JP7005383B2 - ロータワイヤー保護用樹脂組成物及びロータ - Google Patents
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Description
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)ジシアンジアミドまたはその誘導体、(C)有機ベントナイト、及び(D)ガラス繊維を含有するロータワイヤー保護用樹脂組成物であって、前記(D)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して10~100質量部であるロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[2]前記(C)成分の分散時の平均粒径が0.5μm以下である上記[1]に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[3]前記(D)成分の平均繊維径が1~15μm、及び平均繊維長が20~300μmである上記[1]または[2]に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[4]さらに(E)カチオン触媒を含有する上記[1]~[3]のいずれかに記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[5]前記(E)カチオン触媒が4級アンモニウム塩であり、該(E)成分の含有量が前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~3質量部である上記[4]に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[6]25℃の粘度が210~350Pa・sであり、かつ150℃の粘度が10~50Pa・sである上記[1]~[5]のいずれかに記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物でワイヤー表面部分を硬化被覆してなるロータ。
<ロータワイヤー保護用樹脂組成物>
本発明のロータワイヤー保護用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)ジシアンジアミドまたはその誘導体、(C)有機ベントナイト、及び(D)ガラス繊維を含有するロータワイヤー保護用樹脂組成物であって、前記(D)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して10~100質量部であることを特徴とする。
〔(A)エポキシ樹脂〕
本発明で用いる(A)成分のエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のグリシジル基(エポキシ基)を有するものであれば、特に限定されることはなく、公知のエポキシ樹脂を使用することができる。(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂;臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂;水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂;ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができる。本発明においては、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
本発明で用いる(B)成分のジシアンジアミドまたはその誘導体は、上記(A)成分の硬化剤として作用する成分である。(B)成分は、融点が高いため(例えば、ジシアンジアミドの融点は約210℃である)、樹脂組成物に良好な貯蔵安定性、貯蔵寿命(シェルフライフ)を付与する。また、得られる硬化物は良好な機械的特性を発現する。
ジシアンジアミドの誘導体の具体例としては、例えば、ジシアンジアミドと、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、またはカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ化合物との反応物等が挙げられる。ジシアンジアミドまたはその誘導体は、単独または2種以上を混合して使用することができる。中でも、本発明の効果を発揮する観点から、ジシアンジアミドの使用が好ましく、ジシアンジアミドの単独使用がより好ましい。
本発明で用いる(C)成分の有機ベントナイトは、粘土鉱物であるモンモリロナイトの結晶表面を、トリアルキルベンジルアンモニウム、ジメチルジアルキルアンモニウム、トリメチルアルキルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩で変性させた複合体からなるものである。この有機ベントナイトは、有機溶剤に懸濁すると膨潤して増粘し、分散液に剪断力をかけると薄片状結晶が流れに対して平行に配列するために粘性が低下し、分散液を再び静止状態にすると薄片状結晶の端面に存在している水酸基の水素結合により会合し、薄片状結晶同士がネットワークを形成するために粘性が増加する性質を有する。このような有機ベントナイトを配合することにより、本発明の樹脂組成物に良好な含浸性と良好な厚塗り性を付与することができる。
なお、(C)成分の分散時の平均粒径は、有機溶剤に分散させたときの平均粒径(メジアン径d50)をいい、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができる。
本発明で用いる(D)成分のガラス繊維は、樹脂組成物の硬化物の耐摩耗性を高める効果を奏する。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維が好適に用いられる。
(D)成分の平均繊維長は、好ましくは5~300μm、より好ましくは20~300μm、さらに好ましくは20~100μmである。平均繊維長が上記範囲内であればコイルへの含浸性がよく、また、硬化物の耐摩耗性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
なお、平均繊維長の測定方法としては、例えば、倍率1,000倍の電子顕微鏡にて200本のガラス繊維の長さを測定し、平均値を求める方法が挙げられる。
本発明のロータワイヤー保護用樹脂組成物は、さらに(E)カチオン触媒を含有することが好ましい。該樹脂組成物が(E)カチオン触媒を含有することにより、該樹脂組成物をロータワイヤーに含浸した時の泡抜け性が良好となり、硬化後のボイド発生を防ぐことができる。
(E)成分のカチオン触媒は、通常市販されているものを使用することができる。
カチオン触媒としては、ランタノイドトリフレラート塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、ランタントリフラート、イッテルビウムトリフラート、トリメトキシボロキシン、トリメトキシボロキシン-アルミニウムアセチルアセトネート、アミン-ボロントリハライド錯体、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、トリ-アリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、およびジアゾニウム塩等を挙げることができる。また、トリフェニルシラノールなどのシラノール系のカチオン触媒やアルミニウムトリス(アセチルアセトン)のアルミキレート系触媒などを用いることができる。中でも、4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。4級アンモニウム塩の製品例としては、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドのM2-100R(日油(株)製)等が挙げられる。本発明においては、これらの1種又は2種以上の異なるものを併用してもよい。
使用可能な硬化促進剤の例としては、ウレア系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機ホスフィン系硬化促進剤、ジアザビシクロ系硬化促進剤、有機ボロン塩系硬化促進剤、ポリアミド系硬化促進剤等が挙げられる。保存安定性等の観点から、なかでもウレア系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤が好ましく、ウレア系硬化促進剤がより好ましい。
なお、上記粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
次に、上記ロータワイヤー保護用樹脂組成物を用いた本発明のロータについて説明する。
本発明のロータは、例えば、ロータコアに巻き付けられ、その端部から突出している巻線に、本発明の常温で液状のロータワイヤー保護用樹脂組成物を滴下含浸させ、その後、ロータワイヤー保護用樹脂組成物を加熱硬化させることにより製造することができる。ロータワイヤー保護用樹脂組成物を硬化させる際の温度は、通常、150~170℃であり、0.5~1.0時間程度加熱することが好ましい。また、ロータワイヤー保護用樹脂組成物を巻線に滴下する際は、ロータコアの中心に挿通されたシャフト(回転軸)を水平に支持し、回転させながら行うことが好ましい。ロータコアを回転させながら行うことにより、速やかに被覆することができ、かつ被覆厚の均一性を高めることができる。
なお、図1において、4はシャフト(回転軸)、5はコア1の外周面に設けられ、巻線2が巻き付けられたスロット、6はコア1の一端側に装着され、巻線2に電気的に接続されたコンミテータ(整流子)を示している。
表1~3に記載の種類及び配合量の各成分をプラネタリーミキサーで均一に混合することにより、実施例及び比較例のロータワイヤー保護用樹脂組成物を調製した。なお、表1~3中、空欄は配合なしを表す。
ロータワイヤー保護用樹脂組成物の調製に使用した表1~3に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
〔(A)成分〕
・jER828:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、三菱化学(株)製、商品名、エポキシ当量184~194g/eq
<ジシアンジアミドまたはその誘導体>
〔(B)成分〕
・DDA5:ジシアンジアミド、ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製、商品名
<有機ベントナイト>
〔(C)成分〕
・エスベン:有機ベントナイト、(株)ホージュン製、商品名(平均粒径0.5μm以下)
〔(D)成分〕
・PFE301:ガラスファイバー、日東紡績(株)製、商品名(表面処理シラン、平均繊維径(直径)10μm、平均繊維長30μm)
・PFE001:ガラスファイバー、日東紡績(株)製、商品名(表面処理無し、平均繊維径(直径)10μm、平均繊維長60μm)
・ECS03-615:ガラスファイバー、セントラル グラスファイバー(株)製、商品名(平均繊維径(直径)3μm、平均繊維長9μm)
<ガラス粉末>
・ASF-102X:ガラス粉末、旭硝子(株)製、商品名(平均粒径(D50)=1.1μm、レーザー回折法による測定値)
〔(E)成分〕
・M2-100R:テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、日油(株)製、商品名
〔消泡剤〕
・BYK066N:シリコン系消泡剤、ビックケミー社製、商品名
〔硬化促進剤〕
・オミキュア24:1,1’-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(3,3-ジメチルウレア)、ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製、商品名
〔無機系充填材〕
・S210:シリカ、新日鉄住金マテリアルズ(株)製、商品名(平均粒径20μm)
・LA1200:アルミナ、太平洋ランダム(株)製、商品名(平均粒径12μm)
・ソフトン2200:炭酸カルシウム、白石カルシウム(株)製、商品名(平均粒径4μm)
樹脂組成物を150℃で1時間加熱し硬化させて作製したサンプルに、直径4mmのダイヤモンドを200km/hで衝突させ、削れた面積を測定した。削れた面積が0.4mm2以下を合格とする。
東機産業(株)製のEHD型粘度計を用い、温度25℃、回転数0.5rpmの条件で粘度を測定した。210~350Pa・sを合格とする。
TA Instruments社製のレオメータを用い、測定ギャップ2mm、回転数0.5rpmの条件で、温度150℃における溶融粘度を測定した。10~50Pa・sを合格とする。
ガラス板上に、温度25℃、圧力20MPaの条件で、先端径5mmのディスペンサーから樹脂組成物を押出し、該樹脂組成物を150℃で1時間硬化させ、得られた硬化物の高さを測定した。硬化物の高さが5mm以上を合格とする。
コイルに樹脂組成物を含浸させ、シャフトまで含浸しているか目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:シャフトまで含浸している
B:シャフトまで含浸していない
樹脂組成物を150℃で0.5時間加熱し硬化させて得られた硬化物の表面におけるボイドの有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
A:ボイドが2個以下
B:ボイドが2個超10個以下
C:ボイドが10個超
東機産業(株)製のEHD型粘度計を用いて、温度25℃、回転数0.5rpmの条件で測定した粘度が、初期粘度の2倍に達するまでの日数を測定した。
樹脂組成物を150℃で1時間加熱し硬化させて作製した試料について、熱分析装置TMA/SS150(セイコーインスツルメンツ社製 型名)により、室温(25℃)から250℃まで昇温して(昇温速度20℃/分)熱膨張曲線を測定し、変位点の中点から求めた。
160℃で温めたホットプレートに、1mlの樹脂組成物を直径40mmにひろげ、2分間放置した後、2mm以下の泡の個数を数えた。
直径1.3mm、長さ50mmのワイヤーを2本上下にずらして束ね、中央部分にワニスを滴下し含浸、硬化させたものを試験片とした。該試験片を上下から引っ張り、強度を測定した。
2 巻線
2a 巻線端部
3 ロータワイヤー保護用樹脂組成物からなる被覆
4 シャフト(回転軸)
5 スロット
6 コンミテータ(整流子)
10 ロータ
Claims (7)
- (A)エポキシ樹脂、(B)ジシアンジアミドまたはその誘導体、(C)有機ベントナイト、及び(D)ガラス繊維を含有するロータワイヤー保護用樹脂組成物であって、
前記(D)成分の含有量が前記(A)成分100質量部に対して10~100質量部であるロータワイヤー保護用樹脂組成物。 - 前記(C)成分の分散時の平均粒径が0.5μm以下である請求項1に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
- 前記(D)成分の平均繊維径が1~15μm、及び平均繊維長が20~300μmである請求項1または2に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
- さらに(E)カチオン触媒を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
- 前記(E)カチオン触媒が4級アンモニウム塩であり、該(E)成分の含有量が前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~3質量部である請求項4に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
- 25℃の粘度が210~350Pa・sであり、かつ150℃の粘度が10~50Pa・sである請求項1~5のいずれか1項に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物。
- 請求項1~6のいずれか1項に記載のロータワイヤー保護用樹脂組成物でワイヤー表面部分を硬化被覆してなるロータ。
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