JP6969938B2 - カーボンナノチューブの精製方法 - Google Patents
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Description
カーボンナノチューブは、優れた物性やチューブの直径、対称性、層構造、束構造、結合の変形、不純物の存在などによって特徴付けられる特異な構造のため、様々な分野、例えば、ナノテクノロジー、電気工学、光学および材料工学などで有用に使用できる。特に、カーボンナノチューブは、優れた電界放出特性、高効率の水素貯蔵媒体の特性などを持つ新素材として知られている。
カーボンナノチューブ複合体は、伝導性材料、高強度軽量特性の構造材料、多機能複合材料などの応用においてその活用度が高まっており、カーボンナノチューブ分野ではカーボンナノチューブの製造方法、改質方法、カーボンナノチューブ複合体の様々な特性および応用分野に関する研究が盛んに行われている。その応用分野としては、例えば、各種装置の電子放出源、VFDs(vacuum fluorescent displays)、白色光源、FEDs(field emission displays)、リチウムイオン二次電池電極、水素貯蔵燃料電池、ナノワイヤー、ナノカプセル、ナノピンセット、AFM/STM tip、単電子素子、ガスセンサー、医学・光学用微細部品、高機能複合体などが挙げられる。カーボンナノチューブの産業的適用のためには、高度の合成技術で優れた物性を持つカーボンナノチューブの経済的な合成および精製が重要である。
触媒方法によって合成されたカーボンナノチューブは、様々なナノカーボン物質、非晶質炭素、および成長のために触媒として作用する遷移金属などが含まれている。これらの不純物によりカーボンナノチューブが切断されて長さが短くなり或いは表面が酸化して、電気的、機械的特性が低下するという問題がある。その結果、このような不純物は、カーボンナノチューブのみの特性を損傷させて、カーボンナノチューブの応用面で最適な性能を制限させる。
特に、バッテリー電極材へのカーボンナノチューブ応用の場合、金属がバッテリー分離膜を破壊して爆発を引き起こすため、金属含有量をppm単位で管理している。
遷移金属と炭素含有物質を除去するために様々な精製方法が報告されており、主に化学的方法と物理的方法に大別される。
また、金属不純物の中でも、Feが、最も除去し難い金属不純物として知られているが、Feを10ppm以下に除去する従来技術の場合、カーボンナノチューブの分散性は悪化することが知られている。
カーボンナノチューブの不純物精製方法について多くの研究が行われているが、不純物である金属、特にFe不純物を除去して数ppmレベルまで経済的に減少させながらもカーボンナノチューブの分散性を確保することができる技術は、まだ不十分なのが実情である。
本発明に係る他の態様では、前記カーボンナノチューブの精製方法によって製造された超高純度のカーボンナノチューブを提供する。
本発明に係る別の態様では、前記カーボンナノチューブ内のそれぞれの金属不純物の含有量が50ppm以下である超高純度のカーボンナノチューブを提供する。
本発明に係る別の態様では、前記カーボンナノチューブ内のFeの含有量が50ppm以下である超高純度のカーボンナノチューブを提供する。
第1態様の一実施形態によれば、前記超高純度のカーボンナノチューブは、残存する金属がFeである場合にはその含有量が10ppm以下である。
第1態様による実施形態によれば、前記低真空条件は、反応圧が0.1Torr以上1Torr以下である。
第1態様の一実施形態によれば、前記処理温度は1600〜1800℃である。
第1態様の一実施形態によれば、前記不活性ガスの量は分あたりの反応器体積の0.0025〜0.25倍である。
第1態様の一実施形態によれば、前記(1)段階での処理時間は15分〜120分である。
第1態様の一実施形態によれば、前記残存する金属は、Fe、Co、Al2O3、Mg又はこれらの組み合わせを含む。
また、前記カーボンナノチューブの精製方法によって製造された超高純度のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブに残存するそれぞれの金属の含有量が50ppm以下である。
前記超高純度のカーボンナノチューブは、残存する金属がFeである場合にはその含有量が10ppm以下である。
前記カーボンナノチューブの電気抵抗は1.0×102〜5.0×102Ω/sqである。
「超高純度のカーボンナノチューブ」は、カーボンナノチューブに残存するそれぞれの金属不純物の含有量が50ppm以下のものをいう。
「低真空条件」における低真空は1Torr以下の真空をいう。
「カーボンナノチューブに残存する金属」は、カーボンナノチューブの合成過程で混入された不純物をいい、主に触媒として使用される金属である。
「金属蒸気圧」における蒸気圧は、一定の圧力と温度で蒸気が固体または液体と動的平衡状態にあるときの蒸気の圧力をいう。
本発明は、金属不純物を気化させて除去する金属不純物除去方法が、酸処理などのその他の精製方法よりも金属を除去して数ppmレベルまで減少させることができるという点で有利である。
金属不純物を気化させて除去する方法としては、従来の場合、ハロゲンガスを用いて金属を酸化させた後で気化させる方法と、高温高真空で気化させる高温アニーリング法を採用した。ハロゲンガスは、通常、900〜1400℃の条件で用いた。しかし、ハロゲンガスを用いる場合は、操業安全性の問題があり、製造コストが高く、処理時間が長いという欠点がある。高温高真空で気化させる高温アニーリング法は、極限処理条件であるため、製造コストが高い。
本発明では、ハロゲンガスおよび極限条件を使用することなく、金属不純物を効果的に除去することができた。
高温炉と真空ポンプから構成された真空加熱ユニット(vacuum heating unit)に原料のカーボンナノチューブをロードして窒素を流しながら高温低真空処理を行った後、超高純度のカーボンナノチューブを得る。除去された不純物はフィルターとスクラバー(scrubber)を介して捕集される。
本発明のCNT精製工程は、金属不純物を除去するために、金属が気体に気化するように処理した後、気化した金属不純物を除去する。
金属を気化させるためには高い温度および高い真空状態を必要とすることが知られている。しかし、温度を1800℃超過に増加させる場合には、金属蒸気圧の発生が増加するが、黒鉛化現象により、精製されたカーボンナノチューブの分散性が低下するという問題がある。また、高真空状態の要求は、設備の大型化や経済性の問題を引き起こす。
本発明者は、ハロゲン、酸素ガスなどの反応性ガスを使用することなく、また、超高温および超真空の極限条件を使用することなく金属不純物を気化させ、不活性ガスを用いて効果的に金属不純物が除去されるようにした。
カーボンナノチューブに存在する金属不純物がFe、Co、Al2O3、Mgである場合には、反応圧は、好ましくは1Torr以下、さらに好ましくは0.1Torr〜1Torrである。
本発明によって精製された超高純度のカーボンナノチューブは、分散性が良く、バッテリー適用の際に寿命が長く、安全であるという利点がある。
実験に使用されたカーボンナノチューブは触媒CVD法で製造した。精製処理の後、カーボンナノチューブに残存する金属成分の含有量は、ICP−OES(Inductively Coupled Plasma−Optical Emission Spectroscopy、Agilent社)によって分析した。ICP前処理は、カーボンナノチューブを硫酸炭化させた後、ファーネスで800℃まで灰化した。
(1)精製しようとするカーボンナノチューブをグラファイト坩堝に入れて高温真空焼成炉にロードする。
(2)真空が1Torr以下に維持されると、不活性ガスを一定量流す。
(3)処理温度まで昇温した後、15〜120分間処理する。
(4)温度を室温まで冷却した後、真空を解除してサンプルをアンロードする。
23gのカーボンナノチューブ(純度80〜85%)を1800℃、0.5〜1Torr、窒素2L/minで120分処理した。反応器の体積は22Lであった。精製されたカーボンナノチューブの金属成分検査結果をICPを用いて分析し、残存金属の含有量および金属除去率を下記表1に示した。
窒素処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして金属不純物の精製を行った。残存金属含有量および金属除去率を表1に示した。
反応圧を0.5〜1Torrの代わりに2Torrで処理した以外は、実施例1と同様にして、金属不純物の精製を行った。残存金属含有量および金属除去率を表1に示した。
反応圧を0.5〜1Torrの代わりに3Torrで処理した以外は、実施例1と同様にして金属不純物の精製を行った。残存金属含有量および金属除去率を表1に示した。
実施例1および比較例1〜3による金属不純物除去率をみると、下記表1のとおりである。
また、反応圧の場合、1Torrを超える比較例2および比較例3では、純度がそれぞれ99.7%および99.6%であって、1Torr以下よりも不純物除去効果が低かった。特に反応圧が高い場合には、Al2O3やFeが完全に除去されずに残存することが分かった。
原料のカーボンナノチューブを、窒素2L/min、反応圧0.5〜1Torrで温度別に90分処理した。原料のカーボンナノチューブの純度を処理温度別に測定し、その結果を図2に示した。処理温度別の金属不純物(Al2O3、Fe、Co、およびMg)の含有量を測定し、図3に示した。
また、処理温度別のカーボンナノチューブに残存する金属不純物の含有量は、図3に示すように、1400℃までは急激に減少した。Al2O3の場合は、Fe、CoおよびMgに比べて、より高い温度である1600℃でほぼ完全に除去された。
原料のカーボンナノチューブを窒素2L/min、反応圧0.5〜1Torr、1700℃で時間別に処理した。原料カーボンナノチューブの純度を処理時間別に測定し、その結果を図4に示した。処理時間別に金属不純物、すなわちAl2O3、Fe、CoおよびMgの含有量を測定し、図5に示した。
原料のカーボンナノチューブを1700℃で窒素流量別に15分間処理した。原料カーボンナノチューブの純度を窒素流量別に測定し、その結果を図6に示した。処理流量別に金属不純物、すなわちAl2O3、Fe、Co、およびMgの含有量を測定し、図7に示した。
窒素処理流量別のカーボンナノチューブは、図6および図7に示すように、窒素流量が2L/minである場合(反応器の体積は22L)には、純度が99.3%であり、全体金属含有量が180ppmであり、窒素流量が4L/minである場合(反応器の体積は22L)には、純度が99.9%であり、全体金属含有量が10ppm以下に減少することを確認した。
前述したように、処理温度1600℃、1700℃、1800℃および2500℃でそれぞれ処理されたカーボンナノチューブ10mgを、SDS(Sodium Dodacyl Sulfate)2wt%水溶液10gに超音波ソニケーター(sonicator)を用いて5分間分散させ、孔径16mmの濾紙で濾別した後、常温で2時間乾燥させ、電気抵抗測定器でカーボンナノチューブ5カ所(上、下、左、右、中央)を測定した後、その平均値を用いて示した。処理温度別のカーボンナノチューブの電気抵抗値を図8に示した。
また、1800℃および2500℃でそれぞれ処理したカーボンナノチューブのTEM写真をそれぞれ図9および図10に示した。
図9および図10のTEM分析結果によれば、2500℃で処理したカーボンナノチューブは、折れた構造が多く発見され、1800℃で処理したカーボンナノチューブは、相対的に緩やかであることが分かった。本発明者は、高温処理の際に黒鉛化がよりうまく起こるが、カーボンナノチューブの成長層が折れることにより互いに絡み合って分散性に悪影響を与えることを確認した。
Claims (8)
- (1)カーボンナノチューブを反応器で処理温度1800℃以下、反応圧0.1Torr以上の低真空条件下で、不活性ガスを用いて処理する段階と、
(2)超高純度のカーボンナノチューブを得る段階とを含み、
前記超高純度のカーボンナノチューブは、残存するそれぞれの金属の含有量が50ppm以下であることを特徴とする、カーボンナノチューブの精製方法。 - 前記超高純度のカーボンナノチューブは、残存する金属がFeである場合にはその含有量が10ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記低真空条件は、反応圧が0.1Torr以上1Torr以下であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記処理温度が1600〜1800℃であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記不活性ガスの量は分あたりの反応器体積の0.0025〜0.25倍であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記(1)段階での処理時間が15分〜120分であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記残存する金属は、Fe、Co、Al2O3、Mgまたはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
- 前記不活性ガスが窒素であることを特徴とする、請求項1に記載のカーボンナノチューブの精製方法。
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