本開示のワーク移動装置の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1はワーク移動装置100の概略説明図である。図2はロボット10の概略説明図である。図3はワーク移動装置100における電気的な接続関係を表すブロック図である。ワーク移動装置100の左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1に示した通りとする。また、ロボット10については全方位に可動するため固定される特定の方向はないが、説明の便宜のため、図2に示した左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)を用いて説明する。
ワーク移動装置100は、作業対象の物品(ここではワークW)に対して移動を含む所定の作業を行う装置として構成されている。ワーク移動装置100は、ロボット10と、基台101と、ワーク搬送装置102と、パレット搬送装置103と、圧力供給源106と、装置全体を制御する制御部90(図3参照)と、を備えている。ロボット10には、カメラ40及びメカチャック50が取り付けられている。基台101は、ロボット10,ワーク搬送装置102及びパレット搬送装置103を配設固定する。ワーク搬送装置102及びパレット搬送装置103は、それぞれベルトコンベアとして構成されている。ワーク搬送装置102は、図示しないワーク供給部又は作業者によって装置前方に供給された複数のワークWを、後方のパレット搬送装置103付近まで搬送する。パレット搬送装置103は、パレット105を右方向に搬送して、パレット105の搬入及び搬出を行う。圧力供給源106は、ロボット10に取り付けられたツール(ここではメカチャック50)に圧力を供給する。
ロボット10は、ワークWに対して移動を含む所定の作業を行う産業用ロボットとして構成されている。ワークWは、特に限定されないが、例えば、機械部品、電気部品、電子部品、化学部品など各種の部品のほか、食品、バイオ、生物関連の物品などが挙げられる。本実施形態では、ロボット10は、チップ状の電子部品などとして構成された複数のワークWをワーク搬送装置102上から採取して移動させ、パレット105上の複数の凹部に載置する処理を行う。
ロボット10は、垂直多関節ロボットとして構成された多軸ロボットであり、アーム部20と、第3支持部23と、台座部24と、先端部30と、を備えている。アーム部20は、複数のアームを有しており、本実施形態では第1,第2アーム21,22を有している。また、ロボット10は、第1~第5回転機構26a~26eを備えている(図2,3参照)。第1~第5回転機構26a~26eは、それぞれ、回転軸及び歯車機構などを有している。第1~第5回転機構26a~26eの各々は、ロボット10が有する図示しないモータによって回転する。また、ロボット10は、第1~第5回転機構26a~26eの各々に対応するモータの回転位置を検出するための図示しない複数のエンコーダを備えている。図2には、第1~第5回転機構26a~26eの各々の回転方向を太線矢印で示した。
図2に示すように、第1アーム21は、端部が第1回転機構26aを介して先端部30に接続されている。第1回転機構26aは、先端部30を第1アーム21に対して回動させる。第1アーム21は、先端部30とは反対側の端部が第2回転機構26bを介して第2アーム22に接続されている。第2回転機構26bは、第1アーム21を第2アーム22に対して回動させる。第2アーム22は、第1アーム21とは反対側の端部が第3回転機構26cを介して第3支持部23に接続されている。第3回転機構26cは、第2アーム22を第3支持部23に対して回動させる。第3支持部23は、第4回転機構26dを介して台座部24に接続されて、台座部24に支持されている。第4回転機構26dは、台座部24に対して第3支持部23を水平旋回させる。
先端部30は、ワークWに対して作業を行う種々のツール(エンドエフェクタともいう)を下端に取り付け可能な装着部32を備えている。装着部32は、先端部30本体の下面に配設されている。本実施形態では、装着部32の下端にはツールとしてメカチャック50が取り付けられている。第5回転機構26eは、先端部30内に配設されており、装着部32を上下方向に沿った軸を中心として回転(自転)させる。これにより、装着部32と共にメカチャック50も回転(自転)する。装着部32の下端付近の側面には、右方向に突出する圧力供給ノズル33が配設されている。圧力供給ノズル33は、メカチャック50の圧力入口部材59と配管34で接続されている。配管34は、例えば樹脂などの可撓性のある材質からなる。圧力供給源106からの圧力は、図示しない配管や先端部30の内部に設けられた孔などを介して圧力供給ノズル33まで到達し、圧力供給ノズル33から配管34を介してメカチャック50に供給される。メカチャック50は、圧力供給源106からの圧力を利用してワークWの把持及び把持解除を行う。
カメラ40は、先端部30の下面に取り付けられており、装着部32の前方に配置されている。カメラ40は、先端部30の移動によりメカチャック50と共に移動する。カメラ40は、照射部41と、撮像部42と、を備える。照射部41は、撮像部42の外周に円状に配設された照明であり、下方の撮像対象物に対して光を照射する。撮像部42は、画像を撮像可能なユニットであり、図2の下方を撮像することで対象物を撮像する。撮像部42は、レンズなどの光学系と、受光により電荷を発生させ発生した電荷を出力する撮像素子とを備えている。カメラ40は、撮像部42から出力された電荷に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを制御部90へ出力する。
制御部90は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、ワーク移動装置100全体を制御する。制御部90は、上述したモータに駆動信号を出力して第1~第5回転機構26a~26eを駆動させたり、上述したエンコーダからの信号を入力したりして、先端部30の位置及びメカチャック50の向きを制御する。制御部90は、カメラ40,ワーク搬送装置102,及びパレット搬送装置103に制御信号を出力したり、カメラ40からの画像データを入力したりする。制御部90は、圧力供給源106に制御信号を出力して圧力供給源106が供給する圧力(ここでは正圧とする)の有無を制御することにより、メカチャック50の把持及び把持解除を制御する。
メカチャック50について詳細に説明する。図4,5はメカチャック50の斜視図である。図6はメカチャック50の駆動機構70の上面図である。図7はメカチャック50の把持部60及び駆動機構70の正面図である。図8は図4のA-A断面図であり、メカチャック50を水平方向(前後左右方向)に沿って切断した断面を示している。図6,7では、本体部51を仮想的に透過してメカチャック50の内部の様子を示している。また、図4~6,7A,8Aはメカチャック50の第1状態を示し、図7B及び図8Bはメカチャック50の第2状態を示している。本実施形態では、第1状態はメカチャック50がワークWを把持しない(把持解除)状態であり、第2状態はメカチャック50がワークWを把持する状態である。メカチャック50についてもロボット10と同様に、図2に示した方向を用いて図4~8を説明する。
メカチャック50は、本体部51と、把持部60(図5参照)と、駆動機構70(図6参照)と、を備えている。本体部51は、略直方体の金属製部材であり、メカチャック50の筐体の役割を果たす。本体部51は、直方体の3辺の長さのうち厚さ方向(ここでは上下方向)の長さが最も小さくなっている。駆動機構70は本体部51の内部に配設されている。
本体部51は、メカチャック50を装着部32に取り付けるための取付部52と、外部から圧力が供給される圧力供給路58と、を備えている(図4参照)。本体部51の上部には、ガイド孔54と、第1,第2上側孔55a,55bと、が形成されている。本体部には、軸方向が左右方向と平行な貫通孔である第1,第2横孔56a,56bが形成されている(図4,8参照)。本体部51の下部には、第1,第2下側孔53a,53bが形成されている(図5参照)。
取付部52は、本体部51の上面に設けられ、複数(ここでは4個)のボルト孔52aを備えている。メカチャック50は、このボルト孔52aと図示しないボルトとを用いて、装着部32の下面に取り付けられる。ガイド孔54は、長手方向が左右方向に沿った角丸の長方形状の孔である。ガイド孔54内には把持部60の一部である第1,第2ガイド部材64a,64bが左右方向に移動可能に配置されている。ガイド孔54は上方を向いた段差面を有しており、本体部51はこの段差面で第1,第2ガイド部材64a,64bを支持する。
圧力供給路58は、外部(ここでは圧力供給源106)から供給される圧力を少なくとも駆動機構70の第1ピストン71aに作用させて第1状態から第2状態への切り替えを行うための圧力の経路である。圧力供給路58は、本体部51に対して厚さ方向に垂直な方向(ここでは前方)に突出して開口している圧力入口部材59を有している。圧力入口部材59は、配管34を取り付けるためのノズルであり、外部から供給される圧力の入口となる。圧力入口部材59は第1横孔56a内の空間57aに開口しており(図8参照)、圧力入口部材59からの圧力は空間57a内に供給されて第1ピストン71aに作用する。そのため、空間57aも圧力供給路58の一部を構成している。
把持部60は、第1,第2把持部材61a,61bと、第1,第2ベース部材62a,62bと、ボルト63a,63bと、第1,第2ガイド部材64a,64bと、を備えている(図5~7参照)。第1,第2把持部材61a,61bは、左右方向に沿って並べられた一対の部材であり、本実施形態では爪状の部材(把持爪)である。第1,第2把持部材61a,61bは、互いに左右方向に沿って接近することでワークWを本体部51の下方で把持する。第1,第2把持部材61a,61bは、本体部51から各々の少なくとも一部が本体部の厚さ方向(ここでは下方向)に突出している。本実施形態では、第1,第2把持部材61a,61bは、全体が本体部51から下方向に突出している、すなわち全体が本体部51の外側に配置されている。ここで、上述した本体部51の厚さ方向は、第1,第2把持部材61a,61bの本体部51からの突出方向(ここでは下方向)を基準として、この突出方向に平行な方向(ここでは上下方向)として定義されるものとする。第1,第2ベース部材62a,62bは、それぞれ、大きさの異なる直方体を上下に重ねた形状をしているブロック状の部材である(図5参照)。第1ベース部材62aは、本体部51の第1下側孔53a内に配置されており、第1下側孔53a内で左右に移動可能である。第2ベース部材62bは、本体部51の第2下側孔53b内に配置されており、第2下側孔53b内で左右に移動可能である。第1ベース部材62aの下面には、2本のボルト63aを介して第1把持部材61aが固定されている。第2ベース部材62bの下面には、2本のボルト63bを介して第2把持部材61bが固定されている。第1,第2ガイド部材64a,64bは、第1,第2把持部材61a,61bの左右方向の移動を案内する部材である。第1,第2ガイド部材64a,64bは、軸状の雄ねじ部と雄ねじ部の上部に一体形成された円板状の頭部とを有している。第1ガイド部材64aは、雄ねじ部が第1ベース部材62aの上部に形成された雌ねじ部に挿入されて雌ねじ部と螺合することで、第1ベース部材62aの上方に取り付けられている。第2ガイド部材64bについても同様にして第2ベース部材62bの上方に取り付けられている。第1,第2ガイド部材64a,64bの頭部は上述したようにガイド孔54の段差面に支持されており、ガイド孔54に沿って左右に移動可能である。これにより、第1把持部材61a,第1ベース部材62a,及び第1ガイド部材64aは一体的に左右に移動し、第2把持部材61b,第2ベース部材62b,及び第2ガイド部材64bは一体的に左右に移動する。
駆動機構70は、第1,第2把持部材61a,61bを左右に移動させて第1状態と第2状態との切り替えを行うための機構である。駆動機構70は、第1,第2ピストン71a,71bと、ボルト77a,77bと、弾性部材79と、連動機構80と、を備えている(図6参照)。
第1,第2ピストン71a,71bは、軸方向が互いに平行になり、且つ、軸方向が本体部51の厚さ方向に垂直(=前後左右方向と平行)になるように配置されている。本実施形態では、第1,第2ピストン71a,71bの軸方向はいずれも左右方向に平行である。第1,第2ピストン71a,71bは、それぞれ本体部51の第1,第2横孔56a,56b内に配置されている(図8参照)。第1,第2ピストン71a,71bは、本体部51の厚さ方向に垂直且つ軸方向に垂直な方向である前後方向に並べて配置されている。第1,第2ピストン71a,71bは、本体部51内での上下方向の位置(配置高さ)が同じになっている(図7参照)。
第1ピストン71aは、第1横孔56a内に配置されており、軸方向に沿った第1方向(ここでは右方向)及び第1方向とは反対側の第2方向(ここでは左方向)に移動可能である。第1横孔56aは第1ピストン71aのシリンダーとしての役割を果たす。第1ピストン71aは、円板状の第1フランジ部72aと、円柱状の第1軸部73aと、薄肉部74a,75aと、を有している。第1フランジ部72aは、第1ピストン71aのうち第1軸部73aから径方向に突出した部分である。本体部51の第1横孔56aには段差部56a1が形成されており(図8参照)、この段差部56a1と第1フランジ部72aの右側の面とが接触することで、第1ピストン71aの右方向への移動範囲が制限されている。また、第1横孔56aには段差部56a1よりも右側に段差部56a2が形成されている。第1横孔56aのうち、段差部56a2から第1フランジ部72aの右面までの部分が、上述した圧力供給路58の一部である空間57aである。この空間57aに正圧が供給されると、第1フランジ部72aの右面に正圧が作用し、第1ピストン71aは左方向に押圧されて移動する。
薄肉部74a,75aは、第1軸部73aの一部であり、それぞれ、上下の一部が面取り(いわゆる2面取り)されることで第1軸部73aの他の部分よりも上下方向の厚さが薄くなっている(図6,7参照)。薄肉部74a,75aは、それぞれ、上面及び下面が平面になっている。薄肉部74aは、第1フランジ部72aよりも右側に位置しており、下面には第1ベース部材62aが取り付けられている。薄肉部74aと第1ベース部材62aとは、薄肉部74aの上面側から挿入された2本のボルト77aを介して接続固定されている。そのため、第1ピストン71aの左右方向の移動に伴って、第1ベース部材62a及び第1把持部材61aが第1ピストン71aと一体的に左右方向に移動する。ボルト77aは、本体部51の第1上側孔55a内に露出している(図4参照)。薄肉部75aは、第1軸部73aの左端部に位置しており、上面に連動機構80のリンク部材81の前端側が取り付けられている。
第2ピストン71bは、第2横孔56b内に配置されており、第1ピストン71aと同様に軸方向に沿った第1,第2方向(ここでは左右方向)に移動可能である。第2横孔56bは第2ピストン71bのシリンダーとしての役割を果たす。第2ピストン71bは、円板状の第2フランジ部72bと、円柱状の第2軸部73bと、薄肉部75bと、逃がし孔76と、を有している。第2フランジ部72bは、第2ピストン71bのうち第2軸部73bから径方向に突出した部分である。本体部51の第2横孔56bには段差部56b1が形成されており(図8参照)、この段差部56b1と第2フランジ部72bの右側の面とが接触することで、第2ピストン71bの右方向への移動範囲が制限されている。また、第2横孔56bには段差部56b1よりも右側に段差部56b2が形成されている。第2横孔56bのうち段差部56b2と第2フランジ部72bの右面との間の空間57bには、弾性部材79が配置されている。逃がし孔76は、第2軸部73bの右端から軸方向に沿って形成された穴と、この穴に連通し第2軸部73bの径方向外側に向かって形成された貫通孔とを有している。逃がし孔76は、空間57bと本体部51の外部とを連通させる孔であり、空間57b内を外部の気圧(通常は大気圧)と同じ気圧に保っている。これにより、逃がし孔76は、第2フランジ部72bが左右に移動する際に、空間57b内が外部の気圧と異なる気圧に変化するのを抑制して、第2フランジ部72bが滑らかに移動できるようにしている。
薄肉部75bは、第2軸部73bの一部であり、薄肉部75aと同様に上下の一部が面取りされることで第2軸部73bの他の部分よりも上下方向の厚さが薄くなっている(図6,7参照)。薄肉部75bは、上面及び下面が平面になっている。薄肉部75bは、第2軸部73bの左端部に位置している。薄肉部75bの下面には、第2ベース部材62bが取り付けられている。薄肉部74bと第2ベース部材62bとは、薄肉部74bの上面側から挿入された2本のボルト77bを介して接続固定されている。そのため、第2ピストン71bの左右方向の移動に伴って、第2ベース部材62b及び第2把持部材61bが第2ピストン71bと一体的に左右方向に移動する。ボルト77bは、本体部51の第2上側孔55b内に露出している(図4参照)。薄肉部75bの上面のうちボルト77bよりも左側には、連動機構80のリンク部材81の後端側が取り付けられている。
弾性部材79は、上述したように第2横孔56bの段差部56b2と第2フランジ部72bの右面との間に配置されている。弾性部材79は、本実施形態では圧縮コイルばねであり、内側に第2軸部73bが挿通されている。弾性部材79は、弾性力により、段差部56b2と第2フランジ部72bとが左右に離間する方向に両部材を押圧する。この弾性力により、弾性部材79は、第2状態から第1状態に切り替える方向(本実施形態では左方向)に第2ピストン71bを付勢する。
連動機構80は、第1,第2ピストン71a,71bが軸方向に沿って互いに反対方向に移動するよう両ピストンの移動を連動させる機構である。連動機構80は、リンク部材81と、支持部材83と、第1,第2取付部材84a,84bと、を備えている(図6,8参照)。リンク部材81は、平板状の長尺な形状をした部材である。リンク部材81は、前端側が第1取付部材84aを介して第1ピストン71aの左端側と接続されており、後端側が第2取付部材84bを介して第2ピストン71bの左端側と接続されている。これにより、リンク部材81は第1ピストン71aと第2ピストン71bとを接続している。第1取付部材84aは、第1ピストン71aに対するリンク部材81の回動(第1取付部材84aの軸を中心とした水平旋回)を許容しつつ両部材を接続している。第1取付部材84aは、例えば、リンク部材81に形成された長孔及び第1ピストン71aの薄肉部75aに形成された孔を上下に貫通する軸部と、軸部の上部に軸部と一体的に形成された頭部と、軸部の下部に設けられて軸部の抜けを防止するE型止め輪などの抜け防止部材と、を有している。第2取付部材84bは、第1取付部材84aと同様の構成をしており、第2ピストン71bに対するリンク部材81の回動を許容しつつ両部材を接続している。支持部材83は、リンク部材81のうち第1,第2ピストン71a,71bとの接続部分(ここでは第1,第2取付部材84a,84bが存在する部分)の間に配置されており、リンク部材81を回動可能に支持している。支持部材83は、本体部51に対するリンク部材81の回動を許容しつつ両部材を接続している。支持部材83は、第1,第2取付部材84a,84bと同様に軸部と頭部と抜け防止部材とを備えており、軸部がリンク部材81を上下に貫通している。リンク部材81は、支持部材83により、第1,第2ピストン71a,71bとの接続部分の中間位置で本体部51に支持されている。そのため、第1ピストン71aが左方向に移動すると、第1取付部材84aを介してリンク部材81の前端部が左方向に移動して、リンク部材81は上面視で右回りに回転する。これにより、リンク部材81の後端部は右方向に移動して、第2取付部材84bを介して第2ピストン71bを右方向に移動させる。このように、連動機構80は、第1,第2ピストン71a,71bのうち一方のピストンが左右方向の一方に移動すると、これに連動して他方のピストンを反対方向に移動させる。
リンク部材81は、第1,第2ピストン71a,71bに対して厚さ方向にはみ出さないように配置されていることが好ましい。図7Aには、第1,第2ピストン71a,71bの少なくとも一方が存在する厚さ方向(ここでは上下方向)の範囲を領域Rとして示した。本実施形態では、領域Rの上下端は、第1,第2フランジ部72a,72bの上下端と同じ位置になっている。本実施形態では、図7Aに示すように、リンク部材81がこの領域Rからはみ出さないような厚さ及び配置がなされている。リンク部材81は薄肉部75a,75bに接続されているため、領域Rからはみ出さないように配置しやすくなっている。本実施形態では、支持部材83及び第1,第2取付部材84a,84bは上方向にわずかに領域Rからはみ出しているが、これらについても領域Rからはみ出さないようにしてもよい。すなわち、連動機構80全体が領域Rからはみ出さないようにしてもよい。
こうして構成されたメカチャック50の動作について説明する。メカチャック50が第1状態である時(図7A,8A)に、外部から圧力供給路58に正圧が供給されると、この正圧が空間57aから第1ピストン71aの第1フランジ部72aに作用する。そして、この正圧により第1ピストン71aが第2方向(ここでは左方向)に移動する。このとき、連動機構80によって第2ピストン71bが第1ピストン71aとは反対の第1方向(ここでは右方向)に移動する。第2ピストン71bが右方向に移動するにつれて弾性部材79は圧縮されていく。そして、第1,第2ピストン71a,71bの移動が停止して、第1状態から第2状態(図7B,8B)に切り替わる。第2状態は、第1状態と比べて第1ピストン71aが第2方向に移動し第2ピストン71bが第1方向に移動した状態である。第2状態に切り替えるための外部からの正圧の供給がなくなると、弾性部材79の弾性力によって第2ピストン71bが第2方向(ここでは左方向)に移動する。このとき、連動機構80によって第1ピストン71aが第2ピストン71bとは反対の第1方向(ここでは右方向)に移動する。第1ピストン71aの第1フランジ部72aが段差部56a1に接触すると第1,第2ピストン71a,71bの移動が停止して、第2状態から第1状態(図7A,8A)に切り替わる。第1,第2ピストン71a,71bの移動に伴って第1,第2把持部材61a,61bが左右方向に移動するため、第1,第2把持部材61a,61bは第1状態では離間状態(図7A)となり第2状態では接近状態(図7B)となる。そのため、メカチャック50は、第2状態でワークWを把持し、第1状態でワークWを把持解除することができる。
ここで、図7,8はワークWがない状態でのメカチャック50を図示している。そのため、図8Bでは第2ピストン71bの第2フランジ部72bが段差部56b1に接触することで第1,第2ピストン71a,71bの移動が停止して第2状態になっている。一方、メカチャック50がワークWを把持する場合には、第2フランジ部72bが段差部56b1に接触する前に第1,第2把持部材61a,61bがワークWを把持することで第1,第2ピストン71a,71bの移動が停止して第2状態となる。
次に、こうして構成された本実施形態のワーク移動装置100の動作、特に、ワークWをワーク搬送装置102上から採取して移動しパレット105上の凹部に載置する移載処理について説明する。この移載処理では、制御部90は、まず、ワーク搬送装置102を制御してワークWを後方に搬送すると共に、パレット搬送装置103を制御してパレット105をロボット10付近まで搬送する。次に、制御部90は、ロボット10の第1~第4回転機構26a~26dを制御して先端部30をワーク搬送装置102の上方に移動させ、カメラ40を制御して得られた画像データに基づいてワーク搬送装置102上のワークWの位置や向きを検出する。そして、制御部90は、検出したワークWの中から採取対象のワークWを決定して、第5回転機構26eによるメカチャック50の回転を適宜行いながら先端部30を移動させて、第1状態のままメカチャック50の第1,第2把持部材61a,61bの間に採取対象のワークWが位置するようにする。その後、制御部90は圧力供給源106を制御してメカチャック50に正圧を供給してメカチャック50を第1状態から第2状態に切り替える。これにより、第1,第2把持部材61a,61bは接近状態となってワークWを把持する。次に、制御部90は、メカチャック50を第2状態に保ったまま先端部30を移動させてパレット105上に移動させ、カメラ40を制御して得られた画像データに基づいてパレット105上の凹部の位置を検出する。そして、制御部90は、検出した凹部の中からワークWを載置する凹部を決定して、第5回転機構26eによるメカチャック50の回転を適宜行いながら先端部30を移動させて、メカチャック50を第2状態に保ったまま凹部にワークWを移動させる。その後、制御部90は、圧力供給源106を制御してメカチャック50への正圧の供給を停止する。これにより圧力供給路58は例えば大気開放されて(常圧が供給されて)、メカチャック50は第2状態から第1状態に切り替わる。これにより、第1,第2把持部材61a,61bは離間状態となってワークWを把持解除し、ワークWが凹部に載置される。制御部90はこのような移載処理を繰り返して、複数のワークWをパレット105に載置していく。
以上詳述した本実施形態のメカチャック50は、第1,第2ピストン71a,71bの移動方向すなわち軸方向は左右方向であり、この軸方向は、本体部51の厚さ方向すなわち第1,第2把持部材61a,61bの突出方向である上下方向に対して垂直になっている。そのため、第1,第2ピストン71a,71bの移動距離の長さがメカチャック50の厚さにほとんど影響しない。したがって、例えば第1,第2ピストン71a,71bの移動方向が厚さ方向に沿っている場合と比較して、このメカチャック50はより薄型化が可能になる。メカチャック50が薄いことで、例えば上述した移載処理において制御部90が先端部30を移動させる際に、メカチャック50が他の物体に接触してしまうことを抑制できる。
また、第1,第2ピストン71a,71bは、厚さ方向に垂直且つ軸方向に垂直な方向である前後方向に並べて配置されている。そのため、例えば第1,第2ピストン71a,71bが厚さ方向に沿って並べられている場合と比較して、メカチャック50はより薄型化が可能になる。
さらに、本体部51は、外部から供給される圧力の入口であり本体部51に対して厚さ方向に垂直な方向(ここでは前方)に突出して開口している圧力入口部材59を有している。そのため、例えば圧力入口部材59が厚さ方向に突出している場合と比較して、メカチャック50はより薄型化が可能になる。
さらにまた、連動機構80は、第1,第2ピストン71a,71bを接続するリンク部材81と、リンク部材81の第1,第2ピストン71a,71bとの接続部分の間に位置しリンク部材81を回動可能に支持する支持部材83と、を有している。そのため、比較的簡易な構成の連動機構80によって第1,第2ピストン71a,71bを互いに反対方向に移動するように連動させることができる。
そして、リンク部材81は、領域R内に収まるように配置されており、第1,第2ピストン71a,71bに対して厚さ方向にはみ出さないように配置されている。したがって、リンク部材81がメカチャック50の厚さにほとんど影響しないため、メカチャック50はより薄型化が可能になる。
そしてまた、メカチャック50は、本体部51に取り付けられ第1,第2把持部材61a,61bの左右方向への移動をガイドするガイドレールを備えていない。このようなガイドレールが例えば本体部51の下面に取り付けられていると、ガイドレールの分だけメカチャック50が厚くなりやすい。ガイドレールを備えないことでメカチャック50はより薄型化が可能になる。
そしてさらに、ロボット10は、メカチャック50と共に移動し、メカチャック50の厚さ方向に沿った方向である下方に位置する対象物を撮像するカメラ40、を備えている。ロボット10がこのようなカメラ40を備える場合、メカチャック50の厚さが大きいと、例えば対象物(ここではワークWやパレット105など)に撮像のためにカメラ40を接近させる際などにメカチャック50が対象物や他の物体に接触してしまう場合がある。本実施形態のメカチャック50は薄型化が可能であるため、メカチャック50と物体との接触を抑制する効果と、カメラ40を対象物により近づけることができる効果との、少なくとも一方の効果が得られる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、第1,第2把持部材61a,61bは、第2状態で接近し、第1状態で離間したが、第1状態で接近し第2状態で離間してもよい。また、第1,第2把持部材61a,61bは、接近状態でワークWを把持したが、離間状態でワークを把持してもよい。例えば、ワークに形成された凹部に第1,第2把持部材61a,61bを挿入して、第1,第2把持部材61a,61bを離間することでワークを把持してもよい。
上述した実施形態では、メカチャック50には外部からの圧力として正圧が供給されて、正圧により第1状態から第2状態に切り替わったが、これに限られない。例えば、メカチャック50には外部から負圧が供給されて負圧により第1状態から第2状態に切り替わってもよい。
上述した実施形態では、弾性部材79は第2ピストン71bに弾性力を作用させたが、これに限らず第2状態から第1状態に切り替える方向に第1,第2ピストン71a,71bの少なくとも一方を付勢すればよい。例えば、弾性部材79が第1フランジ部72aを右方向に押圧するように弾性力を作用させてもよい。また、弾性部材79は第1,第2ピストン71a,71bの両方に弾性力を作用させてもよい。また、弾性部材79は圧縮コイルばねとしたが、引張コイルばねでもよいし、ばね以外の弾性体であってもよい。
上述した実施形態では、連動機構80は平板状のリンク部材81を備えていたが、これに限られない。例えば、連動機構80はラック・アンド・ピニオンを備えていてもよい。例えば、連動機構80は、リンク部材81及び第1,第2取付部材84a,84bを備えず、第1ピストン71aと一体的に軸方向に移動する第1ラックと、第2ピストン71bと一体的に軸方向に移動する第2ラックと、第1,第2ラックと噛合するピニオンと、ピニオンを回動(自転)可能に支持する支持部材83と、を備えていてもよい。第1ラックは、第1ピストン71aのうち左端付近の後面に形成されるなど、第1ピストン71aの一部であってもよい。第2ラックについても同様である。この変形例の連動機構80では、ピニオンが第1ピストン71aと第2ピストン71bとを接続しており、ピニオンがリンク部材に相当する。このようにラック・アンド・ピニオンを用いた連動機構でも、第1,第2ピストン71a,71bが軸方向に沿って互いに反対方向に移動するよう両ピストンの移動を連動させることができる。
上述した実施形態では、第1,第2ピストン71a,71bは、本体部51内での上下方向の位置(配置高さ)が同じとしたが、これに限らず互いの配置高さがずれていてもよい。ただし、第1ピストン71aが存在する厚さ方向の範囲と、第2ピストン71bが存在する厚さ方向の範囲とが、少なくとも一部重複していることが好ましい。重複している部分が多いほど、メカチャック50を薄型化しやすい。
上述した実施形態では、第1,第2ピストン71a,71bは、厚さ方向に垂直且つ軸方向に垂直な方向である前後方向に並べて配置されていたが、これに限らず厚さ方向に垂直且つ軸方向に平行な方向である左右方向に並べて配置されていてもよい。ただし、その場合はメカチャック50の左右方向の大きさが大きくなりやすいため、第1,第2ピストン71a,71bが前後方向に並べられていることが好ましい。より具体的には、第1ピストン71aが存在する左右方向の範囲と、第2ピストン71bが存在する左右方向の範囲とが、少なくとも一部重複していることが好ましい。重複している部分が多いほど、メカチャック50の左右方向の大きさを小さくしやすくい。
上述した実施形態では、第1,第2把持部材61a,61bは把持爪としたが、これに限らずワークを把持及び把持解除できればよい。例えば、第1,第2把持部材61a,61bは直方体形状の部材であってもよい。
上述した実施形態では、メカチャック50は、本体部51に取り付けられ第1,第2把持部材61a,61bの左右方向への移動をガイドするガイドレールを備えなかったが、ガイドレールを備えていてもよい。ただし、上述したようにメカチャック50をより薄型化できるため、メカチャック50は本体部51に取り付けられた(本体部51とは別部材で構成された)ガイドレールを備えないことが好ましい。
上述した実施形態では、ロボット10は産業用ロボットのうち垂直多関節ロボットとしたが、これに限られない。例えば、ロボット10は水平多関節ロボットであってもよいし、XYロボットであってもよい。
本開示のメカチャック,産業用ロボット及びワーク移動装置は、以下のように構成してもよい。
本開示のメカチャックにおいて、前記第1,第2ピストンは、前記厚さ方向に垂直且つ前記軸方向に垂直な方向に並べて配置されていてもよい。こうすれば、例えば第1,第2ピストンが厚さ方向に沿って並べられている場合と比較して、このメカチャックはより薄型化が可能になる。
本開示のメカチャックにおいて、前記本体部は、外部から供給される前記圧力の入口であり前記本体部に対して前記厚さ方向に垂直に突出して開口している圧力入口部材を有していてもよい。こうすれば、例えば圧力入口部材が厚さ方向に突出している場合と比較して、このメカチャックはより薄型化が可能になる。この場合において、前記圧力入口部材は、前記厚さ方向に垂直且つ前記軸方向に垂直な方向に突出していてもよい。
本開示のメカチャックにおいて、前記連動機構は、前記第1ピストンと前記第2ピストンとを接続するリンク部材と、該リンク部材の前記第1,第2ピストンとの接続部分の間に位置し該リンク部材を回動可能に支持する支持部材と、を有していてもよい。こうすれば、比較的簡易な構成で第1,第2ピストンを互いに反対方向に移動するように連動させることができる。
この場合において、前記リンク部材は、前記第1ピストン及び前記第2ピストンに対して前記厚さ方向にはみ出さないように配置されていてもよい。こうすれば、リンク部材がメカチャックの厚さにほとんど影響しないため、このメカチャックはより薄型化が可能になる。
本開示のメカチャックは、前記本体部に取り付けられ前記第1,第2把持部材の前記軸方向への移動をガイドするガイドレールを備えなくてもよい。このようなガイドレールが本体部に取り付けられているとガイドレールの分だけメカチャックが厚くなりやすい。ガイドレールを備えないことでこのメカチャックはより薄型化が可能になる。
本開示の産業用ロボットは、上述したいずれかの態様のメカチャックを備えたものである。そのため、この産業用ロボットは、上述した本開示のメカチャックと同様の効果、例えばメカチャックの薄型化が可能になる効果が得られる。この場合において、産業用ロボットは、多関節ロボットであってもよいし、XYロボットであってもよい。
本開示の産業用ロボットは、前記メカチャックと共に移動し、前記メカチャックの厚さ方向に沿った方向に位置する対象物を撮像するカメラ、を備えていてもよい。産業用ロボットがこのようなカメラを備える場合、メカチャックの厚さが大きいと、例えば対象物にカメラを接近させる際などにメカチャックが対象物や他の物体に接触してしまう場合がある。本開示のメカチャックは薄型化が可能であるため、メカチャックと物体との接触を抑制する効果と、カメラを対象物により近づけることができる効果との、少なくとも一方の効果が得られる。ここで、カメラが撮像する「対象物」は、前記メカチャックが把持するワークとしてもよいし、その他の物体としてもよい。
本開示のワーク移動装置は、上述したいずれかの態様の産業用ロボットを備えたものである。そのため、このワーク移動装置は、上述した本開示のメカチャックと同様の効果、例えばメカチャックの薄型化が可能になる効果が得られる。