以下、本発明に係る外壁構造、建物及び壁パネルの取付方法の実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。各図において共通する構成には同一の符号を付している。
図1は、本発明に係る外壁構造の一実施形態としての建物100の外壁構造1を建物100の屋外側から見た正面図である。また、図2、図3は、図1に示す外壁構造1の一部を屋内側から見た場合の拡大斜視図である。
図1〜図3に示すように、外壁構造1には開口2が形成されており、この外壁構造1は、開口2の周囲に位置する第1壁パネル10a、第2壁パネル10b、第3壁パネル10c及び第4壁パネル10dと、連結部材20と、連結部材20を所定方向にスライド移動可能とするスライド機構30と、第1〜第4壁パネル10a〜10dが取り付けられている建物100の梁部材40と、を備えている。なお、図1では、第1〜第4壁パネル10a〜10dの屋内側に位置する梁部材40を一点鎖線により示している。また、図3では、説明の便宜上、連結部材20を省略して描いている。
まず、外壁構造1を備える建物100の一例の全体構成を説明する。建物100は、例えば、鉄骨造の軸組みを有する2階建ての工業化住宅とすることができる。このような建物は、例えば、地盤に支持された鉄筋コンクリート造の基礎構造体と、柱部材や梁部材40などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎構造体に支持された上部構造体と、で構成される。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
基礎構造体は、軸組架構の鉛直方向下方に位置し、軸組架構を支持する。基礎構造体は、例えば、鉄筋コンクリート造の断面T字状の布基礎である。
上部構造体は、複数の柱部材及び柱部材間に架設された複数の梁部材40から構成される軸組架構と、この軸組架構の外周部に配置される外壁と、軸組架構の梁部材40上に支持される各階の床と、を備える。
外壁は、第1〜第4壁パネル10a〜10dなどの、外装パネルとしての壁パネルと、この壁パネルの屋内側に配置される断熱材と、この断熱材の屋内側に配置され、建物100の内装面を形成する内装材と、を備えている。なお、図2、図3では、説明の便宜上、断熱材及び内装材を省略して描いているが、断熱材及び内装材を設けずに、壁パネルの屋内側面が内装面を形成するような構成としてもよい。
第1〜第4壁パネル10a〜10dなどの壁パネルとしては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル、押出成形セメント板、木質系パネルなどを用いることができる。本実施形態では、この壁パネルを軸組架構の外周部の周囲に連接することにより、外壁の外皮層を形成している。
また、断熱材としては、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系のものを用いることができ、断熱材を外皮層の屋内側に、外皮層に沿って配置することにより断熱層を形成することができる。
内装材としては、例えば、石膏ボードを用いることができ、内装材を軸組架構の外周部の屋内側に連接することにより、内皮層を形成することができる。なお、内装材として、上述した外装パネルと同じ材料で形成され、梁部材40に取り付けられる内装パネルを用いることも可能である。
以下、建物100における外壁構造1について詳細に説明する。
まず、開口2を区画する第1〜第4壁パネル10a〜10dについて説明する。
本実施形態の第1〜第4壁パネル10a〜10dは、板材又は角材を複数張り合わせて形成されている矩形板状の木質系パネルである。木質系パネルとしては、例えば、張り合わせる板材又は角材の繊維方向が並行する集成材や、張り合わせる板材の繊維方向が直交するように交互に張り合わされた直交集成板(CLT(Cross Laminated Timberの略))などが挙げられる。
図1に示すように、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bは、開口2の水平方向両側を区画する側端面11a及び11bを有している。より具体的に、外壁構造1を屋外側から正面に見て(図1参照)、本実施形態の第1壁パネル10aの右側の側端面11aが開口2の左端を区画しており、本実施形態の第2壁パネル10bの左側の側端面11bが開口2の右端を区画している。
また、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bは、開口2に対して鉛直方向の上下の両位置それぞれで、建物100の梁部材40に取り付けられている。より具体的に、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bは、建物100の各階の階高と略等しい鉛直方向長さを有しており、その上端部が所定階の上側の梁部材40aに取り付けられると共に、その下端部が同じ所定階の下側の梁部材40bに取り付けられている。
図1に示すように、第3壁パネル10cは、開口2の鉛直方向下端を区画する上端面11cを有している。また、図1、図3に示すように、第3壁パネル10cは、上側の梁部材40aには取り付けられておらず、開口2に対して鉛直方向下方の位置のみで、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bの下端部が取り付けられている下側の梁部材40bに取り付けられている。なお、第3壁パネル10cのうち下側の梁部材40bに取り付けられている部分は、第3壁パネル10cの下端部である。
図1〜図3に示すように、第3壁パネル10cの上端面11cには、後述する連結部材20としての第1連結部材20aを収容可能な、パネル厚み方向と直交する方向に延在する長溝12cが形成されている。なお、長溝12cは、第3壁パネル10cの両側の側端面まで貫通している。
また、図1に示すように、第4壁パネル10dは、開口2の鉛直方向上端を区画する下端面11dを有している。また、第4壁パネル10dは、下側の梁部材40bには取り付けられておらず、開口2に対して鉛直方向上方の位置のみで、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bの上端部が取り付けられている上側の梁部材40aに取り付けられている。なお、第4壁パネル10dのうち上側の梁部材40aに取り付けられている部分は、第4壁パネル10dの上端部である。
図1に示すように、第4壁パネル10dの下端面11dには、後述する連結部材20としての第2連結部材20bを収容可能な、パネル厚み方向と直交する方向に延在する長溝12dが形成されている。なお、長溝12dは、第4壁パネル10dの両側の側端面まで貫通している。
また、上述した第1〜第4壁パネル10a〜10dそれぞれは、側端面に結合部を備えており、幅方向に隣接する壁パネル同士は、側端面の結合部同士を係合させることによって結合されている。具体的に、本実施形態の第1〜第4壁パネル10a〜10dそれぞれは、側端面において、鉛直方向に延在する溝部(例えば、図1、図2に示す第1壁パネル10aの側端面11aの溝部13aや、図1に示す第2壁パネル10bの側端面11bの溝部13b)及び突部(例えば、図3における第3壁パネル10cの側端面における突部13c)の一方を備えており、溝部と突部とが嵌合して係合することにより結合されている。なお、隣接する壁パネル同士を結合する結合部の構成は、本実施形態の溝部と突部とに限られるものではなく、各種構成により実現することが可能である。
第1〜第4壁パネル10a〜10dと梁部材40との取り付け構成の詳細は後述する(図3参照)。
連結部材20は、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bの間に架け渡した状態で、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付けられている。図4は、連結部材20の単体を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態の連結部材20は、直線状に延在する棒状部21と、この棒状部21の長手方向の両端にそれぞれ位置し、棒状部21の外形よりも棒状部21の長手方向と直交する方向に向かって突出する板状のフランジ部22a及び22bと、を備えており、図1、図2に示すように、長手方向の一端に位置する第1フランジ部22aが、第1壁パネル10aに対して取り付けられ、長手方向の他端に位置する第2フランジ部22bが、第2壁パネル10bに対して取り付けられている。なお、図1に示すように、第1フランジ部22a及び第2フランジ部22bが、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに取り付けられた状態において、上述した棒状部21の長手方向は略水平方向となっている。また、本実施形態の棒状部21の横断面外形は、開口2側となる鉛直方向上方が開放された溝形形状を有しているが、棒状であればよく、横断面外形は溝形形状のものに限られない。したがって、例えば、棒状部を、筒状、中実丸棒状、中実角棒状などの形状としてもよい。
更に本実施形態では、第1フランジ部22aが、鉛直方向に延在する長孔23aを区画しており、この長孔23aは、水平方向において第1フランジ部22aを貫通している。そして、図2に示すように、連結部材20は、溝部13a内に配置された第1フランジ部22aの長孔23aに挿通された締結部材50としてのビス部材が、第1壁パネル10aの側端面11aにおける溝部13aの溝底に締結されることにより、第1壁パネル10aに対して緊結した状態で取り付けられている。
同様に、本実施形態の第2フランジ部22bは、鉛直方向に延在する長孔23bを区画しており、この長孔23bは、水平方向において第2フランジ部22bを貫通している。そして、連結部材20は、溝部13b内に配置された第2フランジ部22bの長孔23bに挿通された締結部材50としてのビス部材が、第2壁パネル10bの側端面11bにおける溝部13bの溝底に締結されることにより、第2壁パネル10bに対して緊結した状態で取り付けられている。
このように、連結部材20は、その長手方向の両端部が第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して緊結されている。
ここで本実施形態では、連結部材20として、その長手方向の両端部が第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付けられていると共に、第3壁パネル10cの上端面11cに対して取り付けられている第1連結部材20aと、その長手方向の両端部が第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付けられていると共に、第4壁パネル10dの下端面11dに対して取り付けられている第2連結部材20bと、が設けられている。
第1連結部材20aのうち、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに取り付けられている両端部(本実施形態では第1及び第2フランジ部22a及び22b)に挟まれる中央部(本実施形態では棒状部21の大部分)が、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けられている。具体的に、第3壁パネル10cの上端面11cには、上述したように、パネル厚み方向と直交する方向に延在する長溝12cが形成されており、第1連結部材20aの中央部が長溝12cに入り込んだ状態、より具体的には、長溝12c内に収容された状態とされる。これにより、第3壁パネル10cの上端面11c側がパネル厚み方向に移動しようとしても、長溝12cの溝壁が、長溝12c内に収容された第1連結部材20aに突き当たる。そのため、第3壁パネル10cの上端面11c側は、パネル厚み方向において第1連結部材20aに対して移動することが制限される。なお、「連結部材が第3壁パネルの上端面に取り付けられている」とは、連結部材と第3壁パネルの上端面とが、少なくともパネル厚み方向に別々に移動しないように両者が係合している状態を意味しており、連結部材が第3壁パネルに対して完全に緊結されている状態のみを意味するものではない。つまり、図2に示すように、本実施形態の第1連結部材20a及び第3壁パネル10cは、棒状部21に形成された挿通孔24からビス部材等の締結部材51を挿通することにより完全に緊結される構成であるが、第1連結部材20aが長溝12cに嵌合しているため、締結部材51を用いずに緊結しない構成としてもよい。
このように、第3壁パネル10cは、その鉛直方向の下端部が建物100の軸組架構を構成する下側の梁部材40bに取り付けられていると共に、その上端部が第1連結部材20aに取り付けられている。そして、第3壁パネル10cの上端部を第1及び第2壁パネル10a及び10bと一体化する第1連結部材20aを、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けているため、第1〜第3壁パネル10a〜10cの屋内側面に跨って他の連結部材を取り付ける構成と比較して、第1連結部材20aが目立ち難く簡素化された意匠性の高い構成を実現することができる。更に、図1に示すように、本実施形態の第1連結部材20aはそのすべてが、第1壁パネル10aの側端面11aの溝部13a、第2壁パネル10bの側端面11bの溝部13b、及び第3壁パネル10cの上端面11cの長溝12cに収容された状態となっているため、第1連結部材20aがより目立ち難くなり、意匠性をより一層向上させることができる。
また、第2連結部材20bについても、第1連結部材20aと同様である。第2連結部材20bのうち、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに取り付けられている両端部に挟まれる中央部が、第4壁パネル10dの下端面11dに取り付けられている。具体的に、第4壁パネル10dの下端面11dには、上述したように、パネル厚み方向と直交する方向に延在する長溝12dが形成されており、第2連結部材20bの中央部が長溝12dに入り込んだ状態、より具体的に、長溝12dに収容された状態とされる。これにより、第4壁パネル10dの下端面11d側がパネル厚み方向に移動しようとしても、長溝12dの溝壁が、長溝12d内に収容された第2連結部材20bに突き当たる。そのため、第4壁パネル10dの下端面11d側は、パネル厚み方向において第2連結部材20bに対して移動することが制限される。なお、「連結部材が第4壁パネルの下端面に取り付けられている」とは、連結部材と第4壁パネルの下端面とが、少なくともパネル厚み方向に別々に移動しないように両者が係合している状態を意味しており、連結部材が第4壁パネルに対して完全に緊結されている状態のみを意味するものではない。したがって、第2連結部材と第4壁パネルとの取り付け構成は、ビス部材等の締結部材を用いて完全に緊結される取り付け構成に限られるものではない。
このように、第4壁パネル10dについても、その鉛直方向の上端部が建物100の軸組架構を構成する上側の梁部材40aに取り付けられていると共に、その下端部が第2連結部材20bに取り付けられている。そして、第4壁パネル10dの下端部を第1及び第2壁パネル10a及び10bと一体化する第2連結部材20bを、第4壁パネル10dの下端面11dに取り付けているため、第1、第2及び第4壁パネル10a、10b及び10dの屋内側面に跨って他の連結部材を取り付ける構成と比較して、第2連結部材20bが目立ち難く簡素化された意匠性の高い構成を実現することができる。更に、図1に示すように、第2連結部材20bはそのすべてが、第1壁パネル10aの側端面11aの溝部13a、第2壁パネル10bの側端面11bの溝部13b、及び第4壁パネル10dの下端面11dの長溝12dに収容された状態となっているため、第2連結部材20bがより目立ち難くなり、意匠性をより一層向上させることができる。
ここで、外壁構造1は、第1連結部材20aを、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けられる位置となるように上端面11cに向かう方向に、又は、上端面11cに取り付けられる位置から上端面11cと離れる方向に、スライド移動可能とするスライド機構30を備えている。
具体的に、本実施形態のスライド機構30は、第1連結部材20aの第1及び第2フランジ部22a及び22bに区画された長孔23a及び23bと、この長孔23a及び23bに挿通されて第1及び第2壁パネル10a及び10bに締結される締結部材50と、により構成されており、第1連結部材20aを、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けられる位置となるように上端面11cに向かう方向、及び、上端面11cに取り付けられる位置から上端面11cと離れる方向に、スライド移動可能とするものである。
本実施形態の外壁構造1では、第1及び第2フランジ部22a及び22bが、締結部材50としてのビス部材により、第1及び第2壁パネル10a及び10bに対して完全に緊結されており、第1連結部材20aは、第3壁パネル10cの上端面11cに向かう方向及び上端面11cから離れる方向、のいずれにも移動することはできない。しかしながら、締結部材50の位置を変化させる、すなわち、締結部材50としてのビス部材を緩め、第1及び第2フランジ部22a及び22bが第1及び第2壁パネル10a及び10bに対して完全には緊結されていない状態とすることにより、第1連結部材20aは、締結部材50が挿通されている長孔23a及び23bによって、第3壁パネル10cの上端面11cから離れる方向、すなわち鉛直方向上方に移動可能となる。そして、第1連結部材20aを鉛直方向上方に移動した後は、逆に、鉛直方向下方、すなわち、第3壁パネル10cの上端面11cに向かう方向に第1連結部材20aを移動させることができる。
より具体的に、各長孔23a及び23bの断面積は、締結部材50のうち長孔23a及び23b内に位置する部分の断面積よりも大きく、かつ、各長孔23a及び23bの鉛直方向の最大長さが、少なくとも、締結部材50のうち長孔23a及び23b内に位置する部分の鉛直方向の最大長さよりも長くなっている。
そのため、第1壁パネル10a側の締結部材50を緩め、締結部材50の緊結状態を解除すれば、第1フランジ部22aは、長孔23aに挿通されている締結部材50が長孔23aを区画する内面のうち鉛直方向下端の部分に当接しない状態から、締結部材50が長孔23aを区画する内面のうち鉛直方向下端の部分に当接する状態となるまで、鉛直方向上方に、締結部材50に対してスライド移動可能となる。
同様に、第2壁パネル10b側の締結部材50を緩め、締結部材50の緊結状態を解除すれば、第2フランジ部22bは、長孔23bに挿通されている締結部材50が長孔23bを区画する内面のうち鉛直方向下端の部分に当接しない状態から、締結部材50が長孔23bを区画する内面のうち鉛直方向下端の部分に当接する状態となるまで、鉛直方向上方に、締結部材50に対してスライド移動可能となる。
なお、上述したように、本実施形態の第1連結部材20aは、ビス部材等の締結部材51により第3壁パネル10cに対して完全に緊結される(図2参照)。そのため、上述の第1連結部材20aのスライド機構30による移動は、本実施形態では、第1連結部材20aが締結部材51により第3壁パネル10cに対して緊結される前の状態での移動、及び、緊結された締結部材51が取り外された後の状態での移動を意味している。
このように、外壁構造1における第1連結部材20aは、第3壁パネル10cの上端面11cに向かう方向及び上端面11cから離れる方向に移動可能ではなく、このような移動は完成した建物100の外壁において何ら想定されたものではないが、外壁構造1は、上述した意匠性の高い第1連結部材20aの取り付け構成の施工性を向上すべく、第1連結部材20aを、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けられる位置となるように上端面11cに向かう方向に、又は、第3壁パネル10cの上端面11cに取り付けられる位置から上端面11cと離れる方向に、移動可能とするスライド機構30を備えた構成となっている。なお、外壁構造1の施工性については、後述する壁パネルの取付方法において併せて説明する。
また、ここでは詳細な説明は省略するが、本実施形態の外壁構造1は、上述したスライド機構30を「第1スライド機構30a」とした場合に、第2連結部材20bを、第4壁パネル10dの下端面11dに取り付けられる位置となるように下端面11dに向かう方向に、及び/又は、下端面11dに取り付けられる位置から下端面11dと離れる方向に、スライド移動可能とする第2スライド機構30bを、更に備えている。第2スライド機構30bの構成は、上述した第1スライド機構30aと同様である。
更に、本実施形態の第3壁パネル10cは、第1壁パネル10aと第2壁パネル10bとの間で、複数(本実施形態では4つ)連接されており、第1連結部材20aの棒状部21は、この複数の第3壁パネル10cのすべての長溝12cに跨って収容されている。同様に、本実施形態の第4壁パネル10dは、第1壁パネル10aと第2壁パネル10bとの間で、複数(本実施形態では4つ)連接されており、第2連結部材20bの棒状部21は、この複数の第4壁パネル10dのすべての長溝12dに跨って収容されている。
次に、図3を参照して、第3壁パネル10cと下側の梁部材40bとの取り付け構成の詳細を説明する。ここでは、第3壁パネル10cと下側の梁部材40bとの取り付け構成を例示説明するが、第1壁パネル10aと建物100の上側の梁部材40a及び下側の梁部材40bそれぞれとの取り付け構成、第2壁パネル10bと建物100の上側の梁部材40a及び下側の梁部材40bそれぞれとの取り付け構成、並びに、第4壁パネル10dと上側の梁部材40aとの取り付け構成、についても同様である。
図3に示すように、第3壁パネル10cの屋内側には下側の梁部材40bが設けられており、第3壁パネル10cの下端部は、緊結具41及び接続具42を介して、下側の梁部材40bに対して取り付けられている。
緊結具41は、第3壁パネル10cの屋内側面上に位置し、貫通孔に挿通されるビス部材等の締結部材60により第3壁パネル10cに緊結される板状の緊結部41aと、この緊結部41aの屋内側面から突設されたフック部41bと、を備えている金具である。
接続具42は、H形鋼である下側の梁部材40bの上側フランジに対して接合され、略水平方向に延在する底板部42aと、この底板部42aから鉛直方向上方に向かって立設された起立板部42bと、を備える横断面外形がL形の長尺の金具である。底板部42aと下側の梁部材40bの上側フランジとは、ボルト及びナットや溶接等により、接合されている。
第3壁パネル10cに緊結された緊結具41の緊結部41aとフック部41bとの間の隙間に、下側の梁部材40bに接合された接続具42の起立板部42bを挿入することにより、下側の梁部材40bにより第3壁パネル10cを支持させることができる。
但し、図3に示すように、緊結部41aとフック部41bとの間で起立板部42bを挟むことにより、下側の梁部材40bにより第3壁パネル10cを支持しているため、緊結具41は、接続具42に対して第3壁パネル10cの厚み方向には移動しないが、接続具42に対して第3壁パネル10cの面内方向(厚み方向と直交する方向)には移動することができる。そのため、緊結具41及びこの緊結具41と緊結された第3壁パネル10cは、例えば地震時等において建物100に層間変位が生じた場合、接続具42及び下側の梁部材40bに対して、第3壁パネル10cの厚み方向と直交する面内で回動可能である(ロッキング構造)。これにより、建物100に層間変位が生じた場合であっても、第3壁パネル10cの破壊や損傷を抑制することができる。
また、図3に示すように、下側の梁部材40bの下側フランジには、第3壁パネル10cの自重を鉛直方向の下端面を支持することにより受ける自重受け部43aを有するZ形の自重受け金具43が取り付けられている。
なお、本実施形態の梁部材40a、40bはH形鋼で構成されているが、梁部材の形状は適宜設定することができ、この形状に限られるものではない。
また、本実施形態の緊結具41のフック部41bは2つ設けられているが、フック部の数はこの個数に限られるものではなく、例えば、1つのみのフック部を有する構成としてもよく、3つ以上のフック部を有する構成としてもよい。また、本実施形態のフック部41bは、緊結部41aの幅方向両側に設けられているが、この位置についても特に限定されるものではなく適宜設計することができる。
更に、本実施形態の緊結具41の緊結部41aは、平板状に形成されているが、第3壁パネル10cの屋内側面に当接した状態で第3壁パネル10cに緊結されているものであればよく、その形状は平板形状に限られるものではない。
また更に、本実施形態の接続具42は、横断面外形がL形の金具であるが、梁部材40に対して接合されると共に、緊結具41の緊結部41aとフック部41bとの間に挿入可能な部分を有していればよく、本実施形態の形状に限られるものではない。
次に、本発明の一実施形態としての、開口2周囲の壁パネル10a〜10cの取付方法について説明する。この壁パネル10a〜10cの取付方法は、開口2の水平方向両側を区画する第1及び第2壁パネル10a及び10bを上側の梁部材40a及び下側の梁部材40bに取り付ける工程と、第1及び第2壁パネル10a及び10bの間に第1連結部材20aを架け渡し、第1連結部材20aを、鉛直方向にスライド移動可能に第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付ける工程と、開口2の鉛直方向下端を区画する上端面11cを有する第3壁パネル10cを配置する工程と、第1連結部材20aを鉛直方向下方に移動し、第3壁パネル10cの上端面11cに第1連結部材20aを取り付ける工程と、を含むものである。
壁パネル10a〜10cの取付方法のうち、第1連結部材20aを鉛直方向下方に移動し、第3壁パネル10cの上端面11cに第1連結部材20aを取り付ける工程では、上述した外壁構造1のスライド機構30が用いられている。つまり、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付けられた第1連結部材20aを、スライド機構30を用いて鉛直方向に移動可能としているため、上述した外壁構造1を施工する際には、第3壁パネル10cを下側の梁部材40bに対して取り付けた後に第1連結部材20aをスライド移動させて、第1連結部材20aを第3壁パネル10cに取り付けることにより、第3壁パネル10cの上端面11cを第1及び第2壁パネル10a及び10bに一体化することができ、第1〜第3壁パネル10a〜10cを簡単に一体化することが可能となる。そのため、上述した意匠性に加えて施工性にも優れた、第1〜第3壁パネル10a〜10cが一体化された構成を実現することができる。
なお、上述の取付方法は、更に、第4壁パネル10dを取り付ける方法を含むものであってもよい。具体的に、上述の取付方法は、第1及び第2壁パネル10a及び10bの間に第2連結部材20bを架け渡し、第2連結部材20bを、鉛直方向にスライド移動可能に第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bに対して取り付ける工程と、開口2の鉛直方向上端を区画する下端面11dを有する第4壁パネル10dを配置する工程と、第2連結部材20bを鉛直方向上方に移動し、第4壁パネル10dの下端面11dに第2連結部材20bを取り付ける工程と、を更に含むものであってもよい。
また、上述した取付方法のうち、第3壁パネル10cを配置する工程では、第3壁パネル10cを複数連接して配置し、第3壁パネル10cの上端面11cに第1連結部材20aを取り付ける工程では、複数の第3壁パネル10cの全ての上端面11cに第1連結部材20aを取り付けるようにすることができる。上述したように、図1〜図3に示す外壁構造1では、壁パネルの側端面に、隣接する壁パネルと結合するための結合部としての溝部又は突部が設けられている(図1〜図3の溝部13aや突部13cを参照)。そのため、複数の第3壁パネル10cを連接して配置する際には、各第3壁パネル10cを、上述した緊結具41と接続具42とを取り付けた後に幅方向にスライドさせていき、隣接する第3壁パネル10cの側端面に設けられた溝部及び突部を嵌合していく。これにより、複数の第3壁パネル10cを連接して配置することができる。
本発明に係る外壁構造、外壁構造を備える建物、及び壁パネルの取付方法は、上述したものに限られるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。例えば、上述した外壁構造1のうち、第1連結部材20aを移動可能とするスライド機構30としての第1スライド機構30aは、第1及び第2フランジ部22a及び22bに区画された長孔23a及び23b(図4参照)と、この長孔23a及び23bに挿通されて第1及び第2壁パネル10a及び10bに締結される締結部材50(図2参照)と、により構成されていたが、第1及び第2フランジ部22a及び22bに区画された長孔23a及び23bの一方と、この一方の長孔23a又は23bに挿通されて第1又は第2壁パネル10a又は10bに締結される締結部材50と、により構成されていてもよい。つまり、第1連結部材20aの長手方向の一方のみをスライド移動可能とするスライド機構であってもよい。
更に、上述した外壁構造1は、第1連結部材20aを移動可能とする第1スライド機構30aに加えて、第2連結部材20bを移動可能とする第2スライド機構30bを備える構成であるが、少なくとも第1スライド機構30aを備えていればよく、第2スライド機構30bを備えない構成としてもよい。
また、上述した外壁構造1の第1連結部材20a及び第2連結部材20bそれぞれの両端部は、第1壁パネル10aの側端面11aの溝部13a、及び第2壁パネル10bの側端面11bの溝部13bに収容される構成であるが、このような溝部13a、13bが形成されておらずに、側端面11a及び11b上にビス部材等の締結部材で単に緊結されて取り付けられる構成であってもよい。
更に、上述した外壁構造1の第3壁パネル10cは、その上端面11cに長溝12cが形成されており、この長溝12c内に第1連結部材20aが収容されるものであるが、長溝12cがない第3壁パネルとし、長溝12cがない第3壁パネルの上端面に第1連結部材20aをビス等の締結部材により緊結することにより取り付ける構成としてもよい。同様に、上述した第4壁パネル10dの下端面11dにおける長溝12dを省く構成とすることも可能である。但し、上述したように、外壁構造1が長溝12c及び12dを備えることにより、第1連結部材20a及び第2連結部材20bを長溝12c及び12d内に隠すことができるため、意匠性の観点から、長溝12c及び12dが形成された第3壁パネル10c及び第4壁パネル10dとすることが好ましい。また、長溝12c及び12d内に第1連結部材20a及び第2連結部材20bを収容する構成とすれば、開口2にサッシ枠等を設ける際に、第1及び第2連結部材20a及び20bが邪魔になり難く、サッシ枠等の開口2内に配置される部材の設計自由度をも向上させることができる。
また更に、上述した外壁構造1の連結部材20は、棒状部21と、両端の第1及び第2フランジ部22a及び22bと、を備える構成であるが、連結部材はこの構成に限られるものではなく、例えば、図5、図6に示すように、連結部材20としての第1連結部材20a及び第2連結部材20bを、一様な直線状の棒部材により構成することもできる。かかる場合には、第1壁パネル10a及び第2壁パネル10bの開口2の水平方向両側を区画する側端面11a及び11bに設けられた溝部13a及び13bに、第1及び第2連結部材20a及び20bの水平方向の両端部を収容し、第1及び第2連結部材20a及び20bを溝部13a及び13b内で鉛直方向にスライド移動可能とすることができる。つまり、図5、図6に示す例では、所定方向としての鉛直方向に第1及び第2連結部材20a及び20bを移動可能とする第1及び第2スライド機構30a及び30bは、溝部13a及び13bにより構成される。
なお、図5、図6に示す例であっても、第1連結部材20aの中央部は、第3壁パネル10cの上端面11cに形成された長溝12cに収容され、第2及連結部材20bの中央部は、第4壁パネル10dの下端面11dに形成された長溝12dに収容されている。