以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
図1(a),(b)はパワーウィンド装置の駆動源に用いられるモータ装置の平面図を、図2はモータ部を単体で示す斜視図をそれぞれ示している。
図1および図2に示されるモータ装置10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置(図示せず)の駆動源に用いられ、ウィンドガラスを昇降させるウィンドレギュレータ(図示せず)を駆動するものである。モータ装置10は、小型でありながら大きな出力が可能な減速機構付モータであり、車両のドア内に形成される幅狭のスペース(図示せず)に設置される。モータ装置10は、モータ部20とギヤ部30とを備え、これらのモータ部20およびギヤ部30は、合計3つの締結ねじS(図示では2つのみ示す)により互いに連結され、ユニット化されている。
図2に示されるように、モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工等することで、有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。モータケース21は、互いに対向する平面壁21a(図示では一方のみ示す)と、互いに対向する円弧壁21bとを備え、断面形状が略小判形状に形成されている。つまり、モータケース21の一対の平面壁21aが対向する方向の厚み寸法が薄くされ、これによりモータ部20を扁平形状として、モータ装置10をドア内の幅狭空間に設置可能としている。
ここで、ギヤケース31においてもモータケース21の扁平形状に倣って扁平形状となっている(図9参照)。具体的には、ギヤケース31は、アーマチュア軸25の軸方向に沿う幅寸法よりも、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向に沿う高さ寸法の方が小さくなっている。
なお、図1(a)は、モータ装置10のコネクタ部材60側(表側)の平面図を示している。また、図1(b)は、モータ装置10の出力軸32f側(裏側)の平面図を示している。
モータケース21の内壁には、断面が略円弧形状に形成された合計4つのマグネット22(図示では2つのみ示す)が固定され、これらのマグネット22の内側には、コイル23が巻装されたアーマチュア24が、所定の隙間を介して回転自在に収容されている。そして、モータケース21の開口側には、図2に示されるようにブラシホルダ40が装着され、当該ブラシホルダ40によりモータケース21の開口側が閉塞されている。
アーマチュア24の回転中心には、アーマチュア軸(回転軸)25が固定されている。アーマチュア軸25は、モータ部20およびギヤ部30の双方を横切るようにして設けられ、アーマチュア軸25の軸方向一側(図2中左側)はモータケース21内に収容され、アーマチュア軸25の軸方向他側(図2中右側)はギヤケース31内に収容されている。
アーマチュア軸25の軸方向に沿う略中間部分で、かつアーマチュア24に近接する部分には、略筒状に形成されたコンミテータ26が固定されている。コンミテータ26には、アーマチュア24に巻装されたコイル23の端部が電気的に接続されている。
コンミテータ26の外周には、ブラシホルダ40に保持された一対のブラシ27が摺接されている。これらのブラシ27は、ばね部材28の付勢力によりそれぞれコンミテータ26に対して弾性接触されている。これにより、車載コントローラ(図示せず)からブラシ27に駆動電流を供給することで、アーマチュア24に回転力(電磁力)が発生し、ひいてはアーマチュア軸25が所定の回転数および回転トルクで回転される。
アーマチュア軸25の軸方向他側には、ウォームギヤ29が設けられている。ウォームギヤ29は略筒状に形成され、アーマチュア軸25に圧入により固定されている。ウォームギヤ29は、ギヤケース31内に回転自在に収容されたウォームホイール32cの歯部(図示せず)に噛み合わされている。これにより、ウォームギヤ29は、ギヤケース31内でアーマチュア軸25の回転により回転され、その回転がウォームホイール32cに伝達される。ここで、ウォームギヤ29およびウォームホイール32cは減速機構SDを形成しており、当該減速機構SDは、アーマチュア軸25の回転を減速して高トルク化するものである。
ここで、アーマチュア軸25の軸方向一側は、モータケース21内に設けられた軸受部材(図示せず)により回転自在に保持され、アーマチュア軸25の軸方向他側は、ギヤケース31内に設けられた軸受部材(図示せず)により回転自在に保持されている。さらに、アーマチュア軸25の軸方向に沿う略中間部分は、図2に示されるように、ブラシホルダ40の軸受保持筒42に保持された軸受部材BGにより回転自在に保持されている。
このように、アーマチュア軸25は、合計3つの軸受部材により回転自在に保持されている。これにより、アーマチュア軸25の回転時における撓みが抑えられて、アーマチュア軸25は殆ど振れること無く高速で安定した回転が可能となっている。よって、モータ装置10の騒音等の発生が効果的に抑えられている。
次に、モータケース21の開口側を閉塞するブラシホルダ40の構造について、図3ないし図7を用いて詳細に説明する。
図3はブラシホルダをギヤケース側から見た斜視図を、図4はブラシホルダのPTC固定部を拡大した斜視図を、図5はPTCの装着手順を説明する斜視図を、図6はブラシ側駆動用導電部材の長手方向一側周辺の斜視図を、図7はブラシ側駆動用導電部材の装着手順を説明する斜視図をそれぞれ示している。
一対のブラシ27を保持するブラシホルダ40は、モータケース21およびギヤケース31の双方に収容されている。すなわち、ブラシホルダ40は、モータケース21およびギヤケース31の双方に跨がって配置されている。ブラシホルダ40は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成され、ホルダ本体41と軸受保持筒42とを備えている。ここで、図3ないし図7では、ブラシホルダ40に装着される電子部品に網掛けを施している。
ブラシホルダ40には、制御基板50(図10参照)を介してコネクタ部材60(図11参照)が電気的に接続されるようになっている。これにより、アーマチュア軸25を回転させる駆動電流が、外部コネクタCN(図17参照)からコネクタ部材60および制御基板50を介して、ブラシホルダ40(ブラシ27)に供給される。
ホルダ本体41は、コンミテータ26(図1参照)の軸方向と交差する方向に拡がる底壁部41aと、当該底壁部41aからコンミテータ26の軸方向に突出された側壁部41bとを備えている。底壁部41aはモータケース21の断面形状と同様に略小判形状に形成され、側壁部41bは互いに対向する一対の円弧状壁41cおよび一対の直線状壁41dを備えている。このように、ブラシホルダ40においても、モータケース21の扁平形状(図2参照)に倣って扁平形状となっている。
そして、底壁部41aおよび側壁部41bにより囲まれた内側(図示せず)に、一対のブラシ27(図1参照)が移動自在に設けられている。したがって、コンミテータ26は、ホルダ本体41の内側に回転自在に収容される。また、ホルダ本体41の内側には、一対のブラシ27に加えて、コンデンサやチョークコイル等の電子部品からなる雑防素子が設けられている。
これに対し、ホルダ本体41の外側で、かつ底壁部41aの外側には、外部コネクタCNからの駆動電流を一対のブラシ27に供給する第1ブラシ側駆動用導電部材43および第2ブラシ側駆動用導電部材44が設けられている。これらのブラシ側駆動用導電部材43,44は、それぞれ導電性に優れた黄銅等よりなる薄板を、プレス加工等することにより所定形状に形成されている。
第1ブラシ側駆動用導電部材43は、一方側部材43aと他方側部材43bとに2分割されている。そして、一方側部材43aの長手方向両側には、それぞれ端子Aおよび端子Bが設けられている。これに対し、他方側部材43bの長手方向一側には、端子Cが設けられている。なお、他方側部材43bの長手方向他側は、図示しない他の導電部材等を介して一方のブラシ27に電気的に接続されている。
これに対し、第2ブラシ側駆動用導電部材44は、第1ブラシ側駆動用導電部材43とは異なり、2分割されていない。そして、第2ブラシ側駆動用導電部材44の長手方向一側には、端子Dが設けられている。一方、第2ブラシ側駆動用導電部材44の長手方向他側は、図示しない他の導電部材等を介して他方のブラシ27に電気的に接続されている。
さらに、ホルダ本体41の外側で、かつ底壁部41aの外側には、電子部品としての1つのPTC(Positive Temperature Coefficient)45が設けられている。このPTC45は、プラス(+)およびマイナス(−)の極性を有し、温度上昇に伴って電気抵抗が増加する半導体となっている。つまり、PTC45は、モータ部20が過熱により損傷するのを防止する熱保護部品としての機能を有している。
PTC45は、一方側端子45aと他方側端子45bとを備えている。そして、PTC45の一方側端子45aは、一方側部材43aの端子Bに対して、スポット溶接等により電気的に接続されている。これに対し、PTC45の他方側端子45bは、他方側部材43bの端子Cに対して、スポット溶接等により電気的に接続されている。このように、PTC45は、第1ブラシ側駆動用導電部材43の途中に設けられ、これにより温度上昇に伴って一方のブラシ27への駆動電流の供給が絞られる。よって、モータ部20のそれ以上の過熱が防止される。
また、ホルダ本体41の外側で、かつ底壁部41aの外側には、比較的広い一対の第1スペースSP1と、当該第1スペースSP1よりも狭い一対の第2スペースSP2とが設けられている。一対の第1スペースSP1は、円弧状壁41cと軸受保持筒42との間に設けられ、一対の第2スペースSP2は、直線状壁41dと軸受保持筒42との間に設けられている。
そして、一方の第1スペースSP1に、一方側部材43aの端子Aと、第2ブラシ側駆動用導電部材44の端子Dと、が配置されている。また、他方の第1スペースSP1に、PTC45と、一方側部材43aの端子Bと、端子Cを有する他方側部材43bと、第2ブラシ側駆動用導電部材44の長手方向他側と、が配置されている。
ここで、一対の第2スペースSP2には、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44がそれぞれ横切っている。具体的には、図3に示されるように、一方側部材43aの板厚方向および第2ブラシ側駆動用導電部材44の板厚方向と、ホルダ本体41の径方向とが、互いに一致するように設けられている。これにより、ブラシホルダ40の扁平化を実現している。
図4に示されるように、他方の第1スペースSP1には、PTC45(図3参照)が固定されるPTC固定部46が設けられている。なお、図4においては、PTC固定部46の構造を判り易くするために、PTC45の図示を省略している。PTC固定部46は、略直方体形状の中空スペースとされ、その内部には、ホルダ本体41の内側から外側(図中下側から図中上側)に向けて、PTC45が装着されるようになっている(図5参照)。
そして、PTC固定部46におけるホルダ本体41の内側に対応する部分には、コンミテータ26の軸方向と交差する方向に弾性変形可能な引っ掛け爪46aが設けられている。引っ掛け爪46aは、ホルダ本体41の底壁部41aに一体に設けられ、PTC固定部46に固定されたPTC45の脱落(抜け)を防止するものである。つまり、引っ掛け爪46aには、PTC45が引っ掛けられて、これにより、コンミテータ26の軸方向一側(図中下側)へのPTC45の移動が規制される。
また、PTC固定部46におけるホルダ本体41の外側に対応する部分で、かつ軸受保持筒42寄りの部分には、コンミテータ26の軸方向(図中上側)から見ると略U字形状に形成された囲い壁46bが設けられている。囲い壁46bは、凹状スペース46cを備えており、当該凹状スペース46cは、コンミテータ26の軸方向に貫通されている。
凹状スペース45cには、一方側部材43aの端子Bが配置されるとともに、PTC45の一方側端子45a(図3参照)が配置される。つまり、囲い壁46bは、端子Bおよび一方側端子45aの双方を、コンミテータ26の径方向から囲っている。そして、囲い壁46bの凹状スペース46cには、端子Bおよび一方側端子45aが重ねられた状態(互いに接続された状態)で、がたつかないように収容される。具体的には、囲い壁46bは、PTC固定部46にPTC45を固定した状態で、PTC45がコンミテータ26の径方向および軸方向他側(図中上側)に移動されるのを規制している。
このように、PTC45は、ブラシホルダ40に対して、コンミテータ26の径方向および軸方向両側に対してがたつかないようになっている。したがって、電気的な接続部分(スポット溶接される部分)が剥がれる等の問題を生じることが無い。
ここで、PTC45をPTC固定部46に固定するには、図5に示されるように、まず、PTC45をホルダ本体41の内側(図中下方側)に臨ませる。このとき、PTC45の一方側端子45aを、囲い壁46bの凹状スペース46c(端子B)に整合させる。また、PTC45の他方側端子45bを端子Cに整合させる。
その後、矢印M1に示されるように、PTC45をPTC固定部46に向けて移動させ、これによりPTC45をPTC固定部46に固定する。このとき、PTC45の移動途中において、引っ掛け爪46aは弾性変形される。そして、PTC45の移動を継続して行うことで、一方側端子45aが凹状スペース45cに挿入され、かつPTC45の一対の端子45a,45b側とは反対側(図中下側)が、引っ掛け爪46aに引っ掛けられる。
このように、PTC45のPTC固定部46に対する固定構造は、引っ掛け爪46aの弾性変形を伴う所謂スナップフィットの固定構造となっている。よって、PTC45をPTC固定部46に対して、ワンタッチでかつ強固に固定することができる。その後、スポット溶接を行うことで、一方側端子45aを端子Bに、他方側端子45bを端子Cに、それぞれ電気的に接続する。
ここで、本実施の形態では、一方側端子45a(端子B)側のみを囲い壁46bにより支持させているが、これは、一方側端子45a(端子B)側のみを囲い壁46bに支持させることで、他方側端子45b(端子C)側もがたつかなくなるからである。ただし、ブラシホルダ40にスペース的に余裕があれば、他方側端子45b(端子C)側にも囲い壁を設けても良い。この場合、PTC45のブラシホルダ40に対するがたつきを、さらに効果的に抑えることができる。
図6および図7に示されるように、一方の第1スペースSP1には、一方側部材43aの端子Aと、第2ブラシ側駆動用導電部材44の端子Dと、が配置されている。ここで、端子Aおよび端子Dには、モータ装置10(図1参照)の組み立て時において、ギヤケース31に埋設された一対の基板側駆動用導電部材33g,33hの(図9参照)がそれぞれ突き合わされて電気的に接続される。よって、これらの端子Aおよび端子Dは、ブラシホルダ40に対してがたつかないように固定する必要がある。
端子Aおよび端子Dは、互いに平行に設けられ、いずれも軸受保持筒42の突出方向(図中上下方向)に延在されている。すなわち、端子Aおよび端子Dの先端側(図中上側)は、軸受保持筒42の先端側(軸受部材BG側)に向けられている。
また、図7に示されるように、端子Aおよび端子Dの基端側(図中下側)には、軸受保持筒42の突出方向とは逆方向に延在された被差し込み部43c,44aがそれぞれ設けられている。そして、これらの被差し込み部43c,44aは、ホルダ本体41の底壁部41aに設けられた一対の差し込み穴41eに対して、圧入により差し込まれるようになっている。
さらに、端子Aおよび端子Dの基端側には、一対の突出片43d,44bがそれぞれ設けられている。具体的には、一対の突出片43dは、端子Aから一方側部材43aの延在方向に互いに対向するようにしてそれぞれ突出され、一対の突出片44bは、端子Dから第2ブラシ側駆動用導電部材44の延在方向に互いに対向するようにしてそれぞれ突出されている。そして、これらの突出片43d,44bは、コンミテータ26の軸方向から底壁部41aにおける支持壁41f(図7のクロスハッチング部分)に当接される。つまり、複数の突出片43d,44bは、それぞれ底壁部41aに支持される。
このように、端子Aの基端側に、1つの被差し込み部43cとその両側に一対の突出片43dを設け、端子Dの基端側に、1つの被差し込み部44aとその両側に一対の突出片44bを設け、被差し込み部43c,44aを差し込み穴41eにそれぞれ差し込みつつ、2つずつ設けられた突出片43d,44bを底壁部41aの支持壁41fに支持させている。
これにより、端子Aおよび端子Dの基端側のブラシホルダ40(底壁部41a)に対する固定強度が高められている。したがって、端子Aおよび端子Dに対してギヤケース31に埋設された一対の基板側駆動用導電部材33g,33h(図9参照)をそれぞれ接続する際に、端子Aおよび端子Dがふらついて折れ曲がるようなことが防止される。特に、図6に示されるように、端子Aおよび端子Dの長さ寸法が比較的長い場合等においては、このような端子Aおよび端子Dの基端側の固定構造が有効となる。
ここで、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44を、それぞれホルダ本体41の底壁部41aに固定するには、図7に示されるように、まず、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44を、ホルダ本体41の外側(図中上方側)に臨ませる。このとき、それぞれの被差し込み部43c,44aを差し込み穴41eにそれぞれ臨ませて、かつそれぞれの突出片43d,44bを底壁部41aの支持壁41fに臨ませる。
その後、矢印M2に示されるように、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44を、ホルダ本体41の底壁部41aに向けて移動させ、これにより一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44を底壁部41aに固定する。このとき、それぞれの突出片43d,44bの下端面を底壁部41aの支持壁41fに密着させるように、被差し込み部43c,44aを差し込み穴41eにそれぞれ完全に入り込むよう押圧する。
これにより、図6に示されるように、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44が、ホルダ本体41の底壁部41aに対して、がたつくこと無く精度良く固定される。このとき、接着剤や固定ねじ等の固定手段を一切使用しないので、一方側部材43aおよび第2ブラシ側駆動用導電部材44を、ホルダ本体41の底壁部41aに対して容易に固定することができる。
次に、モータ装置10を形成するギヤ部30の構造について、図8ないし図15を用いて詳細に説明する。
図8はカバー部材を外した状態のモータ装置を示す斜視図を、図9はギヤケースを単体で示す斜視図を、図10は制御基板を単体で示す斜視図を、図11はコネクタ部材を単体で示す斜視図を、図12(a),(b)はカバー部材を単体で示す斜視図を、図13はカバー部材を成形する際の樹脂流れを説明する平面図を、図14はカバー部材とコネクタ部材との当接部分を示す斜視図を、図15(a),(b),(c)はカバー部材の製造手順を説明する説明図をそれぞれ示している。
図8および図9に示されるように、ギヤ部30は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されたギヤケース(ハウジング)31を備えている。ギヤケース31は、ギヤ収容部32と電気部品収容部33とを備えている。なお、図8においては、電気部品収容部33の内部構造を判り易くするために、電気部品収容部33を密閉するカバー部材70(図12参照)の図示を省略している。
図9に示されるように、ギヤ収容部32は、底壁32aとその周囲を覆う側壁32bとを備え、有底の略円筒形状に形成されている。そして、ギヤ収容部32の内部には、減速機構SDを構成するウォームギヤ29およびウォームホイール32c(図1参照)が、互いに噛み合わされた状態で回転自在に収容されている。
また、ギヤ収容部32には開口部32dが形成され、当該開口部32dはステンレス鋼板等により略円盤形状に形成された円盤カバー32eにより密閉されている。そして、ギヤ収容部32の底壁32aからは、図1(b)に示されるように、ウォームホイール32cにより回転される出力軸32fが、外部に向けて突出されている。ここで、出力軸32fの出力(回転力)は、ウィンドレギュレータ(図示せず)に伝達される。
さらに、ギヤ収容部32の周囲には、図1(b)に示されるように、合計3つの取り付け筒32gが一体に設けられている。これらの取り付け筒32gには、モータ装置10を車両のドア内(図示せず)に設けられたブラケットBR(図17参照)に固定するための固定ボルト(図示せず)が挿通されるようになっている。
電気部品収容部33は、底壁33aとその周囲を囲う側壁33bとを備えている。電気部品収容部33は、出力軸32f(図1(b)参照)の軸方向と交差する方向の断面形状が、略三角形形状と略円形形状とを組み合わせた形状に形成されている。具体的には、電気部品収容部33の略三角形形状に形成された部分が基板収容部33cとなっており、略円形形状に形成された部分がコネクタ収容部33dとなっている。そして、基板収容部33cおよびコネクタ収容部33dは、電気部品収容部33の内部において、互いに連通可能に繋がっている。
基板収容部33cの容積は、コネクタ収容部33dの容積よりも大きくなっている。基板収容部33cは、ギヤケース31の比較的大きな部分を占めているギヤ収容部32に近接配置されている。これに対し、コネクタ収容部33dは、基板収容部33cに対してギヤ収容部32側とは反対側に配置されている。よって、ギヤケース31の外郭が無用に大きくなることが抑えられている。
電気部品収容部33(基板収容部33cおよびコネクタ収容部33d)の開口部33eは、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されたカバー部材70(図12参照)により密閉される。電気部品収容部33を形成する側壁33bの開口部33e側には、電気部品収容部33の形状に倣うようにして、ケース側溶着部33fが設けられている。このケース側溶着部33fは、側壁33bの端部から微小高さで突出され、カバー部材70をレーザ溶着する際に溶融される部分となっている。
また、側壁33bの外側で、かつコネクタ収容部33dに対応する部分には、合計3つの係合爪33b1(図示では2つのみ示す)が設けられている。これらの係合爪33b1は、側壁33bからコネクタ収容部33dの径方向外側に突出して設けられている。そして、3つの係合爪33b1には、グロメット部材80における固定脚81bの切り欠き穴81b1(図16参照)が引っ掛けられるようになっている。つまり、3つの係合爪33b1は、グロメット部材80をギヤケース31に固定するためのものである。
3つの係合爪33b1は、コネクタ収容部33dにおける基板収容部33c側とは反対側に配置され、かつコネクタ収容部33dの周囲に略90度間隔で設けられている。そして、隣り合う係合爪33b1の間には、ストッパ壁33b2が設けられている。ストッパ壁33b2は2つ設けられ、これらのストッパ壁33b2においても、側壁33bからコネクタ収容部33dの径方向外側に突出して設けられている。一対のストッパ壁33b2は、グロメット部材80のギヤケース31に対する出力軸32fの軸方向に沿う移動量を規制するものである。これにより、グロメット部材80の一対のモータ側リップシール82a1,82a2(図16参照)が、潰れ過ぎて損傷されることが防止される。
ギヤケース31の内部で、かつ基板収容部33cの内部には、第1基板側駆動用導電部材(モータ側導電部材)33gおよび第2基板側駆動用導電部材(モータ側導電部材)33hが、インサート成形により埋設されている。より具体的には、これらの基板側駆動用導電部材33g,33hは、それぞれ導電性に優れた黄銅等よりなる薄板を、プレス加工等することにより所定形状に形成されている。
ここで、これらの基板側駆動用導電部材33g,33hは、ギヤケース31を射出成形して基板収容部33cの内部に埋設する際に、予めユニット化された状態となっている。つまり、一対の基板側駆動用導電部材33g,33hは、1つの導電部材ユニットUT(図19参照)とされ、この導電部材ユニットUTをギヤケース31にインサート成形により埋設することで、ギヤケース31の所定箇所に一対の基板側駆動用導電部材33g,33hを容易に精度良く配置可能となっている。このように、一対の基板側駆動用導電部材33g,33hは、ユニット化された状態でギヤケース31にインサート成形により設けられている。
なお、一対の基板側駆動用導電部材33g,33hの長手方向一側は、図19に示されるように、先端側が2股に分かれた先割れ形状端子33g1,33h1となっている。そして、モータ装置10を組み立てた状態において、第1基板側駆動用導電部材33gの先割れ形状端子33g1には、一方側部材43aの端子Aが挟まれるようにして保持される。これに対し、第2基板側駆動用導電部材33hの先割れ形状端子33h1には、第2ブラシ側駆動用導電部材44の端子Dが挟まれるようにして保持される。
また、一対の基板側駆動用導電部材33g,33hの長手方向他側は、図9および図19に示されるように、基板収容部33cの開口方向(出力軸32fの軸方向)に向けられている。そして、これらの基板側駆動用導電部材33g,33hの長手方向他側は、制御基板50に設けられた2つの第1駆動電流用スルーホールTH1(図10参照)に、弾性変形を伴ってそれぞれ差し込まれる第1弾性変形端子(第1端子)33g2,33h2となっている。すなわち、一対の第1弾性変形端子33g2,33h2は、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向(出力軸32fの軸方向)に延在されている。
これにより、一対の第1弾性変形端子33g2,33h2を、制御基板50の2つの第1駆動電流用スルーホールTH1に差し込むだけで、両者を確実に電気的に接続可能となっている。したがって、半田付け等の接続作業が不要となるばかりか、製品毎にばらつきの少ない安定した電気回路を形成することができる。
ここで、モータ装置10の組み立て状態において、基板収容部33cにおけるモータケース21の近傍には、貫通穴HL(図8および図9参照)が設けられている。この貫通穴HLは、基板収容部33cの制御基板50がある側と、ギヤケース31のブラシホルダ40がある側とを貫通している。そして、貫通穴HLには、モータ装置10の組み立て状態において、ブラシホルダ40における一方の第2スペースSP2に配置された一方側部材43a(図2および図3参照)が配置されている。このように、ギヤケース31に貫通穴HLを設けて、当該貫通穴HLに一方側部材43aを配置することで、ブラシホルダ40と制御基板50とを互いに近接して配置されるようにしている。これによっても、ギヤケース31の薄型化を実現しつつ、モータ装置10の軽量化を実現している。
図9に示されるように、ギヤ収容部32における開口部32dの開口方向と、電気部品収容部33における開口部33eの開口方向とは、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向、具体的には出力軸32fの軸方向となっている。したがって、基板収容部33cの開口方向およびコネクタ収容部33dの開口方向も、出力軸32fの軸方向となっている。
これにより、ギヤケース31の扁平形状を保ったまま、基板収容部33cおよびコネクタ収容部33dの開口面積、つまり開口部33eの開口面積を大きくしている。よって、ギヤケース31に対するウォームホイール32c,制御基板50およびコネクタ部材60の収容作業を、それぞれ同じ方向(出力軸32fの軸方向)から容易に行うことができる。したがって、モータ装置10の組み立て工程を簡素化して、自動組み立て装置等で容易に組み立てることができる。
図10に示されるように、基板収容部33cに収容される制御基板50は、基板収容部33cの三角形形状に倣って、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂等により略三角形形状に形成されている。つまり、制御基板50を基板収容部33cに収容すると、当該制御基板50は、図8に示されるように基板収容部33cに略隙間無く収まるようになっている。よって、制御基板50の基板収容部33c内でのがたつきが効果的に抑えられている。
また、制御基板50には、集積回路51やチップ抵抗等の複数の電子部品EPが実装されている。これにより、一対のブラシ27(図1参照)への駆動電流の供給量、すなわちアーマチュア軸25(図1参照)の回転状態が制御される。
ここで、制御基板50には、集積回路51や複数の電子部品EPに加えて、複数のホールIC(図示せず)が実装されている。これらのホールICは、アーマチュア軸25の回転状態を検出する回転センサであって、アーマチュア軸25に固定されたセンサマグネット(図示せず)の回転により矩形波を出力する。これにより、集積回路51は、矩形波の出現回数を監視して、アーマチュア軸25が停止状態にあること等を把握し、一対のブラシ27への駆動電流の供給を停止させたりする。
略三角形形状に形成された制御基板50には、3つの角部52,53,54が設けられている。これらの角部52,53,54のうちの2箇所の角部53,54の近傍には、制御基板50の板厚方向に貫通された位置決め穴53a,54aが設けられている。これらの位置決め穴53a,54aは、モータ装置10の組み立て時において、自動組み立て装置200(図21ないし図23参照)の短尺位置決めピン221dが差し込まれるようになっている。これにより、ギヤケース31の基板収容部33cに対して、制御基板50を精度良く収容することができる。
なお、基板収容部33cには、図9に示されるように、出力軸32fの軸方向から、一対の位置決め穴53a,54aに対向される一対のピン受け穴(ハウジング孔)33kが設けられている。これにより、自動組み立て装置200により制御基板50を基板収容部33cに収容する際に、短尺位置決めピン221dがピン受け穴33kにそれぞれ差し込まれて、制御基板50が基板収容部33cに対して精度良く位置決めされる。
また、制御基板50の角部53と角部54との間には、2つの第1駆動電流用スルーホール(スルーホール)TH1が設けられている。これらの第1駆動電流用スルーホールTH1には、第1基板側駆動用導電部材33gの第1弾性変形端子33g2および第2基板側駆動用導電部材33hの第1弾性変形端子33h2(図9および図19参照)が、それぞれ弾性変形しつつ差し込まれる。
さらに、制御基板50の角部52の近傍には、2つの第2駆動電流用スルーホール(スルーホール)TH2と、5つの制御電流用スルーホール(スルーホール)TH3とが設けられている。2つの第2駆動電流用スルーホールTH2には、コネクタ部材60の第1電源側駆動用導電部材62の第2弾性変形端子62aおよび第2電源側駆動用導電部材63の第2弾性変形端子63a(図11参照)が、それぞれ弾性変形しつつ差し込まれる。これに対し、5つの制御電流用スルーホールTH3には、コネクタ部材60に設けられた5つの制御用導電部材64の第3弾性変形端子64aが、それぞれ弾性変形しつつ差し込まれる。
ここで、5つの制御用導電部材64は、他の車載機器(図示せず)に対してモータ装置10の作動状態を示す制御電流を流したり、車室内に設けられるパワーウィンドスイッチ(図示せず)からのオンオフを示す制御電流を流したりするものである。
図11に示されるように、コネクタ収容部33dに収容されるコネクタ部材60は、コネクタ収容部33dの円形形状に倣って略円形形状に形成された円形本体部61を備えている。そして、円形本体部61をコネクタ収容部33dに収容すると、当該円形本体部61は、図8に示されるようにコネクタ収容部33dに略隙間無く収まるようになっている。よって、コネクタ部材60のコネクタ収容部33d内でのがたつきが効果的に抑えられている。
コネクタ部材60は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形して形成され、その内部には、第1電源側駆動用導電部材(コネクタ側導電部材)62と第2電源側駆動用導電部材(コネクタ側導電部材)63とがインサート成形により埋設されている。また、コネクタ部材60の内部には、一対の電源側駆動用導電部材62,63の他にも、5つの制御用導電部材(コネクタ側導電部材)64がインサート成形により埋設されている。
円形本体部61には、モータ装置10を組み立てた状態で、出力軸32fの軸方向に開口されたコネクタ接続部61aが設けられている。このコネクタ接続部61aは、出力軸32fの軸方向から見たときに、略長方形形状に形成され、短辺部61a1と長辺部61a2とを備えている。そして、コネクタ接続部61aには、車両側の外部コネクタCN(図17参照)が差し込まれて接続されるようになっている。これにより、外部コネクタCNとコネクタ部材60とが電気的に接続され、モータ装置10に駆動電流が供給される。また、モータ装置10と他の車載機器とで通信可能な状態となる。
コネクタ接続部61aの内部には、一対の電源側駆動用導電部材62,63の長手方向一側に設けられた端子E(図示では一部のみ示す)と、5つの制御用導電部材64の長手方向一側に設けられた端子F(図示では一部のみ示す)とが露出されている。そして、これらの複数の端子E,Fはオス型端子となっており、外部コネクタCNの内部の複数のメス型端子(図示せず)にそれぞれ差し込まれる。
円形本体部61には、一対の位置決め穴(コネクタ孔)61bが設けられている。これらの位置決め穴61bは、円形本体部61の軸方向(出力軸32fの軸方向)に延在され、コネクタ接続部61aを中心に互いに対向配置されている。これらの位置決め穴61bは、モータ装置10の組み立て時において、自動組み立て装置200(図21ないし図23参照)の長尺位置決めピン221eが差し込まれるようになっている。これにより、ギヤケース31のコネクタ収容部33dに対して、コネクタ部材60を精度良く収容することができる。
また、円形本体部61の外周部分には、その径方向に突出するようにして、略直方体形状に形成された基板側ブロック65が一体に設けられている。基板側ブロック65は、ギヤケース31における電気部品収容部33の内部において、コネクタ収容部33dから基板収容部33c側にはみ出るようにして配置されている。これにより、モータ装置10を組み立てた状態において、基板側ブロック65は、出力軸32fの軸方向から見たときに、制御基板50と重ねられる(図8参照)。
基板側ブロック65には、一対の電源側駆動用導電部材62,63の長手方向他側に設けられた第2弾性変形端子(第2端子)62a,63aと、5つの制御用導電部材64の長手方向他側に設けられた第3弾性変形端子(第2端子)64aと、が突出して設けられている。より具体的には、これらの第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aは、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向(出力軸32fの軸方向)に延在されている。
そして、これらの第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aは、制御基板50に設けられた第2駆動電流用スルーホールTH2および制御電流用スルーホールTH3(図10参照)に、それぞれ弾性変形を伴って差し込まれる。したがって、これらの第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aを、制御基板50のそれぞれのスルーホールTH2,TH3に差し込むだけで、両者を確実に電気的に接続可能となっている。よって、半田付け等の接続作業が不要となるばかりか、製品毎にばらつきの少ない安定した電気回路を形成することができる。
図12に示されるように、ギヤケース31の電気部品収容部33を閉塞するカバー部材70は、略環状に形成されたコネクタカバー部71と、略三角形形状に形成された基板カバー部72とを備えている。なお、カバー部材70は、図15に示されるように、溶融樹脂MRを上下金型110,120の内部のキャビティCAに圧送することで略平板状に形成されている。つまり、カバー部材70は、射出成形品となっている。
コネクタカバー部71は、電気部品収容部33のコネクタ収容部33dの一部を密閉する部分で、その径方向内側には露出孔71aが形成されている。この露出孔71aは、図14に示されるように、コネクタ部材60のコネクタ接続部61aを外部に露出させている。これにより、電気部品収容部33にカバー部材70を装着した状態で、外部コネクタCN(図17参照)をコネクタ接続部61aに接続可能となっている。
図13の網掛け部分に示されるように、コネクタカバー部71の内側で、かつ径方向外側には、ギヤケース31のケース側溶着部33f(図9参照)に対して、レーザ溶着により固定される第1固定部71bが設けられている。この第1固定部71bは、コネクタカバー部71の外周部分を縁取るようにして設けられている。
ここで、カバー部材70は白色(淡色)の樹脂材料により形成され、これによりレーザ溶着時において、レーザ光線LS(図25参照)が透過するようになっている。これに対し、ギヤケース31(ケース側溶着部33f)は、レーザ光線LSを吸収する黒色(濃色)の樹脂材料により形成されている。よって、レーザ光線LSの照射により、カバー部材70は溶融せずにケース側溶着部33fのみが溶融されて、ひいてはカバー部材70は歪むこと無くギヤケース31に溶着される。
コネクタカバー部71の径方向内側には、出力軸32fの軸方向に突出された環状肉厚部71cが設けられている。この環状肉厚部71cは、コネクタカバー部71の他の部分に比して肉厚とされ、環状肉厚部71cの突出方向は、モータ装置10を組み立てた状態で、電気部品収容部33の内部に向けられている(図17および図25参照)。そして、環状肉厚部71cの先端部分(図13の網掛け部分)は、図17に示されるように、ゴム製のパッキンシールSLに押し付けられている。これにより、露出孔71aから電気部品収容部33の内部に雨水等が進入することが防止される。
このように、図13の網掛け部分で示される第1固定部71bには、ケース側溶着部33fが溶着され、図13の網掛け部分で示される環状肉厚部71cの先端部分は、パッキンシールSLに押し付けられる。つまり、第1固定部71bおよび環状肉厚部71cの先端部分は、溶着強度およびシール性を確保する上で重要な役割を担う部分であり、当該部分の歪みを無くして剛性を高めておく必要がある。言い換えれば、当該部分の剛性が弱く歪んでしまうと、溶着強度およびシール性の低下を招くことになる。
ここで、図12(a)に示されるように、カバー部材70の外側で、かつ基板カバー部72の角部72cと角部72dとの間には、カバー部材70を射出成形する際のゲートGTが設けられている。具体的には、ゲートGTは、角部72cと角部72dとの間で、かつ一方の角部72d寄りの部分に設けられている。なお、ゲートGTは、カバー部材70の内側から見ると、図13に示されるように、基板カバー部72に設けられた一対の支持突起72c1,72d1の間で、かつ一方の支持突起72d1寄りの部分に設けられている。そして、カバー部材70を射出成形する際に、溶融樹脂MR(図15参照)は、図13の破線矢印のように流動する。したがって、コネクタカバー部71のゲートGTから一番遠い部分に、ウェルドラインWLが形成される。
ここで、ウェルドラインWLは、相対する方向から流れてきた溶融樹脂MRが突き当たる部分であって、組織的に弱い部分(低剛性)となっている。したがって、本実施の形態では、コネクタカバー部71のウェルドラインWLが形成される部分を、コネクタカバー部71の他の部分よりも幅広(肉厚)としており、この幅広部71dによりウェルドラインWLの部分の剛性を高めている。具体的には、幅広部71dは、コネクタカバー部71の他の部分に比して、コネクタカバー部71の径方向に分厚くなっている。よって、ウェルドラインWLが形成されることに起因した第1固定部71bおよび環状肉厚部71cの先端部分の歪みが、効果的に抑えられている。
また、幅広部71dの機能には、上述のようなウェルドラインWLが形成される部分の剛性を高める機能の他にも、以下に示されるような2つの機能がある。
第1に、環状肉厚部71cの径方向内側に、パッキンシールSLに押し付けられない部分(網掛けが無い部分)が形成され、当該部分を下金型110に設けられた押し出しピン113(図15参照)で押圧させるようにし、これにより完成したカバー部材70を下金型110から離型させている。つまり、幅広部71dは、パッキンシールSLに押し付けられる環状肉厚部71cの先端部分の平滑化を保持しつつ、カバー部材70の離型時におけるコネクタカバー部71の歪みを防止する機能を備えている。
ここで、本実施の形態におけるカバー部材70では、押し出しピン113で押圧される押圧ポイントOPは、図13に示される通り合計7箇所となっている。これらの押圧ポイントOPは、カバー部材70の全域に分散して設けられ、これにより、略平板状に形成されたカバー部材70の離型時における歪みが効果的に抑えられている。
第2に、図14に示されるように、幅広部71dの内側(コネクタ接続部61a側)には、コネクタ接続部61aの短辺部61a1に当接してコネクタ接続部61aを支持するコネクタ支持壁71d1が設けられている。すなわち、幅広部71dは、コネクタ収容部33dに収容されたコネクタ部材60(図8参照)が、コネクタ収容部33dの内部でがたつくのを防止する機能を備えている。よって、外部コネクタCN(図17参照)を、コネクタ接続部61aに対して真っ直ぐに抉ること無く容易に差し込めるようになっている。
図12および図13に示されるように、基板カバー部72は、電気部品収容部33の基板収容部33c(図8参照)を密閉する部分である。基板カバー部72の内側で、かつ外周寄りの部分には、基板収容部33cを形成する側壁33bに嵌め込まれる装着凸部72aが一体に設けられている。これにより、モータ装置10の組み立て時において、カバー部材70は、電気部品収容部33の開口部33e(図9参照)を正確に密閉するように装着される。
また、図13の網掛け部分に示されるように、基板カバー部72の内側で、かつ装着凸部72aよりも外周寄りの部分には、ギヤケース31のケース側溶着部33f(図8参照)に対して、レーザ溶着により固定される第2固定部72bが設けられている。この第2固定部72bは、基板カバー部72の外周部分を縁取るようにして設けられている。
さらに、基板カバー部72のコネクタカバー部71から離れた部分にある角部72c,72dの近傍には、一対の支持突起72c1,72d1がそれぞれ設けられている。ここで、装着凸部72aおよび一対の支持突起72c1,72d1の突出方向は、モータ装置10を組み立てた状態で、電気部品収容部33の内部に向けられている。
そして、一対の支持突起72c1,72d1は、制御基板50の角部53および角部54(図10参照)の近傍を支持するようになっている。これにより、基板収容部33cに収容された制御基板50が、基板収容部33cの内部でがたつくことが防止される。よって、制御基板50を振動等から保護することができ、モータ装置10の長寿命化を図ることが可能となる。
ここで、図13に示されるように、基板カバー部72に設けられた一対の支持突起72c1,72d1の間で、かつ一方の支持突起72d1寄りに配置されたゲートGTの裏側(基板カバー部72の内側)には、略風車のように形成された螺旋状凸部SWが形成されている。この螺旋状凸部SWは、下金型110に同様形状の凹部(図示せず)が設けられ、当該凹部に対して上金型120の溶融樹脂通路123から吐出された溶融樹脂MRがぶつかって形成されたものである。これにより、溶融樹脂通路123から吐出されてキャビティCAの内部に流れ込んだ溶融樹脂MRは、渦巻き状に流動しながらキャビティCAの内部に拡がっていく。これにより、キャビティCAの内部に均等に満遍なく溶融樹脂MRが行き渡り、カバー部材70を組織的に強固にでき、ひいてはカバー部材70の剛性が高められている。
図15に示されるように、カバー部材70は、射出成形装置100により製造される。具体的には、射出成形装置100は、基台(図示せず)に固定された下金型110と、当該下金型110に対して昇降駆動される上金型120と、を備えている。
下金型110には、カバー部材70の裏側(図12(b)参照)を形作る凹部111が形成されている。この凹部111は、複雑な形状をなしている。具体的には、凹部111は、図12(b)に示されるように、環状肉厚部71c,装着凸部72a,一対の支持突起72c1,72d1,螺旋状凸部SW等を成形する複数の凹部によって構成されている。
なお、下金型110における溶融樹脂通路123の出口側との対向部分(図中上側)には、略風車のように螺旋形状に形成された凹部(図示せず)が形成されている。そのため、図12(b)に示されるように、基板カバー部72の裏側(内側)の所定箇所に、略風車のような螺旋状凸部SWが形成される。
さらに、下金型110には、合計7つの押し出しピン113(図示では5つのみ示す)が設けられている。これらの押し出しピン113は、いずれも同じタイミングで駆動(同期駆動)される。具体的には、射出成形を終えて硬化されたカバー部材70を、下金型110から離型するときに上昇駆動される。
これにより、カバー部材70の裏側の押圧ポイントOP(図13参照)が、押し出しピン113によりそれぞれ押圧され、ひいては下金型110からカバー部材70が離型される。すなわち、カバー部材70を射出成形している最中は、これらの押し出しピン113は下降された状態、つまり凹部111から突出された状態にはならない。
一方、上金型120には、カバー部材70の表側(図12(a)参照)を形作る第1凸部121および第2凸部122が形成されている。ここで、上金型120は下金型110よりも単純な形状となっている。
これにより、カバー部材70の射出成形が完了して上下金型110,120を互いに引き離す際に、カバー部材70は上金型120に張り付くことが無い。よって、上金型120には、押し出しピンが設けられていない。
なお、上金型120の突出高さが高い方の第1凸部121は、図12(a)に示されるように、コネクタカバー部71の露出孔71aを形成するものである。これに対し、上金型120の突出高さが低い方の第2凸部122は、基板カバー部72を薄肉にしてその中央寄りの部分を窪ませるためものである。このように、基板カバー部72の中央寄りの部分を薄肉とすることで、比較的大きな面積を占める基板カバー部72の硬化時(冷却時)における歪み(ヒケ)の発生を防止している。
また、上金型120には、溶融樹脂MRが流れる溶融樹脂通路123が設けられている。そして、溶融樹脂通路123の入口側(図中上側)には、溶融樹脂MRを溶融樹脂通路123に供給するディスペンサ(溶融樹脂供給装置)DPが設けられている。ディスペンサDPからは、所定圧の溶融樹脂MRが、溶融樹脂通路123に向けて供給される。
次に、カバー部材70のより具体的な製造手順について、図面を用いて詳細に説明する。
[第1製造工程]
まず、図15(a)の矢印M3に示されるように、上金型120を下降させて下金型110に向けて移動させる。これにより、図15(b)に示されるように、上下金型110,120が互いに突き合わされて、これらの上下金型110,120の内部に、カバー部材70(図12参照)を形作るキャビティCAが形成される。これにより、第1製造工程が完了する。
[第2製造工程]
次に、図15(b)に示されるように、ディスペンサDPを作動させて、矢印M4に示されるように、加熱して溶融された溶融樹脂MR(白色)を、溶融樹脂通路123に所定圧で圧送する。これにより溶融樹脂通路123から吐出された溶融樹脂MRが、螺旋形状に形成された下金型110の凹部(図示せず)にぶつかって、渦を巻くようにしてキャビティCAの内部に均等に拡がるようにして流し込まれていく。
その後、継続してディスペンサDPを作動させることで、キャビティCAの内部に隙間無く溶融樹脂MRが充填されていく。このとき、溶融樹脂MRは、図13の破線矢印のようにキャビティCAの内部を流れ、幅広部71dとなる部分に到達してウェルドラインWLが形成される。これにより、キャビティCAの内部で溶融樹脂MRがカバー部材70の形状とされ、第2製造工程が完了する。
[第3製造工程]
次に、上下金型110,120を冷却装置(図示せず)で強制冷却等することで、カバー部材70を硬化させる。その後、図15(c)の矢印M5に示されるように、上金型120を上昇駆動させて下金型110から引き離す。すると、下金型110に、硬化されたカバー部材70が残る。これは、カバー部材70と複雑な形状の下金型110との接触面積の方が、カバー部材70と単純な形状の上金型120との接触面積よりも大きいためである。
次いで、矢印M6に示されるように、複数の押し出しピン113を同期駆動させて上昇させる。これにより、カバー部材70の裏側の押圧ポイントOP(図13参照)が、それぞれの押し出しピン113により押圧されて、矢印M7に示されるように、カバー部材70が下金型110から離型される。
このとき、図中最も左側にある押し出しピン113は、環状肉厚部71cの先端部分の近傍の幅広部71d(図13参照)を押圧する。そのため、基板カバー部72よりも低剛性のコネクタカバー部71(露出孔71aを有するため)が、傾斜して歪むようなことが防止される。これにより、カバー部材70の上下金型110,120からの離型が完了し、第3製造工程が完了する。
図1に示されるように、モータ装置10を形成するギヤケース31には、グロメット部材80が装着されている。以下、グロメット部材80について、図面を用いて詳細に説明する。
図16(a),(b)はグロメット部材を単体で示す斜視図を、図17はグロメット部材およびギヤケースを示す断面図をそれぞれ示している。
図1および図17に示されるように、グロメット部材80は、外部コネクタCNが接続されるコネクタ接続部61aの周囲を囲うように設けられ、コネクタ部材60(コネクタ接続部61a)の内部に雨水等の異物が到達するのを防止するシールとして機能するものである。より具体的には、図17に示されるように、グロメット部材80は、モータ装置10のギヤケース31が固定されるブラケットBRと、ギヤケース31のコネクタ収容部33dとの間に配置されている。
ここで、ブラケットBRは、車両のドア内(図示せず)に設けられ、当該ブラケットBRの図中上方側は車室内側となっている。つまり、外部コネクタCNが引き出される側であるブラケットBRの一側空間R1は、雨水等に曝されることが無い。これに対し、ブラケットBRの図中下方側は車室外に連通されている。つまり、モータ装置10が固定される側であるブラケットBRの他側空間R2は、雨水等に曝されることがある。よって、モータ装置10は、防塵性および防水性を確保する必要があり、コネクタ接続部61aの周囲を囲うようにしてグロメット部材80を設けている。
図16および図17に示されるように、グロメット部材80は、ギヤケース31に固定される固定部材81と、固定部材81に一体に設けられるグロメット本体82と、を備えている。
固定部材81は、プラスチック等の樹脂材料により形成され、略環状に形成された環状本体81aと、環状本体81aに一体に設けられた3つの固定脚81bと、を備えている。3つの固定脚81bは、グロメット部材80の軸方向(出力軸32fの軸方向)に延在され、その基端側が環状本体81aに一体化されている。そして、3つの固定脚81bには、それぞれ切り欠き穴81b1が設けられ、この切り欠き穴81b1の先端側が、側壁33bからコネクタ収容部33dの径方向外側に突出して設けられた3つの係合爪33b1に引っ掛けられるようになっている。
ここで、3つの固定脚81bは、3つの係合爪33b1と同様に、モータ装置10を組み立てた状態で、コネクタ収容部33dにおける基板収容部33c側とは反対側に配置(図24参照)され、かつ環状本体81aの周囲に略90度間隔で設けられている。
また、隣り合う固定脚81bの間には、ストッパ81cが設けられている。ストッパ81cは2つ設けられ、これらのストッパ81cにおいても、グロメット部材80の軸方向(出力軸32fの軸方向)に延在されている。そして、一対のストッパ81cは、一対のストッパ壁33b2(図9参照)に対して、グロメット部材80の軸方向から突き当てられるようになっている。
図17に示されるように、グロメット本体82は、シリコーンゴム等の弾性材料により略筒状に形成されている。これにより、グロメット本体82は固定部材81に比して十分な柔軟性を備えている。グロメット本体82の軸方向一側(図中下側)には、断面が略U字形状に形成された環状取付部82aが一体に設けられている。この環状取付部82aは、環状本体81aの径方向内側に装着され、具体的には、環状本体81aの径方内側の縁部分を包み込むようにして設けられている。なお、グロメット本体82は、当該グロメット本体82を射出成形する際に、インサート成形により環状本体81aに一体化される。
環状取付部82aの軸方向一側で、かつグロメット本体82の軸方向に沿う図中最下端には、グロメット本体82の軸方向一側に向けて突出された一対のモータ側リップシール82a1,82a2が設けられている。ここで、一方のモータ側リップシール82a1は環状取付部82aの径方向内側に配置され、他のモータ側リップシール82a2は環状取付部82aの径方向外側に配置されている。
そして、これらのモータ側リップシール82a1,82a2は、グロメット部材80をギヤケース31に装着した状態、つまり、切り欠き穴81b1の係合爪33b1への係合状態で、外部コネクタCNのコネクタ部材60への差し込み方向に弾性変形されて、ギヤケース31に装着されたカバー部材70に密着されている。より具体的には、一対のモータ側リップシール82a1,82a2は、環状本体81aとコネクタカバー部71との間に若干の弾性変形を伴いつつ挟持される。これにより、一対のモータ側リップシール82a1,82a2のシール性能が十分に発揮される。
ここで、グロメット部材80をギヤケース31に装着する際に、ストッパ81cがストッパ壁33b2に突き当てられて、グロメット部材80のギヤケース31に対する出力軸32fの軸方向に沿う移動量が規制される。したがって、一対のモータ側リップシール82a1,82a2に大きな負荷が掛かって損傷されるようなことが防止される。
また、グロメット部材80のギヤケース31に対する装着状態において、一対のモータ側リップシール82a1,82a2は弾性変形されているので、これらのモータ側リップシール82a1,82a2の弾性力により、切り欠き穴81b1の係合爪33b1に対するがたつきが抑えられている。よって、静粛性に優れたモータ装置10が実現される。
さらに、一対のモータ側リップシール82a1,82a2は、図17に示されるように、コネクタカバー部71の表側に密着されるが、コネクタカバー部71は、幅広部71d(図12参照)を設けることで歪むこと無く平滑化が図られている。そのため、十分なシール性能を発揮することができる。
また、グロメット本体82の軸方向他側(図中上側)には、当該グロメット本体82の径方向外側に突出された環状フランジ82bが一体に設けられている。環状フランジ82bは、環状の略平板状に形成され、環状フランジ82bのブラケットBR側には、一対のブラケット側リップシール82b1,82b2が設けられている。ここで、一方のブラケット側リップシール82b1は環状フランジ82bの径方向内側に配置され、他のブラケット側リップシール82b2は環状フランジ82bの径方向外側に配置されている。
そして、これらのブラケット側リップシール82b1,82b2は、モータ装置10をブラケットBRに装着した状態で、外部コネクタCNのコネクタ部材60への差し込み方向に弾性変形されて、ギヤケース31が固定されるブラケットBRに密着されている。より具体的には、一対のブラケット側リップシール82b1,82b2は、ブラケットBRに対して若干の弾性変形を伴いつつ接触される。これにより、一対のブラケット側リップシール82b1,82b2のシール性能が十分に発揮される。
ここで、グロメット本体82は、ブラケットBRと固定部材81(環状本体81a)との間において、その軸方向への変形代は約5.0mmとなっている。したがって、グロメット本体82の弾性力により、一対のブラケット側リップシール82b1,82b2が、ブラケットBRに押圧される。よって、グロメット本体82とブラケットBRとの間においても、グロメット本体82とカバー部材70(コネクタカバー部71)との間と同様に、十分なシール性能を得ることができる。
ただし、グロメット本体82の弾性力は、一対のモータ側リップシール82a1,82a2をそれ以上弾性変形させない(それ以上潰さない)程度の弾性力に設定されている。したがって、一対のモータ側リップシール82a1,82a2が潰れ過ぎたり、切り欠き穴81b1が係合爪33b1に対してがたついたりするようなことが抑えられている。
このように、一対のモータ側リップシール82a1,82a2および一対のブラケット側リップシール82b1,82b2の双方が、いずれもモータ装置10のブラケットBRの取り付け方向(出力軸32fの軸方向)に弾性変形を伴いシールされている。これにより、モータ装置10を組み立てて、かつブラケットBRに固定するだけで、いずれも十分なシール性能を発揮することができる。したがって、組み付け具合等が製品毎にばらついたとしても、製品毎にシール性能が大きくばらつくようなことが防止される。
次に、以上のように形成されたモータ装置10の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
図18はモータ部のギヤケースへの装着手順を説明する斜視図を、図19は基板側駆動用導電部材に対するブラシ側駆動用導電部材の接続手順を説明する斜視図を、図20はコネクタ部材および制御基板のギヤケースへの収容手順を説明する斜視図を、図21はギヤケースがセットされる固定治具を示す斜視図を、図22は制御基板がセットされる可動治具を示す斜視図を、図23は自動組み立て装置の動作を説明する斜視図を、図24はレーザ溶着装置の動作を説明する断面図を、図25はグロメット部材のギヤケースへの装着手順を説明する斜視図をそれぞれ示している。
[モータ部のギヤケースへの装着工程]
まず、図18に示されるように、予め別の組み立て工程で組み立てられたモータ部20を準備するとともに、予め別の製造工程で製造されたギヤケース31を準備する。そして、矢印M8に示されるように、モータ部20のウォームギヤ29側を、ギヤケース31の側方に臨ませる。そして、モータ部20をギヤケース31に向けて移動させて、ギヤケース31の側方に設けられた挿通孔(図示せず)から、ギヤケース31の内部にウォームギヤ29を挿入する。これにより、ウォームギヤ29,軸受保持筒42,端子Aおよび端子D等が、ギヤケース31の内部に入り込んでいく。
そして、モータ部20のギヤケース31への装着作業を進めていくと、図19に示されるように、ギヤケース31に導電部材ユニットUTとして埋設された一対の基板側駆動用導電部材33g,33hの先割れ形状端子33g1,33h1に、端子Aおよび端子Dがそれぞれ挟まれて電気的に接続される。これにより、モータ部20のブラシホルダ40と、ギヤケース31の導電部材ユニットUTとの接続が完了する。
その後、モータ部20をギヤケース31の側方に突き当てる。次いで、ねじ回し等の組立治具(図示せず)を用いて、3つの締結ねじS(図1参照)により、モータ部20をギヤケース31に対して固定する。これにより、モータ部20のギヤケース31への装着工程が完了する。
これに引き続き、本実施の形態では、図20の矢印M9に示されるように、ギヤケース31のギヤ収容部32の内部に、ウォームホイール32c(図1参照)等を収容して、当該ウォームホイール32cの歯部をウォームギヤ29(図1参照)に噛み合わせておく。これにより、ギヤケース31の内部に減速機構SD(図1参照)が収容されて、ギヤケース31に対する機械部品の収容が完了する。次いで、円盤カバー32eをギヤ収容部32の開口部32d(図9参照)に装着して、当該開口部32dを閉塞する。
なお、ギヤ収容部32に対するウォームホイール32c等の収容作業は、上述の[モータ部のギヤケースへの装着工程]の後であれば、任意のタイミングで行うことができる。例えば、複数あるモータ装置10の組み立て工程のうちの最後に行うこともできる。
[コネクタ部材および制御基板のギヤケースへの収容工程]
次に、図20に示されるように、予め別の製造工程で製造された制御基板50およびコネクタ部材60を準備する。そして、矢印M10に示されるように、出力軸32f(図1参照)の軸方向から、まず、コネクタ部材60をコネクタ収容部33dに収容する。これに引き続き、矢印M11に示されるように、出力軸32fの軸方向から、制御基板50を基板収容部33cに収容する。
このとき、ギヤケース31に設けられた一対の第1弾性変形端子33g2,33h2を、それぞれ制御基板50に設けられた第1駆動電流用スルーホールTH1に対向させて、真っ直ぐに差し込むようにする。また、コネクタ部材60に設けられた複数の第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aを、それぞれ制御基板50に設けられた第2駆動電流用スルーホールTH2および制御電流用スルーホールTH3に対向させて、真っ直ぐに差し込むようにする。
すると、図20の破線円で示されるように、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aが弾性変形を伴いつつ、それぞれのスルーホールTH1,TH2,TH3に差し込まれる。これにより、ブラシホルダ40(図3参照)とコネクタ部材60とが、制御基板50を介して互いに電気的に接続される。このようにして、コネクタ部材60および制御基板50のギヤケース31への収容工程が完了する。
ここで、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aのスルーホールTH1,TH2,TH3に対する差し込み作業、つまり電気的な接続作業は、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aを損傷させないように慎重に作業をする必要がある。そこで、本実施の形態では、図21ないし図23に示される自動組み立て装置200を用いて、高精度でかつ歩留まり良く組み立て可能としている。以下、自動組み立て装置200の構造について、図面を用いて詳細に説明する。
図21ないし図23に示されるように、自動組み立て装置200は、基台(図示せず)に固定された固定治具210と、当該固定治具210に対して昇降可能(近接離反可能)な可動治具220とを備えている。
固定治具210は、図21に示されるように、略正方形の板状に形成された固定本体211を備えている。この固定本体211の上面211aには、ギヤケース31が載置され、当該ギヤケース31を所定の位置で保持するギヤケース台座(ハウジング保持部)211bが設けられている。なお、上面211aは、可動治具220側に向けられており、ギヤケース台座211bは、上面211aから可動治具220に向けて所定高さで突出されている。
また、上面211aにおけるギヤケース台座211bの近傍には、出力軸保護凹部211cが設けられている。当該出力軸保護凹部211cは、上面211aから所定深さで窪んで設けられている。そして、出力軸保護凹部211cには、ギヤケース台座211bにギヤケース31をセットした状態で、出力軸32f(図1参照)が収容される。
さらに、上面211aにおける出力軸保護凹部211cの周囲には、合計3つの凸部211dが設けられている。これらの凸部211dは、ギヤケース台座211bよりも突出高さが高くなっており、上面211aから可動治具220に向けて突出されている。そして、3つの凸部211dは、ギヤケース台座211bにギヤケース31をセットした状態で、ギヤケース31の取り付け筒32g(図1(b)参照)に差し込まれる。
また、上面211aにおけるギヤケース台座211bの近傍には、モータ部20を支持する一対のモータ支持部211eが設けられている。これらのモータ支持部211eは、例えば、弾性を有するゴム材料等よりなり、ギヤケース台座211bにギヤケース31をセットした状態で、モータ部20の平面壁21a(図2参照)を支持する。つまり、一対のモータ支持部211eは、モータ部20に対してクッション材として機能する。
このように、固定治具210は、上述の[モータ部のギヤケースへの装着工程]を終えてサブアッシー化されたモータ装置10を、がたつくことなくかつ平行に支持するようになっている。
可動治具220は、図22に示されるように、略正方形の板状に形成された可動本体221を備え、当該可動本体221の下面221aには、制御基板50(図10参照)を吸着保持する基板保持部221bが設けられている。なお、下面221aは、固定治具210側に向けられており、基板保持部221bは、下面221aから固定治具210に向けて所定高さで突出されている。
また、基板保持部221bには、制御基板50を吸着する負圧源(図示せず)が接続された複数の負圧通路221cが設けられている。さらに、基板保持部221bには、一対の短尺位置決めピン(基板ピン)221dが設けられ、これらの短尺位置決めピン221dは、固定治具210に向けて突出されている。そして、一対の短尺位置決めピン221dは、制御基板50の位置決め穴53a,54a(図10参照)にそれぞれ差し込まれ、これにより可動治具220は、制御基板50を所定の位置で精度良く保持する。なお、一対の短尺位置決めピン221dの下面221aからの突出高さは、可動本体221の板厚寸法に略等しいh1となっている。
さらに、下面221aにおける基板保持部221bの近傍には、一対の長尺位置決めピン(コネクタピン)221eが設けられている。これらの長尺位置決めピン221eは、固定治具210に向けて突出されている。そして、一対の長尺位置決めピン221eは、固定治具210に対して可動治具220を下降させた際に、コネクタ部材60の一対の位置決め穴61b(図11参照)に差し込まれる。これにより、ギヤケース31のコネクタ収容部33d(図9参照)に対して、コネクタ部材60をがたつくこと無く所定の位置に精度良く位置決めできる。なお、一対の長尺位置決めピン221eの下面221aからの突出高さは、可動本体221の板厚寸法よりも大きく、短尺位置決めピン221dの突出高さh1よりも大きい突出高さのh2となっている(h2>h1)。
そして、上述の[コネクタ部材および制御基板のギヤケースへの収容工程]を行うには、まず、図23の矢印M12に示されるように、上述の[モータ部のギヤケースへの装着工程]を終えてサブアッシー化されたモータ装置10を、固定治具210の上面211aにセットする。このとき、ギヤケース31をギヤケース台座211bに載せ、3つの取り付け筒32g(図1(b)参照)に3つの凸部211d(図21参照)をそれぞれ差し込み、一対のモータ支持部211eにモータ部20の平面壁21a(図2参照)を載せる。
これに引き続き、矢印M13に示されるように、ギヤケース31のコネクタ収容部33dにコネクタ部材60を収容する。ここで、コネクタ収容部33dにコネクタ部材60を収容したのみの状態(図23の状態)では、コネクタ部材60はコネクタ収容部33dに対して、若干ではあるが、がたついた状態となっている。すなわち、コネクタ部材60は、コネクタ収容部33dに仮に収容された状態となっている。
次に、矢印M14に示されるように、自動組み立て装置200の負圧源(図示せず)を駆動して、制御基板50を可動治具220の基板保持部221bに吸着(保持)させる。その後、矢印M15に示されるように、可動治具220を固定治具210に近接するように下降させる。
すると、可動治具220が第1の移動距離(短距離)を移動したところで、一対の長尺位置決めピン221eが、コネクタ部材60の一対の位置決め穴61bに差し込まれる。これにより、コネクタ部材60がコネクタ収容部33dに対して正規の位置に精度良く位置決めされ、コネクタ部材60のコネクタ収容部33dに対する位置決め工程(第1工程)が完了する。
次いで、可動治具220を第1の移動距離よりも長い第2の移動距離(長距離)を移動させて、当該可動治具220をさらに固定治具210に近接させる。これにより、固定治具210に対して精度良く位置決めされたそれぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64a(図8参照)の真上に、制御基板50のスルーホールTH1,TH2,TH3(図10参照)が配置される。
その後、可動治具220を固定治具210にさらに近接させることで、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aが弾性変形されつつ、スルーホールTH1,TH2,TH3に差し込まれる。このとき、可動治具220の一対の短尺位置決めピン221dが、基板収容部33cの一対のピン受け穴33kにそれぞれ差し込まれる。
したがって、制御基板50は、基板収容部33cに対して、正規の位置に精度良く位置決めされるとともに、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aが損傷すること無く、制御基板50のスルーホールTH1,TH2,TH3に電気的に接続される。これにより、制御基板50の基板収容部33cに対する位置決め工程(第2工程)が完了する。
このようにして、上述の[コネクタ部材および制御基板のギヤケースへの収容工程]が、自動組み立て装置200により精度良く行われる。
[カバー部材のギヤケースへの装着工程]
次に、図24の矢印M16に示されるように、カバー部材70をギヤケース31における電気部品収容部33の開口部33eに仮装着する。このとき、図14に示されるように、カバー部材70の幅広部71dの内側を、コネクタ接続部61aの短辺部61a1に当接させるようにし、かつカバー部材70の装着凸部72a(図12(b)参照)を、基板収容部33cの側壁33bに嵌め込むようにする。
その後、図25に示されるように、レーザ溶着作業を行う。具体的には、カバー部材70は、レーザ溶着装置300を用いることで、ギヤケース31に溶着される。
レーザ溶着装置300は、略平板状に形成された押圧部材301を備えている。この押圧部材301は、カバー部材70を押圧力fで押圧するためのもので、ギヤケース31にセットされたカバー部材70に対して昇降自在となっている。そして、押圧部材301は、透過率が99%等の透明材料で、かつある程度の強度を備えた、例えばアクリルガラスによって形成されている。これにより押圧部材301は、レーザ光線LSを透過しつつ、カバー部材70を押圧することができる。
さらに、レーザ溶着装置300は、レーザ光線LSを照射するレーザ光源302を備えている。レーザ光源302は、押圧部材301の上方に支柱(図示せず)を介して固定され、レーザ光源302の内部には、レーザ光線LSの照射位置を移動させる可動ミラー(図示せず)が内蔵されている。すなわち、レーザ溶着装置300は、所謂ガルバノスキャニング方式のレーザ溶着装置となっている。そして、可動ミラーを制御することにより、レーザ光線LSの照射位置を、矢印M17に示されるように、押圧部材301の上方で移動させる。具体的には、レーザ光線LSの照射位置は、カバー部材70の周囲に設けられた第1固定部71bおよび第2固定部72b(図13参照)の上方をトレースするように移動される。
そして、カバー部材70をギヤケース31に溶着するには、図25に示されるように、レーザ光源302を駆動させる。すると、レーザ光線LSは、透明な押圧部材301を通過して、カバー部材70の周囲の第1固定部71bおよび第2固定部72bに照射される。その後、第1固定部71bおよび第2固定部72bに照射されたレーザ光線LSは、白色(淡色)カバー部材70を通過して、黒色(濃色)のケース側溶着部33fに到達する。
すると、ケース側溶着部33fが高温となって溶融される。よって、ケース側溶着部33fの高温が第1固定部71bおよび第2固定部72bに伝播して、第1固定部71bおよび第2固定部72bの一部も溶融される。これにより、カバー部材70とギヤケース31との接触部分が、図25の破線円に示されるように溶着部WPとなり、互いに組織的に一体化(固着)される。これにより、カバー部材70のギヤケース31への装着工程が完了する。
なお、本実施の形態では、ガルバノスキャニング方式のレーザ溶着装置を採用するため、可動部が可動ミラーのみであって、可動部の慣性質量が小さくて済む。したがって、レーザ光線LSの照射位置を高速かつ高精度で制御できる。したがって、溶着部分の長さが長い場合であっても、短時間で精度良く溶着することができる。特に、本実施の形態のように、レーザ光線LSの照射位置が周状であるような場合において、最初にレーザ光線LSが照射された溶着部が硬化する前に、溶着作業を終わらせることができる。よって、溶着部の硬化時における歪みの発生を効果的に抑えることができる。
[グロメット部材のギヤケースへの装着工程]
次に、図24の矢印M18に示されるように、カバー部材70が装着されたギヤケース31に、グロメット部材80を装着する。具体的には、グロメット部材80の3つの固定脚81b側を、ギヤケース31のコネクタ収容部33dの部分に臨ませる。このとき、3つの固定脚81bと、コネクタ収容部33dの周囲に配置された3つの係合爪33b1とを、それぞれ整合させるようにする。その後、さらにグロメット部材80をギヤケース31に向けて移動させ、3つの固定脚81bの切り欠き穴81b1を、3つの係合爪33b1にそれぞれ引っ掛ける。
なお、切り欠き穴81b1を係合爪33b1に引っ掛けるには、グロメット部材80の一対のストッパ81cを、コネクタ収容部33dの周囲に配置された一対のストッパ壁33b2に突き当てるようにする。これにより、グロメット部材80のギヤケース31への装着工程が完了し、モータ装置10の組み立て作業が終了する。
以上詳述したように、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、ギヤケース31に設けられるコネクタ収容部33dおよび基板収容部33cが、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向(出力軸32fの軸方向)に開口されている。これにより、モータ装置10の組み立て時には、コネクタ部材60および制御基板50を、比較的大きな開口部分(開口部33e)を有するコネクタ収容部33dおよび基板収容部33cに対して、それぞれ同じ方向から収容することができる。したがって、モータ装置10の組み立て状態を外部から目視することができ、容易かつ確実に組み立てることが可能となる。
また、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、ギヤケース31には第1,第2基板側駆動用導電部材33g,33hが設けられ、かつコネクタ部材60には第1,第2電源側駆動用導電部材62,63および制御用導電部材64が設けられ、第1,第2基板側駆動用導電部材33g,33hの制御基板50が接続される第1弾性変形端子33g2,33h2と、第1,第2電源側駆動用導電部材62,63および制御用導電部材64の制御基板50が接続される第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aとが、アーマチュア軸25の軸方向と交差する方向に延在されている。
これにより、制御基板50を基板収容部33cに収容するだけで、第1弾性変形端子33g2,33h2と、第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aとを、制御基板50を介して互いに容易に電気的に接続することができる。
さらに、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、第1弾性変形端子33g2,33h2および第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aが、制御基板50のそれぞれのスルーホールTH1,TH2,TH3に弾性変形を伴って差し込まれている。
これにより、半田付け等の接続作業を不要としつつ、両者を確実に電気的に接続することができる。よって、組み立て工数を削減しつつ、コスト低減を実現できる。
また、本実施の形態に係るモータ装置10の製造方法によれば、コネクタ収容部33dに対してコネクタ部材60を位置決めする位置決め工程(第1工程)と、第1弾性変形端子33g2,33h2および第2,第3弾性変形端子62a,63a,64aを弾性変形させつつ制御基板50のそれぞれのスルーホールTH1,TH2,TH3に差し込み、基板収容部33cに対して制御基板50を位置決めする位置決め工程(第2工程)と、を備えている。
これにより、モータ装置10を精度良く確実に組み立てることができる。
さらに、本実施の形態に係るモータ装置10の製造方法によれば、固定治具210および可動治具220を有する自動組み立て装置200が用いられ、固定治具210には、ギヤケース31を所定の位置で保持するギヤケース台座211bが設けられ、可動治具220には、コネクタ収容部33dに対してコネクタ部材60を所定の位置に位置決めする長尺位置決めピン221eと、制御基板50を所定の位置で保持し、長尺位置決めピン221eよりも短い短尺位置決めピン221dとが設けられ、可動治具220を短距離だけ移動させて、長尺位置決めピン221eを位置決め穴61bに差し込み、可動治具220をさらに移動させて、短尺位置決めピン221dをピン受け穴33kに差し込む。
これにより、可動治具220を固定治具210に近接移動させて、長尺位置決めピン221eを位置決め穴61bに差し込み、短尺位置決めピン221dをピン受け穴33kに差し込むだけで、それぞれの弾性変形端子33g2,33h2,62a,63a,64aが弾性変形されつつ、スルーホールTH1,TH2,TH3に差し込まれる。よって、モータ装置10をより精度良く、かつ自動で確実に組み立てることができる。
また、本実施の形態に係るモータ装置10の製造方法によれば、第1,第2基板側駆動用導電部材33g,33hは、ギヤケース31にインサート成形により埋設され、第1,第2電源側駆動用導電部材62,63および制御用導電部材64は、コネクタ部材60にインサート成形により埋設されている。
したがって、ギヤケース31に対する第1,第2基板側駆動用導電部材33g,33hの位置精度、およびコネクタ部材60に対する第1,第2電源側駆動用導電部材62,63および制御用導電部材64の位置精度を、それぞれ向上させることができる。よって、制御基板50の電気的な接続作業を精度良く確実に行うことができ、歩留まりを良くできる。
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、モータ装置10を、車両に搭載されたパワーウィンド装置の駆動源に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置等の他の駆動源にも用いることができる。
また、上記実施の形態では、モータ部20に、ブラシ付の電動モータを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、ブラシレスの電動モータ等を、モータ部に採用することもできる。
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。