以下、エレベータ及びエレベータ調速機における一実施形態について、図1~図9を参照しながら説明する。なお、各図(図10~図21も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1に示すように、本実施形態に係るエレベータ1は、ユーザが乗るためのかご1aと、かご1aに接続されるかごロープ1bと、かごロープ1bに接続される釣合錘1cと、かご1a及び釣合錘1cを昇降させる巻上機1dとを備えている。巻上機1dは、かごロープ1bが巻き掛けられる綱車1eと、綱車1eを回転させる駆動源(図示していない)とを備えている。
エレベータ1は、かご1aを案内するかごレール1fと、釣合錘1cを案内する錘レール1hと、かご1aの移動速度を検出するエレベータ調速機(以下、単に「調速機」ともいう)2とを備えている。そして、かご1aは、かごレール1fに対して停止するために作動する停止装置1gを備えている。
本実施形態においては、かごロープ1bの一端部がかご1aに固定され、かごロープ1bの他端部が釣合錘1cに固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、かごロープ1bの両端部がそれぞれ昇降路の上部に固定され、かごロープ1bがかご1aのシーブ及び釣合錘1cのシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、かごロープ1bがかご1a及び釣合錘1cにそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
また、本実施形態に係るエレベータ1は、巻上機1dを機械室の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室が備えられておらず、エレベータ1は、巻上機1dを昇降路の内部に配置する、という構成でもよい。
また、本実施形態に係るエレベータ1は、ロープ式の駆動方式である、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
調速機2は、無端円状のロープ2aと、ロープ2aとかご1aとを連結する連結部2bと、ロープ2aが巻き掛けられる車部2cと、ロープ2aに張力が働くように、ロープ2aが巻き掛けられる張車2dとを備えている。これにより、かご1aとロープ2aとが接続されており、ロープ2aが車部2cに巻き掛けられているため、調速機2は、車部2cの回転速度に基づいて、かご1aの移動速度を検出する。
図2に示すように、調速機2は、かご1a(図1参照)の移動速度が設定速度を超えた際に、ロープ2aを把持する把持装置3を備えている。また、調速機2は、かご1aの移動速度が設定速度を超えた際に、把持装置3を作動させる作動部4を備えている。
把持装置3は、ロープ2aに接触して把持する第1把持部5及び第2把持部6と、第2把持部6を支持する支持部7とを備えている。そして、第2把持部6は、ロープ2aから離れる待機位置から、第1把持部5とロープ2aを挟むことによってロープ2aを把持する把持位置へと変位可能なように、第1把持部5に対して可動である。また、第2把持部6は、支持部7に対しても可動である。
ロープ2aは、横方向D1において、第1把持部5と第2把持部6との間に配置されており、第2把持部6は、横方向D1において、ロープ2aと支持部7との間に配置されている。第1把持部5及び第2把持部6は、それぞれロープ2aに接触する把持面5a,6aを備えている。
そして、第2把持部6が待機位置に位置する際には、把持面5a,6aは、横方向D1において、対面するように配置されており、第1把持面5aと第2把持面6aとは、平行(完全に平行だけでなく、略平行も含む)となるように、配置されている。なお、第2把持部6が待機位置に位置する際には、各把持面5a,6aは、ロープ2aに対して平行(完全に平行だけでなく、略平行も含む)となるように、配置されている。
作動部4は、車部2cに接続されるリンク機構4aと、リンク機構4aに接続される錘部4bとを備えている。また、作動部4は、第2把持部6を待機位置で止める停止部4cと、車部2cの回転速度が設定速度を超えた際に、停止部4cを第2把持部6から離させる起動部4dとを備えている。なお、第2把持部6は、停止部4cに停止される被停止部6bを備えている。
そして、調速機2においては、かご1aが移動し、車部2cが回転(自転)することに伴って、リンク機構4a及び錘部4bも、回転(公転)する。これにより、錘部4bに遠心力が働くため、錘部4bは、車部2cの回転軸2eから離れるように移動する。そして、かご1aの移動速度が設定速度を超えた場合には、錘部4bが回転軸2eから設定距離だけ離れた位置まで移動する。これに伴って、起動部4dが起動するため、停止部4cが第2把持部6の被停止部6bから離れる。
なお、作動部4の構成は、特に限定されない。例えば、図2に示すように、錘部4bは、車部2cの回転軸2e、即ち、横方向D2に延びる回転軸2eの周りを回転する、という構成でもよく、また、錘部4bは、車部2cの回転を受けて上下方向D3に延びる回転軸の周りを回転する、という構成でもよい。要するに、作動部4は、車部2cの回転速度が設定速度を超えた際に、把持装置3を作動させる、という構成であればよい。
また、起動部4dの構成は、特に限定されない。例えば、起動部4dは、複数のリンクで構成され、錘部4bが回転軸2eから設定距離だけ離れた位置まで移動した際に、錘部4bに衝突されることによって、停止部4cを移動させる、という構成でもよい。要するに、起動部4dは、車部2cの回転速度が設定速度を超えた際に、停止部4cを第2把持部6から離させる、という構成であればよい。
なお、作動部4は、電気(動力や電気信号のための電力)を用いることなく、把持装置3を作動させる、という構成が好ましい。また、起動部4dは、電気(動力や電気信号のための電力)を用いることなく、停止部4cを第2把持部6から離させる、という構成が好ましい。
調速機2は、躯体に固定されるベース部8を備えている。そして、第1把持部5は、ベース部8に固定されており、ベース部8に対して不動である。それに対して、支持部7は、ベース部8に対して可動である。具体的には、調速機2は、支持部7がベース部8に可動となるように、支持部7をベース部8に接続する接続機構9を備えている。なお、第2把持部6は、第1把持部5及び支持部7に対して可動であるため、ベース部8に対しても可動である。
接続機構9は、ベース部8に固定される固定部9aと、一端側が支持部7に不動に固定され、他端側が固定部9aに可動に支持される支柱部9bとを備えている。また、接続機構9は、支持部7が第2把持部6を第1把持部5に向けて押すように、支持部7に力を加える押力部9cを備えている。
押力部9cは、弾性変形することによって支持部7に力を加える弾性部9dと、固定部9aと協働して弾性部9dを挟む挟持部9eと、支柱部9bが固定部9aから抜けることを止める抜止部9fとを備えている。挟持部9eは、支柱部9bに固定されており、例えばネジ機構によって、支柱部9bに固定される位置を変更可能である。これにより、第2把持部6が把持位置に位置する際に、押力部9cが支持部7に加える力は、変更可能である。
ベース部8は、ロープ2aが通過する貫通孔8aと、支持部7を案内する第1案内部8bとを備えている。図2~図6に示すように、支持部7は、第1案内部8bに案内される第1被案内部7aを備えている。第1案内部8bは、横方向D1、具体的には、第1把持部5と第2把持部6とが対面する方向D1、に延びている。これにより、支持部7は、第1案内部8bに案内されることによって、ベース部8に対して横方向D1に変位可能である。
なお、第1案内部8b及び第1被案内部7aの構成は、特に限定されない。例えば、固定部9aの孔部の内周部が、第1案内部の機能を有し、支柱部9bの外周部が、第1案内部に案内される第1被案内部の機能を有していてもよい。要するに、第1案内部8b及び第1被案内部7aは、支持部7がベース部8に対して横方向D1に変位可能となるように、構成されていればよい。
第2把持部6の幅は、下方にいくにつれて、狭くなっている。即ち、第2把持部6は、楔状に形成されている。そして、第2把持部6は、支持部7に可動に接続されている。具体的には、支持部7は、第2把持部6を案内する第2案内部7bを備えており、第2把持部6は、支持部7の第2案内部7bに案内される第2被案内部6cを備えている。
第2被案内部6cは、複数の転動体6dを備えている。これにより、第2被案内部6cが第2案内部7bに滑らかに案内されるため、第2把持部6は、支持部7に対して滑らかに変位できる。したがって、作動部4の停止部4cが第2把持部6の被停止部6bから離れることによって、第2把持部6は、自重によって、支持部7に対して下方に変位できる。また、第2被案内部6cが第2案内部7bに案内されることによって、第1把持面5aと第2把持面6aとが平行である状態は、維持される。
さらに、調速機2は、第2把持部6が把持位置に位置する際に、第2把持部6が上方に変位することを規制する規制部10を備えている。規制部10は、支持部7に可動に接続される可動部10aと、可動部10aが支持部7から外方に向けて変位するように、可動部10aに外方への力を加える加力部10bとを備えている。
可動部10aの少なくとも一部は、支持部7の内部に配置されており、加力部10bは、可動部10aと支持部7との間に配置されている。加力部10bの構成は、特に限定されないが、例えば、加力部10bは、圧縮する弾性変形をすることによって、可動部10aに外方への力を加える弾性体(例えば、弦巻バネ、板バネ)とすることができる。
また、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位する際に、可動部10aの端部を外方から押さえる押さえ部6eを備えている。そして、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、可動部10aは、押さえ部6eから解放されて、支持部7から外方に向けて変位する。これにより、可動部10aは、第2把持部6を上下方向D3で止めることができる。
本実施形態に係るエレベータ1及びエレベータ調速機2の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るエレベータ調速機2の動作について、図7~図9を参照しながら説明する。なお、ロープ2aのうち、第1把持部5と第2把持部6との間に位置する部分が、下方に向けて走行している場合について説明する。
まず、かご1a(図1参照)の移動速度が設定速度以内である場合には、図7に示すように、作動部4の停止部4cは、第2把持部6の被停止部6bを止めている。これにより、第2把持部6は、待機位置に位置している。このとき、第2把持部6は、ロープ2aから離れている。また、第2把持面6aは、第1把持面5a及びロープ2aに対して平行である。
そして、かご1aの移動速度が設定速度を超え、車部2c(図2参照)の回転速度が設定速度を超えた場合には、図8に示すように、起動部4dが起動するため、停止部4cは、第2把持部6の被停止部6bから離れる。これにより、第2把持部6が自重により下方に変位すると共に、第2把持部6がロープ2aに近づく。
このとき、第2把持部6が支持部7に案内されているため、第2把持面6aがロープ2a及び第1把持面5aに対して平行である状態は、維持される。したがって、第2把持部6がロープ2aと線接触するため、第2把持部6がロープ2aと点接触することを抑制することができる。なお、第2把持部6の押さえ部6eが、可動部10aを外方から押さえているため、第2把持部6は、可動部10aに引っ掛かることなく、待機位置から把持位置に向けて変位できる。
そして、第2把持部6がロープ2aに接触しているため、第2把持部6とロープ2aとの間に発生する摩擦力によって、第2把持部6がさらに下方に変位する。これにより、図9に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、第1把持部5及び第2把持部6は、互いにロープ2aを挟んで把持する。
このとき、第2把持部6が支持部7に案内されているため、第2把持面6aがロープ2a及び第1把持面5aに対して平行である状態は、維持される。したがって、第2把持部6がロープ2aに接触してから把持位置へ到達するまで、第2把持部6がロープ2aと線接触することを維持できる。
また、第2把持部6が把持位置へ到達した際に、可動部10aが押さえ部6eから解放されるため、可動部10aは、支持部7から外方に向けて変位する。即ち、可動部10aが支持部7から突出する量は、大きくなる。これにより、可動部10aが第2把持部6を上下方向D3で止めるため、第2把持部6が上方に変位することを規制することができる。したがって、第2把持部6が把持位置から上方に変位することを抑制することができるため、第1把持部5及び第2把持部6は、ロープ2aを確実に把持できる。
なお、第2把持部6が把持位置に向けて変位する際に、第2把持部6が支持部7を押している。これにより、支持部7は、第1把持部5及びベース部8に対して、第1把持部5から離れる方向、即ち、固定部9aに近づく方向、に変位する。したがって、弾性部9dが圧縮されるため、押力部9cが支持部7に加える力は、大きくなる。その結果、支持部7が、第2把持部6を大きな力で押すため、第1把持部5及び第2把持部6は、ロープ2aを確実に把持できる。
なお、起動部4dが起動して、停止部4cが第2把持部6から離れてから、第1把持部5及び第2把持部6がロープ2aを把持するまでの時間は、短い方が好ましい。即ち、第2把持部6の変位量、即ち、第2把持部6の待機位置と把持位置との距離は、短いことが好ましい。例えば、当該距離は、第2把持部6の高さ(上下方向D3の寸法)より小さいことが好ましく、また、第2把持部6の高さの50%より小さいことがより好ましい。
以上より、本実施形態に係るエレベータ1は、かご1aと、前記かご1aとかごロープ1bで接続される釣合錘1cと、前記かご1a又は前記釣合錘1c(本実施形態においては、かご1a)に接続されるロープ2aと、前記のエレベータ調速機2と、を備える。
そして、本実施形態に係るエレベータ調速機2は、ロープ2aが巻き掛けられる車部2cと、前記ロープ2aを把持する把持装置3と、前記把持装置3を作動させる作動部4と、を備え、前記把持装置3は、前記ロープ2aに接触する第1把持部5と、前記ロープ2aから離れる待機位置から、前記第1把持部5と前記ロープ2aを挟むことによって前記ロープ2aを把持する把持位置へと変位可能なように、前記第1把持部5に対して可動な第2把持部6と、前記第2把持部6が前記把持位置に位置する際に、前記第2把持部6を支持する支持部7と、を備え、前記作動部4は、前記第2把持部6を前記待機位置で止める停止部4cと、前記車部2cの回転速度が設定速度を超えた際に、前記停止部4cを前記第2把持部6から離させる起動部4dと、を備え、前記第2把持部6は、前記ロープ2aと線接触するように、前記支持部7に対して可動である。
斯かる構成によれば、車部2cの回転速度が設定速度を超えた際に、起動部4dが、停止部4cを第2把持部6から離させるため、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位する。そして、第2把持部6が把持位置に位置することによって、第1把持部5及び第2把持部6は、ロープ2aを把持する。このとき、第2把持部6が支持部7に対して可動であるため、第2把持部6は、ロープ2aと線接触する。したがって、第2把持部6がロープ2aと点接触することを抑制することができる。
また、本実施形態に係るエレベータ調速機2は、前記第2把持部6が前記ロープ2aと線接触するように、前記第2把持部6を案内する案内部7bを備える、という構成である。
斯かる構成によれば、案内部7bが第2把持部6を案内するため、第2把持部6は、ロープ2aと線接触できる。これにより、第2把持部6がロープ2aと点接触することを確実に抑制することができる。
また、本実施形態に係るエレベータ調速機2は、前記第2把持部6が前記把持位置に位置する際に、前記第2把持部6が上方に変位することを規制する規制部10を備える、という構成である。
斯かる構成によれば、第2把持部6が把持位置に位置する際に、規制部10が第2把持部6を上方に変位することを規制するため、第2把持部6が把持位置から上方に変位することを抑制することができる。これにより、ロープ2aは、第1把持部5及び第2把持部6によって、確実に把持される。
また、本実施形態に係るエレベータ調速機2においては、前記規制部10は、前記第1把持部5又は前記支持部7と、前記第2把持部6とのうち、一方(本実施形態においては、支持部7)に可動に接続される可動部10aと、前記可動部10aが前記一方7から外方に向けて変位するように、前記可動部10aに外方への力を加える加力部10bと、を備え、前記第1把持部5又は前記支持部7と、前記第2把持部6とのうち、他方(本実施形態においては、第2把持部6)は、前記第2把持部6が前記待機位置から前記把持位置へ変位する際に、前記可動部10aを外方から押さえる押さえ部6eを備え、前記可動部10aは、前記第2把持部6が前記把持位置へ到達することによって、前記押さえ部6eから解放されて前記一方7から外方に向けて変位することによって、前記他方6を上下方向D3で止める、という構成である。
斯かる構成によれば、加力部10bが可動部10aに外方への力を加えていることに対して、押さえ部6eが可動部10aを外方から押さえているため、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位できる。そして、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、可動部10aが押さえ部6eから解放されるため、可動部10aは、前記一方7から外方に向けて変位する。これにより、可動部10aが前記他方6を上下方向D3で止めるため、第2把持部6が上方に変位することを規制することができる。
なお、エレベータ1及びエレベータ調速機2は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及びエレベータ調速機2は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係るエレベータ調速機2においては、規制部10は、可動部10a及び加力部10bから構成されている、という構成である。しかしながら、規制部10は斯かる構成に限られず、例えば、第2把持部6が把持位置に位置する際に、第2把持部6が上方に変位することを規制する、という構成であればよい。また、例えば、規制部10は、例えばラチェット機構によって、第2把持部6が把持位置に到達する前でも、上方に変位することを規制しつつ、下方に変位可能である、という構成でもよい。
(2)また、上記実施形態に係るエレベータ調速機2においては、可動部10aは、支持部7に可動に接続され、押さえ部6eは、第2把持部6に備えられている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機2は、斯かる構成に限られない。
例えば、図10及び図11に示すように、可動部10aは、第2把持部6に可動に接続され、押さえ部7cは、支持部7に備えられている、という構成でもよい。また、例えば、図12及び図13に示すように、可動部10aは、第1把持部5に可動に接続され、押さえ部6eは、第2把持部6に備えられている、という構成でもよい。また、例えば、図14及び図15に示すように、可動部10aは、第2把持部6に可動に接続され、押さえ部5bは、第1把持部5に備えられている、という構成でもよい。
(2-1)図10及び図11に係る規制部10は、第2把持部6に可動に接続される可動部10aと、可動部10aが第2把持部6から外方に向けて変位するように、可動部10aに外方への力を加える加力部10bと、を備え、支持部7は、第2把持部6が待機位置から把持位置へ変位する際に、可動部10aを外方から押さえる押さえ部7cを備え、可動部10aは、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、押さえ部7cから解放されて第2把持部6から外方に向けて変位することによって、支持部7を上下方向D3で止める、という構成である。
斯かる構成によれば、図10に示すように、加力部10bが可動部10aに外方への力を加えていることに対して、押さえ部7cが可動部10aを外方から押さえているため、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位できる。そして、図11に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、可動部10aが押さえ部7cから解放されるため、可動部10aは、第2把持部6から外方に向けて変位する。これにより、可動部10aが支持部7を上下方向D3で止めるため、第2把持部6が上方に変位することを規制することができる。
(2-2)また、図12及び図13に係る規制部10は、第1把持部5に可動に接続される可動部10aと、可動部10aが第1把持部5から外方に向けて変位するように、可動部10aに外方への力を加える加力部10bと、を備え、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位する際に、可動部10aを外方から押さえる押さえ部6eを備え、可動部10aは、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、押さえ部6eから解放されて第1把持部5から外方に向けて変位することによって、第2把持部6を上下方向D3で止める、という構成である。
斯かる構成によれば、図12に示すように、加力部10bが可動部10aに外方への力を加えていることに対して、押さえ部6eが可動部10aを外方から押さえているため、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位できる。そして、図13に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、可動部10aが押さえ部6eから解放されるため、可動部10aは、第1把持部5から外方に向けて変位する。これにより、可動部10aが第2把持部6を上下方向D3で止めるため、第2把持部6が上方に変位することを規制することができる。
(2-3)また、図14及び図15に係る規制部10は、第2把持部6に可動に接続される可動部10aと、可動部10aが第2把持部6から外方に向けて変位するように、可動部10aに外方への力を加える加力部10bと、を備え、第1把持部5は、第2把持部6が待機位置から把持位置へ変位する際に、可動部10aを外方から押さえる押さえ部5bを備え、可動部10aは、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、押さえ部5bから解放されて第2把持部6から外方に向けて変位することによって、第1把持部5を上下方向D3で止める、という構成である。
斯かる構成によれば、図14に示すように、加力部10bが可動部10aに外方への力を加えていることに対して、押さえ部5bが可動部10aを外方から押さえているため、第2把持部6は、待機位置から把持位置へ変位できる。そして、図15に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、可動部10aが押さえ部5bから解放されるため、可動部10aは、第2把持部6から外方に向けて変位する。これにより、可動部10aが第1把持部5を上下方向D3で止めるため、第2把持部6が上方に変位することを規制することができる。
(3)また、上記実施形態に係るエレベータ調速機2においては、第1把持部5は、ベース部8に不動に固定され、支持部7は、ベース部8に可動に接続されている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機2は、斯かる構成に限られない。例えば、第1把持部5は、ベース部8に可動に接続され、支持部7は、ベース部8に不動に固定されている、という構成でもよい。
また、例えば、第1把持部5は、ベース部8に不動に固定され、支持部7も、ベース部8に不動に固定されている、という構成でもよい。なお、第1把持部5及び支持部7の両方が、ベース部8に不動に固定されている構成においては、第1把持部5及び支持部7の少なくとも一方は、ベース部8に対する固定位置を変更可能である、という構成が好ましい。
(4)また、上記実施形態に係るエレベータ調速機2においては、支持部7は、ベース部8に対して横方向D1に変位可能となるように、ベース部8に接続されている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機2は、斯かる構成に限られない。例えば、図16~図21に示すように、支持部7は、ベース部8に対して回転(公転)可能となるように、ベース部8に接続されている、という構成でもよい。
(4-1)図16~図18に係る接続機構9は、ベース部8に固定される固定部9aと、固定部9aに回転可能に接続される回転部9gと、一端側が支持部7に回転可能に接続され、他端側が回転部9gに可動に支持される支柱部9bと、支持部7が第2把持部6を第1把持部5に向けて押すように、支持部7に力を加える押力部9cとを備えている。これにより、支持部7は、ベース部8に対して回転可能となるように、ベース部8に接続されている。
ここで、図16~図18に係るエレベータ調速機2についての動作を説明する。
図16に示すように、第2把持部6は、支持部7の案内部7bに案内されることよって、支持部7に対して所定方向に可動となるように、支持部7に接続されている。そして、作動部4の停止部4cが、第2把持部6の被停止部6bを止めることによって、第2把持部6は、待機位置に位置している。なお、支持部7は、第2把持部6に上下方向D3で引っ掛けられる引掛部7dを備えているため、第2把持部6は、支持部7を止めている。
斯かる状態から、図17に示すように、停止部4cが被停止部6bから離れることによって、第2把持部6及び支持部7は、自重(支柱部9b等の重力も含む)により、下方に変位する。そして、第2把持部6がロープ2aに接触する際に、支持部7が第2把持部6を経由してロープ2aから力を受けるため、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、支持部7が支柱部9bに対して回転する。
これにより、第2把持部6がロープ2aと点接触することを抑制することができる。なお、第2把持部6がロープ2aに接触する瞬間において、仮に、第2把持部6がロープ2aに点接触した場合であっても、支持部7が支柱部9bに対して回転することで、第2把持部6がロープ2aに速やかに線接触することになる。
そして、第2把持部6がロープ2aに接触しているため、第2把持部6とロープ2aとの間に発生する摩擦力によって、第2把持部6がさらに下方に変位する。これにより、図18に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、第1把持部5及び第2把持部6は、互いにロープ2aを挟んで把持する。
このとき、支持部7が第2把持部6を経由してロープ2aから継続して力を受けるため、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、支持部7が支柱部9bに対して回転するため、第2把持面6aがロープ2a及び第1把持面5aに対して平行である状態は、維持される。したがって、第2把持部6がロープ2aに接触してから把持位置へ到達するまで、第2把持部6がロープ2aと線接触することを維持できる。
なお、第2把持部6が待機位置から把持位置に変位することに伴って、支持部7は、回転部9gに対して近づくように、変位している。これにより、第2把持部6が待機位置から把持位置に変位することに伴って、弾性部9dは、圧縮するように弾性変形する。したがって、押力部9cが支持部7に加える力が、大きくなるため、第1把持部5及び第2把持部6は、ロープ2aを確実に把持できる。
また、図18においては、支持部7がベース部8に接触する前に、第2把持部6が支持部7に対して下方に変位する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、支持部7がベース部8に接触するまで、第2把持部6が支持部7と一体となって下方に変位し、支持部7がベース部8に接触した後、第2把持部6が支持部7に対して下方に変位
する、という構成でもよい。
(4-2)図19~図21に係る接続機構9は、ベース部8に固定される固定部9aと、固定部9aに回転可能に接続される回転部9gと、一端側が支持部7に不動に固定され、他端側が回転部9gに可動に支持される支柱部9bと、支持部7が第2把持部6を第1把持部5に向けて押すように、支持部7に力を加える押力部9cとを備えている。これにより、支持部7は、ベース部8に対して回転可能となるように、ベース部8に接続されている。
図19~図21に係る調速機2においては、支持部7は、停止部4cに停止される被停止部7eを備えている。そして、第2把持部6は、支持部7に回転可能に接続されている。さらに、調速機2は、支持部7に対して第2把持部6を所定の位置で保持するための保持部11を備えている。
図19~図21においては、保持部11は、第2把持部6と支持部7との間に配置される弾性材としている。そして、外力がなく保持部11が復元している状態で、第2把持部6が支持部7から所定距離だけ離される一方、保持部11が外力によって圧縮弾性変形することで、第2把持部6が支持部7に近づく、という構成である。
なお、保持部11の構成は、特に限定されない。例えば、保持部11は、支持部7に固定されて且つ第2把持部6を引っ掛けるフックであって、第2把持部6を引っ掛けることによって、第2把持部6が支持部7から離れることを止める一方で、第2把持部6が支持部7に近づくことを許容する、という構成でもよい。なお、保持部11は、備えられていなくてもよい。
ここで、図19~図21に係るエレベータ調速機2についての動作を説明する。
図19に示すように、作動部4の停止部4cが、支持部7の被停止部7eを止めることによって、第2把持部6は、待機位置で止められている。斯かる状態から、図20に示すように、停止部4cが被停止部7eから離れることによって、第2把持部6及び支持部7は、自重(支柱部9b等の重力も含む)により、下方に変位する。
そして、第2把持部6がロープ2aに接触する際に、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、第2把持部6が支持部7に対して回転する。これにより、第2把持部6がロープ2aと線接触するため、第2把持部6がロープ2aと点接触することを抑制することができる。なお、第2把持部6がロープ2aに接触する瞬間において、仮に、第2把持部6がロープ2aに点接触した場合であっても、第2把持部6が支持部7に対して回転することで、第2把持部6がロープ2aに速やかに線接触することになる。
そして、第2把持部6がロープ2aに接触しているため、第2把持部6とロープ2aとの間に発生する摩擦力によって、第2把持部6がさらに下方に変位する。これにより、図21に示すように、第2把持部6が把持位置へ到達することによって、第1把持部5及び第2把持部6は、互いにロープ2aを挟んで把持する。
このとき、第2把持部6がロープ2aから継続して力を受けるため、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、第2把持部6が支持部7に対して回転するため、第2把持面6aがロープ2a及び第1把持面5aに対して平行である状態は、維持される。したがって、第2把持部6がロープ2aに接触してから把持位置へ到達するまで、第2把持部6がロープ2aと線接触することを維持できる。
なお、第2把持部6が待機位置から把持位置に変位することに伴って、支持部7は、回転部9gに対して近づくように、変位している。これにより、第2把持部6が待機位置から把持位置に変位することに伴って、弾性部9dは、圧縮するように弾性変形する。したがって、押力部9cが支持部7に加える力が、大きくなるため、第1把持部5及び第2把持部6は、ロープ2aを確実に把持できる。
(5)また、上記実施形態に係るエレベータ調速機2においては、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、第2把持部6を案内する案内部7bは、支持部7に備えられている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機2は、斯かる構成に限られない。例えば、第2把持部6がロープ2aと線接触するように、第2把持部6を案内する案内部は、ベース部8に備えられている、という構成でもよい。
(6)また、上記実施形態に係るエレベータ調速機2は、第1案内部8b、第2案内部7b及び規制部10を備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機2は、斯かる構成が好ましいものの、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ調速機2は、第1案内部8b、第2案内部7b及び規制部10の少なくとも一つを備えていない、という構成でもよい。
(7)また、上記実施形態に係るエレベータ1においては、エレベータ調速機2のロープ2aは、かご1aに接続されている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ調速機2のロープ2aは、釣合錘1cに接続されており、停止装置1gは、錘レール1hを把持することによって釣合錘1cを停止させるために、釣合錘1cに取り付けられている、という構成でもよい。
また、例えば、エレベータ調速機2は、複数備えられている、という構成でもよい。具体的には、停止装置1gは、かご1a及び釣合錘1cの両方にそれぞれ取り付けられており、第1のエレベータ調速機2のロープ2aは、かご1aと接続されると共に、第2のエレベータ調速機2のロープ2aは、釣合錘1cに接続されている、という構成でもよい。