JP7001168B2 - スラスト反力作用点位置の同定方法及び圧延材の圧延方法 - Google Patents

スラスト反力作用点位置の同定方法及び圧延材の圧延方法 Download PDF

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Description

本発明は、圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法及び圧延材の圧延方法に関する。
金属板材の圧延操業における重要な課題の一つに、圧延材の伸び率を作業側と駆動側とで等しくすることがある。圧延材の伸び率が作業側と駆動側とで不均等になった場合、圧延材の蛇行による通板トラブルや、キャンバーによる形状不良等が生じることがある。圧延材の作業側と駆動側との伸び率を均等にするために、圧延機の作業側の圧下位置と駆動側の圧下位置との差、すなわちレベリングが修正される。
例えば、特許文献1には、圧延機の圧下方向ロードセル測定荷重の作業側と駆動側との差の和に対する比に基づいて、レベリングを修正する技術が開示されている。しかし、圧延機の圧下方向ロードセル測定荷重の作業側と駆動側との差には、外乱として、接触して配置されているロール間においてロール軸方向に作用するスラスト力が含まれる。例えば4段圧延機の場合には、作業ロールと補強ロールとの間に、ロール軸方向にスラスト力が作用する。また、6段圧延機の場合には、作業ロールと中間ロールとの間、及び、中間ロールと補強ロールとの間に、ロール軸方向にスラスト力が作用する。
そこで、例えば特許文献2には、圧延機の圧下方向ロードセル測定荷重の作業側と駆動側との差の外乱となるスラスト力を分離して、圧延機の圧下位置の設定及び圧下位置の制御を行う技術が開示されている。特許文献2に記載の板圧延方法では、上下補強ロール及び上下作業ロールを接触状態で締め込み、少なくとも補強ロール以外のすべてのロールに作用するロール軸方向スラスト反力を測定するとともに、上下補強ロールの各々の圧下支点位置での圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する。そして、スラスト反力及び補強ロール反力の測定値に基づき、圧下装置の零点と板圧延機の変形特性のうち少なくともいずれか一方を演算し、当該演算結果に基づいて、圧延実行時の圧下位置設定あるいは圧下位置制御を実施する。
特開昭55-156610号公報 国際公開第1999/043452号 特開2014-4599号公報
上記特許文献2に記載の技術では、ロールを接触状態で締め込こんだキスロール締め込み時あるいは圧延中に、補強ロール以外のロールに作用するスラスト反力と、上下補強ロールの各圧下支点位置に作用する補強ロール反力を測定する。ここで、スラスト反力とは、各ロールにおいて、主としてロール間の微小なクロスの存在によってロール胴部の接触面に発生するスラスト力の合力に抗して、当該ロールを定位置に保持するための反力である。スラスト反力は、例えばロールチョック内のスラスト軸受に作用する荷重を直接検出する装置、あるいは、キーパープレート等のロールチョックをロール軸方向に固定している構造体に作用する力を検出することにより間接的に検出する装置によって測定することは可能である。しかし、補強ロールは、キーパープレート以外にも、圧下装置及びロールバランス装置から大きな荷重を受けており、これらの鉛直方向荷重に起因する摩擦力もスラスト反力の一部となり得る。このため、ロール間の微小なクロスの存在によってロール胴部の接触面に発生するスラスト力の合力に対する、補強ロールへのスラスト反力の作用点位置(以下、「スラスト反力作用点位置」とする。)は一般に不明である。
そこで、上記特許文献2に記載の技術では、補強ロール以外のロールを抜き取り、補強ロールの胴部に鉛直方向荷重を加えた状態で、補強ロールに既知のスラスト力を作用させて、圧下方向ロードセル測定荷重の左右差を測定する。そして、測定された圧下方向ロードセル測定荷重の左右差に基づき、力及びモーメントに関する平衡式から、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定している。
しかし、上記特許文献2に記載の技術では、補強ロール以外のロールを抜き取り、較正装置を用いて補強ロールに既知のスラスト力を作用させる必要があるため、作業ロールの組替時等でしか実施できない。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、例えば圧延機のアイドル時間等の作業ロールの組替時以外においても簡便に実施可能な、新規かつ改良された補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法及び圧延材の圧延方法を提供することにある。
圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法であって、圧延機は、少なくとも一対の作業ロールと作業ロールを支持する一対の補強ロールとを含む複数のロール対を備えた、複数のロールを有する4段以上の圧延機であり、同一の締め込み荷重において、ロール間の摩擦係数またはロール間クロス角のうち少なくとも一方を変更することにより、複数水準のスラスト力をロール間に作用させ、スラスト力に関する複数水準それぞれにおいて、圧下装置によりロールを締め込み接触させたキスロール状態において、補強ロール以外のロール対のうち、少なくともいずれか1つのロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において、各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する第1の工程と、測定された各ロールに作用するスラスト反力及び補強ロール反力に基づいて、各ロールに作用する力に関する第1の平衡条件式と、各ロールに発生するモーメントに関する第2の平衡条件式とを用いて、補強ロールに作用するスラスト反力のスラスト反力作用点位置を同定する第2の工程と、を含む、スラスト反力作用点位置の同定方法が提供される。
第1の工程では、補強ロール以外のすべてのロール対について、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において、各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定してもよい。
圧延機は、少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリのロール軸方向と、少なくとも下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのロール軸方向とを、クロスさせることが可能な4段の圧延機であってもよい。このとき、第1の工程では、上作業ロールと下作業ロールとのロール間クロス角を変更することにより、複数水準のスラスト力をロール間に作用させる。
あるいは、圧延機は、少なくともいずれか1つのロールに対して作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与える外力付与装置を備える圧延機であってもよい。このとき、第1の工程では、外力付与装置を備えるロールの作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与えることにより、当該ロールの全ロール系に対すロール間クロス角を変更させ、複数水準のスラスト力をロール間に作用させる。
また、第2の工程において、さらに、締め込み荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関する複数水準における補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定した結果に基づいて、各キスロール状態での締め込み荷重とスラスト反力作用点位置との関係を取得してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記のスラスト反力作用点位置の同定方法により、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧下装置によりロールを締め込み接触させたキスロール状態において、補強ロール以外のすべてのロール対について、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、圧下装置の零点位置または圧延機の変形特性のうち少なくともいずれか一方を演算する工程と、演算結果に基づいて、圧延実行時における圧下装置による圧下位置を設定する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記スラスト反力作用点位置の同定方法により、予め補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧延材の圧延中において、少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、補強ロール以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくともスラスト反力を測定するロールアセンブリの補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下装置により圧下位置を制御する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記のスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧延材の圧延中において、少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、補強ロール以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくともスラスト反力を測定するロールアセンブリの補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、少なくとも補強ロールと当該補強ロールに接するロールとの間に作用するスラスト力を考慮して、圧延材と作業ロールとの間に作用する圧延荷重のロール軸方向分布の非対称性を演算し、演算結果に基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下装置により圧下位置を制御する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
圧延機は、一対の作業ロール、作業ロールを支持する一対の中間ロール及び一対の補強ロールの、3つのロール対を備えた6段の圧延機であり第1の工程では、中間ロールのロール対または作業ロールのロール対のいずれかについて、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において、各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定するようにしてもよい。
圧延機は、少なくともいずれか1つのロールに対して作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与える外力付与装置を備えており、第1の工程では、外力付与装置を備えるロールの作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与えることにより、当該ロールの全ロール系に対するロール間クロス角を変更させ、複数水準のスラスト力をロール間に作用させようにしてもよい。
また、第2の工程において、さらに、締め込み荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関する複数水準における補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定した結果に基づいて、各キスロール状態での締め込み荷重とスラスト反力作用点位置との関係を取得するようにしてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述の6段の圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法により、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧下装置によりロールを締め込み接触させたキスロール状態において、中間ロールのロール対または作業ロールのロール対のいずれかについて、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、圧下装置の零点位置または圧延機の変形特性のうち少なくともいずれか一方を演算する工程と、演算結果に基づいて、圧延実行時における圧下装置による圧下位置を設定する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述の6段の圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧延材の圧延中において、上作業ロール、上中間ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール、下中間ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、中間ロールまたは作業ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくともスラスト反力を測定するロールアセンブリの補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下装置により圧下位置を制御する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上述の6段の圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、圧延材の圧延中において、上作業ロール、上中間ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール、下中間ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、中間ロールまたは作業ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくともスラスト反力を測定するロールアセンブリの補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、スラスト反力の測定値と、補強ロール反力の測定値と、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置とに基づいて、少なくとも補強ロールと当該補強ロールに接するロールとの間に作用するスラスト力を考慮して、圧延材と作業ロールとの間に作用する圧延荷重のロール軸方向分布の非対称性を演算し、演算結果に基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下装置により圧下位置を制御する工程と、を含む、圧延材の圧延方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、例えば圧延機のアイドル時間等の作業ロールの組替時以外においても簡便に補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
4段圧延機の一構成例を示す説明図である。 6段圧延機の一構成例を示す説明図である。 4段圧延機において、キスロール締め込み状態での各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。 6段圧延機において、キスロール締め込み状態での各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、ロール間の摩擦係数を変更して実施する場合を示す。 本発明の一実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の他の一例を示すフローチャートであって、ロール間の摩擦係数を変更して実施する場合を示す。 同実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、ペアクロス圧延機を用いてロール間クロス角を変更して実施する場合を示す。 同実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、通常の圧延機を用いてロール間クロス角を変更して実施する場合を示す。 同実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の他の一例を示すフローチャートであって、通常の圧延機を用いてロール間クロス角を変更して実施する場合を示す。 キスロール締め込み荷重とスラスト反力作用点位置との関係例を示す説明図である。 本実施形態に係る圧下装置による零点調整による圧下位置設定の処理の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係る圧下装置による零点調整による圧下位置設定の処理の他の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係るハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定の処理の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係るハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定の処理の他の一例を示すフローチャートである。 4段圧延機において、圧延中での各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。 6段圧延機において、圧延中での各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。 本実施形態に係る圧延中における圧下位置制御の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係る圧延中における圧下位置制御の他の一例を示すフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[1.補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法]
[1-1.圧延機の構成]
まず、図1A及び図1Bを参照して、本発明の一実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法を適用する圧延機の概略構成について説明する。図1Aは、4段圧延機の一構成例を示す説明図である。図1Bは、6段圧延機の一構成例を示す説明図である。本発明は、少なくとも一対の作業ロールと作業ロールを支持する一対の補強ロールとを含む複数のロール対を備えた、複数のロールを有する4段以上の圧延機に対して適用することができる。また、図1A及び図1Bでは、ロール軸方向において、作業側をWS(Work Side)、駆動側をDS(Drive Side)と表す。
(4段圧延機の構成)
図1Aに示す圧延機100は、一対の作業ロール1、2と、これを支持する一対の補強ロール3、4とを有する4段の圧延機である。上作業ロール1は上作業ロールチョック5a、5bにより支持されており、下作業ロール2は下作業ロールチョック6a、6bにより支持されている。また、上補強ロール3は上補強ロールチョック7a、7bにより支持されており、下補強ロール4は下補強ロールチョック8a、8bにより支持されている。上作業ロール1及び上補強ロール3は上ロールアセンブリを構成し、下作業ロール2及び下補強ロール4は下ロールアセンブリを構成する。上作業ロールチョック5a、5b、下作業ロールチョック6a、6b、上補強ロールチョック7a、7b、及び下補強ロールチョック8a、8bは、ハウジング11により保持されている。なお、図1Aでは、ハウジング11は下補強ロール4の下方に位置する部分のみを示している。
圧延機100は、上ロールアセンブリに係る圧下方向荷重を検出する上荷重検出装置9a、9bと、下ロールアセンブリに係る圧下方向荷重を検出する下荷重検出装置10a、10bとを備える。上荷重検出装置9a及び下荷重検出装置10aは、作業側における圧下方向荷重を検出し、上荷重検出装置9b及び下荷重検出装置10bは、駆動側における圧下方向荷重を検出する。
上荷重検出装置9a、9bの上方には、上補強ロールチョック7a、7bに対して鉛直下向きの荷重を加える圧下装置が設けられている。圧下装置は、押圧ブロック12a、12bと、スクリュー13a、13bと、圧下装置駆動機構14を備える。押圧ブロック12a、12bは、上補強ロールチョック7a、7bを、当該上補強ロールチョック7a、7bの上側に設けられた上荷重検出装置9a、9bの上側から押圧する。スクリュー13a、13bは、圧下位置を調節するための機構であり、圧下装置の一例である。スクリュー13a、13bにより、押圧ブロック12a、12bの押し込み量が調節される。スクリュー13a、13bは、圧下装置駆動機構14により駆動される。圧下装置駆動機構14は例えばモータ等である。
本実施形態に係る上作業ロール1及び下作業ロール2は、ロール軸方向におけるロール位置を移動させる作業ロールシフト装置15a、15bを備える。作業ロールシフト装置15a、15bは、例えば油圧シリンダにより構成してもよい。また、上作業ロール1及び下作業ロール2には、当該ロールにかかるスラスト反力を測定するスラスト反力測定装置16a、16bがそれぞれ設けられている。スラスト反力測定装置16a、16bは、例えばロードセルにより構成してもよい。
ここで、スラスト反力とは、各ロール胴部の接触面において、主としてロール間の微小なクロス角の存在によって発生するスラスト力の各ロールに関する合力に抗して、当該ロールを定位置に保持するための反力である。通常、スラスト反力は、ロールチョックを介してキーパープレートに負荷されるが、作業ロールシフト装置15a、15bを有する圧延機100の場合は、当該作業ロールシフト装置15a、15bに負荷される。また、上下の補強ロール3、4の各圧下支点位置に作用する補強ロール反力は、通常ロードセルによって測定される。しかし、油圧シリンダ等による圧下装置を有する場合には、油圧シリンダ内の圧力の測定値から、補強ロール反力を算出することも可能である。
本実施形態に係る圧延機100は、圧下装置による圧下位置設定及び圧下位置制御を行うための情報処理を行う装置として、演算装置21と、圧下装置駆動機構制御装置23とを備える。演算装置21は、上荷重検出装置9a、9b、下荷重検出装置10a、10b及びスラスト反力測定装置16a、16bの測定結果に基づいて、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定するための演算処理を行う。また、演算装置21は、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置に基づき、圧延機100の圧下位置を設定するための演算を行い、圧延中には圧下位置操作量の演算を行う。圧下装置駆動機構制御装置23は、演算装置21の演算結果に基づいて、圧下装置駆動機構14を駆動するための制御値を演算し、演算した制御値に基づき圧下装置駆動機構14を駆動する。
(6段圧延機の構成)
図1Bに示す圧延機200は、一対の作業ロール1、2、これを支持する一対の中間ロール31、32及び一対の補強ロール3、4の、3つのロール対を備えた6段の圧延機である。上作業ロール1は上作業ロールチョック5a、5bにより支持されており、下作業ロール2は下作業ロールチョック6a、6bにより支持されている。上中間ロール31は上中間ロールチョック41a、41bにより支持されており、下中間ロール32は下中間ロールチョック42a、42bにより支持されている。上補強ロール3は上補強ロールチョック7a、7bにより支持されており、下補強ロール4は下補強ロールチョック8a、8bにより支持されている。
上作業ロール1、上中間ロール31及び上補強ロール3は上ロールアセンブリを構成し、下作業ロール2、下中間ロール32及び下補強ロール4は下ロールアセンブリを構成する。上作業ロールチョック5a、5b、下作業ロールチョック6a、6b、上中間ロールチョック41a、41b、下中間ロールチョック42a、42b、上補強ロールチョック7a、7b、及び下補強ロールチョック8a、8bは、ハウジング11により保持されている。なお、図1Bでは、ハウジング11は下補強ロール4の下方に位置する部分のみを示している。
圧延機200は、上ロールアセンブリに係る圧下方向荷重を検出する上荷重検出装置9a、9bと、下ロールアセンブリに係る圧下方向荷重を検出する下荷重検出装置10a、10bとを備える。上荷重検出装置9a、9bの上方には、上補強ロールチョック7a、7bに対して鉛直下向きの荷重を加える圧下装置が設けられている。圧下装置は、押圧ブロック12a、12bと、スクリュー13a、13bと、圧下装置駆動機構14を備える。これらは図1Aに示した4段の圧延機100と同様に機能する。
上作業ロール1及び下作業ロール2は、ロール軸方向におけるロール位置を移動させる作業ロールシフト装置15a、15bを備える。また、上中間ロール31及び下中間ロール32は、ロール軸方向におけるロール位置を移動させる中間ロールシフト装置15c、15dを備える。作業ロールシフト装置15a、15b及び中間ロールシフト装置15c、15dは、例えば油圧シリンダにより構成してもよい。
上作業ロール1及び下作業ロール2には、当該ロールにかかるスラスト反力を測定するスラスト反力測定装置16a、16bがそれぞれ設けられている。また、上中間ロール31及び下中間ロール32には、当該ロールにかかるスラスト反力を測定するスラスト反力測定装置16c、16dがそれぞれ設けられている。スラスト反力測定装置16a、16b、16c、16dは、例えばロードセルにより構成してもよい。なお、上下の補強ロール3、4の各圧下支点位置に作用する補強ロール反力は、通常ロードセルによって測定される。しかし、油圧シリンダ等による圧下装置を有する場合には、油圧シリンダ内の圧力の測定値から、補強ロール反力を算出することも可能である。
本実施形態に係る圧延機200は、圧下装置による圧下位置設定及び圧下位置制御を行うための情報処理を行う装置として、演算装置21と、圧下装置駆動機構制御装置23とを備える。演算装置21は、上荷重検出装置9a、9b、下荷重検出装置10a、10b及びスラスト反力測定装置16a、16b、16c、16dの測定結果に基づいて、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定するための演算処理を行う。また、演算装置21は、同定された補強ロールのスラスト反力作用点位置に基づき、圧延機200の圧下位置を設定するための演算を行い、圧延中には圧下位置操作量の演算を行う。圧下装置駆動機構制御装置23は、演算装置21の演算結果に基づいて、圧下装置駆動機構14を駆動するための制御値を演算し、演算した制御値に基づき圧下装置駆動機構14を駆動する。
以上、4段の圧延機100及び6段の圧延機200の概略構成を説明した。なお、図1A及び図1Bに示した圧延機100、200の構成は一例であり、例えば、押圧ブロック12a、12bを押し込むスクリュー13a、13bの代わりに、油圧により押圧ブロック12a、12bを押し込む圧下装置を用いてもよい。
[1-2.同定処理]
(1)概要
本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法では、例えば圧延機のアイドル時間等の作業ロールの組替時以外においても簡便に実施可能な上下の補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することを可能にする。
ロール間微小クロスにより生じるロール間スラスト力は、ロール間の荷重分布を非対称とする要因の1つであり、作業側と駆動側との圧下方向荷重に左右差をもたらす。このようなロール間スラスト力は圧延材の蛇行の要因となる。このため、ロールに作用するロール軸方向の力とモーメントの釣り合いから、スラスト力及びロール間の荷重分布を正しく求め、それに応じたレベリング設定及び制御を行う必要がある。ロールに作用するロール軸方向の力とモーメントの釣り合いからスラスト力及びロール間の荷重分布を算出するにあたっては、上下の補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定が必要となる。
(4段圧延機の場合)
ここで、図2Aに、4段圧延機においてキスロール締め込み状態としたときの、各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図を示す。図2Aに示した力の成分のうち、測定値として取得可能な成分は、以下の4個である。
:上作業ロールチョック5a、5bに作用するスラスト反力
:下作業ロールチョック6a、6bに作用するスラスト反力
df :上補強ロール3の圧下支点位置における補強ロール反力の作業側と駆動側との差
df :下補強ロール4の圧下支点位置における補強ロール反力の作業側と駆動側との差
また、上記スラスト反力及び補強ロール反力を測定することによって、4段圧延機の場合には、各ロールに作用する力及びモーメントの平衡条件に関与する未知数は、以下の10個となる。
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力
WB :上作業ロール1と上補強ロール3との間に作用するスラスト力
WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間に作用するスラスト力
WB :下作業ロール2と下補強ロール4との間に作用するスラスト力
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力
df WB :上作業ロール1と上補強ロール3との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WB :下作業ロール2と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力の作用点位置
ここで、線荷重分布とは、各ロール胴部に作用する締め込み荷重のロール軸方向分布であり、単位胴長あたりの荷重を線荷重と称している。補強ロール3、4のロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力を測定することができれば、より高精度に計算できるため好ましいことは言うまでもないが、補強ロール3、4のロールチョック7a、7b、8a、8bはスラスト反力よりもはるかに大きな補強ロール反力を同時に受けている。このため、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置は、ロール軸心位置と異なるのが一般的である。なお、スラスト反力の測定が容易ではないため、ここでは補強ロール3、4のスラスト反力の測定値は利用できないものとして説明する。仮に、補強ロール3、4のスラスト反力が測定可能な場合は、作用点位置も含め未知数が4個少なくなる。そのため、以下に説明する未知数の数よりも方程式の数の方が多くなり、すべての方程式の最小自乗解として当該未知数を求めることができ、計算精度がより向上することになる。
上記10個の未知数を求めるために適用可能な方程式は、下記式(1-1)~(1-4)に示す各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式(第1の平衡条件式)4個と、下記式(1-5)~(1-8)に示す各ロールのモーメントに関する平衡条件式(第2の平衡条件式)4個の合計8個となる。
Figure 0007001168000001
ここで、D は上補強ロール3の直径、D は上作業ロール1の直径、D は下作業ロール2の直径、D は下補強ロール4の直径である。また、a は上補強ロール3の支点間距離、a は下補強ロール4の支点間距離、lWB は上補強ロール3と上作業ロール1との接触領域長さ、lWWは上作業ロール1と下作業ロール2との接触領域長さ、lWB は下補強ロール4と下作業ロール2の接触領域長さである。なお、ここでは、各ロールの鉛直方向の力の平衡条件式は既に考慮済みと仮定し、未知数からも鉛直方向の力に関する平衡条件式に関与するものを除いている。
上記式(1-1)~(1-8)の8個の方程式に対して未知数が10個であるため、すべての未知数を求めるためには、2個の未知数を測定あるいは同定することが必要となる。ここで、スラスト力及び線荷重分布は、ロール間に作用する力であるため、直接測定することは困難である。したがって、上補強ロールチョック7a、7b及び下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置h 、h を予め同定しておくことが現実的な解法となる。これらのスラスト反力作用点位置h 、h を同定ができた場合、残り8個の未知数に対して、各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式及び各ロールのモーメントに関する平衡条件式を解くことで、すべての未知数を求めることが可能となる。
(6段圧延機の場合)
次に、図2Bに、6段圧延機においてキスロール締め込み状態としたときの、各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図を示す。図2Bに示した力の成分のうち、測定値として取得可能な成分は、以下の6個である。
:上作業ロールチョック5a、5bに作用するスラスト反力
:下作業ロールチョック6a、6bに作用するスラスト反力
:上中間ロールチョック41a、41bに作用するスラスト反力
:下中間ロールチョック42a、42bに作用するスラスト反力
df :上補強ロール3の圧下支点位置における補強ロール反力の作業側と駆動側との差
df :下補強ロール4の圧下支点位置における補強ロール反力の作業側と駆動側との差
また、上記スラスト反力及び補強ロール反力を測定することによって、6段圧延機の場合には、各ロールに作用する力及びモーメントの平衡条件に関与する未知数は、以下の14個となる。
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力
IB :上中間ロール31と上補強ロール3との間に作用するスラスト力
WI :上作業ロール1と上中間ロール31との間に作用するスラスト力
WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間に作用するスラスト力
WI :下作業ロール2と下中間ロール32との間に作用するスラスト力
IB :下中間ロール32と下補強ロール4との間に作用するスラスト力
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力
df IB :上中間ロール31と上補強ロール3との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WI :上作業ロール1と上中間ロール31との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WI :下作業ロール2と下中間ロール32との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df IB :下中間ロール32と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力の作用点位置
この場合にも、補強ロール3、4のスラスト反力が測定可能な場合は、作用点位置も含め未知数が4個少なくなる。そのため、以下に説明する未知数の数よりも方程式の数の方が多くなり、すべての方程式の最小自乗解として当該未知数を求めることができ、計算精度がより向上することになる。
上記14個の未知数を求めるために適用可能な方程式は、下記式(2-1)~(2-6)に示す各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式(第1の平衡条件式)6個と、下記式(2-7)~(2-12)に示す各ロールのモーメントに関する平衡条件式(第2の平衡条件式)6個の合計12個となる。
Figure 0007001168000002
ここで、D は上中間ロール31の直径、D は下中間ロール32の直径である。また、lIB は上補強ロール3と上中間ロール31との接触領域長さ、lWI は上中間ロール31と上作業ロール1との接触領域長さ、lWI は下中間ロール32と下作業ロール2の接触領域長さ、lIB は下補強ロール4と下中間ロール32の接触領域長さである。なお、ここでは、各ロールの鉛直方向の力の平衡条件式は既に考慮済みと仮定し、未知数からも鉛直方向の力に関する平衡条件式に関与するものを除いている。
上記式(2-1)~(2-12)の12個の方程式に対して未知数が14個であるため、すべての未知数を求めるためには、2個の未知数を測定あるいは同定することが必要となる。ここで、スラスト力及び線荷重分布は、ロール間に作用する力であるため、直接測定することは困難である。したがって、上補強ロールチョック7a、7b及び下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置h 、h を予め同定しておくことが現実的な解法となる。これらのスラスト反力作用点位置h 、h を同定ができた場合、残り12個の未知数に対して、各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式及び各ロールのモーメントに関する平衡条件式を解くことで、すべての未知数を求めることが可能となる。
また、6段圧延機においては、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方しかスラスト反力を測定できない場合もある。例えば、作業ロールのスラスト反力T 、T しか測定できない場合、中間ロールのスラスト反力T 、T は未知数となる。この場合、上記式(2-1)~(2-12)の未知数は14個から16個に増加することになる。このような場合には、上述のように上補強ロールチョック7a、7b及び下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置h 、h を予め同定し、例えば中間ロールと補強ロールとの間に作用するスラスト力TIB 、TIB をゼロと仮定することにより、未知数を12個とすることができる。このような条件が成り立たない場合でも、上記の未知数のうち少なくとも2つを既知とすることで、残りの未知数をすべて求めることが可能になる。
従来の上下の補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定に関しては、例えば上記特許文献2に記載の技術では、まず、補強ロール以外のロールを抜き取り、補強ロールの胴部に鉛直方向荷重を加えた状態で、補強ロールに既知のスラスト力を作用させて、圧下方向ロードセル測定荷重の左右差を測定する。そして、測定された圧下方向ロードセル測定荷重の左右差に基づき、力及びモーメントに関する平衡式から、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定している。しかし、スラスト力は、ロールの摩擦係数やクロス角に依存するため、既知のスラスト力を定常的に発生させることは困難である。また、補強ロール以外のロールを抜き取る必要があるため、作業ロールの組替時等でしか実施することができない。
本願発明者は、簡便に実施可能であり、圧延機の圧下方向ロードセル測定荷重の作業側と駆動側との差から、これに外乱として含まれるスラスト力を精度よく分離する手法について検討した。その結果、圧延荷重の大きさの変化によって、補強ロールのスラスト反力作用点位置が変動することを知見した。上記特許文献2に記載の、従来の上下の補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定では、圧延荷重の変化による補強ロールのスラスト反力作用点位置の変動が考慮されていないため、外乱となるスラスト力を十分に分離できず、高精度に上下の補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができなかったと考えられる。
そこで、本実施形態に係るスラスト反力作用点位置の同定方法では、圧延荷重の変化による補強ロールのスラスト反力作用点位置の変動を考慮するため、図3に示す処理を実施する。すなわち、まず、同一の締め込み荷重において、同定時にスラスト反力作用点位置の同定に必要な水準数(必要水準数)のスラスト力をロール間に作用させ、各水準Nにおいて、補強ロール以外のロール対のうち少なくともいずれか1つのロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力と、補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力と、を測定する(S1:第1の工程)。そして、測定されたスラスト反力及び補強ロール反力に基づいて、各ロールに作用する力に関する第1の平衡条件式とモーメントに関する第2の平衡条件式とから、補強ロールに作用するスラスト反力のスラスト反力作用点位置を同定する(S2:第2の工程)。
より詳細に説明すると、ロール間スラスト力Tは、ロール間荷重Pに応じて変化する。ロール間スラスト力Tとロール間荷重Pとの関係は、スラスト係数をμとして、下記式(3)により表すことができる。
Figure 0007001168000003
ここで、スラスト係数μは、上記特許文献3によれば、ロール間クロス角φ、摩擦係数μ、ポアソン比γ、縦弾性係数G、ロール間線荷重p、WR半径R、BUR半径Rを用いて、下記式(4)で表すことができる。
Figure 0007001168000004
ここで、ポアソン比γ、縦弾性係数G、WR半径R及びBUR半径Rが既知であり、ロール間線荷重pが一定であると仮定すると、ロール間スラスト力Tは、結果として、下記式(5)のように、ロール間クロス角φ及び摩擦係数μのみにより変化する関数で表すことができる。
Figure 0007001168000005
したがって、締め込み荷重を同一として、ロール間クロス角またはロール間の摩擦係数のうち少なくともいずれか一方を変更させることによって、異なるスラスト力を発生させることができる。これを利用し、複数水準のスラスト力について、ロール間にスラスト力を作用させた状態で、キスロール締め込み状態による補強ロール反力及び補強ロール以外のすべてのロールに作用する軸方向スラスト反力を測定する。このように複数回の測定を実施することにより、4段圧延機の場合には上記式(1-1)~(1-8)、6段圧延機の場合には上記式(2-1)~(2-12)に示す平衡条件式の数が未知数の数より上回り、すべての未知数を求めることが可能となる。
(2)具体的手法
(a.摩擦係数を変更する場合)
(i.補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な場合)
まず、図4Aに基づいて、ロール間の摩擦係数を変更する場合について説明する。図4Aは、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、ロール間の摩擦係数を変更して実施する場合を示す。図4Aに示す処理は、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な圧延機において実施可能であり、4段以上の圧延機に対して適用可能である。
ロール間の摩擦係数の変更は、ロール潤滑条件を変更することにより実現できる。
(4段圧延機の場合)
例えば4段圧延機の場合において、上作業ロール1と上補強ロール3との間に作用するスラスト力TWB 、上作業ロール1と下作業ロール2との間に作用するスラスト力TWW、下作業ロール2と下補強ロール4との間に作用するスラスト力TWB は、下記式(6-1)~(6-3)により表すことができる。
Figure 0007001168000006
ここで、φWB は上作業ロール1と上補強ロール3とのロール間クロス角、φWWは上作業ロール1と下作業ロール2とのロール間クロス角、φWB は下作業ロール2と下補強ロール4とのロール間クロス角である。また、μWB は上作業ロール1と上補強ロール3との間の摩擦係数、μWWは上作業ロール1と下作業ロール2との間の摩擦係数、μWB は下作業ロール2と下補強ロール4との間の摩擦係数である。
これより、各ロールに作用する力に関する平衡条件式及びモーメントに関する平衡条件式に関与する未知数を分解すると、未知数は以下の13個となる。
φWB :上作業ロール1と上補強ロール3とのロール間クロス角
φWW:上作業ロール1と下作業ロール2とのロール間クロス角
φWB :下作業ロール2と下補強ロール4とのロール間クロス角
μWB :上作業ロール1と上補強ロール3との間の摩擦係数
μWW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の摩擦係数
μWB :下作業ロール2と下補強ロール4との間の摩擦係数
:上作業ロールチョック5a、5bに作用するスラスト反力
:下作業ロールチョック6a、6bに作用するスラスト反力
df WB :上作業ロール1と上補強ロール3との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WB :下作業ロール2と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力の作用点位置
これらの未知数を求めるために適用可能な方程式は、上記式(1-1)~(1-4)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式4個と、上記式(1-5)~(1-8)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式4個と、各ロール間の摩擦係数を同一とする仮定式2個(すなわち、μ=μWB =μWW=μWB )の、合計10個である。
このように、未知数の数が方程式の数を3個上回り、一度の測定ではすべての未知数を求めることはできない。そこで、摩擦係数の水準を変更し、複数回の測定を実施する。摩擦係数の水準を1つ増やすことにより、方程式の数は10個増える。一方、未知数に関しては、ロール間クロス角は一定とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、摩擦係数を変えることで変化する未知数は、μWB 、μWW、μWB 、T 、T 、pdf WB 、pdf WB 、pdf WWの8個である。
つまり、締め込み荷重を同一として、合計3水準の摩擦係数条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計29個、方程式の数が合計30個となり、方程式の数が未知数の数を上回り、すべての未知数を求めることが可能となる。
(6段圧延機の場合)
6段圧延機の場合には、上中間ロール31と上補強ロール3との間に作用するスラスト力TIB 、上作業ロール1と上中間ロール31との間に作用するスラスト力TWI 、上作業ロール1と下作業ロール2との間に作用するスラスト力TWW、下作業ロール2と下中間ロール32との間に作用するスラスト力TWI 、下中間ロール32と下補強ロール4との間に作用するスラスト力TIB は、下記式(7-1)~(7-5)により表すことができる。
Figure 0007001168000007
ここで、φIB は上中間ロール31と上補強ロール3とのロール間クロス角、φWI は上作業ロール1と上中間ロール31とのロール間クロス角、φWWは上作業ロール1と下作業ロール2とのロール間クロス角、φWI は下作業ロール2と下中間ロール32とのロール間クロス角、φIB は下作業ロール2と下中間ロール32とのロール間クロス角である。また、μIB は上中間ロール31と上補強ロール3との間の摩擦係数、μWI は上作業ロール1と上中間ロール31との間の摩擦係数、μWWは上作業ロール1と下作業ロール2との間の摩擦係数、μWI は下作業ロール2と下中間ロール32との間の摩擦係数、μIB は下中間ロール32と下補強ロール4との間の摩擦係数である。
これより、各ロールに作用する力に関する平衡条件式及びモーメントに関する平衡条件式に関与する未知数を分解すると、未知数は以下の19個となる。
φIB :上中間ロール31と上補強ロール3とのロール間クロス角
φWI :上作業ロール1と上中間ロール31とのロール間クロス角
φWW:上作業ロール1と下作業ロール2とのロール間クロス角
φWI :下作業ロール2と下中間ロール32とのロール間クロス角
φIB :下中間ロール32と下補強ロール4とのロール間クロス角
μIB :上中間ロール31と上補強ロール3との間の摩擦係数
μWI :上作業ロール1と上中間ロール31との間の摩擦係数
μWW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の摩擦係数
μWI :下作業ロール2と下中間ロール32との間の摩擦係数
μIB :下中間ロール32と下補強ロール4との間の摩擦係数
:上作業ロールチョック5a、5bに作用するスラスト反力
:下作業ロールチョック6a、6bに作用するスラスト反力
df IB :上中間ロール31と上補強ロール3との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WI :上作業ロール1と上中間ロール31との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WW:上作業ロール1と下作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df WI :下作業ロール2と下中間ロール32との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
df IB :下中間ロール32と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側の差
:上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置
:下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力の作用点位置
これらの未知数を求めるために適用可能な方程式は、上記式(2-1)~(2-6)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式6個と、各ロール間の摩擦係数を同一とする仮定式4個(すなわち、μ=μIB =μWI =μWW=μWI =μIB )の、合計16個である。
このように、未知数の数が方程式の数を3個上回り、一度の測定ではすべての未知数を求めることはできない。そこで、摩擦係数の水準を変更し、複数回の測定を実施する。摩擦係数の水準を1つ増やすことにより、方程式の数は16個増える。一方、未知数に関しては、ロール間クロス角は一定とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、摩擦係数を変えることで変化する未知数は、μIB 、μWI 、μWW、μWI 、μIB 、T 、T 、pdf IB 、pdf WI 、pdf WW、pdf WI 、pdf IB の12個である。
つまり、締め込み荷重を同一として、合計2水準の摩擦係数条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計31個、方程式の数が合計32個となり、方程式の数が未知数の数を上回り、すべての未知数を求めることが可能となる。
これらの摩擦係数の各水準は、例えば無潤滑、水潤滑、油潤滑等を設定することで容易に実現できる。また、さらに多くの摩擦係数の水準で測定を実施することにより、方程式の最小自乗解を用いることが可能となり、計算精度をより向上させることができる。
ロール間の摩擦係数を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法は、具体的には以下のように行うことができる。かかる同定方法は、例えば、図1Aに示した演算装置21により実施される。
図4Aに示すように、まず、摩擦係数の水準数をNとして、水準数Nを1に設定する(S100a)。次いで、水準Nの摩擦係数を設定した後(S110a)、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とする(S120a)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。
そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力が測定される(S130a)。また、補強ロール3、4以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S140a)。例えば、4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2のスラスト反力が測定される。6段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2と、上中間ロール31及び下中間ロール32とのスラスト反力が測定される。
1つの水準における補強ロール反力及びスラスト反力が測定されると、水準数Nを1増やし(S150a)、水準数Nが、平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mを超えたか否かが判定される(S160a)。平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mは予め求められている。例えば、4段圧延機の場合には3水準(m=3)となり、6段圧延機の場合には2水準(m=2)となる。ステップS160aにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数m以下である場合には、ステップS110a~S150aの処理を繰り返し実施する。
一方、ステップS160aにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mを超えた場合には、各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式と、各ロールのモーメントの平衡条件式とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる(S170a)。例えば、4段圧延機の場合には、作業ロール1、2及び補強ロール3、4についての、上記式(1-1)~(1-4)に示したロール軸方向の力に関する平衡条件式4個と、上記式(1-5)~(1-8)に示したモーメントの平衡条件式4個とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる。また、6段圧延機の場合には、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4についての、上記式(2-1)~(2-6)に示したロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示したモーメントの平衡条件式6個とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる。
このように、ロール間クロス角を一定に保ち、複数のロール潤滑状態を設定して、各ロール潤滑状態におけるキスロール締め込み状態での圧下荷重を測定することにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
(ii.6段圧延機において作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない場合)
次に、図4Bに基づいて、ロール間の摩擦係数を変更する場合の他の例について説明する。図4Bは、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、ロール間の摩擦係数を変更して実施する場合の他の例を示す。図4Bに示す処理は、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機での処理である。
6段圧延機において、例えば、作業ロールのスラスト反力T 、T しか測定できない場合は中間ロールのスラスト反力T 、T は未知数となり、中間ロールのスラスト反力T 、T しか測定できない場合は作業ロールのスラスト反力T 、T は未知数となる。したがって、未知数は、作業ロール及び中間ロールのスラスト反力を測定可能な6段圧延機の場合と比べて2個増加し、21個となる。一方、これらの未知数を求めるために適用可能な方程式は、上述したように、上記式(2-1)~(2-6)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式6個と、各ロール間の摩擦係数を同一とする仮定式4個の、合計16個である。
このように、未知数の数が方程式の数を5個上回り、一度の測定ではすべての未知数を求めることはできない。そこで、摩擦係数の水準を変更し、複数回の測定を実施する。摩擦係数の水準を1つ増やすことにより、方程式の数は16個増える。一方、未知数に関しては、ロール間クロス角は一定とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、摩擦係数を変えることで変化する未知数は、μIB 、μWI 、μWW、μWI 、μIB 、T 、T 、T 、T 、pdf IB 、pdf WI 、pdf WW、pdf WI 、pdf IB の14個である。
つまり、締め込み荷重を同一として、合計4水準の摩擦係数条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計63個、方程式の数が合計64個となり、方程式の数が未知数の数を上回り、すべての未知数を求めることが可能となる。摩擦係数の4つの水準は、上述したように、例えば無潤滑、水潤滑、油潤滑等の設定や、複数の潤滑材の利用等により実現できる。また、さらに多くの摩擦係数の水準で測定を実施することにより、方程式の最小自乗解を用いることが可能となり、計算精度をより向上させることができる。
ロール間の摩擦係数を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法は、具体的には以下のように行うことができる。かかる同定方法は、例えば、図1Bに示した演算装置21により実施される。
図4Bに示すように、まず、摩擦係数の水準数をNとして、水準数Nを1に設定する(S100b)。次いで、水準Nの摩擦係数を設定した後(S110b)、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とする(S120b)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する(S130b)。また、上作業ロール1及び下作業ロール2、あるいは、上中間ロール31及び下中間ロール32に作用するロール軸方向のスラスト反力を測定する(S140b)。
1つの水準における補強ロール反力及びスラスト反力が測定されると、水準数Nを1増やし(S150b)、水準数Nが、平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えたか否かが判定される(S160b)。平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数は予め求められており、本例では4水準となる。ステップS160bにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数以下である場合には、ステップS110b~S150bの処理を繰り返し実施する。また、ステップS160bにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えた場合には、上記式(2-1)~(2-6)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式6個とを解いて、補強ロールのスラスト反力作用点位置を求める(S170b)。
このように、ロール間クロス角を一定に保ち、複数のロール潤滑状態を設定して、各ロール潤滑状態におけるキスロール締め込み状態での圧下荷重を測定することにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
なお、かかる手法では、潤滑剤を特定のロール間のみに塗布することが容易ではないため、各ロール間の摩擦係数を全て同一とする仮定を与えている。しかし、例えばロール表面粗さ等が支配的な場合は、潤滑剤が同一であっても各ロール間の摩擦係数が異なり、計算精度が悪化する場合がある。このような場合は、後述するように、ロール間クロス角を変更して複数水準での測定を行う手法の適用が望ましい。
(b.ロール間クロス角を変更する場合)
次に、図5~図6Bに基づいて、ロール間クロス角を変更する場合について説明する。ロール間クロス角を変更する場合には、通常の圧延機と、ペアクロス圧延機等の上下のロールアセンブリをそれぞれ水平方向にクロスさせることの可能な圧延機とで分けて考える必要がある。
図5は、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、ペアクロス圧延機を用いてロール間クロス角を変更して実施する場合を示す。図6A及び図6Bは、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の一例を示すフローチャートであって、通常の圧延機を用いてロール間クロス角を変更して実施する場合を示す。図6Aに示す処理は、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な圧延機において実行可能であり、4段以上の圧延機に対して適用可能である。図6Bに示す処理は、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機に対して適用可能である。
(b-1.ペアクロス圧延機を使用した場合)
まず、図5に基づいて、ペアクロス圧延機等の上下のロールアセンブリをそれぞれ水平方向にクロスさせることが可能な圧延機を用いる場合の補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する方法について説明する。すなわち、当該圧延機は、少なくとも上作業ロール1及び上補強ロール3を含む上ロールアセンブリのロール軸方向と、少なくとも下作業ロール2及び下補強ロール4を含む下ロールアセンブリのロール軸方向とを、クロスさせることが可能な圧延機である。かかる圧延機により、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWを変更させ、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する。
この場合、上述したロール間の摩擦係数を変更する場合と同様に、力及びモーメントに関する平衡条件に関与する未知数の数は13個であり、方程式の数は10個となる。未知数の数が方程式の数を3個上回り、一度の測定ですべての未知数を求めることはできない。そこで、締め込み荷重を同一として、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWの水準を変更し、複数回の測定を実施する。ロール間クロス角φWWの水準を1つ増やすことにより、方程式の数は8個増える。一方、未知数に関しては、摩擦係数は一定とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、ロール間クロス角φWWを変えることで変化する未知数は、φWW、T 、T 、pdf WB 、pdf WB 、pdf WWの6個である。
つまり、合計3水準の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計25個、方程式の数が合計26個となり、方程式の数が未知数の数を上回るため、全ての未知数を求めることが可能となる。上下の作業ロール1、2のロール間クロス角の変更は、ペアクロス圧延機の場合、形状制御に用いるアクチュエータをそのまま利用することができるため、容易に実現できる。また、さらに多くの上下の作業ロール1、2のロール間クロス角の水準で測定を実施することにより、方程式の最小自乗解を用いることが可能となり、計算精度をより向上させることができる。
また、本同定方法では、摩擦係数を変更する場合と同様に、各ロール間の摩擦係数をすべて同一とする仮定を与えている。しかし、例えばロール表面粗さ等が支配的な場合は、各ロール間の摩擦係数が異なり、計算精度が悪化する場合がある。この仮定を除いた場合、方程式の数は8個となるが、合計4水準の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計31個、方程式の数が合計32個となる。このように方程式の数が未知数の数を上回ることができるため、すべての未知数を求めることが可能となる。
上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法は、具体的には以下のように行うことができる。かかる同定方法は、例えば、図1Aに示した演算装置21により実施される。
図5に示すように、まず、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWの水準数をNとして、水準数Nを1に設定する(S200)。次いで、水準Nのロール間クロス角φWWを設定した後(S210)、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とする(S220)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する(S230)。また、補強ロール3、4以外のロール、4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2に作用するロール軸方向のスラスト反力を測定する(S240)。
1つの水準における補強ロール反力及びスラスト反力が測定されると、水準数Nを1増やし(S250)、水準数Nが、平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えたか否かが判定される(S260)。平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数は予め求められており、本例では3水準となる。ステップS260にて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数以下である場合には、ステップS210~S250の処理を繰り返し実施する。また、ステップS260にて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えた場合には、上記式(1-1)~(1-4)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式4個と、上記式(1-5)~(1-8)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式4個とを解いて、補強ロールのスラスト反力作用点位置を求める(S270)。
このように、ペアクロス圧延機において、複数の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWを設定して、各ロール間クロス角φWWにおけるキスロール締め込み状態での圧下荷重を測定することにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
(b-2.通常の圧延機を使用した場合)
次に、図6A及び図6Bに基づいて、ペアクロス圧延機以外の、通常の圧延機を用いる場合の補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する方法について説明する。このとき、当該圧延機は、少なくともいずれか1つのロールに対して作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与える外力付与装置を備えている。外力付与装置は、例えば油圧シリンダである。外力付与装置により、これを備えるロールの作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与え、当該ロールの全ロール系に対するロール間クロス角を変更させることが可能となる。そして、複数水準のロール間クロス角において補強ロール反力及びスラスト反力の測定を実施し、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する。
(i.補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な場合)
(4段圧延機の場合)
4段圧延機の場合、ペアクロス圧延機を用いる場合と同様に、力及びモーメントに関する平衡条件に関与する未知数の数は13個であり、方程式の数は10個となる。未知数の数が方程式の数を3個上回り、一度の測定ですべての未知数を求めることはできない。そこで、例えば、少なくとも1つのロールについて、締め込み荷重を同一として、全ロール系に対する相対的なクロス角(以下、「相対クロス角」ともいう。)を変更し、複数回の測定を実施する。以下では、下作業ロール2の全ロール系に対するロール間クロス角を変更して補強ロール反力及びスラスト反力の測定を実施し、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する場合を考える。
このとき、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWと下作業ロール2と下補強ロール4とのロール間クロス角φWB が変化する。しかし、上作業ロール1と下補強ロール4との相対角度は変化しない。そこで、定数Cを用いることにより、これらのロール間クロス角の間には下記式(8)が成り立つ。式(8)も考慮すると、未知数の数はCも含めて14個となり、方程式の数は式(8)も含め11個となる。
Figure 0007001168000008
水準を1つ増やすことにより、上記式(8)も含め方程式の数が9個増える。一方、未知数に関しては、摩擦係数は一定とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、下作業ロールの相対クロス角を変えることで変化する未知数は、φWW、φWB 、T 、T 、pdf WB 、pdf WB 、pdf WWの7個である。
つまり、合計3水準の下作業ロールの相対クロス角条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計28個、方程式の数が合計29個となり、方程式の数が未知数の数を上回るため、全ての未知数を求めることが可能となる。
(6段圧延機の場合)
6段圧延機の場合には、力及びモーメントに関する平衡条件に関与する未知数の数は19個であり、方程式の数は16個となる。未知数の数が方程式の数を3個上回り、一度の測定ですべての未知数を求めることはできない。そこで、例えば、少なくとも1つのロールについて、締め込み荷重を同一として相対クロス角を変更し、複数回の測定を実施する。以下では、下作業ロール2の全ロール系に対するロール間クロス角を変更して補強ロール反力及びスラスト反力の測定を実施し、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定する場合を考える。
このとき、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角φWWと下作業ロール2と下中間ロール32のロール間クロス角φWI が変化する。しかし、上作業ロール1と下中間ロール32との相対角度は変化しない。そこで、定数C’を用いることにより、これらのロール間クロス角の間には下記式(9)が成り立つ。式(9)も考慮すると、未知数の数はC’も含めて20個となり、方程式の数は式(9)も含め17個となる。
Figure 0007001168000009
水準を1つ増やすことにより、上記式(9)も含め方程式の数が13個増える。一方、未知数に関しては、摩擦係数は一定(すなわち、μ=μIB =μWI =μWW=μWI =μIB )とし、かつ、キスロール締め込み荷重を同一とする場合、上下の補強ロールチョック7a、7b、8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置は変動しない。このため、下作業ロールの相対クロス角を変えることで変化する未知数は、φWW、φWI 、T 、T 、pdf IB 、pdf WI 、pdf WW、pdf WI 、pdf IB の9個である。
つまり、合計2水準の下作業ロールの相対クロス角条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計29個、方程式の数が合計30個となり、方程式の数が未知数の数を上回るため、全ての未知数を求めることが可能となる。
下作業ロールの相対クロス角の変更は、例えばロールチョックとハウジングとの間隙に油圧シリンダを搭載している圧延機では、圧延方向荷重の作業側と駆動側との差を変更することにより容易に実現できる。また、さらに多くの下作業ロールの相対クロス角の水準で測定を実施することにより、方程式の最小自乗解を用いることが可能となり、計算精度をより向上させることができる。
また、本同定方法では、上下の作業ロール1、2のロール間クロス角を変更する場合と同様に、各ロール間の摩擦係数をすべて同一とする仮定を与えている。しかし、例えばロール表面粗さ等が支配的な場合は、各ロール間の摩擦係数が異なり、計算精度が悪化する場合がある。この仮定を除いた場合、4段圧延機の場合には、方程式の数は9個となる。しかし、合計4水準の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件で測定を実施すれば、未知数の数を合計35個、方程式の数を合計36個とすることができる。また、6段圧延機の場合、摩擦係数に関する仮定を除いた場合には、方程式の数は13個となる。しかし、合計3水準の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件で測定を実施すれば、未知数の数を合計38個、方程式の数を合計39個とすることができる。このように方程式の数が未知数の数を上回ることができるため、すべての未知数を求めることが可能となる。
下作業ロールの相対クロス角条件を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法は、具体的には以下のように行うことができる。かかる同定方法は、例えば、図1Aに示した演算装置21により実施される。
図6Aに示すように、まず、あるロールの相対クロス角の水準数をNとして、水準数Nを1に設定する(S300a)。次いで、水準Nの少なくとも1つのロールの相対クロス角を設定した後(S310a)、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とする(S320a)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。
そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する(S330a)。また、補強ロール3、4以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S340a)。例えば、4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2のスラスト反力が測定される。6段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2と、上中間ロール31及び下中間ロール32とのスラスト反力が測定される。
1つの水準における補強ロール反力及びスラスト反力が測定されると、水準数Nを1増やし(S350a)、水準数Nが、平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mを超えたか否かが判定される(S360a)。平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mは予め求められている。例えば、4段圧延機の場合には3水準(m=3)となり、6段圧延機の場合には2水準(m=2)となる。ステップS360aにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数m以下である場合には、ステップS310a~S350aの処理を繰り返し実施する。
一方、ステップS360aにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数mを超えた場合には、各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式と、各ロールのモーメントの平衡条件式とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる(S370a)。例えば、4段圧延機の場合には、作業ロール1、2及び補強ロール3、4についての、上記式(1-1)~(1-4)に示したロール軸方向の力に関する平衡条件式4個と、上記式(1-5)~(1-8)に示したモーメントの平衡条件式4個とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる。また、6段圧延機の場合には、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4についての、上記式(2-1)~(2-6)に示したロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示したモーメントの平衡条件式6個とを解くことにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置が求まる。
このように、ペアクロス圧延機ではない圧延機においても、少なくとも1つのロールについて、全ロール系に対する相対クロス角を設定して、複数の相対クロス角におけるキスロール締め込み状態での圧下荷重を測定することにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
(ii.6段圧延機において作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない場合)
次に、図6Bに基づいて、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機における、下作業ロールの相対クロス角条件を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法を説明する。
6段圧延機において、例えば、作業ロールのスラスト反力T 、T しか測定できない場合は中間ロールのスラスト反力T 、T は未知数となり、中間ロールのスラスト反力T 、T しか測定できない場合は作業ロールのスラスト反力T 、T は未知数となる。したがって、未知数は、作業ロール及び中間ロールのスラスト反力を測定可能な6段圧延機の場合と比べて2個増加し、22個となる。一方、これらの未知数を求めるために適用可能な方程式は、上述したように、上記式(2-1)~(2-6)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式6個と、各ロール間の摩擦係数を同一とする仮定式4個と、ロール間クロス角に関する上記式(9)の、合計17個である。
水準を1つ増やすことにより、方程式の数は13個増え、未知数は11個増える。したがって、合計4水準の下作業ロールの相対クロス角条件で測定を実施することにより、未知数の数が合計55個、方程式の数が合計56個となり、方程式の数が未知数の数を上回るため、全ての未知数を求めることが可能となる。
また、各ロール間の摩擦係数をすべて同一とする仮定を除いた場合、方程式の数は13個となる。この場合、合計6水準の上下の作業ロール1、2のロール間クロス角条件で測定を実施すれば、未知数の数を合計77個、方程式の数を合計78個とすることができる。このように方程式の数が未知数の数を上回ることができるため、すべての未知数を求めることが可能となる。
作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機における、下作業ロールの相対クロス角条件を変更して行われる補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法は、具体的には以下のように行うことができる。かかる同定方法は、例えば、図1Bに示した演算装置21により実施される。
図6Bに示すように、まず、あるロールの相対クロス角の水準数をNとして、水準数Nを1に設定する(S300b)。次いで、水準Nの少なくとも1つのロールの相対クロス角を設定した後(S310b)、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とする(S320b)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力が測定される(S330b)。また、上作業ロール1及び下作業ロール2、あるいは、上中間ロール31及び下中間ロール32に作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S340b)。
1つの水準における補強ロール反力及びスラスト反力が測定されると、水準数Nを1増やし(S350b)、水準数Nが、平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えたか否かが判定される(S360b)。平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数は予め求められており、本例では4水準となる。ステップS360bにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数以下である場合には、ステップS310b~S350bの処理を繰り返し実施する。一方、ステップS360bにて、Nが平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を超えた場合には、上記式(2-1)~(2-6)に示した各ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式6個と、上記式(2-7)~(2-12)に示した各ロールのモーメントの平衡条件式6個とを解いて、補強ロールのスラスト反力作用点位置を求める(S370b)。
このように、ペアクロス圧延機ではない圧延機においても、少なくとも1つのロールについて、全ロール系に対する相対クロス角を設定して、複数の相対クロス角におけるキスロール締め込み状態での圧下荷重を測定することにより、補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定することができる。
以上、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法の具体例について説明した。なお、上記具体例では、ロール間クロス角またはロール間の摩擦係数のいずれか一方を変更させることによって、異なるスラスト力を発生させる場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ロール間クロス角の変更により水準数を増加させるのみでは平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を設定できない場合には、摩擦係数を変更させることで、水準数を増加させてもよい。逆に、摩擦係数の変更により水準数を増加させるのみでは平衡方程式の数が未知数の数を上回ることのできる最小水準数を設定できない場合には、ロール間クロス角を変更させることで、水準数を増加させてもよい。いずれの場合にも、複数回の測定を実施することにより、平衡条件式の数が未知数の数より上回り、すべての未知数を求めることが可能となる。
(3)キスロール締め込み荷重と作用点位置との関係
上述した補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法により、キスロール締め込み荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置とについて、図7に示すような関係が取得される。図7に示すように、スラスト反力作用点位置は、上補強ロール3及び下補強ロール4ともに、キスロール締め込み荷重が0からあるキスロール締め込み荷重になるまでは、あまり変化はしないが、そのキスロール締め込み荷重を超えると、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置は小さくなり、ロール軸心に近づく。特に上補強ロール3では、あるキスロール締め込み荷重を超えると、スラスト反力作用点位置は急激に小さくなる。このように、キスロール締め込み荷重に応じて、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置は変化する。
このような圧延荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置との関係を取得することで、圧延時の圧延荷重の設定値または実績値のうち少なくともいずれか一方に応じて、適用する補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を決定することが可能となる。圧延荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置との関係は、例えば、圧延荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置との対応関係を表すモデルあるいはテーブルにより、システムに導入することが可能である。
補強ロールチョック7a、7b、8a、8bは、スラスト反力よりもはるかに大きな補強ロール反力を同時に受けるため、補強ロール反力の大きさに応じてスラスト反力作用点位置が変動するのが一般的である。圧延中の補強ロール反力とは、すなわち圧延反力であるが、圧延反力は圧延材の材質あるいは圧下率といった操業条件に応じて変化する。このため、補強ロール反力の大きさも変化し、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置が変化する。そこで、圧延荷重とスラスト反力作用点位置との関係を予めモデル化あるいはテーブル化することで、圧延時の圧延荷重に応じた補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を適切に設定することが可能となる。その結果、最適なレベリング操作量の演算をより正確に行うことが可能となる。
[2.圧延材の圧延方法]
次に、上述の補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法により同定された補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を用いて、圧延材を圧延するときの圧下位置設定及び圧下位置制御について説明する。
[2-1.零点調整による圧下位置設定]
まず、図8A及び図8Bに基づいて、圧延機100の圧下位置設定として、圧下装置による零点調整による圧下位置設定について説明する。図8A及び図8Bは、圧下装置による零点調整による圧下位置設定の処理を示すフローチャートである。なお、図8Aに示す処理は、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な圧延機において実行可能であり、4段以上の圧延機に対して適用可能である。図8Bに示す処理は、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機に対して適用可能である。
圧下装置の零点は、圧延機100の各ロール間に作用する線荷重分布の作業側と駆動側との差によって生じているロール偏平の作業側と駆動側との差分だけ、ロール間スラスト力が発生しない場合の真の作業側と駆動側とで均等に圧下した圧下位置からずれている。このため、この誤差量を圧下位置設定時に常に補正するか、あるいは、より実用的には、当該誤差量を考慮して零点そのものを補正する必要がある。いずれにしても、補強ロール3、4の各圧下支点位置の補強ロール反力と補強ロール3、4以外のロールに作用するスラスト反力とを測定して、各ロール間の線荷重分布の作業側と駆動側との差を推定することが必要である。いずれの測定値が欠けても、例えば4段圧延機の場合には未知数は8個以上となり、ロール間の線荷重分布の作業側と駆動側との差を推定することはできなくなる。
ところで、圧延機100が4段圧延機ではなく、さらに中間ロールが増えた6段圧延機の場合には、中間ロールが一本増える毎に、ロール間接触領域が一箇所増える。この場合も、当該中間ロールのスラスト反力を測定すれば、増える未知数は、追加されたロール間接触領域に作用するスラスト力、及び、線荷重分布の作業側と駆動側との差の2個である。一方、利用可能な方程式も、当該中間ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式とモーメントに関する平衡条件式との2個が増えることになり、他のロールに関する方程式と連立することにより、すべての解を求めることが可能となる。
このようにして、4段以上の圧延機の場合でも、少なくとも補強ロール以外のすべてのロールに作用するスラスト反力を測定することで、キスロール状態におけるすべてのロール間に作用する線荷重分布の作業側と駆動側との差を正確に求めることが可能となる。これにより、圧下装置の零点調整を、特に作業側と駆動側とでの非対称性を含めて正確に実施することが可能となる。
(i.補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な場合)
まず、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な4段以上の圧延機での処理を説明する。図8Aに示すように、まず、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置が同定される(S10a)。ステップS10aの同定処理は、例えば上述の図4A、図5または図6Aに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて行えばよい。
次いで、圧下装置により所定の圧下零調荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とし(S11a)、圧下位置がリセットされる(S12a)。圧下零調荷重は、例えば、熱間圧延機の場合には1000tonf程度に設定される。ステップS12aでは、例えば圧下位置をゼロにリセットすればよい。そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力が測定される(S13a)。また、補強ロール3、4以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S14a)。4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2のスラスト反力が測定され、6段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2と、上中間ロール31及び下中間ロール32とのスラスト反力が測定される。
その後、ステップS10aにて予め同定された補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置に基づき、補強ロール3、4のスラスト反力と、すべてのロールの各ロール間に作用するスラスト力及び線荷重分布の左右差とが演算される(S15a)。スラスト力及び線荷重分布の左右差は、4段圧延機の場合には作業ロール1、2及び補強ロール3、4の各ロール間について取得され、6段圧延機の場合には作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4の各ロール間について取得される。
補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置には、圧下零調荷重に対応するスラスト反力作用点位置が設定される。スラスト反力、スラスト力及び線荷重分布の左右差は、上述のロール軸方向の力に関する平衡条件式とモーメントの平衡条件式とを演算することにより求めることができる。具体的には、4段圧延機の場合には、式(1-1)~(1-4)に示した作業ロール1、2及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(1-5)~(1-8)に示した作業ロール1、2及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。6段圧延機の場合には、式(2-1)~(2-6)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(2-7)~(2-12)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。
そして、ステップS15aの演算結果に基づいて、圧下零調状態におけるロール変形量の左右差の合計が計算され、当該ロール変形量の左右差が圧下支点位置に換算される(S16a)。これにより、圧下零点位置の補正量が算出される。
次いで、ロール変形量の左右差が存在しない場合の圧下位置が、圧下零点位置に設定される(S17a)。すなわち、ステップS16aにて算出された補正量だけ、圧下零点位置が補正される。そして、補正後の圧下零点位置に基づいて、圧下位置が設定される(S18a)。
(ii.6段圧延機において作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない場合)
次に、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機での処理を説明する。図8Bに示すように、まず、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置が同定される(S10b)。ステップS10bの同定処理は、例えば上述の図4B、図5または図6Bに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて行えばよい。
次いで、圧下装置により所定の圧下零調荷重に到達するまで圧下荷重を加え、キスロール締め込み状態とし(S11b)、圧下位置がリセットされる(S12b)。圧下零調荷重は、例えば、熱間圧延機の場合には1000tonf程度に設定される。ステップS12bでは、例えば圧下位置をゼロにリセットすればよい。そして、キスロール締め込み状態において、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力が測定される(S13b)。また、作業ロール1、2または中間ロール31、32に作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S14b)。
その後、ステップS10bにて予め同定された補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置に基づき、補強ロール3、4のスラスト反力、作業ロール1、2または中間ロール31、32のうち測定されていない方のスラスト反力、及び、すべてのロール(すなわち、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4)の各ロール間に作用するスラスト力及び線荷重分布の左右差が演算される(S15b)。
補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置には、圧下零調荷重に対応するスラスト反力作用点位置が設定される。スラスト反力、スラスト力及び線荷重分布の左右差は、上記式(2-1)~(2-6)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(2-7)~(2-12)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。
そして、ステップS15bの演算結果に基づいて、圧下零調状態におけるロール変形量の左右差の合計が計算され、当該ロール変形量の左右差が圧下支点位置に換算される(S16b)。これにより、圧下零点位置の補正量が算出される。
次いで、ロール変形量の左右差が存在しない場合の圧下位置が、圧下零点位置に設定される(S17b)。すなわち、ステップS16bにて算出された補正量だけ、圧下零点位置が補正される。そして、補正後の圧下零点位置に基づいて、圧下位置が設定される(S18b)。
以上、圧下装置による零点調整の処理について説明した。圧下装置による零点調整の処理では、上述の補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法を用いて、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定することで、より高精度に零点調整を行うことが可能となる。その結果、圧延機の圧下位置を精度よく調整することが可能となる。
なお、圧下零調荷重を複数とする場合には、圧下零調荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関して複数水準の測定を行ってもよいし、圧延荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置との対応関係を表すモデルあるいはテーブルを用いてもよい。
[2-2.ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定]
次に、図9A及び図9Bに基づいて、圧延機100の圧下位置設定として、ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定について説明する。図9A及び図9Bは、ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定の処理を示すフローチャートである。ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定は、上述の零点調整による圧下位置設定と並行して実施可能である。なお、図9Aに示す処理は、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な圧延機において実行可能であり、4段以上の圧延機に対して適用可能である。図9Bに示す処理は、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機に対して適用可能である。
(i.補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な場合)
まず、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な4段以上の圧延機での処理を説明する。図9Aに示すように、まず、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置が同定される(S20a)。ステップS20aの同定処理は、例えば上述の図4A、図5または図6Aに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて行えばよい。図9Aに示す処理が図8Aの零点調整による圧下位置設定と並行して実行される場合には、ステップS20aと図8AのステップS10aとは、いずれか一方を実行すればよい。
次いで、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重についての各圧下位置条件に対し、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定するとともに、補強ロール3、4以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S21a)。スラスト反力は、4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2について測定され、6段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2と、上中間ロール31及び下中間ロール32とについて測定される。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。
その後、ステップS20aにて予め同定された補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置に基づき、補強ロール3、4のスラスト反力と、すべてのロールの各ロール間に作用するスラスト力及び線荷重分布の左右差とが演算される(S22a)。スラスト力及び線荷重分布の左右差は、4段圧延機の場合には作業ロール1、2及び補強ロール3、4の各ロール間について取得され、6段圧延機の場合には作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4の各ロール間について取得される。
補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置には、各キスロール締め込み荷重に対応するスラスト反力作用点位置が設定される。スラスト反力、スラスト力及び線荷重分布の左右差は、上述のロール軸方向の力に関する平衡条件式とモーメントの平衡条件式とを演算することにより求めることができる。具体的には、4段圧延機の場合には、式(1-1)~(1-4)に示した作業ロール1、2及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(1-5)~(1-8)に示した作業ロール1、2及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。6段圧延機の場合には、式(2-1)~(2-6)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(2-7)~(2-12)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。
そして、ステップS22aの演算結果に基づいて、各圧下位置条件におけるすべてのロールの変形量が左右差含めて算出され、算出された変形量により補強ロール3、4の圧下支点位置に生じる変位が演算される(S23a)。ロールの変形量は、例えばロール撓み、ロール偏平等である。ロールの変形量は、4段圧延機の場合には作業ロール1、2及び補強ロール3、4について算出され、6段圧延機の場合には作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4について算出される。ステップS23aでは、各圧下位置条件に対するロール系の変形量が演算される。
その後、圧下位置の変化により評価される圧下支点位置における圧延機全体の変形量から、ステップS23aにて算出されたロール系の変形量を差し引き、当該圧延機のハウジング‐圧下系の変形特性が算出される(S24a)。ハウジング‐圧下系の変形特性は、作業側と駆動側とで、左右独立して演算される。そして、ステップS24aにて算出されたハウジング‐圧下系の変形特性に基づいて、圧下位置が設定される(S25a)。
(ii.6段圧延機において作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない場合)
次に、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機での処理を説明する。まず、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置が同定される(S20b)。ステップS20bの同定処理は、例えば上述の図4Bまたは図6Bに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて行えばよい。図9Bに示す処理が図8Bの零点調整による圧下位置設定と並行して実行される場合には、ステップS20bと図8BのステップS10bとは、いずれか一方を実行すればよい。
次いで、圧下装置により所定のキスロール締め込み荷重についての各圧下位置条件に対し、圧下支点位置で補強ロール3、4に対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定するとともに、作業ロール1、2または中間ロール31、32に作用するロール軸方向のスラスト反力が測定される(S21b)。ここで、所定のキスロール締め込み荷重は、当該圧延機において負荷することの可能な最大荷重以下の任意の値に設定すればよい。例えば、熱間圧延機の場合には、1000tonf程度に設定すればよい。
その後、ステップS20bにて予め同定された補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置に基づき、補強ロール3、4のスラスト反力、作業ロール1、2または中間ロール31、32のうち測定されていない方のスラスト反力、及び、すべてのロール(すなわち、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4)に作用するスラスト力及び線荷重分布の左右差が演算される(S22b)。
補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置には、各キスロール締め込み荷重に対応するスラスト反力作用点位置が設定される。スラスト反力、スラスト力及び線荷重分布の左右差は、上述のロール軸方向の力に関する平衡条件式とモーメントの平衡条件式とを演算することにより求めることができる。すなわち、式(2-1)~(2-6)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のロール軸方向の力に関する平衡条件式と、上記式(2-7)~(2-12)に示した作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4のモーメントの平衡条件式に基づき求めることができる。
そして、ステップS22bの演算結果に基づいて、各圧下位置条件におけるすべてのロールの変形量が左右差含めて算出され、算出された変形量により補強ロール3、4の圧下支点位置に生じる変位が演算される(S23b)。ロールの変形量は、例えばロール撓み、ロール偏平等であり、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4について算出される。ステップS23bでは、各圧下位置条件に対するロール系の変形量が演算される。
その後、圧下位置の変化により評価される圧下支点位置における圧延機全体の変形量から、ステップS23bにて算出されたロール系の変形量を差し引き、当該圧延機のハウジング‐圧下系の変形特性が算出される(S24b)。ハウジング‐圧下系の変形特性は、作業側と駆動側とで、左右独立して演算される。そして、ステップS24bにて算出されたハウジング‐圧下系の変形特性に基づいて、圧下位置が設定される(S25b)。
以上、ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定処理について説明した。ハウジング‐圧下系の変形特性による圧下位置設定処理では、上述の補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法を用いて、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定することで、より高精度にハウジング‐圧下系の変形特性を求めることが可能となる。その結果、圧延機の圧下位置を精度よく調整することが可能となる。
なお、圧下零調荷重を複数とする場合には、圧下零調荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関して複数水準の測定を行ってもよいし、圧延荷重と補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置との対応関係を表すモデルあるいはテーブルを用いてもよい。
[2-3.圧延中における圧下位置制御]
(1)線荷重の非対称性のみを線荷重分布の非対称性として考慮した場合
次に、図10A~図11Bに基づいて、圧延中における圧下位置制御について説明する。図10Aは、圧延中の4段の圧延機100の各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。図10Bは、圧延中の6段の圧延機200の各ロールに作用するロール軸方向のスラスト力と、鉛直方向の作業側と駆動側との間の非対称成分とを示す模式図である。図11A及び図11Bは、圧延中における圧下位置制御を示すフローチャートである。なお、図11Aに示す処理は、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な圧延機において実行可能であり、4段以上の圧延機に対して適用可能である。図11Bに示す処理は、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機に対して適用可能である。
(4段圧延機の場合)
図10Aに示す通常の4段圧延機においては、上下の作業ロール1、2に作用するロール軸方向におけるスラスト反力と、上補強ロール3の各圧下支点位置において圧下方向に作用する補強ロール反力とが測定される。このとき、上作業ロール1および上補強ロール3に作用するロール軸方向の力及びモーメントに関する平衡条件式に関与する力のうち、未知数は、T 、TWB 、pdf WB 、pdf、h の5個となる。
上記の未知数には、圧延材Sと作業ロール1、2との間に作用するスラスト力TMWが含まれていないが、これは次の理由による。ロール間のスラスト力は、弾性体同士の接触によるものである。接触面におけるロール周速の大きさがほぼ同一であるため、微小なロール間クロス角の発生によって互いに接触するロールの周速ベクトルのロール軸方向成分に不一致が生じたとき、摩擦力ベクトルはロール軸方向に沿った方向となる。例えば、0.2°程度の微小なロール間クロス角が発生した場合、ロール軸方向のスラスト力と圧延荷重との比は、ほぼ摩擦係数に等しい30%前後となる。
これに対して、圧延材Sと作業ロール1、2との間に作用するスラスト力の場合、ロールバイト内の中立点以外の場所では圧延材Sの速度と作業ロール1、2の周速とは大きさ自体が一致していない。このため、ロールクロスミルのように1°前後のロール間クロス角を与えた場合でも、摩擦力ベクトルの方向はロール軸方向とは一致しない。このため、ロールバイト内の摩擦力ベクトルのロール軸方向成分を積分して得られるスラスト力は摩擦係数よりも大幅に小さく5%前後となる。したがって、作業ロール1、2を積極的にクロスさせない通常の圧延機の場合、ロールチョックとハウジングとの間の間隙によって生じ得るロール間クロス角は通常は0.1°以下となる。このため、圧延材Sと作業ロール間1、2との間に作用するスラスト力TMWは無視することができる。
上記5個の未知数を求めるために利用できる方程式は、上作業ロール1及び上補強ロール3のロール軸方向の力に関する平衡条件式2個と、上作業ロール1及び上補強ロール3に関するモーメントの平衡条件式2個の合計4個である。これらの4個の方程式に対し未知数が5個となるため、すべての未知数を求めるためには、1個の未知数を測定あるいは同定することが必要となる。この場合にも、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定処理と同様に、上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置を予め同定しておくことが現実的な解法となる。この場合、残り4個の未知数に対して、各ロールの力及びモーメントに関する平衡条件式を連立して解くことにより、すべての未知数を求めることが可能である。以上の未知数が求められれば、上ロールアセンブリの変形について、作業側と駆動側とでの非対称変形を含め正確に計算することが可能となる。
下ロールアセンブリについては、既に圧延材Sと作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側との差が求められている。これは圧延材Sに作用する力の平衡条件より上下等しい。したがって、下作業ロール2と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側とでの非対称変形を含めて計算することが可能となる。この問題を解く際に適用可能な方程式としては、下作業ロール2及び下補強ロール4のロール軸方向の力及びモーメントに関する平衡条件式2個の合計4個である。例えば、下ロールアセンブリのスラスト反力も補強ロール反力も測定できない場合の上記方程式に関係する未知数は、T 、TWB 、T 、pdf WB 、Pdf 、h の6個となる。
このうち、下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置を予め同定可能な場合には、未知数は5個となる。さらに、十分に管理された圧延機では、下作業ロール2と下補強ロール4との間に作用するスラスト力TWB は無視できるほど小さい場合がある。この場合には、スラスト力TWB をゼロとすることで、残りの未知数をすべて求めることが可能となる。このような条件が成立しない場合でも、上記の未知数のうち少なくとも一つを既知とするか、あるいは、実測することで、残りの未知数をすべて求めることが可能となる。さらに好ましくは、下ロールアセンブリについても作業ロール2のスラスト反力と補強ロール反力の作業側と駆動側との差が測定できれば、未知数の数が方程式の数を下回る。この場合、最小自乗解を求めることにより、より精度の高い計算が可能となる。
(6段圧延機の場合)
図10Bに示す6段圧延機においては、上下の作業ロール1、2及び中間ロール31、32に作用するロール軸方向におけるスラスト反力と、上補強ロール3の各圧下支点位置において圧下方向に作用する補強ロール反力とが測定される。このとき、上作業ロール1、上中間ロール31及び上補強ロール3に作用するロール軸方向の力及びモーメントに関する平衡条件式に関与する力のうち、未知数は、T 、TIB 、TWI 、pdf IB 、pdf WI 、pdf、h の7個となる。これらの未知数には、上述の4段圧延機の場合に説明したように、圧延材Sと作業ロール1、2との間に作用するスラスト力TMWは、無視することができる程度の大きさのため、含まれていない。
上記7個の未知数を求めるために利用できる方程式は、上作業ロール1、上中間ロール31及び上補強ロール3のロール軸方向の力に関する平衡条件式3個と、上作業ロール1、上中間ロール31及び上補強ロール3に関するモーメントの平衡条件式3個の合計6個である。これらの6個の方程式に対し未知数が7個となるため、すべての未知数を求めるためには、1個の未知数を測定あるいは同定することが必要となる。この場合にも、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定処理と同様に、上補強ロールチョック7a、7bに作用するスラスト反力の作用点位置を予め同定しておくことが現実的な解法となる。この場合、残り6個の未知数に対して、各ロールの力及びモーメントに関する平衡条件式を連立して解くことにより、すべての未知数を求めることが可能である。以上の未知数が求められれば、上ロールアセンブリの変形について、作業側と駆動側とでの非対称変形を含め正確に計算することが可能となる。
下ロールアセンブリについては、既に圧延材Sと作業ロール2との間の線荷重分布の作業側と駆動側との差が求められている。これは圧延材Sに作用する力の平衡条件より上下等しい。したがって、下作業ロール2と下中間ロール32、及び、下中間ロール32と下補強ロール4との間の線荷重分布の作業側と駆動側とでの非対称変形を含めて計算することが可能となる。この問題を解く際に適用可能な方程式としては、下作業ロール2、下中間ロール32及び下補強ロール4のロール軸方向の力及びモーメントに関する平衡条件式2個の合計6個である。例えば、下ロールアセンブリのスラスト反力も補強ロール反力も測定できない場合の上記方程式に関係する未知数は、T 、T 、T 、TWI 、TIB 、pdf WI 、pdf IB 、Pdf 、h の9個となる。
このうち、下補強ロールチョック8a、8bに作用するスラスト反力作用点位置を予め同定可能な場合には、未知数は8個となる。さらに、十分に管理された圧延機では、下作業ロール2と下中間ロール32、及び、下中間ロール32と下補強ロール4との間に作用するスラスト力TWI 、TIB は無視できるほど小さい場合がある。この場合には、スラスト力TWI 、TIB をゼロとすることで、残りの未知数をすべて求めることが可能となる。このような条件が成立しない場合でも、上記の未知数のうち少なくとも2つを既知とするか、あるいは、実測することで、残りの未知数をすべて求めることが可能となる。さらに好ましくは、下ロールアセンブリについても作業ロール2及び中間ロール32のスラスト反力と補強ロール反力の作業側と駆動側との差が測定できれば、未知数の数が方程式の数を下回る。この場合、最小自乗解を求めることにより、より精度の高い計算が可能となる。
以上の未知数が求められれば、下ロールアセンブリの変形についても作業側と駆動側とでの非対称変形を含め正確に計算することが可能となる。その結果、上下のロールアセンブリのロール変形を合計し、これに補強ロール反力の関数として計算されるハウジング‐圧下系の変形特性を重畳し、現時点での圧下位置を考慮することにより、上下の作業ロール1、2のギャップについて、作業側と駆動側とでの非対称性を正確に計算することが可能となる。これにより、圧延機変形の結果として生じる板厚ウェッジを計算することができる。
以上の準備を行った上で、蛇行制御あるいはキャンバー制御の観点から要求される板厚ウェッジの目標値を達成するための圧下位置操作量、特にレベリング操作量の目標値を演算することができる。この目標値に基づき圧下位置制御を実施することにより、蛇行あるいはキャンバーの発生をより高精度に抑制することが可能となる。なお、上述の説明において上下のロールアセンブリを入れ換えた場合にも、全く同様に実施することができる。
具体的には、圧延中の圧下位置制御は以下のように行うことができる。かかる処理は例えば、図1Aまたは図1Bに示した演算装置21により実施される。
(i.補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な場合)
まず、補強ロール以外のすべてのロールのスラスト反力を測定可能な4段以上の圧延機での処理を説明する。図11Aに示すように、まず、圧延中の上下の補強ロール3、4の圧下支点位置に作用する補強ロール反力と、上下の補強ロール3、4以外のすべてのロールに作用するスラスト反力とが測定される(S31a)。スラスト反力は、4段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2について測定され、6段圧延機の場合には上作業ロール1及び下作業ロール2と、上中間ロール31及び下中間ロール32とについて測定される。
次いで、すべてのロールに作用するロール軸方向の力に関する平衡条件式及びモーメントに関する平衡条件式に基づいて、補強ロール3、4のスラスト反力、すべてのロール間に作用するスラスト反力と線荷重分布の左右差、及び、作業ロール1、2と圧延材Sとの間に作用するスラスト力と線荷重分布の左右差が算出される(S32a)。ここで、すべてのロール間とは、4段圧延機の場合には作業ロールと補強ロールとの間であり、6段圧延機の場合には作業ロールと中間ロールとの間、及び、中間ロールと補強ロールとの間をいう。このとき、図4A、図5または図6Aに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて得られた圧延荷重とスラスト反力作用点位置との対応関係を表すモデルあるいはテーブルから、圧延荷重に応じたスラスト反力作用点位置を特定し、当該スラスト反力作用点位置に基づき上記値が演算される。これにより、精度よくこれらの値を求めることができる。
なお、モデルあるいはテーブルが得られていない場合には、予め、圧延中に想定される圧延荷重において、図4A、図5または図6Aに示した方法で同定したスラスト反力作用点位置を用いればよい。想定される圧延荷重は、例えば、設定計算で求めた圧延荷重を用いてもよいし、鋼種及び板寸法に対応した実績値から想定される圧延荷重を用いてもよい。
さらに、ステップS32aの演算結果に基づき、すべてのロールの変形量が左右差含めて算出され、さらに補強ロール反力の関数として圧延機100のハウジング‐圧下系の変形特性が算出される。そして、現時点における圧延材Sの板厚分布を演算する(S33a)。ロールの変形量は、例えばロール撓み、ロール偏平等であり、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4について算出される。ステップS33aでは、現時点における圧延材Sの板厚分布の実績値が推定される。
その後、当該圧延機において目標とする板厚分布と、ステップS33aにて推定された現時点での板厚分布の実績値とに基づき、圧下位置操作量の目標値が演算される(S34a)。そして、ステップS34aにて算出された圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下位置が制御される(S35a)。
(ii.6段圧延機において作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない場合)
次に、作業ロールまたは中間ロールのいずれか一方のスラスト反力しか測定できない6段圧延機での処理を説明する。図11Bに示すように、まず、圧延中の上下の補強ロール3、4の圧下支点位置に作用する補強ロール反力と、上下の作業ロール1、2または上下の中間ロール31、32に作用するスラスト反力とが測定される(S31b)。
次いで、すべてのロールに作用するロール軸方向の力に関する平衡条件式及びモーメントに関する平衡条件式に基づいて、補強ロール3、4のスラスト反力、作業ロール1、2または中間ロール31、32のうち測定されていない方のスラスト反力、及び、すべてのロール(すなわち、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4)に作用するスラスト力及び線荷重分布の左右差が演算される(S32b)。このとき、図4Bまたは図6Bに示した補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法のうちいずれかを用いて得られた圧延荷重とスラスト反力作用点位置との対応関係を表すモデルあるいはテーブルから、圧延荷重に応じたスラスト反力作用点位置を特定し、当該スラスト反力作用点位置に基づき上記値が演算される。これにより、精度よくこれらの値を求めることができる。
なお、モデルあるいはテーブルが得られていない場合には、予め、圧延中に想定される圧延荷重において、図4Bまたは図6Bに示した方法で同定したスラスト反力作用点位置を用いればよい。想定される圧延荷重は、例えば、設定計算で求めた圧延荷重を用いてもよいし、鋼種及び板寸法に対応した実績値から想定される圧延荷重を用いてもよい。
さらに、ステップS32bの演算結果に基づき、すべてのロールの変形量が左右差含めて算出され、さらに補強ロール反力の関数として圧延機200のハウジング‐圧下系の変形特性が算出される。そして、現時点における圧延材Sの板厚分布が演算される(S33b)。ロールの変形量は、例えばロール撓み、ロール偏平等であり、作業ロール1、2、中間ロール31、32及び補強ロール3、4について算出される。ステップS33bでは、現時点における圧延材Sの板厚分布の実績値が推定される。
その後、当該圧延機において目標とする板厚分布と、ステップS33bにて推定された現時点での板厚分布の実績値とに基づき、圧下位置操作量の目標値が演算される(S34b)。そして、ステップS34bにて算出された圧下位置操作量の目標値に基づいて、圧下位置が制御される(S35b)。
以上、圧延中の圧下位置制御について説明した。圧延中の圧下位置制御では、上述の補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置の同定方法を用いて、補強ロール3、4のスラスト反力作用点位置を同定することで、より高精度に圧下位置操作量の目標値を求めることが可能となる。その結果、圧延機の圧下位置を精度よく制御することが可能となる。
(2)線荷重の非対称性及びオフセンタ量を線荷重分布の非対称性として考慮した場合
ところで、上記説明においては、圧延材Sと作業ロール1、2との間の線荷重分布の非対称性としては、線荷重の作業側と駆動側との差のみを考慮した。しかし、線荷重のロール軸方向分布の非対称性としては、上記線荷重の非対称性だけでなく、圧延材Sの中心がミルセンターとは異なる位置で通板される場合も考えられる。
圧延材Sの中心とミルセンターとの距離を、以下ではオフセンタ量を称する。オフセンタ量は、基本的には、圧延機100の入側に設けられるサイドガイドにより、所定の許容量内に抑えられる。それでも発生し得るオフセンタ量を無視できない場合は、例えば、圧延機100の入側または出側に設けられた蛇行センサによる測定値から推定することが好ましい。さらに、蛇行センサが設置できず、しかも無視できないオフセンタ量が発生し得る場合には、例えば、次のような方法を採用することにより、オフセンタ量を求めることができる。
作業ロール1、2のモーメントに関する平衡条件式から、オフセンタ量と、上記圧延材Sと作業ロール1、2との間の線荷重分布の作業側と駆動側との差との2つの未知数を分離抽出することは不可能である。そこで、上述したオフセンタ量をゼロとして線荷重の作業側と駆動側との差のみを未知数とする場合と、線荷重の作業側と駆動側との差はゼロとしてオフセンタ量を未知数とする場合との2つについて、圧下位置操作量の目標値を算出する。例えば、両者の演算結果の重み平均より、実際の圧下位置操作量の目標値を決定する。この重みの付け方については、圧延状況を観察しながら適宜調整することになる。一般論としては、圧下位置操作量の小さい側に大きな重みを付けて制御出力としたり、操作量の小さい方の値を採用し、当該操作量に対してチューニングファクター(通常1.0以下)を乗じて制御出力としたりする方法が現実的である。
また、圧延機100が4段圧延機でなく、さらに中間ロールが増えた6段圧延機の場合には、中間ロールが一本増える毎に、ロール間接触領域が一箇所増える。この場合も、当該中間ロールのスラスト反力を測定すれば、増える未知数は、追加されたロール間接触領域に作用するスラスト力、及び、線荷重分布の作業側と駆動側との差の2個である。一方、利用可能な方程式も、当該中間ロールのロール軸方向の力に関する平衡条件式とモーメントに関する平衡条件式との2個が増えることになり、他のロールに関する方程式と連立することにより、すべての解を求めることが可能となる。
このようにして、4段以上の圧延機の場合でも、少なくとも補強ロール以外のすべてのロールに作用するスラスト反力を測定することで、圧延中のロール間に作用する線荷重分布の作業側と駆動側との差も含めてすべての未知数を求めることが可能となる。その結果、4段圧延機の場合と同様に最適な圧下位置操作量を演算することが可能となる。
[3.まとめ]
以上、本実施形態に係る補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定方法と、これにより同定された圧延荷重とスラスト反力作用点位置との関係に基づき実施される圧下位置設定及び圧下位置制御とについて説明した。本実施形態によれば、複数水準において、圧下装置によりロールを締め込み接触させたキスロール状態において、補強ロール以外のロール対のうち、少なくともいずれか1つのロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において、各補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する第1の工程と、測定された各ロールに作用するスラスト反力に基づいて、各ロールに作用する力に関する第1の平衡条件式と、各ロールに発生するモーメントに関する第2の平衡条件式とを用いて、補強ロールに作用するスラスト反力のスラスト反力作用点位置を同定する第2の工程とを実施する。これにより、例えば圧延機のアイドル時間等の作業ロールの組替時以外においても簡便に、補強ロールのスラスト反力作用点位置の同定を実施することができる。
また、上記同定方法により、キスロール状態での締め込み荷重とスラスト反力作用点位置との関係を取得することで、圧下位置設定及び圧下位置制御において、圧延荷重に応じて変化するスラスト反力作用点位置を精度よく設定することができる。その結果、高精度に圧下位置の設定及び制御を行うことが可能となる。
図1A及び図1Bに示す構成の熱間仕上圧延機のスタンドに対し、ロール間クロス角の変更を行い、スラスト反力作用点位置の同定を行った。それぞれ、比較例では、特許文献2に示された方法を用いた。すなわち、補強ロール以外のロールをスタンドから抜き取った後に、スラスト反力作用点位置を同定し、その後、ロールをスタンドに組み込んだ。一方、実施例では、ロールを抜き取とらずに、スラスト反力作用点位置の同定を行った。
表1に図1Aに示した4段圧延機で行った比較例及び実施例の結果を示し、表2に図1Bに示した6段圧延機で行った比較例及び実施例の結果を示す。測定時間は、4段圧延機及び6段圧延機のいずれの場合においても、比較例と実施例とで同一であった。一方、ロール組替時間は、比較例では70~80分であったが、実施例ではロールを抜き取る必要がなかったので0分となった。したがって、実施例では、ロール組替時間と測定時間との合計時間を大幅に短縮でき、生産性の低下を最小限に留めることができた。
Figure 0007001168000010
Figure 0007001168000011
また、比較例では、スラスト反力作用点位置を同定するには補強ロール以外のロールをスタンドから抜き取る必要がある。このため、比較例では、ロール組替えまでに生じた、圧延機の各種摺動部の摩耗等による経時的変化が考慮されず、同定の精度が低下する。これに対して、実施例ではロールの抜き取りが不要であるため、圧延機の各種摺動部の摩耗等による経時的変化も考慮して、スラスト反力作用点位置を同定することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 上作業ロール
2 下作業ロール
3 上補強ロール
4 下補強ロール
5a 上作業ロールチョック(作業側)
5b 上作業ロールチョック(駆動側)
6a 下作業ロールチョック(作業側)
6b 下作業ロールチョック(駆動側)
7a 上補強ロールチョック(作業側)
7b 上補強ロールチョック(駆動側)
8a 下補強ロールチョック(作業側)
8b 下補強ロールチョック(駆動側)
9a 上荷重検出装置(作業側)
9b 上荷重検出装置(駆動側)
10a 下荷重検出装置(作業側)
10b 下荷重検出装置(駆動側)
11 ハウジング
12a 押圧ブロック(作業側)
12b 押圧ブロック(駆動側)
13a スクリュー(作業側)
13b スクリュー(駆動側)
14 圧下装置駆動機構
15a 作業ロールシフト装置(上作業ロール)
15b 作業ロールシフト装置(下作業ロール)
15c 中間ロールシフト装置(上中間ロール)
15d 中間ロールシフト装置(下中間ロール)
16a スラスト反力測定装置(上作業ロール)
16b スラスト反力測定装置(下作業ロール)
16c スラスト反力測定装置(上中間ロール)
16d スラスト反力測定装置(下中間ロール)
21 演算装置
23 圧下装置駆動機構制御装置
31 上中間ロール
32 下中間ロール
41a 上中間ロールチョック(作業側)
41b 上中間ロールチョック(駆動側)
42a 下中間ロールチョック(作業側)
42b 下中間ロールチョック(駆動側)
100、200 圧延機

Claims (14)

  1. 圧延機におけるスラスト反力作用点位置の同定方法であって、
    前記圧延機は、少なくとも一対の作業ロールと前記作業ロールを支持する一対の補強ロールとを含む複数のロール対を備えた、複数のロールを有する4段以上の圧延機であり、
    同一の締め込み荷重において、前記ロール間の摩擦係数またはロール間クロス角のうち少なくとも一方を変更することにより、複数水準のスラスト力を前記ロール間に作用させ、
    スラスト力に関する前記複数水準それぞれにおいて、
    圧下装置により前記ロールを締め込み接触させたキスロール状態において、前記補強ロール以外のロール対のうち、少なくともいずれか1つのロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、
    圧下支点位置において、各前記補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する第1の工程と、
    測定された前記各ロールに作用するスラスト反力及び補強ロール反力に基づいて、前記各ロールに作用する力に関する第1の平衡条件式と、前記各ロールに発生するモーメントに関する第2の平衡条件式とを用いて、前記補強ロールに作用するスラスト反力のスラスト反力作用点位置を同定する第2の工程と、
    を含む、スラスト反力作用点位置の同定方法。
  2. 前記第1の工程では、前記補強ロール以外のすべてのロール対について、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、
    圧下支点位置において、各前記補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する、請求項1に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  3. 前記圧延機は、少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリのロール軸方向と、少なくとも下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのロール軸方向とを、クロスさせることが可能な4段の圧延機であり、
    前記第1の工程では、前記上作業ロールと前記下作業ロールとのロール間クロス角を変更することにより、前記複数水準のスラスト力を前記ロール間に作用させる、請求項2に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  4. 前記圧延機は、少なくともいずれか1つの前記ロールに対して作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与える外力付与装置を備えており、
    前記第1の工程では、前記外力付与装置を備える前記ロールの作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与えることにより、当該ロールの全ロール系に対するロール間クロス角を変更させ、前記複数水準のスラスト力を前記ロール間に作用させる、請求項2に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  5. 前記第2の工程において、さらに、締め込み荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関する前記複数水準における前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置を同定した結果に基づいて、前記各キスロール状態での締め込み荷重と前記スラスト反力作用点位置との関係を取得する、請求項1~4のいずれか1項に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  6. 請求項2~5のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    前記圧下装置により前記ロールを締め込み接触させたキスロール状態において、前記補強ロール以外のすべてのロール対について、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において各前記補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、前記圧下装置の零点位置または前記圧延機の変形特性のうち少なくともいずれか一方を演算する工程と、
    演算結果に基づいて、圧延実行時における前記圧下装置による圧下位置を設定する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
  7. 請求項2~5のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    圧延材の圧延中において、
    少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、前記補強ロール以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくとも前記スラスト反力を測定するロールアセンブリの前記補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、
    前記圧下位置操作量の目標値に基づいて、前記圧下装置により圧下位置を制御する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
  8. 請求項2~5のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    圧延材の圧延中において、
    少なくとも上作業ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、前記補強ロール以外のロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくとも前記スラスト反力を測定するロールアセンブリの前記補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、少なくとも前記補強ロールと当該補強ロールに接するロールとの間に作用するスラスト力を考慮して、前記圧延材と前記作業ロールとの間に作用する圧延荷重のロール軸方向分布の非対称性を演算し、
    演算結果に基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、
    前記圧下位置操作量の目標値に基づいて、前記圧下装置により圧下位置を制御する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
  9. 前記圧延機は、一対の作業ロール、前記作業ロールを支持する一対の中間ロール及び一対の補強ロールの、3つのロール対を備えた6段の圧延機であり、
    前記第1の工程では、前記中間ロールのロール対または前記作業ロールのロール対のいずれかについて、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、
    圧下支点位置において、各前記補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する、請求項1に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  10. 前記圧延機は、少なくともいずれか1つの前記ロールに対して作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与える外力付与装置を備えており、
    前記第1の工程では、前記外力付与装置を備える前記ロールの作業側ロールチョックと駆動側ロールチョックとに異なる圧延方向外力を与えることにより、当該ロールの全ロール系に対するロール間クロス角を変更させ、前記複数水準のスラスト力を前記ロール間に作用させる、請求項9に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  11. 前記第2の工程において、さらに、締め込み荷重の複数水準のそれぞれにおいて、スラスト力に関する前記複数水準における前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置を同定した結果に基づいて、前記各キスロール状態での締め込み荷重と前記スラスト反力作用点位置との関係を取得する、請求項9または10に記載のスラスト反力作用点位置の同定方法。
  12. 請求項9~11のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    前記圧下装置により前記ロールを締め込み接触させたキスロール状態において、前記中間ロールのロール対または前記作業ロールのロール対のいずれかについて、当該ロール対を構成する各ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、圧下支点位置において各前記補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、前記圧下装置の零点位置または前記圧延機の変形特性のうち少なくともいずれか一方を演算する工程と、
    演算結果に基づいて、圧延実行時における前記圧下装置による圧下位置を設定する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
  13. 請求項9~11のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    圧延材の圧延中において、
    上作業ロール、上中間ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール、下中間ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、前記中間ロールまたは前記作業ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくとも前記スラスト反力を測定するロールアセンブリの前記補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、
    前記圧下位置操作量の目標値に基づいて、前記圧下装置により圧下位置を制御する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
  14. 請求項9~11のいずれか1項のスラスト反力作用点位置の同定方法により、予め前記補強ロールのスラスト反力作用点位置を同定する工程と、
    圧延材の圧延中において、
    上作業ロール、上中間ロール及び上補強ロールを含む上ロールアセンブリまたは下作業ロール、下中間ロール及び下補強ロールを含む下ロールアセンブリのうちいずれか一方における、前記中間ロールまたは前記作業ロールに作用するロール軸方向のスラスト反力を測定するとともに、少なくとも前記スラスト反力を測定するロールアセンブリの前記補強ロールについて、圧下支点位置において当該補強ロールに対して圧下方向に作用する補強ロール反力を測定する工程と、
    前記スラスト反力の測定値と、前記補強ロール反力の測定値と、同定された前記補強ロールの前記スラスト反力作用点位置とに基づいて、少なくとも前記補強ロールと当該補強ロールに接するロールとの間に作用するスラスト力を考慮して、前記圧延材と前記作業ロールとの間に作用する圧延荷重のロール軸方向分布の非対称性を演算し、
    演算結果に基づいて、圧延荷重に対応する圧下位置操作量の目標値を演算する工程と、
    前記圧下位置操作量の目標値に基づいて、前記圧下装置により圧下位置を制御する工程と、
    を含む、圧延材の圧延方法。
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