本開示の生体情報管理システムは、取得対象者の生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報を蓄積する生体情報蓄積部と、前記取得対象者を特定するID情報を読み取るID情報読取手段と、前記生体情報と前記ID情報を前記生体情報蓄積部に送信する情報送信部とを備え、前記情報送信部は、前記ID情報読取手段で前記ID情報を読み取ることで前記生体情報の送信を開始する。
上記の構成を備えることにより、本願で開示する生体情報管理システムは、取得対象者に付与された取得対象者を特定するID情報を簡易な手法で確実にシステム上に登録することができる。このため、生体情報取得部で取得された生体情報と、その生体情報が取得された取得対象者との関連づけを正確に行うことができる。また、システムの登録対象となる度に取得対象者が登録されるようにできるため、取得対象者の変動に柔軟に対応できるシステムとすることができる。
上記本願で開示する生体情報管理システムにおいて、前記生体情報を前記ID情報と関連付けて蓄積することが好ましい。このようにすることで、例えば数ヶ月間などの長期間にわたって取得対象者の生体情報をモニタリングする場合において、取得対象者の生体情報を確実に管理することができる。
また、前記生体情報蓄積部は、前記ID情報と前記取得対象者の個人情報とを紐付けて管理することが好ましい。このようにすることで、取得対象者の管理が容易になる。
この場合において、前記個人情報には、少なくとも前記取得対象者の氏名情報と所属団体情報が含まれることがより好ましい。取得対象者の氏名情報(名前、ニックネーム等)と所属団体情報(会社名、グループ名等)とに基づいて取得対象者の識別が容易になる。
さらに、前記生体情報取得部に固有の識別情報が付与され、前記識別情報を前記ID情報読取手段で認識することで、前記生体情報と前記ID情報との関連付けが行われることが好ましい。このようにすることで、生体情報取得部を取得対象者と切り離して管理することができる。
また、前記識別情報は、前記生体情報取得部に表示された2次元コードであることが好ましい。このようにすることで、生体情報取得部に付与された識別情報を当該取得対象者が所持するID情報読取手段を用いて容易に取得することができる。
また、複数の前記取得対象者がグループを形成し、前記グループを管理する管理者が所持する管理者情報端末が、前記グループを形成する複数の前記取得対象者の前記ID情報を読み取ることで、前記グループの登録が行われ、前記管理者は、前記管理者情報端末を用いて、前記グループを形成する複数の前記取得対象者の前記生体情報を確認可能なことが好ましい。このようにすることで、取得対象者が形成するグループの変動が激しい場合にもグループの登録が容易で確実に対応可能な生体情報管理システムとすることができる。
さらに、前記ID情報が、前記取得対象者に対して個別に発行されるIDカードに記録されているようにすることができる。
また、本願で開示する体調評価システムは、本願で開示する生体情報管理システムを含み、前記生体情報に基づいて前記取得対象者の体調を評価する生体情報評価部をさらに備えている。
このようにすることで、本願で開示する体調評価システムは、取得対象者を特定するID情報と、取得された生体情報とを簡易な方法で確実に関連づけることができ、ユーザにシステム管理上の過大な負担を与えずに体調評価が行われる体調評価システムとすることができる。
以下、本願で開示する生体情報管理システムと、この生体情報管理システムを含む体調評価システムの具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態)
本実施形態では、本願で開示する体調評価システムの一例として、複数の被管理者とこれを管理する管理者とを対象とする熱中症発症リスク管理システムについて説明する。この熱中症発症リスク管理システムでは、取得対象者である被管理者に対して行う熱中症発症リスクの判定結果に基づいて、当該被管理者を管理する立場の管理者が、熱中症を発症するリスクが高く危険な状態になりつつある被管理者に警告を行うなどして熱中症の発症を回避することを目的とするものである。また、以下で例示する熱中症発症リスク管理システムでは、生体情報が取得される被管理者と取得された生体情報との関連づけが、本願で開示する生体情報管理システムによって行われる。
なお、例示する熱中症リスク管理システムは、炎天下での重労働を強いられるなど強い肉体的負荷と熱的負荷がかかる建築現場の作業者を被管理者として、現場監督などの管理者が、管理対象の作業者が熱中症とならないように管理するために用いられる。
また、下記で例示する熱中症リスク管理システムは、取得された被管理者の生体情報を用いて、当該被管理者の体調評価を行うことができる体調評価システムとしての機能を有していて、取得対象者に体調評価結果を示すことができる。
[システムの概要]
図1は、本実施形態において説明する熱中症リスク管理システムの概略構成を説明するためのイメージ図である。
また、図2は、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムの各部の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、建築現場で作業する被管理者である作業者10は、体温(体表温度)、心拍数、発汗量などの生体情報を取得するセンサとしての生体情報取得部であるデータチップ11を胸部に装着するとともに、データチップ11で得られた生体情報を外部に送信する送信装置である情報送信部として機能する携帯端末としてのスマートフォン12を所持している。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、作業者10の生体情報を取得するデータチップ11は、作業者10が着用するアンダーシャツの胸部に装着されている。
図3は、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者が着用するアンダーシャツの構成例を示す図である。図3(a)が、生体情報取得部が装着されたアンダーシャツの表面を示し、図3(b)がアンダーシャツの裏面を示している。
図3に示すように、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者10が着用するアンダーシャツ18の胸部には、データチップ11が配置されている。より具体的には、データチップ11は、アンダーシャツ18の表面18aの胸部中央部分に配置された、データ取得送信ユニット11aと、このデータ取得送信ユニット11aに接続され、アンダーシャツ18の裏面18b、つまり、皮膚に接する側の部分に左右方向に延在して配置された電極部11bとから構成されている。
なお、本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムのデータチップ11は、データ送信ユニット11aと電極部11bとの接続部がリングホック(留め金)11cで構成されていて、アンダーシャツ18に縫い付けられた電極部11bからデータ送信ユニット11aを容易に取り外すことが可能となっている。このようにすることで、電子部品であるデータ送信ユニット11aを取り外してアンダーシャツを洗濯することができる。また、着用者の体の大きさや性別に合わせる必要があるアンダーシャツ18とデータ送信ユニット11aとを別々に管理することができ、システム全体の低コスト化を実現できる。
さらに、後述するように、取得対象者である作業者10に対してデータ送信ユニット11aのみを貸し出し、作業者10は作業に入る前にデータ送信ユニット11aを自身のアンダーシャツ18の胸部に装着して、熱中症リスク管理システムの管理対象者となるような利用方法を採用することができる。
また、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、データチップ11のデータ送信ユニット11a内に、2方向または3方向の加速度を検出する加速度センサが配置されていて、作業者10の体の動きを3次元で検出することができる。この結果、加速度センサのデータを用いて、作業者10の体の動きの激しさを検出することができ、作業者の肉体的負荷を判定することができる。加速度センサで得られた作業者10の体の動きを、熱中症発症リスクの評価や体調評価を行う上でのデータとして利用することで、熱中症発症リスクや体調評価の制度を向上することができる。また、作業者10が転倒した場合など作業者10の姿勢が急激に変化した場合を加速度データとして検出することができ、異常事態の発生を速やかに確認することができる。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムにおいて、作業者10の生体情報を胸部に配置したデータチップ11で取得する方法としては、図3に示したアンダーシャツ18にデータチップ11を固着する方法には限られない。たとえば、データチップ11を接着性の高いシート状の装着カバー内に入れてこれを胸部に直接貼り付ける方法、データチップ11を体に密着保持することができる伸縮性のある装着ベルトを用いて作業者の胸部に配置する方法などを採用することができる。しかし、装着カバーや装着ベルトを用いる方法では、作業者10がデータチップ11を装着することによって感じる違和感を解消できず、また、長時間装着する場合に、汗などによって、データチップ11が作業者の体表面から外れたり装着位置がずれたりする恐れがある。
これに対して、図3に示したようにデータチップ11を作業者10が着用するアンダーシャツ18に固着する方法によれば、作業者10が、データチップ11を装着することに対する特別な意識を緩和して生体情報を取得することができる。また、仮に作業者10の発汗や作業中の体のひねりなどが生じた場合でも、アンダーシャツ18に固着されたデータチップ11が、作業者10の体表面から外れてしまうことはなく、その装着位置も実質的に変化しない状態を維持することができる。
また、作業者10の生体情報を取得する生体情報取得部としてデータチップ11を用いる場合に、データチップ11の配置場所としては、上記した作業者の胸部以外にも、作業者の腰部、背中、上腕部や脚部などに配置される形態を採用することができる。これらの場合においても、データチップ11を作業者の体表面に密着固定する方法としては、アンダーウェアの内表面にデータチップを配置する方法のほか、装着カバーや装着ベルトを用いてデータチップを固定する方法が採用できる。ただし、生体情報として心拍数を取得する場合には、作業者10の胸部にデータチップ11を配置することが重要であり、その点で、図3に示したようなアンダーシャツ18を用いることが最も好ましいと考えられる。
データチップ11と作業者10が所持するスマートフォン12とは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの短距離間通信によって常時接続されていて、データチップ11が取得する作業者10の生体情報は、随時スマートフォン12に送られている。
スマートフォン12は、自身が備えるデータ送受信部16によって、無線LANや携帯電話の情報キャリアを用いて常時ネットワーク環境としてのインターネット20に接続されている。また、スマートフォン12は、インターネット20上に設置されたデータ処理部22を備えたサーバであるクラウドサーバ21に作業者10の生体情報を伝送する情報送信部13を有する。スマートフォン12は、自身が備える記憶手段(図示省略)に記憶された作業者10を特定するためのID情報を、個別に、または、生体情報に付加してクラウドサーバ11に送信する。
クラウドサーバ21は、内部にデータ受信部23とデータ送信部26を備えていて、インターネット20を介した情報の授受を行うことができる。また、クラウドサーバ21は、生体情報蓄積部としても機能するデータ記録部24を備えていて、情報送信部13から送信された、生体情報や警告情報の作成履歴などを、ID情報に関連づけることで複数人いる作業者それぞれについて時系列に記録することができる。クラウドサーバ21のデータ処理部22は、データ記録部24に蓄積された複数の作業者のID情報と関連づけられた生体情報を用いて、それぞれの作業者についての熱中症発症リスクを判定し、熱中症の発症リスクが高まっている場合にはその旨を当該作業者に警告する警告情報を作成する。
さらに、クラウドサーバ21は、気象情報取得部25を有していて、インターネット20を介して気象情報を提供する情報サイトから気象情報(25)を取得して、作業者10が作業している地域での気温や湿度、日照量などの現在時刻での気象条件や、今後数時間内における変化を見込んだ気象予報を取得することができる。
また、クラウドサーバ21は、インターネット20を介して、熱中症発症リスクの判定対象の作業者10の作業を建築現場で監督する管理者である現場監督30が使用する管理者情報端末としてのパソコン31と接続されている。このため、作業者10の作業現場にいる管理者である現場監督30は、管理者情報端末であるパソコン31のデータ受信部33によって、クラウドサーバ21から随時送信される作業者10の生体情報や、警告情報が生成されたか否かを把握することができる。
クラウドサーバ21のデータ処理部22は、データ記録部24に蓄積された生体情報の変化に基づいて、作業者10が熱中症を発症するリスクを判断する熱中症発症リスク判定部として機能する。判断の一例として、データ処理部22は、作業者10の安静時の生体情報である安静時データを基に、熱中症発症リスクが高まったかどうかを判定するための閾値を生成し、作業中の生体情報である作業時データと当該閾値を比較することで作業者10の熱中症の発症リスクを判断することができる。
なお、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、クラウドサーバ21のデータ処理部22が、体調評価システムの生体情報評価部としても機能し、体調評価のために用いられる指標を算出する。このようにすることで、熱中症発症のリスク管理の他に、データチップ11により取得された作業者10の生体情報に基づいて作業者10の体調評価を行うことができる。
データ処理部22では、作業者10から取得された生体情報に基づいて、例えば、数時間前、前日、過去1週間の平均など、以前に取得された当該作業者10の体調評価データと比較して、作業者10の現在の体調を評価することができる。データ処理部22で算出された作業者10の体調評価結果は、クラウドサーバ21のデータ送信部26から、直接、または現場監督の管理者情報端末であるパソコン31を介して、作業者10が所持するスマートフォン12に送信され、スマートフォン12の画像表示部17によって表示データとして処理されてスマートフォン12の画面上に表示される。
また、クラウドサーバ21は、データ記録部24に記録された判定対象の作業者10の過去の履歴情報や、気象情報取得部25で取得した作業地域の気象情報、さらには、判定対象の作業者と同じ現場で働いている、判定対象の作業者以外の作業者の生体情報の変化などの環境情報に基づいて、作業者10の熱中症発症リスクの判断結果を補正して、より現実に即したものとすることができる。さらに、体調評価を行う体調評価システムとしても、データ記録部24に記録された作業者10の過去の体調評価結果に基づいて、データ処理部22が作業者個人の特性を勘案して体調評価のための指標値を補正し、より正確な体調評価を行うことができる。
なお、データ処理部22を備えるのはクラウドサーバ21に限られない。例えば、管理者情報端末や事業所の管理コンピュータ上に、データ処理部とデータ記録部とを含めたクラウドサーバ21の各種機能を実装してもよく、その機能が実現できるのであれば、実装される場所や機器は問わない。
管理者情報端末としての現場監督30(管理者)のパソコン31は、作業者10を含めた当該現場監督30が監督する作業現場に所属する作業者についての生体情報や警告情報が生成されたか否か、また、当該作業者10の体調評価結果などを管理する情報管理部32を備えている。情報管理部32は、クラウドサーバ21から送信された情報に基づいて、それぞれの作業者の生体情報や警告情報が生成されたか否かの熱中症発症リスク情報を常に最新情報として把握している。また、それぞれの作業者についての体調評価結果をオンタイムで把握している。
さらに、情報管理部32は、取得した各作業者の熱中症発症リスク情報やその他の環境情報を表示画像処理部35へと出力し、表示画像処理部35で液晶モニタなどの表示デバイス36上に表示される画面内容が調整される。このようにして、現場監督30は、自分が監督する作業現場で働く作業者10の生体情報や熱中症発症リスク、体調評価結果などを、全体として一元的に、または、作業者個々の詳細情報として見やすい画面で把握することができる。表示画像処理部35で処理された表示デバイス36に表示される具体的な画面内容としては、後述するように2次元マップやグラフ、分布解析図などの複数のデータの分散傾向が把握できる統計学上のデータ表示手法を用いることができ、現場監督30が、管理対象の作業者10全体の傾向を視覚的に把握しやすくするとともに、必要に応じて、特定の作業者を選択することで当該作業者についての詳細情報を確認することができる。
図1に示したように、現場監督30が使用するパソコン31がデスクトップタイプである場合は、表示デバイス36はパソコン本体とは別体のものとなる。このように、情報管理部32などを有する管理者情報端末31と管理者用の画面表示を行う表示デバイス36とは、物理的に一体のものには限られない。また、例えば、複数人でデータを確認する場合などには、専用の大型画像表示装置を用いたり、プロジェクターによって表示画像をスクリーンや壁面などに拡大投影したりすることも考えられる。
なお、現場監督30のパソコン31では、警告情報を通知した後の作業者10の生体情報や、作業者10からの警告情報の受領確認を受け取ることで、作業者10が熱中症の発症を予防するための対策を行ったか否かを確認することができ、作業者10が熱中症の発症を予防するための対応をとっていない場合には、対象の作業者10に繰り返して警告情報を伝達するなど、作業者10の注意喚起を行うことができる。
なお、上記説明では、作業者10に熱中症を発症するリスクが高くなっていることを報知する警告情報を、クラウドサーバ21のデータ処理部22で生成する例を説明したが、警告情報を現場監督30のパソコン31に設置された情報管理部32で生成することができる。また、データ処理部22と、情報管理部32の双方で警告情報を生成するように設定することもできる。このようにすることで、作業現場を実際に監督している現場監督30のパソコン31から、データ処理部22での判定結果に先んじて警告情報を生成して対称となる作業者10に伝達することで、作業現場の実情に応じて熱中症の発症リスクをより低減することができる場合がある。
クラウドサーバ21のデータ処理部22、または、現場監督30のパソコン31で生成された警告情報は、現場監督30のパソコン31のデータ送信部34から、無線LANなどのローカルネットワークや携帯電話の情報キャリアを含めたネットワークを介して作業者10が所持するスマートフォン12に送信される。警告情報を受け取ったスマートフォン12の警告報知部15は、音声、画面表示、ランプの点灯または点滅、振動などの各種の情報伝達手段を用いて、作業者10に対して、熱中症を発症するリスクが高まっていることを報知する。警告情報を確認した作業者10は、スマートフォン12のタッチパネルまたは操作ボタンなどを通じて警告情報を受け取った旨を報告するとともに、作業を中断して休息をとるなどの対策をとる。
作業者10のスマートフォン12は、作業者10が警告情報を確認して作業を中断したことを監督者30のパソコン31に送信し、監督者30は、作業者10が熱中症の発症を予防する対策をとったことを確認できる。
さらに、本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、現場監督30が把握している作業現場で働く作業者全体についての熱中症発症リスクデータを、作業者10のスマートフォン12に送信して、作業者10が、自分が働いている作業現場での熱中症発症リスクの現状を確認することができる。例えば、自分以外の作業者の熱中症発症リスクが高くなっていることが確認できれば、各作業者自身が熱中症の発症を積極的に予防する対応を採ることが可能となる。また、他に熱中症発症リスクの警告情報を受け取って作業を中断した作業者がいることがわかれば、現場監督30からの自分宛の警告情報により素直に応じることが期待できる。
さらに、作業者10が所有するスマートフォン12で、当該作業者10の現在までの熱中症発症リスクの変化や、データチップ11で取得された自身の生体情報数値、生体情報から計算された消費カロリーなどの関連情報を画面に表示して、作業者10自身が参照することができる。また、本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、作業者10が所有するスマートフォン12の画像表示部17に、体調評価システムによって評価された体調評価結果を表示することができる。このため、画像表示部17は、スマートフォン12を所持する作業者10に対し、熱中症発症リスクの評価結果や、体調評価結果を表示する表示画面と、これらの評価結果情報をわかりやすい形で表示するための画像データ作成部とを備えている。
クラウドサーバ21は、インターネット20を通じて作業者10が所属する会社や事業所40内の管理コンピュータ41にも接続されていて、現場監督30のパソコン31に送信された作業者10の生体情報や、クラウドサーバ21が熱中症の発症リスクを判断するために用いた各種の情報を、リアルタイムで、事業所40の管理コンピュータ41に対して送信する。事業所40の管理コンピュータ41は、自身のデータ受信部42とデータ送信部43とを備えているため、インターネットを介して現場監督30のパソコン31とも接続されていて、現場監督30から作業者10に対して警告情報が正しく伝達されたか、作業者10が熱中症の予防対策をとったか、などの情報を確認し、必要に応じて現場監督30に対して所定の指示を行うことができる。このようにすることで、作業者10が所属する事業所40においても、作業者10の状況や作業現場での対応を確認することができ、作業者10の熱中症発症リスクの回避をバックアップすることができる。
また、図1では明示していないが、クラウドサーバ21、現場監督30のパソコン31、および、事業所40の管理コンピュータ40は、インターネット20で接続されているため、パソコン31や管理コンピュータ40の側からクラウドサーバ21にアクセスすることができ、クラウドサーバ21でのデータ処理内容を制御したり、データ処理部22での判定プログラムを更新したり、クラウドサーバ21から熱中症予防管理に必要な情報を適宜取り出したりすることができる。さらに、併せて搭載されている体調評価システムによって評価された、取得対象者である作業者10の体調評価結果を、現場監督30のパソコン31や事業所40の管理コンピュータ40の画面上に表示して、各作業者の体調評価結果を把握できるようにすることができる。
なお、上記説明においては、作業者が所持する携帯端末としてスマートフォンを例示したが、作業者の携帯端末はスマートフォンには限られず、携帯電話機やタブレット機器、さらには、熱中症リスク管理システムに特化した、情報の送受信が可能な専用の小型端末機器を用いることができる。
また、現場監督が操作する管理者情報端末としては、例示したパソコン、特に図1で図示したデスクトップパソコン以外にも、ノートパソコン、タブレット型パソコン、小型サーバ機器などの、ネットワークを通じた情報の送受信とデータ表示、データ記録などが可能な各種の情報機器を採用することができる。さらに、現場監督30が実務リーダーとして作業者とともに現場で働く場合には、スマートフォンなどの作業者が所持する携帯端末と同じタイプの機器を管理者情報端末として使用することができる。
さらに、上記説明では、現場監督の管理者情報端末から作業者の携帯端末に警告情報を送信する形態を説明したが、警告情報がクラウドサーバのデータ処理部で生成される場合には、クラウドサーバから直接作業者の携帯端末に警告情報を送信するようにシステムを構成することもできる。
なお、本願で開示する体調評価システムによって本実施形態で説明するような建設現場での作業者の熱中症の発症リスクを管理する場合は、管理対象となる作業者の位置が建設現場内に限定される。また、作業期間も一定以上の日数にわたるため、当該建築現場で無線LANを構築することも可能となる。このように、被管理者が一定の範囲内にのみ存在する場合には、独自の無線LANを構築し、それぞれの作業者の生体情報の現場監督の管理者情報端末への送信を、インターネットを介さずにLAN内で行うことができる。この場合には、管理者情報端末から、または、LAN内に設置されたサーバユニットや別のパソコンなどの情報機器からインターネットに接続することで、クラウドサーバ内のデータ処理部で熱中症発症のリスク判定をしたり、気象情報取得部で取得した気象情報を利用したりすることができる。また、熱中症の発症リスクを判定するデータ処理部を建築現場のLANに接続されているサーバユニットやパソコンに設けることができる。
[管理者情報端末の画面]
次に、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムにおいて、現場監督が使用する管理者情報端末の表示画面について説明する。管理者である現場監督が使用する管理者情報端末としてのパソコンのモニタ上には、その現場監督が管理する作業者の熱中症の発症リスクを概観できる画像が表示される。
図4は、管理者である現場監督のパソコンに表示される管理者用画面の例である。
図4に示すように、管理者用画面50は、管理対象となっている複数の作業者の熱中症の発症リスクについて、現在の状況を示す第1の表示領域51と、当日の現時点まで履歴を示す第2の表示領域52に大きく区分されている。
図4に示す例で、管理者用画面50の上側に配置された第1の表示領域51では、所定の基準に基づいてランク分けした熱中症発症リスクランク別の人数を示す第1の図表53と、作業者にかかる肉体的負荷と熱的付加とを軸としたマップ上にそれぞれの作業者の位置を示す第2の図表54と、熱中症発症リスクが高い順に作業者を特定する情報とその状態とを示す第3の図表55とが表示されている。
第1の図表53は、データ処理部22で判定された熱中症の発症リスクを所定の基準値に当てはめて、リスクが高い順に「危険」状態、「注意」すべき状態、「問題なし」の状態での3つの状態にランク分けし、現時点でそれぞれのランクに該当する作業者の数を表示したものである。より具体的には、「危険」、「注意」、「問題なし」と表示された3つの領域が全体として円形となるように形成され、それぞれの領域の中に該当する作業者の人数を表す数字「1」、「4」、「18」が示されている。
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、上述のようにデータ処理部が個々の作業者の熱中症発症リスクを判定して警告報知が行われるが、熱中症の発症リスクが高い作業者が存在することや、その割合について管理者である現場監督が随時把握することによって、例えば、管理する作業者に熱中症の発症リスクが高まっている人数の割合が多い場合には、抜本的な対策を採ることを検討したりすることができる。
なお、図4に示すように、現場監督が優先して注意を払うべき「危険」状態にある作業者人数を示す領域を、他の2つの領域と比べて大きな面積で表示し、さらに、他の領域よりもより上方に配置することで、視覚的に現場監督の大きな注意を引くことができる。また、3つの領域それぞれを、「危険」「注意」「安全」を表す赤色、黄色、緑色に着色して表示すること、さらには、「危険」状態を示す領域の文字を、他の領域の文字よりも、大きく、太く表示することで、より効果的に、現場監督の視覚に訴えることができる。
なお、図4に示した例では、熱中症発症リスクのランクによって分かれた3つの領域の全体が円形となるような図形で表示したが、正方形、長方形、三角形、六角形などの多角形、楕円形、菱形など、なじみ深いいわゆる基本図形を全体形状として、ランク別の作業者人数を表示するようにしても良い。
第2の図表54は、作業者にかかっている肉体的負荷(Workload)と、熱的負荷(Heat stress)とをそれぞれ軸とする2次元のマップを形成し、それぞれの作業者をマップ上に「▼」として表したものである。
熱中症の発症リスクは、当然ながら作業者にかかる熱的負荷の大きさに左右される。また、本実施形態の熱中症リスク管理システムのように、被管理者が建築現場の作業者など、肉体的に大きな負荷がかかる作業をしている場合などでは、肉体的な負荷の大きさも熱中症の発症リスクを左右する要因となる。このため、熱中症の発症リスクを、対象となる被管理者にかかる熱的負荷と肉体的負荷から総合的に把握することが可能であり、これを第2の図表54のように2次元のマップとして示すことで、2つの要因がどのように作用しているかを視覚的に、容易に把握することができる。
管理者である現場監督は、例えば、熱中症発症リスクが高くなっている特定の作業者について、または、自分の管理下にある複数の作業者全員の全体傾向として、熱中症発症リスクの要因として肉体的負荷と熱的負荷のどちらがより大きく作用しているかを視覚的に理解することができる。このため、例えば、熱的負荷が大きくかかっているために熱中症の発症リスクが高くなっている場合には、涼しい場所に移動させたり、換気や冷房によって周辺の環境温度を下げたりすることで、有効に熱中症の発症リスクを低減することができる。一方、肉体的負荷が大きい場合には、とにかく休憩を取らせて肉体的負荷を軽減することが有効な熱中症発症の予防策となる。
なお、作業者にかかる肉体的負荷は、作業者が装着する生体情報取得部によって取得された心拍数の変化や体の動きを示す加速度データから把握することができる。また、作業者にかかる熱的負荷は、作業者が装着する生体情報取得部が取得した作業者の体温(体表温度)や、環境データとして取得された環境温度の数値などから把握することができる。
詳細の説明は省略するが、本実施形態の熱中症リスク管理システムでは、被管理者である作業者の熱中症リスクを、肉体的負荷と熱的負荷との和によって判定できるように、肉体的負荷と熱的負荷の計算式を決定している。このため、同じ大きさの熱中症発症リスクがマップ上の直線として表される。このことを利用して、2次元マップである第2の図表54上に、熱中症発症リスクの高さに応じた領域を形成することができる。図4において示される第2の図表54に表された2本の直線が、「危険」「注意」「問題なし」の境界線となる。この2次元マップ上の境界線によって区分された領域にそれぞれ該当する作業者の人数が、第1の図表53に数字として表示されることとなる。
なお、上述した第1の図表53と同様に、熱中症発症リスクのランクに応じて、それぞれの領域の背景色を変更したり、表示されている「▼」マークの色を変更させたりすることで、管理者に、危険な状態であると判定されている作業者をより強く印象づけて示すことができる。
なお、詳細の説明は省略するが、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、第2の図表54において、それぞれの作業者10を示す「▼」をタッチ、または、マウスでクリックすることなどによって、現場監督30は特定の作業者10を選択することができる。特定の作業種が選択された場合には、当該作業者についての生体情報の詳細データや、当該作業者の熱中症発症リスク評価結果の履歴、体調評価結果などを画面上に表示する機能を備えることで、現場監督30は、管理者端末としてのパソコン31を用いて、必要な情報を、全体を俯瞰する形と個別具体的なデータを詳細に確認する形とを適宜選択して確認することができる。
管理者表示画面50の現在の状況を示す第1の領域51には、熱中症発症リスク評価数値が高い順に作業者の管理用ID番号などのID情報と、それぞれの作業者の状態を示すマークとが表としてリストアップされた第3の図表55が示される。
図4に示すように、第3の図表55では、その時点で、熱中症発症リスクが高くなっている作業者のIDと、その作業者の会社名、および、名前(またはニックネーム)といった作業者を識別するための個人情報が、その時点での熱中症発症リスク評価値の高い順に表示されている。また、それぞれの作業者を識別する内容とともに、その作業者の状態を表すマーク(アイコン)が示されている。
このようにすることで、現場監督30は、管理対象の作業者についての熱中症発症リスクの高さに基づいて序列として把握できるとともに、それぞれの作業者が置かれている異常状態の程度を感覚的に容易に把握することができる。
なお、第3の図表55に、熱中症発症リスクが少なく「問題なし」の状態にある作業者は表示しないことで、第3の図表55の表示の煩雑さを回避することができる。また、作業者が転倒している状態、発症リスクが危険な状態、発症リスクが注意の状態、のように、作業者が置かれている状態が深刻な者である順に一覧表として表示することで、現場監督は、対応すべき作業者の順序を容易に理解することができる。
さらに、作業者の健康上のリスクではないシステム機構上の問題点、例えば、作業者が所持している携帯端末のバッテリが少なくなっている状態であること、当該作業者の携帯端末の通信状態が好ましくないこと、通信できなくなっていることなどを示すマークを設定しておいて、第3の図表55上にその作業者を特定する情報とともに示しても良い。なお、この場合、上述した、作業者の熱中症発症リスク順の表示とは別に、熱中症発症リスクの表示とは間隔を開けた下側部分に表示することで、作業者の体調に問題があるのか、それとも、システム機構上の問題であるのかが、一目でわかるようにすることが好ましい。
なお、第3の図表55全体として煩雑にならず、リスクの高い作業者の特定とその状態の把握が容易に確認できる範囲において、それぞれの作業者の熱中症発症リスク評価値を併記しても良い。
さらに、第3の図表55上表示されている作業者に対して、熱中症発症リスクが高いことを警告した場合には、第3の図表55における当該当作業者の表示部分に関連づけて、例えば、ID番号部分に重ねて、「警告済」等の表示をすることで、「危険」状態の作業者に対して適切な指示を行ったか否かがわかるようにすることができる。
本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムにおける管理者表示画面では、管理者である現場監督が管理する建築現場での熱中症発症リスクの推移を、第2の表示領域52に時系列グラフ56として表示する。
一例として、時系列グラフ56は、横軸に当日の時間を表し、縦軸として、左側に、本実施形態の熱中症リスク管理システムで用いられる熱中症発症リスク数値を、右側に、従来用いられている熱中症発症リスク評価値であるWBGTの評価数値(温度)を、それぞれ表している。
本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、作業者がシャツ内に装着した生体情報取得部であるデータチップで、作業者の体表温度(シャツ内部温度)や心拍数を測定し、外気温などの気象条件を加味して肉体的負荷と熱的負荷とから熱中症の発症リスクを評価する。このため、屋外の、しかも気温条件のみから算出されたWBGTの評価値とは評価結果数値が異なる。しかし、少なくとも温度や湿度といった環境条件に起因する熱中症の発症リスクの増減は、WBGTの評価値が信頼できると考えられることから、当日の各時間帯における熱中症発症リスクの増減傾向は、十分参照できるものと期待される。そこで、本実施形態の熱中症リスク管理システムで算出された熱中症発症リスクの評価値と合わせて、WBGTの評価値を表示することで、当日の熱中症リスクの環境温度に起因する増減傾向として参照することができる。
以上、説明したように、本実施形態の熱中症リスク管理システムでは、管理者表示画面に、当該管理者が管理する被管理者の体調リスクを、現時点の実際のデータと当日の現時点までのデータの推移とを表示されるため、管理者である現場監督は、適宜必要な操作を行ってさらなる詳細情報を得ながら、自己が管理する作業者の熱中症発症リスクを低減する処置を適切に行うことができる。
特に、現時点での熱中症発症リスク情報の表示が、熱中症の発症リスクが高いと評価された作業者の情報を、そのリスクの高さに応じて図表化して表示されるため、管理者である現場監督は、被管理者である作業者の熱中症の発症リスクの状況を視覚的に容易に把握することができ、熱中症の発症リスクを低減するための適切な行動をとることができる。
なお、上記説明した、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムにおける管理者情報端末での管理者表示画面は、あくまでも一例であって、表示される各図表の配置位置やそれぞれの大きさなどは、管理者である現場監督が管理する作業者の熱中症発症リスクを一見して把握できる範囲において、適宜変更することができる。
[作業者情報端末の表示画面]
次に、個々の作業者が情報端末として所持しているスマートフォンでの表示画像の例について説明する。
図5は、作業者が所持する作業者情報端末としてのスマートフォンに表示される、作業者表示画面の例を示す図である。
なお、図5では、スマートフォン32を所持している作業者10自身の体調評価結果が表示されている状態を示している。上述した管理者である現場監督の管理者情報端末の表示画面では、管理者としては管理対象である作業者の熱中症発症リスクの全体的な傾向を把握することが重要であることを考慮して、作業現場における作業者全体の熱中症発症リスクを視覚的に把握しやすい形で表示することが優先されていた。これに対して、個々の作業者は、自身が熱中症を発症するリスクが低い状態では、熱中症発症リスクの評価値を把握することに大きな意味はなく、自身が属する作業現場での他の作業者を含めた熱中症発症リスクの全体傾向を把握することが重要となる場面はさらに少ない。
このため、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、作業者の所持するスマートフォンにおいて、普段は自身の体調評価結果を表示している。そして、熱中症発症リスクが高まっているとの警告や注意喚起を受けた場合、または、自身の熱中症発症リスクの評価値が高くなった際に自動的に、また、画面上に表示される操作ボタンを用いて作業者が熱中症の発症リスク評価結果を確認したい場合に切り替え操作を行うことで、熱中症発症リスクの評価結果について、管理者情報端末で説明した2次元マップ(第2の図表53)上に自身の位置を示した個人用マップや、自身の当日の過去の熱中症発症リスク経時的変化を示す時系列グラフ56の個人版を表示するようにしている。
図5に示すように、例として示す表示画面60は、一般情報を示す第1の表示領域61と、所持する作業者の体調評価結果を表示する第2の表示領域62と、付加的な情報を表示する第3の表示領域63との3つの表示領域で構成されている。
第1の表示領域81の最上部には、現在時刻、バッテリ残量表示、動作モード表示、その他常駐アプリケーションソフトの動作表示など、スマートフォンの一般的な情報が表示される帯状部分がある。
この帯状部分の下には、本実施形態で説明する体調評価システムでの基本情報を表示する表示部分があり、図5に示す例では、取得対象者である作業者の所属会社名、作業者が働く工事現場名などの取得対象者に関連する固有の情報に加えて、天気予報などの関連情報の表示や、過去のアラート履歴を表示するためのボタンや表示画面の設定変更ボタン、強制的にデータを更新するボタンなどの各種の操作ボタンが配置されている。なお、図示は省略するが、上述した熱中症発症リスク管理システムでの情報、例えば、取得対象者の熱中症発症リスク数値を表示する画面に表示内容を切り替える操作ボタンを配することができる。
作業者が携帯するスマートフォンの表示画面60の中央部分には、第2の表示領域62として、体調評価システムによる当該作業者の体調評価結果2次元マップ64が表示されている。
本実施形態にかかる体調評価システムでは、取得対象者の生体情報としてデータチップ11によって検出された心拍数とその心拍数が得られたときの体の動きを示す加速度データとの組み合わせデータを複数用いて、両者の相関関係を求め、取得対象者の安静時の心拍数に相当する基準心拍値と、体の動きの強度に対する取得対象者の心拍数の上昇度合いを示す心拍応答値を用いて体調評価を行う。このため、作業者10が所持するスマートフォン12に、縦軸が基準心拍値、横軸が心拍応答値を示し、マップの中心が基準心拍値(=100)と心拍応答値(=1.0)それぞれの一般的な標準値となっている2次元マップ64を表示して、作業者が自身の体調評価結果を視覚的に容易に把握できるようにしている。
ここで一般的な標準値とは、例えば、日本人の40代男性の全体、などの、年齢、性別などの大きな区分で区切られた多人数のデータの平均値を示す。なお、この多人数のデータの平均値は、いわゆるビッグデータと呼ばれるような、本実施形態で示す体調評価システムの実際の利用者全体の実績値に基づいた実測値や、従来の体調や健康指標に関する各種の方法により取得されたデータを、本実施形態で示す体調評価システムにおける評価値に換算して得られた計算値として得ることができる。
図5に示すように、本実施形態にかかる体調評価システムで作業者10のスマートフォン12に表示される2次元マップ64は、基準心拍値と心拍応答値の標準値からの差を段階的に表現した背景画像を表示して、作業者が、現在の体調が、「平常」「やや注意」「注意」のいずれの状態にあるかを容易に確認することができる。また、図5に示す場合では、基準心拍値、心拍応答値、いずれも標準値より高くなっていることが一目で把握できるので、自身の体調が「やや注意」から「注意」状態の境界部分にあると評価された理由を、一目で把握することができる。
作業者のスマートフォンに体調評価結果を示す表示方法は、図5に示したものに限られず、図示したものとは異なる形態の2次元マップで表したり、基準心拍値と心拍応答値とをそれぞれ1次元のインジケータとして表したり、作業者が体調評価結果を視覚的に容易に把握できると考えられる各種の表示手段を用いることができる。
作業者30が所持するスマートフォン12の表示画面60の下側部分には、第3の表示領域63として、体調評価システムの動作に関する各種の情報、さらには、取得対象者が作業開始前に自身の所属するグループを登録したり、体調評価システムや熱中症発症リスク管理システムにおいて、自身の情報を示す表示から自身が所属するグループ全体の状況を表示する画面へと変更したりする際の操作ボタン、作業開始時、または、作業開始時に操作してシステムでの管理のON/OFFを切り替えるボタンなどが配置されている。
なお、図5に示す、取得対象者である作業者10が所持する携帯端末であるスマートフォン12の表示例はあくまでも例であり、特に、第1の表示領域61と第3の表示領域63の表示内容は、作業者10に対して必要な情報をよりわかりやすく表示することができるように適宜変更される。また、作業者10が、自身の消費カロリーや工事の進行状況などの関連情報を選択して適宜表示されるようにすることができる。また、図5に示した第1の表示領域61の上部の帯状部分の領域以外の各領域の表示内容は、その上下方向における表示順を適宜変更することができることは言うまでもない。
[取得対象者の体調評価システムへの登録]
本実施形態に示す熱中症発症リスク管理システムでは、取得対象者である作業者が、生体情報をシステムのデータ処理部22に送信する情報送信部13としての携帯端末であるスマートフォン12を所持していることを利用して、システムへの作業者10の登録と、生体情報取得部であるデータチップ11により得られた生体情報と作業者10を特定するID情報との結びつけを、スマートフォン12のID情報読取手段14を用いて行っている。また、スマートフォン12の情報送信部13から送信された、生体情報をID情報と関連付けて蓄積する生体情報蓄積部であるデータ記憶部24が、クラウドサーバ21に搭載されている。
図2に示すように、取得対象者10の生体情報を取得する生体情報取得部11、情報送信部13、生体情報蓄積部24、ID情報読取手段14が、生体情報管理システム100を構成し、複数人の取得対象者から得られた生体情報を当該取得対象者を特定するID情報と関連づけられた状態で蓄積して、熱中症発症リスクを表す数値や体調評価のための評価数値の算出を行うデータ処理部22に供給する。
以下、本実施形態で説明する熱中症発症リスク管理システムに含められる、生体情報管理システムにおける、ID情報の取得と生体情報との関連づけについて説明する。
図6は、本実施形態で説明する熱中症発症リスク管理システムを採用する作業現場で作業員が使用するIDカードを示すイメージ図である。
本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムが導入される現場では、作業員や管理者が使用するIDカードとして、会社名、氏名、図示しない所属名などの直接読み取れる当該作業者の情報とともに、本実施形態に示す熱中症管理システム上で当該作業者を特定するID情報を示すID情報平面コードとしてのバーコード71が表示されている。
後述するように、作業者10が所持する作業者携帯端末であるスマートフォン12が備えているID情報読取手段14のバーコード読み取り機能をID情報読取手段として使用して、IDカード70に表示されたバーコード71を読み込むことで、スマートフォン12内の記憶部にそのスマートフォン12を使用する作業者10を特定するID情報が記録される。スマートフォン12の記憶部に作業者10のID情報が記録されていることで、スマートフォン12は、データチップ11により取得された生体情報をデータ処理部22に送信する際に、記憶部内に記録された作業者のID情報を生体情報に付加して送信することができる。
また、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、作業者10が装着して生体情報の取得とスマートフォン12への送信とを行うデータチップ11の送信ユニット11aにも個別の識別情報を付与して、作業者10がスマートフォン12のID情報読取手段14を使用してスマートフォン12に登録する。
図7は、本実施形態で説明する熱中症発症リスク管理システムに用いられるデータチップのデータ送信ユニットの外観を示す図である。
図7では、データ送信ユニット11aのアンダーシャツ18に面する側の表面が示されていて、アンダーシャツ18に縫い込まれた電極部18bに接続する接続部としてのリングホック(留め金)11cの間の部分に、データ送信ユニット11aを識別するために各データ送信ユニット11aに付与された識別情報の表示部分11dと、この識別情報をスマートフォン12が備えているID情報読取手段14で読み取ることを可能とするための識別情報平面コードとしての2次元コード(QRコード(登録商標))11eが表示されている。
本実施形態で示す生体情報管理システム100では、生体情報の取得対象者である作業者のID情報がスマートフォン12の記憶部内に登録されることで、情報送信部13は、ID情報を付加した生体情報のデータ処理部22への送信を開始する。また、生体情報管理システム100において、生体情報取得部であるデータチップ11の識別情報をID情報読取手段14で読み取る構成となっている場合には、取得対象者のID情報と生体情報取得部の識別情報が読み取られた後に、情報送信部13がID情報を付加した生体情報のデータ処理部22への送信を開始する。
生体情報蓄積部であるデータ記録部24は、情報送信部13から送信された生体情報を、付加されたID情報に基づいて管理する。データ記録部24は、ID情報と取得対象者の個人情報とが紐付けて登録されたID情報のリストを予め記憶しておく。データ記録部24は、このID情報リストに基づいて、送られてきた生体情報が誰のものであるかを特定して管理することができる。データ記録部24では、すでに同じID情報に関連付けて記録された過去の生体情報があればそのデータに追加する形で蓄積し、過去のデータがない場合は新たな記録を開始する。
なお、生体情報蓄積部が生体情報を特定する別の方法として、情報送信部13が生体情報の送信を開始する前に、情報送信部を特定する情報(例えば、スマートフォン固有のデバイスIDや特有のアドレス等)と読み取ったID情報との組を、生体情報蓄積部に登録しても良い。こうすることで、情報送信部は生体情報に毎回ID情報を付加して送信しなくてもよく、生体情報蓄積部は送信元のデバイスを特定することで取得対象者のID情報を確認できる。
以下、作業者10のID情報と、データ送信ユニット11aの識別情報とを登録する手順を説明する。
図8は、IDカードに表示されたバーコードを読み込む際のスマートフォンの表示画面を示す。
図9は、IDカードに表示されたバーコードが読み込まれてID情報が登録された状態でのスマートフォンの表示画面を示す。
図10は、データ送信ユニットに表示された2次元コードを読み込んだ状態のスマートフォンの表示画面を示す。
まず、作業者10は、スマートフォン12を起動して、アプリケーションソフトなどとして導入されている平面コードの読取り機能をONにして、ID情報読取手段16を動作させる。ID情報読取手段16が動作を開始すると、図8に示すように、スマートフォン12の画面80の表示窓部81にカメラでの撮像画像が表示される。
図8の段階では、まだバーコード71を読み取れていないため、表示窓部81の下部83にはバーコードの読み取りを行うように指示する文章が表示される。
スマートフォン12の画面80の下側には、作業者10のID情報を示すシステムIDの表示欄84、データチップ11の識別情報を示すセンサIDの表示欄85があるが、図8の状態ではいずれも登録前であるために、2つの登録欄はいずれも空欄となっている。
図9に示すように、スマートフォン12の表示窓部81に表示される読取りバー82をIDカード70のバーコード71に重ねると、バーコード71が読み取られ、システムID表示欄84に、読み取られた作業者10のシステム上の管理番号が表示される。なお、本実施形態で示したIDカード70は、透明のケースに入れることで各作業者が作業中に装着する名札としても利用されるものである。
図9に示す状態となると、IDカード70の所有者である作業者10のID情報が熱中症発症リスク管理システムに登録されるとともに、IDカード70のバーコード71の読み込みに使用したスマートフォン12が、当該作業者10が所持して情報送信部13として使用する携帯情報端末であると認識される。
また、表示窓部81の下部83には、引き続いての登録作業である、生体情報取得部の識別情報を示す2次元コードの読み取りを行うように指示する文章が表示される。
続いて、図10に示すように、スマートフォンのID情報読取手段16を使用して、データチップ11のデータ送信ユニット11aの二次元コード11eを読み取る。表示窓部81にデータ送信ユニット11aの識別情報の表示部分11dが写るようにすると、2次元コード11eが読み取られて、データ送信ユニット11aの識別情報がセンサID表示欄85に表示されて登録されたことが確認できる。
この手順によってスマートフォン12とデータ送信ユニット11aとが、名札70の所持者である作業者10と関連づけられたことになる。
表示窓部81の下部83に読み取り完了を知らせる表示がされるとともに、スマートフォン12の画面の下段部分86に作業開始のボタンが表示されるようになり、作業者10は、このボタンを押した後にデータ送信ユニット12aを、アンダーシャツ18の電極部11bと接続し、作業を開始する。このようにして、作業者10は、生体情報管理システムの管理対象者となり、熱中症発症リスク管理の対象者となる。
なお、スマートフォン12の画面の下段部分86には、登録画面を閉じるための操作ボタンと、登録をやり直す際の再スキャンを行うための操作ボタンが表示されるため、作業者10は必要に応じてこれらの操作を行うことができる。
本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、上述したように、取得対象者である作業者10と、生体情報検出手段であるデータチップ11、さらに、作業者10が所持して情報送信部13や警告報知部15として機能する携帯端末12を、携帯端末12としてのスマートフォン12が有している平面コード読取り部の機能を利用したID情報読取手段14によって関連づけて登録している。そして、この登録作業が終了しないと、データ送信ユニット12aを装着してもデータ処理部22に処理対象のデータを送る生体情報蓄積部であるデータ記録部24への生体情報データの送信が行われない。この結果、作業者10自身によって、自分のID情報と、使用する携帯機器と生体情報取得部の識別情報とを関連づけた登録が確実に行われることとなり、生体情報の関連づけの誤りによって管理システムが正しく動作しないという事態を回避することができる。
また、データチップ11のデータ送信ユニット11aと携帯端末としてのスマートフォン12と作業者10との関連づけが、平面コードの読取りという簡易な手法によって行われるため、作業現場では、作業開始時にこれら各情報の関連づけを行うことができる。その結果、1日の作業の終了時にデータ送信ユニット12aとスマートフォン12とを都度回収して作業者と切り離して管理することができる。このため、特に作業者10の入れ替わりが激しい建設現場などでは、システム機器の管理と作業者10のシステムへの登録管理との両面で好適である。
本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムに含まれる生体情報管理システムでは、作業者10の名札70に表示されたバーコード71を読み込むことで当該作業者を特定するID情報をシステム上に登録することができる。このことを利用して、複数の作業者10をグループとして管理する現場監督30が、管理対象の作業者10を登録することができる。
図11は、自身も作業者として作業を行う現場監督の管理者情報端末としてのスマートフォンの表示画面を示している。
管理者である現場監督30は、自身が所持するスマートフォンを起動して、アプリケーションソフトなどとして導入されている平面コードを読み取る機能をONにし、ID情報読取手段を動作させる。図11に示すように、スマートフォンの画面90の表示窓部91にカメラでの撮像対象が表示される。
スマートフォンの表示窓部91に表示される読取りバー92を、管理対象のグループに所属する作業者10の名札70のバーコード71に重ねると、バーコード71が読み取られ、表示窓部91の下側に表示される登録者一覧情報欄93に作業者10のIDが表示されて登録される。図10では、作業者の登録欄が93aから93dと4つ表示されて、4人の作業者がグループに登録されていることが確認できる。現場監督30が、対象となる作業者10の名札70のバーコード71をすべて読み込むことで、作業者の登録が完了し、作業者登録欄93の下部に表示されている登録ボタンをタッチすることで、グループ登録が終了する。
なお、作業者の登録欄93にはそれぞれの作業者をグループ登録の対象から削除する削除ボタンが表示されている。このため、いったん登録した作業者10が、途中で作業現場を離れる場合などには、適宜その作業者10をグループ登録から除外することができる。また、1日の作業が終了した場合には、グループに登録された作業者を一括で削除し、翌日の作業が始まる前に、作業者のグループへの登録作業を繰り返す。
このように、管理者である現場監督30は、自分の管理対象である作業者10それぞれの名札70に表示されたバーコード71をスキャンすることで、容易に、かつ、確実に作業者10をグループに登録することができる。
なお、作業者10の名札のバーコードを読み込む際に、現場監督のスマートフォンがクラウドサーバ上のデータ処理部22との通信を行って、当該作業者10がシステムに登録されているか否かを確認し、未登録の場合にはその旨のエラー表示を行うようにすることで、現場監督30から作業者10に対して、データ登録を正しく行うように指示することができる。
以上説明したように、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、登録対象者である作業者のID情報を平面コードとして別途付与し、この平面コードを読み込むことで、評価対象の作業者の登録を容易に、かつ、確実に行うことができる。
なお、上記実施形態では、ID情報を表す平面コードをそれぞれの作業者に付与する手段として、作業者が名札として使用するIDカードを利用して、IDカードに示されたバーコードを用いて作業者を特定する方法を用いたものを例示した。しかし、平面コードの付与方法は名札として用いられるIDカードに表示するものには限られない。例えば、作業服にエンブレムとしてID情報を示す平面コードを縫い付けたり、ヘルメットに平面コードを印刷したりするなど、ID情報読取手段で読み取り可能であり、各作業者に熱中症管理システムとは切り離された方法で個別に付与できる各種の方法を採用して平面コードを付与するすることができる。もちろん、IDカードを用いない印刷物としての名札に、ID情報を示す平面コードを印刷する方法も採用できる。
また、上記実施形態では、生体情報取得部であるデータチップのデータ送信ユニットに平面コードを付与して、携帯端末のID情報読取手段で読み取って作業者のID情報と関連づけられた携帯端末と関連づける例を示したが、生体情報取得部と携帯端末との関連づけは、相互間の通信における認証作業によって行うこともできる。
さらに、上記例では、平面コードの読取りをスマートフォンの平面コード読取り機能を利用して行う例を示したが、作業者の所持する携帯端末や、管理者である現場監督の管理者情報端末がスマートフォンではない場合には、専用の平面コード読取りスキャナを備えた読取機器と携帯端末や管理者情報端末とを接続して、読取機器で読み取られた平面コードの情報をデータとして転送する方法が採用できる。
なお、上記実施形態では、作業者を特定するID情報を1次元のバーコードで、生体情報取得部の識別情報を2次元コードで表す例を示したが、これらの形態に限られるものではなく、両方の情報をバーコードまたは2次元コードで表示してもよく、さらに、他の表示形態を用いた平面コードを用いることができる。
さらに、平面コードに含まれる情報は、被管理者のID情報、または、生体情報取得部の識別情報そのものである必要はない。データ処理部において、詳細なID情報や識別情報と簡易な平面コードとが対応づけられたデータテーブルを用いてデータ内容の変換が可能となっている場合には、作業者に付与する平面コードや生体情報取得部に記載する平面コードを簡易な形態のものとすることができる。
また、作業者のID情報の読取り方法は、上記した平面コードの読み取りによって行うものに限られず、ID情報読取手段として生体認証手段を用いて、作業者の指紋や虹彩などのいわゆる各人に固有の生体認証情報を取得し、あらかじめシステム上に登録してある生体認証データを利用して、携帯端末としてのスマートフォン12を使用する作業者を特定するID情報を登録することもできる。
本願で開示する生体情報管理システムは、上述したように、生体情報を取得する取得対象者を特定するID情報がID情報読取手段で読み取られることによって、情報送信部から、生体情報を使用して各種の体調評価を行うデータ処理部に生体情報を供給する生体情報蓄積部への送信が開始される。このため、取得対象者を特定するID情報の読取りとシステムへの登録が、簡易な方法を用いながら確実に行われる。また、生体情報が取得される取得対象者のID情報が登録されていない状態では、生体情報を用いた体調評価の処理が開始されないため、取得された生体情報と取得対象者のID情報との関連づけが誤った状態で、体調評価が行われる事態を確実に防止できる。
また、本願で開示する体調評価システムは、建築現場などにおける熱中症発症リスク管理システムとして、好適に使用することができるが、取得対象者の生体情報をインターネット上のサーバに送信して、体調不良のリスク管理を行う形態であるため、作業者が広範囲に散らばっている場合や、作業者が移動する場合でも、良好な体調評価やリスク管理を行うことができる。このため、例えば運送業におけるトラック運転手の熱中症の発症をはじめとする体調リスクを管理する場合にも、好適に使用することができる。
さらに、本願で開示する体調評価システムは、取得対象者の生体情報を取得して、当該取得対象者の体調を指標として評価することができるため、熱中症発症リスク管理システム以外にも、スポーツ選手のトレーニング時の体調管理や、高齢者施設での体調管理などにも適用させることができる。
なお、上記実施形態で説明した熱中症管理システムでは、システム内で管理者と被管理者との位置づけが明確になされているが、体調を評価することを主目的とした体調評価システムでは管理者が存在しない取得対象者のみを対象とするシステムとしても使用することができる。