JP6989428B2 - 前処理剤、前処理キット、抗原検査キット及び抗原検査方法 - Google Patents

前処理剤、前処理キット、抗原検査キット及び抗原検査方法 Download PDF

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Description

本発明は、前処理剤、前処理キット、抗原検査キット及び抗原検査方法に関する。
従来より結核の検査においては、被験者から採取した喀痰をスライドガラスに塗抹し、染色した後に顕微鏡で観察して結核菌が属する抗酸菌が存在するかどうかを確認する塗抹検査が広く行われている。しかし、この方法では抗酸菌の存在が確認できてもそれが結核菌であるか否かの判別ができない。また、塗抹検査で安定的で正確な結果を得るためには、スライドガラスへの喀痰の塗抹や染色を行うための技術の習得が必要である。そこで、喀痰中の結核菌が存在するかどうかを直接的に判別することができ、かつ検査者の技術の習熟度に左右されずに検査結果が得られる方法として、免疫学的手法であるイムノクロマト法によって結核菌群に特異的な抗原であるMPT64を検出する方法が検討されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許第6216299号 特開2002−062299号公報
イムノクロマト法によって抗原を検出する方法では、試験片に喀痰を浸透させ、抗体が固定化されている検出ラインまで十分量を展開する必要がある。しかしながら、喀痰は粘性が高くそのままでは展開することができないため、NALC(N−アセチル−L−システイン)等のチオール基を有する化合物を添加して粘性を低下させるための前処理が行われている。しかしながら、チオール基を有する化合物を添加した検体は、充分な検出感度が得られない場合がある。
本発明は上記事情に鑑み、抗原の検出感度に優れる検体の前処理剤、前処理キット及び抗原検査キットを提供することを課題とする。本発明はまた、抗原の検出感度に優れる抗原検査方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>チオール基のアルキル化剤を含み、免疫学的手法による検査においてチオール基を有する化合物を添加した検体の前処理に用いられる、前処理剤。
<2>前記アルキル化剤が、ハロカルボン酸、ハロカルボン酸の誘導体及び活性二重結合を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の前処理剤。
<3>前記ハロカルボン酸又は前記ハロカルボン酸の誘導体がモノハロ酢酸又はモノハロ酢酸アミドである、<2>に記載の前処理剤。
<4>前記モノハロ酢酸又は前記モノハロ酢酸アミドがヨード酢酸ナトリウム又はヨードアセトアミドである、<3>に記載の前処理剤。
<5>前記活性二重結合を有する化合物がマレイミド化合物である、<2>に記載の前処理剤。
<6>前記マレイミド化合物がN−メチルマレイミド及びN−エチルマレイミドの少なくともいずれかである、<5>に記載の前処理剤。
<7>前記チオール基を有する化合物がN−アセチル−L−システインを含む、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の前処理剤。
<8>前記免疫学的手法がイムノクロマト法である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の前処理剤。
<9>前記検査が結核菌に特異的な抗原の有無の検査である、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の前処理剤。
<10>前記抗原がMPT64である、<9>に記載の前処理剤。
<11><1>〜<10>のいずれか1項に記載の前処理剤と、チオール基を有する化合物と、を備える前処理キット。
<12><1>〜<10>のいずれか1項に記載の前処理剤又は<11>に記載の前処理キットと、抗原検査デバイスと、を備える抗原検査キット。
<13>検体にチオール基を有する化合物を添加する工程と、前記チオール基を有する化合物を添加した前記検体に<1>〜<10>のいずれか1項に記載の前処理剤を添加する工程と、前記前処理剤を添加した前記検体が抗原を含むか否かを免疫学的手法で検査する工程と、を備える抗原検査方法。
本発明によれば、抗原の検出感度に優れる検体の前処理剤、前処理キット及び抗原検査キットが提供される。また本発明によれば、抗原の検出感度に優れる抗原検査方法が提供される。
前処理剤を添加した検体と前処理剤を添加していない検体に含まれる抗原の検出精度を比較するグラフである。 前処理剤を添加した検体と前処理剤を添加していない検体に含まれる抗原の検出精度を比較するグラフである。 前処理剤を添加した検体と前処理剤を添加していない検体に含まれる抗原の検出精度を比較するグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
<前処理剤>
本開示の前処理剤は、チオール基のアルキル化剤を含み、免疫学的手法による検査においてチオール基を有する化合物(以下、チオール化合物とも称する)を添加した検体の前処理に用いられる、前処理剤である。
本発明者らの検討の結果、上記前処理剤を含む検体は、上記前処理剤を含まない検体に比べ、検体中の抗原の有無を検査する際の検出精度に優れていることがわかった。その理由は、例えば、以下のように考えることができる。
NALC等のチオール化合物を喀痰等の粘稠性の検体に添加すると、粘稠性の原因であるタンパク質分子間のジスルフィド結合(−S−S−)とチオール化合物のチオール基との交換反応が生じ、タンパク質分子間のジスルフィド結合が切断されて、粘性が低下する。しかしながら一方で、チオール化合物は検体の抗原抗体反応(酵素標識抗体を使用している場合は抗体抗原反応)及び酵素反応を阻害するように作用する。この阻害作用は、検体中に未反応のまま残存したり、チオール化合物とジスルフィド結合との反応過程で新たに生じたチオール基が原因となって起きると考えられ、検出感度が低下する要因となっている。
ここで、チオール化合物を添加した検体にチオール基のアルキル化剤を含む前処理剤を添加すると、チオール基のアルキル化剤により検体中のチオール基のアルキル化が生じて検体中のチオール基量が減少する。その結果、チオール基に起因する検出感度の低下が抑制され、良好な検出感度が維持されると考えられる。
チオール化合物を添加した検体中のチオール基量を減少させる方法としては、検体をバッファで希釈してチオール基の濃度を下げる方法も考えられるが、この場合は検出対象である抗原の濃度もあわせて低下するため、充分な検出感度が得られないおそれがある。本開示の前処理剤によれば、抗原の濃度を低下させずに検出感度の低下を抑制でき、良好な検出感度を維持することができる。
また、本発明者らの検討の結果、上記前処理剤をチオール化合物を添加した検体に添加しても、チオール化合物により低下した検体の粘性は変化しないことがわかった。その理由は、例えば、以下のように考えることができる。
チオール化合物を粘性のある検体に添加すると、上述のように粘性が低下する。ここにチオール基のアルキル化剤を添加すると、検体中に未反応のまま残存したり、チオール化合物とジスルフィド結合との反応過程で新たに生じたチオール基とアルキル化剤とが結合(アルキル化)する。しかしそれによって、タンパク質分子間のジスルフィド結合やその他の高次構造は生じず、粘性は低い状態に維持されると考えられる。
さらに、前処理剤を添加することで、チオール化合物との反応により切断されたタンパク質分子間のジスルフィド結合が酸化により再度形成され、粘性が回復するのを抑制する効果も期待できる。
本開示においてチオール基のアルキル化剤とは、チオール基と反応してチオール基のアルキル化を生じる化合物を意味する。前処理剤に含まれるチオール基のアルキル化剤の種類は、特に制限されない。また、前処理剤に含まれるチオール基のアルキル化剤は、1種でも2種以上であってもよい。チオール基のアルキル化剤は、ナトリウム塩等の塩の状態であってもよい。
チオール基のアルキル化剤としては、チオール基にアルキル基のみを導入する化合物の他、リンカーを介してアルキル基を導入するものも含む。また、ヨード酢酸、α−ヨードプロピオン酸等のように、チオール基に−C2n−を導入するものも含む。
チオール化合物のアルキル化剤の中でも、ハロカルボン酸、ハロカルボン酸の誘導体、及び活性二重結合を有する化合物が好ましい。
ハロカルボン酸は、ハロゲン原子を含有するカルボン酸化合物であれば特に制限されない。ハロカルボン酸の誘導体としては、例えば、ハロカルボン酸のアミド化合物が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素が挙げられる。
ハロカルボン酸としては、ハロゲン原子を1個含有するカルボン酸化合物(モノハロカルボン酸)が挙げられる。具体的には、例えば、ヨード酢酸、ブロモ酢酸、クロロ酢酸等のモノハロ酢酸(ハロゲン原子を1個含有する酢酸化合物)、α−ヨードプロピオン酸、α−ブロモプロピオン酸、α−クロロプロピオン酸等のモノハロプロピオン酸(ハロゲン原子を1個含有するプロピオン酸化合物)などが挙げられる。ハロカルボン酸の誘導体としては、例えば、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、クロロアセトアミド等のモノハロカルボン酸のアミド化合物が挙げられる。
活性二重結合を有する化合物は、分極したり、あるいは容易に分極可能な二重結合を持つ化合物であれば特に制限されない。活性二重結合を有する化合物としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物(マレイミド骨格を有する化合物)、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エチル、アクロレイン、無水マレイン酸、ビニルスルフォン、2−メチル−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
ハロカルボン酸、ハロカルボン酸の誘導体、及び活性二重結合を有する化合物に該当しないチオール基のアルキル化剤としては、例えば、ヨウ化メチル、β−ヨードエチルアミン、β−ブロモエチルアミン、β−クロロエチルアミン、クロロアセトフェノン、エチレンイミン、エチレンオキシド、O−メチルイソ尿素、メチル−p−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウム、1−フルオロ−2,4−ジニトロベンゼン、1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン、2,4,6−トリニトロベンゼン−1−スルホン酸等が挙げられる。
前処理剤は、チオール基のアルキル化剤のみからなってもよく、チオール基のアルキル化剤以外の成分を含んでいてもよい。例えば、バッファ等の溶媒、pH調整剤等を含んでいてもよい。前処理剤は、固体の状態であっても液体の状態であってもよい。
チオール化合物を含む検体への前処理剤の添加量は特に制限されず、検体に含まれるチオール基の量や、減少させたいチオール基の量に応じて調節できる。
具体的には、例えば、チオール基のアルキル化剤の量が検体に含まれるチオール基1モルに対して0.8モル以上となる添加量が好ましく、1モル以上となる添加量がより好ましく、1.5モル以上となる添加量がさらに好ましい。
前処理剤を添加する対象である検体の種類は、特に制限されない。例えば、喀痰、唾液、鼻汁、胸水等の生体から採取した物質が挙げられる。生体はヒトであっても、ヒト以外の動物であってもよい。
前処理剤は、これを添加する検体中の抗原の有無を検査するために好適に用いられるが、その他の目的に用いるものであってもよい。したがって、前処理剤が添加される検体は抗原を含むものであっても抗原を含まないものであってもよい。
<前処理キット>
本開示の前処理キットは、上述した前処理剤と、チオール化合物と、を備える。
前処理キットの具体的な構成は特に制限されない。例えば、前処理剤を収容した容器と、チオール基を有する化合物を収容した容器との組合せであってよい。この場合、前処理剤を収容した容器と、チオール基を有する化合物を収容した容器とは分離していても一体化していてもよい。
ある実施態様では、前処理キットは、前処理剤を収容する収容部と、チオール化合物を収容する収容部と、をそれぞれ備え、使用時に前処理剤とチオール化合物を検体にそれぞれ添加できるような構成(前処理デバイス)であってもよい。
前処理キットに含まれるチオール化合物の種類は、特に制限されない。例えば、NALC、システイン、2−メルカプトエタノール、メルカプトエタノールアミン、ジチオトレイトール、チオグリコール酸、アセチルシステイン、システアミン、チオグリセリン等が挙げられる。前処理キットに含まれるチオール化合物は、1種でも2種以上であってもよい。前処理キットに含まれるチオール化合物は、固体の状態であっても液体の状態であってもよい。
<抗原検査キット>
本開示の抗原検査キットは、上述した前処理剤又は前処理キットと、抗原検査デバイスと、を備える。
抗原検査デバイスの具体的な構成は特に制限されないが、免疫学的手法による検査に用いるものであることが好ましい。例えば、イムノクロマト法による検査に一般的に使用される試験片であってもよく、その他の構成を有するデバイスであってもよい。
抗原検査キットの具体的な構成は、特に制限されない。例えば、前処理剤又は前処理キットと抗原検査デバイスとが分離した状態であっても、前処理剤又は前処理キットと抗原検出デバイスとが一体化した状態であってもよい。
前処理剤又は前処理キットと抗原検出デバイスとが一体化した状態の具体的な構成としては、抗原検出デバイスに前処理剤が含まれた構成(例えば、試験片の一部に前処理剤が仕込まれている)が挙げられる。
<抗原検査方法>
本開示の抗原検査方法は、検体にチオール化合物を添加する工程と、前記チオール化合物を添加した前記検体に上述した前処理剤を添加する工程と、前記前処理剤を添加した前記検体が抗原を含むか否かを免疫学的手法で検査する工程と、を備える。
本開示の抗原検査方法では、チオール化合物以外の検体の粘性を低下させる物質をチオール化合物と併用してもよい。このような物質としては、NaOH等のアルカリ性物質、界面活性剤、糖、プロテアーゼ等が挙げられる。これらの中でもアルカリ性物質が好ましく、NaOHがより好ましい。
チオール化合物を添加した検体に前処理剤を添加するときの検体の液性は特に制限されないが、チオール基との反応性の観点からは、前処理剤を添加するときの検体は中性又はアルカリ性であることが好ましく、アルカリ性(例えば、pH7〜14)であることがより好ましい。
一方、抗原の検出精度の観点からは、検体が抗原を含むか否かを検査する工程を実施するときの検体は中性又は中性に近い状態(例えば、pH6〜10)であることが好ましい。このため、前処理剤を検体に添加した後の検体がアルカリ性である場合は、検体に中和剤を添加して中和することが好ましい。中和剤の種類は特に制限されないが、NaHPO等の抗原抗体反応に及ぼす影響が小さい物質を用いることが好ましい。
検体にチオール化合物を添加する工程と、チオール化合物を添加した検体に前処理剤を添加する工程とは、同時に行っても順次行ってもよいが、検出精度の観点からは検体にチオール化合物を添加する工程と、チオール化合物を添加した検体に前処理剤を添加する工程をこの順に行うことが好ましい。
検体にチオール化合物を添加する工程と、前処理剤を検体に添加する工程を実施する手法は、特に制限されない。例えば、検体にチオール化合物又は前処理剤を添加してもよく、チオール化合物又は前処理剤に検体を添加してもよい。添加はピペット、分注装置等を用いて行ってもよい。
検体にチオール化合物を添加する工程と、検体に前処理剤を添加する工程では、必要に応じて撹拌、遠心分離、ろ過等の処理を実施してもよい。
前処理剤を添加した検体が抗原を含むか否かを検査するための免疫学的手法は、特に制限されない。例えば、イムノクロマト法であってもよい。イムノクロマト法による検査は、一般的に使用される試験片を用いて行ってもよく、その他の構成を有するデバイスを用いて行ってもよい。
一般的なイムノクロマト法では、アルカリホスファターゼ(ALP)等で標識された抗体(標識抗体)を仕込んだニトロセルロース膜等の試験片に検体を供給する。検体の供給は、浸漬、滴下等により行うことができる。試験片は、検出対象の抗原と反応する抗体(キャプチャー抗体)を仕込んだ部位(検出ライン)を備えている。試験片に供給した検体は、毛細管現象によって試験片内を移動する。検体が抗原を含む場合は、検体が検出ラインに達すると、抗原がキャプチャー抗体と結合して標識抗体とともに検出ラインに捕捉される。
次いで、抗体の標識に用いた物質の発色基質を試験片に供給する。抗体をALPで標識した場合の発色基質としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルりん酸ナトリウム(BCIP)等)が挙げられる。検体が検出対象の抗原を含む場合は、発色基質が検出ラインに到達すると発色する。例えば、BCIPが検出ラインに到達すると標識抗体のALPにより加水分解されて不溶化し、青色に発色する。この発色の有無により、検体が抗原を含むか否かを判別することができる。発色の有無の判別は目視で行っても、イムノクロマトリーダー等の装置を用いて行ってもよい。
本開示の抗原検査方法において検出対象とする抗原の種類は、特に制限されない。例えば、MPT64等の結核菌群に特異的な抗原を検出するものであってもよく、他の抗原を検出対象とするものであってもよい。
以下、実施例を参照して本開示の実施態様をさらに具体的に説明する。ただし、本開示はこれらの実施例に制限されない。
<比較例1>
抗酸菌が含まれていないことを確認した健常人の喀痰に、MPT64抗原(160ng/mL)を添加して検体を作製した。この検体(30μL)に、0.5%(w/v)のNALCと、50mMのクエン酸ナトリウムと、0.1M NaOHとを含む水溶液(75μL)を加え、ボルテックスミキサーで数秒間混合し、5分間静置した。このときの検体のpHは12であった。その後、検体にNaHPO(1.68M)を加えてpHが7.2となるように中和し、遠心分離して上清を得た。
得られた上清90μLに、マウス由来抗MPT64モノクローナル抗体のSH基にALPを標識した標識抗体(10μL)を加えてボルテックスミキサーで数秒混合し、1分間静置して、検体と標識抗体の混合液を得た。標識抗体は、市販のALP標識試薬(同仁化学社製、Alkaline Phosphatase Labeling Kit−SH)を用いて、マウス由来抗MPT64モノクローナル抗体のSH基にALPを標識して作製した。
得られた混合液の全量を96穴プレートのウェルに加え、このウェルにイムノクロマト試験片を差し込んで10分間静置した。10分後、新たなウェルにBCIP溶液を加え、混合液に浸漬したイムノクロマト試験片をこれに差し込んで10分間静置した。BCIP溶液は、BCIP(1mg/mL)をバッファ(100mM CAPSO、1mM MgCl2、pH10)に溶解して調製した。
その後、試験片の検出ラインの発色の度合いをイムノクロマトリーダーを用いて評価した。具体的には、イムノクロマトリーダーを用いて測定された検出ラインにおける吸光度の値が大きいほど検出ラインの発色の度合いが大きい(すなわち、抗原の検出感度が高い)と評価した。
吸光度の測定は、浜松ホトニクス社製のイムノクロマトリーダー(C10066−10)を用いて実施した。具体的には、青色に発色するテストラインの吸光度を測定するため、イムノクロマト試験片に光を照射し、試験片上で反射された反射光をディテクターで検出した。試験片の検出ラインで吸光されて弱まった反射光と、検出ラインの周辺の反射光の強度をグラフ化した。検出ラインの近隣を基点にベースラインを引き、このベースラインを基に、下記式により、検出ラインにおける吸光度を計算した。下記式においてaはベースラインの反射光の強度であり、bは検出ラインにおける反射光の強度である。
吸光度(ABS)=log(a/b)
なお、1ABSは1000mABSである。
試験に用いるイムノクロマト試験片は、下記のようにして作製した。
ニトロセルロース膜(Immunopore RP、GEヘルスケアジャパン社)を25mm×300mmのサイズに切断した。次いで、2%(w/v)のスクロースを含むリン酸バッファ(pH7.4)で1.0mg/mLになるように、標識抗体の作製に用いた抗体と異なるマウス由来抗MPT64モノクローナル抗体を希釈して、検出ライン用の抗体溶液を調製した。この抗体溶液を、ニトロセルロース膜の長辺の一端から12mmの位置に、1μL/cmの塗布量となるように塗布して検出ラインを作製した。
次いで、2%(w/v)のスクロースを含むリン酸バッファ(pH7.4)で0.5mg/mLになるようにウサギ由来抗マウスポリクローナル抗体を希釈して、コントロールライン用の抗体溶液を調製した。この抗体溶液を、ニトロセルロース膜の長辺の一端から16mmの位置に、1μL/cmの塗布量となるように塗布して検出ラインを作製した。40℃で20分間乾燥させた後、ニトロセルロース膜をブロッキング試薬でブロッキングした。
片面に両面テープが貼り付けられたプラスチック製シートを50mm×300mmのサイズに裁断した。同様に、ガラス繊維及びコットン混合のろ紙からなる吸収パッドを29mm×300mmのサイズに切断した。プラスチック製シートの長辺側の一端と、上記で得たニトロセルロース膜の長辺側の一端とが合致するように、プラスチック製シートにニトロセルロース膜を両面テープで貼り付けた。次いで、プラスチック製シートの長辺側の他の一端と、吸収パッドの長辺側の一端とが合致するように、プラスチック製シートに吸収パッドを両面テープで貼り付けた。その後、裁断機で幅が4mmとなるように裁断し、イムノクロマト試験片とした。
<実施例1>
比較例1において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にヨード酢酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.51mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例1と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例2>
比較例1において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にヨードアセトアミド(和光純薬工業株式会社)0.45mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例1と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例3>
比較例1において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にN−メチルマレイミド(東京化成工業株式会社)0.53mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例1と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例4>
比較例1において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にN−エチルマレイミド(東京化成工業株式会社)0.6mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例1と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。結果を図1に示す。
図1に示すように、実施例1〜4は比較例1に比べて検出ラインにおける吸光度の値が大きく、発色の度合いが大きかった。このことから、チオール基のアルキル化剤を添加した検体は、チオール基のアルキル化剤を添加していない検体に比べて抗原の検出感度に優れていることがわかった。
また、実施例1〜4のいずれにおいてもNALCの添加により低下した検体の粘性は再び上昇せず、比較例1と同程度の十分量の検体を検出ラインまで展開することができた。
<比較例2>
比較例1において、抗体のSH基にALPを標識した標識抗体に替えて抗体のNH基にALPを標識したALP標識抗体(10μL)を使用したこと以外は比較例1と同様にして、検体のイムノクロマト試験を行った。ALP標識抗体は、市販のALP標識試薬(同仁化学社のAlkaline Phosphatase Labeling Kit−NH)を用いて、マウス由来抗MPT64モノクローナル抗体のNH基にALPを標識して作製した。
<実施例5>
比較例2において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にヨード酢酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社)0.51mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例2と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例6>
比較例2において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にヨードアセトアミド(和光純薬工業株式会社)0.45mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例2と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例7>
比較例2において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にN−メチルマレイミド(東京化成工業株式会社)0.53mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例2と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。
<実施例8>
比較例2において、NALCを添加して5分間静置した後の検体にN−エチルマレイミド(東京化成工業株式会社)0.6mgを加えてさらに5分間静置したこと以外は比較例2と同様にして得た上清を用いてイムノクロマト試験を行った。結果を図2に示す。
図2に示すように、実施例5〜8は比較例2に比べて検出ラインにおける吸光度の値が大きく、発色の度合いが大きかった。このことから、チオール基のアルキル化剤を添加した検体は、チオール基のアルキル化剤を添加していない検体に比べて抗原の検出感度に優れていることがわかった。
また、実施例5〜8のいずれにおいてもNALCの添加により低下した検体の粘性は再び上昇せず、比較例2と同程度の十分量の検体を検出ラインまで展開することができた。
<比較例3>
抗酸菌が含まれていないことを確認した健常人の喀痰に、MPT64抗原(30ng/mL)を添加して検体を作製した。この検体(40μL)に、0.5%(w/v)のNALCと、50mMのクエン酸ナトリウムと、0.1M NaOHとを含む水溶液(100μL)を加え、ボルテックスミキサーで数秒間混合し、5分間静置した。このときの検体のpHは12であった。その後、実施例9及び実施例10の検体と体積を等しくするためにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を16.2μL添加して5分間静置した。その後、検体にNaHPO(1.68M)を加えてpHが7.2となるように中和し、遠心分離して上清を得た。得られた上清90μLを用いて検体を4種(検体A〜D)準備し、比較例1と同様にしてイムノクロマト試験を行った。結果を図3に示す。
<実施例9>
検体にNaHPOを加える前に、PBSに替えて、PBSに溶解したヨード酢酸ナトリウム(200mM、ナカライテスク株式会社)を16.2μL添加(チオール基1モルに対して1モル)して5分間静置したこと以外は比較例3と同様にしてイムノクロマト試験を行った。
<実施例10>
検体にNaHPOを加える前に、PBSに替えて、PBSに溶解したヨード酢酸ナトリウム(400mM、ナカライテスク株式会社)を16.2μL添加(チオール基1モルに対して2モル)して5分間静置したこと以外は比較例3と同様にしてイムノクロマト試験を行った。
図3に示すように、検体A〜Dのいずれにおいても実施例9、10は比較例3に比べて検出ラインにおける吸光度の値が大きく、発色の度合いが大きかった。このことから、チオール基のアルキル化剤を添加した検体は、チオール基のアルキル化剤を添加していない検体に比べて抗原の検出感度に優れていることがわかった。
また、検体A〜Dのいずれにおいても実施例9、10でNALCの添加により低下した検体の粘性は再び上昇せず、比較例3と同程度の十分量の検体を検出ラインまで展開することができた。

Claims (12)

  1. チオール基のアルキル化剤を含み、免疫学的手法による結核菌に特異的な抗原の有無の検査においてチオール基を有する化合物を添加した喀痰の前処理に用いられる、前処理剤。
  2. 前記アルキル化剤が、ハロカルボン酸、ハロカルボン酸の誘導体及び活性二重結合を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の前処理剤。
  3. 前記ハロカルボン酸又は前記ハロカルボン酸の誘導体がモノハロ酢酸又はモノハロ酢酸アミドである、請求項2に記載の前処理剤。
  4. 前記モノハロ酢酸又は前記モノハロ酢酸アミドがヨード酢酸ナトリウム又はヨードアセトアミドである、請求項3に記載の前処理剤。
  5. 前記活性二重結合を有する化合物がマレイミド化合物である、請求項2に記載の前処理剤。
  6. 前記マレイミド化合物がN−メチルマレイミド及びN−エチルマレイミドの少なくともいずれかである、請求項5に記載の前処理剤。
  7. 前記チオール基を有する化合物がN−アセチル−L−システインを含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の前処理剤。
  8. 前記免疫学的手法がイムノクロマト法である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の前処理剤。
  9. 前記抗原がMPT64である、請求項に記載の前処理剤。
  10. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の前処理剤と、チオール基を有する化合物と、を備える前処理キット。
  11. 請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の前処理剤又は請求項10に記載の前処理キットと、抗原検査デバイスと、を備える抗原検査キット。
  12. 検体にチオール基を有する化合物を添加する工程と、前記チオール基を有する化合物を添加した前記検体に請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の前処理剤を添加する工程と、前記前処理剤を添加した前記検体が抗原を含むか否かを免疫学的手法で検査する工程と、を備える抗原検査方法。
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