JP6986351B2 - アルカリ電池用セパレーター、アルカリ電池 - Google Patents
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筒状に成形された帯状の2枚の不織布からなり、
前記帯状の2枚の不織布は、それぞれが長辺方向を前後方向として、前後に二分する位置を底部として、当該底部に対して前方と後方の領域が上方に立ち上げられているとともに、前記長辺に沿う領域で重ね合わされて、閉じた側面が形成され、
前記2枚の不織布の一方からなる有底筒状の外筒部内に他方からなる有底筒状の内筒部が挿入され、
前記内筒部と前記外筒部は、それぞれの前記長辺に沿う領域が対面しないように、前記筒軸周りに相対的に回転した位置に配置され、
前記外筒部と前記内筒部は、それぞれ、前記長辺に沿う領域にアスファルト系のシール剤が塗布されている、
ことを特徴とするアルカリ電池用セパレーターとしている。また、1mg以上3mg以下の量の前記シール剤が前記長辺に沿って1mm以上3mm以下の幅で塗布されていることを特徴とするアルカリ電池用セパレーターとすることもできる。
LR20型やLR14型など、電池缶のサイズが大きなアルカリ電池では、大きな衝撃が加わった際、LR6型やLR03型などの小型のアルカリ電池よりも負極ゲルの量が多いため、セパレーターの内面に掛かる圧力が大きくなる。したがって、サイズが大きなアルカリ電池には平巻き方式セパレーターが採用されていた。しかし、平巻き方式セパレーターは、セパレーターの表面積に占める溶着領域の割合が大きくなるほど電解液の吸液量が減少し、アルカリ電池の放電性能を低下させる。そして、小型のアルカリ電池は、セパレーターの表面積が小さく、平巻き方式セパレーターを採用すると溶着領域の割合が相対的に大きくなる。したがって、小型のアルカリ電池ではクロス方式セパレーターを採用することが望ましい。
クロス方式セパレーターは、外筒部内に内筒部を挿入した二重筒状である。クロスセパレータを備えたアルカリ電池の耐衝撃性能を向上させるためには、負極ゲルの漏出経路となる、内筒部と外筒部の側面同士が接触する領域を閉鎖することが必要となる。しかし、この領域を溶着してしまうと、その領域でイオン透過性が阻害され、アルカリ電池の放電性能が劣化する。もちろん溶着工程が別途必要であり、製造コストも嵩む。
図5に本発明の実施例に係るセパレーターの構造を示した。図5(A)は、本実施例のセパレーター4cの外観図であり、図5(B)はセパレーター4cの分解図である。なお、ここではアルカリ電池内に組み込まれて有底円筒状に成形されたセパレーター4cを示した。図5(A)に示したように、本実施例のセパレーター4cは、2枚の不織布(140a、140b)がともに有底円筒状に成形され、一方の不織布140aから成形された外筒部147aの内方に他方の不織布140bから成形された内筒部147bが挿入され二重円筒状となっている。しかし、図5(B)に示したように、外筒部147aと内筒部147bは、側面145にスリットがなく、それぞれが個別に円筒の側面145と底部144を有して、上方の開口46以外が閉じている。そして側面145は帯状の1枚の不織布(140a、140b)における同じ長辺141が側面145に対面して長辺141に沿う領域150が重複している。さらに、長辺141に沿うこの領域(以下、重複領域150とも言う)には所定の幅でシール剤が塗布されており、1枚の帯状の不織布(140a、140b)は、円筒状に成形された状態では、重複領域150がそのシール剤を介して積層されている。それによって、負極ゲルの漏出経路になり易い重複領域150がシール剤によって閉鎖される。また本実施例のセパレーター4cは、2枚の帯状の不織布(140a、140b)のそれぞれが個別に閉じた有底筒状に形成されて外筒部147aに内筒部147bが挿入された二重筒状になっている。さらに内筒部147bと外筒部147aは、それぞれの重複領域150が対面しないように、円筒軸100周りに相対的に回転した位置に配置されている。そのため、もし、内筒部147bの重複領域150から負極ゲルが漏れ出したとしても、その内筒部147bから漏出した負極ゲルを外筒部147a内に止まらせることができる。なお、図5に示したセパレーター4cでは、内筒部147bが外筒部147aに対して円筒軸100周りに90゜回転している。そして本実施例のセパレーター4cは、重複領域150が溶着されていないため、イオン伝導性も低下し難い。
つぎに、本発明の実施例に係るセパレーターの性能を評価するために、シール剤の配置状態が異なる各種セパレーターをサンプルとして作製した。ここではシール剤の塗布条件を容易に変えることができるように、有底角筒状のセパレーターを作製した。図6にサンプルとして作製したセパレーターの概略を示した。図6(A)〜(E)はサンプルとなるセパレーター4dの製造手順を示しており、まず、図6(A)に斜線のハッチングで示したように、2枚の帯状の不織布(140a、140b)のそれぞれの長辺141に沿う領域にサンプルに応じた所定の幅wでシール剤50を塗布しておく。またサンプルに応じて幅wとともにシール剤50の塗布量も変える。ここでは質量(g)を塗布量とした。シール剤は、ディスペンサやスクリーン印刷法を用いることで塗布することができる。なお、帯状の不織布(140a、140b)の長辺141方向を前後方向とすると、ここでは長辺141に沿う領域のうち、前後一方の短辺142から前後長の半分の長さまでの領域にシール剤50を塗布した。もちろん長辺141の全長にわたってシール剤50を塗布してもよい。そして、図6(B)に示したように、2枚の帯状の不織布(140a、140b)のそれぞれを従来のクロス方式セパレーターと同様にして角筒状の外筒部147aと内筒部147bに成形する。このとき、帯状の不織布(140a、140b)における長辺141に沿う領域を互いに重ね合わせて重複領域150を形成する。また重複領域150を圧着する。それによって、側面145が閉じた角筒状に成形される。そして図6(C)に示したように、外筒部147a内に内筒部147bを挿入し,有底角筒状のセパレーター4dを完成させる。図7にサンプルとなるセパレーター4dを上方から見たときのシール剤50の塗布領域を示した。図7では、シール剤50を斜線のハッチングで示した。なお、シール剤50としては、アルカリ電池における封口ガスケットと電池缶との接触領域や、封口ガスケットのボス部と負極集電子との接触領域などに使用されているアスファルト系のシール剤やエポキシ系のシール剤を使用することができる。ここではアスファルト系のシール剤を使用した。また不織布には、セルロースとビニロンが50%ずつの割合で配合されたものを用いた。
上述した手順で作製したサンプルを用いたアルカリ電池の耐衝撃性能や放電性能を評価した。まず耐衝撃性能を評価するために、各サンプルを用いてLR6型アルカリ電池を作製した。ここでは、シール剤の塗布条件が同じサンプルについて、それぞれ10個のアルカリ電池を作製した。作製した全てのアルカリ電池に対し、開放回路電圧(Open Circuit Voltage:以下、OCVとも言う)を測定するとともに、複数のアルカリ電池を正極端子を鉛直下方に向けて立てた状態で箱詰めして各アルカリ電池を立設状態で維持した。そしてアルカリ電池が収納された箱を振動試験器の振動台の上に置き、アルカリ電池を円筒軸と直交する水平方向に箱ごと振動させる振動試験を行った。ここでは、アルカリ電池を振幅80cm、55Hzの条件で60分間振動させ、振動試験後における各アルカリ電池のOCVを測定した。振動によって負極ゲルがセパレーターの外側に漏出すれば、内部短絡が発生し、OVCが低下する。
4a 平巻き式セパレーター、4b〜4d クロス式セパレーター、5 負極ゲル、
6 負極集電子、7 負極端子板、8 封口ガスケット、9 正極端子、
40,140a,140b 不織布、42,149 重複領域、46 セパレーターの開口、50 シール剤、100 円筒軸、141 帯状の不織布の長辺、
142 帯状の不織布の短辺、144 クロス式セパレーターの底面、
145 クロス式セパレーターの側面、147a クロス式セパレーターの外筒部、
147b クロス式セパレーターの内筒部
Claims (3)
- 上下方向を筒軸方向として上方に開口する有底筒状のアルカリ電池用セパレーターであって、
筒状に成形された帯状の2枚の不織布からなり、
前記帯状の2枚の不織布は、それぞれが長辺方向を前後方向として、前後に二分する位置を底部として、当該底部に対して前方と後方の領域が上方に立ち上げられているとともに、前記長辺に沿う領域で重ね合わされて、閉じた側面が形成され、
前記2枚の不織布の一方からなる有底筒状の外筒部内に他方からなる有底筒状の内筒部が挿入され、
前記内筒部と前記外筒部は、それぞれの前記長辺に沿う領域が対面しないように、前記筒軸周りに相対的に回転した位置に配置され、
前記外筒部と前記内筒部は、それぞれ、前記長辺に沿う領域にアスファルト系のシール剤が塗布されている、
ことを特徴とするアルカリ電池用セパレーター。 - 請求項1において、1mg以上3mg以下の量の前記シール剤が前記長辺に沿って1mm以上3mm以下の幅で塗布されていることを特徴とするアルカリ電池用セパレーター。
- 正極端子を兼ねて下方を底部とした有底筒状の金属製電池缶内に装填されたリングコア状の正極合剤の内方に負極ゲルが請求項1または2に記載の前記アルカリ電池用セパレーターを介して収納されているとともに、前記電池缶の開口に負極端子板が封口ガスケットを介して嵌着されてなることを特徴とするアルカリ電池。
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