JP6988703B2 - 電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換装置の制御方法 - Google Patents

電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、電力変換装置、太陽光発電システム、及び、電力変換装置の制御方法に関する。
住宅用太陽光発電システムに適用される余剰電力の買取単価は年々低下しており、2017年には電気料金の従量単価とほぼ同じになった。今後数年間は買取単価が更に低下することが既に公表されており、住宅用太陽光発電システムの導入目的が売電から自家消費に変化することが容易に予想される。このため、余剰発電電力を貯めて夜間等に使用するための蓄電池を備えたシステムのニーズが高まっている。現に、太陽光発電と蓄電池とを1台のパワーコンディショナ(電力変換装置)で制御するハイブリッド型のパワーコンディショナ(例えば特許文献1,2参照。)が数年前から販売されている。
一方、以前よりも太陽光発電パネル自体の価格が低下したことにより、近年では、日射量が少ない時間帯の発電量を底上げするために、パワーコンディショナの最大出力を超える最大発電電力の太陽光発電パネルを搭載し、接続した、いわゆる過積載のシステムも多く見られるようになってきた。
ここで、出力電圧について考える。まず、蓄電池の電圧は単電池の種類と直列数によって変わるが、例えば、容量60Ah、電圧3.1〜4.1Vの三元系リチウムイオン電池を56直列として構成した組電池では12.4kWh、174〜230Vとなり、200V交流系統のピーク値である約280Vよりも低い。これは住宅用の蓄電システムでは最も大容量の場合であって、組電池の電圧が100V前後のものも多い。
一方、太陽光発電パネルの出力電圧は200V以上あり、過積載にする場合には300Vから400Vに達する場合もある。
特開2017−221082号公報 特開2017−077100号公報
ところで、現在販売されているハイブリッド型のパワーコンディショナは、太陽光発電用、蓄電池用ともに、DC/DCコンバータは直流電源側から見て昇圧チョッパとなっており、DC/DCコンバータとインバータとを互いに接続するDCバスの電圧は、2系統の直流電源のうち、電圧の高い方の、太陽光発電パネルの電圧以上となる。例えば、蓄電池の出力電圧が100V、太陽光発電パネルの出力電圧が400Vとすると、DCバス電圧も400V以上となる。
仮にDCバスの電圧は400Vであるとしても、蓄電池用の昇圧チョッパは100Vから400Vへの4倍昇圧、インバータも直流400Vから交流200Vへの変換となる。このため、蓄電池用の昇圧チョッパとインバータとは、入出力の電圧差が大きく、半導体スイッチング素子のスイッチング損失と、リアクトルの鉄損とが大きくなる。これらの損失は熱に変わるため、温度上昇を抑えるために大きな放熱板を用い、内部の部品配置も、間隔を広げて空間を大きくとらなければならず、小型化が難しくなる。
かかる課題に鑑み、本発明は、互いに電圧差のある複数の直流電源と交流電路との間に設けられる電力変換装置において、さらなる電力損失の低減を可能とすることを目的とする。
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
(電力変換装置)
本発明の一表現に係る電力変換装置は、交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられる電力変換装置であって、DCバスと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、電力変換装置である。
(太陽光発電システム)
また、本発明の一表現に係る太陽光発電システムは、太陽光発電パネルと、蓄電池と、前記太陽光発電パネル及び前記蓄電池と交流電路との間に設けられた電力変換装置と、を備え、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも前記蓄電池の出力電圧が低く、また、前記太陽光発電パネルの発電可能な最大電力が、前記電力変換装置が出力可能な電力を超えている太陽光発電システムであって、前記電力変換装置は、DCバスと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、太陽光発電システムである。
(電力変換装置の制御方法)
また、本発明の一表現に係る制御方法は、交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられ、DCバスと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ降圧機能を有する第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、を備える電力変換装置についての、その制御方法であって、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御するとともに、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定し、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、電力変換装置の制御方法である。
本発明によれば、互いに電圧差のある複数の直流電源と交流電路との間に設けられる電力変換装置において、さらなる電力損失の低減を実現することができる。
図1は、電力変換装置及びこれを含む太陽光発電システムの一例を示す回路図である。 図2は、太陽光発電パネル側のDC/DCコンバータからインバータを経て交流電圧を作る過程と、蓄電池側のDC/DCコンバータからインバータを経て交流電圧を作る過程とを並べて、それらの概要を一例として示す図であり、特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように横書き表示した図である。 図3は、太陽光発電パネル側のDC/DCコンバータからインバータを経て交流電圧を作る過程と、蓄電池側のDC/DCコンバータからインバータを経て交流電圧を作る過程とを並べて、それらの概要を一例として示す図であり、特に、制御のタイミングが見やすいように縦書き表示した図である。 図4は、電流指令値i a1=20A(rms)、i a2=0A(rms)、すなわち、太陽光発電が4kW、蓄電池は充放電を行わない場合のシミュレーション結果を示している。 図5は、電流指令値i a1=25A(rms)、i a2=−5A(rms)、すなわち、太陽光発電が5kW、蓄電池は1kWの充電を行う場合のシミュレーション結果を示している。 図6は、電流指令値i a1=15A(rms)、i a2=5A(rms)、すなわち、太陽光発電が3kW、蓄電池は1kWの放電を行う場合のシミュレーション結果を示している。 図7は、電流指令値i a1=0A(rms)、i a2=5A(rms)、すなわち、太陽光発電は停止、蓄電池は1kWの放電を行う場合のシミュレーション結果を示している。 図8は、電流指令値i a1=0A(rms)、i a2=−5A(rms)、すなわち、太陽光発電は停止、蓄電池は1kWの充電を行う場合のシミュレーション結果を示している。
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
(1)これは、交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられる電力変換装置であって、DCバスと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、電力変換装置である。
上記のように構成された電力変換装置では、交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源と接続されている第2のDC/DCコンバータと、DC/ACコンバータとの間で最小スイッチング変換方式のスイッチング動作を行う。第1のDC/DCコンバータは、第2のDC/DCコンバータが提供するDCバスの電圧指令値に合わせるようスイッチング動作する。従って、スイッチングによる電力損失は抑制される。また、制御部は、有効電力及び無効電力の配分を任意に定めることができる。例えば第2直流電源より第1直流電源の電圧が高い場合に、より高い電圧を扱う第1のDC/DCコンバータに無効電力を割り当てれば、無効電流は低減され、最小スイッチング変換による電力損失の低減に加えて、さらなる電力損失の低減を実現することができる。
(2)また、(1)の電力変換装置において、例えば、前記第1のDC/DCコンバータと前記第1直流電源との間に、前記DCバスに無効電力を供給するためのコンデンサが設けられる。
この場合、コンデンサから第1のDC/DCコンバータを経て、DCバスに無効電力を供給することができる。
(3)また、(2)の電力変換装置において、前記第1直流電源は太陽光発電パネルであり、前記第2直流電源は蓄電池であって、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータから有効電力のみを前記DCバスに供給し、かつ、前記コンデンサ及び前記第1のDC/DCコンバータから無効電力を前記DCバスに供給するよう制御するものであってもよい。
上記(3)の場合、太陽光発電パネルは蓄電池に比べてインピーダンスが大きいので、そもそも太陽光発電パネルに無効電流は流れにくい。そのため、コンデンサにほぼ全ての無効電流が流れ、太陽光発電パネルは直流電流だけを流す。従って、無効電流が太陽光発電パネルの最大電力点追従制御を妨げることはなく、適切に、最大電力点追従制御を行うことができる。
一方、蓄電池は太陽光発電パネルに比べてインピーダンスが小さいので、蓄電池には無効電流が流れやすい。もし無効電流が流れると蓄電池の寿命が短くなる。しかし、第2のDC/DCコンバータは有効電力のみを扱うので、蓄電池に無効電流が流れることを抑制できる。
また、一般に、太陽光発電パネルの出力電圧は蓄電池より高い場合が多いので、無効電流が小さくなり、無効電流によって生じる損失を抑制することができる。
(4)また、(1)〜(3)のいずれかの電力変換装置において、例えば、前記第1直流電源の出力電圧は前記ピーク値よりも高く、前記制御部は、前記第1のDC/DCコンバータが、前記第1直流電源から入力された電圧を前記電圧指令値に降圧するよう制御する。
この場合、DCバスの電圧を、2つの直流電源のうち、低い方に適した電圧指令値とすることができる。
(5)また、これは、太陽光発電パネルと、蓄電池と、前記太陽光発電パネル及び前記蓄電池と交流電路との間に設けられた電力変換装置と、を備え、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも前記蓄電池の出力電圧が低く、また、前記太陽光発電パネルの発電可能な最大電力が、前記電力変換装置が出力可能な電力を超えている太陽光発電システムであって、前記電力変換装置は、DCバスと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、太陽光発電システムである。
上記のように構成された太陽光発電システムにおける電力変換装置では、交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い蓄電池と接続されている第2のDC/DCコンバータと、DC/ACコンバータとの間で最小スイッチング変換方式のスイッチング動作を行う。第1のDC/DCコンバータは、第2のDC/DCコンバータが提供するDCバスの電圧指令値に合わせるようスイッチング動作する。従って、スイッチングによる電力損失は抑制される。また、制御部は、有効電力及び無効電力の配分を任意に定めることができる。過積載の場合、蓄電池より太陽光発電パネルの電圧が高いので、より高い電圧を扱う第1のDC/DCコンバータに無効電力を割り当てれば、無効電流は低減され、最小スイッチング変換による電力損失の低減に加えて、さらなる電力損失の低減を実現することができる。
(6)また、これは、交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられ、DCバスと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ降圧機能を有する第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、を備える電力変換装置についての、その制御方法であって、前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御するとともに、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定し、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、電力変換装置の制御方法である。
上記のような電力変換装置の制御方法では、交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源と接続されている第2のDC/DCコンバータと、DC/ACコンバータとの間で最小スイッチング変換方式のスイッチング動作を行う。第1のDC/DCコンバータは、第2のDC/DCコンバータが提供するDCバスの電圧指令値に合わせるようスイッチング動作する。従って、スイッチングによる電力損失は抑制される。また、制御部は、有効電力及び無効電力の配分を任意に定めることができる。例えば第2直流電源より第1直流電源の電圧が高い場合に、より高い電圧を扱う第1のDC/DCコンバータに無効電力を割り当てれば、無効電流は低減され、最小スイッチング変換による電力損失の低減に加えて、さらなる電力損失の低減を実現することができる。
[実施形態の詳細]
《回路構成の一例》
以下、本発明の一実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照して説明する。図1は、電力変換装置1及びこれを含む太陽光発電システム100の一例を示す回路図である。図において、電力変換装置1は、2つの直流電源(2,3)と、交流電路4との間に設けられている。交流電路4は、商用電力系統5に繋がっている。2つの直流電源とは例えば、第1直流電源としての太陽光発電パネル2、及び、第2直流電源としての蓄電池3である。電力変換装置1に太陽光発電パネル2及び蓄電池3を加えたものは、蓄電機能付きの太陽光発電システム100の一例である。なお、ここでは、太陽光発電パネル2の出力電圧は、交流電路4の電圧の絶対値のピーク電圧(例えば実効値202Vであれば、約286V)より高い値であるものとする。また、太陽光発電パネル2の発電可能な最大電力は、電力変換装置1が出力可能な電力を超えている、すなわち、過積載の状態であるとする。
電力変換装置1の主回路を構成する回路素子としては、太陽光発電パネル2からDCバス10までを見ると、太陽光発電パネル2と接続される2線の一方に設けられた逆流防止用のダイオード6と、ダイオード6を介した2線間に設けられた直流側コンデンサ7と、DC/DCコンバータ8と、DCバス10と、DCバス10の2線間に設けられた中間コンデンサ11とを備えている。DC/DCコンバータ8は、例えば、スイッチング素子Q1,Q2と、直流リアクトル9と、を図示のように接続して成る降圧チョッパである。なお、DC/DCコンバータ8は、逆方向に昇圧チョッパとして動作させることもできる双方向チョッパである。また、直流側コンデンサ7は、大容量(例えばmFレベル)の電解コンデンサである。
一方、蓄電池3からDCバス10までを見ると、蓄電池3の両端と接続される直流側コンデンサ12と、DC/DCコンバータ13とを備え、DC/DCコンバータ13の右端側は、DCバス10に接続されている。DC/DCコンバータ13は、スイッチング素子Q3,Q4と、直流リアクトル14と、を図示のように接続して成る。蓄電池3を放電させるときは、蓄電池3の電圧を昇圧させてDCバス10へ出力する昇圧チョッパとして動作し、逆に、蓄電池3を充電するときはDCバス10の電圧を下げる降圧チョッパとして動作する。
DCバス10には、インバータ(DC/ACコンバータ)15が接続されている。インバータ15は、スイッチング素子Q5,Q6,Q7,Q8をフルブリッジ接続したものである。インバータ15の交流側には、フィルタ回路16が接続されている。フィルタ回路16は、交流リアクトル17と、交流側コンデンサ18によって構成されている。インバータ15及び交流リアクトル17は協働して、直流から交流への変換の他、交流から直流への変換も可能である。
上述の各スイッチング素子Q1〜Q8は、制御部19により、制御される。制御部19は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部の記憶装置(図示せず。)に格納される。
なお、図1のスイッチング素子Q1〜Q8は、MOSFET(Metal-Oxide-semiconductor Field Effect Transistor)である。但し、スイッチング素子Q1〜Q8は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等、その他のパワー半導体スイッチング素子であってもよい。
計測・制御用の回路要素としては、まず、電圧センサ21は、直流側コンデンサ7の両端電圧を検出し、検出出力を制御部19に送る。電流センサ22は、直流リアクトル9に流れる電流を検出し、検出出力を制御部19に送る。電圧センサ23は、直流側コンデンサ12の両端電圧を検出し、検出出力を制御部19に送る。電流センサ24は、直流リアクトル14に流れる電流を検出し、検出出力を制御部19に送る。電圧センサ25は、DCバス10の2線間の電圧すなわち中間コンデンサ11の両端電圧を検出し、検出出力を制御部19に送る。電流センサ26は、交流リアクトル17に流れる電流を検出し、検出出力を制御部19に送る。電圧センサ27は、交流電路4の2線間の電圧を検出し、検出出力を制御部19に送る。
《スイッチング変換方式の概要》
上記電力変換装置1において、DC/DCコンバータ8は、制御部19の制御により、常にスイッチング動作を行い、降圧チョッパとして機能している。一方、他のDC/DCコンバータ13とインバータ15とは、最小スイッチング変換方式で動作している。最小スイッチング変換方式とは、本出願人が既に提案し(例えば特許第5618022号、特許第6187587号、他多数の公知文献あり。)実用化している変換方式である。
最小スイッチング変換方式では、まずこの変換方式を行う前提条件として、蓄電池3の出力する電圧が、交流電路4のピーク電圧の絶対値より低い。そして、制御部19は、DC/DCコンバータ13がスイッチング動作を休止する期間と、インバータ15がスイッチング動作を休止して極性反転のみを行う期間とが交互に現れるよう制御する。スイッチング動作は、制御部19がDC/DCコンバータ13又はインバータ15に高周波(例えば20kHz)のPWM(Pulse Width Modulation)信号を与えることにより行われる。最小スイッチング変換方式では、交流波形の絶対値の半サイクルに着目すると(1サイクルで見ても同様)、DC/DCコンバータ13が交流波形を作っている期間と、インバータ15が交流波形を作っている期間とがある。
図2及び図3は、(a)DC/DCコンバータ8からインバータ15を経て交流電圧を作る過程と、(b)DC/DCコンバータ13からインバータ15を経て交流電圧を作る過程とを並べて、それらの概要を一例として示す図である。両図は同じ内容を示しているが、図2は特に、直流入力から交流出力までの振幅の関係が見やすいように横書き表示し、図3は特に、制御のタイミングが見やすいように縦書き表示している。図2の上段及び図3の左欄は、上記(a)の変換方式を示し、また、図2の下段及び図3の右欄は、上記(b)すなわち最小スイッチング変換方式の動作を示す波形図である。
まず、図2の上段(又は図3の左欄)においては、太陽光発電パネル2から提供される直流電圧が、交流電圧のピーク値の絶対値より高い。そこで、DC/DCコンバータ8は、降圧チョッパとして動作する。但し、平坦な直流電圧に降圧するのではなく、他のDC/DCコンバータ13がDCバス10の電圧指令値とする電圧に合わせる。そのため、交流波形の一部の絶対値を含む図示のような波形になる。
次に、図2の下段(又は図3の右欄)の最小スイッチング変換方式では、交流波形の電圧指令値(瞬時値)の絶対値と、入力である直流電圧との比較結果に応じて、DC/DCコンバータ13とインバータ15とが動作する。すなわち、電圧指令値の絶対値が直流電圧より小さい(又は以下)のときは、DC/DCコンバータ13は停止し(図中の「ST」)、電圧指令値の絶対値が直流電圧以上(又は、より大きい)のときは、DC/DCコンバータ13が昇圧動作を行う(図中の「OP」)。DC/DCコンバータ13の出力は中間コンデンサ11により平滑化され、DCバス10に、図示のような交流波形の一部の絶対値を含む電圧として現れる。
ここで、中間コンデンサ11は、小容量(例えばμFのレベル)である。そのため、交流波形の絶対値のピーク電圧及びその前後の位相の波形が平滑化されずにそのまま残る。すなわち、平滑は、DC/DCコンバータ13(DC/DCコンバータ8も同様)による高周波のスイッチングの痕跡を消す程度には作用するが、商用周波数の2倍程度の低周波を平滑化することはできないように中間コンデンサ11が小容量になっている。
これに対してインバータ15は、電圧指令値の絶対値と、直流電圧との比較結果に応じて、電圧指令値の絶対値が、直流電圧より小さい(又は以下)のときは、高周波スイッチングを行い(図中の「OP」)、電圧指令値の絶対値が、直流電圧以上(又は、より大きい)のときは、高周波スイッチングを停止する。高周波スイッチングを停止しているときのインバータ15は、スイッチング素子Q5,Q8がオン、Q6,Q7がオフの状態と、スイッチング素子Q5,Q8がオフ、Q6,Q7がオンの状態のいずれかを選択することにより、必要な極性反転のみを行う(図中のST)。インバータ15の出力は交流リアクトル17及び交流側コンデンサ18により平滑化され、所望の交流出力が得られる。
ここで、図3の右欄に示すように、DC/DCコンバータ13とインバータ15とは、交互に高周波スイッチングの動作をしており、DC/DCコンバータ13が昇圧の動作をしているときは、インバータ15は高周波スイッチングを停止し、DCバス10の電圧に対して必要な極性反転のみを行っている。逆に、インバータ15が高周波スイッチング動作するときは、DC/DCコンバータ13は停止して、直流側コンデンサ12の両端電圧が、直流リアクトル14及びスイッチング素子Q4のボディダイオードを介してDCバス10に現れる。DC/DCコンバータ8は、DC/DCコンバータ13が作り出すDCバス10の電圧指令値に合わせるように降圧動作する。
以上のようにして、DC/DCコンバータ13とインバータ15とによる最小スイッチング変換方式の動作が行われる。一方、DC/DCコンバータ8は、常にスイッチング動作し、降圧を行っている。
《スイッチング変換方式の制御の詳細》
最小スイッチング変換方式では、DC/DCコンバータ13を、インバータ15の交流位相に同期して制御する必要がある。そのため、最初に交流出力の電流指令値i を決定する。直流電源が複数ある場合には、各直流電源から供給する有効電力を起源とする交流電流を分けて定義した方が、好都合である。以下に示す例では、第1直流電源である太陽光発電パネル2を起源とする電流指令値をi a1、第2直流電源である蓄電池3を起源とする電流指令値をi a2とする。
上記の電流指令値i a1,i a2には、有効電流だけでなく無効電流も含まれる。この無効電流は、最終的には太陽光発電パネル2側にある直流側コンデンサ7から供給されるが、とりあえず、電圧センサ27により検出される系統電圧検出値vaに対して、共通の位相角δ(力率1の場合はδ=0)を持つ正弦波として定義する。
次に、電流指令値i a1,i a2に、インバータ15と交流電路4との間の交流側コンデンサ18(キャパシタンスC)に流れる無効電流を加算して、交流リアクトル17に流す電流指令値i invを、式(1)によって求める。なお、数式の文字フォントは、数式以外に明細書で用いている文字フォントと異なるが、同じ文字は同じ物理量を表している(以下同様)。tは時間である。
Figure 0006988703

・・・(1)
次に、交流リアクトル17のインダクタンスをLaとし、スイッチング素子Q5〜Q8及び交流リアクトル17の抵抗をRとすると、系統電圧検出値vに、インダクタンスL,抵抗Rによる電圧降下を加算して、インバータ15の電圧指令値v invを式(2)によって求める。
Figure 0006988703

・・・(2)
さらに、DC/DCコンバータ13からは有効電力のみを供給するものとして、電流指令値i a2と系統電圧検出値vの積(電力)を交流1周期(=T)で平均して有効電力を求め、これを、電圧センサ23が検出する蓄電池3の電圧検出値vg2で除して、直流の電流指令値i d2を求めることができる。tは、任意の時間である。
Figure 0006988703

・・・(3)
DC/DCコンバータ13に含まれる直流リアクトル14のインダクタンスをLd2とし、DC/DCコンバータ13全体の抵抗をRd2とすると、蓄電池電圧検出値vg2から、インダクタンスLd2及び抵抗Rd2による電圧降下を減算して、DC/DCコンバータ13の出力電圧指令値v d2を式(4)によって求める。なお、インダクタンスLd2による電圧降下は、電流指令値i d2が一定のときは発生しないが、過渡時にi d2が変化する場合を考慮して式(4)に含めている。
Figure 0006988703

・・・(4)
電圧指令値v invと電圧指令値v d2とから、下記の式(5)により、DCバス10の電圧指令値v を求める。2つのDC/DCコンバータ8,13が、どちらも直流電源(2,3)から見て昇圧チョッパである場合は、直流電源のうち高い方の電圧と|v inv|を比較してv を決めるがDC/DCコンバータ8が太陽光発電パネル2から見て降圧チョッパであるため、太陽光発電パネル2の電圧は関係せず、以下の式(5)によりDCバス10の電圧指令値v を決めることができる。
Figure 0006988703

・・・(5)
最小スイッチング変換方式では、DCバス10の直流側及び交流側の瞬時電力は常に一致していなければならない。そのため、下記の式(6)を満たさなければならない。ここで、
d1:DC/DCコンバータ8の電流指令値
d1:DC/DCコンバータ8の電圧指令値
d2:DC/DCコンバータ13の電流指令値
d2:DC/DCコンバータ13の電圧指令値
:中間コンデンサ11のキャパシタンス
である。式(6)の右辺第1項はインバータ15の出力の瞬時電力、右辺第2項は中間コンデンサ11で発生する無効電力である。
Figure 0006988703

・・・(6)
電圧指令値v に、直流リアクトル9のインダクタンスLd1及び、DC/DCコンバータ8全体の抵抗Rd1による電圧降下を加算したものが、DC/DCコンバータ8の電圧指令値v d1となり、以下の式(7)を得る。
Figure 0006988703

・・・(7)
式(6)及び式(7)に基づいてDC/DCコンバータ8の電圧指令値v d1,電流指令値i d1を得ることができる。但し、非常に複雑になるので、以下に示す近似式を用いて求める。すなわち、一旦、式(6)式のv d1を、電圧センサ21が検出する電圧検出値vg1に置き換えて、i d1の近似値i d1を式(8)で求め、このi d1を用いた式(9)により電圧指令値v d1を求める。
Figure 0006988703

・・・(8)
Figure 0006988703

・・・(9)
最後に、式(9)により得た電圧指令値v d1を以下の式(10)に適用して、電流指令値i d1を得ることができる。
Figure 0006988703

・・・(10)
以上の演算により、制御部19は、インバータ15の電流指令値i inv、DC/DCコンバータ13の電流指令値i d2、DC/DCコンバータ8の電流指令値i d1を全て求めることができる。
制御部19は、インバータ15の電流指令値i invと電流センサ26が検出する電流検出値iinvとの差、及び、系統電圧検出値vaに基づいて、インバータ15を駆動するための電圧参照波vinv_refを求める。また、制御部19は、DC/DCコンバータ8の電流指令値i d1と電流センサ22が検出する電流検出値id1との差、及び、電圧指令値v に基づいて、DC/DCコンバータ8を駆動するための電圧参照波vd1_refを求める。さらに、制御部19は、DC/DCコンバータ13の電流指令値i d2と電流センサ24が検出する電流検出値id2との差、及び、蓄電池電圧vg2に基づいて、DC/DCコンバータ13を駆動するための電圧参照波vd2_refを求める。
そして、制御部19は、電圧参照波vinv_ref、電圧指令値v 、v inv、v d2に基づいて、インバータ15のゲート駆動パルスを得る。また、制御部19は、電圧参照波vd1_ref、電圧検出値vg1に基づいて、DC/DCコンバータ8のゲート駆動パルスを得る。さらに、制御部19は、電圧参照波vd2_ref、電圧指令値v d2、v invに基づいて、DC/DCコンバータ13のゲート駆動パルスを得る。
《シミュレーション結果》
図4〜図8は、図1に示す電力変換装置1及び上述の制御方法を用いて実施したシミュレーションの結果を示す波形図である。スイッチング周波数はインバータ15、DC/DCコンバータ8、DC/DCコンバータ13のいずれも、20kHzとした。横軸は時間[秒]である。
これらの波形図は上から順に次の内容を示している。
(1段目、縦軸は電流[A])
交流出力の電流指令値i 及び電流検出値i
(2段目、縦軸は電流[A])
DC/DCコンバータ8の電流指令値i d1(太く見える脈流波形の中心の線)、電流検出値id1(太く見える脈流波形)、及び、太陽光発電パネル2の出力電流ipv(小さく波打っている細い線(図4〜図6のみ))
(3段目、縦軸は電流[A])
DC/DCコンバータ13の電流指令値i d2及び電流検出値id2
(4段目、縦軸は電圧[V])
DCバス10の電圧指令値v 及び電圧検出値v(両者は脈動していてほぼ重なっている。)、DC/DCコンバータ8への入力電圧vg1(高いレベルのほぼ直線)、及び、DC/DCコンバータ13への入力電圧vg2、(100V付近のほぼ直線)
(5段目)
インバータ15、DC/DCコンバータ8、DC/DCコンバータ13へのゲート駆動信号
まず、図4は、電流指令値i a1=20A(rms)、i a2=0A(rms)、すなわち、太陽光発電が4kW、蓄電池3は充放電を行わない場合のシミュレーション結果を示している。蓄電池3は充放電を行わないためDC/DCコンバータ13はゲートブロックされている。インバータ15は交流電圧の絶対値が100V以下となる期間のみスイッチングを行い、100Vを超える期間ではスイッチングを停止して、系統電圧の極性に応じて導通状態を切り替える。DC/DCコンバータ8は常にスイッチングを行う。
図4の場合、交流出力電流の実効値は指令値とほぼ一致しており、総合高調波歪は1.8%と小さい。DC/DCコンバータ8は有効電力と無効電力とを供給するため脈流が流れているが、無効電流は直流側コンデンサ7により吸収され、太陽光発電パネル2の出力電流は直流10Aに平滑化されている。DC/DCコンバータ13はゲートブロックされているが、系統電圧の絶対値が100V以下となる期間に、高電位側のダイオード(スイッチング素子Q4のボディダイオード)が導通するため僅かだが放電方向に電流が流れている。
図5は、電流指令値i a1=25A(rms)、i a2=−5A(rms)、すなわち、太陽光発電が5kW、蓄電池3は1kWの充電を行う場合のシミュレーション結果を示している。インバータ15は交流電圧の絶対値が100V以下となる期間のみスイッチングを行い、100Vを超える期間ではスイッチングを停止して、交流半サイクルごとに、極性の反転のみを行う。逆に、DC/DCコンバータ13は、交流電圧の絶対値が100V以下となる期間にスイッチングを停止し、100Vを超える期間でのみスイッチングを行っており、インバータ15とDC/DCコンバータ13とは、最小スイッチング変換方式で動作していることがわかる。
なお、DC/DCコンバータ8は、常にスイッチングを行う。交流出力電流の実効値は指令値とほぼ一致しており、総合高調波歪は2.5%と小さい。DC/DCコンバータ13には、基本的には直流電流だけが流れる。
図6は、電流指令値i a1=15A(rms)、i a2=5A(rms)、すなわち、太陽光発電が3kW、蓄電池3は1kWの放電を行う場合のシミュレーション結果を示している。スイッチング動作の期間は図5と同じであり、この場合もインバータ15とDC/DCコンバータ13は最小スイッチング変換方式で動作している。DC/DCコンバータ8は、常時スイッチングとなっている。交流出力電流の実効値は指令値とほぼ一致しており、総合高調波歪は2.8%と、十分に小さい。DC/DCコンバータ13には直流電流だけが流れる。
図7は、電流指令値i a1=0A(rms)、i a2=5A(rms)、すなわち、太陽光発電は停止、蓄電池3は1kWの放電を行う場合のシミュレーション結果を示している。スイッチング動作の期間は図5,図6と同じであり、この場合もインバータ15とDC/DCコンバータ13とは最小スイッチング変換方式で動作している。DC/DCコンバータ8は、常時スイッチングとなっている。交流出力電流の実効値は指令値とほぼ一致しており、総合高調波歪も12.5%と、大きくなった。DC/DCコンバータ13には直流電流だけが流れる。
図8は、電流指令値i a1=0A(rms)、i a2=−5A(rms)、すなわち、太陽光発電は停止、蓄電池3は1kWの充電を行う場合のシミュレーション結果を示している。スイッチング動作の期間は図5,図6,図7と同じであり、この場合もインバータ15とDC/DCコンバータ13とは最小スイッチング変換方式で動作している。DC/DCコンバータ8は常時スイッチングとなっている。交流出力電流の実効値は指令値と概ね一致しており、総合高調波歪は10.3%と、大きくなった。DC/DCコンバータ13には直流電流だけが流れる。
《ここまでの考察その他》
以上、交流電圧のピーク値の絶対値を超える高い電圧(例えば400V以上)を出力する太陽光発電用に、降圧チョッパとして機能するDC/DCコンバータ8を使用した電力変換装置1について検討した。太陽光発電用のDC/DCコンバータを降圧チョッパとした場合には、このDC/DCコンバータは、常時スイッチングが必要であるが、蓄電池用のDC/DCコンバータと、インバータとは、太陽光発電パネルの出力電圧によらず常に最小スイッチング変換方式で動作を行うことができる。
なお、図1におけるDC/DCコンバータ8は降圧チョッパであるが、これに代えて、昇降圧が可能な非絶縁型の昇降圧チョッパや、昇降圧自在の絶縁型DC/DCコンバータを使用することも可能である。
また、上記実施形態では、2つの直流電源の一方が太陽光発電パネル2で、他方が蓄電池3である構成としたが、直流電源の構成はこれに限られるわけではない。例えば、蓄電池の直流電源が2系統あり、互いに電圧の大きな差がある場合や、太陽光発電が2系統あり、互いに電圧の大きな差がある場合でも、同様な制御を適用することができる。要するに、少なくとも2系統ある直流電源に接続する電力変換装置において、共通のDCバスの電圧指令値を考えるとき、2系統の直流電源のいずれの電圧よりも高い電圧を含む電圧指令値とする制御以外に、2系統の直流電源の電圧を一方では昇圧し、他方では降圧することになる電圧指令値とする制御も可能である、ということである。
また、ハイブリッド型の電力変換装置で最小スイッチング変換方式を行う場合、DCバスに供給する無効電流を複数のDC/DCコンバータに任意に分配することができる。ここで、全ての無効電力を太陽光発電用のDC/DCコンバータから供給して、蓄電池用のDC/DCコンバータからは有効電力だけを供給する方が、利点が多い。すなわち、以下の利点である。
(i)一般に、蓄電池よりも太陽光発電パネルの方が、電圧が高いため、その分、太陽光発電パネル側のDC/DCコンバータを流れる無効電流が小さくなり、回路の損失を低減できる。
(ii)太陽光発電パネルはインピーダンスが大きいため、DC/DCコンバータとの間にキャパシタンスの大きなコンデンサを置くと、そこに、無効電流が吸収される。その結果、太陽光発電パネルには直流電流だけが流れることになり、適切に、最大電力点追従制御を行うことができる。
(iii)蓄電池はインピーダンスが低いため、コンデンサを置いても無効電流が吸収されず、無効電流がほぼそのまま蓄電池に流れるが、蓄電池用のDC/DCコンバータに無効電流を割り当てなければ、蓄電池に無効電流が流れず、寿命を延ばすことができる。
従って、図1の電力変換装置1では、DC/DCコンバータ8から無効電力を供給するためDC/DCコンバータ8は双方向チョッパとし、その無効電力を、太陽光発電パネル2に流さず直流側コンデンサ7で吸収する。そのため、直流側コンデンサ7は、前述のように大容量の電解コンデンサである。また、太陽光発電パネル2が発電していない時間帯でもDC/DCコンバータ8から無効電力を供給することができる。そのため、太陽光発電パネル2と直流側コンデンサ7との間には逆流防止用のダイオード6が挿入されている。
《まとめ》
以上のように、本実施形態の電力変換装置1は、太陽光発電パネル2(第1直流電源)と接続される第1のDC/DCコンバータ8と、蓄電池3(第2直流電源)と接続される第2のDC/DCコンバータとを有する。第1のDC/DCコンバータ8は降圧機能を有している。制御部19は、第2のDC/DCコンバータ13とインバータ15(DC/ACコンバータ)とを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御(最小スイッチング変換)し、第2のDC/DCコンバータ13の電圧指令値(v d2)とインバータ15の電圧指令値の絶対値(|v inv|)とのいずれか高い方の電圧をDCバス10の電圧指令値(v )として設定する。そして、制御部19は、第2のDC/DCコンバータ13が主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が第1のDC/DCコンバータ8となるよう制御する。
このような電力変換装置1では、交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い蓄電池3と接続されているDC/DCコンバータ13と、インバータ15との間で最小スイッチング変換方式のスイッチング動作を行う。DC/DCコンバータ8は、DC/DCコンバータ13が提供するDCバスの電圧指令値に合わせるようスイッチング動作する。従って、スイッチングによる電力損失は抑制される。また、制御部19は、有効電力及び無効電力の配分を任意に定めることができる。例えば蓄電池3より太陽光発電パネル2の電圧が高い場合に、より高い電圧を扱うDC/DCコンバータ8に無効電力を割り当てれば、無効電流は低減され、最小スイッチング変換による電力損失の低減に加えて、さらなる電力損失の低減を実現することができる。
また、そのために、DC/DCコンバータ8と太陽光発電パネル2との間に、DCバス10に無効電力を供給するための大容量の直流側コンデンサ7を備えている。この直流側コンデンサ7により、DC/DCコンバータ8を経て、DCバス10に無効電力を供給することができる。
なお、DC/DCコンバータ13から有効電力のみをDCバス10に供給し、かつ、直流側コンデンサ7及びDC/DCコンバータ8から無効電力をDCバス10に供給することは利点がある。すなわち、太陽光発電パネル2は蓄電池3に比べてインピーダンスが大きいので、そもそも太陽光発電パネル2に無効電流は流れにくい。そのため、直流側コンデンサ7にほぼ全ての無効電流が流れ、太陽光発電パネル2は直流電流だけを流す。従って、無効電流が太陽光発電パネル2の最大電力点追従制御を妨げることはなく、適切に、最大電力点追従制御を行うことができる。
また、蓄電池3は太陽光発電パネル2に比べてインピーダンスが小さいので、蓄電池3には無効電流が流れやすい。もし無効電流が流れると蓄電池3の寿命が短くなる。しかし、DC/DCコンバータ13は有効電力のみを扱うので、蓄電池3に無効電流が流れることを抑制できる。さらに、一般に、太陽光発電パネル2の出力電圧は蓄電池3より高い場合が多いので、その分、無効電流が小さくなり、無効電流によって生じる損失を抑制することができる。
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 電力変換装置
2 太陽光発電パネル
3 蓄電池
4 交流電路
5 商用電力系統
6 ダイオード
7 直流側コンデンサ
8 DC/DCコンバータ
9 直流リアクトル
10 DCバス
11 中間コンデンサ
12 直流側コンデンサ
13 DC/DCコンバータ
14 直流リアクトル
15 インバータ
16 フィルタ回路
17 交流リアクトル
18 交流側コンデンサ
19 制御部
21 電圧センサ
22 電流センサ
23 電圧センサ
24 電流センサ
25 電圧センサ
26 電流センサ
27 電圧センサ
100 太陽光発電システム
Q1〜Q8 スイッチング素子

Claims (6)

  1. 交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられる電力変換装置であって、
    DCバスと、
    前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、
    前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、
    前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、
    前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、電力変換装置。
  2. 前記第1のDC/DCコンバータと前記第1直流電源との間に、前記DCバスに無効電力を供給するためのコンデンサを備える、請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記第1直流電源は太陽光発電パネルであり、前記第2直流電源は蓄電池であって、
    前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータから有効電力のみを前記DCバスに供給し、かつ、前記コンデンサ及び前記第1のDC/DCコンバータから無効電力を前記DCバスに供給するよう制御する請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記第1直流電源の出力電圧は前記ピーク値よりも高く、前記制御部は、前記第1のDC/DCコンバータが、前記第1直流電源から入力された電圧を前記電圧指令値に降圧するよう制御する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  5. 太陽光発電パネルと、蓄電池と、前記太陽光発電パネル及び前記蓄電池と交流電路との間に設けられた電力変換装置と、を備え、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも前記蓄電池の出力電圧が低く、また、前記太陽光発電パネルの発電可能な最大電力が、前記電力変換装置が出力可能な電力を超えている太陽光発電システムであって、
    前記電力変換装置は、
    DCバスと、
    前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、
    前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ、降圧機能を有し、常時スイッチング動作を行う第1のDC/DCコンバータと、
    前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、
    前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御し、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、太陽光発電システム。
  6. 交流電路と、第1直流電源、及び、前記交流電路の交流電圧の絶対値におけるピーク値よりも出力電圧が低い第2直流電源との間に設けられ、DCバスと、前記第1直流電源と前記DCバスとの間に設けられ降圧機能を有する第1のDC/DCコンバータと、前記第2直流電源と前記DCバスとの間に設けられた第2のDC/DCコンバータと、前記DCバスと前記交流電路との間に設けられたDC/ACコンバータと、を備える電力変換装置についての、その制御方法であって、
    前記第2のDC/DCコンバータと前記DC/ACコンバータとを交流半サイクル内で交互にスイッチング動作の休止期間があるように制御するとともに、前記第2のDC/DCコンバータの電圧指令値と前記DC/ACコンバータの電圧指令値の絶対値とのいずれか高い方の電圧を前記DCバスの電圧指令値として設定し、
    前記第2のDC/DCコンバータが主として有効電力を供給し、かつ、無効電力の供給主体が前記第1のDC/DCコンバータとなるよう制御する、
    電力変換装置の制御方法。
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