以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、本発明に係る画像形成装置をインクジェット方式の記録装置に適用した形態を例示して説明する。
[第1の実施の形態]
図1ないし図5を参照して、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置、液滴乾燥装置、及び画像形成装置について説明する。
まず図1を参照して、本実施の形態に係るインクジェット記録装置12について説明する。図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置12の主要構成部を示した概略構成図である。
インクジェット記録装置12は、例えば、2組の画像形成部20A及び20B、制御部22、記憶部30、給紙ロール80、排出ロール90、及び搬送ローラ99を備えている。
また、画像形成部20Aは、例えばヘッド駆動部40A、印字ヘッド50A、及び液滴乾燥装置70Aを含む。
同様に、画像形成部20Bは、例えばヘッド駆動部40B、印字ヘッド50B、及び液滴乾燥装置70Bを含む。
ここで、以下では画像形成部20A及び画像形成部20B、並びに、画像形成部20A及び画像形成部20Bに含まれる共通の部材を区別する必要がない場合には、符号末尾の記号“A”及び記号“B”を省略して表すものとする。なお、記号“A”及び記号“B”は、構成としては同じ部材であるが、インクジェット記録装置12における位置が異なることを区別するために付している記号である。
制御部22は、図示しない用紙搬送モータを駆動することで、例えば用紙搬送モータとギヤ等の機構を介して接続された搬送ローラ99の回転を制御する。給紙ロール80には、記録媒体として用紙搬送方向に長尺状の用紙(連帳紙)Pが巻き付けられており、該用紙Pは搬送ローラ99の回転に伴って図1に示す用紙搬送方向に搬送される。なお、以下では、連帳紙を用いた画像形成装置を「連帳機」と称する場合がある。
制御部22は、例えば記憶部30に記憶された画像情報を取得し、画像情報に含まれる画像の画素毎の色情報に基づいて画像形成部20Aを制御することで、用紙Pの一方の画像形成面に画像情報に対応した画像を形成する。
具体的には、制御部22は、ヘッド駆動部40Aを制御する。そして、ヘッド駆動部40Aは、制御部22から指示されたインク滴の吐出タイミングに従って、ヘッド駆動部40Aに接続された印字ヘッド50Aを駆動して、印字ヘッド50Aからインク滴を吐出させ、搬送される用紙Pの一方の画像形成面上に画像情報に対応した画像を形成する。
また、制御部22は、インクジェット記録装置12で形成される画像の画像情報を用いて、後述する液滴乾燥装置70A及び70Bの半導体発光素子の発光を制御するための信号である外部制御値を生成する。
なお、画像情報に含まれる画像の画素毎の色情報は、画素の色を一意に示す情報を含む。本実施の形態では、一例として、画像の画素毎の色情報がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各々の濃度によって表されているものとするが、画像の色を一意に示す他の表現方法を用いてもよい。
印字ヘッド50Aは、Y色、M色、C色、及びK色の4色それぞれに対応した4つの印字ヘッド50AY、50AM、50AC、及び50AKを含み、印字ヘッド50Aから対応する色の液滴であるインク滴を吐出する。なお、印字ヘッド50Aにおいてインク滴を吐出するための駆動方法は特に限定されず、いわゆるサーマル方式や圧電方式等、公知のものが適用される。
液滴乾燥装置70Aは、半導体発光素子駆動制御装置60A、及び半導体発光素子アレイ76Aを含んで構成されている。半導体発光素子アレイ76Aは複数の半導体発光素子72を含み、用紙Pに形成された画像を乾燥させるための熱源となる照射光を発生する。
半導体発光素子駆動制御装置60Aは、制御部22からの指示に基づいて、半導体発光素子アレイ76Aを構成する各半導体発光素子の発光をオンオフさせ、液滴乾燥装置70Aの発光量を制御する。本実施の形態に係る熱源としての半導体発光素子としては、例えば、半導体レーザやLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)等特に制限なく用いられるが、本実施の形態では半導体レーザを用いている。なお、本実施の形態に係る半導体レーザとしては、端面発光型半導体レーザ、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:面発光型半導体レーザ)等、特に限定されず用いられる。また、半導体レーザを用いる場合の波長帯は、インク滴に効率よく吸収されるように選ばれる。
そして、制御部22は半導体発光素子駆動制御装置60Aを制御することで、液滴乾燥装置70Aから用紙Pの一方の画像形成面に向けて照射光を照射させ、照射させた照射光の発熱(投入熱量)により、用紙Pに形成された画像のインク滴を乾燥させて、用紙Pへ画像を定着させる。また、制御部22は、画像情報に基づき、例えば半導体発光素子の駆動電流を一定としてレーザ照射のオン/オフ制御を行う。なお、駆動電流の大小を制御して半導体発光素子の光出力を調整する場合もある。
なお、液滴乾燥装置70Aから用紙Pまでの距離は、半導体発光素子72(図2参照)の放射角度及び放射領域の広さに基づいて設定される。
その後、用紙Pは、搬送ローラ99の回転に伴って画像形成部20Bと対向する位置に搬送される。その際、用紙Pは、画像形成部20Aによって画像が形成された画像形成面とは異なる他方の画像形成面が画像形成部20Bと向き合うように搬送される。
制御部22は、上述した画像形成部20Aに対する制御と同様の制御を画像形成部20Bに対しても実行することで、用紙Pの他方の画像形成面に画像情報に対応した画像を形成する。このようにインクジェット記録装置12は、用紙Pの両面印字に対応するため、2組の画像形成部20A、画像形成部20Bを含む。むろん、両面印字が必要でない場合のインクジェット記録装置12は、画像形成部20Bを除き、画像形成部20Aのみを設ける形態としてもよい。
そして、用紙Pは、搬送ローラ99の回転に伴って排出ロール90まで搬送され、排出ロール90に巻き取られる。
また、インクには水性インク、溶媒が蒸発するインクである油性インク等が存在するが、本実施形態では特に限定されず、いずれのインクを用いてもよい。
次に、図2を参照して、本実施の形態に係る液滴乾燥装置70について説明する。図2は、液滴乾燥装置70の光照射面の一例を示した図である。なお、液滴乾燥装置70の光照射面とは、用紙Pの画像形成面と対向する面をいう。
図2に示すように、液滴乾燥装置70の光照射面には、用紙搬送方向及び用紙搬送方向と直交(交差)する方向である用紙幅方向に、複数の半導体発光素子72が格子状に配置され、熱的に結合している。図2に示した液滴乾燥装置70の光照射面に配置される半導体発光素子72の数及び配置形状は一例であり、これに限定されない。
また、本実施の形態では、半導体発光素子駆動制御装置60A、60B(図1参照、以下、半導体発光素子駆動制御装置60A及び60Bを総称する場合は、「半導体発光素子駆動制御装置60」という)により光量を制御する単位を、複数の半導体発光素子72が用紙幅方向に配列された半導体発光素子ブロック(半導体発光素子群)74としている。
むろん、これに限定されず、半導体発光素子72の単位で光量を制御してもよい。また、半導体発光素子ブロック74における複数の半導体発光素子72の配列方向は用紙幅方向に限られず、用紙搬送方向としてもよいし、用紙幅方向と用紙搬送方向両方に配列してもよい。
乾燥に必要なトータルの発光量を確保するために、図2に示すように、半導体発光素子アレイ76は、用紙幅方向に半導体発光素子72が配列された半導体発光素子ブロック74を、用紙搬送方向に複数配列して構成してもよい。なお、図2では、1個で用紙幅方向の全域をカバーする半導体発光素子ブロック74とした形態を例示しているが、これに限られず、複数の半導体発光素子ブロック74を直列に配列して、用紙幅方向の全域をカバーするようにしてもよい。画像情報に伴うインクの塗布量に応じ、半導体発光素子72あるいは複数の半導体発光素子ブロック74の発光量を制御することにより、効率良く乾燥でき、消費エネルギーを抑制できる。
液滴乾燥装置70は、画像が形成され、搬送されてくる用紙Pに向けて発光することで、照射光による発熱量(投入熱量)を用いてインクを乾燥させる。この際、制御部22は、例えば、画像形成時の画像情報に基づくインク吐出量に応じて半導体発光素子ブロック74の発光量を演算し、半導体発光素子ブロック74の駆動電流(後述する設定電流値Iset)を設定して、基本的にこの設定された駆動電流が流れるように半導体発光素子駆動制御装置60を制御する。その結果、インク吐出量に適合した発熱量で乾燥処理が実行される。
ここで、上述のようなインクジェットプリントヘッド(印字ヘッド50)を使った連帳機では、エネルギー消費の低減を主目的とし、印字された領域を中心に必要な時だけ液滴乾燥装置から間欠的に乾燥エネルギーを投入する方法が検討されている。以下、制御部22からの指示により、液滴乾燥装置から間欠的に乾燥エネルギーを投入することを、「オンデマンド照射」という場合がある。
インクの乾燥に半導体レーザを用いる場合、特に紙送り速度が高速な連帳機で単位面積当たり必要な乾燥エネルギーをレーザ光で供給するには、用紙幅方向に半導体レーザを並べて、それぞれの半導体レーザをインクの吐出量に応じたパワーで、インク吐出領域に応じて、オンオフ制御する必要がある。例えば、用紙幅方向に1.25mm間隔で半導体レーザが並んでいる場合、紙幅500mmでは400個の半導体レーザを個々に駆動する必要がある。
一方、半導体レーザは、一般的に、光出力との相関の高い(線形関係にある)電流で駆動される。そこで、インク乾燥用の半導体レーザの場合も、各半導体レーザと直列に電流源を接続して、さらに半導体レーザと電流源の直列回路を予め定められた数だけ並列接続してさらに電圧源に接続し、個々の半導体レーザを予め定められた電流の条件下、指示されたタイミングで独立に、オンデマンド制御する方法が考えられる。この方式によれば半導体レーザが400個と多数あっても、それらをグループに分けてそれぞれ1個の電圧源に接続することで半導体レーザごとに電流を調整しながら、必要な電圧源の数が抑えられる。なお、電流源とは、指定した一定電流を流す回路のことをいう。
図11に、上記のような半導体発光素子駆動制御装置の一例としての、比較例に係る半導体発光素子駆動制御装置910を示す。図11に示すように、半導体発光素子駆動制御装置910は、複数の半導体発光素子902が直列に接続された、n個の半導体発光素子ブロック900−1ないし900−n(総称する場合には、単に「半導体発光素子ブロック900」という、以下、他の構成についても同様)が並列に接続された半導体発光素子アレイを備えている。また、半導体発光素子ブロック900−1ないし900−nの各々のカソード側には、抵抗904−1ないし904−nを介して接地された(グランド(GND)接続された)電流源906−1ないし906−nが直列に接続されている。また、半導体発光素子ブロック900−1ないし900−nの各々のアノード側には、出力を可変とされた電力供給部908(電圧源)が共通に接続されている。
さらに、半導体発光素子駆動制御装置910は、半導体発光素子ブロック900の両端の電圧Vd、及び抵抗904の両端の電圧Vi、すなわち半導体発光素子ブロック900の各々に流れる駆動電流I1ないしInを測定する機能を有し、電圧Vd及び電圧Viは半導体発光素子駆動制御装置910の制御部(図示省略)に送られる。
半導体発光素子駆動制御装置910の制御部は、電圧Vdの測定値に基づき、制御信号Svを介して電力供給部908を制御することで、半導体発光素子ブロック900とそれに直列接続した電流源906及び抵抗904に印加される電圧を制御する。また、制御部は、電圧Viの測定値に基づき、制御信号Siを介して電流源906を制御することで、各半導体発光素子ブロック900に流れる駆動電流I1ないしInが予め定められた値となるように制御する。すなわち、比較例に係る半導体発光素子駆動制御装置910では、フィードバック(負帰還)制御で各半導体発光素子ブロック900を制御することを基本にしている。
しかしながら、上記半導体発光素子駆動制御装置910では、電流源906による発熱と効率低下という点で改善の余地があった。つまり、同じ電力供給部908に複数の半導体発光素子ブロック900が接続されているため、半導体発光素子ブロック900の間で、乾燥させるインクの量に応じて設定すべき半導体発光素子ブロック900の駆動電流が異なったり、同じ設定電流であっても半導体発光素子ブロック900の特性が違ったり、あるいは半導体発光素子ブロック900を構成する直列に接続された半導体発光素子902のうち1個でもショート(短絡)すると、同じ駆動電流であっても半導体発光素子ブロック900両端の電圧Vdは個々に異なる値となる。
一方、電力供給部908の電圧は、電圧Vdが最も高い半導体発光素子ブロック900においても、電流源906が設定電流だけ電流を流せるように設定される。そのため、同じ電力供給部908に接続された半導体発光素子ブロック900のうち、電圧Vdが低い半導体発光素子ブロック900については、設定電流が流れるように直列に接続された電流源906がその差分の電圧を負担することになり、その負担は電流源906の発熱となる。
上記電流源906における発熱量は、条件によっては1個の半導体発光素子ブロック900に接続された電流源906で10W程度となることもある。この場合、放熱面積の大きなヒートシンクや水冷機構が必要となり、実装上の大きな制約になるだけでなく、効率も低下し、インクのあるところだけ乾燥させ消費エネルギーを削減するというオンデマンド照射の効果を大きく損ねてしまうことがある。
上記問題を回避するためのひとつの方法として、半導体発光素子ブロック900ごとに電力供給部908を接続することも考えられるが、この場合は、半導体発光素子ブロック900の数だけ電力供給部908を並べなければならない。また、その際の複数の電力供給部908についても、各々に電流源と電圧源とを設けなければならない。この場合、電力供給部908に含まれる電流源と電圧源には個々に制御回路が含まれており、また多数の電力供給部908をさらに印字に応じて全体で制御するための制御が必要となり、回路規模が大きくなり、コストや実装上の問題が発生する。
また、別の改善の余地として、多数の半導体発光素子ブロック900と並列に接続した電力供給部908の応答性が問題となる。連帳機において、インクの乾燥のために用紙幅方向に並べた多数の半導体発光素子ブロック900をオンデマンドで制御する場合、例えば、インクが全く無い白紙の領域から、インクが全面に吐出された領域へ変化すると、半導体発光素子ブロック900は、ゼロ又はゼロに近い光出力から最大光出力又は最大光出力に近い光出力まで変化するので、その際の電力供給部908の負荷電流も、ゼロ又はゼロに近い電流から最大電流又は最大電流に近い電流まで変化する。
電力供給部908の負荷電流がほぼゼロからほぼ最大電流まで増加する過程で、電力供給部908はフィードバック制御により出力電圧を安定化させようとするが、つまりVdの上昇または下降に合わせて電力供給部908の出力も上昇または下降させることで電流源906の電流が目標値となるようにするが、その際、リンギングや立ち上がり遅延、オーバーシュートなどが発生して、電流源906への負担が増加したり、逆に電流源906の両端の電圧の低下により定電流性が維持できなくなるなどの問題が発生する場合がある。
電圧がわずかに過大になる程度であれば、電流源906が負担する電圧が一時的に増大するだけなので、半導体発光素子ブロック900を駆動する上での問題とはならない。しかしながら、過渡的に電圧が不足すると電流源906は定電流を維持できなくなり、半導体発光素子ブロック900の光出力が、例えば、用紙Pのインク吐出領域の先頭において、予め定められた値まで増大せず乾燥エネルギー不足となる場合がある。
上記問題に対する対策として、電力供給部908の出力のデカップリング容量を増大させ過渡特性を安定化する方法もあるが、デカップリング容量が大きくなると、位相余裕の問題が発生し、逆に負帰還制御による制御が不安定になる可能性がある。このように負帰還制御で電力供給部908を制御している限り、過渡的な電圧の変動は避けられない。
以上詳述したように、比較例に係る半導体発光素子駆動制御装置910では、電流源906における損失の発生を抑制し、半導体発光素子ブロック900(半導体発光素子902)の個々の駆動電流の制御を可能とし、負荷電流が変わっても予め設定した電流が半導体発光素子ブロック900に流れるようにするという点で改善の余地があった。
そこで、本発明では、半導体発光素子ブロックごとに、制御部を除く電源部品だけを配置し、制御部は1か所に集中することで、多数の電源を高密度に並べ、しかも個別にそれぞれを制御する構成を採用した。その際の電源はスイッチングレギュレータとするので、以下、この電源を「スイッチング電源」という。スイッチングレギュレータはスイッチングトランジスタのスイッチング信号だけで一つの電源を制御できるため、制御部からスイッチング電源への全ての制御信号が配線され、制御部が1か所又は数か所に集中させることができるため、制御部が簡素化される。
つまり、制御を集中し、各半導体発光素子ブロックには制御部を除く電源部品のみを配置するため、スイッチング電源が半導体発光素子ブロックの数だけ並べられ、半導体発光素子ブロックの端子電圧が異なっていても、各々最適な条件で各半導体発光素子ブロックが駆動されることで電源の負担を抑制できる。また、スイッチング電源の制御部を各スイッチング電源に設けるのではなく、集中して配置したことで、制御が簡素化され、半導体発光素子ブロックごとの電源配置がなされる。
さらに、本発明では、個々の電源回路内で個別に負帰還制御する代わりに、各スイッチング電源には、インダクタやスイッチングトランジスタなどの制御部以外の部品を配置する。設定されているスイッチング電源のインダクタのインダクタンス値や、トランジスタの最大電流、半導体発光素子の電気的光学的特性などの制御パラメータを用いて、目標とする半導体発光素子の駆動電流に対応するスイッチング信号を、制御部で集中して発生し、各スイッチング電源のスイッチングトランジスタに供給する。
スイッチング電源の制御信号は半導体発光素子ブロックの目標駆動電流と制御パラメータとに基づいて生成される。また、部品のばらつきや半導体発光素子のばらつきなどの駆動前またはメンテナンス時に収集できる特性の実測値を補正部に反映することで、制御精度が維持される。
また、半導体発光素子の特性や、使用している部品の劣化、故障などの経時変動を補正部に反映させることで、例えば、半導体発光素子と直列に接続した抵抗の端子電圧をモニタして補正することで、経時変動に対しても制御精度が維持され、さらに必要な場合パラメータ異常の警告や停止などの処理を実行することも可能である。
このように、本発明では、負荷や使用部品が予め定められていることから、上記制御パラメータを用いてフィードフォワード制御する。負帰還制御していないため、過渡的な変動が抑えられ、負荷電流が最小から最大になった場合であっても、予め設定した制御パラメータを用いて制御するので、過渡変動が最小に抑えられる。
次に、図3ないし図5を参照して、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置60についてより詳細に説明する。
図3は、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置60のブロック図を示している。図3に示すように、半導体発光素子駆動制御装置60は、スイッチング信号生成部100、n個の半導体発光素子ブロック74−1ないし74−n、各半導体発光素子ブロック74に対応して設けられたスイッチング電源106−1ないし106−n、係数算出部108(補正部)、スイッチング時間算出部110、駆動電源112(電圧源)、及び制御電源114を含んで構成されている。
半導体発光素子ブロック74は、図2に関連して説明したように、複数個の半導体発光素子(本実施の形態では、半導体レーザ)72が、用紙幅方向に直列に接続されたモジュールであり、用紙P形成された画像を乾燥させるための熱エネルギー源としての照射光を発生させる。
スイッチング電源106−1ないし106−nは、各々スイッチング信号生成部100から送られたスイッチング信号Ss1ないしSsnによって、オンオフが切り替わり、さらに対応する半導体発光素子ブロック74にスイッチング信号Ss1ないしSsnに応じた大きさの駆動電流を流す。スイッチング電源106の詳細については後述する。
スイッチング信号生成部100は、各半導体発光素子ブロック74に対応したn個のシフトレジスタ(図3では、「SR」と表記)102−1ないし102−n、n個のカウンタ104−1ないし104−nを含んで構成されている。
シフトレジスタ102は、スイッチング時間算出部110で算出された、各半導体発光素子ブロック74に対応する各スイッチング電源106をオンさせる時間であるスイッチング時間ts1ないしtsnを示すスイッチング時間信号Stを一時的に記憶するバッファである。スイッチング時間信号Stには、n個のスイッチング時間ts1ないしtsnを示すデジタルデータが含まれ、シリアル形式で、転送クロック(図3では、「転送CK」と表記)と共にスイッチング時間算出部110からシフトレジスタ102−1ないし102−nに送られる。本実施の形態では、スイッチング時間ts1ないしtsnは、対応するカウンタ104−1ないし104−nのカウント数の形式で表されている。
シフトレジスタ102−1に送られたスイッチング時間信号Stは、転送クロックにより順次102−1から102−nまでシフトされ、シフトレジスタ102−1ないし102−nに対応したts1ないしtsnの情報が各々保持される。シフトレジスタ102の転送クロックにより、シフトレジスタ102−1から102−nまでシフトすると設定を完了し、カウンタのプリセットを待機する。
このことにより、各シフトレジスタ102にスイッチング時間ts(ts1〜tsn)に応じたカウンタプリセット値がセット(設定)される。つまり、本実施の形態では、各半導体発光素子ブロック74に流す駆動電流、又は各半導体発光素子ブロック74の光量を設定する際には、スイッチング時間tsを予めシフトレジスタで設定しておき、その設定値でスイッチングを行うことにより、予め定められた駆動電流、又は光量で半導体発光素子ブロック74を駆動している。
カウンタ104−1ないし104−nは、カウンタプリセット信号(図3では、「preset」と表記)及びカウンタクロック(図3では、「カウンタCK」と表記)を入力し、各々スイッチング信号Ss1ないしSsnを生成する。なお、図3に示すReset信号は、カウンタ104を強制的にリセットさせるリセット信号である。
図3を参照して、スイッチング信号Ss1ないしSsnの生成について、より詳細に説明する。すなわち、カウンタプリセット信号の周期で、対応するシフトレジスタ102からのカウンタプリセット値がカウンタ104にロードされる。各カウンタ104にカウンタプリセット値がロードされると、カウンタプリセット値に対応するカウンタ内部のディクリメント値が設定され、その後カウントクロックに合わせて内部のディクリメント値が初期値からゼロまで減少する。カウンタ104は、ディクリメント値がゼロのときにローレベルを出力し、ゼロ以外のときにハイレベルを出力する。つまり、カウンタ104にカウンタプリセット値がロードされるとディクリメント値がゼロ以外となりカウンタ104はハイレベルを出力し、カウンタプリセット値に対応するスイッチング時間tsの間ハイレベルを維持し、スイッチング時間tsが経過後はカウンタ104はローレベルを出力する。図4を使って説明すると、各カウンタ104は、カウンタプリセット値がロードされるとハイレベルを出力する(図4における、時刻t1、t3、t5)と共に、カウンタ104に入力されたカウンタクロックをカウントしつつカウンタプリセット値分だけハイレベルを維持する。そして、ディクリメント値がゼロになったところで、カウンタ104は出力をローレベルとし(図4における、時刻t2、t4)、次のカウンタプリセット値の待機状態となる。つまり、スイッチング信号Ss1ないしSsnは、カウンタプリセット信号(preset)の周期で、シフトレジスタ102に設定された数値の期間だけオン(ハイレベル)となる信号として生成され、スイッチング電源106のスイッチング素子Tにスイッチング信号として供給される(図5参照)。
スイッチング時間算出部110は、スイッチング時間ts1ないしtsnを算出する部位であり、本実施の形態では、図3に示すように、外部制御値として外部から入力された設定電流値Isetを変数とする多項式関数(スイッチング時間算出式)で算出する。設定電流値Isetは、制御部22が、形成する画像の画像情報(画素ごとのインク量等)、用紙搬送速度等に基づいて算出した、半導体発光素子ブロック74の各々を駆動する電流の値である。
スイッチング時間算出式の係数は、制御パラメータとして入力する半導体発光素子の特性に関するパラメータ(図3では、「半導体発光素子パラメータ」と表記)、電源回路に関するパラメータ(図3では、「電源回路パラメータ」と表記)、駆動に関するパラメータ(図3では、「駆動パラメータ」と表記)を用いて算出される。係数算出部108は、半導体発光素子パラメータ、電源回路パラメータ、駆動パラメータの各パラメータからスイッチング時間算出式の係数を算出する部位である。
ここで、半導体発光素子パラメータとは、具体的には、半導体発光素子の特性を示すパラメータであり、半導体レーザの場合は、一例として、順方向電圧、内部抵抗等のパラメータである。電源回路パラメータとは、後述する駆動電源112等に関するパラメータであり、一例として、電源回路の入出力電圧である。駆動パラメータとは、スイッチング信号Ss1〜Ssnの基準となるPWM信号に関するパラメータであり、一例として、PWM信号の供給源におけるPWMパルスの周期、パルス幅である。これらのパラメータは、半導体発光素子、電源回路、及び駆動回路の初期段階における特性(初期特性)を示すパラメータである。
本実施の形態では、上記スイッチング時間算出式を、変数Isetに関する2次の多項式としている。すなわち、半導体発光素子ブロック74−i(i=1〜n)に対応するスイッチング時間算出式tsi(Iset)として、以下の(式1)に示す式を用いている。
(tsi(Iset))2=t0i+α・Iset+β・Iset2 ・・・ (式1)
ここで、t0iは定数である。係数算出部108では、各半導体発光素子ブロック74−iに対応させて、係数t0i、α、及びβを算出する。
ここで、本実施の形態において、スイッチング時間tsを、多項式関数を用いて算出する理由を説明する。本実施の形態において、図5のスイッチング電源106のようなスイッチングレギュレータでは、トランジスタがオン状態のときに駆動電源112からインダクタにエネルギーが投入され、トランジスタがオフ状態のときにそのエネルギーがインダクタから半導体発光素子に投入される。また、トランジスタがオン状態のときインダクタに流れる電流は時間に比例して大きくなるため、スイッチング時間tsi経過時のインダクタに流れる電流はtsiに比例する。このとき、インダクタに投入されるエネルギーはトランジスタに流れる電流の2乗に比例し、つまりスイッチング時間tsiの2乗に比例するため、オフ状態で半導体発光素子に投入されるエネルギーもスイッチング時間tsiの2乗に比例する。また、半導体発光素子のエネルギーは半導体発光素子の端子間電圧と流れる電流の積であり、また端子間電圧は電流と線形な関係((α+β・Iset)で近似できる関係)にあるため、tsiの2乗は(α・Iset+β・Iset2)に比例する。この結果、外部制御値が半導体発光素子ブロック74の駆動電流(Iset)であれば、パラメータさえ合わせておけば、シフトレジスタ102に設定するカウンタプリセット値で半導体発光素子ブロック74の駆動電流が制御される。
なお、外部制御値は、設定電流値の代わりに設定発光量を用いてもよく、設定発光量を変数とする場合には、予め設定発光量を対応する設定電流値に変換しておいてもよい。より詳細には、設定発光量で目標を設定する場合は、多項式を使い駆動電流と発光量との関係を関係づけておき、それを元に外部制御値として与えられた発光量に対する駆動電流を算出したのち、該駆動電流からスイッチング時間tsを算出してシフトレジスタ102に設定する値とすればよい。
なお、本実施の形態では、3つの制御パラメータによる2次関数を用いてスイッチング時間tsを算出する形態を例示して説明したが、これに限られず、3つの制御パラメータのうちの1つ又は2つのパラメータによる2次関数を用いてスイッチング時間tsを算出する形態としてもよい。さらに、必ずしも制御パラメータを用いる必要もなく、この場合は、設定電流値Isetを直接対応するスイッチング時間tsに変換すればよい。
また、図3に示す駆動電源112は、主として、各スイッチング電源106を駆動するための電圧源(電圧−Vp)であり、制御電源114は、スイッチング電源106以外の回路部分を駆動するための電源である。
さらに、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置60では、図示しない制御部(発光制御部)を備え、スイッチング信号生成部100、半導体発光素子ブロック74、スイッチング電源106、係数算出部108、スイッチング時間算出部110、駆動電源(電圧源)112、及び制御電源114の各部を制御している。
次に、図5を参照して、本実施の形態に係るスイッチング電源106(電流生成部)について説明する。図5は、半導体発光素子ブロック74を74−1ないし74−4の4個とした例である。各半導体発光素子ブロック74には、複数個(図5では、12個の場合を例示している)の半導体発光素子72が直列に接続され、さらに各半導体発光素子ブロック74は並列に接続されている。本実施の形態では、半導体発光素子ブロック74のカソード側がGNDに接続されている。さらに、本実施の形態では、半導体発光素子72として半導体レーザを用いているが、上述したように、LEDを用いてもよい。
図5に示すように、4個のスイッチング電源106−1ないし106−4の各々は、インダクタL1ないしL4、平滑コンデンサC1ないしC4、逆流阻止ダイオードD1ないしD4、スイッチング素子T1ないしT4を含んで構成され、一端が各半導体発光素子ブロック74に接続されている。また、各スイッチング電源106の他端は、駆動電源112に接続されている。駆動電源112は、一例としてAC(交流)電圧を入力とし、力率補正回路を等含んだ公知のDC(直流)電源が用いられるので、詳細については省略する。
スイッチング信号Ss1ないしSs4は、各々スイッチング素子T1ないしT4の制御端子N1ないしN4(受付部)に入力される(図5では、代表としてスイッチング信号Ss1のみ示している)。この制御端子N1ないしN4は、スイッチング素子がMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタであればゲート、バイポーラトランジスタであればベース、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であればゲートとなる。
ここで、本実施の形態に係るスイッチング電源106の特徴について説明する。まず、スイッチング電源106によれば、半導体発光素子72が短絡(ショート)した場合の、半導体発光素子ブロック74の全光量への影響が抑制される。以下、本特徴についてより詳細に説明する。
12個の半導体レーザ72が直列接続された半導体発光素子ブロック74を備える本実施の形態に係るスイッチング電源106についてのシミュレーション結果によると、各半導体発光素子72に流れる電流は、正常時に約1.4Aだったものが、2個短絡した場合には約1.68Aと、約1.2倍に増大する。ここで、直列に接続された12個の半導体発光素子72が正常に点灯している場合の駆動電流が1.4Aであった場合、半導体発光素子72の閾値電流は無視すれば、短絡なしの場合の半導体発光素子72の1個あたりの発光量を単位とすると、この1.4Aが半導体発光素子72の12個分の光量に相当する。すると、仮に、半導体発光素子ブロック74のうちの2個の半導体発光素子72が短絡した場合でも、駆動電流が1.2倍になれば、10個の各半導体発光素子72の光量が1.2倍に増大して12個分の光量となり、短絡する前と同程度の光量が維持されることになる。現実的には、同時に複数の半導体発光素子72で短絡が発生することは考えにくく、仮に1個が短絡した場合を考えると、短絡前後での光量差はさらに小さくなる。
上記のように、本実施の形態に係るスイッチング電源106において、半導体発光素子ブロック74を構成する半導体発光素子72に短絡が発生した場合でも、トータルとしての半導体発光素子72の駆動電力の変動が抑制されるのは、以下のような理由による。すなわち、インダクタL(図5における、L1〜L4)の電流が増大する際、インダクタLに印加されている電圧は半導体発光素子72の短絡数によらず常に一定に維持される。そのため、インダクタLに蓄えられるエネルギーは一定であり、半導体発光素子72の駆動に際しインダクタLの電流が減少する過程で、そのインダクタLに蓄えられたエネルギーが端子電圧に応じた電流で放出されるためである。換言すれば、本実施の形態に係るスイッチング電源106では、インダクタに蓄えるエネルギーを常に一定にできる分制御が安定化される。
特に、半導体発光素子ブロック74の直列に接続された半導体発光素子72の配置方向を用紙搬送方向とすれば、12個のうちの1個が短絡して非発光となった場合でも、他の11個の半導体発光素子72の駆動電流が増大して光量を補えば、半導体発光素子ブロック74による乾燥作用は累積エネルギーで行われるため、乾燥への影響(例えば、乾燥ムラの発生等)が抑制される。
特に連帳機では、印字した用紙Pが高速で搬送されるため、多数配置された半導体発光素子の電流や電圧を時分割で順に検知して、それをスイッチング電源のパルス周期やパルス幅に反映させる方式の場合、半導体発光素子の電流や電圧が異常になってから、その異常がスイッチング電源のパルス周期やパルス幅に反映されるまでに、乾燥不良のまま用紙が送られ、その部分は損失となってしまう。
これに対し、本実施の形態に係るスイッチング電源106では、制御が行われるまでの間は、スイッチング電源106のインダクタLの作用で駆動電流が増大し、光量不足が補われるため、乾燥不良による損失が抑制される。
さらに、本実施の形態に係るスイッチング電源106では、直列に接続された半導体発光素子72が短絡した場合の保護機能が備わっているという特徴がある。すなわち、スイッチング電源106では、スイッチング素子T(T1〜T4)がオンした場合、インダクタLへの投入エネルギーはその端子電圧が一定のため一定である。従って、スイッチング素子Tがその後オフし、半導体発光素子ブロック74に向けて電流を流すことによりエネルギーを放出する際は、最大でもインダクタに蓄えられたエネルギーしか半導体発光素子ブロック74に供給されない。そのため、インダクタLの選定において、通常動作時の条件を元に最大飽和電流を決めることにより電流が制限される。その結果、半導体発光素子72が短絡した場合の電流が制限されるので、短絡した半導体発光素子72以外の半導体発光素子72に対する保護機能を備えることになる。
[第2の実施の形態]
図6を参照して、本実施の形態に係るスイッチング電源106aについて説明する。図6は、スイッチング電源106aの回路図を示している。スイッチング電源106aは、スイッチング電源106に、過剰電流に対する保護部、及び電圧と電流の検出部を設けた形態である。なお、図6では、複数並列に接続されるスイッチング電源106a及び半導体発光素子ブロック74のうちの1つを代表して表している。
図6に示すように、スイッチング電源106aは、保護部304及び保護部306を備えている。スイッチング電源106aは、さらに、半導体発光素子ブロック74−1に流れる電流を検出する電流検出部308(発光素子電流検出部)、及び半導体発光素子ブロック74−1の両端の電圧を検出する電圧検出部310(発光素子電圧検出部)を備えているが、電流検出部308及び電圧検出部310の詳細については後述する。
保護部304は、半導体発光素子72のいずれかにオープン(開放)不良が発生した場合に、スイッチング素子T1の出力電圧をクランプして電圧の上昇から保護する回路である。図6に示すように、保護部304は、逆流阻止ダイオードD5、MOSトランジスタT5、ツェナーダイオードD6、及び抵抗R5を含んで構成されている。
本発明に係るスイッチング電源(106、106a)は、一般のスイッチングレギュレータとは異なり、フィードバックによって出力を定電圧制御したり、定電流制御したりしていないので、瞬間的には一定パルス制御(周波数、パルス幅が一定)である。このため、半導体発光素子72がオープンになった場合、あるいは半導体発光素子ブロック74を接続せずにスイッチング電源を駆動した場合、スイッチング素子T1の入出力間(バイポーラトランジスタのVCE、あるいはMOSトランジスタのVDS)に定格以上の電圧が発生してトランジスタを破壊する場合が想定される。このため、スイッチング電源106aでは、保護部304の逆流阻止ダイオードD5で出力をクランプすることでスイッチング素子T1に定格以上の電圧が印加されて破壊されるのを防止する。以下、この構成を「クランプ回路」(クランプ部)という。
さらに、本実施の形態では、MOSトランジスタT5、逆流阻止ダイオードD6、抵抗R5を含んで構成された電流を検知する検知部を備えている。そして、クランプ回路に予め定められた値以上の電流が流れたのを検知し、検知信号(図示省略)を図示しない発光制御部に送り、スイッチング電源106aの動作を停止させる。このように、本実施の形態に係るスイッチング電源106aでは、クランプ回路にスイッチング電源106aの動作が停止するまでの期間の放熱特性だけをもたせればよいので、小型化でき、また無駄な損失が防止される。
保護部306は、ドライバ300、比較器(コンパレータ)302、及び抵抗R4を含んで構成されている。ドライバ300は、主として、スイッチング信号Ss1等の信号(図6では、「VPWM」と表記)によりスイッチング素子T1を駆動し、また、スイッチング素子T1の入力側に流れる電流の異常を示す信号を受けて、スイッチング素子T1の動作を停止させる機能を有する。
本実施の形態に係るスイッチング電源106aでは、図6に示すように、半導体発光素子ブロック74−1に流れる電流を検出する電流検出部308を備えているが、電流検出部308による駆動電流の検知ではインダクタの短絡の検知はできない。
そこで、スイッチング素子T1の入力に直列に電流測定用の抵抗R4(入力電流検出部)を設け、比較器302によって、抵抗R4の両端の電圧を、電流異常の有無の閾値である基準電圧Vrefと比較する。比較器302は、抵抗R4での測定電流値が異常の場合には、出力電圧をハイレベル一定(又は、ローレベル一定)とし、スイッチング素子T1の一次側の電流異常を報知する。電流異常を示す信号を受け取ったドライバ300は、スイッチング素子T1への信号を停止させ、スイッチング電源106aの動作を停止させる。
この場合、電流異常検出からスイッチング電源106aの動作停止までの過程にソフトウエアを介在させると、インダクタがショートしてから一定時間過大な電流が流れ続ける虞があるため、本実施の形態では、電流異常検知信号を用いてハードウェア的にスイッチング信号Ss1を停止させるようにしている。
[第3の実施の形態]
本実施の形態は、半導体発光素子ブロック74−1ないし74−nの駆動電流の制御に関する形態であり、スイッチング電源の構成は、図6に示すスイッチング電源106aと同様なので図示を省略する。
半導体発光素子が半導体レーザ素子である場合、電流−光出力特性において、ある電流値から光が出力するいわゆる閾値電流Ithが存在する。従って、半導体発光素子72を発光させる場合には、通常、半導体発光素子ブロック74の点灯時において駆動電流をこの閾値電流Ithより大きく設定する。本実施の形態は、係る構成で懸念される半導体発光素子ブロック74に流れる駆動電流におけるオーバーシュートを抑制する形態である。
上記の一般的な駆動方法に対し、本実施の形態では、点灯前にスイッチング素子T1ないしTnによるスイッチングを開始させるようにしている。より詳細には、スイッチング信号Ss1ないしSsnの周期と幅は、定常状態でも半導体発光素子ブロック74に流れるピーク電流が半導体発光素子72閾値電流Ith以下となるように設定する。点灯終了時から次の点灯開始時までの時間に応じて、スイッチング信号Ss1ないしSsnの周期と幅、又は点灯前にスイッチングをするか否かを制御する。具体的には、スイッチング素子T1ないしTnに入力する信号のパルス幅を短くして半導体レーザの発振閾値以下の電流に制限する。
本実施の形態に係るスイッチング電源(106、106a)では、平滑コンデンサC(C1ないしCn)を充電する充電電流が定常時に重畳するために、インダクタL(L1ないしLn)に定常時を大幅に上回る電流が流れる。つまり、インダクタLに、通常よりも大きなエネルギーが蓄えられ、これを放出する際に通常よりも高い電圧を発生するために、半導体発光素子ブロック74の駆動電流において、スイッチング素子T(T1ないしTn)へのスイッチング信号Ss(Ss1ないしSsn)の印加直後にオーバーシュートが発生する場合がある。
これに対し、本実施の形態では、半導体発光素子ブロック74の点灯を開始する前にスイッチング信号Ssのパルス幅を短くして、半導体発光素子72の駆動電流が閾値電流以下の電流となるように、予めスイッチング素子Tを起動しておく。この際、起動を速くするためにパルス幅を複数種類設けて、画像情報をもとに事前に設定したスケジュールにしたがってパルス幅を切り替えながらスイッチング素子Tを駆動することで立ち上がりを早くすることができる。
一方、半導体発光素子ブロック74を消灯している期間が短ければ、平滑コンデンサCの端子電圧が放電によって下がっておらず、この場合はオーバーシュートを生じないので、半導体発光素子ブロック74をオフする期間が予め定められた時間以内の場合には、事前にスイッチング素子Tを起動しないことで無駄を抑えることができる。以上の制御は画像情報をもとに予め決めておいたスケジュールに基づいて行うことで、フィードバック制御のような複雑さを回避することができる。
さらに、スイッチング素子Tのゲート電圧(バイポーラトランジスタの場合はベース電流)を制御し線形領域で動作するようにして、スイッチング素子Tに流れる電流をクランプしてオーバーシュートを防止することもできる。この場合、線形領域時にトランジスタの発熱量が増大するが、電源投入直後のみのためトランジスタの破壊に至ることはない。
[第4の実施の形態]
図7及び図8を参照して、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置62について説明する。図7は、半導体発光素子駆動制御装置62のブロック図を、図8は、カウンタプリセット信号とカウンタ出力との時間関係を示すタイミングチャートを、各々示している。半導体発光素子駆動制御装置60では、1相のカウンタプリセット信号を用いたが、本実施の形態は、4相のカウンタプリセット信号を用いた形態である。
図7に示すように、半導体発光素子駆動制御装置62は、半導体発光素子駆動制御装置60のスイッチング信号生成部100(図3参照)をスイッチング信号生成部200に置き換えたものである。その他の構成、すなわち半導体発光素子ブロック74、スイッチング電源106、係数算出部108、スイッチング時間算出部110、駆動電源(電圧源)112、及び制御電源114については半導体発光素子駆動制御装置60と同様なので、詳細な説明を省略する。
図7に示すように、スイッチング信号生成部200も、半導体発光素子ブロック74−1ないし74−nの各々対応するシフトレジスタ202−1ないし202−n、カウンタ204−1ないし204−nを備えている。そして、スイッチング信号生成部100と同様、スイッチング時間信号Stが転送クロックと共にシフトレジスタ202に入力される。
一方、スイッチング信号生成部200には、4相のカウンタプリセット信号Preset0、Preset1、Preset2、及びPreset3が入力される。カウンタプリセット0ないしカウンタプリセット3の各々は以下のようにしてカウンタ204に入力される。すなわち、カウンタ204−1にはカウンタプリセット0が、カウンタ204−2にはカウンタプリセット1が、カウンタ204−3にはカウンタプリセット2が、カウンタ204−4にはカウンタプリセット3が、各々入力される。以降、同様に、カウンタ204−5にはカウンタプリセット0が、カウンタ204−6にはカウンタプリセット1が、カウンタ204−7にはカウンタプリセット2が、カウンタ204−8にはカウンタプリセット3が入力される。半導体発光素子ブロック74の個数nが4の倍数であれば、カウンタ204-nにカウンタプリセット3が入力されるが、本実施の形態では、nが4の倍数でなくともよいので、カウンタ204−nにはいずれの相のカウンタプリセット信号が入力されてもよい。
スイッチング時間信号Stに含まれるスイッチング時間ts1ないしtsnを示す信号が、転送クロックで順次シフトされつつシフトレジスタ202−1ないし202−nにセットされると、4相のカウンタプリセット0ないし4が、タイミングをずらして各カウンタ204−1ないし204−nに入力される。その結果、各々のカウンタプリセットのタイミングに合わせて、スイッチング信号Ss1ないしSsnが、カウンタ204−1ないし204−nからスイッチング電源106−1ないし106−nに送られる。このタイミングのずれたスイッチング信号Ss1ないしSsnによってスイッチング電源106−1ないし106−nが駆動されることにより、各スイッチング電源106にはタイミングをずらしてスイッチング電流が流れる。ただし、本実施の形態では、4相のカウンタプリセットを用いているので、4つおきに同じタイミングとなる。
ここで、本実施の形態におけるカウンタプリセットの相数4は一例であり、本実施の形態の主旨に照らして、複数相であれば本実施の形態に係る効果が得られる。また、半導体発光素子ブロック74−1ないし74−nの個数分、すなわちn相のカウンタプリセットを用いる形態としてもよい。
図8を参照して、スイッチング信号生成部200の動作についてより詳細に説明する。
4相のカウンタプリセット信号の生成方法は特に限定されないが、本実施の形態では、図8に示すカウンタプリセット信号のパルス間隔Tを4等分した時間間隔で、4相のカウンタプリセット信号を生成している。換言すれば、本実施の形態は、パルス間隔Tを1周期として、90°ずつ位相の異なるカウンタプリセット信号を生成している。
図8に示すように、時刻t5においてカウンタプリセット0がカウンタ204−1に入力されたことによりカウンタ204−1の出力がローレベルからハイレベルに遷移する。
カウンタ204−1においてスイッチング時間ts1の期間だけ、カウンタ204−1からハイレベルのカウンタ出力0が、スイッチング信号Ss1としてスイッチング電源106−1に出力される(図8(a)〜(c))。
同様にして、時刻t6においてカウンタプリセット1がカウンタ204−2に入力されることにより、カウンタ204−2からカウンタ出力1が、スイッチング信号Ss2としてスイッチング電源106−2に出力され、時刻t7においてカウンタプリセット2がカウンタ204−3に入力されることにより、カウンタ204−3からカウンタ出力2が、スイッチング信号Ss3としてスイッチング電源106−3に出力され、時刻t8においてカウンタプリセット3がカウンタ204−4に入力されることにより、カウンタ204−4からカウンタ出力3が、スイッチング信号Ss4としてスイッチング電源106−4に出力される(図8(d)〜(i))。
以上のようなスイッチング信号生成部200の動作により、図8に示すように、カウンタ出力0ないしカウンタ出力3のタイミング(位相)がずれる。このことにより、駆動電源112の負荷が集中することなく均等化(分散)されるので、駆動電源112の電圧Vpの波形におけるリップルやノイズが抑制され、グランドの電位も安定化される。
<第4の実施の形態の変形例>
図9を参照して、本実施の形態について説明する。本実施の形態は、半導体発光素子駆動制御装置62のスイッチング電源106(スイッチング電源106−1、106−2、106−3、106−4の総称)をスイッチング電源107(スイッチング電源107−1、107−2、107−3、107−4の総称)に置き換えた形態である。従って、スイッチング電源107以外の構成は半導体発光素子駆動制御装置62と同様なので、スイッチング電源107を含む半導体発光素子駆動制御装置に言及する場合は図7及び図8を参照することとする。
図9に示すように、本実施の形態に係るスイッチング電源107−1ないし107−4の各々は、寄生インダクタLs1ないしLs4、回生ダイオードDp1ないしDp4、スイッチング素子T1ないしT4を含んで構成されている。スイッチング電源107の一端は半導体発光素子ブロック74に接続され、他端は駆動電源112に接続されている。
寄生インダクタLs1〜Ls4の各々は、スイッチング素子T1〜T4から半導体発光素子ブロック74−1〜74−4に至る配線のインダクタンス成分をインダクタで表わした等価素子である。半導体発光素子ブロック74−1〜74−4は、放熱等の理由から半導体発光素子駆動制御装置62から離間させて配置される場合も多い。このような場合、配線幅にも依存するが、スイッチング素子T1〜T4から半導体発光素子ブロック74−1〜74−4に至る配線のインダクタンス成分が、半導体発光素子ブロック74−1〜74−4の駆動において無視できなくなる。そのため、本実施の形態ではこの寄生インダクタLs1〜Ls4を回路素子として取り込んでいる。
図9に示すように、スイッチング電源107はスイッチング電源106と異なり、素子としてのインダクタ(図5のインダクタL1ないしL4)を備えず、電源112と負荷である半導体発光素子ブロック74−1〜74−4との間にスイッチング素子T1〜T4が配置されている。そして、スイッチング素子T1〜T4の制御端子N1〜N4に入力されたスイッチング信号Ss1〜Ss4によって半導体発光素子ブロック74−1〜74−4に流す電流の平均値を位相をずらして制御している。本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置はこのような条件下で特に有効な形態である。
つまり、本実施の形態のように位相をずらすことで負荷を均等化する方式は、図9に示すようなインダクタL1〜L4を含まないスイッチング電源で特に効果が大きい。すなわち、図9に示す回路ではインダクタL1〜L4を含まないため、スイッチング素子T1〜T4のスイッチング時に負荷に流れる電流Iの微分係数dI/dtが非常に大きくなる。
そのため、すべての半導体発光素子ブロック74−1〜74−4のオンするタイミングが重なると過大なノイズが重畳され半導体発光素子駆動制御装置の誤作動等の懸念が生じる。この点、半導体発光素子ブロック74−1〜74−4ごとにスイッチングさせる位相を異ならせる本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置によれば、発生するノイズが効果的に抑制される。
[第5の実施の形態]
図10を参照して、本実施の形態に係る半導体発光素子駆動制御装置64について説明する。半導体発光素子駆動制御装置64は、図3に示す半導体発光素子駆動制御装置60において、スイッチング時間算出式(式1)の係数t0i、α、及びβを補正するための各種モニタ値を取得するためのモニタ部(監視部)を設けた形態である。
図10に示すように、半導体発光素子駆動制御装置64では、一例として、半導体発光素子ブロック74−1ないし74−nの各々の特性をモニタするためのモニタ部78−1ないし78−nが設けられている。モニタ部78−1ないし78−nによってモニタされた結果は、スイッチング時間算出部110入力されている。その他の構成は半導体発光装置駆動制御装置60と同様なので、詳細な説明を省略する。
本実施の形態に係るモニタ部78は、半導体発光素子72の電気的特性又は光学的特性等をモニタする。モニタした結果をスイッチング時間算出部110に入力し、外部制御値(Iset)と比較する。比較した結果、ずれがあった場合には、スイッチング時間算出式(式1)の係数t0i、α、及びβを補正することで、半導体発光素子の経時劣化や特性ばらつき、電源回路の部品の特性ばらつき等を係数の中に盛り込み、スイッチング信号Ss1ないしSsnの精度を向上させる。
図6を参照して、本実施の形態に係るモニタ部78の一例としての、半導体発光素子ブロック74の電流検出部(発光素子電流検出部)308、及び電圧検出部(発光素子電圧検出部)310について説明する。図6に示すように、電流検出部308は、半導体発光素子ブロック74のカソード側とGNDとの間に接続された抵抗R1により構成されている。そして、抵抗R1の端子電圧が、モニタ電流値IMとしてスイッチング時間算出部110に入力される。また、図6に示すように、電圧検出部310は、半導体発光素子ブロック74のアノード側とGNDとの間に接続された抵抗R2及びR3により構成されている。そして、抵抗R2とR3とによって分圧された電圧が、モニタ電圧値VMとしてスイッチング時間算出部110に入力される。
例えば、半導体発光素子72の特性が経時的に変化した場合には、このモニタ電流値IMあるいはモニタ電圧値VMが初期値に対して変化するので、スイッチング時間算出部110においてその差分を検出し、スイッチング時間算出式(式1)に反映させて、係数t0i、α、及びβを補正する。
本実施の形態に係る電流検出部308、電圧検出部310では、比較例に対してより精度よく測定される。以下、その理由について説明する。
電圧や電流を測定する場合、基準になる端子、例えばGNDは、測定系のGNDに一致していないと差動アンプなど余分な回路が必要となる。これに対し、本発明に係る半導体発光装置駆動制御装置では、半導体発光素子ブロック74のカソード側がGNDに接続されているので、カソードとGNDとの間に電流測定用の抵抗を挿入することで直接的に電流測定がなされる。
なお、電流測定用の抵抗R1の抵抗値は、電圧測定に与える影響や損失を抑えつつ、測定精度も考慮して、例えば0.01Ωから0.1Ω程度の値とする。半導体発光素子ブロック74に流れる駆動電流の値は一般に大きいので、GNDの電位変動が測定精度へ影響することも考慮すると、電流測定の抵抗R1の両端を同時に測定してその電位差と抵抗R1の抵抗値とから電流値を算出する。一方、半導体発光素子ブロック74の駆動電圧を測定する電圧検出部310も、半導体発光素子ブロック74のカソード側が常にGNDのため、アノード側の電位も測定系のGNDを基準として測定される。