JP6998549B2 - 軟磁性粉末とその製造方法、および、それを用いた圧粉磁心 - Google Patents

軟磁性粉末とその製造方法、および、それを用いた圧粉磁心 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性粉末とその製造方法、および、それを用いた圧粉磁心に関する。特に、チョークコイル、リアクトル、トランス等のインダクタに用いられる軟磁性粉末とその製造方法、および軟磁性粉末を用いた圧粉磁心に関する。
近年、ハイブリッド自動車(HEV)やプラグインハイブリッド自動(PHEV)、電気自動車(EV)など、車両の電動化が急速に進んでおり、更なる燃費向上のためシステムの小型・軽量化が求められている。その電動化市場に牽引されて、様々な電子部品に対して小型化および軽量化が求められる中、チョークコイル、リアクトル、トランスなどで使用される軟磁性粉末およびそれを用いた圧粉磁心に対してますます高い性能が要求されている。
この軟磁性粉末およびそれを用いた圧粉磁心においては、小型化・軽量化のために、材質としては、飽和磁束密度が高いことが優れ、コアロスが小さくことが要求され、さらに直流重畳特性に優れることが要求されている。
例えば、特許文献1には、Fe系アモルファス合金の特長である、低いコアロス、優れた直流重畳特性を、粉砕粉において実現させる方法が記載されている。
特許第4944971号公報
図1(a)と図1(b)に、特許文献1に記載されたFe系アモルファス合金薄帯の粉砕粉を示す。
図1(a)は、粒径50μm以上の粉砕粉を示す。粒径50μm以上の粉砕粉は、粉砕前のアモルファス薄帯の主面501と粉砕時の粉砕面502により構成されている。主面501は、加工の痕跡がない。粉砕面502は、エッジが明瞭に観察されている。
図1(b)は、粒径50μm以下の粉砕粉を示す。粒径50μm以下の粉砕粉の主面503は、加工により削りとられた痕跡が観察される。粉砕面504では、エッジは明瞭でない。
粉砕時および加熱時に、主面501、主面503、粉砕面502、粉砕面504が酸化し、粉砕粉内部に酸素が侵入する。これによって、Fe系アモルファス合金薄帯を構成する元素と酸素が結合する。結果、保磁力増加の要因となり、それを用いた圧粉磁心の損失が増加する。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、保磁力の増加をおさえ、高飽和磁束密度かつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末とそれを用いた圧粉磁心を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、軟磁性材料の軟磁性粉末層と、前記軟磁性粉末層の外周に位置する鉄またはホウ素の酸化物の第2酸化層と、前記第2酸化層の外周に位置する酸化鉄の第1酸化層と、を含む軟磁性粉末であり、前記第1酸化層と前記第2酸化層は、前記軟磁性粉末の表面から20nm以上520nm以下の領域に位置し、前記表面から520nmより深く1600nm以下の領域に存在しない軟磁性粉末を用いる。
また、酸化していない軟磁性材料の軟磁性粉末層と、前記軟磁性粉末層の外周に位置する酸化鉄の酸化層と、前記酸化層の表層を切れ目なく覆うSi濃化層と、を含み、前記軟磁性粉末層の中心部から表層に向かって連続的にSi濃度が高くなる軟磁性粉末であり、前記酸化層は、表層側に位置する第1酸化層と、前記軟磁性粉末層側に位置する鉄またはホウ素との第2酸化層とによって構成され、前記酸化層は、20nm~500nmの膜厚を有する軟磁性粉末を用いる。
また、軟磁性組成物を粉末にする粉砕工程と、前記粉末を前記粉末の表面から20nm以上520nm以下の領域に酸化層を有し、前記表面から520nmより深く1600nm以下の領域に酸化層を有しない粉末にする熱処理工程と、を含む軟磁性粉末の製造方法であり、前記熱処理工程では、前記粉末のみをホットプレスで上下から挟み込んで熱処理をする軟磁性粉末の製造方法を用いる。
また、軟磁性組成物を粉末にする粉砕工程と、前記粉末の表層20nm~500nmの領域に酸化層を形成する熱処理工程と、前記酸化層の表層にSi濃化層を形成するSi濃化工程と、を含む軟磁性粉末の製造方法であり、前記熱処理工程では、前記粉末のみをホットプレスで上下から挟み込んで熱処理をする軟磁性粉末の製造方法を用いる。



以上のように、実施の形態で開示する手段によれば、軟磁性粉末の保磁力を低減でき、高飽和磁束密度かつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末とそれを用いた圧粉磁心を提供することができる。
(a)特許文献1に記載された粒径50μm以上の軟磁性粉末を示す図、(b)特許文献1に記載された粒径50μm以下の軟磁性粉末を示す図 (a)本発明の実施の形態における軟磁性粉末の断面を示すSEM画像の図、(b)図2(a)のA領域の拡大画像の図 (a)実施の形態の比較例における軟磁性粉末の断面を示すSEM画像の図、(b)図3(a)のB領域の拡大画像の図 実施の形態の軟磁性粉末の断面を示す模式図 (a)~(b)軟磁性粉末の製造工程を示す図 本発明の実施の形態2における軟磁性粉末の断面を示す模式図 (a)~(b)軟磁性粉末の製造工程を示す図 (a)~(c)本発明の実施の形態2のおける軟磁性粉末のSi濃度の分布を示す図 本発明の実施の形態3における軟磁性粉末の断面を示す模式図
(実施の形態1)
<軟磁性粉末の製造>
まず、実施の形態の軟磁性粉末の製造方法について説明する。
(1)合金組成物を、高周波加熱などによって融解し、液体急冷法でアモルファス層の薄帯または薄片を作製する。アモルファス層の薄帯を作製する液体急冷法としては、Fe基アモルファス薄帯の製造などに使用される単ロール式のアモルファス製造装置や、双ロール式のアモルファス製造装置を使用することができる。
(2)次に、薄帯または薄片を粉砕して粉末化する。薄帯または薄片の粉砕は、一般的な粉砕装置を使用できる。例えば、ボールミル、スタンプミル、遊星ミル、サイクロンミル、ジェットミル、回転ミルなどが使用できる。また、粉砕して得られた粉末を、ふるいを用いて分級することにより、所望の粒度分布を有する軟磁性粉末が得られる。
(3)次に、薄帯または薄片の粉砕粉を熱処理して、粉砕による内部ひずみを取り除いたり、αFe結晶層を析出させたりする。熱処理装置は、例えば、ホットプレスを用いて、加圧下で短時間の加熱をすることにより、粉砕粉の内部に酸素が侵入するのを防止し、粉砕粉の保磁力を低減できる。その結果、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末が得られる。
<圧粉磁心の作製>
(1)実施の形態における圧粉磁心の作製は、上記の軟磁性粉末と、フェノール樹脂やシリコーン樹脂などの絶縁性が良好で耐熱性が高いバインダーとを混合して造粒粉を作製する。
(2)次に造粒粉を所望の形状を有する耐熱性が高い金型に充填し、加圧成形して圧粉体を得る。
(3)その後、バインダーが硬化する温度で加熱することで、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性が得られる圧粉磁心が得られる。
<全体酸素量>
軟磁性粉末における全体酸素量は、以下のように測定する。まず、不活性ガス雰囲気(ヘリウムなど)で黒鉛ルツボのみを加熱し、軟磁性粉末が溶融する温度まで加熱する。次に、軟磁性粉末中の酸素は黒鉛と反応して一酸化炭素になる。その一酸化炭素は赤外線吸収が活性であるため、赤外線吸収法で検出できる。
<表面酸素量>
軟磁性粉末における表面酸素量は、以下のように測定する。エネルギー分散型X線分析装置(EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy))を用いる。電子照射により発生する特性X線をエネルギーで分光することによって、元素分析および組成分析が行える。
(実施例1、比較例)
急冷単ロール法により作製したFe73.5-Cu1-Nb3-Si13.5-B9(原子%)のFe系アモルファス合金薄帯を、回転ミルを用いて粉砕し、アモルファス層の軟磁性合金粉末を得た。粉砕は、粗粉砕3分後、微粉砕20分実施した。
次に、粉砕粉を熱処理して、粉砕による内部ひずみを取り除くとともに、αFe結晶層を析出させた。熱処理は、実施例1の他に、比較用として、比較例を実施した。実施例1と比較例の差異は、熱処理のみである。
<熱処理>
実施例1は、ホットプレスで550℃、20秒加熱した。比較例は、熱風炉で430℃、10分加熱した。
上述した全体酸素量および表面酸素量の測定方法により、実施例1および比較例の全体酸素量と表面酸素量を測定した。
また、シリコーン樹脂をバインダーとして混合し、造粒を行い、造粒粉を作製した。次に、造粒粉を金型に投入し、加圧成形を行って圧粉体を作製した。シリコーン樹脂は、軟磁性粉末の3重量%程度とした。
得られたそれぞれの圧粉体に対して、B-Hアナライザーを用いて、周波数1MHz、磁束密度25mTにおけるコア損失を測定した。コア損失の合否基準は、1300kW/m以下とした。その理由は、一般的な金属系の材料のコア損失以下となることを目標としたためである。
表1に、実施例1および比較例の全体酸素量、表面酸素量、コア損失を示す。
Figure 0006998549000001
<全体酸素量、表面酸素量>
図2(a)に実施例1における軟磁性粉末の断面のSEM画像を示す。図2(b)に図2(a)のA領域の拡大図を示す。軟磁性粉末は、酸化鉄であるFeO、Fe、あるいはFeで形成された表面に位置する第1酸化層101、酸素が進入してFeやBなどと結合して形成された内部に位置する第2酸化層102、軟磁性粉末層103で構成される。
なお、第2酸化層102は、Bを少量含む。または、含まない場合もある。第1酸化層101は、第2酸化層102より、酸素濃度が高い。
図3(a)に比較例における軟磁性粉末の断面のSEM画像を示す。図3(b)に図3(a)のB領域の拡大図を示す。軟磁性粉末は、酸化鉄であるFeO、Fe、あるいはFeなどで形成された表面に位置する第1酸化層201と、酸素が進入してFeやBなどと結合して形成された内部に位置する第2酸化層202と、軟磁性粉末層203とで構成される。
図2(b)および図3(b)から測定した、第1酸化層101、201の厚み、第2酸化層102、202の厚みを表1に示す。全体酸素量および表面酸素量は、第1酸化層101、201および第2酸化層102、202の厚みが厚いほど増加している。さらに、第1酸化層101、201および第2酸化層102、202が厚いとコア損失が増加することがわかる。
図4に実施の形態の軟磁性粉末の断面の模式図を示す。軟磁性粉末の粉砕粉300は、表面に位置する第1酸化層301、内部に位置する第2酸化層302、軟磁性粉末層303により形成される。軟磁性粉末の粉砕粉300中の軟磁性粉末層303の割合が大きいほど、優れた軟磁気特性を示すことは明らかである。
実施例1の酸化層の厚みは、最大520nm(第1酸化層301が20nm、第2酸化層302が500nm)である。一方、比較例の酸化層の厚みは、最大1680nm(第1酸化層201が80nm、第2酸化層202が1600nm)である。両者の粉末はほぼ同じ粒径のため、実施例1の方が酸化していない軟磁性粉末層の割合が大きく、優れた軟磁気特性を示すと考えられる。それぞれの圧粉体で測定したコア損失は、実施例1の方が小さくなっている。
ここで、実施例1の第1酸化層301は、熱処理時間が非常に短いため、自然酸化層と考えられ、大気に触れることにより必ず形成されるものである。
粉末の集合体は、粉末間に空隙が存在し熱伝導性が低い。そのため、熱風炉で熱処理すると、表面に現れる粉末のみ加熱され、内側の粉末には熱が十分に伝わらず加熱されない。したがって、従来の熱風炉は短時間加熱では、粉砕による内部ひずみを取り除いたり、αFe結晶層を析出できない。
したがって、粉末表層20nm以上520nm以下の領域に、第1酸化層301と第2酸化層302を有し、粉末表層520nmより大きく1600nm以下の領域に酸化層を有しない軟磁性粉末がよい。酸化層とは、第1酸化層301と第2酸化層302を含む。
粉末表層20nm以上100nm以下の領域に酸化層を有し、粉末表層100nmより大きく1600nm以下の領域に酸化層を有しない軟磁性粉末が好ましい。
さらに、粉末表層20nm以上50nm以下の領域に酸化層を有し、粉末表層50nmより大きく、1600nm以下の領域に酸化層を有しない軟磁性粉末がよい。
自然酸化層層当の第1酸化層301以外に、第2酸化層302を有することにより、軟磁性粉末の表層付近の電気抵抗が大きくなる。高周波時の表皮効果により、電流は軟磁性粉末の表層付近を流れるため、電流量を小さくでき、コア損失を低減できる効果もある。ただし、第2酸化層302が厚くなりすぎると、酸化していない軟磁性粉末層303の割合が減り、磁気特性が劣化する。そのため、第2酸化層302の厚みは上述した領域がよい。
熱風炉で熱処理すると、一部の粉末は熱が十分に伝わらず、粉末の熱処理時の温度が十分に上がらない。よって、粉砕による内部ひずみを取り除いたり、αFe結晶層を析出するには、粉末を長時間加熱する必要があり、軟磁性粉末内部に酸素が侵入する割合が増加する。
一方、ホットプレスでの熱処理は、上下から粉末を挟み込んで加熱するため、熱伝導性が高い。よって、短時間の加熱でよいため、ほぼ酸素に触れず、酸素は軟磁性粉末内部にほぼ侵入しない。よって、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末が得られる。
なお、磁性粉末の全体酸素量は、1.1重量%以下がよい。0.5重量%以下がよい。さらに0.1重量%以下が好ましい。
また、軟磁性粉末は、粉末表面に図4で示した粉砕痕304が存在する。図5(a)、図5(b)に粉砕痕のでき方を説明する。図5(a)に示す軟磁性薄帯401を粉末に粉砕すると、図5(b)に示すように、粉末402の表面がへき開して、微粉末404が削り取られていき、表面に引きちぎった粉砕痕403を有する粉末402となる。粉末402の粉砕過程で、粉末表面に酸化していない粉砕痕403が現れ、粉砕工程および熱処理工程で、粉砕痕403から粉末内部に酸素が進入し、第1酸化層と第2酸化層を形成する。
引きちぎった粉砕痕403は、粉末402の表面のとげ状のものである。このとげが、粉末402の表面に対して、なす角度は、90度より小さい。30度~60度が多い。
(実施の形態2)
図6に本発明の実施の形態2における軟磁性粉末の断面の模式図を示す。
<構造>
軟磁性粉末600は、軟磁性粉末層601、軟磁性粉末層601の表層に位置する第1酸化層602、第1酸化層602の表層(軟磁性粉末の最表層)に位置するSi濃化層603、粉砕痕604により形成される。
第1酸化層602は、熱処理により、軟磁性粉末層601と大気中の酸素とが結合して形成されたFeO、Fe、あるいはFeなどの酸化膜である。第1酸化層602は、自然酸化膜(10nm~20nm)より厚く、膜厚は20nm~500nmである。第1酸化層602は、薄いので、保磁力の増加をおさえることができる。
Si濃化層603は、FeとSiから成る。Si濃化層603は、膜厚700nm~1μmであり、第1酸化層602の表層を切れ目無く覆うように形成される。
Si濃化層603の膜厚が薄いと、軟磁性粉末600は、軟磁性粉末600の中心部から表面に向かってほぼ連続的にSi濃度が高くなる濃度分布形態を形成できず、渦電流を低減することができない。また、Si濃化層603の膜厚が厚いと、圧粉磁心の単位体積あたりに占める軟磁性粉末層601の割合が低下し、飽和磁束密度および透磁率が低下し、優れた磁気特性が得られなくなる。よって、膜厚は薄くても厚くてもよくない。
次に、実施の形態2の軟磁性粉末の製造方法について説明する。
<軟磁性粉末の製造>
まず、実施の形態の軟磁性粉末600の製造方法について説明する。
(1)合金組成物を、高周波加熱などによって融解し、液体急冷法でアモルファス層の薄帯または薄片を作製する。アモルファス層の薄帯を作製する液体急冷法としては、Fe基アモルファス薄帯の製造などに使用される単ロール式のアモルファス製造装置や、双ロール式のアモルファス製造装置を使用することができる。
(2)次に、薄帯または薄片を粉砕して粉末化する。薄帯または薄片の粉砕は、一般的な粉砕装置を使用できる。例えば、ボールミル、スタンプミル、遊星ミル、サイクロンミル、ジェットミル、回転ミルなどが使用できる。また、粉砕して得られた粉末を、ふるいを用いて分級することにより、所望の粒度分布を有する軟磁性粉末が得られる。
図7(a)、図7(b)を用いて、本実施の形態の粉砕粉の製造メカニズムを説明する。図7(a)に示す軟磁性薄帯701を回転ミルなどの粉砕機で粉砕する。このことで、図7(b)に示すように、粉末702の表面がへき開して、微粉末704に削り取られていき、表面に粉砕痕703を有する粉末702となる。粉末702は、表面がへき開することで、角がなく丸みを帯びた形状となる。また、微粉末704も同様のメカニズムで表面がへき開し、角がなく丸みを帯びた形状となる。
(3)次に、粉末702、微粉末704を熱処理して、粉砕による内部ひずみを取り除いたり、αFe結晶層を析出させたりする。熱処理装置は、例えば、熱風炉、ホットプレス、ランプ、シースー金属ヒーター、セラミックヒーター、ロータリーキルンなどを使用できる。
(4)次に、熱処理をした粉末702、微粉末704の表層にSi濃化層603を形成する。Si濃化層は、例えば、化学気相蒸着法(CVD法)による浸珪およびそれに引き続く拡散処理のプロセスで製造される。その結果、軟磁性粉末の渦電流損失を低減でき、特に高周波領域で損失を小さくできる。さらに、高飽和磁束密度かつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末600が得られる。
<圧粉磁心の作製>
(1)実施の形態における圧粉磁心の作製は、軟磁性粉末600と、フェノール樹脂やシリコーン樹脂などの絶縁性が良好で耐熱性が高いバインダーとを混合して造粒粉を作製する。
(2)次に造粒粉を所望の形状を有する耐熱性が高い金型に充填し、加圧成形して圧粉体を得る。
(3)その後、バインダーが硬化する温度で加熱することで、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性が得られる圧粉磁心が得られる。
次に、実施の形態2の実施例2を述べる。
(実施例2)
急冷単ロール法により作製したFe73.5-Cu1-Nb3-Si13.5-B9(原子%)のFe系アモルファス合金薄帯を、回転ミルを用いて粉砕し、アモルファス層の軟磁性合金粉末を得た。粉砕は、粗粉砕3分後、微粉砕20分実施した。
次に、粉砕粉を熱処理して、粉砕による内部ひずみを取り除くとともに、αFe結晶層を析出させた。熱処理は、ホットプレスで550℃、20秒加熱した。
次に、CVD法によりSi濃化層603を形成した。高温環境下において、軟磁性粉末の表層にSiClガスを吹き付け、軟磁性粉末の表層において、FeとSiの置換反応を発生させ、Siが軟磁性粉末中へ浸透する。この化学反応によって軟磁性粉末表層にSi濃化層が形成される。このとき、軟磁性粉末表層にSi濃化層が形成される際の浸珪量と浸珪速度を制御する。
その後、無酸化雰囲気中で高温均熱化する際の温度と処理時間を制御することにより、図8(a)~図8(c)に示すように軟磁性粉末600の中心部から表面に向かってほぼ連続的にSi濃度が高くなるという濃度分布形態を形成できる。
図8(a)は実施の形態1における軟磁性粉末600の断面の模式図を示す。図8(b)は図8(a)に示す軟磁性粉末の断面において、短辺の最大長部のSi濃度の変化を示す。図8(c)は図8(a)に示す軟磁性粉末の断面において、長辺の最大長部のSi濃度の変化を示す。
Siの最大濃度は、軟磁性粉末層601のSi濃度より0.5原子%~3原子%高く、14原子%~16.5原子%とする。軟磁性粉末600中のSi濃度を高めることで、軟磁性粉末600の電気抵抗が増加し、渦電流損失が低減される。
次に、軟磁性粉末600の表層にSi濃化層603を形成した軟磁性粉末600に、シリコーン樹脂をバインダーとして混合し、造粒を行い、造粒粉を作製した。次に、造粒粉を金型に投入し、加圧成形を行って圧粉体を作製した。シリコーン樹脂は、軟磁性粉末の3重量%程度とした。
得られたそれぞれの圧粉体に対して、B-Hアナライザーを用いて、周波数1MHz、磁束密度25mTにおけるコア損失を測定した。コア損失の合否基準は、1300kW/m以下としたところ、合否基準をクリアした。合否基準は、一般的な金属系の材料のコア損失以下となることを目標とした。よって、高周波領域で損失が小さい圧粉磁心が得られた。
<効果>
軟磁性粉末600の表層部は、Si濃度が高くなり、透磁率が高くなり、渦電流損失を低減することができる。軟磁性粉末100の中心部と表層部の透磁率の差によって、励磁状態では、磁束が表層に集中する。表層部に磁束が集中し、それよりも内部での磁束変化がないとすると磁束密度変化よって生じる渦電流も表層のみの発生となるため、軟磁性粉末600の渦電流損失を低減できる。
(実施の形態3)
図9に本発明の実施の形態3における軟磁性粉末の断面の模式図を示す。図9において、図6と同じ要素構成については同じ符号を用い、説明を省略する。記載しない事項は、実施の形態2と同様である。
軟磁性粉末900は、軟磁性粉末層601、軟磁性粉末層601の表層に位置する第2酸化層905、第2酸化層905の表層に位置する第1酸化層602、第1酸化層602の表層(軟磁性粉末の最表層)に位置するSi濃化層603、粉砕痕604により形成される。
実施の形態3は、実施の形態1に対して、さらに軟磁性粉末900の内部に第2酸化層905を有する。第1酸化層602は、第2酸化層905より膜厚が薄い。また、第1酸化層602は軟磁性粉末900の表面に切れ目なく形成されるが、第2酸化層905は軟磁性粉末層601と第1酸化層602の間の一部分に形成されればよい。
また、第1酸化層602は、軟磁性粉末層601と大気中の酸素とが結合して形成されたFeO、Fe、あるいはFeなどの酸化膜である。第1酸化層602は、自然酸化膜(10nm~20nm)より厚く、膜厚は20nm~500nmである。第1酸化層602と第2酸化層905は、薄いので、保磁力の増加をおさえることができる。
第2酸化層905は、熱処理工程で、軟磁性粉末900の粉砕痕604から酸素が進入してFeまたはBと結合して形成された軟磁性粉末900の内部に形成される酸化層である。
<効果>
第1酸化層602以外に第2酸化層905を有することにより、軟磁性粉末900の表層付近の電気抵抗が大きくなる。高周波時の表皮効果により、電流は軟磁性粉末900の表層付近を流れるため、電流量を小さくできる。よって、実施の形態1の軟磁性粉末900の表層部分のSi濃度が高くなって、渦電流損失が低減できる効果に加えて、さらに、渦電流損失を低減できる。
また、第1酸化層602、第2酸化層905は薄いので、保磁力の増加をおさえることができる。
(全体として)
なお、軟磁性粉末は、金属、合金、ケイ素鋼板、アモルファス、ナノ結晶合金など、軟磁性特性を示すものであれば何でもよい。
なお、軟磁性粉末は、薄帯または薄片を粉砕して粉末化した粉砕粉で説明したが、スアトマイズ法あるいは水アトマイズ法などで作製したアトマイズ粉でもよい。
なお、Si濃化層603の形成方法は、プラズマCVD法、熱CVD法、光CVD法など、軟磁性粉末表層のSi濃度を濃化できれば何でもよい。
本発明によれば、高飽和磁束密度でかつ優れた軟磁気特性が得られる軟磁性粉末とそれを用いた圧粉磁心など磁性部品を提供することができる。
100 軟磁性粉末
101 第1酸化層
102 第2酸化層
103 軟磁性粉末層
201 第1酸化層
202 第2酸化層
203 軟磁性粉末層
300 粉砕粉
301 第1酸化層
302 第2酸化層
303 軟磁性粉末層
304 粉砕痕
401 軟磁性薄帯
402 粉末
403 粉砕痕
404 微粉末
501 主面
502 粉砕面
503 主面
504 粉砕面
600 軟磁性粉末
601 軟磁性粉末層
602 第1酸化層
603 Si濃化層
604 粉砕痕
701 軟磁性薄帯
702 粉末
703 粉砕痕
704 微粉末
900 軟磁性粉末
905 第2酸化層

Claims (12)

  1. 軟磁性材料の軟磁性粉末層と、
    前記軟磁性粉末層の外周に位置する鉄またはホウ素の酸化物の第2酸化層と、
    前記第2酸化層の外周に位置する酸化鉄の第1酸化層と、を含む軟磁性粉末であり、前記第1酸化層と前記第2酸化層は、前記軟磁性粉末の表面から20nm以上520nm以下の領域に位置し、前記表面から520nmより深く1600nm以下の領域に存在しない
    軟磁性粉末。
  2. 前記第1酸化層と前記第2酸化層は、前記表面から20nm以上100nm以下の領域に位置し、前記表面から100nmより深く1600nm以下の領域に存在しない
    請求項1記載の軟磁性粉末。
  3. 前記第1酸化層と前記第2酸化層は、前記表面から20nm以上50nm以下の領域に位置し、前記表面から50nmより深く1600nm以下の領域に存在しない
    請求項1記載の軟磁性粉末。
  4. 全体酸素量が1.1重量%以下である
    請求項1から3のいずれか1項に記載の軟磁性粉末。
  5. 粉末表層にとげ状の粉砕痕がある
    請求項1から4のいずれか1項に記載の軟磁性粉末。
  6. 軟磁性組成物を粉末にする粉砕工程と、
    前記粉末を前記粉末の表面から20nm以上520nm以下の領域に酸化層を有し、前記表面から520nmより深く1600nm以下の領域に酸化層を有しない粉末にする熱処理工程と、を含む軟磁性粉末の製造方法であり、
    前記熱処理工程では、前記粉末のみをホットプレスで上下から挟み込んで熱処理をする
    軟磁性粉末の製造方法。
  7. 前記熱処理工程で、前記粉末の全体酸素量が1.1重量%以下であることを特徴とする
    請求項6に記載の軟磁性粉末の製造方法。
  8. 酸化していない軟磁性材料の軟磁性粉末層と、
    前記軟磁性粉末層の外周に位置する酸化鉄の酸化層と、
    前記酸化層の表層を切れ目なく覆うSi濃化層と、を含み、
    前記軟磁性粉末層の中心部から表層に向かって連続的にSi濃度が高くなる軟磁性粉末であり、
    前記酸化層は、表層側に位置する第1酸化層と、前記軟磁性粉末層側に位置する鉄またはホウ素との第2酸化層とによって構成され、
    前記酸化層は、20nm~500nmの膜厚を有する
    軟磁性粉末。
  9. 前記Si濃化層は、700nm~1μmの膜厚を有する
    請求項に記載の軟磁性粉末。
  10. 前記Si濃化層は、前記軟磁性粉末層のSi濃度より、0.5原子%~3原子%高いSi濃度を有する
    請求項8又は9に記載の軟磁性粉末。
  11. 請求項1~5、8~10のいずれか1項に記載の軟磁性粉末と、バインダーとを、含む
    圧粉磁心。
  12. 軟磁性組成物を粉末にする粉砕工程と、
    前記粉末の表層20nm~500nmの領域に酸化層を形成する熱処理工程と、
    前記酸化層の表層にSi濃化層を形成するSi濃化工程と、
    を含む軟磁性粉末の製造方法であり、
    前記熱処理工程では、前記粉末のみをホットプレスで上下から挟み込んで熱処理をする
    軟磁性粉末の製造方法。
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