JP6987941B1 - 熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は、本技術に係る熱伝導性シート1の一例を示す断面図である。熱伝導性シート1は、高分子マトリクス2と、異方性充填材3と、非異方性充填材4とを含有する。熱伝導性シート1は、異方性充填材3と非異方性充填材4とが高分子マトリクス2に分散しており、異方性充填材3が熱伝導性シート1の厚み方向Bに配向している。そして、熱伝導性シート1は、比誘電率が低く、熱伝導率が高く、比重が小さい。熱伝導性シート1の厚み方向Bに、異方性充填材3が配向しているとは、熱伝導性シート1中の全ての異方性充填材3のうち、熱伝導性シート1の厚み方向Bに長軸が配向している異方性充填材3の割合が50%以上であることをいう。
高分子マトリクス2は、異方性充填材3と非異方性充填材4とを熱伝導性シート1内に保持するためのバインダ樹脂である。高分子マトリクス2は、熱伝導性シート1に要求される機械的強度、耐熱性、電気的性質等の特性に応じて選択される。高分子マトリクス2としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂の中から選択することができる。
異方性充填材3は、形状に異方性を有する熱伝導性フィラーである。異方性充填材3としては、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラー、例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーが挙げられる。鱗片状の熱伝導性フィラーとは、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラーであって、高アスペクト比(長軸/厚み)であり、長軸を含む面方向に等方的な熱伝導率を有するものである。鱗片状の熱伝導性フィラーの短軸とは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面において、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸に交差する方向であって、鱗片状の熱伝導性フィラーの最も短い部分の長さをいう。厚みとは、鱗片状の熱伝導性フィラーの長軸を含む面の厚みを10点測定して平均した値をいう。異方性充填材3のアスペクト比は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、異方性充填材3のアスペクト比は、10〜100の範囲とすることができる。異方性充填材3の長軸、短軸及び厚みは、例えば、マイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)、粒度分布計などにより測定できる。
非異方性充填材4は、上述した異方性充填材3以外の熱伝導性フィラーであり、形状に異方性を有しない熱伝導性フィラーである。例えば、非異方性充填材4には、球状、粉末状、顆粒状などの熱伝導性フィラーが含まれる。非異方性充填材4の材質は、熱伝導性シート1の絶縁性を確保できるものが好ましく、例えば、セラミックフィラーが好ましく、具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、ジルコニア、炭化ケイ素などが挙げられる。非異方性充填材4は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本技術に係る熱伝導性シートの製造方法は、下記工程Aと、工程Bと、工程Cとを有する。
工程Aでは、異方性充填材3と非異方性充填材4とを高分子マトリクス2に分散させることにより、熱伝導性シート形成用組成物を調製する。熱伝導性シート形成用組成物は、異方性充填材3と、非異方性充填材4と、高分子マトリクス2との他に、必要に応じて各種添加剤や揮発性溶剤とを公知の手法により均一に混合することにより調製できる。
工程Bでは、調製された熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する。成形体ブロックの形成方法としては、押出成形法、金型成形法などが挙げられる。押出成形法、金型成形法としては、特に制限されず、公知の各種押出成形法、金型成形法の中から、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の粘度や熱伝導性シートに要求される特性等に応じて適宜採用することができる。
工程Cでは、成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シート1を得る。工程Cで得られる熱伝導性シート1は、厚み方向Bに異方性充填材3がほぼ配向している。スライスにより得られるシートの表面(スライス面)には、異方性充填材3が露出する。スライスして得られた熱伝導性シート1は、表面が平滑化されるため、他の部材との密着性を向上させることができ、熱伝導性と比非誘電率をより良好にすることができる。成形体ブロックをスライスする方法としては、特に制限はなく、成形体ブロックの大きさや機械的強度により公知のスライス装置の中から適宜選択できる。成形体ブロックのスライス方向としては、成形方法が押出成形法である場合、押出し方向に異方性充填材3が配向しているものもあるため、押出し方向に対して60〜120度であることが好ましく、70〜100度の方向であることがより好ましく、90度(垂直)の方向であることがさらに好ましい。
本技術に係る熱伝導性シート1は、例えば、発熱体と放熱体との間に配置させることにより、発熱体で生じた熱を放熱体に逃がすためにそれらの間に配された構造の電子機器(サーマルデバイス)とすることができる。電子機器は、発熱体と放熱体と熱伝導性シート1とを少なくとも有し、必要に応じて、その他の部材をさらに有していてもよい。
実施例1では、シリコーン樹脂32体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)27体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)19体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。押出成形法により、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、直方体状の内部空間を有する金型(開口部:50mm×50mm)中に流し込み、60℃のオーブンで4時間加熱させて成形体ブロックを形成した。なお、金型の内面には、剥離処理面が内側となるように剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り付けておいた。得られた成形体ブロックの長さ方向に直交する方向に、成形体ブロックをスライサーでシート状にスライスすることにより、厚さ2mmの、異方性充填材である鱗片状の窒化ホウ素が熱伝導性シートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
実施例2では、実施例1と同様の熱伝導性シートを得た後、スライス面を剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムで挟んで、プレス機でプレスした。プレス条件は、圧力0.5MPa、80℃で3分間とした。
実施例3では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)20体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填材である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
実施例4では、シリコーン樹脂36体積%と、結晶形状が六方晶型である鱗片状の窒化ホウ素(D50が40μm)23体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)20体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)18体積%と、酸化亜鉛(D50が1μm)1体積%と、水酸化アルミニウム(D50が1μm)1体積%と、カップリング剤1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様の方法で、異方性充填材である鱗片状の窒化ホウ素がシートの厚み方向に配向した熱伝導性シートを得た。
比較例1では、シリコーン樹脂25体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)29体積%と、アルミナ粒子(D50が1μm)45体積%と、カップリング剤を1体積%を均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、60℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
比較例2では、シリコーン樹脂19体積%と、窒化アルミニウム(D50が1.5μm)16体積%と、窒化アルミニウム(D50が80μm)35体積%と、窒化アルミニウム(D50が30μm)29体積%と、カップリング剤を1体積%とを均一に混合することにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製した。調製した熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、剥離処理された剥離ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、80℃のオーブンで4時間加熱させて、厚さ2mmの熱伝導性シートを形成した。
ASTM−D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cm2をかけて熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の熱伝導率(W/m・K)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。
熱伝導性シートの縦、横の長さと厚みから求めた体積と熱伝導シートの重量を測定することにより、熱伝導性シートの比重を求めた。結果を表1に示す。
Claims (13)
- シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シートであって、上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、
当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、
当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、
当該熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である、熱伝導性シート。 - 上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
- 上記異方性充填材の含有量が20体積%以上である、請求項1又は2記載の熱伝導性シート。
- 上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
- 上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項4に記載の熱伝導性シート。
- シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記熱伝導性シートは、上記異方性充填材が上記熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、上記熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、上記熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、上記熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下である、熱伝導性シートの製造方法。 - 上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした後にプレスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記異方性充填材の含有量が20体積%以上である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項11に記載の熱伝導性シートの製造方法。
- 発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。
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