JP6977697B2 - 電池制御装置 - Google Patents

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Description

本開示は、電池制御装置に関し、より特定的には、車両の搭載された二次電池を充電するための技術に関する。
リチウムイオンを電荷担体として含む二次電池として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。近年、リチウムイオン二次電池は、小型電気機器等に加えて車載用の二次電池としても普及が進んでいる。
車載用のリチウムイオン二次電池が大電流で充電された場合に、負極表面に金属リチウムが析出する現象が知られている。この現象は「リチウム析出」とも称される。リチウム析出が一旦起こると再び溶解しづらく、リチウムイオン二次電池の劣化および性能低下を招くおそれがある。よって、リチウム析出を抑制しつつ、リチウムイオン二次電池を充電する技術がこれまで提案されてきている。
たとえば、国際公開第2010/005079号(特許文献1)に開示されたハイブリッド車両の充放電制御装置では、リチウムイオン二次電池である二次電池の充電履歴に基づき、二次電池の負極電位がリチウム基準電位(リチウム析出が起こり得る電池であり、金属リチウムの電位)まで低下しないように二次電池への許容充電電力が調整される。許容充電電力は、リチウム析出が起こらない最大電流として設定した許容電流に基づいて決定される。
このような事情から車両に搭載された二次電池の充電電流は、繰り返し充放電されるように二次電池が使用された後の容量を見込んで、その容量のときに二次電池を充電してもリチウム析出を起こさないような許容電流を最初に設定する場合がある。ハイブリッド車両に搭載された二次電池の場合、たとえば、車両製造時から20年が経過した後、あるいは、車両が20,000kmを走行した後の二次電池の容量がおおよそ見積もれるので、その容量においてリチウム析出を起こさない許容電流を二次電池の充電制御における許容電流として固定的に設定することがある。
国際公開第2010/005079号
特許文献1に開示されているように充電電流が許容電流を上回らないように二次電池の充電を制御する場合に、車両の利用態様にかかわらず許容電流を一律に設定することも考えられる。しかし、安全側を見て許容電流を十分に小さく設定すると、リチウム析出から二次電池を保護することはできるものの、二次電池の充電性能が過度に制限され、二次電池の能力を十分に活用することができなくなる可能性がある。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リチウム析出から二次電池を保護しつつ、車両の利用態様に応じて二次電池の能力をより活用することである。
本開示のある局面に従う電池制御装置は、車両に搭載された二次電池を制御するためのパラメータを設定する。二次電池は、リチウムイオンを電荷担体として含む。電池制御装置は、二次電池への充電電流が、二次電池の負極に金属リチウムが析出しない電流として設定される許容電流を上回らないように二次電池の充電を制御する。電池制御装置は、入力部と、演算部とを備える。入力部は、車両を購入する予定のユーザが車両を利用する予定期間を取得する。演算部は、ユーザによる車両の利用状況から定まる二次電池の温度条件に基づいて、予定期間における二次電池の容量低下量である基準量を推定する。演算部は、車両の購入後に二次電池の容量低下量が基準量に達する前の許容電流を二次電池の容量低下量が基準量に達した後の許容電流よりも大きく設定する。
上記の構成においては、二次電池の容量低下量が基準量に達する前の許容電流が、二次電池の容量低下量が基準量に達した後の許容電流よりも大きく設定される。つまり、予定期間が経過するまでの間、予定期間が経過した後よりも許容電流が相対的に大きくなる。このように許容電流を大きく設定することで二次電池の充電電流を大きくすることができ、車両が回生エネルギーとして回収できる電力(電力量)を大きくすることができる。たとえばハイブリッド車両では、回収した回生電力量が大きいと、ハイブリッド車両を駆動するエネルギーを二次電池により頼ることができ、その結果として、ガソリン等の化石燃料の使用量を抑えることができる。したがって、上記構成によれば、リチウム析出から二次電池を保護しつつ、二次電池の充電性能に過度の制限がかかることを防止して二次電池の能力をより活用することができる。
本開示によれば、リチウム析出から二次電池を保護しつつ、車両の利用態様に応じて二次電池の能力をより活用することができる。
実施の形態1におけるシステムの全体構成を概略的に示す図である。 車両構成をより詳細に示す図である。 実施の形態1におけるリチウム析出抑制制御を示すフローチャートである。 比較例における初期許容電流の設定手法を説明するための概念図である。 実施の形態1における初期許容電流の設定手法を説明するための概念図である。 実施の形態1における基準量推定処理を示すフローチャートである。 実施の形態1における許容電流設定処理を示すフローチャートである。 実施の形態2における基準量推定処理を示すフローチャートである。
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
<システム構成>
図1は、実施の形態1におけるシステムの全体構成を概略的に示す図である。図1を参照して、実施の形態1では、ユーザが現在、利用している車両(以下、「現車両」と記載する)1から新たな車両(以下、「新車両」と記載する)2への買い換えを検討しており、ユーザがディーラに相談している状況を想定する。なお、本開示における「購入」や「買い換え」には、リースやレンタルの態様も含まれ得る。
図示しないデータセンタにはサーバ200が設けられている。サーバ200は、現車両1の情報を収集することが可能に構成されている。サーバ200は、現車両1から収集された情報に基づいて後述する演算処理を実行する。サーバ200による演算結果(パラメータ)は、新車両2に搭載されたバッテリ10(図2参照)の充電制御に用いられる。なお、サーバ200は、本開示に係る「電池制御装置」に相当する。
さらに、ディーラには、ディーラ(またはユーザ)が操作することが可能に構成されたディーラ端末300(たとえばタブレット端末)が設けられている。サーバ200とディーラ端末300とは、双方向に通信することが可能に構成されている。
現車両1の構成と新車両2の構成とは基本的に同等であるため、以下では、新車両2の構成について代表的に説明する。なお、新車両2が本開示に係る「車両」に相当する。
図2は、新車両2の構成をより詳細に示す図である。図1および図2を参照して、新車両2は、ハイブリッド車両である。新車両2は、バッテリ10と、監視ユニット20と、通信機30と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)40と、モータジェネレータ51,52と、エンジン60と、動力分割装置70と、駆動軸80と、駆動輪90と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)100とを備える。なお、新車両2は、ハイブリッド車両に限られず、プラグインハイブリッド車、電気自動車または燃料電池車であってもよい。
バッテリ10は、複数のセルを含んで構成される組電池である。本実施の形態において、各セルは、液系のリチウムイオン二次電池である。しかし、各セルは、リチウムイオンを電荷担体として含めばよく、全固体型リチウムイオン二次電池であってもよい。
バッテリ10は、直列接続されたM個のブロックを含む。各ブロックは、並列接続されたN個のセルを含む。M,Nは、2以上の自然数である。しかし、このようなバッテリ10の内部構成は例示に過ぎず、特に限定されるものではない。したがって、以下では、複数のブロックを互いに区別したり複数のセルを互いに区別したりせず、単にバッテリ10と記載する。また、監視ユニット20は、バッテリ10の電圧VB、電流IBおよび温度TBを監視すると記載する。
バッテリ10は、モータジェネレータ51,52を駆動するための電力を蓄え、PCU40を通じてモータジェネレータ51,52へ電力を供給する。また、バッテリ10は、モータジェネレータ51,52の発電時にPCU40を通じて発電電力を受けて充電される。
監視ユニット20は、電圧センサ21と、電流センサ22と、温度センサ23とを含む。電圧センサ21は、バッテリ10の電圧VBを検出する。電流センサ22は、バッテリ10に入出力される電流IBを検出する。温度センサ23は、バッテリ10の温度TBを検出する。各センサは、その検出結果を示す信号をECU100に出力する。
通信機30は、外部に設置されたサーバ200との通信が可能に構成されたDCM(Data Communication Module)である。現車両1のECU100は、通信機30を介して、現車両1において取得された各種データ(特にバッテリ10の温度履歴を示すデータ)をサーバ200に送信する。
PCU40は、ECU100からの制御信号に従って、バッテリ10とモータジェネレータ51,52との間で双方向の電力変換を実行する。PCU40は、モータジェネレータ51,52の状態を別々に制御可能に構成されており、たとえば、モータジェネレータ51を回生状態(発電状態)にしつつ、モータジェネレータ52を力行状態にすることができる。PCU40は、たとえば、モータジェネレータ51,52に対応して設けられる2つのインバータと、各インバータに供給される直流電圧をバッテリ10の出力電圧以上に昇圧するコンバータ(いずれも図示せず)とを含んで構成される。
モータジェネレータ51,52の各々は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石(図示せず)が埋設された三相交流同期電動機である。モータジェネレータ51は、主として、動力分割装置70を経由してエンジン60により駆動される発電機として用いられる。モータジェネレータ51が発電した電力は、PCU40を介してモータジェネレータ52またはバッテリ10に供給される。
モータジェネレータ52は、主として電動機として動作し、駆動輪90を駆動する。モータジェネレータ52は、バッテリ10からの電力およびモータジェネレータ51の発電電力の少なくとも一方を受けて駆動され、モータジェネレータ52の駆動力は駆動軸80に伝達される。一方、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、モータジェネレータ52は、発電機として動作して回生発電を行なう。モータジェネレータ52が発電した電力は、PCU40を介してバッテリ10に供給される。
エンジン60は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギーをピストンおよびロータなどの運動子の運動エネルギーに変換することによって動力を出力する内燃機関である。
動力分割装置70は、たとえば、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構(図示せず)を含む。動力分割装置70は、エンジン60から出力される動力を、モータジェネレータ51を駆動する動力と、駆動輪90を駆動する動力とに分割する。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))101と、各種信号が入出力される入出力ポート103とを含んで構成される。ECU100は、各センサから受ける信号ならびにメモリ102に記憶されたプログラムおよびマップに基づいて、新車両2を所望の状態に制御するための各種処理を実行する。
より具体的には、ECU100は、エンジン60およびPCU40を制御することによってバッテリ10の充放電を制御する。また、ECU100は、後述するリチウム析出抑制制御を実行する。さらに、ECU100は、バッテリ10の温度履歴に基づいて、バッテリ10の許容電流を設定する(許容電流設定処理)。これらの処理については後に詳細に説明する。
サーバ200は、ECU100と同様に、CPU(演算部)201と、メモリ202と、入出力ポート(入力部)203とを含む。サーバ200は、現車両1および新車両2を含む複数の車両からのデータを収集し、収集されたデータをデータベース(図示せず)に蓄積するように構成されている。サーバ200により実行される処理についても後に詳細に説明する。
<リチウム析出抑制フロー>
以上のように構成された車両(現車両1または新車両2)においては、車両の走行時にモータジェネレータ52の回生制動による発電電力がバッテリ10に充電される状況下などにおいて、負極表面にリチウム金属が析出する可能性がある(リチウム析出)。したがって、リチウム析出を抑制するための制御が実行される。本明細書では、この制御を「リチウム析出抑制制御」と称する。
リチウム析出抑制制御では、以下に詳細に説明するように、許容電流Ilimが算出され、許容電流Ilimに放電方向のオフセット電流Ioffを加えた目標電流Itagが算出される。さらに、目標電流Itagからバッテリ10の許容充電電力Iwinが設定される。そして、バッテリ10への充電電力の大きさが許容充電電力Iwinの大きさを上回らないようにバッテリ10の充電が制御される。
図3は、実施の形態1におけるリチウム析出抑制制御を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定周期毎に繰り返し実行される。また、図3および後述する図7に示すフローチャートに含まれる各ステップ(以下「S」と略す)は、基本的にはECU100によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU100内に作製された専用のハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図1〜図3を参照して、S11において、ECU100は、電流センサ22および温度センサ23からバッテリ10の電流IBおよび温度TBをそれぞれ取得する。
S12において、ECU100は、バッテリ10のSOC(State Of Charge)を推定する。SOC推定手法としては、電流積算法などの公知の手法を用いることができるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
S13において、ECU100は、バッテリ10の充放電履歴に応じて、バッテリ10の許容電流Ilimを算出する。許容電流Ilimとは、バッテリ10の負極電位がリチウム基準電位(リチウム金属の電位)まで低下することによってリチウム金属が析出しないように定められた最大電流である。
より具体的には、許容電流Ilimは、所定の演算周期毎に下記式(1)に従って繰り返し算出される。式(1)では、今回の演算周期のパラメータには(t)が付され、前回の演算周期のパラメータには(t−1)が付されている。演算周期の長さはdtで示されている。
Figure 0006977697
式(1)の右辺第2項は、バッテリ10の充電による単位時間当たりの許容電流の大きさの減少量を示す項(以下、「減少項」とも記載する)である。一方、右辺第3項は、バッテリ10の放電または放置(充電停止)による単位時間当たりの許容電流の大きさの増加量を示す項(以下、「増加項」とも記載する)である。減少項における係数αおよび増加項における係数βは、いずれもバッテリ10の温度TBおよびSOCの関数である。
式(1)から理解されるように、直近の所定期間における充放電履歴がない状態における許容電流(初期許容電流Ilim(0))に対して、減少項および増加項を演算周期毎に加減算することによって、許容電流Ilim(t)を逐次算出することができる。
このように算出された許容電流Ilimに加えて、ECU100は、電流IBの急変に備えたマージンを確保するためのオフセット電流Ioffをさらに算出する(S14)。たとえば、ECU100は、バッテリ10のSOCと温度TBとオフセット電流Ioffとの相関関係が規定されたマップ(図示せず)を参照することによって、バッテリ10のSOCおよび温度TBからオフセット電流Ioffを算出することができる。なお、オフセット電流Ioffは、温度TBが低いほど、その大きさが大きくなるように規定されていることが好ましい。
S15において、ECU100は、許容電流Ilimをオフセット電流Ioffだけ放電方向にオフセットさせることによって、目標電流Itagを設定する(Ilim+Ioff=Itag)。ただし、オフセット電流Ioffの設定は必須ではない。
S16において、ECU100は、PI(Proportional-Integral)制御を示す下記式(2)に従って、電流IBおよび目標電流Itagから許容充電電力Iwinを算出する。
Figure 0006977697
大きな充電電流が発生する回生制動時などにおいて、電流IBの大きさが目標電流Itagの大きさ以上になると、許容充電電力Iwinを絞る回生制限が開始される。これにより、バッテリ10を流れる電流IBが減少し、その後、電流IBの大きさが目標電流Itagの大きさ未満に復帰すると、回生制限が解除される。このような制御を実行することで、リチウム析出を抑制することができる。
<初期許容電流の設定>
実施の形態1は、初期許容電流Ilim(0)の設定手法に特徴を有する。ここでは、実施の形態1における初期許容電流Ilim(0)の設定手法の理解を容易にするため、まず、比較例における初期許容電流Ilim(0)の設定手法について説明する。
図4は、比較例における初期許容電流Ilim(0)の設定手法を説明するための概念図である。図4および後述する図5において、横軸は、バッテリ10の容量低下量を示す。図中右側に行くほど、バッテリ10の劣化が進行し、初期状態(バッテリ10の製造直後の状態)と比べてバッテリ10の容量が低下していることを意味する。縦軸は、バッテリ10の初期許容電流Ilim(0)を示す。
バッテリ10の容量が低下するに従ってリチウム析出も生じやすくなるため、初期許容電流Ilim(0)は低下する傾向を示す。図4では、この傾向を直線Lにより表している。リチウム析出を適切に抑制するためには、直線Lよりも図中下側の領域に初期許容電流Ilim(0)を設定することを要する。
一般に、車両の製造時からの経過年数、車両の走行距離またはユーザの運転傾向などに応じて、バッテリの劣化の進行度合い(すなわち、バッテリの容量低下量)は車両毎に異なる。しかしながら、典型的には、車両の各種パラメータを設定する際には十分な安全マージンを確保するため、車両が最も厳しい使われ方をしてバッテリの劣化が最も進んだ条件(たとえば、高温地域において数十年が経過する、あるいは数十万キロ走行するとの条件)が想定される。そして、当該条件下においてバッテリ10の容量低下が最大限進行し、容量抵抗量が最大量Dmaxとなった場合の直線L上の値Iaが初期許容電流Ilim(0)として一律に設定される(直線K参照)。
このように初期許容電流Ilim(0)を設定することにより、リチウム析出からバッテリ10を確実に保護することができる。その一方で、安全側を見て初期許容電流Ilim(0)の値を小さく設定しているため、直線Lと直線Kとにより囲まれた領域に相当する分だけ、バッテリ10の充電性能を十分に活用することができない可能性がある。その結果、車両(現車両1または新車両2)の回生制動時に回生制限が過度にかかり、車両の燃費悪化につながり得る。
図5は、実施の形態1における初期許容電流Ilim(0)の設定手法を説明するための概念図である。図1および図5を参照して、現車両1から新車両2への買い換えに際し、ユーザが新車両2の車種を決定すると、新車両2の出荷前(製造段階)において、サーバ200が基準量推定処理を実行する。基準量推定処理とは、現車両1の利用実績および新車両2の利用予定に基づき、新車両2のバッテリ10の容量低下が進むことが予想される値である「基準量Dx」を推定する処理である。
基準量Dxの推定手法について、より具体的に説明する。バッテリ10の容量の低下速度に対応する劣化速度(単位時間当たりの劣化量)は、バッテリ10の温度TBによって変わる。現車両1におけるバッテリ10の温度履歴を示すデータは、サーバ200に定期的に収集されている。サーバ200は、現車両1におけるバッテリ10の温度履歴(後述する温度頻度分布)を解析することにより、現車両1におけるバッテリ10の劣化速度(後述する劣化速度β)を算出することができる。
また、ディーラがユーザに対して、ユーザが新車両2を利用することを想定している期間(予定利用期間)を尋ね、その回答をディーラ端末300に入力してサーバ200に送る。現車両1と新車両2とではユーザが共通であるため、新車両2は、現車両1と同等の温度環境下に置かれる可能性が高い。したがって、サーバ200は、予定利用期間(たとえば10年間)が経過するまでの間、新車両2においても現車両1と同様にバッテリ10の劣化(容量低下)が進行すると仮定した上で、予定利用期間の経過後における新車両2のバッテリ10の容量低下量(=基準量Dx)を推定する。そして、バッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達するまでは、基準量Dxにおける直線L上の値Ib(>Ia)が初期許容電流Ilim(0)として定められる。
このように定められた初期許容電流Ilim(0)の値は、出荷前の新車両2に適用される。つまり、新車両2の初期許容電流Ilim(0)は、ユーザの新車両2の利用態様(予定利用期間が経過するまでの間に予想されるバッテリ10の温度条件)に応じた値に設定されることとなる。
新車両2がユーザに引き渡されると、新車両2においてバッテリ10の容量低下量が定期的に算出される。そして、バッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達するまでの間は、比較例と比べて、斜線を付した領域Rに相当する分だけ、新車両2の過度の回生制限を抑制してバッテリ10の充電性能を活用することが可能になる。その結果、新車両2の燃費を向上させることができる。
一方、新車両2の実際の利用期間が当初の予定利用期間に達した、あるいは、新車両2の走行距離が非常に長くなったなどの理由により、新車両2におけるバッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達すると、それ以降は、初期許容電流Ilim(0)が比較例と同様にIaに引き下げられる。これにより、初期許容電流Ilim(0)が直線Lよりも図中下側の領域に明確に位置することとなり、リチウム析出からバッテリ10を確実に保護することができる。
<基準量推定フロー>
図6は、実施の形態1における基準量推定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定条件成立時(たとえば、ディーラの端末操作に基づき、新車両2における基準量Dxを推定するようにとの要求をサーバ200が受けた場合)にサーバ200により実行される。なお、各ステップは、サーバ200によるソフトウェア処理によって実現されるが、サーバ200内に作製された専用のハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図6を参照して、S21において、サーバ200は、サーバ200に収集された現車両1のバッテリ10の温度履歴を読み出し、当該バッテリ10の温度頻度分布を求める。
現車両1と新車両2とが別車種である場合、バッテリ10の構成も異なる。そのため、サーバ200は、S21にて求めた現車両1におけるバッテリ10の温度頻度分布を新車両2におけるバッテリ10の温度頻度分布を換算する(S22)。たとえば、現車両1と新車両2との組合せに応じた換算係数(あるいは換算関数)を用いることによって、現車両1におけるバッテリ10の温度頻度分布を新車両2におけるバッテリ10の温度頻度分布に換算することができる。
ディーラは、ユーザに新車両2の予定利用期間(想定している買い換えサイクル)を尋ね、ユーザの回答をディーラ端末300に入力する。これにより、サーバ200は、新車両2の予定利用期間を示す情報をディ−ラ端末300を通じて取得する(S23)。
S24において、サーバ200は、新車両2の予定利用期間経過後における新車両のバッテリ10の基準量Dxを推定する。基準量Dxの推定手法は、以下に説明する許容電流設定処理における容量低下量ΔDの算出手法と同様である。すなわち、基準量Dxは、温度頻度分布における頻度と劣化速度βとを乗算することにより算出することができる。
<許容電流設定フロー>
図7は、実施の形態1における許容電流設定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、新車両2の利用中(たとえば走行中)に所定期間が経過する度にメインルーチンから呼び出されて繰り返し実行される。
図7を参照して、S31において、ECU100は、新車両2のバッテリ10の温度頻度分布を取得する。
S32において、ECU100は、新車両2のバッテリ10の劣化速度βを算出する。ECU100は、バッテリ10の温度TBと劣化速度βとの関係を示すマップ(図示せず)を参照することにより、各温度における劣化速度βを求める。このマップは、予め実験等によって求められてメモリ102に予め記憶されており、温度TBが高くなるほど劣化速度βが大きくなるような関係を規定している。図示しないが、より詳細には、バッテリ10の温度TBの逆数(1/TB)を横軸に示し、劣化速度βの自然対数値(ln(β))を縦軸に示した場合に、アレニウス則に従う温度依存性から1/TBとln(β)との間には略比例関係を有する傾向がある。
S33において、ECU100は、S31にて取得した温度頻度分布と、S32にて算出した劣化速度βとを用いて、前回演算時から今回演算時までの間のバッテリ10の容量低下量ΔDを算出する。具体的には、ECU100は、温度頻度分布における頻度と、劣化速度βとを乗算することにより、容量低下量ΔDを求めることができる。
S34において、ECU100は、バッテリ10の初期状態からの容量低下量に相当する積算容量低下量ΣDを算出する。より詳細に説明すると、ECU100は、前回演算時までの積算容量低下量ΣD(メモリ102に記憶されている値)に今回演算時の容量低下量ΔDを積算することによって、現在の積算容量低下量ΣDの値を更新する。更新された値はメモリ102に記憶される。
S35において、ECU100は、S24にて算出した積算容量低下量ΣDと、サーバ200により設定された基準量Dxとを比較する。積算容量低下量ΣDが基準量Dx未満である場合(S35においてYES)、ECU100は、図5にて説明したように、初期挙量電流lim(0)をIaよりも大きいIbに設定する(S36)。これに対し、積算容量低下量ΣDが基準量Dx以上である場合(S35においてNO)には、ECU100は、初期挙量電流lim(0)をIaに設定する(S37)。S36またはS37の処理の実行後、処理はメインルーチンへと戻される。
以上のように、実施の形態1においては、バッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達するまでの初期許容電流Ilim(0)はIbに設定され、バッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達してからの初期許容電流Ilim(0)はIaに設定される。IbはIaよりも大きい。このようにすることで、比較例と比べた場合に、ユーザがディーラに回答した予定利用期間が経過するまでの間、初期許容電流Ilim(0)が大きくなる。そうすると、バッテリ10への充電電流IBが目標電流Itagの大きさ以上になりにくくなり、許容充電電力Iwinを絞る回生制限が開始されにくくなる。これにより、予定利用期間中には、斜線を付した領域Rの分だけ、バッテリ10の充電性能に過度の制限がかかることを防止してバッテリ10の能力を活用することができる。
また、新車両2におけるバッテリ10の容量低下量が基準量Dxに達して以降は、初期許容電流Ilim(0)がIbからIaに引き下げられる。このように、バッテリ10の劣化がある程度進行して以降は、初期許容電流Ilim(0)を十分に小さな値に設定することにより、リチウム析出からバッテリ10を一層確実に保護することが可能になる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、現車両1の利用中に収集されたデータ(バッテリ10の温度頻度分布)に基づいて新車両のバッテリ10の基準量Dxを推定する構成について説明した。しかし、新規に開拓されたユーザ(他メーカからの買い換え検討中のユーザ)では、上記データが収集されていないため、同じ手法では基準量Dxを推定することができない。実施の形態2においては、新規に開拓されたユーザに対するアンケートによって基準量Dxを推定する構成について説明する。なお、実施の形態2に係る二次電池システムの基本構成は、実施の形態1における構成(図1および図2参照)と同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
図8は、実施の形態2における基準量推定処理を示すフローチャートである。図8を参照して、このフローチャーとは、S31,S32の処理に代えてS41の処理を含む点において、実施の形態1におけるフローチャート(図6参照)と異なる。S41において、サーバ200は、ユーザのアンケート結果から、新車両2におけるバッテリ10の温度頻度分布を作成する。
より詳細に説明すると、ディーラは、ユーザにアンケートを実施し、ユーザの新車両2の運転態様に関する情報を取得する。具体的には、ユーザが予定している新車両2の運転地域(地域の季節毎の気温)、ユーザが予定している新車両2の日常の運転頻度(たとえば週何回運転するか)、日常の運転での1回の走行距離または走行時間、新車両2の長距離走行の頻度(たとえば年何回、旅行に行くか)などを尋ね、ユーザの回答をディーラ端末300に入力する。サーバ200は、ディーラ端末300から受けたユーザの回答に基づき、当該ユーザの運転態様を予め準備された複数の運転態様のうちのいずれかに分類する。複数の運転態様の各々には、そのような運転を所定期間(たとえば1年間)継続した場合のバッテリ10の温度頻度分布が対応付けられている。したがって、たとえユーザが実際に乗車した車両のデータがサーバ200に収集されていなくても、新車両2の予定利用期間と新車両2の運転態様とから、新車両2の温度頻度分布を作成することができる。
続くS42,S43の処理は、実施の形態1におけるS23,S24の処理とそれぞれ同等であるため、説明は繰り返さない。
実施の形態2によれば、ユーザの車両の買い換え時以外であっても、実施の形態1と同様に、リチウム析出からバッテリ10を保護しつつ、バッテリ10の能力をより活用することができる。
なお、実施の形態1では、現車両1から収集されるバッテリ10の温度頻度分布として表される条件が本開示に係る「車両の利用状況から定まる二次電池の温度条件」に相当する。一方、実施の形態2では、ユーザのアンケート結果から作成されるバッテリ10の温度頻度分布が本開示に係る「車両の利用状況から定まる二次電池の温度条件」に相当する。
また、実施の形態1,2では、サーバ200が本開示に係る「電池制御装置」である構成について説明した。しかし、実施の形態2のようにユーザのアンケート結果を用いる場合には、新車両2において基準量Dxを算出してもよい。この場合には、ECU100が本開示に係る「電池制御装置」に相当する。より詳細には、CPU101および入出力ポート103が本開示に係る「演算部」および「入力部」にそれぞれ相当する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される
1 現車両、2 新車両、10 バッテリ、11 ブロック、12 セル、20 監視ユニット、21 電圧センサ、22 電流センサ、23 温度センサ、30 通信機、40 PCU、51,52 モータジェネレータ、60 エンジン、70 動力分割装置、80 駆動軸、90 駆動輪、100 ECU、101,201 CPU、102,202 メモリ、103,203 入出力ポート、200 サーバ、300 ディーラ端末。

Claims (1)

  1. 車両に搭載された二次電池を制御するためのパラメータを設定する電池制御装置であって、
    前記二次電池は、リチウムイオンを電荷担体として含み、
    前記電池制御装置は、
    前記二次電池への充電電流が、前記二次電池の負極に金属リチウムが析出しない電流として設定される許容電流を上回らないように前記二次電池の充電状態を制御し、
    前記車両を購入する予定のユーザが前記車両を利用する予定期間を取得する入力部と、
    前記ユーザによる前記車両の利用状況から定まる前記二次電池の温度条件に基づいて、前記予定期間における前記二次電池の容量低下量である基準量を推定する演算部とを備え、
    前記演算部は、前記車両の購入後に前記二次電池の容量低下量が前記基準量に達する前の前記許容電流を前記二次電池の容量低下量が前記基準量に達した後の前記許容電流よりも大きく設定する、電池制御装置。
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