JP6988546B2 - 活性エネルギー線硬化型塗料 - Google Patents
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Description
ポリオレフィン樹脂基材への付着性が高い低塩素化度の塩素化ポリオレフィン樹脂は、柔らかいため、単独で塗料用バインダーとして用いることは難しく、一般的には(メタ)アクリル系樹脂と併用される。しかし、低塩素化度の塩素化ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性が高くない。
そこで、塩素化ポリオレフィン樹脂を(メタ)アクリル変性する、つまり(メタ)アクリル系化合物をグラフト重合することにより、付着性及び塗膜物性の向上を目指すことが多い。
(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂溶液やこれを含む塗料は、貯蔵安定性、特に高温での貯蔵安定性が低く、貯蔵中に溶剤不溶の高分子塊(ブツ)が発生したり、増粘やゲル化を引き起こす問題がある。
(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂溶液やこれを含む塗料には、(メタ)アクリル変性に用いた(メタ)アクリル系化合物の一部が未反応のまま残存している。
また、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂のベースとなるポリオレフィン樹脂の製造方法として、有機金属触媒を用いてオレフィンを重合する方法がある。この場合、得られるポリオレフィン樹脂は有機金属触媒を含み、このポリオレフィン樹脂をベースとして製造された(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂も有機金属触媒を含むこととなる。この有機金属触媒が、樹脂中に残存する(メタ)アクリル系化合物の意図しない重合を引き起こし、ブツや増粘、ゲル化を発生させる。
活性エネルギー線硬化型塗料の場合には、さらに多くの(メタ)アクリル系化合物が含まれるため、上記の問題がより顕著に現れる。
しかし、特許文献1では、ブツや増粘、ゲル化の問題について検討されていない。また、脂肪酸アミドは、比較的低分子量のワックス状であり、塗膜物性を低下させる原因となる。
〔1〕(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、アセチルアセトンとを含む(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂溶液。
〔2〕前記アセチルアセトンの含有量が、前記(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.5質量部以上である前記〔1〕の(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂溶液。
〔3〕(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、(メタ)アクリル系化合物と、アセチルアセトンとを含む活性エネルギー線硬化型塗料。
〔4〕前記アセチルアセトンの含有量が、前記(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.5質量部以上である前記〔3〕の活性エネルギー線硬化型塗料。
本発明の(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂溶液(以下、「本樹脂溶液」とも記す。)は、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、アセチルアセトンとを含む。
本明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを示す。「(メタ)アクリロイル基」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」も同様である。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
塩素化ポリオレフィン樹脂にグラフト重合される(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂として市販品を用いてもよい。有機金属触媒を含む(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本製紙株式会社のスーパークロン(登録商標)224Hが挙げられる。
本樹脂溶液は、溶剤としてアセチルアセトンのみを含んでいてもよく、アセチルアセトン以外の他の溶剤をさらに含んでいてもよい。
他の溶剤は、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の溶解性に優れる点で、炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。
低沸点溶剤の沸点は、60〜120℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。沸点は、大気圧(1atm)における値である。
低沸点溶剤は、炭化水素系溶剤でもよく、炭化水素系溶剤以外の溶剤でもよい。
低沸点溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
本樹脂溶液中、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、本樹脂溶液100質量%中、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が前記下限値以上であると、十分な溶解性が確保でき、前記上限値以下であると、樹脂溶液の流動性がより優れるのでハンドリングしやすい。
アセチルアセトンの含有量は、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.5〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1.0〜10質量部がさらに好ましい。
また、アセチルアセトンは、本樹脂溶液やこれを含む塗料を塗装して塗膜を形成する際に揮発させることができる。アセチルアセトンが塗膜中に残存しないことで、塗膜物性(耐摩耗性等)が低下せず、目的とする塗膜物性が十分に発現する。
したがって、本樹脂溶液やこれを含む塗料によれば、塗膜物性の良好な塗膜を形成できる。
アセチルアセトンは、本樹脂溶液中で、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂に含まれる有機金属触媒と錯体構造を形成し、有機金属触媒を不活性化させる。そのため、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂中に残留する(メタ)アクリル系化合物が有機金属触媒の作用によって重合することを抑制できる。
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料(以下、「本塗料」とも記す。)は、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、(メタ)アクリル系化合物と、アセチルアセトンとを含む。
(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂は、前記と同様であり、好ましい態様も同様である。
多官能性(メタ)アクリル系化合物は、モノマーでもよくオリゴマーでもよい。
(メタ)アクリル系化合物は、1分子中に3個以上(好ましくは3〜6個)の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物を含むことがより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリル系化合物と、1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能性(メタ)アクリル系化合物とを併用してもよい。
ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコール、多価アルコールとアジピン酸等の多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリルレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単官能性(メタ)アクリル系化合物としては、例えばベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
他の樹脂成分としては、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等が挙げられる。
アルキド樹脂としては、純アルキッド樹脂や、長油変性、中油変性、単油変性、シリコーン変性、アクリル変性、エポキシ変性、ウレタン変性、メラミン変性等の変性アルキッド樹脂等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体等が例示できる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なであればよく、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
これらの樹脂成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線の照射により(メタ)アクリル系化合物の重合を開始できるものであれば特に制限されない。例えば商品名として、イルガキュア(登録商標)149、イルガキュア184、イルガキュア500、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア819、イルガキュア907、イルガキュア1000、イルガキュア1800(以上、BASFジャパン社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、カヤキュアDETX−S、カヤキュアEPA、カヤキュアDMBI(以上、日本化薬社製)、バイキュア55(アクゾノーベル社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の成分としては、通常の塗料に用いられる添加剤を適宜使用でき、例えば光増感剤、光促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、表面調整剤、可塑剤、顔料、染料、顔料沈降防止剤等が挙げられる。
本塗料中、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量は、本塗料100質量%中、10.0〜30.0質量%が好ましく、15.0〜25.0質量%がより好ましい。(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が前記下限値以上であると、溶解性がより優れ、前記上限値以下であると、ハンドリング性がより優れる。
アセチルアセトンの含有量は、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.5〜50.0質量部が好ましく、1.0〜20.0質量部がより好ましく、2.0〜20.0質量部がさらに好ましい。
添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。
基材の材質としては、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート、ナイロン、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂等のプラスチックが挙げられる。(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂はポリオレフィン樹脂への付着性に優れることから、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
本塗料は、例えば、以下の手順で塗装できる。まず、スプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、カーテンコート法、フローコート法、浸漬塗り法等の塗布方法により、本塗料を基材上に塗布する。次いで、熱風乾燥炉等で加熱乾燥し、アセチルアセトン等の溶剤を除去して塗膜(乾燥膜)を形成する。次いで、前記塗膜に対し、100〜3000mJ/cm2程度(日本電池株式会社製「UVR−N1」による測定値)の紫外線をヒュージョンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いて1〜10分間程度照射し、前記塗膜を硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、ガンマ線等も使用できる。
硬化後の塗膜(硬化膜)の厚さは、例えば5〜30μmであってよい。
また、アセチルアセトンは、本塗料を塗装して塗膜を形成する際に揮発させることができる。アセチルアセトンが塗膜中に残存しないことで、塗膜物性(耐摩耗性、耐湿性、耐水性等)が低下せず、目的とする塗膜物性が十分に発現する。
したがって、本塗料によれば、塗膜物性の良好な塗膜を形成できる。
アセチルアセトンによってブツや増粘、ゲル化の発生を抑制できる理由としては、前記のとおり、アセチルアセトンが、(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂に含まれる有機金属触媒と錯体構造を形成し、有機金属触媒を不活性化させることが考えられる。
表1〜表2に従って各材料を配合し、活性エネルギー線硬化型塗料を調製した。表1〜表2中、各材料の配合量の単位は質量部である。
表3に従って各材料を配合し、樹脂溶液を調製した。表3中、各材料の配合量の単位は質量部である。
調製した活性エネルギー線硬化型塗料及び樹脂溶液をそれぞれ60℃で15日間貯蔵した。貯蔵後の活性エネルギー線硬化型塗料及び樹脂溶液それぞれにおけるブツの発生具合を粒ゲージにて測定し、目視にて増粘、ゲル化を以下の基準で貯蔵安定性を評価した。結果を表1〜3に示す。
〇:ブツや増粘、ゲル化は見られなかった。
△:直径1.0μm未満のブツが見られたが、直径1.0μm以上のブツは見られなかった。もしくは増粘が見られたが使用に支障はない範囲であった。
×:直径1.0μm以上のブツが見られた。もしくは使用に支障のある増粘やゲル化が見られた。
KAYARAD TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬株式会社製)。
ダイヤビームUK−6053:ウレタンアクリレート(三菱ケミカル株式会社製)。
スーパークロン224H:(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン(日本製紙株式会社製)。
テスポール1105:ロジン変性マレイン酸樹脂(ハリマ化成株式会社製)。
BYK−307:シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製)。
イルガキュア149:光重合開始剤(ビー・エー・エス・エフジャパン株式会社製)。
イルガキュア651:光重合開始剤(ビー・エー・エス・エフジャパン株式会社製)。
また、アセチルアセトンは、塗膜の形成時に揮発させることができる。そのため、アセチルアセトンは塗膜中に残存せず、塗膜物性(耐摩耗性、耐湿性、耐水性等)を低下させない。したがって、実施例の活性エネルギー線硬化型塗料及び樹脂溶液により、塗膜物性に優れた塗膜を形成できる。
Claims (2)
- (メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂と、(メタ)アクリル系化合物と、アセチルアセトンとを含む活性エネルギー線硬化型塗料。
- 前記アセチルアセトンの含有量が、前記(メタ)アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.5質量部以上である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料。
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