本開示の体調管理システムは、管理者が、被管理者から得られた生体情報に基づいて、当該被管理者の健康状態を把握することが可能な体調管理システムであって、前記管理者が使用する管理者情報端末と、前記被管理者の体に装着されて当該被管理者の前記生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報に基づいて前記被管理者の健康リスクを判定するリスク判定部と、前記生体情報を前記リスク判定部へと送信する生体情報送信部とを備え、前記管理者情報端末が、前記被管理者を、前記健康リスクのレベルに応じて図表化して表示デバイス上に表示する表示画像処理部を有している。
上記の構成を備えることにより、本願で開示する体調管理システムは、被管理者の生体情報を把握して健康リスクの判定が行われるとともに、管理者が使用する管理者情報端末の表示画像処理部が、健康リスクの高い被管理者をリスクレベル毎に図表化して表示することができる。このため管理者は、表示デバイスに表示された画像から、健康リスクが高い被管理者の特定や、自己が管理する被管理者全体の健康リスク状況を一目で把握することができ、健康リスクの低減のための対策を迅速に行うことができる。
本開示の体調管理システムにおいて、前記表示画像処理部が、前記被管理者が受ける熱的負荷と肉体的負荷とをそれぞれ軸とするマップを前記表示デバイス上に表示し、当該マップ上に前記被管理者を表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、表示デバイスに表示されたマップから、被管理者の全体状況を容易に把握することができるとともに、健康リスクが高くなっている被管理者に対して採るべき有効な対策を、感覚的に理解することができる。
この場合において、前記表示画像処理部が、前記マップ上に、前記健康リスクの危険度に応じてランク付けされた領域を合わせて表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、被管理者のリスクレベルを容易、かつ、確実に把握することができる。
また、本開示の体調管理システムにおいて、前記表示画像処理部が、前記健康リスクの危険度に応じて形成された複数の領域を有する図形を表示し、それぞれの前記領域内に該当する前記被管理者を表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、被管理者の健康リスクの概況を即座に把握することができ、適切な対応を迅速に採ることができる。
この場合において、前記表示画像処理部が、前記複数の領域のうち前記健康リスクが最も高い領域を他の領域よりも大きな面積で、かつ、上方に表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、健康リスクが高い被管理者の状況を迅速に把握することができる。
さらに、前記複数の領域が全体として円形を形成し、前記表示画像処理部が、前記領域内に該当する前記被管理者の人数を表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、より感覚的に被管理者の全体状況を把握することができる。
また、本開示の体調管理システムにおいて、前記表示画像処理部が、前記被管理者を前記健康リスクの高い順に並べたリストを表示することが好ましい。このようにすることで、管理者は、より迅速に対策を採るべき被管理者を、容易に把握することができる。
この場合において、前記表示画像処理部が、前記健康リスクの危険度に応じて前記リスト上の表示を異ならせることが好ましい。このようにすることで、管理者は、被管理者のリスクの高さを、感覚的に容易に把握することができる。
なお、本開示の体調管理システムにおいて、前記健康リスクが熱中症の発症リスクであることが好ましい。
また、前記生体情報取得部が、前記被管理者が着用するシャツの胸部に配置されていることが好ましい。
以下、本願で開示する体調管理システムの具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
本実施形態では、本願で開示する体調管理システムの一例として、管理者が、被管理者に対する熱中症発症リスクの判定結果に基づいて、熱中症を発症するリスクが高く危険な状態になりつつある被管理者に警告し、熱中症の発症を回避することができる熱中症リスク管理システムを示して説明する。本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムは、炎天下での重労働を強いられるなど強い肉体的負荷と熱的負荷がかかる建築現場の作業者を被管理者として、現場監督などの管理者が、管理対象の作業者が熱中症とならないように管理するために用いられる。
[システムの概要]
図1は、本実施形態においで説明する熱中症リスク管理システムの概略構成を説明するためのイメージ図である。
また、図2は、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムの各部の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、建築現場で作業する被管理者である作業者10は、体温(体表温度)、心拍数、発汗量などの生体情報を取得する生体情報取得部であるデータチップ11を胸部に装着するとともに、データチップ11で得られた生体情報を外部に送信する生体情報送信部として機能する携帯端末としてのスマートフォン12を所持している。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、作業者10の生体情報を取得するデータチップ11は、作業者10が着用するアンダーシャツの胸部に装着されている。
図3は、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者が着用するアンダーシャツの構成例を示す図である。図3(a)が、生体情報取得部が装着されたアンダーシャツの表面を示し、図3(b)がアンダーシャツの裏面を示している。
図3に示すように、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者10が着用するアンダーシャツ18の胸部には、データチップ11が配置されている。より具体的には、データチップ11は、アンダーシャツ18の表面18aの胸部中央部分に配置された、データ取得送信ユニット11aと、このデータ取得送信ユニット11aに接続され、アンダーシャツ18の裏面18b、つまり、皮膚に接する側の部分に左右方向に延在して配置された電極部11bとから構成されている。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムにおいて、作業者10の生体情報を胸部に配置したデータチップ11で取得する方法としては、図3に示したアンダーシャツ18にデータチップ11を固着する方法には限られない。たとえば、データチップ11を接着性の高いシート状の装着カバー内に入れてこれを胸部に直接貼り付ける方法、データチップ11を体に密着保持することができる伸縮性のある装着ベルトを用いて作業者の胸部に配置する方法などを採用することができる。しかし、装着カバーや装着ベルトを用いる方法では、作業者10がデータチップ11を装着することによって感じる違和感を解消できず、また、長時間装着する場合に、汗などによって、データチップ11が作業者の体表面から外れたり装着位置がずれたりする恐れがある。
これに対して、図3に示したようにデータチップ11を作業者10が着用するアンダーシャツ18に固着する方法によれば、作業者10が、データチップ11を装着することに対する特別な意識を緩和して生体情報を取得することができる。また、仮に作業者10の発汗や作業中の体のひねりなどが生じた場合でも、アンダーシャツ18に固着されたデータチップ11が、作業者10の体表面から外れてしまうことはなく、その装着位置も実質的に変化しない状態を維持することができる。
また、作業者10の生体情報を取得するデータチップ11に、2方向または3方向の加速度センサを配置することで、作業者の体の動きを3次元で検出することができる。この結果、たとえば、作業者10が転倒した場合など作業者10の姿勢が急激に変化した場合には、データチップ11によってその体の動きを検出することができる。
作業者10の生体情報を取得する生体情報取得部としてデータチップ11を用いる場合に、データチップ11の配置場所としては、上記した作業者の胸部以外にも、作業者の腰部、背中、上腕部や脚部などに配置される形態を採用することができる。これらの場合においても、データチップ11を作業者の体表面に密着固定する方法としては、アンダーウェアの内表面にデータチップを配置する方法のほか、装着カバーや装着ベルトを用いてデータチップを固定する方法が採用できる。ただし、生体情報として心拍数を取得する場合には、作業者10の胸部にデータチップ11を配置することが必要となり、その点で、図3に示したようなアンダーシャツ18を用いることが最も好ましいと考えられる
データチップ11と作業者11が所持するスマートフォン12とは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの短距離間通信によって常時接続されていて、データチップ11が取得する作業者10の生体情報は、随時スマートフォン12に送られている。
スマートフォン12は、自身が備えるデータ受信部15、データ送信部16によって、無線LANや携帯電話の情報キャリアを用いて常時ネットワーク環境としてのインターネット20に接続されている。そして、スマートフォン12は、インターネット20上に設置されたリスク判定部22を備えたサーバであるクラウドサーバ21に作業者10の生体情報を伝送する。
クラウドサーバ21は、内部にデータ受信部23とデータ送信部26を備えていて、インターネット20を介した情報の授受を行うことができるとともに、リスク判定部22を備えていて、複数の作業者の生体情報を受信して、それぞれの作業者についての熱中症発症リスクを判定し、熱中症の発症リスクが高まっている場合にはその旨を当該作業者に警告する警告情報を作成する。また、クラウドサーバ21は、データ記録部24を備えていて、複数人いる作業者それぞれの生体情報、警告情報の作成履歴などを時系列に記録することができる。
さらに、クラウドサーバ21は、気象情報取得部25を有していて、インターネット20を介して気象情報を提供する情報サイトから気象情報(25)を取得して、作業者10が作業している地域での気温や湿度、日照量などの現在時刻での気象条件や、今後数時間内における変化を見込んだ気象予報を取得することができる。
また、クラウドサーバ21は、インターネット20を介して、熱中症発症リスクの判定対象の作業者10の作業を建築現場で監督する管理者である現場監督30が使用する管理者情報端末としてのパソコン31と接続されている。このため、作業者10の作業現場にいる現場監督30は、パソコン31のデータ受信部33によって、クラウドサーバ21から随時送信される作業者10の生体情報や、警告情報が生成されたか否かを把握することができる。
クラウドサーバ21のリスク判定部22は、生体情報の変化に基づいて作業者10が熱中症を発症するリスクを判断できる。判断の一例として、リスク判定部22は、作業者10の安静時の生体情報である安静時データを基に、熱中症発症リスクが高まったかどうかを判定するための閾値を生成し、作業中の生体情報である作業時データと当該閾値を比較することで作業者10の熱中症の発症リスクを判断することができる。
また、クラウドサーバ21は、データ記録部24に記録された判定対象の作業者10の過去の履歴情報や、気象情報取得部25で取得した作業地域の気象情報、さらには、判定対象の作業者と同じ現場で働いている、判定対象の作業者以外の作業者の生体情報の変化などの環境情報に基づいて、作業者10の熱中症発症リスクの判断結果を補正して、より現実に即したものとすることができる。
なお、リスク判定部22を備えるのはクラウドサーバ21に限られない。例えば、管理者情報端末や事業所の管理コンピュータ上に、リスク判定部を含めたクラウドサーバ21の各種機能を実装してもよく、その機能が実現できるのであれば、実装される場所や機器は問わない。
現場監督30のパソコン31は、作業者10を含めた当該現場監督30が監督する作業現場に所属する作業者についての生体情報や警告情報が生成されたか否かを管理する情報管理部32を備えている。情報管理部32は、クラウドサーバ21から送信された情報に基づいて、それぞれの作業者の生体情報や警告情報が生成されたか否かの熱中症発症リスク情報を常に最新情報として把握している。また、情報管理部32は、取得した各作業者の熱中症発症リスク情報やその他の環境情報を表示画像処理部35へと出力し、表示画像処理部35で液晶モニタなどの表示デバイス36上に表示される画面内容が調整される。このようにして、現場監督30は、自分が監督する作業現場で働く作業者10の生体情報や熱中症発症リスクなどを、全体として一元的に、または、作業者個々の詳細情報として見やすい画面で把握することができる。なお、表示画像処理部35で処理された表示デバイス36に表示される具体的な画面内容は、追って詳細に説明する。
なお、図1に示したように、現場監督が使用するパソコンがデスクトップタイプである場合は、表示デバイス36はパソコン本体とは別体のものとなる。このように、情報管理部32などを有する管理者情報端末31と管理者用の画面表示を行う表示デバイス36とは、物理的に一体のものには限られない。また、例えば、複数人でデータを確認する場合などには、専用の大型画像表示装置を用いたり、プロジェクターによって表示画像をスクリーンや壁面などに拡大投影したりすることも考えられる。
さらに、現場監督30のパソコン31では、警告情報を通知した後の作業者10の生体情報や、作業者10からの警告情報の受領確認を受け取ることで、作業者10が熱中症の発症を予防するための対策を行ったか否かを確認することができ、作業者10が熱中症の発症を予防するための対応をとっていない場合には、対象の作業者10に繰り返して警告情報を伝達するなど、作業者10の注意喚起を行うことができる。
また、現場監督30は、空調や換気などの作業現場の作業環境を改善するための対策を採ることが可能である場合には、適宜実行して自身が監督する作業現場での熱中症の発症を予防することができる。
なお、上記説明では、作業者10に熱中症を発症するリスクが高くなっていることを報知する警告情報を、クラウドサーバ21のリスク判定部22で生成する例を説明したが、警告情報を、現場監督30のパソコン31に設置された情報管理部32で生成することができる。また、リスク判定部22と、情報管理部32の双方で警告情報を生成するように設定することもできる。このようにすることで、作業現場を実際に監督している現場監督30のパソコン31から、リスク判定部22での判定結果に先んじて警告情報を生成して対称となる作業者10に伝達することで、作業現場の実情に応じて熱中症の発症リスクをより低減することができる場合がある。
クラウドサーバ21のリスク判定部22、または、現場監督30のパソコン31で生成された警告情報は、現場監督30のパソコン31のデータ送信部34から、無線LANなどのローカルネットワークや携帯電話の情報キャリアを含めたネットワークを介して作業者10が装備するスマートフォン12に送信される。警告情報を受け取ったスマートフォン12の警告報知部14は、音声、画面表示、ランプの点灯または点滅、振動などの各種の情報伝達手段を用いて、作業者10に対して、自分が熱中症を発症するリスクが高まっていることを報知する。警告情報を確認した作業者10は、スマートフォン12のタッチパネルまたは操作ボタンなどを通じて警告情報を受け取った旨を報告するとともに、作業を中断して休息をとるなど熱中症を予防するための対策を実行する。
作業者10のスマートフォン12は、作業者10が警告情報を確認して作業を中断したことを監督者30のパソコン31に送信し、監督者30は、作業者10が熱中症の発症を予防する対策をとったことを確認できる。
さらに、本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、現場監督30が把握している作業現場での熱中症発症リスクデータを、作業者10のスマートフォン12に送信して、作業者10が、自分が働いている作業現場での熱中症発症リスクの現状を確認することができる。例えば、自分以外の作業者の熱中症発症リスクが高くなっていることが確認できれば、各作業者自身が熱中症の発症を積極的に予防する対応を採ることが可能となる。また、他に熱中症発症リスクの警告情報を受け取って作業を中断した作業者がいることがわかれば、現場監督30からの自分宛の警告情報により素直に応じることが期待できる。
さらに、作業者10が所有するスマートフォン12で、当該作業者10の現在までの熱中症発症リスクの変化や、データチップ11で取得された自身の生体情報数値、生体情報から計算された消費カロリーなどの関連情報を画面に表示して、作業者10自身が参照することができる。これら、作業者10が所有するスマートフォンでの表示画面についても、追って詳細に説明する。
クラウドサーバ21は、インターネット20を通じて作業者10が所属する会社や事業所40内の管理コンピュータ41にも接続されていて、現場監督30のパソコン31に送信された作業者10の生体情報や、クラウドサーバ21が熱中症の発症リスクを判断するために用いた各種の情報を、リアルタイムで、事業所40の管理コンピュータ41に対して送信する。事業所40の管理コンピュータ41は、自身のデータ受信部42とデータ送信部43とを備えているため、インターネットを介して現場監督30のパソコン31とも接続されていて、現場監督30から作業者10に対して警告情報が正しく伝達されたか、作業者10が熱中症の予防対策をとったか、などの情報を確認し、必要に応じて所定の指示を行うことができる。このようにすることで、作業者10が所属する事業所40においても、作業者10の状況や作業現場での対応を確認することができ、作業者10の熱中症発症リスクの回避をバックアップすることができる。
また、図1では明示していないが、クラウドサーバ21、現場監督30のパソコン31、および、事業所40の管理コンピュータ40は、インターネット20で接続されているため、パソコン31や管理コンピュータ40の側からクラウドサーバ21にアクセスすることができ、クラウドサーバ21でのデータ処理内容を制御したり、リスク判定部22での判定プログラムを更新したり、クラウドサーバ21から熱中症予防管理に必要な情報を適宜取り出したりすることができる。
なお、上記説明においては、作業者が装備する携帯端末としてスマートフォンを例示したが、作業者の携帯端末はスマートフォンには限られず、携帯電話機やタブレット機器、さらには、熱中症リスク管理システムに特化した、情報の送受信が可能な専用の小型端末機器を用いることができる。
また、現場監督が操作する管理者情報端末としては、例示したパソコン、特に図1で図示したデスクトップパソコン以外にも、ノートパソコン、タブレット型パソコン、小型サーバ機器などの、ネットワークを通じた情報の送受信とデータ表示、データ記録などが可能な各種の情報機器を採用することができる。
さらに、上記説明では、現場監督の管理者情報端末から作業者の携帯端末に警告情報を送信する形態を説明したが、警告情報がクラウドサーバのリスク判定部で生成される場合には、クラウドサーバから直接作業者の携帯端末に警告情報を送信するようにシステムを構成することもできる。
なお、本願で開示する体調管理システムによって本実施形態で説明するような建設現場での作業者の熱中症の発症リスクを管理する場合は、管理対象となる作業者の位置が建設現場内に限定される。また、作業期間も一定以上の日数にわたるため、当該建築現場で無線LANを構築することも可能となる。このように、被管理者が一定の範囲内にのみ存在する場合には、独自の無線LANを構築し、それぞれの作業者の生体情報の現場監督の管理者情報端末への送信を、インターネットを介さずにLAN内で行うことができる。この場合には、管理者情報端末から、または、LAN内に設置されたサーバユニットや別のパソコンなどの情報機器からインターネットに接続することで、クラウドサーバ内のリスク判定部で熱中症発症のリスク判定をしたり、気象情報取得部で取得した気象情報を利用したりすることができる。また、熱中症の発症リスクを判定するリスク判定部を建築現場のLANに接続されているサーバユニットやパソコンに設けることができる。
[管理者情報端末の画面]
次に、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムにおいて、現場監督が使用する管理者情報端末の表示画面について説明する。管理者である現場監督が使用する管理者情報端末としてのパソコンのモニタ上には、その現場監督が管理する作業者の熱中症の発症リスクを概観できる画像が表示される。
図4は、管理者である現場監督のパソコンに表示される管理者用画面の例である。
図4に示すように、管理者用画面50は、管理対象となっている作業者の熱中症の発症リスクについて、現在の状況を示す第1の表示領域51と、当日の現時点まで履歴を示す第2の表示領域52に大きく区分されている。
図4に示す例で、管理者用画面50の上側に配置された第1の表示領域51では、所定の基準に基づいてランク分けした熱中症発症リスクランク別の人数を示す第1の図表53と、作業者にかかる肉体的負荷と熱的付加とを軸としたマップ上に作業者の位置を示す第2の図表54と、熱中症発症リスクが高い順に作業者を特定する情報とその状態とを示す第3の図表55とが表示されている。
図5に、第1の図表を拡大して示す。
第1の図表53は、図5に示すように、「危険」、「注意」、「問題なし」と表示された3つの領域53a、53b、53cが、全体が円形となるように形成され、それぞれの領域の中に数字、一例として「1」、「4」、「18」が示されている。
第1の図表は、リスク判定部で判定された熱中症の発症リスクを所定の基準値に当てはめて、リスクが高い順に「危険」状態、「注意」すべき状態、「問題なし」の状態での3つの状態にランク分けし、現時点でそれぞれのランクに該当する作業者の数を表示したものである。
すなわち、例示する管理者用画面では、現場監督の担当する全部で23人の作業者の内、熱中症を発症するリスクが高く警告報知状態である作業者が1名、現時点では警告報知の段階には至っていないが熱中症の発症リスクが高まっている作業者が4名、現時点では熱中症発症のリスクが高くない作業者が18名いることを示している。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、上述のようにリスク判定部が個々の作業者の熱中症発症リスクを判定して警告報知が行われる。しかし、管理者である現場監督は、熱中症の発症リスクの低減をシステム任せにするのではなく、熱中症の発症リスクが高い作業者が存在することや、その割合を随時把握することによって、例えば警告報知を受けた作業者が指示通り休憩を取っているか否かを集中的に追跡確認したり、管理する作業者の中で、熱中症の発症リスクが高まっている作業者の人数割合が多い場合には、抜本的な対策を採ることを検討したりすべきである。
このため、管理者用画面に、図5に示すような第1の図表53が常に表示されることが、熱中症の発症を防ぐ上でのよりきめの細かな対応をとる上で効果的である。
なお、図5に示すように、現場監督が優先して注意を払うべき「危険」状態にある作業者人数を示す領域53aを、他の2つの領域53b、53cと比べて大きな面積で表示し、さらに、他の領域よりもより上方に配置することで、視覚的に現場監督の大きな注意を引くことができる。
また、3つの領域53a、53b、53cを、それぞれ「危険」「注意」「安全」を表す赤色、黄色、緑色に着色して表示することも効果的である。さらに、図5に示すように、「危険」状態を示す領域53aの文字を、他の領域の文字よりも、大きく、太く表示することで、より効果的に、現場監督の視覚に訴えることができる。
なお、図5に示した例では、3つの領域53a、53b、53cが合わさって円形となるように、「危険」領域53aを半円形で、「注意」領域53bと、「問題なし」領域53cとをそれぞれ1/4円の扇形で示した。このようにすることで、監視者に円グラフをイメージさせることができ、その注意を良好に喚起することができる。しかし、これはあくまでも例示であって、他の表示形態、例えば、図5に示したものと同じく全体が円形である場合でも、円内に水平方向の線(弦)を引くことで垂直方向に領域を分割して、それぞれの領域に、ランク分けされた作業者の人数を表示してもよい。また、表示される図形の全体形状を円形とするのではなく、正方形、または、長方形、三角形、六角形などの多角形、楕円形、菱形など、なじみ深いいわゆる基本図形を全体形状として、ランク別の作業者人数を表示するようにしても良い。
なお、いずれの場合でも、図5で例示した形態に準じて、現場監督に最も強く訴えるべき「危険」ランクの作業者数を示す「危険」領域の面積を大きくする、より上方に配置する、赤色など目立つ色で着色する、表示する文字や数字を、太く、大きくすることが好適である。
なお、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムでは、熱中症を発症するリスクにおける「危険」、「注意」、「問題なし」のランク分けは、図6で説明する、熱中症発症リスクを2次元のマップとして表した際の、マップ上の位置として定められている。
図6に、第2の図表54を拡大して示す。
図6に示すように、第2の図表54は、作業者にかかっている肉体的負荷(Workload:符号54a)と、熱的負荷(Heat stress:符号54b)とをそれぞれ軸とする二次元のマップを形成し、それぞれの作業者をマップ上に「▼」として表したものである。
熱中症の発症リスクは、当然ながら作業者にかかる熱的負荷の大きさに左右される。また、本実施形態の熱中症リスク管理システムのように、被管理者が建築現場の作業者など、肉体的に大きな負荷がかかる作業をしている場合を始め、肉体的な負荷の大きさも熱中症の発症リスクを左右する要因となる。このため、熱中症の発症リスクを、対象となる被管理者にかかる熱的負荷と肉体的負荷から総合的に把握することが可能であり、これを第2の図表54のように2次元のマップとして示すことで、2つの要因がどのように作用しているかを視覚的に、容易に把握することができる。
例えば、熱的負荷が大きくかかっているために熱中症の発症リスクが高くなっている場合には、涼しい場所に移動させたり、換気や冷房によって当該対象者の周辺の環境温度を下げたりすることで、有効に熱中症の発症リスクを低減することができる。一方、図5中符号54iとして示す作業者のように、熱的負荷はそれほど大きくはないものの、肉体的負荷が大きい場合には、とにかく休憩を取らせて肉体的負荷を軽減することが有効な熱中症発症の予防策となる。
なお、作業者にかかる肉体的負荷は、作業者が装着する生体情報取得部によって取得された心拍数の変化などから把握することができる。また、作業者にかかる熱的負荷は、作業者が装着する生体情報取得部が取得した作業者の体温(体表温度)や、環境データとして取得された環境温度の数値などから把握することができる。
なお、詳細の説明は省略するが、本実施形態の熱中症リスク管理システムでは、被管理者である作業者の熱中症リスクを、肉体的負荷と熱的負荷との和によって判定できるように、肉体的負荷と熱的負荷の計算式を決定している。このため、同じ大きさの熱中症発症リスクがマップ上の直線として表される。このことを利用して、2次元マップである第2の図表54上に、熱中症発症リスクの高さに応じた領域を形成することができる。
具体的には、図6において、第1の境界線54cよりも原点0に近い領域では、肉体的負荷の値と熱的負荷の値との和が小さい範囲にとどまるので、熱中症の発症リスクが低い「問題なし」領域54eと考えることができる。これに対して、肉体的負荷の値と熱的負荷の値との和が少し大きな、第1の境界線54cと、第2の境界線54dとの間の第2の領域では、熱中症発症リスクがやや高くなって「注意」領域54fとなり、第2の境界線54dよりも原点0から遠い第3の領域は、熱中症を発症するリスクが高くすぐに対策を取ることが求められる「危険」領域54gとなる。
このため、図6のマップ上にそれぞれ「▼」として示される作業者の内、危険領域54gに位置する作業者54iは、熱中症の発症リスクが高く危険な状態にあり、注意領域にいる4人の作業者が、熱中症発症の恐れがある要注意状態であることがわかる。
これら、「危険」な状態と「注意」の状態に位置づけられる作業者の人数が、上述した第1の図表53に示されていることになる。また、図6のマップ上に表示される「▼」の記号を、表示される領域に合わせて変更してもよい。例えば、危険領域54gに位置する作業者を「■」、注意領域54fに位置する作業者を「▲」、問題なし領域54eに位置する作業者を「▼」とそれぞれ異なる記号や色で表現してもよい。これにより熱中症の発症リスクの分布をより感覚的に認識できる。
なお、第1の図表53では、「問題なし」と判定された作業者が18名いることが表示されているが、第2の図表54に表示されている「▼」は5個に留まっている。これは、第2の図表54では、熱中症発症リスクが小さな作業者を示すマーク、すなわち、2次元マップ上で原点0に近い位置に表示されるべきマークの表示を省略しているためである。
これは、マップ上において、原点に近い位置に表示される作業者は、肉体的負荷と熱的負荷との両方が小さい状態であるため、2次元マップ上に表示して管理者がその状態を把握する必要性が乏しいことや、これらの作業者をマップ上に表示しないことでマップ表示の煩雑化を回避することができるためである。また、作業者によっては、肉体的負荷と熱的負荷ともに少ない状態が、一生懸命働いていない状態であると認識されることを危惧して熱中症リスク管理システムの対象となることを拒む場合も考えられるので、そのような余計な心配をさせないためにも有効である。なお、原点0に近い「問題なし」の作業者も含めて、全ての作業者をマップ上に表示してもよい。これにより、全体の傾向をより詳細に把握することができる。
このように、管理対象となる作業者を、熱中症発症リスクの算出基準とする肉体的負荷と熱的負荷とを軸とするマップ上に表すことで、現場監督は、熱中症発症リスクを高くしている要因を感覚的に把握することができる。
また、リスクの高さによるランク分けでは、「注意」の状態である作業者の中で、より、「危険」な状態に近い作業者と、比較的「問題なし」の領域に近い作業者とを瞬時に峻別することができるので、危険性の高い作業者に対して予防的な対応をとらせるなど、熱中症の発症リスクが高くなることを回避する対策を採ることも可能となる。
さらに、本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、管理者表示画面50において熱中症の発症リスクを示すマップである第2の図表54に示されたそれぞれの作業者を表すマーク「▼」を選択することで、当該作業者についての熱中症発症リスクの現時点までの経緯を表示させることができる。
図7は、熱中症発症リスクを示すマップから、特定の作業者の熱中症発症リスクの時間的な変化を表示させる操作についてのイメージを示す図である。
図7(a)が、2次元マップである第2の図表を、図7(b)が特定の作業者の熱中症発症リスク評価値の当日の推移を示す第1の時系列グラフを、図7(c)が、当該作業者の熱中症発症リスク評価値の前日までの推移を示す第2の時系列グラフを示している。
図7(b)に示す第1の時系列グラフ61は、縦軸に熱中症発症リスクの数値が示され、横軸に当日の時間が示され、表示対象となる作業者の熱中症発症リスク評価値の現時点である15:00迄の時間的な推移が示されている(61a)。
また、本実施形態で説明している熱中症リスク管理システムでは、図7(a)に示したように、肉体的負荷の値と熱的負荷の値との和が熱中症発症リスクの評価値として、評価値が0.8までであれば、「問題なし」と、0.8から1.0までであれば「注意」と、1.0を超えると「危険」と評価されることから、時系列グラフ61において、この領域を示す横線が記載されている。
さらに、対象となる作業者の熱中症発症リスク評価値を示すグラフ61aが、評価値が0.8を超えた「注意」の状態となった場合にはやや太い線61bまたは、黄色などに着色されて表示され、評価値が1.0を超えて「危険」の状態になった場合にはより太い線61c、または、赤色などに着色されて表示されることで、熱中症の発症リスクが高くなった時間帯を一目で把握できるようにすることができる。
さらに、管理者表示画面50では、選択された作業者の過去一週間の熱中症発症リスクの推移を示す第2の時系列グラフ62が表示できるようになっている。
第2の時系列グラフ62では、縦軸として第1の時系列グラフ61と同様の熱中症発症リスク評価値が示され、横軸に前日までの過去数日間(実際の作業日、一例として5日間)が示されて、表示対象となる作業者の熱中症予防発症リスク評価値の推移が示されている(62a)。
この、第2の時系列グラフ62においても、第1の時系列グラフ61と同様に、熱中症発症リスク数値が「注意」の状態になった場合には、やや太い線62bで示すか、または、黄色に着色して示すことができ、「危険」の状態となった場合には、より太い線(図62にでは存在せず)または赤色に着色することで、熱中症発症リスクが高くなった日にちを一目でわかるようにすることができる。
このように、例えば現時点で熱中症発症リスクが高く「危険」ランクと判断される作業者の、当日の現時点までの熱中症発症リスク数値の推移、または、前日までの一定期間の熱中症発症リスク数値の推移を、現場監督が容易に参照することを可能とすることで、例えば、対象の作業者が少し前から体調を崩している状態であるか否か、また、当日急に発症リスクが上昇している状態であるか、などを詳しく知ることができる。このため、現場監督は、作業内容の変更があったか否か、気温・湿度などの環境条件の大きな変化が生じているか否かなどの、熱中症発症リスク管理システムでは把握できない各種の条件を踏まえて、当該作業者に対し、熱中症の発症を回避するためのより適切な指示を出すことができる。
なお、第2の図表である2次元マップ54において、特定の作業者(例えば、マーク54i)を選択する方法としては、マウスによって当該マークを選択してクリックする、マウスカーソルの位置を当該マーク上に合わせる、タッチパネルの場合はその部分をタッチするなどの周知の手法を利用することができる。
また、当日の時系列グラフ61と前日までの時系列グラフ62との切り替え表示は、時系列マップを表示する画面上に、「当日(の時系列データ)」「前日まで(の時系列データ)」と表された操作ボタンを表示して、マウスや、タッチ操作によってこのボタンを選択することで行うようにすることができる。
なお、該当する作業者の熱中症発症リスク評価値について、当日の時系列と前日までの時系列との両方を示すことができるようにすることは、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムにおいて必須の要件ではない。いずれか、一方のみを表示できるようにすることができ、また、時系列の評価値の推移を示すグラフを一切表示しないというシステム構成も選択できる。
さらに、時系列のグラフを表示するための指示手段としても、上記説明したように、当日の時系列グラフ61と前日までの時系列グラフ62を順次表示する形式には限られず、マップ54上で特定の作業者を選択した場合に、2つの時系列グラフ61、62が同時に表示されるようにしても良い。
図4に示した、管理者表示画面50の現在の状況を示す第1の領域51には、熱中症発症リスク評価数値が高い順に作業者の管理用ID番号などの特定情報と、それぞれの作業者の状態を示すマークとが表としてリストアップされた第3の図表55が示されている。
図8に、第3の図表の表示内容を示す。図8(a)が第3の図表の拡大図、図8(b)が第3の図表に示される作業者の状態を表すマークの表示例である。
図8(a)に示すように、第3の図表55では、その時点で、熱中症発症リスクが高くなっている作業者のIDと、その作業者の会社名、および、名前(またはニックネーム)といった作業者を特定するための情報が、その時点での熱中症発症リスク評価値の高い順に表示されている。また、それぞれの作業者を特定する内容とともに、その作業者の状態を表すマーク(アイコン)が示されている。
図8(b)に例示するように、当該作業者の熱中症発症リスクが「危険」または「注意」状態であることを示すマーク、当該作業者が転倒してしまったと思われる状況にあることを示すマークを定めておき、第3の図表55に作業者を特定する情報とともに表示することで、現場監督は、それぞれの作業者が置かれている異常状態を容易に把握することができる。
なお、第3の図表55に、熱中症発症リスクが少なく「問題なし」の状態にある作業者は表示しないことで、第3の図表55の表示の煩雑さを回避することができる。また、作業者が転倒している状態、発症リスクが危険な状態、発症リスクが注意の状態、のように、作業者が置かれている状態が深刻な者である順に一覧表として表示することで、現場監督は、対応すべき作業者の順序を容易に理解することができる。
さらに、作業者の健康上のリスクではないシステム機構上の問題点、例えば、作業者が所持している携帯端末のバッテリが少なくなっている状態であること、当該作業者の携帯端末の通信状態が好ましくないこと、通信できなくなっていることなどを示すマークを設定しておいて、第3の図表55上にその作業者を特定する情報とともに示しても良い。なお、この場合、上述した、作業者の熱中症発症リスク順の表示とは別に、例えば、図8(a)に図示するように、熱中症発症リスクの表示とは間隔を開けた下側部分に表示することで、作業者の体調に問題があるのか、それとも、システム機構上の問題であるのかが、一目でわかるようにすることが好ましい。
なお、図8(a)では示していないが、第3の図表55全体として煩雑にならず、リスクの高い作業者の特定とその状態の把握が容易に確認できる範囲において、それぞれの作業者の熱中症発症リスク評価値を併記しても良い。
また、図7(b)、図7(c)として示した、特定の作業者についての熱中症発症リスク評価値の時間的な推移を表示する第1の時系列グラフ61や、第2の時系列グラフ62の表示への移行を、第3の図表55で示される当該作業者の表示領域を選択することで行われるようにしても良い。
さらに、第3の図表55上表示されている作業者に対して、熱中症発症リスクが高いことを警告した場合には、第3の図表55における当該当作業者の表示部分に関連づけて、例えば、ID番号部分に重ねて、「警告済」等の表示をすることで、「危険」状態の作業者に対して適切な指示を行ったか否かがわかるようにすることができる。
以上のように、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムでは、現場監督が確認する管理者表示画像において、現在情報を表示する第1の表示領域に、作業者の人数を熱中症発症リスクの高さに基づくランク別に表示する第1の図表53と、作業者にかかる肉体的負荷と熱的負荷とを軸とする2次元のマップ上に表示した第2の図表54と、熱中症発症リスクの高い作業者を特定する情報をリスクが高い順に表示する第3の図表55とが表示される。このため、現場監督は、作業者の置かれている状態を視覚的に、それぞれの要素に基づいて把握することができ、作業者の熱中症発症リスクを低減する適切な対策を迅速に採ることができる。
次に、管理者表示画面における、当日の現時点までの熱中症発症リスクの推移を表す、第2の表示領域の表示内容について説明する。
図9は、管理者表示画面における第2の表示領域の拡大図である。
図9に示すように、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムにおける管理者表示画面では、管理者である現場監督が管理する建築現場での熱中症発症リスクの推移を、第2の表示領域52に時系列グラフ56として表示する。
時系列グラフ56は、図9に示すように、横軸に当日の時間を表し、縦軸として、左側に、本実施形態の熱中症リスク管理システムで用いられる熱中症発症リスク数値を、右側に、従来用いられている熱中症発症リスク評価値であるWBGTの評価数値(温度)を、それぞれ表している。
なお、時系列グラフ56には、熱中症管理システムにおける熱中症発症リスク評価数値が、注意状態を示す0.8と、危険状態を示す1.0の部分に、境界線56c、56dが引かれている。
時系列グラフ56には、現時点である15:00時点までの熱中症発症リスクの評価値56aの推移が示されている。なお、この熱中症発症リスクの評価値56aは、現場監督が管理する作業者全員についての評価値の平均値である。
また、時系列グラフ56には、従来熱中症発症リスクの評価数値として用いられていたWBGTの評価数値56bが、1時間ずつの評価値として表示されている。WBGTの評価数値は、1954年アメリカで提唱された熱中症発症リスクを示す指標であり、屋外でのWBGT数値は、湿球温度Tw、黒球温度Tg、乾球温度Tnを用いて、WBGT=0.7Tw+0.2Tg+0.1Tnで表される。そして、WBGT数値が、31℃以上であれば危険、28℃から31℃で厳重警戒、25℃から28℃で警戒、25℃以下で注意として、熱中症の発症リスクが評価される。本実施形態の熱中症リスク管理システムでは、気象協会などから取得した建築現場における温度数値に基づいて、WBGT評価値を算出している。また、WBGTの数値を算出する専用の測定装置を用いて、WGBTの評価値を求めることができる。
本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、作業者がシャツ内に装着した生体情報取得部であるデータチップで、作業者の体表温度(シャツ内部温度)や心拍数を測定し、外気温などの気象条件を加味して肉体的負荷と熱的負荷とから熱中症の発症リスクを評価する。このため、屋外の、しかも気温条件のみから算出されたWBGTの評価値とは評価結果数値が異なる。しかし、少なくとも温度や湿度といった環境条件に起因する熱中症の発症リスクの増減は、WBGTの評価値が信頼できると考えられることから、当日の各時間帯における熱中症発症リスクの増減傾向は、十分参照できるものと期待される。そこで、本実施形態の熱中症リスク管理システムで算出された熱中症発症リスクの評価値56aと合わせて、WBGTの評価値を表示することで、現時点での熱中症発症リスク表示領域51で示された、「危険」「注意」「問題なし」とのリスクランクの境界線56b、56cとともに、WBGTの指標値56aを示している。
この結果、管理者である現場監督は、管理者表示画面に示された、当日の熱中症リスクの環境温度に起因する増減傾向と照らし合わせて、自分が管理する作業者全員の熱中症発症リスクの増減を把握することができる。特に、全体傾向を示すWBGT数値56bと、本実施形態の管理システムで算出された熱中症の発症リスク評価値56aの推移の傾向が異なる場合には、環境面での条件以外の要因が大きく作用していることが考えられ、現場の環境を確認して、換気装置の故障などの特別な要因が働いていないかを確認するなど、熱中症の発症リスクを抑える対策を行うことができる。
次に、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムにおける管理者が操作する管理者情報端末等で表示される管理者表示画面の別の例を説明する。
図10は、管理者表示画面の第2の表示例である。
図10に示す、第2の表示例の管理者表示画面70は、管理者が所持する管理者情報端末がスマートフォンやタブレット端末であることを想定して、表示デバイスの表示画面が縦長であるものとして示されている。そして、図4で示した管理者表示画面50で表示されていた、現時点での熱中症発症リスクを表示する第1の表示領域51と、熱中症発症リスクの時間的経緯を表示する第2の表示領域52に加えて、表示画面の上部に、一般的な情報表示を行う第3の表示領域71が設けられている。
第3の表示領域71では、現在時刻73と、インターネットサーバを介して入手された当日の時間毎の天気予報情報75とが表示されている。また、現時点での熱中症発症リスクを表示する第1の表示領域51、熱中症発症リスクの時間的経緯を表示する第2の表示領域52で、それぞれ、前日のデータを表示するように切り替える、前日データ表示ボタン74が配置されている。
現場監督は、第2の表示例の管理者表示画面70に表示された前日データ表示ボタン74をタッチ操作することで、いつでも前日の情報を呼び出すことができ、現時点でのデータと比較することで、何か特異な状況が発生していないかを確認したり、当日の今後の熱中症発症リスクの全体的な推移を予測したり、自己が管理する建築現場での熱中症発症リスクを効果的に抑えるための情報を得ることができる。
なお、図示は省略するが、例えばインターネットから取得した天気予報情報とともに、気象に関する警報、注意報の情報を取得した場合は、天気予報表示75の周辺部分に追加して表示させることができる。さらに、気温、湿度、風向、風速などの気象条件が前日とは大きく異なることが予想される場合には、実際に警報、注意報が発令されていない場合でもその予報を表示することで、管理者である現場監督に、気象条件の変化に対する一層の注意を喚起することができる。
以上、管理者である現場監督が使用する管理者情報端末での管理者表示画面の表示内容について説明した。
本実施形態の熱中症リスク管理システムでは、管理者表示画面に、当該管理者が管理する被管理者の体調リスクを、現時点の実際のデータと当日の現時点までのデータの推移とを表示されるため、管理者である現場監督は、適宜必要な操作を行ってさらなる詳細情報を得ながら、自己が管理する作業者の熱中症発症リスクを低減する処置を適切に行うことができる。
特に、現時点での熱中症発症リスク情報の表示が、熱中症の発症リスクが高いと評価された作業者の情報を、そのリスクの高さに応じて図表化して表示されるため、管理者である現場監督は、被管理者である作業者の熱中症の発症リスクの状況を視覚的に容易に把握することができ、熱中症の発症リスクを低減するための適切な行動をとることができる。
なお、上記説明した、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムにおける管理者情報端末での管理者表示画面は、あくまでも一例であって、表示される各図表の配置位置やそれぞれの大きさなどは、管理者である現場監督が管理する作業者の熱中症発症リスクを一見して把握できる範囲において、適宜変更することができる。
また、図10に示した、管理者表示画面の第2の例では、スマートフォンやタブレット端末が使用されていることを想定した縦長の画面での表示例を示したが、各表示要素を横長の画面に表示することに何らの妨げはない。このため、図10に示した、第3の表示領域71の内容を、管理者情報端末であるパソコンのモニタ画面の上部に表示して、その下側部分に、第1の表示領域51と第2の表示領域52とを横方向に並べて表示するなど、各種の表示形態を採用することができる。
なお、図10に示した管理者表示画面では、図面の煩雑化を避けるために、通常タブレット端末の表示画面に表示される電波の受信状況を示すアイコンや、バッテリ残量を示すアイコンなどの表示は省略している。
[作業者情報端末の表示画面]
次に、個々の作業者が情報端末としてスマートフォン、小型タブレットパソコンなどを所持することを想定して、作業者の情報端末での表示画像の例について説明する。
図11は、作業者が所持する作業者情報端末としてのスマートフォンにおける作業者表示画面の例を示す図である。
図11に示すように、例として示す作業者表示画面80は、一般情報を示す第1の表示領域81と、所持する作業者の熱中症発症リスクを表示する第2の表示領域82と、付加的な情報を表示する第3の表示領域83との3つの表示領域で構成されている。
第1の表示領域81には、現在時刻84と、天気予報情報86、さらに、第2の表示領域82の表示内容を前日のデータ表示に切り替えるための前日データ表示ボタン85が配置されていて、図10を用いて示した、管理者表示画面の第2の表示例70における第3の表示領域71の表示内容とほぼ同じとなっている。
このような表示内容とすることで、被管理者である作業者は、現時点の一般的な情報を把握することができる。なお、天気予報情報86の表示に加えて、警報や注意報の発令状体、気温、湿度、風向、風速などの気象条件が前日とは大きく異なることが予想される場合にはその予報情報を表示することで、個々の作業者が適宜作業内容を調整することを可能にしている点も、管理者表示画面70の第3の表示領域71と同様である。
作業者が携帯するスマートフォンの表示画面80の中央部分には、熱中症の発症リスクに関する情報を表示する第2の表示領域82が設けられている。
本実施形態に係る熱中症発症リスク管理システムでは、作業者個々が所持する携帯端末であるスマートフォンにおいて、管理者表示画面50、70に表示したものと同様な、熱中症発症リスクについてその評価の基準となる肉体的負荷と熱的負荷とを2軸とするマップ87を表示することができる。なお、マップ87上に表示されるのは、スマートフォンを所持する作業者自身のみであり、図11に示すように「▼」マーク87a一つのみ表示されている。また、第2の表示領域82には、マップ表示を行う「マップ」ボタン88と時系列データを表示する「時系列」ボタン89とが設けられていて、作業者が「時系列」ボタン89をタッチ操作することで、第2の表示領域82にマップ87に代えて、熱中症発症リスク評価値の当日の時系列での推移を示す時系列グラフ(図示省略)を表示することかができる。
作業者の所持するスマートフォンで表示されることが求められる情報は、基本的には、当該作業者についての情報のみで十分である。このため、図4、図10で例示した管理者表示画面50、70でのように、熱中症発症リスクの評価値についても、その危険性の高さに応じたランクに該当する人数を表示する、図5に示した第1の図表53を表示する必要性は低い。一方で、自身の熱中症発症リスクについて、その評価の基準となる肉体的負荷と熱的負荷とを2軸とするマップ上に表示されることで、熱中症の発症を予防する上で肉体的負荷を軽減することが良いのか熱的負荷を低減させる工夫をすることが良いのかが一目瞭然となるため、2次元のマップを表示することは当該作業者が熱中症の発症を予防する対策の選択する上で有効である。このため、自分がマップ上のどの位置にいるかを示すマップ87が表示される。
具体的には、図11で例示する作業者の場合は、マーク87aの位置から、肉体的負荷は小さいものの熱的負荷が大きく、熱中症発症リスクが「注意」の状態となっていることがわかる。このため、作業者は、日陰などの比較的涼しい領域に一時的に移動するなど、自身にかかる熱的負荷を低減する対策を採って、熱中症の発症を未然に防ぐことができる。
なお、図示は省略するが、熱中症発症リスク評価値を2次元で示すマップ87上に、熱中症の発症リスクが「危険」な状態であると判断される領域や、「注意」状態であると判断される領域に着色して、作業者が自己の位置づけを視覚的により明確に把握できるように工夫することができる。
さらに、作業者が「時系列」ボタン89を操作することにより、第2の表示領域82に当該作業者の当時の熱中症リスク評価値の時系列グラフを表示させることができる。
図示は省略するが、第2の表示領域82に表示される時系列グラフとしては、図9を用いて説明した管理者表示画面での時系列グラフ56と同様に、熱中症発症リスク評価値の推移と、参照情報としてWBGTの評価値とを表示するものを用いることができる。なお、時系列グラフ上に表示される熱中症発症リスクの評価数値は、スマートフォンを所持する作業者自身の数値である。また、図9に示した時系列グラフ56と同様に、熱中症発症リスク評価値が「危険」状態となったと見なされる評価値0.8と、「危険」状態となったと見なされる評価値1.0の部分に、境界線を表示したり、「注意」や「危険」の数値範囲を着色したりしてさらなる注意喚起を行うことができる。
なお、図11に示すように、第2の表示領域82には、「グループ情報」表示ボタン90を配置することができる。グループ情報とは、作業者が所属するグループ、すなわち同一の現場監督が監督する作業者グループ全体の情報を意味しいる。上述の通り、個々の作業者が自分の属するグループ全体の状況を把握することは、必須のものではない。しかし、グループ全体の状況を把握することによって、例えば、現場監督から熱中症発症リスクが高まっている際に一時的に休憩を取るような指示が来た場合に、何人かの作業者に休憩指示が出ていることを確認できれば、作業者が無理をせずに素直に休憩指示に従うようになるなど一定の効果が期待できる。また、体調の悪化を自覚した際に、グループの他の作業者の状況を確認することで、より積極的に熱中症の発症リスクを低減するための対策を採るようにすることも期待できる。
なお、グループ情報の表示は、図4、図10を用いて示した管理者表示画面40、70に表示されているような、熱中症発症リスクの分布図や評価マップを用いて行うことができる。
作業者表示画面80の下部には、付加的な情報を表示する第3の表示領域83が形成されている。作業者自身が熱中症の発症を回避するための情報としては、第2の表示領域82に表示されている内容で基本的には十分である。このため、図11に示す作業者表示画面の第3の表示領域82では、スマートフォンを所有する作業者の消費カロリーの推移を表示している。
本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、熱中症の発症リスクを算出するために、生体情報として、作業者の体表体温(シャツ内の温度)と心拍数を検出している。これらの情報から、または、必要に応じて生体情報取得部であるチップに搭載される加速度センサの測定数値から、作業者の運動状況を把握することができるため、消費されたカロリーを算出することができる。
カロリーの消費度合いは、熱中症発症の予防に直接的に関連する情報ではないものの、一般的に誰もが興味を持っている情報であるとともに、カロリー消費の大小に応じて食事のメニューや量を自己管理することができるため、結果として良好な体調を維持して、熱中症発症の予防に寄与する可能性もある。
なお、第3の表示領域83では、作業者が熱中症の発症を予防するために直接必要な情報以外の各種の情報を表示することができるため、図11で例示したカロリー消費量の表示以外にも、例えば加速度センサで検出された歩数をカウントして、1日の歩数の推移やトータルの歩行距離を表示したり、運動量が少ない場合には体を動かすことを指示したり、各種の情報を表示させることができる。実際には、建築現場の作業員にとって作業中常に携帯端末を所持することは、作業の邪魔となってしまう要素がある。このため、携帯端末を所持して、熱中症の発症リスクを観視する管理システムに協力的に参画してもらうために、上記例示したカロリー表示などの、熱中症の発症リスクを低減するために直接寄与しないが、作業者の興味を引くような情報が表示されることも重要である。
なお、図示は省略するが、現場監督から熱中症発症リスクについての警告が送信された作業者のスマートフォンでは、他の表示に優先して当該警告が表示され、注意が喚起される。当然ながら、画面上の表示のみではなく、音声、振動などのあらゆる報知手段を用いて、作業者に警告が伝達される。
また、警告指示が送信された作業者のスマートフォンでは、「確認」ボタンが表示されて、警告を受診した作業者が確認ボタンをタッチ操作することで、作業者に警告が伝達されたことを現場監督の情報端末に伝達されるようにすることが好ましい。
なお、スマートフォンのバッテリ残量や通信電波の取得状態表示、バイブレーションの設定表示など、スマートフォンの基本的機能についての表示についは、図11では図示を省略している。
以上、図11で示した作業者表示画面は、作業者が所持する情報端末での表示画面の例であって、個々の情報の配置位置や表示形態などは、図11に示されたものには限定されない。自己の熱中症発症リスクがオンタイムで、かつ、可能な限り客観的に把握できるような工夫がされている範囲において、様々な表示アイテムを適宜の形態で表示できるようにすることができる。
また、作業者の所持する情報端末は、図11に例示したような各種の情報を表示できる表示画面を備えている必要は無く、例えば、腕時計型の情報機器、ベルトやポケット内に装着する小型の送受信ユニットなどのように情報表示に足る大きさの表示デバイスを備えていない携帯端末の場合には、警告の受信を報知するランプなどを備えた情報端末を作業者情報端末して使用することができる。
[大規模な建築現場などでのシステム形態]
以上の実施形態で津説明した熱中症発症リスク管理システムは、管理者である一人の現場監督が被管理者である一人、または、複数人の作業者を管理している現場での適用例である。
ところが、大きなビルや、トンネル、橋、などの建造物、地下鉄線路の建築現場などでは、多くの作業者がグループ毎に分かれて作業を行い、これら作業者を管理する一次管理者と、複数人の一次管理者を被管理者として管理する2次、または、3次以上の管理者が全体の建築現場を管理する場合がある。
図12は、このように、複数階層の管理者が存在する建築現場での被管理者と管理者との関係を説明するためのイメージである。
図12において、いわゆるゼネコンである建築会社の管理者101を筆頭として、建設現場の各ブロックを統括する2次管理者である現場事務所の現場監督102、さらに、それぞれの現場監督102の傘下で、実際に複数人の作業者103をまとめて管理する1次管理者である現場主任(班長)104が、それぞれの階層で管理者と被管理者との関係を構築する。
また、場合によっては、一つの建設会社のみですべての現場を担当せずに、比較的小さな建設会社の担当者が合同で作業する場合もあり、その場合の建築会社の管理者105が、自分の会社の一人または二人以上の1次管理者104を介して作業者103のグループを管理する場合がある。
このような複数階層の管理者がいる建築現場では、2次管理者である建築現場の現場監督102が1次管理者である班長104を含めて配下の作業者103すべてを管理しようとすると、管理対象者が多くなりすぎる場合がある。また、作業者103とともに作業現場にいる班長104が作業者103を管理するようにした方が、熱中症発症リスクの警告の伝達が容易、かつ、確実にできる。
一方で、班長104は、自身も作業者103とともに作業するいわばプレイングマネージャーであるから、上記説明した管理者表示画面を用いた管理を行う余裕はほとんどない。
このため、図12に示すような複数階層の管理体系を有する作業現場では、被管理者としての作業者103と管理者である現場監督102との間の1次管理者である班長104が携行するスマートフォンなどの情報端末において、上述の実施形態で説明した画面表示以外の画面表示を行うことが好ましい。
[1次管理者の管理者情報端末の表示画面]
図13は、このような自身も作業を行う1次管理者が携帯する情報端末における1次管理者表示画面を示す図である。
図13に示すように、1次管理者が所持する情報端末の1次管理者表示画面110は、一般情報を表示する第1の表示領域111と、一次管理者104が管理する作業者103についての熱中症発症リスク評価値の状況を示す第2の表示領域112と、1次管理者自身の熱中症発症リスク評価値の情報を表示する第3の表示領域113との3つの表示領域で構成されている。
第1の表示領域111には、現在時刻114と、天気予報情報116、さらに、第2の表示領域112の表示内容を前日のデータ表示に切り替えるための前日データ表示ボタン115が配置されている。このように、第1の表示領域111の表示内容は、図10を用いて示した、管理者表示画面の別の例70における第3の表示領域71の表示内容、および、作業者の携帯するスマートフォンで表示される作業者表示画面80の第1の表示領域81の表示内容とほぼ同じとなっている。
このような表示内容とすることで、1次管理者である班長は、現時点の一般的な情報を把握することができる。なお、天気予報情報の表示に加えて、警報や注意報の発令状体、気温、湿度、風向、風速などの気象条件が前日とは大きく異なることが予想される場合にはその予報情報を表示することで、個々の作業者が適宜作業内容を調整することを可能にしている点も、管理者表示画面70の第3の表示領域、作業者表示画面80の第1の表示領域と同じである。
班長104が携帯するスマートフォンの表示画面の中央部分の第2の表示領域112には、班長104が管理する作業者103についての、熱中症発症リスク数値における「危険」、「注意」、「問題なし」のランク別の人数を表示する図表117と、熱中症発症リスクについて、肉体的負荷と熱的負荷とを軸として表示する2次元マップ118、熱中症発症リスクの高い順に「注意」状態以上の作業者の特定情報とその熱中症リスク評価結果を一覧表に示す図表119とが表示されている。
これら、3つの図表は、図4、図10を用いて示した管理者表示画面40、70における第1の表示領域51での表示内容と同様であり、ランク別の人数を表示する図表116は第1の図表53と、2次元マップ117は2次元マップ54と、リスクの高い作業者の一覧表表示118は第3の図表55と、対象となる作業者が、班長が管理する作業者に限られることを除いて同様の表示内容となる。
また、図示を用いての説明は省略するが、1次管理者表示画面においても、図7を用いて説明したように、2次元マップ117に表示されている作業者を示すマークをタッチ操作したり、一覧表表示118における作業者欄をタッチ操作したりすることで、当該作業者の熱中症発症リスクの時系列の推移情報を、当日の情報(図7(b)と同様)と前日までの情報(図7(c)と同様)として表示することができる。
班長104が携帯するスマートフォンの表示画面の下側部分の第3の表示領域113には、班長104自身の熱中症発症リスクについての情報が表示される。図13では、班長104自身の熱中症発症リスク評価値の情報として、評価値の当日の推移を示す時系列グラフ120が表示されている状態が示されている。
この第3の表示領域113での表示内容は、作業者表示画面の第2の表示領域82と同様に、「マップ」ボタン121と「時系列」ボタン122とをタッチ操作することによって、図示した時系列グラフと、図示は省略する肉体的負荷と熱的負荷とを軸とする2次元マップとで切り替えることができる。
このように、自身が作業者であるとともに管理者でもある1次管理者である班長が所持する管理者情報端末では、管理者情報端末での表示内容と作業者携帯端末での表示内容を組み合わせることで、1次管理者が必要とする情報を表示することができる。
なお、図13に示す1次管理者の情報端末の表示画面は、あくまでも例示であり、各表示要素の配置位置やその形態、大きさなどは適宜変更することができる。
また、、図12において例示する他の建築事務所の管理者105は、建築現場の現場監督102と同様の位置づけとなるため、2次管理者が使用する情報端末に表示される管理者表示画面を用いて自己の配下にある、作業者103や班長104の管理を行うことが好ましい。
以上説明したように、本願で開示する体調管理システムは、建築現場などにおける熱中症発症リスク管理システムとして、好適に使用することができる。
また、本実施形態の体調管理システムは、被管理者の身体情報をインターネット上のサーバに送信して、体調不良のリスクを求める形態であるため、作業者が広範囲に散らばっている場合や、作業者が移動する場合でも、良好な体調管理を行うことができる。このため、例えば運送業におけるトラック運転手の熱中症の発症をはじめとする体調リスクを管理する場合にも、好適に使用することができる。
さらに、本願で開示する体調管理システムは、被管理者の生体情報を取得して、当該被管理者の体調リスクを肉体的負荷と熱的負荷とを指標として評価する各種の体調リスク管理に利用することができる。
このような体調管理としては、スポーツ選手のトレーニング時の体調管理や、コンサート会場など大人数が集まるイベントの警備員などのスタッフ、または、イベントへの来場者の体調管理などが想定できる。なお、スポーツ選手の体調管理などや、イベント会場での不特定多数の来場者の体調管理を行う場合には、図3で例示したようなシャツに配置されたデータチップではなく、腕時計型の生体情報取得部を用いることで、利用者の抵抗なく生体情報を取得することができ、また、生体情報取得部自体が生体情報送信部を兼ねることができる。
この場合、生体情報取得部が露出することになるため、被管理者の体温を測定することは困難となる。さらに、正確な心拍数の計測も困難となる。このため、脈拍や、発汗量、などの生体情報や、被管理者の置かれた環境温度などの測定可能情報を用いて、体調リスクを評価する指標を算出するようにすることが好ましい。