土壌)を耕耘する。なお、作業機Wの他の種類については、図9A~図9Cを用いて後述する。
また、トラクタ1は、制御部40(図2参照)を備える。制御部40は、エンジンEを制御するとともに、走行車体2の走行速度を制御する。また、制御部40は、作業機Wを制御する。
また、トラクタ1は、測位装置30を備える。測位装置30は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2の位置を測定する。測位装置30は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。
また、トラクタ1は、作業者による情報処理端末(タブレット端末などの携帯端末)100の操作によって、特定の圃場における各種作業の設定などを行うことができる。情報処理端末100は、たとえば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などで構成される記憶部と、タッチパネルにより構成される表示部および操作部とを備える。なお、操作部として、各種キーやボタンなどが別に設けられてもよい。
また、トラクタ1は、障害物センサ20を備える。障害物センサ20は、前方センサ21と、後方センサ22とを備える。前方センサは、たとえば、ボンネット6の前方に設けられたセンサ取付ステー13に取り付けられるなど、走行車体2の前部に配置され、走行車体2の前方に存在する物体(障害物)を検知する。後方センサ22は、たとえば、キャビン7aの上部に取り付けられるなど、走行車体2の後部上側に配置され、走行車体2の後方に存在する物体(障害物)を検知する。
また、前方センサ21および後方センサ22は共に、中距離センサであり、好ましくは赤外線センサである。赤外線センサは、赤外線ビームを放射し、障害物からの反射光を検知する。
前方センサ21および後方センサ22は、たとえば、赤外線ビームを放射した後、障害物からの反射光を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。赤外線センサである前方センサ21および後方センサ22は、障害物を2次元的に検知し、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知範囲である。なお、障害物センサ20として、赤外線センサ以外の他の中距離センサを用いることも可能である。
<作業車両(トラクタ)1の制御系>
次に、図2を参照して制御部40を中心とする作業車両(トラクタ)1の制御系について説明する。図2は、障害物検知を含む制御系の一例を示すブロック図である。図2に示すように、制御部40は、エンジンECU(Electronic Control Unit)41と、走行系ECU42と、作業機昇降系ECU43とを備える。エンジンECU41は、エンジンEの回転数を制御する。走行系ECU42は、駆動輪の回転を制御することで、走行車体2(図1参照)の走行速度を制御する。作業機昇降系ECU43は、昇降装置12を制御して作業機Wを昇降制御する。
制御部40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有する処理部をはじめ、各種プログラムや圃場ごとに予め設定された走行車体2の後述する予定走行経路R(図12参照)などの必要なデータ類が記憶される記憶部などを備える。
図3に示すように、制御部40には、測位装置(GNSS)30、エンジン回転センサ23、車速センサ24、切れ角センサ25、障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)、リフトアームセンサ26などの各種センサ類が接続される。なお、エンジン回転センサ23は、エンジンEの回転数を検知する。車速センサ24は、走行車体2(図1参照)の走行速度(車速)を検知する。切れ角センサ25は、操舵輪である前輪4(図1参照)の切れ角を検知する。切れ角センサ25は、機体の旋回を検知する。
制御部40には、測位装置30から圃場などにおける走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ23からエンジンEの回転数、車速センサ24から走行車体2の走行速度、切れ角センサ25から前輪4の切れ角がそれぞれ入力される。制御部40は、トラクタ1を自律走行させる場合、切れ角センサ25の検知結果を用いて、前輪4の切れ角をフィードバックしながらステアリングホイール9に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール9を自動操舵する。
また、制御部40には、エンジンECU41がエンジンEに接続され、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53などに接続され、作業機昇降系ECU43が昇降装置12に接続される。このうち、作業機昇降系ECU43は、昇降装置12に向けて作業機昇降信号を出力する。昇降装置12は、作業機昇降系ECU43から出力された作業機昇降信号に基づいて作業機Wを昇降駆動する。
また、制御部40は、トラクタ1が自律走行しつつ作業を行うモードである「自動運転モード」を有する。制御部40は、自動運転モードにおいては、作業機Wによる作業内容に応じた予定走行経路R(図12参照)が予め圃場ごとに定められ、データ化されて記憶部に記憶され、測位装置30の測定結果に基づいて、記憶された予定走行経路Rに沿って走行するように、エンジンE、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置12などの各部を制御する。なお、予定走行経路Rは、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、さらには作物の種類などに応じて設定される。
また、制御部40は、たとえば、作業者が携行可能な情報処理端末(携帯端末)100と無線接続される。制御部40は、作業者の操作による情報処理端末100からの指示信号に基づいてトラクタ1の各部を制御する。また、制御部40は、トラクタ1の機体情報データベースを保持し、型式などの情報の受け渡しを情報処理端末100などからも行うことができるように構成してもよい。
<作業機高さ手動指定手段71>
次に、図3および図4を参照して作業機高さ手動指定手段について説明する。図3および図4はそれぞれ、作業機高さ手動指定手段71(第1手動指定手段71Aおよび第2手動指定手段71B)を示す斜視図である。図3は、作業機高さ手動指定手段71のうち、第1手動指定手段71Aを示す斜視図である。図4は、作業機高さ手動指定手段71のうち、第2手動指定手段71Bを示す図である。
図3に示すように、操縦部7において、たとえば、操縦席8(図1参照)の右方には、第1手動指定手段71Aとしての作業機昇降レバーが設けられる。作業機昇降レバー71Aは、作業者による手動操作によって昇降装置12(図1参照)を介して作業機W(図1参照)を任意の高さ位置に昇降させる場合に操作される。
図4に示すように、情報処理端末100において、第2手動指定手段71Bとしての作業機昇降レバー画像が表示される。作業機昇降レバー画像71Bは、上記した作業機昇降レバー71A(図3参照)と同様、作業者による手動操作によって昇降装置12(図1参照)を介して作業機W(図1参照)を任意の高さ位置に昇降させる場合に操作される。
<障害物センサ20による検知範囲>
次に、図5Aおよび図5Bを参照して障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)による検知範囲について説明する。図5Aは、前方センサ21による検知範囲の説明図であり、走行車体2の左側面図である。図5Bは、後方センサ22による検知範囲の説明図であり、走行車体2の左側面図である。
図5Aに示すように、走行車体2のボンネット6の前方においてセンサ取付ステー13に取り付けられた前方センサ21は、上記したように、赤外線センサなどの中距離センサであり、走行車体2の前方において、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知範囲である。
図5Bに示すように、走行車体2のキャビン7aの後部上側に取り付けられた後方センサ22は、前方センサ21と同様、上記したように、赤外線センサなどの中距離センサであり、走行車体2の前方において、たとえば、数メートルから数10メートル程度の検知範囲である。後方センサ22は、前方センサ21よりも上方にあるため、赤外線ビームLを、前方センサ21よりも角度をつけて放射する。
<障害物センサ20の検知感度>
次に、図6を参照して障害物センサ20(前方センサ21および後方センサ22)について説明する。図6は、前方センサ21および後方センサ22の検知感度の説明図であり、トラクタ1およびトラクタ1周辺の模式的な平面図である。
図6に示すように、前方センサ21の検知範囲A1は、たとえば、前後方向について複数(たとえば、3つ)に分割される。この場合、前方センサ21の検知感度は、トラクタ1から最も遠い検知範囲A11、トラクタ1から次に遠い検知範囲A12、トラクタ1に最も近い検知範囲A13に分割される。
トラクタ1は、最も遠い検知範囲A11では、制御部40(図2参照)において検知感度が最も低くなるように設定されている。なお、障害物が検知範囲A11にある場合は、たとえば、警報を発する。
また、トラクタ1は、次に最も遠い検知範囲A12では、制御部40において検知感度が検知範囲A11における検知感度よりも高くなるように設定されている。なお、障害物が検知範囲A12にある場合は、たとえば、車速を減速する。
また、トラクタ1は、最も近い検知範囲A12では、制御部40において検知感度が最も高くなるように設定されている。なお、障害物が検知範囲A13にある場合は、たとえば、停車する。このように、トラクタ1は、障害物までの距離に応じて異なる回避行動を行うように構成されてもよい。
また、図6に示すように、後方センサ22の検知範囲A2は、前方センサ21と同様、たとえば、前後方向について複数(たとえば、3つ)に分割される。この場合、後方センサ22の検知範囲は、トラクタ1から最も遠い検知範囲A21、トラクタ1から次に遠い検知範囲A22、トラクタ1に最も近い検知範囲A23に分割される。
トラクタ1は、最も遠い検知範囲A21では、制御部40(図2参照)において検知感度が最も低くなるように設定されている。また、トラクタ1は、次に最も遠い検知範囲A22では、制御部40において検知感度が検知範囲A21における検知感度よりも高くなるように設定されている。また、トラクタ1は、最も近い検知範囲A22では、制御部40において検知感度が最も高くなるように設定されている。
<作業機Wの規制高さ設定>
次に、図7Aおよび図7Bを参照して作業機Wの規制高さ設定について説明する。図7Aおよび図7Bは、作業機Wの規制高さ設定の説明図である。なお、図7Aは、作業機Wの規制高さ設定前、図7Bは、作業機Wの規制高さ設定時の状態を示している。トラクタ1においては、後方センサ22の検知範囲に作業機Wが入り込み、たとえば、トラクタ1が停止しないよう、制御部40(図2参照)において後方センサ22の検知範囲に作業機Wが入らない制御を行う。
図7Aおよび図7Bに示すように、作業機Wの規制高さ設定においては、制御部40は、作業機Wを上昇させる。この場合、制御部40は、リフトアームセンサ26の検知結果に基づいて、支点となる軸AXを中心に回動するリフトアーム122の回動角を制御することで、作業機Wを昇降させる。また、制御部40は、作業機Wを上昇させるとともに、作業機Wの上昇に伴い、後方センサ22が作業機Wを検知した高さを規制高さHとして記憶する。後方センサ22は、たとえば、検知範囲となる、錐形状の態様の赤外線ビームLの最下端部に入り込んだ作業機Wを検知する。そして、制御部40は、作業中において、作業機Wの高さが記憶した規制高さH以下となるよう、作業機Wの上昇を規制する。
また、作業機Wの規制高さは、作業者が上記した作業機昇降レバー71A(図3参照)または作業機昇降レバー画像71B(図4参照)を手動操作により上昇させ、後方センサ22の検知範囲に入ってから作業機Wを、たとえば、200mm下げた位置とする。
また、制御部40は、作業機Wの規制高さ設定を自動で行う「規制高さ設定モード」を有してもよい。また、制御部40は、規制高さ設定モードを開始する場合、最初から作業機Wが後方センサ22の検知範囲に入っていないように、作業機Wが所定の高さ以下にあることを条件とする。
また、制御部40は、たとえば、作業者から、規制高さ設定モードの開始指示を受けると、少なくとも後方センサ22を作動させる。制御部40は、後方センサ22が障害物を検知している間は作業機Wの高さ検知(測定)を開始しない。制御部40は、後方センサ22による障害物の検知が所定の時間でなければ、作業機Wの高さ検知(測定)を開始する。
また、制御部40は、規制高さ設定モード中において、作業機Wを上昇させている間に後方センサ22が障害物を検知した場合、作業機Wの上昇を停止して作業機Wの現時点の高さを記憶する。この後、制御部40は、作業機Wを下降させている間に記憶した高さとは異なる高さで後方センサ22が障害物を検知した場合は、作業機Wの高さ検知(測定)を中止する。作業機を下降させているときに障害物を検知した場合は作業機ではない物体を検知している可能性があるため、規制高さ設定を中止することで誤設定を防止することができる。
また、制御部40は、規制高さ設定モード中においては、PTOクラッチの接続を禁止する。PTOクラッチが接続されると作業機Wが作動してしまうため、PTOクラッチの接続を禁止することで安全性が高まる。
また、制御部40は、作業機Wと通信可能であり、通信により作業機Wの識別が可能である場合は、識別情報と関連付けて設定した規制高さHを記憶してもよい。また、制御部40は、たとえば、作業機Wを付け替えた後、作業機Wとの通信を開始したときに新たに装着した作業機Wの識別情報と関連付けられた規制高さHがある場合にはこれを適用する。
ここで、図8Aおよび図8Bを参照して、制御部40(図2参照)による作業機Wの上昇規制および作業機Wの規制高さ設定のそれぞれの処理手順について説明する。図8Aは、作業機Wの上昇規制の処理手順の一例を示すフローチャートである。図8Bは、作業機Wの規制高さ設定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8Aに示すように、作業機Wの上昇規制において、制御部40は、後方センサ22が後方検知中か否かを判定する(ステップS101)。制御部40は、後方検知中であると判定した場合(ステップS101:Yes)、作業機Wの規制高さHを設定する(ステップS102)。制御部40は、作業機Wの規制高さHが設定されると、作業中において、作業機Wの上昇を規制高さH以下となるように規制する(ステップS103)。制御部40は、ステップS101の処理において、後方検知中でないと判定した場合(ステップS101:No)、後方検知中であると判定するまでこの処理を繰り返す。
図8Bに示すように、作業機Wの規制高さ設定においては、制御部40は、たとえば、作業者による手動操作により、作業機Wを上昇させる(ステップS1021)。制御部40は、後方センサ22が上昇している作業機Wを検知したか否かを判定する(ステップS1022)。制御部40は、作業機Wを検知したと判定した場合(ステップS1022:Yes)、後方センサ22が検知した作業機Wの上昇高さを記憶する(ステップS1023)。制御部40は、ステップS1022の処理において、作業機を検知しないと判定した場合(ステップS1022:No)、作業機Wを検知したと判定するまでこの処理を繰り返す。
このような制御によれば、作業中において作業機Wが障害物と誤検知する高さまで上昇しないよう上昇を規制することで、作業を円滑に実行することができる。これにより、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、作業機Wの規制高さ設定において、作業機Wを複数回(たとえば、3回)上昇させ、作業機Wの複数回の上昇試行による後方センサの検知結果に基づいて、規制高さHを設定する。このような制御によれば、作業機Wの規制高さ設定時に、たとえば、後方センサ22が作業機Wの検知以外の他の要因で障害物を検知した場合には誤設定となるため、作業機Wの上昇試行を複数回行うことで、規制高さの誤設定を防止することができる。
また、制御部40は、作業機Wの複数回の上昇試行による後方センサ22の検知結果に所定の範囲を超えるばらつきがある場合には、規制高さHの設定を中止する。このような制御によれば、作業機Wの規制高さ設定時に、後方センサ22による複数回の検知結果にばらつきがある場合は後方センサ22が作業機W検知以外の他の要因で障害物を検知している可能性が高いため、この場合には作業機Wの規制高さHの設定を中止することで、規制高さHの誤設定を防止することができる。
この場合、ばらつきがなくなるまで、すなわち、ばらつきが所定の範囲内に収まるまで繰り返し高さ測定を実行する。ばらつきが所定の範囲内に収まれば、高さ測定を終了する。また、制御部40は、複数回の上昇試行の測定値の平均値を算出して規定高さHの基準値として設定する。
また、上記したトラクタ1においては、制御部40がリフトアーム122の回動角を制御することで作業機Wを昇降させるため、作業機Wの昇降制御を簡単に実現することができる。また、上記したトラクタ1においては、自律運転モードの場合においても後方センサ22により機体の後方を監視することで、安全性を向上させることができる。また、後方センサ22が赤外線センサであるため、障害物までの距離を検知することができ、高精度な障害物検知が可能となる。
図9A~図9Cは、作業機Wの他の種類(作業機W2~W4)の説明図である。走行車体2に装着される作業機Wは、上記したロータリ耕耘機W1(図1参照)に限定されない。他の種類の作業機Wとして、図9Aには、ブロードキャスタW2を示し、図9Bには、プラウW3を示し、図9Cには、リバーシブルプラウW4を示している。
図9Aに示すブロードキャスタW2は、肥料などの資材を圃場に散布する作業を行う。図9Bに示すプラウW3は、圃場を耕起する作業を行う。また、図9Cに示すリバーシブルプラウW4は、圃場を耕起する作業を行い、往復走行における往路と復路とで上下を反転させて使用される。図9Cに示すように、リバーシブルプラウW4においては、自律運転モードで隣接作業を続ける場合に、機体の旋回時において、走行車体2の旋回と同時に外部油圧を動かしてリバーシブルプラウW4を反転させるよう制御する。これにより、自律走行中の作業が可能となる。
この他、作業機Wとして、ウイングハローが装着される場合、走行車体2の左右幅に比べてウイングハローの左右幅が長いため、機体の旋回時において、後方センサ22による検知によって走行車体2が停止することがないよう、自律運転モードでは外部油圧を停止して、検知範囲に収まるように、ウイングハローを収納するよう制御する。これにより、自律走行中の作業が可能となる。
図10Aおよび図10Bは、マッピング制御の説明図である。自律走行を行うトラクタ1において、制御部40(図2参照)は、圃場Fをマッピングする場合に、図10Aに示すように、複数の外周点P1を登録し、図10Bに示すように、登録した外周点P1から4つの点(選択点)P2を選択して自律走行における走行経路の設定を行う。この場合、制御部40は、選択する4つの点P2を、登録した外周点P1の中から最も面積が大きくなる4つの点P2を選択する。
<第2の実施形態>
次に、図11を参照して第2の実施形態に係る作業車両(トラクタ)について説明する。図11は、第2の実施形態に係る作業車両(トラクタ)における後方検知の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する第2の実施形態は、作業機Wの昇降が手動により操作された場合の制御を含む点で上記した第1の実施形態に係る作業車両(トラクタ)1と異なる。
第2の実施形態では、制御部40は、自律運転モード中、作業機Wの規制高さH(図5B参照)が設定された後、作業中において、作業機高さ手動指定手段71、すなわち、作業者が作業機昇降レバー71A(図3参照)または作業機昇降レバー画像71B(図4参照)のいずれかを手動操作して規制高さHの位置よりも高い位置に作業機Wが上昇される場合には、作業機Wを指定高さに上昇させるとともに、後方センサ22(図5A参照)による検知を中止する。
図11に示すように、制御部40は、自動運転モード中(ステップS201)、後方センサ22による後方検知中か否かを判定する(ステップS202)。制御部40は、後方検知中であると判定した場合(ステップS202:Yes)、作業機Wの規制高さHを設定する(ステップS203)。制御部40は、作業機Wの規制高さHが設定されると、作業中において、作業機Wの上昇を規制高さH以下となるように規制する(ステップS204)。制御部40は、ステップS202の処理において、後方検知中でないと判定した場合(ステップS202:No)、後方検知中であると判定するまでこの処理を繰り返す。
次いで、制御部40は、作業機高さ手動指定手段71である作業機昇降レバー71Aまたは作業機昇降レバー画像71Bのいずれかを用いて、手動により作業機Wが指定高さ上昇操作されたか否かを判定する(ステップS205)。制御部40は、手動による指定高さ上昇操作されたと判定すると(ステップS205:Yes)、指定高さが設定高さ(規制高さH)よりも高いか否かを判定する(ステップS206)。制御部40は、指定高さが設定高さよりも高い場合(ステップS206:Yes)、後方検知を中止し(ステップS207)、作業機Wを指定高さまで上昇させる(ステップS208)。
制御部40は、ステップS205の処理において、手動による指定高さ上昇操作でないと判定した場合(ステップS205:No)、手動による指定高さ上昇操作と判定するまでこの処理を繰り返す。また、制御部40は、ステップS206の処理において、指定高さが設定高さ以下(または、指定高さが設定高さよりも低い、としてもよい)と判定した場合(ステップS206:No)、たとえば、後方検知を判定する処理に戻る。
このような制御によれば、作業者などにより手動で作業機Wの高さが指定された場合は作業機Wを作業者などの所望の高さまで上昇させることが好ましいため、後方センサ22が誤検知しないよう、後方センサ22による検知を中止することで作業を円滑に実行することができる。これにより、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、作業機高さ手動指定手段71(作業機昇降レバー71Aまたは作業機昇降レバー画像71B)によって作業機Wが上昇されても、走行車体2の自律走行を継続する。すなわち、自動運転モードを継続する。このような制御によれば、作業機昇降レバー71Aまたは作業機昇降レバー画像71Bによる作業機Wの上昇は作業者の意思であることから、作業者の監視のもと安全であると考えられるため、自動運転モードを継続することで、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、手動操作により作業機Wが下降された場合、作業機Wを規定高さH以下で検知すると、自律走行を停止する。また、制御部40は、手動操作により作業機Wが上昇され、後方センサ22が機能していない状態のときには、走行車体2の後進を規制する。また、制御部40は、手動操作により作業機Wが上昇され、後方センサ22が機能していない状態のときには、PTOクラッチの接続を規制する。また、制御部40は、作業機Wの上昇開始を検知すると、後方センサ22による障害物検知制御を停止する。
また、制御部40は、上記したように、リフトアームセンサ26(図1参照)の検知結果に基づいてリフトアーム122(図1参照)の回動角を制御することで作業機Wを昇降する。これにより、作業機Wの昇降制御を簡単に実現することができる。
<第3の実施形態>
次に、図12および図13を参照して第3の実施形態に係る作業車両(トラクタ)1について説明する。図12は、第3の実施形態に係る作業車両(トラクタ)1における自律走行中の旋回の説明図である。図13は、第3の実施形態に係る作業車両(トラクタ)1における後方検知の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する第3の実施形態は、後方検知を行わないエリアを設定する点で上記した第1および第2の実施形態と異なる。
図12に示すように、トラクタ1は、予定走行経路Rに沿って、圃場Fの入り口Finから圃場F内に進入し、適切に旋回走行しながら作業を自動で行う。また、プログラムによっては、作業後、圃場Fの出口Foutから圃場F外に出て、所定の場所で停止するといった制御も可能である。
なお、制御部40(図2参照)は、予定走行経路Rを設定する場合に、トラクタ1(走行車体2)を圃場Fの端部から横方向に1回、縦方向に1回走行させ、圃場Fの四隅となる4つの点を取得することで圃場Fを計測し、計測結果に基づいて予定走行経路Rを算出するように構成してもよい。
トラクタ1(走行車体2)は、圃場F内において直進し、畦(圃場Fの端縁)付近に到達すると旋回して再度直進することを繰り返しながら作業を行う。トラクタ1は、旋回を行う場合、旋回開始地点で旋回を開始し、旋回終了地点で旋回を終了する。制御部40は、トラクタ1(走行車体2および作業機W)の全長や全幅、機体能力に応じて予定走行経路R上に予め旋回開始地点および旋回終了地点を設定する。
第3の実施形態では、制御部40は、自律運転モード中に後方検知を行わないエリアを設定する。具体的には、制御部40は、走行車体2が旋回する地点に接近すると、後方センサ22による後方検知を中止する。なお、制御部40は、走行車体2の旋回開始を検知してから後方センサ22による後方検知を中止するよう制御してもよい。
図13に示すように、自動運転モード中(ステップS301)、予め設定された旋回開始地点付近に到達したか否かを判定する(ステップS302)。制御部40は、旋回開始地点付近に到達したと判定した場合(ステップS302:Yes)、後方センサ22による後方検知を中止し(ステップS303)、作業機Wを上昇させ(ステップS304)、旋回を開始する(ステップS305)。
次いで、制御部40は、旋回を終了し(ステップS306)、作業機Wを下降させ(ステップS307)、後方センサ22による後方検知を再開する(ステップS308)。制御部40は、ステップS302の処理において、旋回開始地点付近に到達していないと判定した場合(ステップS302:No)、旋回開始地点付近に到達したと判定するまでこの処理を繰り返す。
このような制御によれば、旋回時には作業機Wを自動で上昇させるため、旋回時に後方センサ22による検知を中止することで、後方センサ22が作業機Wを障害物として検知しないため、作業を円滑に実行することができる。これにより、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、上記したように、作業機Wを上昇させるとともに後方センサ22が作業機Wを検知した高さを規制高さH(図5B参照)として記憶し、作業中において、作業機Wの高さが記憶した規制高さH以下となるよう、作業機Wの上昇を規制する。このような制御によれば、作業中において作業機Wが障害物と誤検知する高さまで上昇しないよう規制することで作業を円滑に実行することができ、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、上記したように、リフトアームセンサ26(図1参照)の検知結果に基づいてリフトアーム122(図1参照)の回動角を制御することで作業機Wを昇降する。これにより、作業機Wの昇降制御を簡単に実現することができる。
また、制御部40は、旋回時に上昇させるタイプの作業機Wを装着していることを認識している場合には、旋回時の後方センサ22による後方検知を中止するように制御してもよい。
<第4の実施形態>
次に、図14を参照して第4の実施形態に係る作業車両(トラクタ)について説明する。図14は、第4の実施形態に係る作業車両(トラクタ)における後方検知の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する第4の実施形態は、前進時に後方検知を行わない点で上記した第1~第3の実施形態と異なる。
第4の実施形態では、制御部40は、自律運転モード中に走行車体2(図1参照)が前進している場合には後方センサ22(図1参照)による検知を中止する。
図14に示すように、制御部40は、たとえば、自動運転モード中、後方センサ22による後方検知中か否かを判定する(ステップS401)。制御部40は、後方検知中であると判定した場合(ステップS401:Yes)、走行車体2が前進しているか否かを判定する(ステップS402)。制御部40は、走行車体2が前進していると判定した場合(ステップS402:Yes)、後方センサ22による後方検知を中止する(ステップS403)。
制御部40は、ステップS401の処理において、後方検知中でないと判定した場合(ステップS401:No)、後方検知中であると判定するまでこの処理を繰り返す。また、制御部40は、ステップS402の処理において、走行車体2が前進していないと判定した場合(ステップS402:No)、前進していると判定するまでこの処理を繰り返す。
このような制御によれば、走行車体2が前進している場合は機体の後方を監視する必要性が低いことから、後方センサ22による検知を中止することで、後方センサ22が作業機を障害物として検知しないため、作業を円滑に実行することができる。これにより、作業効率の低下を抑えることができる。
また、制御部40は、上記したように、リフトアームセンサ26(図1参照)の検知結果に基づいてリフトアーム122(図1参照)の回動角を制御することで作業機Wを昇降する。これにより、作業機Wの昇降制御を簡単に実現することができる。
また、制御部40は、上記したように、走行車体2の予定走行経路R(図12参照)を記憶し、測位装置30(図1参照)の測定結果に基づいて、予定走行経路Rに沿って自律走行しつつ作業を実行させる自律運転モードを有する。これにより、自律運転モードの場合においても機体の後方を監視することで、安全性を向上させることができる。
また、制御部40は、走行車体2が後進を開始する場合は、所定時間前から後方センサ22による後方検知を行うことが好ましい。また、制御部40は、作業機Wを下降させる場合には、所定時間前から後方センサ22による後方検知を行うことが好ましい。また、制御部40は、PTOクラッチを接続する場合も、所定時間前から後方センサ22による後方検知を行うことが好ましい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。