JP7005687B2 - レボカルニチンを含有する医薬錠剤 - Google Patents

レボカルニチンを含有する医薬錠剤 Download PDF

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Description

本発明は、レボカルニチンを含有する医薬錠剤に関する。
レボカルニチン(L-カルニチン)は、カルニチン欠乏症の治療のために医薬品として用いられている。カルニチン欠乏症を発現する原因として、先天代謝異常(カルニチントランスポーター異常症、有機酸代謝異常症、脂肪酸代謝異常症など)、後天的医学条件(肝硬変やFanconi syndromeなど)や医療行為(透析や薬剤性など)が挙げられる。
カルニチン欠乏症の処置のために処方されるレボカルニチン(フリー体)の1日用量は、高用量であり、例えば成人においては通常1.5~3gが3回に分割されて経口投与される。したがって、投与が簡便であり、レボカルニチンの1日用量を提供するのに便利な経口投与形態が求められている。
医薬製剤の形態(剤形)としては、患者の服薬容易性、取扱い容易性等を考慮した場合、錠剤がもっとも好ましいと考えられる。しかしながら、レボカルニチン(フリー体)は極めて高い吸湿性や潮解性を有することから、固形剤(特に錠剤)の形態として用いる場合には、原材料および最終製品の両方において、処理、安定性および保存性の問題が生じる。すなわち、工程管理の困難性や、打錠障害等の製造障害、最終製品の経時的な製剤同士の付着や、変色、味の変化等の問題がある。
レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性に起因する問題を解決するために、様々な検討がなされてきており、例えば、L-カルニチン及びポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含有する顆粒化生成物(特許文献1)や、カルニチンで被覆されたシリカキャリアからなるカルニチン顆粒(特許文献2)が開示されている。
一方、吸湿、潮解性の比較的低い酒石酸塩、フマル酸塩、塩酸塩等のL-カルニチンの塩を用いた製剤検討もなされてきており、塩化カルニチン(カルニチン塩化物)を吸着性物質に吸着せしめてなる固形物(特許文献3)、カルニチン含有固形物をシェラック膜でコーティングした後、酵母細胞壁膜で更にコーティングしてなるカルニチン含有製品(特許文献4)、カルニチン類、硬化油及びマンニトールを含有する固形製剤(特許文献5)、カルニチンまたはその塩とジメチルポリシロキサン又はその誘導体を含有する固形製剤(特許文献6)等が知られている。また、レボカルニチン塩化物を有効成分とするカルニチン欠乏症治療用の医薬錠剤が既に上市されている。
慢性腎不全患者において、塩化物の大量投与により、アシドーシスの悪化が見られることがあるとの報告があり、また、透析患者は食塩の摂取制限を行なっている。レボカルニチン塩化物を透析患者が服用した場合、カルニチンイオンは透析膜を通過できない一方、塩化物イオンは透析膜を通過するために、透析患者の体内が酸性状態に偏る可能性が示唆されている。
特表2002-540153号公報 特表2013-513557号公報 特開平8-012569号公報 特開2006-111550号公報 特開2008-208043号公報 特開2014-024793号公報
上記のレボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性に起因する問題を解決でき、レボカルニチンの塩ではないフリー体を処方することができれば、このような潜在的副作用に対するリスク回避につながると期待される。
本発明は上記の問題について鑑み、フリー体のレボカルニチンの含有量が高いにもかかわらず患者に適した大きさの錠剤であり、かつ、レボカルニチンの高い吸湿性や潮解性に起因する打錠やコーティングの困難性が軽減され、容易に製造することが可能な、安定な錠剤を提供することを課題とする。
さらには、レボカルニチン(フリー体)を含有する安定なフィルムコーティング錠を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を40~80重量%、水不溶性の添加剤を15~55重量%含有する医薬錠剤が、レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性に起因する影響が軽減され、容易に製造することを可能とし、また、製造後の錠剤も安定であることを見出した。さらに本発明者らは、製造方法を工夫するなどの検討を重ねて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.錠剤の総重量に対して、レボカルニチン(フリー体)を40~80重量%、及び水不溶性の添加剤を15~55重量%含有する医薬錠剤。
項2.錠剤中の残留溶媒が5000ppm未満である項1に記載の医薬錠剤。
項3.水不溶性の添加剤として、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素及びトウモロコシデンプンからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤を含有する項1または2に記載の医薬錠剤。
項4.水不溶性の添加剤が、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素及びトウモロコシデンプンからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤(特に好ましくは、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤)である項1~3のいずれかに記載の医薬錠剤。
項5.水不溶性の添加剤として、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤を含有する項1~4のいずれかに記載の医薬錠剤。
項6.水不溶性の添加剤が、結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤である項1~5のいずれかに記載の医薬錠剤。
項7.水不溶性の添加剤として、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び軽質無水ケイ酸を含有する、項1~5のいずれかに記載の医薬錠剤。
項8.水不溶性の添加剤が、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及
び軽質無水ケイ酸である、項1~5のいずれかに記載の医薬錠剤。
項9.錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を45~75重量%、及び水不溶性の添加剤を20~50重量%含有する、項1~8のいずれかに記載の医薬錠剤。
項10.錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を50~65重量%、及び水不溶性の添加剤を30~46重量%含有する、項1~9のいずれかに記載の医薬錠剤。
項11.項1~10のいずれかに記載の医薬錠剤の表面にコーティング層を有する、コーティング錠。
項12.項1~10のいずれかに記載の医薬錠剤を製造する方法であって、
(α)レボカルニチン(フリー体)及び水不溶性の添加剤(a)を含有する打錠用顆粒を製造する工程、並びに
(β)得られた打錠用顆粒及び水不溶性の添加剤(b)を混合し圧縮して錠剤を製造する工程(α工程及びβ工程で用いる水不溶性の添加剤(a)及び(b)は同一又は異なっていてもよい)
を含む、製造方法。
項13.α工程において、レボカルニチン(フリー体)100重量部に対し、水不溶性の添加剤(a)を5~75重量部を含有する打錠用顆粒を製造する、項12に記載の製造方法。
項14.α工程で用いる水不溶性の添加剤(a)及びβ工程で用いる水不溶性の添加剤(b)として、それぞれ結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤を含有する、項12又は13に記載の製造方法。
項15.α工程で用いる水不溶性の添加剤(a)及びβ工程で用いる水不溶性の添加剤(b)が、それぞれ結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種の添加剤である、項12~14のいずれかに記載の製造方法。
項16.打錠用顆粒に、さらに軽質無水ケイ酸が含有される、項12~15のいずれかに記載の製造方法。
項17.β工程において、混合される水不溶性の添加剤(b)の配合量が、打錠用顆粒の総重量の50重量%以下である、項12~16のいずれかに記載の製造方法。
本発明に係る医薬錠剤は、フリー体のレボカルニチンを含むにもかかわらず、潮解性や吸湿性が抑えられており、安定性に優れる。また、本発明に係る医薬錠剤を製造する際の打錠やさらにスプレーコーティングすることも容易に行うことができる。
また、本発明の医薬錠剤の製造方法においては、吸湿性および潮解性を有するレボカルニチン(フリー体)を高い含有量で含むにもかかわらず、この吸湿性の高さに起因する困難性が軽減されている。例えば、当該医薬錠剤の製造工程において、ベタつき(粘着性)が抑制され、打錠しても錠剤が所望の形とならなかったり、打錠機に固着が見られたりすることがほとんどない。そのため、本発明の医薬錠剤は潮解性も抑制されており、安定性に優れる。つまり、吸湿しても崩壊し難い医薬錠剤が得られる。また、レボカルニチン(フリー体)は、水に極めて溶けやすいために、造粒工程において有機溶媒(例えばエタノール)を用いる必要があるところ、有機溶媒が多く残留することは好ましくないが、本発明においては、有機溶媒(例えばエタノール)の残留も少ない。さらに、当該錠剤は潮解性が抑制されているため、スプレーコーティングによりコーティングを施すことも可能である(仮に潮解性が抑制されていなければ、スプレーにより吸湿して錠剤の形が崩れるなどしてしまう虞がある)。さらに付け加えれば、当該錠剤にコーティングを施すことにより、さらに吸湿を抑制することもできる。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明は、錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を40~80重量%、水不溶性の添加剤を15~55重量%含有する医薬錠剤に関する。
本発明において、レボカルニチンは、特に断らない限りフリー体(分子内塩)を示す。即ち、本発明におけるレボカルニチンは、次の化学式で表される化合物である。(当該化合物の化学名は「(R)-3-Hydroxy-4-trimethylammoniobutanoate」である。)
Figure 0007005687000001
本発明の医薬錠剤に、錠剤の総重量に対し15~55重量%含まれる添加剤は、水不溶性の添加剤である。また、崩壊剤あるいは賦形剤としての機能を有するものが好ましい。なお、本発明において、「水不溶性」の添加剤とは、日本薬局方通則でいう、“水にほとんど溶けない”添加剤を意味する。すなわち、(固形の添加剤の場合は粉末とした後、)添加剤1gを水に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶かすために要する水量が10000mL以上である添加剤をいう。さらに、本発明でいう「水不溶性の添加剤」とは、後述の水不溶性の添加剤(a)及び(b)を意味する。
例えば、デキストリンは崩壊剤や賦形剤として使用されるが、水不溶性ではないため、本発明の医薬錠剤において、錠剤の総重量に対し15~55重量%含まれる添加剤として用いるには不適である。本発明の医薬錠剤では、錠剤の総重量に対し15~55重量%含まれる添加剤として水不溶性ではないものを用いることは好ましくない。なお、錠剤の総重量に対し15~55重量%水不溶性の添加剤が含まれており、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、水不溶性ではない添加剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬錠剤に含まれる水不溶性の添加剤としては、具体的には、例えば結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、沈降炭酸カルシウム、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム造粒物等が挙げられる。
これらの中で、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、トウモロコシデンプンは、カルボキシ基あるいはヒドロキシ基を有している。
これらの官能基は、水分子、又はエタノール等の有機溶媒分子を水素結合によりトラップする性質を有しているため、通常は水を含みやすい性質や溶媒を残留しやすい性質を持つ錠剤が製造されやすい。しかし、本発明に係る医薬錠剤においては、このような官能基を有する水不溶性の添加剤を用いても、上記の通り潮解性が抑制され残留溶媒も少なくできるという特徴を有する。
本発明の医薬錠剤に含まれる水不溶性の添加剤として、好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、トウモロコシデンプンである。より好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸および含水二酸化ケイ素であり、さらに好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸である。結晶セルロース及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを両方含むことが特に好ましく、さらに軽質無水ケイ酸も含むことがより好ましい。
本発明に用いられる低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとしては、1グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシ基の数であるモル置換度(moles of substitution;MS)が0.2~0.4であるヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。また、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース中のヒドロキシプロポキシ基の置換率としては、5~16%程度のものが好ましく、7~12%程度のものがより好ましい。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの水酸基を酸化プロピレンでエーテル化することで製造することができる。また、市販品を購入して用いることもできる。例えば、信越化学工業株式会社(特にLHシリーズ)から購入して用いることができる。なお、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース中のヒドロキシプロポキシ基の置換率は、第十六改正日本薬局方に準拠して測定することができる。
本発明に用いられる結晶セルロースは、特に制限されず、公知のものを用い得る。市販品を購入して用いることができる。例えば、セオラスシリーズ(旭化成ケミカルズ株式会社)等を購入して用いることができる。
本発明に用いられる軽質無水ケイ酸は、特に制限されず、公知のものを用い得る。市販品を購入して用いることができる。例えば、アドソリダー-101(フロイント産業)等を
購入して用いることができる。
なお、本発明の医薬錠剤に含まれる水不溶性の添加剤は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用して使用してもよい。
本発明の医薬錠剤において、レボカルニチン(フリー体)の含有量は、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総重量の40~80重量%、好ましくは45~75重量%、さらに好ましくは50~65重量%である。コーティング錠の総重量に対しては、40~80重量%、好ましくは45~75重量%、さらに好ましくは50~65重量%である。
また、本発明の医薬錠剤において、水不溶性の添加剤の含有量は、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総重量の15~55重量%、好ましくは20~50重量%、さらに好ましくは30~46重量%である。
また、本発明の医薬錠剤において、レボカルニチン(フリー体)と水不溶性の添加剤の含有比率は、前記レボカルニチン(フリー体)あるいは水不溶性の添加剤の医薬錠剤の総重量に対する含有量から導き出されるが、レボカルニチン(フリー体)100重量部に対し、水不溶性の添加剤を、20~130重量部とするのが好ましく、25~110重量部とするのがより好ましく、45~90重量部とするのがさらに好ましい。
本発明の医薬錠剤においては、本発明の効果を損なわない限り、レボカルニチン(フリー体)および水不溶性の添加剤以外の成分を含んでもよい。
本発明の医薬錠剤を調製するにあたり、通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、表面活性剤、流動化剤、滑沢剤などを用いることができる。
この他必要に応じて緩衝剤、保存剤、等張化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収促進剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、吸着剤、香料、着色剤、矯味剤、抗酸化剤、遮光剤、コーティング剤、光沢剤などを使用することができる。
より具体的には、結合剤としては例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、α化デンプンなどを用い得る。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどを用い得る。
結合剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総重量の約0.1~5重量%程度が好ましく、約0.5~3重量%程度がより好ましい。
滑沢剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、錠剤(コーティング錠である場合はコーティング前の素錠)総重量の約0.1~5重量%程度が好ましく、約0.4~3重量%程度がより好ましい。
また、本発明の医薬錠剤は、残留溶媒(特に残留エタノール)濃度がICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)で検討された「医薬品の残留溶媒ガイドライン」の規格(エタノールの場合5000ppm以下)を好ましく満たし得る。なお、残留溶媒濃度は、第十六改正日本薬局方の残留溶媒試験法に従い、医薬品中に残留する有機溶媒の量をガスクロマトグラフィーにより測定した値である。
本発明の医薬錠剤は、そのまま(つまりコーティング層を施さない素錠として)用いることもできるし、さらにコーティングを施してコーティング錠として用いることもできる。レボカルニチン(フリー体)の吸湿性や潮解性による形状変化(膨張、割れ、崩壊等)や重量変化に対する長期的な保存安定性や劣化の防止という観点から、コーティングを施したコーティング錠(特にフィルムコーティング錠)とすることが好ましい。
コーティング層には、コーティング剤、可塑剤、分散剤、消泡剤、着色剤など、通常経口投与医薬品のコーティング(皮膜)処理を施す際に用いられる医薬品添加物を必要に応じて添加することができる。
これらのコーティング用医薬品添加物としては、具体的には、例えば結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)等のセルロース又はその誘導体;ポリエチレングリコール(マクロゴール)、ポリビニルアルコール、酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄等の酸化鉄、β―カロテン、食用青色2号、食用青色2号アルミニウムレーキ、及びリボフラビン等を挙げることができ、これらは、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用して使用してもよい。
コーティング層に用いる当該添加剤の量は、素錠(つまりコーティング前の医薬錠剤)
100重量部に対して、約1.5~10重量部程度が好ましく、約2~8重量部程度がより好ましく、約3~7重量部程度がさらに好ましい。
本発明の医薬錠剤中におけるレボカルニチンは、好ましくは約50~1000mg程度、より好ましくは約100~500mg程度で含有されることが好ましい。このような範囲でレボカルニチンを医薬錠剤中に含有させることで、レボカルニチンの一日用量を容易に摂取することが可能な医薬錠剤が得られ、また、レボカルニチンの血中濃度の維持のため薬物動態学的観点から好ましい。
本発明の医薬錠剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常、一日当りレボカルニチンの量として約25~100mg/kg程度で摂取することが好ましい。
本発明の医薬錠剤としては、上記の含有量の錠剤となるように製造される。
本発明の医薬錠剤は、例えば、レボカルニチンを含有する打錠用顆粒を形成させ、これを1種またはそれ以上の添加剤(好ましくは上記水不溶性の添加剤)とともに混合し、得られた混合物を圧縮することで好ましく製造できる。所望により、得られた錠剤を更にコーティングしてもよい。
打錠用顆粒は、レボカルニチンおよび水不溶性の添加剤(a)を含有する。本発明の医薬錠剤に含有されるレボカルニチンの全量が、打錠用顆粒に含有されることが好ましい。
打錠用顆粒に含有される水不溶性の添加剤(a)は、上述した本発明の医薬錠剤に含まれる水不溶性の添加剤と同じものを用いることができ、好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、トウモロコシデンプンである。
より好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸および含水二酸化ケイ素であり、さらに好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、軽質無水ケイ酸である。水不溶性の添加剤(a)としては、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
打錠用顆粒における水不溶性の添加剤(a)の含有量は、レボカルニチン(フリー体)100重量部に対し、好ましくは5~75重量部、より好ましくは5~60重量部、さらに好ましくは10~50重量部である。特に、100重量部のレボカルニチン(フリー体)に対し、10~50重量部の結晶セルロース、10~20重量部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、5~15重量部の軽質無水ケイ酸を用いることが好ましい。
レボカルニチン(フリー体)100重量部に対し、水不溶性の添加剤(a)(特に、カルボキシ基あるいはヒドロキシ基を有している添加剤)を80重量部以上含有する場合、得られた打錠用顆粒中の残留溶媒(特に残留エタノール)濃度がICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)の規格(5000ppm以下)を上回る傾向にある。そのため、打錠用顆粒における水不溶性の添加剤(a)の含有量は、レボカルニチン(フリー体)100重量部に対し、80重量部未満であることが好ましい。
打錠用顆粒における結合剤の含有量は、打錠用顆粒の総重量に対して約0.5~5重量%程度が好ましく、約0.8~3重量%程度がより好ましい。
打錠用顆粒には、本発明の効果を損なわない限り、レボカルニチン(フリー体)、水不溶性の添加剤(a)および結合剤以外の成分を含んでもよく、通常使用される賦形剤、崩壊剤、表面活性剤、流動化剤、滑沢剤などを用いることができる。ただし、例えばデキストリンのような水溶性の添加剤は、造粒適性を損なう傾向がある。そのため、水溶性の添加剤は実質的に含まないことがより好ましい。
打錠用顆粒を得るための造粒法は、特に限定されないが、例えば、湿式造粒法(例えば、流動層造粒法、練合造粒法等)を用いることが好ましい。例えば、レボカルニチン、水不溶性の添加剤(a)およびその他の添加可能な成分を、例えば撹拌混合造粒機を用いて撹拌混合した後、さらに結合液を加えて練合、造粒し、湿式顆粒を得る。湿式顆粒は、例えば真空乾燥機、流動床乾燥機等を用いて乾燥し得る。乾燥条件としては、乾燥温度約70~80℃、乾燥時間約2~3時間で行うことが好ましい。なお、本明細書における、打錠用顆粒重量を基準とした重量部又は重量%の記載は、特に断らない限り、乾燥した打錠用顆粒を基準としている。(すなわち、乾燥質量換算である。)
得られた乾燥顆粒は、例えば振動篩、ミル等を用いて整粒してもよい。整粒に用いる篩としては、目開き約1mmであることが好ましく、目開き約0.85mmであることがより好ましい。
本発明は、レボカルニチンを含有する打錠用顆粒と添加剤を含む錠剤の製造方法にも関する。なお、以下、本発明の医薬錠剤の製造において打錠用顆粒とあわせて用いる添加剤を「打錠用添加剤」ともいう。従って、打錠用添加剤は、本発明の医薬錠剤に含まれる“水不溶性の添加剤”及び“レボカルニチン(フリー体)および水不溶性の添加剤以外の成分”に包含される。打錠用添加剤は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、打錠用添加剤として水不溶性の添加剤が用いられる場合、打錠用顆粒に含まれる水不溶性の添加剤(a)と、打錠用添加剤として用いられる水不溶性の添加剤(b)とは、同一であっても異なっていてもよい。
レボカルニチンを含有する打錠用顆粒と打錠用添加剤とを均一に混合する。混合方法は公知の方法を用いることができ、例えば容器回転式混合機や固定型混合機を用いて混合することができる。混合物を通常の方法、例えばロータリー式打錠機を用いて打錠することにより、錠剤を製造できる。
レボカルニチンを含有する打錠用顆粒と混合する打錠用添加剤のうち、“レボカルニチン(フリー体)および水不溶性の添加剤以外の成分”としては、1種または2種以上の滑沢剤を用いることが好ましい。滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられ、なかでもステアリン酸マグネシウムが好ましい。滑沢剤の混合割合としては、特に限定されるものではないが、得られる錠剤(素錠)総重量の約0.1~5重量%程度が好ましく、約0.5~3重量%程度がより好ましい。
特に好ましい製造方法として、上記レボカルニチンを含有する打錠用顆粒に、滑沢剤および水不溶性の添加剤(b)を混合して圧縮(特に打錠)する方法が挙げられる。
水不溶性の添加剤(b)としては、上述した、医薬錠剤に含まれる水不溶性の添加剤と同じものを用いることができる。なかでも、崩壊剤あるいは賦形剤としての機能を有するものが好ましく、具体的には、例えば結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナト
リウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、合成ケイ酸アルミニウム、沈降炭酸カルシウム、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸水素カルシウム造粒物等が挙げられる。水不溶性の添加剤(b)は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、トウモロコシデンプンが挙げられ、より好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、軽質無水ケイ酸であり、さらに好ましくは、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。
レボカルニチンを含有する打錠用顆粒と混合する水不溶性の添加剤(b)の量は、打錠用顆粒の総重量の50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。また、下限は特に制限されないが、例えば10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましい。
また、打錠用顆粒に含まれる水不溶性の添加剤(a)の配合量と、打錠用添加剤として用いられる水不溶性の添加剤(b)の配合量とは、重量部比で、前者:後者が100:0~300程度が好ましく、100:25~250程度がより好ましく、100:50~200程度がさらに好ましい。即ち、水不溶性の添加剤(a)100重量部に対して、水不溶性の添加剤(b)の配合量は、0~300重量部程度が好ましく、25~250重量部程度がより好ましく、50~200重量部程度がさらに好ましい。
本発明は、上記の、レボカルニチンを含有する打錠用顆粒及び添加剤を含有する錠剤の表面にコーティングを施したコーティング錠の製造方法も包含する。コーティングは公知の方法を用いることができ、例えば、前記の製造方法を用いて製造された素錠に、コーティング層に用いる添加剤及び液状媒体を混合して得られた混合液を素錠に連続的にスプレー及び乾燥することによりコーティングする工程により製造される。コーティング層に用いる添加剤としては、上述した通常経口投与医薬品のコーティング(皮膜)処理を施す際に用いられる医薬品添加物と同じものを用いることができる。
本発明の医薬錠剤の特に好ましい形態において、各成分は、以下の好ましい含有割合及び含有量で含まれる。
錠剤中の各成分の含有割合
(1)レボカルニチン(フリー体) : 40~80重量%
(2)結晶セルロース : 5~55重量%
(3)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース: 0~50重量%
(4)軽質無水ケイ酸 : 0~20重量%
(5)ヒドロキシプロピルセルロース : 0.1~5重量%
(6)ステアリン酸マグネシウム : 0.1~5重量%
本発明の医薬錠剤のさらに好ましい形態において、各成分は、以下の好ましい含有割合及び含有量で含まれる。
錠剤中の各成分の含有割合
(1)レボカルニチン(フリー体) : 45~75重量%
(2)結晶セルロース : 10~45重量%
(3)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース: 5~25重量%
(4)軽質無水ケイ酸 : 2~10重量%
(5)ヒドロキシプロピルセルロース : 0.5~3重量%
(6)ステアリン酸マグネシウム : 0.4~3重量%
本発明の医薬錠剤の好ましい形態は、以下の工程によって製造され得る。
(1)得られる錠剤総重量に対して、40~80重量%のレボカルニチン(フリー体)、5~55重量%の結晶セルロース、0~50重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、所望により、0~20重量%の軽質無水ケイ酸を攪拌混合する。
(2)別に、得られる錠剤総重量に対して、0.1~5重量%のヒドロキシプロピルセルロースを水及びエタノールの混合溶液に溶解する。
(3)(1)で得られた混合物、及び(2)で得られた結合液を、練合及び造粒する。
(4)得られた湿式顆粒を乾燥する。
(5)(4)で得られた顆粒に、得られる錠剤総重量に対して0.1~5重量%のステアリン酸マグネシウムを加え、さらに必要に応じて、結晶セルロース及び/又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを加え(ただし、加える量は、得られる錠剤総重量に対して、得られる錠剤中の結晶セルロースの全量が5~55重量%となり、得られる錠剤中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの全量が0~50重量%となる量である)、
均一に混合した後、打錠する。
本発明の医薬錠剤のより好ましい形態は、以下の工程によって製造される。
(1)得られる錠剤総重量に対して、45~75重量%のレボカルニチン(フリー体)、3~40重量%の結晶セルロース、2~25重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、所望により、2~10重量%の軽質無水ケイ酸を攪拌混合する。
(2)別に、得られる錠剤総重量に対して、0.5~3重量%のヒドロキシプロピルセルロースを水及びエタノールの混合溶液に溶解する。
(3)(1)で得られた混合物、及び(2)で得られた結合液を、練合及び造粒する。
(4)得られた湿式顆粒を乾燥する。
(5)(4)で得られた顆粒に、得られる錠剤総重量に対して、7~42重量%の結晶セルロース、1~10重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び0.4~3重量%のステアリン酸マグネシウムを加え(ただし、加える量は、得られる錠剤総重量に対して、得られる錠剤中の結晶セルロースの全量が10~45重量%となり、得られる錠剤中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの全量が5~25重量%となる量である)、均一に混合した後、打錠する。
本発明の医薬錠剤にコーティングを施してなるコーティング錠の好ましい形態は、以下の工程によって製造され得る。
(1)得られる錠剤総重量に対して、45~75重量%のレボカルニチン(フリー体)、3~40重量%の結晶セルロース、2~25重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、所望により、2~10重量%の軽質無水ケイ酸を攪拌混合する。
(2)別に、得られる錠剤総重量に対して、0.5~3重量%のヒドロキシプロピルセルロースを水及びエタノールの混合溶液に溶解する。
(3)(1)で得られた混合物、及び(2)で得られた結合液を加え、練合及び造粒する。
(4)得られた湿式顆粒を乾燥する。
(5)(4)で得られた顆粒に、得られる錠剤総重量に対して、7~42重量%の結晶セルロース、1~10重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び0.4~3重量%のステアリン酸マグネシウムを加え(ただし、加える量は、得られる錠剤総重量に対して、得られる錠剤中の結晶セルロースの全量が10~45重量%となり、得られる錠剤中の低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの全量が5~25重量%となる量である)、均一に混合した後、打錠する。
(6)(5)で得られた錠剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース
)、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、酸化チタン、タルクを水-エタノール混合溶液に分散させたコーティング液をスプレーし、乾燥する。
また、本発明の医薬錠剤は、例えば以下の製造方法によっても好ましく製造され得る。(1)100重量部のレボカルニチン(フリー体)に対し、10~50重量部の結晶セルロース、10~20重量部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、所望により、5~15重量部の軽質無水ケイ酸を攪拌混合する。
(2)別に、0.1~5重量部のヒドロキシプロピルセルロースを、水及びエタノールの混合溶液に溶解する。(当該ヒドロキシプロピルセルロースの重量部は、上記レボカルニチン(フリー体)量を100重量部としたときの値である)
(3)(1)で得られた混合物、及び(2)で得られた結合液を、練合及び造粒する。
(4)得られた湿式顆粒を乾燥する。
(5)(4)で得られた顆粒に、当該顆粒総重量100重量%に対して、5~55重量%の結晶セルロース、0~50重量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び0.1~5重量%のステアリン酸マグネシウムを加え、均一に混合した後、打錠する。
なお、当該工程(1)において用いる、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び軽質無水ケイ酸の合計量は、用いるレボカルニチン(フリー体)を100重量部とすると、30~45重量部であることが好ましい。特に、軽質無水ケイ酸を用いる場合においては、重量部比で、結晶セルロース:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:軽質無水ケイ酸が10:9.5~11.5:4.5~6.5程度であることが好ましい。また、当該工程(5)では、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの合計量が、顆粒総重量100重量%に対して50重量%以下であることが好ましく、45重量%以下であることがより好ましい。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下の例で用いた低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは信越化学工業株式会社のL-HPCであり、モル置換度(MS)が0.2~0.4のヒドロキシプロピルセルロースである。
また、結合液調製に用いたヒドロキシプロピルセルロース(HPC)はモル置換度(MS)が3であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換率は53.4%~77.5%である。
製剤例1(打錠用顆粒)
表1に従い、レボカルニチン(フリー体、LONZA)、水不溶性の添加剤(結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、軽質無水ケイ酸)を、撹拌混合造粒機に投入し混合した。別にポビドン(ポビドン25)あるいはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を水-エタノール溶液に溶解して調製した結合液を、撹拌混合造粒機に投入し、練合し顆粒を得た。得られた顆粒の粒子を真空乾燥機を用いて70~80℃で2~3時間乾燥させた。乾燥後の顆粒(以下、乾燥させた顆粒を顆粒製剤ともいう)について、残留エタノール濃度を測定した。なお、残留エタノール濃度の測定は、第十六改正日本薬局方の残留溶媒試験法に従い、ガスクロマトグラフィーにより行った。
Figure 0007005687000002
顆粒製剤1~6の造粒工程において、攪拌造粒機のブレード(羽)負荷電流値の変化はほとんど無く、また、装置(缶体)への付着もほとんど見られず、レボカルニチンの吸湿性及び潮解性に起因する造粒適性の悪化は認められなかった。
結晶セルロースが、顆粒製剤の全重量に対して43.5重量%含まれており、また、顆粒製剤中のレボカルニチン100重量部に対して80重量部含まれる顆粒製剤1では、残留エタノール濃度が11078ppmと、医薬品の残留溶媒ガイドラインの規格を超える高い値を示した。
製剤例2(打錠用顆粒)
表2に従い、レボカルニチン(フリー体、LONZA)、水不溶性の添加剤(結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、軽質無水ケイ酸)及びデキストリンを、撹拌混合造粒機に投入し混合した。別にヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を水-エタノール溶液に溶解して調製した結合液を、撹拌混合造粒機に投入し、練合し、顆粒を調製した。
Figure 0007005687000003
造粒成分に水溶性の添加剤であるデキストリンを添加した顆粒7~9は、造粒工程において過練合状態となり、打錠用顆粒としては取扱いが困難な粗大な顆粒であった。
製剤例3(錠剤)
表3に従い、レボカルニチン(フリー体、LONZA)、水不溶性の添加剤(結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、軽質無水ケイ酸)を、撹拌混合造粒機に投入し混合した。別にポリビニルピロリドン(ポビドン25)あるいはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を水-エタノール溶液に溶解して調製した結合液を、撹拌混合造粒機に投入し、練合し顆粒を得た。得られた顆粒の粒子を真空乾燥機を
用いて70~80℃で2~3時間乾燥させ、打錠用顆粒製剤を得た。容器回転式混合機に該打錠用顆粒製剤および表3に記載の後添加成分を入れて混合した。混合組成物をロータリー式打錠機を用いて打錠し、錠剤(素錠)を得た。錠剤には、レボカルニチンが約100mg含まれるようにした。
Figure 0007005687000004
なお、素錠1及び2の顆粒成分混合割合は上記顆粒製剤2と同じであり、素錠3の顆粒成分混合割合は上記顆粒製剤3と同じであり、素錠4~6の顆粒成分混合割合は上記顆粒製剤4と同じであり、素錠7~9の顆粒成分混合割合は上記顆粒製剤6と同じである。
また、打圧8kNあるいは10kNで打錠した際に、得られた錠剤について、錠剤物性(厚み、硬度、崩壊時間)を測定し、表4及び表5に示した。
硬度は、Schleuniger錠剤硬度計を用いて各素錠の直径方向の硬度を測定した。
各素錠の崩壊性は、具体的には、「第十六改正日本薬局方 一般試験法 崩壊試験法(1)即放性製剤」に従って、崩壊性を確認した。なお、試験液としては水を用いた。また、補助盤は使用しなかった。
Figure 0007005687000005
Figure 0007005687000006
顆粒成分に含有される水不溶性の添加剤が結晶セルロースのみの素錠1~3に比べ、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含有する素錠4及び5では、硬度の上昇がみられた。顆粒成分に結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及び軽質無水ケイ酸を含有する素錠7~9では、さらに硬度は高くFC(フィルムコーティング)適性の上昇が認められ、また、崩壊も早くなった。
また、後添加成分として水不溶性の添加剤(具体的には、結晶セルロースと低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)を含有する素錠8及び9は、後添加成分として水不溶性の添加剤を含有しない素錠7と比較して打錠適性に優れており、得られた錠剤の潮解性も抑えられていた。
製剤例4(フィルムコーティング錠)
表6の顆粒成分及び後添加成分を用いて、製剤例3と同様にして、顆粒製剤を得、さらに当該顆粒製剤から錠剤(素錠)を製造した。そして、各素錠をフィルムコーティング機に入れ、1錠当たりのフィルム皮膜量が18mgとなるように、フィルムコーティング液をスプレーし、その後乾燥させて、各例のコーティング錠を得た。
なお、フィルムコーティング液は、表4に示す皮膜成分を無水エタノールに分散させた後、精製水と混合して調製したものを用いた。また、コーティング錠1の製造における顆粒成分混合割合は上記顆粒製剤5と同じであり、コーティング錠2の製造における素錠は上記素錠8と同じ組成及び製造方法で得られたものであり、コーティング錠3の製造における素錠は上記素錠9と同じ組成及び製造方法で得られたものである。
Figure 0007005687000007

Claims (7)

  1. 錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を45~75重量%、及び水不溶性の添加剤を20~50重量%含有し、
    水不溶性の添加剤として、少なくとも結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及び軽質無水ケイ酸を含有し、
    結晶セルロースを10~45重量%、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを5~25重量%含有する
    医薬錠剤。
  2. 錠剤の総重量に対し、レボカルニチン(フリー体)を50~65重量%、及び水不溶性の添加剤を30~46重量%含有する、請求項1に記載の医薬錠剤。
  3. 請求項1又は2に記載の医薬錠剤(但し、医薬錠剤を構成するレボカルニチン粉末が、レボカルニチン粉末60~90重量%をナタネ油10~40重量%で被覆した粉末である医薬錠剤、及びカルシウムドベシレートを含有する医薬錠剤は除く)。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載の医薬錠剤(但し、Lカルニチン60~90重量部に対してナタネ油を10~40重量部含む医薬錠剤、及びドベシレートを含有する医薬錠剤は除く)。
  5. 請求項1~3のいずれかに記載の医薬錠剤(但し、Lカルニチン60~90重量部に対して融点40℃以上の油性成分を10~40重量部含む医薬錠剤、及びドベシレートを含有する医薬錠剤は除く)。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の医薬錠剤の表面にコーティング層を有する、コーティング錠。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の医薬錠剤を製造する方法であって、
    (α)レボカルニチン(フリー体)及び水不溶性の添加剤(a)を含有する打錠用顆粒を製造する工程、並びに
    (β)得られた打錠用顆粒及び水不溶性の添加剤(b)を混合し圧縮して錠剤を製造する工程(α工程及びβ工程で用いる水不溶性の添加剤(a)及び(b)は同一又は異なっていてもよい)
    を含む、製造方法。
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