(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、着用者の肌に向けられるトップシートと、を有し、前記トップシートは、前記吸収性物品の前記幅方向の中央に配置されたセンターシートと、前記センターシートよりも前記幅方向の外側に配置されたサイドシートと、を有する吸収性物品であって、前記サイドシートは、非折り返し部と、前記サイドシートの外側縁において非肌面側に向かって折り返された折り返し部と、を有し、前記サイドシートの外側縁から幅方向の内側に延びる領域には、前記折り返し部が、当該折り返し部よりも非肌面側に位置する非肌面側シートに対して接合されていない起立部が設けられており、前記トップシートが湿潤した湿潤時における前記センターシートの動摩擦係数は、前記湿潤時における前記サイドシートの動摩擦係数よりも高い。
センターシートは、排泄口に当接して配置される。当該センターシートの湿潤時の動摩擦係数が高いため、排泄口に対するフィット性を維持し、漏れを抑制できる。サイドシートは、着用者の脚に当接して配置される。当該サイドシートの湿潤時の動摩擦係数が低いため、吸収性物品の外側部と脚が擦れた際に、肌に対する摩擦が少なく、触り心地の悪化を抑制できる。また、サイドシートの外側縁から幅方向に延びる一定の領域は、肌面側に起立する起立部を有し、非肌面側シートに対して起立可能に構成されている。よって、トップシートよりも幅方向の外側に位置する吸収性物品の外側部の肌への当たりを抑制し、吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化を抑制できる。よって、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記サイドシートの前記非折り返し部は、前記センターシートよりも肌面側に位置してよい。
吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化をより抑制できる。また、非折り返し部がセンターシートの肌面側に位置するため、センターシートの幅方向の外側に非折り返し部による壁を設けることができ、横漏れを抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記サイドシートの前記非折り返し部は、前記センターシートよりも非肌面側に位置し、前記センターシートの外側部が前記サイドシートに接合されていないセンター非接合領域が設けられてよい。
センター非接合領域が設けられていることにより、センターシートの外側縁が柔軟に変形しやすく、センターシートが脚に当たった場合であっても、肌触りの悪化を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記起立部の前記幅方向の長さは、前記センター非接合領域の幅方向の長さよりも長くてよい。
センター非接合領域では、センターシートがサイドシートから更に立ち上がる壁を形成できる。そのため、肌面側に起立する起立部と、起立部におけるサイドシートから更にセンターシートが肌面側に起立する壁と、を形成し、漏れをより抑制できる。センターシートが肌面側に起立する壁の幅方向の長さが比較的短いため、起立部が起立しやすく、起立部がより肌面側に起立しやすくなる。
好ましい一態様によれば、前記トップシートよりも前記幅方向の外側に延出し、かつ着用者の肌に向けられる延出シートを有し、前記湿潤時における前記延出シートの動摩擦係数は、前記湿潤時における前記トップシートの動摩擦係数よりも低くてよい。
延出シートが着用時に脚に触れた場合であっても当該延出シートによる肌触りの悪化を抑制できる。特に、延出シートを非肌面側に折り返すことができないボクサーパンツ等の下着の装着時に、好適に効果を発揮できる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートは、保水性繊維を有し、前記サイドシートは、熱可塑性樹脂繊維を有してよい。
保水性繊維を有するセンターシートによって体液を保持しやすく、サイドシート側への体液の拡散を抑制できる。サイドシートに体液を保持しすぎないため、サイドシートを介して肌が湿潤状態となり難く、吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートは、第1層と、前記第1層の非肌面側に位置する第2層と、を有し、前記保水性繊維は、前記第1層側に偏倚しており、前記熱可塑性樹脂繊維は、前記第2層側に偏倚しており、前記保水性繊維は、コットン繊維であってよい。
肌に直接触れる第1層にコットン繊維が偏倚して配置されており、肌触りを向上できる。また、肌から離れた第2層に熱可塑性樹脂繊維が配置されており、肌に直接触れない部分において熱可塑性繊維によって繊維同士を熱溶着できる。センターシートにおける繊維の接合強度を高め、長時間の使用であってもセンターシートの繊維が分解せずに、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制する効果を得続けることができる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートの非肌面側に位置する吸収コアと、少なくとも前記吸収コアと前記センターシートを厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有し、前記吸収コアは、パルプと高吸収性ポリマーを有し、前記圧搾部は、前記前後方向に延び、かつ前記幅方向に間隔を空けて配置された一対の前後圧搾部を有し、前記前後圧搾部よりも前記幅方向の外側に位置する第1領域における前記高吸収性ポリマーの坪量は、前記前後圧搾部によって挟まれた第2領域における前記高吸収性ポリマーの坪量よりも高くてよい。
吸収性物品が着用された状態において着用者の脚によって挟まれることにより、吸収性物品には幅方向内側に向かう力がかかる。第1領域は、前後圧搾部を基点に第2領域に対して肌面側に立ち上がり、着用者の脚に当たり易い。第1領域は、高吸収性ポリマーの坪量が高く、湿潤時に膨張してクッション性が高くなりやすい。よって、着用者の脚に対する当たりを和らげ、触り心地の悪化を抑制できる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートの非肌面側に位置する吸収コアを有し、前記起立部の前記少なくとも一部は、前記吸収コアよりも前記幅方向の外側に位置してよい。
ウイングを有するナプキン等の吸収性物品は、吸収コアよりも幅方向の外側の領域を下着の非肌面側に固定する。剛性の高い吸収コアよりも幅方向の外側に着用者側に起立する起立部を設けられているため、下着に吸収性物品を装着した際に起立部がより立ち上がりやすくなる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートの非肌面側に位置する吸収コアと、少なくとも前記吸収コアと前記センターシートを厚み方向に圧縮した圧搾部と、を有し、前記圧搾部は、前記前後方向に延び、かつ前記幅方向に間隔を空けて配置された一対の前後圧搾部を有し、前記前後圧搾部よりも前記幅方向の外側には、センターシートと前記サイドシートを厚み方向に圧縮したシート圧搾部が形成されてよい。
センターシートとサイドシートをシート圧搾部によって接合でき、センターシートとサイドシートを別々の部材によって構成しても、トップシートが分解せずに、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制する効果を得続けることができる。
好ましい一態様によれば、前記センターシートの非肌面側に位置する吸収コアを有し、前記起立部は、前記吸収コアにおいて吸収材量の坪量が最も高い高坪量部よりも前記幅方向の外側に位置してよい。
使用前の吸収性物品は、折り線を基点に折り畳まれて、厚さ方向に複数積層されて収容体内に収容されている。または、折り線を基点に折り畳まれずに、厚さ方向に積層されて収容体内に積層されている。また、吸収性物品は、吸収コアの厚さが最も厚く、積層された状態では、吸収コアの最も厚さが厚い高坪量部が押圧される。起立部が高坪量部よりも幅方向の外側に位置するため、高坪量部に圧力がかかった場合であっても起立部が潰れにくく、起立性を維持しやすい。
(2)吸収性物品の構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品ついて説明する。吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、母乳パッド、大人用失禁パッド、糞便パッド又は汗取りシートのような吸収性物品であってよい。特に、吸収性物品は、使用者の下着のような着用物品の内側に取り付けられて使用される物品であってよい。
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
図1は、肌面側から見た実施形態に係る吸収性物品1の平面図である。ここで、「肌面側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌面側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。図2は、図1に示すF-F線に沿った断面図である。図2においては、説明の便宜上、後述する圧搾部については省略している。
吸収性物品1は、前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lと直交する方向である。
吸収性物品1は、前側領域R1と、後側領域R2と、中央領域R3と、を含む。中央領域R3は、吸収性物品の前後方向の中心を跨いで配置されており、着用者の排泄口(例えば膣口)に対向する排泄口当接部を含む。吸収性物品1が下着に装着されたときに、中央領域R3は、下着の股下部に位置し、着用者の股下、すなわち着用者の両足の間に配置される領域である。
前側領域R1は、中央領域R3よりも前側に位置する。前側領域R1の前端縁は、吸収性物品1の前端縁を規定する。後側領域R2は、中央領域R3よりも後側に位置する。後側領域R2の後端縁は、吸収性物品1の後端縁を規定する。
中央領域R3には、ウイング3が設けられていてよい。また、後側領域R2には、幅方向Wの外側に膨らんだヒップフラップが設けられていてもよい。ウイング3の前端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、前側に位置する部分に相当する。ウイング3の前端縁は、中央領域R3と前側領域R1との境界を規定していてもよい。ウイング3の後端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、後側に位置する部分に相当する。ウイング3の後端縁は、中央領域R3と後側領域R2との境界を規定していてもよい。
吸収性物品1は、着用者の肌に向けられるトップシート10と、トップシート10よりも非肌面側に配置される非肌面側シート20と、吸収コア31と、を少なくとも有する。トップシート10は、吸収コア31よりも肌面側T1に設けられる。トップシート10は、前側領域R1から後側領域R2まで前後方向Lに延びていてよい。
トップシート10は、吸収性物品の幅方向の中央に配置されたセンターシート11と、センターシート11よりも幅方向の外側に配置されたサイドシート12と、を有する。センターシート11とサイドシート12は、吸収コア31の肌面側T1において肌に当接するように構成されている。センターシート11は、幅方向Wにおける吸収コア31の中央部を覆ってよい。サイドシート12は、センターシート11よりも非肌面側T2に配置されてよいし、センターシート11よりも肌面側T1に配置されてよい。本実施の形態のサイドシート12は、センターシート11よりも非肌面側T2に配置されている。
サイドシート12は、非折り返し部12Aと、非折り返し部12Aの外側縁12Eにおいて非肌面側T2に向かって折り返された折り返し部12Bと、を有する。非折り返し部12Aの外側縁は、サイドシート12の外側縁12Eを構成する。折り返し部12Bは、非折り返し部12Aよりも非肌面側に位置する。非折り返し部12Aと折り返し部12Bの間には、他の部材が配置されていなくてもよいし、センターシート、吸収コア等の部材が配置されていてもよい。
センターシート11は、保水性繊維を含む。保水性繊維は、コットン繊維を例示できる。センターシート11は、保水性繊維の水流交絡によって形成されている。コットン繊維の繊維径は、0.9-1.2Dtexであってよく、コットン繊維の繊維長は、25.4-29.4mmであってよい。センターシート11は、コットン不織布を例示できる。コットン不織布の目付は、30g/m2であってよい。センターシート11は、保水性繊維(コットン、レーヨンを例示)を含み、その目付は、20~50g/m2であってよい。センターシート11の目付が、20g/m2未満になると、肌触りが低下するおそれがあり、センターシート11の目付が、50g/m2よりも大きいと、体液を保持し過ぎ、リウェットが生じるおそれがある。
サイドシート12は、熱融着性繊維を含む。サイドシート12は、熱融着性繊維の融着によって形成されている。サイドシート12は、非肌面側T2に折り返されていない非折り返し部と、サイドシート12の外側縁12Eにおいて非肌面側T2に向かって折り返された折り返し部と、を有する。サイドシート12の折り返し部は、非肌面側シート20に接合されている。
非肌面側シート20は、サイドシート12の折り返し部12Bが接合される。非肌面側シート20は、トップシート10(センターシート11及びサイドシート12)よりも幅方向の外側に延びてよい。非肌面側シート20は、センターシート11及びサイドシート12の非肌面側T2に配置されており、センターシート11及びサイドシート12を覆っていない。本実施の形態の非肌面側シート20は、トップシート10よりも幅方向の外側に延出し、かつ着用者の肌に向けられており、本発明の延出シートを構成する。
非肌面側シート20は、幅方向Wに間隔を空けて左右一対で設けられてよい。非肌面側シート20の内側縁20Iは、吸収性物品の幅方向の中心に到達してなく、折り返し部12Bの内側縁に一致してよいし、吸収コア31の外側縁よりも幅方向の内側に位置してよい。非肌面側シート20は、熱可塑性繊維樹脂を有する不織布によって構成されてよい。熱可塑性樹脂繊維は、疎水性を有しており、撥水剤が塗布されていてもよい。
非肌面側シート20の非肌面側T2には、バックシート25が配置されてよい。バックシート25は、吸収コア31の非肌面を覆う。すなわち、吸収コア31は、バックシート25とトップシート10の間に配置されてよい。バックシート25は、液不透過性のシートである。バックシート25は、非伸縮性のポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシート、伸縮性のウレタンフィルム、ナノファイバーを含む不織布などを用いることができる。
吸収コア31は、少なくとも中央領域R3及び後側領域R2に配置される。また、吸収コア31は、中央領域R3から前側領域R1まで延びていてもよい。吸収コア31は、液体を吸収する吸収材料を含む。吸収コア31は、コアラップによって包まれていてもよい。吸収コア31を構成する吸収材料は、例えば、親水性繊維、パルプ及び高吸水性高分子(SAP)から形成できる。本実施の形態の吸収コア31は、パルプとSAPを有する。コアラップは、例えば不織布やティッシュシートから構成することができる。
図2に示すように、吸収コアは、吸収材料の坪量が高い高坪量部33と、高坪量部33と比較して目付が低い低坪量部34と、を有してよい。高坪量部33は、吸収コアの幅方向の中心を跨いで配置されてよく、一対の前後圧搾部65の間に配置されてよい。
前述したように、吸収性物品1は、ウイング3を有する。ウイング3は、中央領域R3における吸収コア31の外側縁よりも幅方向Wの外側に延出している。ウイング3は、非肌面側シート20とバックシート25との積層によって構成されていてよい。ウイング3は、バックシート25側に折り返し可能に構成されている。ウイング3は、使用時に下着のクロッチ部の非肌面側に折り返される。
吸収性物品1は、少なくともトップシート10と吸収コア31を厚さ方向に圧縮した圧搾部60を有する。圧搾部60は、少なくともトップシート10と吸収コア31が圧縮されていればよく、これら以外のシート(例えば、コアラップ)も圧縮されていてもよい。圧搾部60は、図1に示すように、前後方向に延びており、幅方向に間隔を空けて一対で設けられている。前後圧搾部65は、中央領域に設けられ、少なくともセンターシート11と吸収コア31を圧縮することによって形成されている。
サイドシート12の外側縁12Eから幅方向の内側に延びる領域には、サイドシート12の折り返し部12Bが、折り返し部12Bよりも非肌面側に位置する非肌面側シート20に対して接合されていない起立部15が設けられている。起立部15は、サイドシート12の折り返し部12Bと非肌面側シート20が接合されていない非接合領域R12によって構成されている。非接合領域R12よりも幅方向の内側には、折り返し部12Bが非肌面側シート20に接合された接合領域R11が設けられている。接合領域R11は、平面視にて、折り返し部12Bと非肌面側シート20を接合する接合部14が設けられた領域である。非接合領域R12は、平面視にて、接合部14よりも幅方向の外側において接合部14が設けられていない領域である。なお、接合部14が複数形成された形態にあっては、非接合領域R12は、複数の接合部のうち最も幅方向の外側に位置する接合部14よりも幅方向の外側の領域となる。接合領域R11は、サイドシート12の折り返し線と離間して設けられている。非接合領域R12の起立部15は、接合部14を基点に肌面側に起立可能である。
次いで、図3に基づいて、着用状態の吸収性物品について説明する。図3は、図1に示すF-F線を基準とした断面において、吸収性物品1を下着Sに装着した状態を模式的に示している。図3に示すように、吸収性物品が着用された状態では、吸収性物品の幅方向の中央は、下着Sの肌面側T1に配置され、吸収性物品のウイング3は、非肌面側にウイング粘着部(図示せず)を有しており、下着Sの非肌面側T2に折り返され、下着の非肌面側に固定されている。吸収性物品の起立部15は、非肌面側シート20に対して起立可能に構成されており、着用時に脚の内側に当たりやすい。
本発明に係る吸収性物品は、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて、漏れを抑制するように構成されている。トップシートが湿潤した湿潤時におけるセンターシート11の動摩擦係数は、湿潤時におけるサイドシート12の動摩擦係数よりも高い。センターシート11は、排泄口に当接して配置される。当該センターシート11の湿潤時の動摩擦係数が高いため、排泄口に対するフィット性を維持し、漏れを抑制できる。また、サイドシート12は、着用者の脚に当接して配置される。当該サイドシート12の湿潤時の動摩擦係数が低いため、吸収性物品1の外側部と脚が擦れた際に、肌に対する摩擦が少なく、触り心地の悪化を抑制できる。
また、サイドシートの外側縁から幅方向に延びる一定の領域は、肌面側に起立する起立部15を有し、非肌面側シートに対して起立可能に構成されている。よって、トップシート10よりも幅方向の外側に位置する吸収性物品の外側部の肌への当たりを抑制し、吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化を抑制できる。よって、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制できる。
ここで、湿潤時の動摩擦係数は、以下の方法によって測定できる。吸収性物品のセンターシートとサイドシートを切断し、幅方向40mm、前後方向80mmのサンプルを切り取る。HMA型接着剤等の接着剤によって分離できない場合には、トルエンを用いて接着剤を洗い落した上で、24時間大気中で乾燥させる。各サンプルの前後方向の端部10mmを水平な板にガムテープ(アスクル株式会社:「現場のチカラ」 布テープ 0.26mm厚 幅50mm×長さ25m巻)にて固定する。各サンプル上に、デジタルフォースゲージ(日本電産シンポ株式会社, FGP-2)と端部10mmを全面接合したカナキン(50mm×40mm, JIS L 0803準拠 染色堅牢度試験用添付白布、一般財団法人日本規格協会、単一繊維布)を設置する。更にその上から底面35mm×25mmの直方体である525gの錘を乗せる。所定量のイオン交換水にて略平均的に湿潤させたカナキンを100mm/minにてシート上30mm移動させた際に表示された最大値を動摩擦力とした。このとき、各サンプルの着用者に向けられる面にカナキンを当てるようにする。当該測定方法においては、カナキンを濡らすことによって、濡れた肌を再現している。当該再現する肌水分量は、湿潤時の60%を目安とする。よって、イオン交換水の所定量は、カナキン重量に対して60wt/%とする。具体的には、40mm*50mmのカナキンが50目付の場合には、0.06mL(50g/m2*0.04m*0.05m*60%)とする。なお、シートが上記幅で採取できない場合には、採取できる最大幅にてサンプルを採取し、評価する。その上でシート面積内に収まり、かつ30g/cm2となる錘と、錘幅+10mm(デジタルフォースゲージの接続部分)のカナキンを乗せ、100mm/minにてシート上を最大距離移動させた際に表示された最大値を動摩擦力とする。
本実施の形態では、センターシート11の湿潤時の動摩擦係数は、0.80であり、サイドシート12の湿潤時の動摩擦係数は、0.49である。また、センターシートの動摩擦係数とサイドシートの動摩擦係数の差は、0.1以上0.25以下であってよい。動摩擦係数の差が、0.1以上であることにより、センターシートとサイドシートの表面特性の違いを使用者が感じ易くなる。
サイドシート12の非折り返し部12Aは、センターシート11よりも肌面側T1に位置してよい。吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化をより抑制できる。また、非折り返し部12Aがセンターシート11の肌面側T1に位置するため、センターシート11よりも幅方向の外側に起立部15による壁を設けることができ、横漏れを抑制できる。
図4に示すように、センターシート11とサイドシート12が重なる領域には、センターシート11とサイドシート12が接合されたセンター接合領域RXと、センターシート11とサイドシート12が接合されてないセンター非接合領域RYと、が設けられている。センター接合領域RXは、センターシート11の外側縁11Eよりも幅方向の内側に位置する。よって、センターシート11の外側縁11Eから幅方向Wの内側に延びる領域には、センター非接合領域RYが設けられている。
吸収性物品には、センターシート11とサイドシート12を接合する接着材が塗布された接着領域RAと、センターシートに形成された圧縮部18と、が設けられている。センター接合領域RXは、センターシート11とサイドシート12が接合された領域であり、具体的には、圧縮部18と接着領域RAが厚さ方向Tに重なる領域、圧縮部18のみが設けられた領域、及び接着領域RAのみが設けられた領域を含む。センター非接合領域RYは、圧縮部18が設けられてなく、かつ接着領域RAが設けられてない領域である。なお、他の形態において、センター接合領域RXは、圧搾部が設けられた領域のみによって構成されてもよいし、接着領域が設けられた領域のみによって構成されてもよい。
センターシート11の外側部がサイドシート12に接合されていないセンター非接合領域RYが設けられていることにより、センターシート11の外側縁が柔軟に変形しやすく、センターシート11が脚に当たった場合であっても、肌触りの悪化を抑制できる。
起立部15の幅方向の長さは、センター非接合領域RYの幅方向の長さよりも長くてよい。センター非接合領域RYでは、センターシート11がサイドシート12から更に立ち上がる壁を形成できる。そのため、サイドシート12が起立する起立部15と、起立部15から更にセンターシート11が肌面側に起立する壁と、を形成し、漏れをより抑制できる。このとき、センターシートが肌面側に起立する壁の幅方向の長さが比較的短いため、起立部が起立しやすく、起立部がより肌面側に起立しやすくなる。
起立部15の少なくとも一部は、吸収コア31の外側縁31Eよりも幅方向の外側に位置してよい。ウイングを有するナプキン等の吸収性物品は、吸収コアよりも幅方向の外側の領域を下着の非肌面側に固定する。剛性の高い吸収コアよりも幅方向の外側に着用者側に起立する起立部を設けられているため、下着に吸収性物品を装着した際に起立部がより立ち上がりやすくなる。
延出シートとしての非肌面側シート20の動摩擦係数は、湿潤時におけるトップシートの動摩擦係数よりも低くてよい。延出シートが着用時に脚に触れた場合であっても当該延出シートによる肌触りの悪化を抑制できる。特に、延出シートを非肌面側に折り返すことができないボクサーパンツ等の下着の装着時に、好適に効果を発揮できる。
センターシート11は、保水性繊維を有し、サイドシート12は、熱可塑性樹脂繊維を有してよい。保水性繊維を有するセンターシート11によって体液を保持しやすく、サイドシート側への体液の拡散を抑制できる。サイドシート12に体液を保持しすぎないため、サイドシート12を介して肌が湿潤状態となり難く、吸収性物品の外側部と脚が擦れた際における触り心地の悪化を抑制できる。
センターシート11は、第1層111と、第1層111の非肌面側に位置する第2層112と、を有する2層構造であってもよい。保水性繊維は、第1層111側に偏倚しており、熱可塑性樹脂繊維は、第2層112側に偏倚してよい。より好適には、センターシート11は、保水性繊維を含む第1層111と、保水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含む第2と、によって構成されてよい。第1層111の肌面側の表面は、センターシート11の肌面側の表面を構成する。第1層111の非肌面側の表面は、第2層112の肌面側の表面に接する。第2層112の非肌面側の表面は、センターシート11の非肌面側の表面を構成する。よって、センターシート11は二層構造を有する。ただし、センターシート11は、第1層111及び第2層112のいずれか一層を有する一層構造でもよく、他の繊維層を更に備える三層以上の多層構造でもよい。
肌に直接触れる第1層111にコットン繊維が偏倚して配置されており、肌触りを向上できる。また、肌から離れた第2層112に熱可塑性樹脂繊維が配置されており、肌に直接触れない部分において熱可塑性繊維によって繊維同士を熱溶着できる。センターシートにおける繊維の接合強度を高め、長時間の使用であってもセンターシートの繊維が分解せずに、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制する効果を得続けることができる。
本実施の形態のセンターシート11は、コットン繊維100%の第1層111と、コットン繊維80%と熱融着性繊維20%の第2層112と、の積層シートによって構成されている。センターシート11の破断伸度は、繊維の配向方向に沿った強度が30~70N/25mmであってよく、繊維の配向方向と直交方向の強度が5~10N/25mmであってよい。
このようなセンターシート11の製造方法の一例を説明する。まず、第1カード機により、第2層112に対応する第2繊維ウェブが形成される。第1カード機は、繊維ウェブの形成に一般的に用いられるシングルカード又はダブルカードを使用した乾式のローラーカードである。第2繊維ウェブは、保水性繊維及び疎水性繊維を含む。次いで、第2カード機により、第1層111に対応する第1繊維ウェブが形成される。第2カード機も第1カード機と同様の乾式のローラーカードである。第1繊維ウェブは保水性繊維を含む。第1繊維ウェブは、搬送装置で搬送中の第2繊維ウェブ上に積層される。それにより、第1繊維ウェブと第2繊維ウェブとが積層された二層構造の複合繊維ウェブが形成される。なお、各繊維ウェブにおける各繊維の比率は各カード機に供給する原料繊維の比率で制御可能である。次に、二層構造を有する複合繊維ウェブは、ウォータージェット処理機によりウォータージェット処理を施され、繊維同士が交絡される。それにより、第1連続シート(スパンレース不織布)が形成される。ここで、ウォータージェット処理は、複合繊維ウェブを連続して移動するメッシュベルト上に載せ、複合繊維ウェブの上面側から高圧ジェット水流を噴射させて繊維どうしを交絡させる処理である。その後、ウォータージェット処理機を通過した第1連続シートは、乾燥機により乾燥される。乾燥された第1連続シートは、搬送装置により搬送方向に搬送されて、センターシート11を構成する連続体となる。このように構成されたセンターシート11では、第1層111における保水性繊維の割合が第2層112における保水性繊維の割合よりも高く、第1層111における熱可塑性樹脂繊維の割合が第2層112における熱可塑性樹脂繊維の割合よりも低くなる。
また、第2層112の繊維密度は、第1層111の繊維密度よりも大きいことが好ましい。なお、繊維密度は、繊維本数の密度とする。それにより、第1層111から第2層112へ向かって繊維密度が高くなるように繊維密度の勾配を形成して、第1層111の液状排泄物を第2層112に強く引き込むことができる。そして、第2層112の非肌側に接する吸収コア等へ液状排泄物を安定的に移行させることができる。
ここで、シートの繊維密度は、例えば以下の測定方法で測定される。
(1)センターシート11を10mm×10mmの大きさに切り出して試料とする。(2)試料の厚さ方向Tに平行な切断面を、走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製:JCM-5100)を用いて、拡大観察する。倍率は、30~60本の繊維の断面が一画面内に計測できる倍率(例示:150~500倍)とする。(3)観察領域を厚さ方向Tに肌面側の層と非肌面側の層に二等分し、肌面側の層を第1層111とし、非肌面側の層を第2層112とした上で、各繊維層における繊維の断面の数を測定する。すなわち、所定面積の切断面において、切断されている繊維の断面の数を数える。(4)得られた繊維の断面の数を1mm2 当たりの繊維の断面の数に換算し、これを繊維密度(本/mm2)とする。測定は3ヶ所行い、測定値の平均値をその試料の繊維密度とする。すなわち、繊維密度として、繊維本数の密度を用いている。言い換えると、繊維密度として、厚さ方向Tに平行な断面における単位面積当たりの繊維の本数を用いている。なお、繊維密度として、単位体積当たりの繊維の本数を用いてもよい。単位体積当たりの繊維の本数は、例えばX線CTによる解析で求めることができる。単位面積当たりの繊維密度と、単位体積当たりの繊維密度とでは、数値は異なるが、繊維層間での繊維密度の相対的な比較(例示:大小の比較)では同じになる。
吸収性物品の吸収コアが配置された領域には、前後圧搾部65よりも幅方向の外側に位置する第1領域R31と、一対の前後圧搾部65によって挟まれた第2領域R32と、が設けられる。図1において、図1のF-F線に沿った断面における第1領域R31の幅方向の範囲と、第2領域の幅方向の範囲と、を示す。第1領域R31における高吸収性ポリマーの坪量は、第2領域R32における高吸収性ポリマーの坪量よりも高くてよい。吸収性物品が着用された状態において着用者の脚によって挟まれることにより、吸収性物品には幅方向の内側に向かう力がかかる。これにより、第1領域R31は、前後圧搾部65を基点に第2領域R32に対して肌面側に立ち上がり、着用者の脚に当たり易い。第1領域R31は、高吸収性ポリマーの坪量が高く、湿潤時に膨張してクッション性が高くなりやすい。よって、着用者の脚に対する当たりを和らげ、触り心地の悪化を抑制できる。
前後圧搾部65よりも幅方向の外側には、センターシート11とサイドシート12を厚み方向に圧縮したシート圧搾部16が形成されてよい。センターシート11とサイドシート12をシート圧搾部16によって接合でき、センターシート11とサイドシート12を別々の部材によって構成しても、トップシート10が分解せずに、着用時の脚に対する触り心地の低下を抑制しつつ、排泄口に対するフィット性を向上させて漏れを抑制する効果を得続けることができる。
起立部15は、吸収コア31において吸収材量の坪量が最も高い高坪量部33よりも幅方向Wの外側に位置してよい。一般的に、使用前の吸収性物品は、折り線を基点に折り畳まれて、厚さ方向に複数積層されて収容体内に収容されている。または、折り線を基点に折り畳まれずに、厚さ方向に積層されて収容体内に積層されている。また、吸収性物品は、吸収コア31の厚さが最も厚く、積層された状態では、吸収コア31の高坪量部33が押圧される。起立部15が高坪量部33よりも幅方向の外側に位置するため、高坪量部に圧力がかかった場合であっても起立部が潰れにくく、起立性を維持しやすい。
次いで、トップシートの動摩擦係数による表面特性の評価について説明する。表面特性の評価は、実施例1から実施例7に係るトップシートと、比較例1から比較例6に係るトップシートと、を用いて、表面触り心地と違和感のモニターによる評価を行った。評価結果を図5に示す。トップシートを構成するセンターシートとサイドシートのそれぞれの資材については、図5に示している。また、動摩擦係数の測定は、上述の測定方法によって測定した。表面特性の評価は、各サンプルに係るトップシートを、上述の実施形態に係る吸収性物品に適用し、モニターに生理期間中に5枚使用した後に、サンプル毎に評価を行った。触り心地の評価は、装着時の触感評価を3段階(○、△、×)で行い、違和感の評価は、装着後2時間経過時に10歩歩いた際の肌への擦れ度合を3段階(○、△、×)で行った。
図5に示すように、評価結果によれば、センターシートの動摩擦係数がサイドシートの動摩擦係数よりも高いことにより、触り心地触と違和感の評価共に、「×」がなく、好適な結果を得ることができた。センターシートの動摩擦係数とサイドシートの動摩擦係数の差は、0.26~0.35が好ましい。
また、本発明に係るトップシートは、センターシートが体液をより吸収するように構成されている。この体液の吸収性能の評価は、ニンヒドリンの呈色反応後の色によって評価するこができる。ニンヒドリン反応による評価においては、カナキンを濡らすことによって、濡れた肌を再現できる。当該再現する肌水分量は、湿潤時の60%を目安とする。よって、人口汗の所定量は、カナキン重量に対して60wt/%とする。カナキンを人口汗(林 純薬工業株式会社:人口汗液(酸性) 製品コード:M9-17 商品コード44008785 又は 人口汗(アルカリ性) 製品コード:M9-18 商品コード:44008775)にて略平均的に湿潤させ、更にその上から底面35mm×25mmの直方体である525gの錘を乗せる。カナキンを成形された吸収性物品上に載せ、5分静置させる。なお、カナキンは吸収性物品よりも10mm以上広い幅のものを用いる。このとき、各サンプルの着用者に向けられる面にカナキンを当てるようにする。濡れた肌を再現したサンプルに0.3wet%のニンヒドリン水溶液を30 g/m2となるように略均一に塗布し、自然乾燥させる。
センターシートによる人口汗の吸収量と、サイドシートによる人口汗の吸収量と、の差は、以下の2つの手段によって評価できる。第1の手段としては、L値に基づいて評価する。ニンヒドリン反応後の吸収性物品を、バックシートを下にした状態で、黒色シート上に置く。次に、吸収性物品のトップシート側、測定対象となる領域(センターシートの領域とサイドシートの領域)のL*値を、色彩色差計で3回測定し、その平均値を算出する。なお、L*値は国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage)によって規定されているL*a*b*表色系におけるL値は、例えば色彩色差計(KONICA MINOLTA社製 CR-3000)を用いて測定することができる。L値が大きいほど、使用後の表面白さに優れることを示すことから、L値が小さいほど、汗を吸収していると評価できる。
保水性繊維を有するセンターシートと、熱可塑性樹脂繊維を含むサイドシートと、のL値を比較すると、センターシートのL*値は、セカンドシートのL*値よりも大きくなり、保水性繊維が熱可塑性樹脂繊維よりも汗を吸収することがわかった。
また、第2の手段としては、PANTONE(登録商標)の色見本に基づいて評価する。ニンヒドリン反応後の吸収性物品のセンターシート及びサイドシートを、PANTONE(登録商標)の色見本と照らし合わせ、その濃淡を比較する。センターシートの呈色反応後の色にもっとも近い色見本と、サイドシートの呈色反応後の色に最も近い色見本と、を抽出する。色見本が異なることにより、センターシートの体液の吸収量が、サイドシートの体液の吸収量と異なることがわかる。また、人工汗の吸収量が大きいほど、ニンヒドリン反応後の色が濃くなる。そのため、センターシートに近い色見本と、サイドシートに近い色見本と、の色を比較し、センターシートの色見本が濃いことにより、センターシートの体液の吸収量が多いことがわかる。また、色見本の色差が大きければ大きいほど、体液の吸収量に差があることがわかる。本実施の形態に係るセンターシートとサイドシートを用いて評価すると、センターシートの色見本は、パントーン513Cであり、サイドシートの色見本は、パントーン516Cであった。センターシートの色見本が濃く、センターシートの体液の吸収量が多いことがわかった。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
変形例に係る吸収性物品は、サイドシート12がセンターシート11よりも肌面側T1に配置されてよい。サイドシート12がセンターシート11よりも肌面側T1に配置された形態にあっては、サイドシート12の非折り返し部12Aは、幅方向に離間して一対で設けられてよい。また、サイドシート12の折り返し部12Bは、吸収コアよりも肌面側に配置されていてもよいし、吸収コアよりも非肌面側に配置されていてもよい。