JP7005400B2 - 光学積層体の製造方法及び積層束の製造方法 - Google Patents
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ここで、積層束から1セットの光学積層体を取り出す工程において、静電気力などにより、複数の光学積層体が密着した状態で取り出されること(以下、「多重取り」とも言う)があり、作業効率の観点から望ましくない。
また、近年においては、光学積層体全体の厚さが薄くなっており、例えば、積層束から1セットの光学積層体を取り出す工程において、光学積層体に傷が生じたり、割れが生じたりすることを防がなければならない。
さらに、本発明は、多重取りを低減又は抑制できる光学積層体を複数枚重ね合わせた積層束の製造方法を提供する。
[1]少なくとも、光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとをこの順で有する光学積層体の製造方法であって、
(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層すること、
(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施すことを含み、
前記表面改質処理は、コロナ処理、プラズマ処理、グロー処理及びオゾン処理から選ばれる少なくとも1種である、光学積層体の製造方法。
[2]前記セパレートフィルムの表面改質処理が施された改質面における表面抵抗値が5.0×1014Ω/□(Ω/スクエア)以下である、[1]に記載の光学積層体の製造方法。
[3]前記表面改質処理は、コロナ処理であり、前記コロナ処理におけるエネルギー密度は、10~700W・分/m2である、[1]又は[2]に記載の光学積層体の製造方法。
[4]光学積層体を複数枚重ね合わせた積層束の製造方法であって、
前記光学積層体は、[1]から[3]のいずれか1に記載の製造方法により製造された光学積層体であり、
1の光学積層体のセパレートフィルムにおける表面改質処理が施された改質面と、
別の光学積層体の光学層における粘着剤層側とは反対側の面とを重ね合わせることを含む、積層束の製造方法。
(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層すること、
(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施すことを含み、
前記表面改質処理は、コロナ処理、プラズマ処理、グロー処理及びオゾン処理から選ばれる少なくとも1種である、光学積層体の製造方法が提供される。
図1において、光学積層体1は、少なくとも光学層10と、粘着剤層20と、セパレートフィルム30とをこの順で有する。また、セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面40に、表面改質処理が施されている。
例えば、光学層10は、図1に示すように、光学フィルム11と表面保護フィルム12とを積層した積層体であってもよい。
本発明における光学層は、液晶表示装置などに用いることができ、光線を透過又は反射吸収し、様々な効果を与えることを目的とした層であればよい。
光学層は、例えば、位相差フィルム、偏光フィルム、反射防止フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルムなどから選択される少なくとも1の光学フィルムを有することができる。光学層は、これらの光学フィルムの単層構造であってもよく、少なくとも光学フィルムを含む、複数のフィルムを積層した複層構造(積層体)であってもよい。
光学層の厚さは、特に限定されず、例えば10~500μm、例えば100~300μmの範囲内である。
位相差フィルムの厚みは、例えば10μm~100μmであり、ある態様においては10μm~30μmである。
偏光フィルムとして用いることができる樹脂フィルムの例として、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と称す場合もある)系樹脂フィルムが挙げられる。PVA系樹脂フィルムの例は、PVAフィルムである。二色性色素の例は、ヨウ素及び二色性有機染料である。偏光子の厚さの例は、1μm~30μmであり、ある態様においては7μm~30μmであり、別の態様においては10μm~30μmである。
なお、偏光フィルム(偏光子)が両面に偏光子保護フィルムを有する態様において、各偏光子保護フィルムは同一であってもよく、相違していてもよい。
粘着剤層は、光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムがこの順になるように積層される。一般に、本発明の製造方法により得られる光学積層体からセパレートフィルムを剥離し、次いで、粘着剤層を介して、光学層を、液晶セル等の他の部材に貼り合わせてもよい。
本発明における光学積層体は、粘着剤層における光学層側とは反対側の面に、セパレートフィルムが積層されてもよい。セパレートフィルムを有することにより、粘着剤層への異物付着を防止できるなど、粘着剤層を保護できる。
また、複数の光学積層体を重ね合わせた光学積層体の積層束を製造する場合、1の光学積層体のセパレートフィルムにおける表面改質処理が施された改質面と、別の光学積層体の光学層における粘着剤層側とは反対側の面とを重ね合わせることができる。
本発明の製造方法により得られる光学積層体であれば、セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面において、例えば、耐電防止剤、離型剤などの薬品を塗布しなくても、多重取りを大きく低減又は抑制できる。
ある態様において、セパレートフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことで、多重取りをより効果的に低減又は抑制できる。また、光学積層体の反りを抑制できる。さらに、表面改質処理を効率的に行える。
本発明によると、少なくとも、光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとをこの順で有する光学積層体の製造方法であって、
(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層すること、
(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施すことを含み、
前記表面改質処理は、コロナ処理、プラズマ処理、グロー処理及びオゾン処理から選ばれる少なくとも1種である、光学積層体の製造方法が提供される。
例えば、(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムを積層し、次いで、(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施してもよい。一方、(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施し、次いで(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムを積層してもよい。
本発明の製造方法において、光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層する順は特に限定されない。ある態様においては、光学層と粘着剤層とを積層し、次いで、粘着剤層における光学層側とは反対側の面に、セパレートフィルムを積層してもよい。また、セパレートフィルムに粘着剤層を積層し、次いで、粘着剤層におけるセパレートフィルム側とは反対側の面に光学層を積層してもよい。あるいは、これら全てを同時に積層してもよい。
貼合の一例として、粘着剤をロールで圧着する貼合方法が挙げられる。また、接着剤又は粘着剤を用いた積層の場合、常温あるいは加熱しながらの圧着、活性エネルギー線を照射することによる処理を行ってもよい。
光学層、粘着剤層、セパレートフィルムの少なくとも1つが長尺状の形態であった場合、積層後に、所望の寸法(例えば、横2cm~30cm及び縦2cm~30cmの範囲)となるように切断し、光学積層体としてもよい。
また、光学層、粘着剤層、セパレートフィルムの全てが、所望のサイズに切断されたチップ状の形態であってもよい。例えば、チップ状の形態である場合、各チップの寸法は、例えば、横2cm~30cm及び縦2cm~30cmの範囲内である。
本発明の光学積層体の製造方法は、(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施すことを含み、表面改質処理は、コロナ処理、プラズマ処理、グロー処理及びオゾン処理から選ばれる少なくとも1種である。
特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、このような現象は、例えば、本発明に係る表面改質処理を施すことにより、1の光学積層体のセパレートフィルムにおいて表面改質処理が施された面と、別の光学積層体の光学層における粘着剤層とは反対側の面との間におけるクリープ力(滑り性)が下がることによるものと推定される。
また、表面改質処理は、セパレートフィルムの粘着剤層側とは反対側の面における全面に施してもよく、一部の領域に施してもよい。
本発明の製造方法によると、薄型の光学積層体であっても多重取りを回避できる。さらに、本発明における製造方法により製造した光学積層体であれば、例えば、光学積層体の積層束から1の光学積層体を取り出す際に、傷、割れが生じることを抑制できる。
更に、このような範囲に表面抵抗値を有することにより、1の光学積層体と他の光学積層体を剥離する際に、静電気が発生することを低減でき、例えば、剥離面におけるダストの付着を低減できる。また、静電気の発生による液晶セルに対する悪影響を抑制できる。
コロナ処理の条件としては、コロナ処理1回当たりのエネルギー密度が、10~700W・分/m2であってもよく、例えば、100~550W・分/m2であってもよく、ある態様においては200~520W・分/m2であってもよい。
別の態様においては、コロナ処理を複数回行う場合、各コロナ処理におけるエネルギー密度の合計が10~700W・分/m2であってもよく、例えば、100~550W・分/m2であってもよく、ある態様においては200~520W・分/m2であってもよい。コロナ処理を複数回行う場合、各コロナ処理におけるエネルギー密度は、順に増加してもよく、順に減少してもよい。
エネルギー密度が、このような範囲であることにより、積層束における多重取りを大きく低減又は抑制できる。さらに、積層束から1枚の光学積層体を容易に取り出すことができ、多重取りを低減又は抑制でき、その上、小さな力で取り出すことが出来るので、光学積層体の光学特性を損なうことがなく、また、光学積層体の表面に小さな傷が生じることを抑制できる。このため、本発明の光学積層体の製造方法は、光学層が極めて薄い、例えば厚さが100~300μmである光学積層体においても、適用できる。
なお、所望のエネルギー密度を得られる限り、これらの処理条件は、上記範囲外であってもよい。また、光学積層体のカール、光学積層体の搬送時における波打ちなどを考慮して、条件を適宜選択できる。さらに、例えば、コロナ処理を複数回行う場合、コロナ処理毎に処理条件を変更できる。
表面改質処理は、プラズマ処理であってもよい。プラズマ処理は、減圧下又は大気圧下で発生させた不活性ガス又は酸素ガス等のプラズマを、セパレートフィルム表面に照射して、その表面を活性化する処理である。作業の簡便さ及び処理装置のコスト面からは、大気圧下にてプラズマ放電する方法が望ましい。
プラズマ処理においては、様々なガス雰囲気下でプラズマ放電を起こさせることにより、セパレートフィルム表面を種々に改質することができる。
大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間にセパレートフィルムを設置し、プラズマを発生させて、セパレートフィルムの表面処理を行う方法、
対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスをセパレートフィルムに吹付ける方法、及び、
低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、セパレートフィルムの表面改質処理を行う方法が挙げられる。
このような範囲のエネルギーで処理することにより、積層束における多重取りを大きく低減又は抑制できる。さらに、積層束から1枚の光学積層体を容易に取り出すことができ、多重取りを低減又は抑制できる。その上、小さな力で取り出すことが出来るので、光学積層体の光学特性を損なうことがなく、また、光学積層体の表面に小さな傷が生じることを抑制できる。
表面改質処理は、グロー処理(グロー放電処理)であってもよい。グロー放電は、チャンバー内の環境の酸素濃度を、例えば0.1%重量以上、1重量%以下の環境下で行われ、加えて、必要に応じ、セパレートフィルムと電極との距離、及び電極に付与する電力を適宜調節することにより発生させることができる。条件によって異なるが、一般的な傾向として、電極とセパレートフィルムとの間の距離が近いほうが、グロー放電が発生し易く、また、電力が大きいほうが、グロー放電が発生し易い。
電極に印加する電流は、周波数10kHz~500kHz、例えば、20kHz~100kHzの高周波の交流電流である。また、かかる電流の波形は、パルス波でもサイン波でもよい。
グロー放電処理を行う時間は、セパレートフィルムの搬送速度、及びセパレートフィルムの搬送方向における放電空間の大きさを適宜調節することにより行いうる。放電空間の大きさは、例えば、電極を設ける数、及び複数の電極の配置の間隔を適宜調整することにより調整できる。
表面改質処理は、オゾン処理であってもよい。
オゾン処理は、オゾンをセパレートフィルム表面に吹き付け、オゾンが分解して発生する活性酸素原子による表面処理である。オゾンの発生方法には、制限はないが、UV/オゾン処理が好ましい。UV/オゾン処理は、低圧水銀ランプ、Xeエキシマランプ等の紫外線を発生させる光源が使用され、セパレートフィルム表面に照射される光源のエネルギーと、光源の照射で発生するオゾンの相乗効果が得られるからである。
240nm以下の波長の紫外光は、酸素を分解してオゾンを発生させ、低圧水銀ランプを使用する場合は、185nm線がオゾンの発生に用いられる。
UV/オゾン処理では、セパレートフィルム表面の改質と洗浄に効果があるとされているが、照射する光源のエネルギーが樹脂化合物の分子結合エネルギーよりも高い場合は、分子結合が切れて分解反応生成物が生じることも考えられるので、処理する樹脂フィルムによって調整することが好ましい。
本発明の一態様において、光学積層体を複数枚重ね合わせた積層束の製造方法が提供され、この方法における光学積層体は、上記方法により製造されたものである。
より詳細には、例えば、積層束の製造方法は、1の光学積層体のセパレートフィルムにおける表面改質処理が施された改質面と、別の光学積層体の光学層における粘着剤層側とは反対側の面とを重ね合わせることを含む、積層束の製造方法である。光学積層体を複数枚重ね合わせる方法は、特に限定されない。
セパレートフィルムへの表面改質処理条件と、表面保護フィルムにおける光学フィルム側とは反対側の表面への表面改質処理条件は、同一であってもよく異なっていてもよい。表面保護フィルムへの表面改質処理条件は、本明細書に記載の内容を、適宜選択できる。また、セパレートフィルムの表面改質処理が施された改質面における表面抵抗値と、表面保護フィルムの表面改質処理が施された改質面における表面抵抗値との値は、同一であってもよく、相違していてもよい。表面保護フィルムの改質面における表面抵抗値は、本明細書に記載の範囲内で、適宜選択できる。
(光学層)
光学層として、表面保護フィルム(厚さ53μm)と、偏光子保護フィルム(厚さ44μm)と、偏光子(厚さ28μm)と、位相差フィルム(厚さ23μm)とを順に有する積層体を用いた。光学層の厚さは148μmであった。
上記偏光子保護フィルムは、ハードコート層とTAC層とを有する多層構造を有し、位相差フィルムは、「ゼオノア」(日本ゼオン株式会社製)を用いた。
厚さ25μmの粘着剤層(新タック化成株式会社製)と、厚さ38μmのセパレートフィルム(PET樹脂製)とを用いた。
光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層した。ここで、光学層における位相差フィルムと粘着剤層とセパレートフィルムとがこの順になるように積層した。
セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施した。
表面処理は、コロナ処理装置(春日電機株式会社製、装置名:高周波電源ワイヤー放電処理装置)を用いて、コロナ処理を行った。コロナ処理の条件は、表1に示した通りである。
実施例1により得られた光学積層体を20枚用意し、1の光学積層体のセパレートフィルムにおける表面改質処理が施された改質面と、別の光学積層体の光学層における粘着剤層側とは反対側の面とを重ね合わせることにより、20枚の光学積層体からなる積層束を製造した。
得られた積層束の最表層側に位置する光学積層体の長手方向に沿って、手で僅かな力を光学積層体に加え、積層束から最表層側に位置する1の光学積層体を滑らすようにして取り出すことを試みた。複数枚の光学積層体が重ね合わされることなく、1セットの光学積層体を取り出せた場合、多重取りは発生していないと判断した。
この結果に基づき、以下の式から多重取り発生率を算出した。結果を表1に示す。
多重取り発生率=(多重取りが発生した回数/積層束における光学積層体の積層枚数)
実施例2~4については、表1に示すコロナ処理条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、光学積層体を製造した。
比較例1は、セパレートフィルムに対して表面改質処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。
10 光学層
11 光学フィルム
12 表面保護フィルム
20 粘着剤層
30 セパレートフィルム
40 セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面
Claims (4)
- 少なくとも、光学フィルム及び表面保護フィルムを有する光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとをこの順で有する光学積層体の製造方法であって、
(a)光学層と、粘着剤層と、セパレートフィルムとを積層すること、
(b)セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に、表面改質処理を施すこと、
(c)前記表面保護フィルムにおける光学フィルム側とは反対側の表面に表面改質処理を施すことを含み、
前記セパレートフィルムの材料は、ポリエステル系樹脂であり、
前記表面保護フィルムの材料は、ポリエステルであり、
前記セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に施される表面改質処理、及び、前記表面保護フィルムにおける光学フィルム側とは反対側の表面に施される表面改質処理は、それぞれ、コロナ処理である、光学積層体の製造方法。 - 前記セパレートフィルムの表面改質処理が施された改質面における表面抵抗値が5.0×1014Ω/□以下である、請求項1に記載の光学積層体の製造方法。
- 前記セパレートフィルムにおける粘着剤層側とは反対側の面に施されるコロナ処理において、エネルギー密度は、10~700W・分/m2である、請求項1又は2に記載の光学積層体の製造方法。
- 光学積層体を複数枚重ね合わせた積層束の製造方法であって、
前記光学積層体は、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法により製造された光学積層体であり、
1の光学積層体のセパレートフィルムにおける表面改質処理が施された改質面と、
別の光学積層体の光学層における粘着剤層側とは反対側の面とを重ね合わせることを含む、積層束の製造方法。
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