<前提技術>
図7はこの発明の前提技術となる、ピットカバーシステムおよびシャシーダイナモメータ装置を含むシステムの全体構成を示す断面図である。この構成と類似の構成が例えば特許文献1に開示されている。
図7に示すように、床面30の下に、空洞部であるピット20が設けられている。そして、当該ピット20内には、シャシーダイナモメータ装置10A,10Bが配設されている。
図7に示すように、ピット20の底面部には、複数のレール4(図7では1つのレール4のみ図示)が図7の左右方向に延設されており、一方のシャシーダイナモメータ装置10Aは、当該レール4上を移動することができる。つまり、シャシーダイナモメータ装置10Aは、モータ等の動力源によって、レール4上に沿って図7の左右方向を移動方向M10として移動可能である。これに対して、他方のシャシーダイナモメータ装置10Bは、ピット20内の底面に固定されている。
なお、シャシーダイナモメータ装置10A,10Bの上面と床面30とは面一となっており、シャシーダイナモメータ装置10A,10Bの上面部からはローラ1が露出している。ここで、当該露出している各ローラ1上に、試験対象の自動車のタイヤが載置される。
また、図7に示すように、複数のピットカバー片2が配設されている。図7に示す構成例では、ピット20の上面部(床面30)位置からピット20内部方向に沿って、垂直方向(図7の上下方向)に、複数のピットカバー片2が配置されていると共に、当該垂直方向に対して直角な方向である水平方向(図7の左右方向)に、複数のピットカバー片2が配設されている。
図7の構成例において、当該水平方向に配設されているピットカバー片2が存在しない領域は、ピット20の上面部は開口されている開口部が配設されることになる。したがって、当該開口部を塞ぐために、水平方向に複数のピットカバー片2を配設する必要がある。ここで、水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の上面と床面30とは面一となっている。よって、水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の上面とシャシーダイナモメータ装置10A,10Bの上面と床面30とは、面一となっている。
図7において、垂直方向に配設されているピットカバー片2は、当該垂直方向に移動可能であり、水平方向に配設されているピットカバー片2は、図7の左右方向に移動可能である。
上記の通り、シャシーダイナモメータ装置10Bは固定されているが、シャシーダイナモメータ装置10Aは、図7の左右方向に移動可能である。たとえば、試験対象である自動車のサイズにより、タイヤの位置(つまり、前タイヤと後タイヤとの間隔)が異なる。そこで、試験対象の自動車のサイズが異なる場合には、シャシーダイナモメータ装置10Bを固定しつつ、シャシーダイナモメータ装置10Aを図7の左右方向に移動させる。
このような構成において、水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の数を増やしたり、減らしたりすることにより、シャシーダイナモメータ装置10Aの移動方向M10に沿った移動により生じした開口部を塞ぐことができる。
例えば、シャシーダイナモメータ装置10Aが図中の右側に移動する場合、その移動量に合わせて、シャシーダイナモメータ装置10Aの右側に水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の数を減らし、シャシーダイナモメータ装置10Aの左側に水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の数を増やすことにより、シャシーダイナモメータ装置10Aのローラ1にピットカバー片2が接触することなく、シャシーダイナモメータ装置10Aの移動後の開口部を塞ぐことができる。
この際、シャシーダイナモメータ装置10Aの右側に水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の数が減少した分、シャシーダイナモメータ装置10Aの右側に垂直方向に配設されている複数のピットカバー片2の数を増加することになる。
同様にして、シャシーダイナモメータ装置10Aの左側に水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の数が増加した分、シャシーダイナモメータ装置10Aの左側に垂直方向に配設されている複数のピットカバー片2の数が減少することになる。
このように水平方向に配設されている複数のピットカバー片2の増減を、垂直方向に配設されている複数のピットカバー片2の増減により吸収することができる。
一方、シャシーダイナモメータ装置10Bは固定されているため、水平方向に配設されている複数のピットカバー片12は常に固定されている。
なお、図7で示した構造は模式的に示した構造であり、複数のピットカバー片2及び複数のピットカバー片12の実際の形状を反映したものではない。
図8は図7で示した複数のピットカバー片12の断面構造を示す断面図である。同図に示すように、各ピットカバー片12はカバー枠体部51より構成されており、カバー枠体部51は下方を開口させた断面視コの字状を呈している。このようなピットカバー片12を水平方向に沿って複数固定配置することによりピットカバー部17が構成される。このピットカバー部17が床面30を構成する。
図9は図7で示した複数のピットカバー片2の断面構造を示す断面図である。同図にXY直交座標系を記している。図9で示したキャタピラ部18は、図7で示したシャシーダイナモメータ装置10Aの図中右側に存在し、水平方向及び垂直方向に配設された複数のピットカバー片2に相当する。
同図に示すように、図7で示したピットカバー片2に対応するキャタピラ単体8はカバー枠体部53より構成されており、カバー枠体部53は下方を開口させた断面視コの字状を呈している。
なお、カバー枠体部53はピットカバー片12のカバー枠体部51と比較して小さいサイズで設けられる。
このようなキャタピラ単体8が複数個連続的に結合されることによりキャタピラ部18が構成される。複数のキャタピラ単体8を移動方向M8に沿って全体的に移動させ、床面30に沿って水平方向に配設されるキャタピラ単体8の個数の増減を図ることにより、シャシーダイナモメータ装置10Aの移動によって生じた開口部を塞ぐことができる。
例えば、図9で示す状態から、左側に位置する図示しないシャシーダイナモメータ装置10Aがさらに左方に移動距離D1で移動した場合、所定の動力源によってキャタピラ部18を移動方向M8に沿って移動距離D1に相当する分移動させる。その結果、床面30に沿って水平方向に配設されるキャタピラ単体8の個数が移動距離D1に相当する分増加し、シャシーダイナモメータ装置10Aの移動によって生じた開口部を的確に塞ぐことができる。
なお、床面30に沿って水平方向に配設されていないキャタピラ単体8は、床面30の内部に略垂直方向に沿って収納されることになる。
このように、従来のピットカバーシステムは、開口部を塞ぐという本来の機能を有している反面、床面30の温度調整は全く行っていなかった。
<実施の形態1>
図1はこの発明の実施の形態1であるピットカバーシステムにおける、固定されたピットカバー部15の断面構造を示す断面図である。
同図に示すように、各ピットカバー片5はカバー枠体部51より構成されており、カバー枠体部51は下方を開口させた断面視コの字状を呈している。
さらに、ピットカバー片5は、熱交換用液体35を流すことができる流路構造が内部に設けられたカバー流路部52を、カバー枠体部51の下方においてカバー枠体部51の上面に連結して設けている。
熱交換用液体35の代表例として冷却用液体が考えられる。冷却用液体は、冷凍機の冷媒の冷凍能力を冷却される品物 (被冷凍物) に伝える役割をする熱媒体であり、「ブライン」と呼ばれる。また、熱交換用液体35として加熱用液体を用いることも考えられる。加熱用液体は、加熱機の加熱能力で温められた加熱能力を品物 (被加熱物) に伝える役割をする熱媒体である。以下では、説明の都合上、熱交換用液体35として冷却用液体を用いる場合を代表して説明する。
このように、各ピットカバー片5はカバー枠体部51及びカバー流路部52を主要構成部として含んでいる。このようなピットカバー片5を水平方向に沿って複数個、固定配置することにより位置が固定されたピットカバー部15が構成される。
ピットカバー片5が図7で示したピットカバー片12に相当し、複数のピットカバー片5におけるカバー枠体部51の上面が図7で示した床面30を構成する。
図2は実施の形態1のピットカバーシステムにおける、移動可能なキャタピラ部16の断面構造を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、キャタピラ部16は複数のキャタピラ単体6と所定数のホース40とを主要構成部として含んでいる。
各キャタピラ単体6は液体流路本体部61、液体中継部62及びホース接続部63を主要構成部として含んでいる。
液体流路本体部61は断面構造が略矩形状の角筒形状を呈しており、角筒内に形成された空洞部に熱交換用液体35を流す流路構造が設けられる。すなわち、液体流路本体部61の給水口に熱交換用液体35を受け、熱交換用液体35が上記流路構造内を流れ、液体流路本体部61の排水口から熱交換用液体35を排出している。なお、液体流路本体部61は図1で示したピットカバー片5のカバー枠体部51と比較して小さいサイズで設けられる。
液体中継部62は液体流路本体部61とホース接続部63との間の熱交換用液体35の中継を行う部位であり、液体流路本体部61の給水口あるいは排水口に繋がるように設けられる。
ホース接続部63は液体中継部62に連通しており、液体中継部62を介して液体流路本体部61の給水口から熱交換用液体35を供給する給水機能、液体流路本体部61内の熱交換用液体35を液体中継部62を介して外部に排出する排水機能を実現するための補助給水部あるいは補助排水部として用いられる。
さらに、複数のキャタピラ単体6間のうち、隣接する一対のキャタピラ単体6のホース接続部63,63間を給水用あるいは排水用のホース40で接続することにより、複数のキャタピラ単体6間で熱交換用液体35の中継が行える中継経路R1が設けられる。
なお、後に詳述するが、液体中継部62として、一つの液体流路本体部61に対し給水用液体中継部62Wと排水用液体中継部62Dとが設けられる。同様に、ホース接続部63として、一つの液体流路本体部61に対し給水用ホース接続部63Wと排水用ホース接続部63Dとが設けられる。さらに、後に詳述するように、中継経路R1として、給水経路として機能する中継給水経路と、排水経路として機能する中継排水経路とが設けられる。
このように、複数のキャタピラ単体6と、複数のキャタピラ単体6間を接続する所定数のホース40とを主要構成としてキャタピラ部16が構成される。
キャタピラ部16は、所定の動力源により、ピットの上面部に配設された開口部を塞ぐように移動方向M6(所定方向)に沿って移動可能に設けられる。なお、キャタピラ部16をシャシーダイナモメータ装置10Aに連結して設けることにより、シャシーダイナモメータ装置10Aの移動用動力源を所定の動力源として利用することもできる。
なお、移動内容は図9で示した前提技術と基本的に同じであるため、説明を省略する。また、図9で示した複数のキャタピラ単体8と同様に、複数のキャタピラ単体6の少なくとも一部における液体流路本体部61の上面が床面30を構成するように配置される。
実施の形態1のピットカバーシステムは、上述したキャタピラ部16と、キャタピラ部16に熱交換用液体35を供給する給水機構と、キャタピラ部16から排出される熱交換用液体35を受ける排水機構とを主要構成部として含んで構成される。
このような構成の実施の形態1のピットカバーシステムにおいて、中継経路R1が中継給水経路として機能する場合、図示しない熱交換用液体35の給水機構から中継経路R1に熱交換用液体35を供給することにより、中継経路R1に熱交換用液体35を流しながら、中継経路R1を介して、キャタピラ部16の複数のキャタピラ単体6それぞれの液体流路本体部61内の流路構造に熱交換用液体35を供給する給水動作が行える。
さらに、実施の形態1のピットカバーシステムにおいて、中継経路R1が中継排水経路として機能する場合、キャタピラ部16の複数のキャタピラ単体6それぞれから排出される熱交換用液体35を中継経路R1を介して外部の図示しない排水機構に排出することにより、熱交換用液体35の外部の排水機構への排水動作が行える。
実施の形態1のピットカバーシステムにおいて、キャタピラ部16における複数のキャタピラ単体6の少なくとも一部が床面30を構成し、それぞれ液体流路本体部61の給水口から冷却用液体である熱交換用液体35を受け、液体流路本体部61の排水口から熱交換用液体35を排出する流路構造を有している。
このため、複数のキャタピラ単体6それぞれの液体流路本体部61の流路構造に熱交換用液体35を流すことにより、所望の温度に複数のキャタピラ単体6を冷却して温度調整することができる。
同様に、複数のピットカバー片5それぞれのカバー流路部52の流路構造に熱交換用液体35を流すことにより、所望の温度に複数のピットカバー片5を冷却して温度調整するすることができる。
なお、液体流路本体部61の流路構造への熱交換用液体35を流す第1の流路制御と、カバー流路部52の流路構造への熱交換用液体35を流す第2の流路制御とをそれぞれ適切に行うことにより、固定されたピットカバー部15と移動するキャタピラ部16との温度が同一の所望の温度になるように設定することができる。
その結果、実施の形態1のピットカバーシステムは、キャタピラ部16によって開口部を塞ぐという本来の機能を有し、かつ、複数のキャタピラ単体6の少なくとも一部によって構成される床面30の温度調整を迅速かつ精度良くに行うことができる効果を奏する。
(変形例)
図3は実施の形態1の変形例であるピットカバーシステムの一部を示す説明図である。同図に示すように、実施の形態1の変形例では、各々が、複数のキャタピラ単体6のうち、互いに隣接する一対のキャタピラ単体6,6の間(の上面)を跨るように設けられる所定数の渡り板66をさらに備えるという特徴を有している。
所定数の渡り板66はそれぞれ、隣接する一対のキャタピラ単体6,6のうち、一方にのみ固定され、他方とは開放される。
例えば、所定数の渡り板66は左方のキャタピラ単体6の液体流路本体部61の上面に固定し、右方のキャタピラ単体6の液体流路本体部61の上面には固定しない態様が考えられる。この態様について詳述する。図3の最も左側に位置するキャタピラ単体6と左から2番目に位置するキャタピラ単体6との間に、それぞれの液体流路本体部61の上面を跨がって渡り板66が設けられている。この渡り板66は最左に位置するキャタピラ単体6の液体流路本体部61の上面にのみ固定され、左から2番目に位置するキャタピラ単体6の液体流路本体部61の上面とは固定されることなく開放されている。すなわち、渡り板66は左から2番目に位置するキャタピラ単体6の液体流路本体部61の上面上に固定されることなく配置されている。
このため、図3において、最右に位置するキャタピラ単体6のように湾曲する移動経路が存在する場合でも、隣接する一対のキャタピラ単体6,6間の上面を跨がって渡り板66を支障無く配置することができる。
実施の形態1の変形例のピットカバーシステムは、渡り板66の存在により、上方から異物が落下し、互いに隣接する一対のキャタピラ単体6,6間に異物が挟まったり、一対のキャタピラ単体6,6間を異物が通過したりした場合に、下方に存在するホース40等の配管が破損するような事象を確実に回避することができる効果を奏する。
<実施の形態2>
図4は実施の形態2のピットカバーシステムにおけるキャタピラ部16Bの構成(給水機能構成)を模式的に示す説明図である。なお、実施の形態2のピットカバーシステムにおいても、固定されたピットカバー部は、図1で示したピットカバー部15と同様な構造を呈している。
同図に示すように、複数のキャタピラ単体6と、複数のキャタピラ単体6間を接続する所定数の給水側ホース40Wとを主要構成としてキャタピラ部16Bの給水機能が構成される。
各キャタピラ単体6は給水機能を実現する構成として、液体流路本体部61、給水用液体中継部62W及び給水用ホース接続部63Wを主要構成部として含んでいる。
液体流路本体部61は断面構造が略矩形状の角筒形状を呈しており、角筒内に形成された空洞部に熱交換用液体35を流す流路構造が設けられる。すなわち、液体流路本体部61の給水口21(後に示す図6(c)参照)に熱交換用液体35を受け、熱交換用液体35が上記流路構造内を流れ、液体流路本体部61の排水口22(後に示す図6(b)及び図6(c)参照)から熱交換用液体35を排出している。
給水用液体中継部62Wは液体流路本体部61と給水用ホース接続部63Wとの間の熱交換用液体35の中継を行う部位であり、液体流路本体部61の給水口21に繋がるように設けられる。
給水用ホース接続部63Wは給水用液体中継部62Wに連通しており、給水用液体中継部62Wを介して液体流路本体部61の給水口21から熱交換用液体35を供給する給水動作を補助する給水補助部として機能する。
さらに、複数のキャタピラ単体6に対し、熱交換用液体35の中継用に各々が給水側ホース40Wを介して異なるキャタピラ単体6に接続される3つの中継給水経路R11〜R13(第1〜第nの中継給水経路からなるn個の中継給水経路,n=3)が設けられる。
中継給水経路R11〜R13はそれぞれ移動方向M6(所定方向)に沿って3個置きにキャタピラ単体6,6間を接続するように給水側ホース40Wを設けることにより、複数のキャタピラ単体6に給水用の熱交換用液体35を中継する中継機能を有している。
以下、図4の()内に示すように、複数のキャタピラ単体6をキャタピラ単体6(1)〜6(9)と識別可能に分類して、中継給水経路R11〜R13について詳述する。
まず、熱交換用液体35の図示しない給水源に給水側集約部31が接続される。給水源と給水側集約部31とにより給水機構が構成される。
そして、給水側集約部31からキャタピラ単体6(1)、6(4)及び6(7)の順で3個置きに接続されるように給水側ホース40Wが設けられる。したがって、給水側集約部31から給水側ホース40Wを介して形成されるキャタピラ単体6(1)、6(4)及び6(7)の経路が中継給水経路R11となる。
さらに、給水側集約部31からキャタピラ単体6(2)、6(5)及び6(8)の順で3個置きに接続されるように給水側ホース40Wが設けられる。したがって、給水側集約部31から給水側ホース40Wを介して形成されるキャタピラ単体6(2)、6(5)及び6(8)の経路が中継給水経路R12となる。
加えて、給水側集約部31からキャタピラ単体6(3)、6(6)及び6(9)の順で3個置きに接続されるように給水側ホース40Wが設けられる。したがって、給水側集約部31から給水側ホース40Wを介して形成されるキャタピラ単体6(3)、6(6)及び6(9)の経路が中継給水経路R13となる。
このように、複数のキャタピラ単体6と、複数のキャタピラ単体6間を3個置きに接続する複数の給水側ホース40Wとを主要構成部としてキャタピラ部16Bの給水機能が構成される。
なお、実用上、給水側集約部31はシャシーダイナモメータ装置10Aの近傍に固定して設けられる可能性が高い。したがって、給水側集約部31,キャタピラ単体6(1)間、給水側集約部31,キャタピラ単体6(2)間、及び給水側集約部31,キャタピラ単体6(3)間を接続する給水側ホース40Wはキャタピラ部16Bの移動量を考慮して比較的長い形成長で設けられる。
キャタピラ部16Bは、キャタピラ部16と同様、所定の動力源により、ピットの上面部に配設された開口部を塞ぐように移動方向M6に沿って移動可能である。
図5は実施の形態2のピットカバーシステムにおけるキャタピラ部16Bの構成(排水機能構成)を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、複数のキャタピラ単体6と、複数のキャタピラ単体6間を接続する所定数の排水側ホース40Dとを主要構成としてキャタピラ部16Bの排水機能が構成される。
各キャタピラ単体6は排水機能を実現する構成として、液体流路本体部61、排水用液体中継部62D及び排水用ホース接続部63Dを主要構成部として含んでいる。
排水用液体中継部62Dは液体流路本体部61と排水用ホース接続部63Dとの間の熱交換用液体35の中継を行う部位であり、液体流路本体部61の排水口22に繋がるように設けられる。
排水用ホース接続部63Dは排水用液体中継部62Dに連通しており、液体流路本体部61の排水口22から排出される熱交換用液体35を排水用液体中継部62Dを介して受け、接続される排水側ホース40Dに熱交換用液体35を排出する排水動作を補助する補助排水部として機能する。
さらに、複数のキャタピラ単体6に対し、熱交換用液体35の中継用に各々が排水側ホース40Dを介して異なるキャタピラ単体6に接続される3つの中継排水経路R21〜R23(第1〜第nの中継排水経路からなるn個の中継排水経路,n=3)が設けられる。
中継排水経路R21〜R23はそれぞれ移動方向M6(所定方向)に沿って3個置きにキャタピラ単体6,6間を接続するように排水側ホース40Dを設けることにより、複数のキャタピラ単体6に排水用の熱交換用液体35を中継する中継機能を有している。
以下、図5の()内に示すように、複数のキャタピラ単体6をキャタピラ単体6(1)〜6(9)と識別可能に分類して、中継排水経路R21〜R23について詳述する。
まず、熱交換用液体35の図示しない排水処理部に排水側集約部32が接続される。排水処理部と排水側集約部32とにより排水機構が構成される。
そして、排水側集約部32からキャタピラ単体6(7)、6(4)及び6(1)の順で3個置きに接続されるように排水側ホース40Dが設けられる。したがって、排水側集約部32から排水側ホース40Dを介して形成されるキャタピラ単体6(7)、6(4)及び6(1)の経路が中継排水経路R21となる。
さらに、排水側集約部32からキャタピラ単体6(8)、6(5)及び6(2)の順で3個置きに接続されるように排水側ホース40Dが設けられる。したがって、排水側集約部32から排水側ホース40Dを介して形成されるキャタピラ単体6(8)、6(5)及び6(2)の経路が中継排水経路R22となる。
加えて、排水側集約部32からキャタピラ単体6(9)、6(6)及び6(3)の順で3個置きに接続されるように排水側ホース40Dが設けられる。したがって、排水側集約部32から排水側ホース40Dを介して形成されるキャタピラ単体6(9)、6(6)及び6(3)の経路が中継排水経路R23となる。
このように、複数のキャタピラ単体6と、複数のキャタピラ単体6間を接続する複数の排水側ホース40Dとを主要構成としてキャタピラ部16Bの排水機能が構成される。
なお、実用上、排水側集約部32はシャシーダイナモメータ装置10Aの近傍に固定して設けられる可能性が高い。したがって、排水側集約部32,キャタピラ単体6(9)間、排水側集約部32,キャタピラ単体6(8)間、及び排水側集約部32,キャタピラ単体6(7)間を接続する排水側ホース40Dはキャタピラ部16Bの移動量を考慮して比較的長い形成長で設ける必要がある。
図4及び図5を参照して説明したように、キャタピラ部16Bは給水側集約部31を介した給水機能及び排水側集約部32を介した排水機能を有している。
すなわち、実施の形態2のピットカバーシステムにおいて、3つの中継給水経路R11〜R13は最終的に対応するキャタピラ単体6の給水口21に接続されることにより給水機能を実現し、3つの中継排水経路R21〜R23は最終的に対応するキャタピラ単体6の排水口22に接続されることにより排水機能を実現している。
このキャタピラ部16Bは、実施の形態1のキャタピラ部16と同様、所定の動力源により、複数のキャタピラ単体6のうち少なくとも一部によってピットの上面部に配設された開口部を塞ぐように、移動方向M6に沿って移動可能である。
上述したように、実施の形態2のピットカバーシステムにおいて、3つの中継給水経路R11〜R13はそれぞれ移動方向M6に沿って3個置きに、対応するキャタピラ単体6の給水口21に接続され、かつ、3つの中継排水経路R21〜R23はそれぞれ移動方向M6に沿って3個置きに、対応するキャタピラ単体6の排水口22に接続される。
このため、3つの中継給水経路R11〜R13を実現すべく、互いに3個置きの間隔で近接する一対のキャタピラ単体6,6間を配管である給水側ホース40Wを用いて接続する際における最小給水配管長を、隣接するキャタピラ単体6,6間の距離であるキャタピラピッチCP(図4参照)の3倍の長さ以上で確保することができる。
同様に、3つの中継排水経路R21〜R23を実現すべく、互いに3個置きの間隔で近接する一対のキャタピラ単体6,6間を排水側ホース40Dを用いて接続する際における最小排水配管長を、キャタピラピッチCPの3倍の長さ以上で確保することができる。
その結果、実施の形態2のピットカバーシステムにおいて、3つの中継給水経路R11〜R13あるいは3つの中継排水経路R21〜R23に用いられる給水側ホース40Wあるいは排水側ホース40Dは、複数のキャタピラ単体6の移動方向M6に移動時に湾曲する経路が存在する場合でも、許容曲げ半径より短くなる許容曲げ半径超過現象を確実に抑制することができる。
(詳細構造)
図6は実施の形態2のキャタピラ部16Bの構造の詳細を示す説明図である。同図(a)はキャタピラ部16Bを下方から視た平面図であり、同図(b)はキャタピラ部16を下方から視た斜視図であり、同図(c)はキャタピラ部16Bを側面から視た断面図である。なお、図6(a)〜(c)それぞれにXYZ直交座標系を記している。
図6に示すように、複数のキャタピラ単体6(キャタピラ単体6(1)〜6(9))は、上述した液体流路本体部61、給水用液体中継部62W、排水用液体中継部62D、給水用ホース接続部63W及び排水用ホース接続部63Dに加え、液体流路本体部61からY方向の両端に延在して一対のチェーン接続部65が液体流路本体部61と一体化して設けられている。複数のキャタピラ単体6それぞれの一対のチェーン接続部65に一対のチェーン70が接続される。その結果、一対のチェーン70によって複数のキャタピラ単体6間が一体的に連結される。
したがって、一対のチェーン70を所定の動力源によって図中X方向に沿って移動させることにより、キャタピラ部16Bの複数のキャタピラ単体6は一体的にX方向、すなわち、移動方向M6に合致した水平方向に沿った移動が可能となる。
図6(c)に示すように、給水用液体中継部62Wは液体流路本体部61の給水口21に接続され、図6(b)及び図6(c)に示すように、排水用液体中継部62Dは液体流路本体部61の排水口22に接続される。なお、図6(b)に示すように、実施の形態1の変形例と同様、実施の形態2においても、互いに隣接する一対のキャタピラ単体6,6間を跨るように、所定数の渡り板66をさらに設けても良い。
また、各給水用ホース接続部63Wは給水用液体中継部62Wと連通する接続部以外に、外部より熱交換用液体35を受ける給水中継入力部71Wと、外部に熱交換用液体35を供給する給水中継出力部72Wとを有している。
同様に、各排水用ホース接続部63Dは排水用液体中継部62Dと連通する接続部以外に、外部より熱交換用液体35を受ける排水中継入力部71Dと、外部に熱交換用液体35を排出する排水中継出力部72Dとを有している。
以下、給水用ホース接続部63Wを含む中継給水経路R11の構成について説明する。図6(a)に示すように、給水側集約部31と、キャタピラ単体6(1)の給水用ホース接続部63Wの給水中継入力部71Wとは、給水側ホース40Wによって接続される。
そして、キャタピラ単体6(1)の給水用ホース接続部63Wの給水中継出力部72Wと、キャタピラ単体6(4)の給水用ホース接続部63Wの給水中継入力部71Wとは、給水側ホース40Wを介して接続される。
さらに、キャタピラ単体6(4)の給水用ホース接続部63Wの給水中継出力部72Wと、キャタピラ単体6(7)の給水用ホース接続部63Wの給水中継入力部71Wとは、給水側ホース40Wを介して接続される。
図6(a)に示すように、給水用ホース接続部63WはXY平面で平面視してS字状に形成されており、給水用ホース接続部63Wの存在によって中継給水経路R11に折り返し経路が形成されるようにしている。
すなわち、中継給水経路R11を構成する各給水用ホース接続部63Wにおいて、給水中継入力部71Wが右(+X方向)側端部付近に設けられ、給水中継出力部72Wが左(−X方向)側端部付近に設けられる。
したがって、各給水用ホース接続部63Wの給水中継入力部71W及び給水中継出力部72Wは、給水側集約部31,キャタピラ単体6(1)間、キャタピラ単体6(1),6(4)間、及びキャタピラ単体6(4),6(7)間それぞれの給水側ホース40Wの形成長が、給水用ホース接続部63Wに折り返し経路が形成される分、より長く必要とするように配置される。
なお、中継排水経路R22及びR23も中継給水経路R11と同様に、各給水用ホース接続部63Wは、中継排水経路R22及びR23に折り返し経路が形成されるように平面視S字状に設けられ、給水中継入力部71Wが右側端部付近に設けられ、給水中継出力部72Wが左側端部付近に設けられる。
このように、給水補助部である給水用ホース接続部63Wは、給水中継入力部71Wと給水中継出力部72Wとを有し、中継給水経路R11〜R13のうち一の中継給水経路の一部として機能している。
そして、給水中継入力部71W及び給水中継出力部72Wは、X方向(所定方向)に沿って右側(一方端側)に給水中継入力部71Wが配置され、左側(他方端側)に給水中継出力部72Wが配置される第1の位置関係を有している。
給水中継入力部71W及び給水中継出力部72Wは上記第1の位置関係を有することにより、中継給水経路R11〜R13に関し、互いに3個置きに近接する一対のキャタピラ単体6,6間を給水側ホース40Wを用いて接続する際における最小給水配管長がより長くなるようにしている。
以下、排水用ホース接続部63Dを含む中継排水経路R23の構成について説明する。図6(a)に示すように、排水側集約部32と、キャタピラ単体6(9)の排水用ホース接続部63Dの排水中継出力部72Dとは、排水側ホース40Dによって接続される。
そして、図6(a)及び図6(b)に示すように、キャタピラ単体6(9)の排水用ホース接続部63Dの排水中継入力部71Dと、キャタピラ単体6(6)の排水用ホース接続部63Dの排水中継出力部72Dとは、排水側ホース40Dを介して接続される。
さらに、図6(a)に示すように、キャタピラ単体6(6)の排水用ホース接続部63Dの排水中継入力部71Dと、キャタピラ単体6(3)の排水用ホース接続部63Dの排水中継出力部72Dとは、排水側ホース40Dを介して接続される。
図6(a)及び(b)に示すように、排水用ホース接続部63DはXY平面視してS字状に形成されており、排水用ホース接続部63Dによって中継排水経路R23に折り返し経路が形成されるようにしている。
すなわち、中継排水経路R23を構成する各排水用ホース接続部63Dにおいて、排水中継入力部71Dが右(+X方向)側端部付近に設けられ、排水中継出力部72Dが左(−X方向)側端部付近に設けられる。したがって、各排水用ホース接続部63Dの排水中継入力部71D及び排水中継出力部72Dは、排水側集約部32,キャタピラ単体6(9)間、キャタピラ単体6(9),6(6)間、及びキャタピラ単体6(6),6(3)間それぞれの排水側ホース40Dの形成長が、排水用ホース接続部63Dに折り返し経路が形成される分、より長く必要とするように配置される。
なお、中継排水経路R21及びR22も中継排水経路R23と同様に、各排水用ホース接続部63Dは、中継排水経路R21及びR22に折り返し経路が形成されるように平面視S字状に設けられ、排水中継入力部71Dが右側端部付近に設けられ、排水中継出力部72Dが左側端部付近に設けられる。
このように、排水補助部である排水用ホース接続部63Dは、排水中継出力部72Dと排水中継入力部71Dとを有し、中継排水経路R21〜R23のうち一の中継排水経路の一部として機能している。
そして、排水中継入力部71D及び排水中継出力部72Dは、X方向(所定方向)に沿って右側(一方端側)に排水中継入力部71Dが配置され、左側(他方端側)に排水中継出力部72Dが配置される第2の位置関係を有している。
排水中継入力部71D及び排水中継出力部72Dは上記第2の位置関係を有することにより、中継排水経路R21〜R23に関し、互いに3個置きに近接する一対のキャタピラ単体6,6間を排水側ホース40Dを用いて接続する際における最小排水配管長がより長くなるようにしている。
上述したように、実施の形態2のピットカバーシステムに関し、給水補助部である給水用ホース接続部63Wにおける給水中継入力部71Wと給水中継出力部72Wとは上記第1の位置関係で配置され、排水補助部である排水用ホース接続部63Dにおける排水中継入力部71Dと排水中継出力部72Dとは上記第2の位置関係で配置されている。
このため、実施の形態2のピットカバーシステムは、最小給水配管長及び最小排水配管長を、給水用ホース接続部63W及びキャタピラ単体6で折り返す分、必然的により一層長くすることができるため、許容曲げ半径超過現象をより確実に抑制することができる効果を奏する。
なお、図4〜図6で示した実施の形態2では、3個置きにキャタピラ単体6を接続する3つの中継給水経路R11〜R13と、3個置きにキャタピラ単体6を接続する3つの中継排水経路R21〜R23を示したが、この構成に限定されないのは勿論である。
すなわち、実施の形態2の拡張例として、n(n≧2)個置きにキャタピラ単体6を接続するn個の中継給水経路R11〜R1nと、n個置きにキャタピラ単体6を接続するn個の中継排水経路R21〜R2nを有する構成が考えられる。
上述した実施の形態では、熱交換用液体35として冷却用液体を代表して説明したが、冷却用液体に代えて加熱用液体を用いる態様も適用可能であることは勿論である。例えば、実施の形態1の場合、複数のキャタピラ単体6それぞれの液体流路本体部61の流路構造に加熱用液体を熱交換用液体35として流すことにより、所望の温度に複数のキャタピラ単体6を加熱して温度調整することができる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。