本発明の一態様の空気調和システムは、ユーザが存在する室内の空調を行う空気調和システムであって、前記ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報から第1の温冷感算出式または第2の温冷感算出式を用いて前記ユーザの温冷感値を算出する温冷感算出部と、前記温冷感算出部によって算出された温冷感値が快適範囲で維持されるように空調運転を実行する空気調和装置と、前記ユーザが集中モード運転の開始を前記空気調和装置に指示するための指示入力部と、を有し、前記集中モード運転の開始後、所定の開始条件が成立すると、前記空気調和装置が、前記第2の温冷感算出式を用いて算出された温冷感値に基づく集中維持運転を開始し、前記生体情報が同一である場合、前記第2の温冷感算出式が、前記第1の温冷感算出式に比べて高い温冷感値を算出するように構成されている。
このような態様によれば、ユーザの集中力の低下を抑制しつつ該ユーザに対して快適な空調を提供することができる。
例えば、前記所定の開始条件は、前記集中モード運転の開始タイミングから所定の第1の時間経過すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記所定の開始条件は、前記集中モード運転の開始後、前記第1の温冷感算出式を用いて算出された温冷感値の単位時間あたりの低下量が所定のしきい値を超えると成立する条件であってもよい。
例えば、前記空気調和システムが前記ユーザの体温を測定する体温測定部を有し、前記所定の開始条件は、前記ユーザの体温が前記集中モード運転開始時の体温から所定の温度上昇すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記空気調和装置が、前記集中モード運転の開始後、前記集中モード運転の開始タイミングから所定の第2の時間経過するまで、前記ユーザの温冷感を低下させる予冷運転を実行してもよい。これにより、ユーザに対して冷刺激を与え、ユーザの集中力の上昇を促進することができる。
例えば、前記生体情報取得部が前記ユーザの熱量を検出する赤外線センサであって、前記温冷感算出部が前記赤外線センサによって検出された熱量に基づいて前記ユーザの温冷感を算出してもよい。
本発明の別態様の空気調和方法は、ユーザが存在する室内の空調を行う空気調和方法であって、前記ユーザの生体情報を取得し、前記生体情報から第1の温冷感算出式または第2の温冷感算出式を用いて前記ユーザの温冷感値を算出し、算出された温冷感値が快適範囲で維持されるように空気調和装置が空調運転を実行し、前記空気調和装置が前記ユーザからの指示を受けて集中モード運転を開始し、前記集中モード運転の開始後、所定の開始条件が成立すると、前記空気調和装置が、前記第2の温冷感算出式を用いて算出された温冷感値に基づく集中維持運転を開始し、前記生体情報が同一である場合、前記第2の温冷感算出式が、前記第1の温冷感算出式に比べて高い温冷感値を算出するように構成されている。
このような態様によれば、ユーザの集中力の低下を抑制しつつ該ユーザに対して快適な空調を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和システムを概略的に示している。図2は、空気調和システムにおける空気調和装置の構成を概略的に示している。
図1に示すように、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、ユーザWが存在する室内Sの空調を行うシステムであって、特に集中して勉強などの知的作業を行うユーザWに対して快適な空調を提供可能に構成されている。
そのために、空気調和システム10は、室内Sの空調を行う空気調和装置20を有する。
図2に示すように、本実施の形態1の場合、空気調和装置20は、室内機22と室外機24とを有する。図1に示すように、空気調和装置20の室内機22は、室内Sに設置される。室外機24は、その室外に設置される。空気調和装置20のユーザWは、室内機22が設置された室内Sに存在する。
図2に示すように、空気調和装置20は、室内機22に設けられた室内熱交換器26と、室外機24に設けられた室外熱交換器28と、冷媒を圧縮する圧縮機30と、冷媒の流れ方向を切り換える四方弁32と、冷媒を減圧する膨張弁34と、これらを接続する冷媒配管36とを有する。また、室内機22には、室内熱交換器26と熱交換した後の空気を室内に送風する室内ファン38と、室内機22から送出される空気(気流AF)の向きを変更する上下ルーバー40、左右ルーバー42とが設けられている。さらに、室外機24には、室外熱交換器28と熱交換した後の空気を屋外に送風する室外ファン44が設けられている。
図2は、冷房運転時の空気調和装置20の状態を示している。冷房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室外熱交換器28、膨張弁34、室内熱交換器26、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。一方、暖房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室内熱交換器26、膨張弁34、室外熱交換器28、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。
室内ファン38は、冷房運転時には室内熱交換器26との熱交換によって冷やされた空気を室内Sに向かって送風し、暖房運転時には室内熱交換器16との熱交換によって温められた空気を送風する。
上下ルーバー40および左右ルーバー42は、室内機22から室内Sに向かって送風される気流AF(室内熱交換器26と熱交換した後の空気)の向きを上下方向および左右方向について変更する。
図3は、空気調和システムのブロック図である。
図3に示すように、空気調和システム10は、ユーザWの温冷感に基づいて空気調和装置20を制御するために、リモートコントローラ46、赤外線センサ48、および制御装置50を有する。なお、本実施の形態1の場合、空気調和システム10の制御装置50は、空気調和装置20自体の制御装置である。
リモートコントローラ46は、空気調和システム10の指示入力部として機能し、ユーザWが空気調和装置20を遠隔操作するためのコントローラである。
赤外線センサ48は、例えばサーモパイルセンサであり、室内Sにおける床面および壁面などの熱画像情報(温度分布情報)、およびユーザWの生体情報として該ユーザWの二次元熱画像情報(温度分布情報)を検出するよう構成されている。この熱画像情報は、赤外線センサ48により検出された赤外線量により形成されている。
図1に示すように、赤外線センサ48は、空気調和装置20の室内機22に搭載されている。また、赤外線センサ48は、赤外線を感知する複数のセンサ素子を備えており、例えば、64個のセンサ素子が8行8列のマトリックスに配置され、それらのセンサ素子の赤外線感知レベルに基づいて8×8の熱画像が作成される。
また、赤外線センサ48は、マトリックス状に配設されたセンサ素子それぞれがその縦・横が回転軸に対して斜めに傾いた状態で、その回転軸を中心にして回動して走査し、熱画像情報を示す信号を出力するように構成されてもよい。例えば、赤外線センサ48の回転軸を傾けて走査することにより、左右視野角約180°、上下視野角約30°に相当する熱画像情報が形成される信号が出力される。この場合、単純な素子の解像度(8×8、64素子)より高解像度の熱画像を得ることができる。すなわち、各素子の視野角に比べて細かいピッチで回転させ、ピッチ毎に熱画像を取得することにより回転方向(横方向)の解像度を高めることができる。また赤外線センサ48は回転方向に対して傾けて設置されているので、回転軸方向(縦方向)の解像度も向上させることができる。加えて、赤外線センサ48における複数のセンサ素子それぞれに集光するレンズの「ピントずれ」と測定時に発生するノイズとを補正するフィルタリング処理を施すことで解像度を高めることが可能となる。本実施の形態にかかる空気調和装置においては、該ユーザWとそれ以外の領域を詳細に識別し、かつ該ユーザWの生体情報が細かく検出すると、空気調和装置20を正確に制御できるため、これらの解像度向上技術を採用することが望ましい。
制御装置50は、例えば、空気調和装置20の室内機22に搭載された回路基板であって、プログラムなどが記憶されたメモリなどの記憶装置と、記憶デバイスに記憶されたプログラムにしたがって動作するCPUなどのプロセッサとを備える。これにより、制御装置50は、運転制御部52、温冷感算出部54、および運転条件決定部56を備える(記憶装置58に記憶されているプログラムにしたがって動作するプロセッサがこれらとして機能する)。CPUにおける各種の演算は、あらかじめCPUに組み込まれたプログラムと、あらかじめ記憶部58に記憶されている各種のデータ、および空気調和装置20の運転中に取得し記憶部58に記憶した各種の情報のうち、必要なデータを用いておこなわれる。
図3に示すように、制御装置50の運転制御部52は、リモートコントローラ46に対するユーザWの指示入力に基づいて、圧縮機30、室内ファン38、上下ルーバー40、および左右ルーバー42を制御して室内Sに対する空調運転を実行するように構成されている。例えば、リモートコントローラ46に対して設定温度が入力されると、制御装置50の運転制御部52は、室内温度を設定温度で維持する空調運転を実行する。なお、そのために、室内温度を測定する温度センサ(図示せず)が、例えば室内機22に設けられている。
また、制御装置50の運転制御部52は、ユーザWの温冷感に基づいて、室内Sの空調を行うことが可能に構成されている。具体的には、温冷感算出部54が赤外線センサ48の検出結果に基づいてユーザWの温冷感(値)を算出し、その算出された温冷感に基づいて運転条件決定部56が運転条件を決定し、その決定された運転条件に基づいて運転制御部52が空調運転を実行する。このユーザWの温冷感に基づく空調運転について説明する。
まず、ユーザWの温冷感とは、「暑い」、「暖かい」、「涼しい」、または「寒い」などの温度に関するユーザWの感覚を言う。本実施の形態1の場合、ユーザWの温冷感は、温冷感値Tsとして数値化されている。温冷感値Tsは、−3から+3の値の7段階評価であるPMV(Predicted Mean Vote)に対応している。PMVが−3から−2までの値である場合は「寒い」温冷感を表し、−2から0までは「涼しい」温冷感、0から+2までは「暖かい」温冷感、そして+2から+3までは「暑い」温冷感を表している。
本実施の形態においては、空気調和・衛生工学会温冷感小委員会で提案された、9段階温冷感尺度を温冷感スケールとして用いている。温冷感値Tsは、9段階評価尺度は、PMVスケールの両極に、「+4(非常に暑い)」および「−4(非常に寒い)」を加えたものを用いている。この温冷感スケールを用いて後述する温冷感検知制御を行っている。
温冷感算出部54は、ユーザWの温冷感値Tsを算出するために、赤外線センサ48から取得した熱画像に基づいてユーザWの放熱量Hを算出する。
そのために、本実施の形態の空気調和装置における赤外線センサ48であるサーモパイルセンサにより取得された熱画像情報による温冷感検知について説明する。
先ず始めに、赤外線センサ48であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報からの人体の放熱量の算出方法について説明する。
人体からの放熱量(H)[W/m
2]は、一般に下記式(1)で表される。
式(1)において、Rは人体の放射による放熱量(受熱量)[W/m2]であり、Cは人体の対流による放熱量(受熱量)[W/m2]であり、Kは人体の伝導による放熱量(受熱量)[W/m2]である。また、Eskは皮膚からの水分蒸発による放熱量[W/m2]であり、Eresは呼気の水分蒸発による放熱量[W/m2]であり、Cresは呼気の対流による放熱量[W/m2]である。
また、着衣および皮膚の表面温度をtclとし、周囲の壁面温度をtrとし、周囲気温をtaとすると、RおよびCは下記式(2)および式(3)で表される。
ここで、hrは放射熱伝導率[W/m2℃]であり、hcは対流熱伝導率[W/m2℃]である。
なお、人体における床などとの接触面積が小さく、人体の伝導による放熱量Kが無視できるほど少なく、呼気からの対流による放熱量(Cres)が少ない場合には、式(1)を下記式(4)で表すことができる。
上記のように式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)は下記式(5)となる。
すなわち、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl−tr)と、人の表面温度(tcl)と周囲気温(ta)との差(tcl−ta)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
周囲気温(ta)には、空気調和装置に搭載されている温度センサの検出値や、その検出値を運転状況や検知した人の状態により補正した値を採用することができる。
さらに、特に周囲気温(ta)と周囲の壁面温度(tr)がほぼ等しい(ta≒tr)場合、すなわち空調が充分安定した場合においては、式(5)を下記式(6)で表すことができる。
つまり、式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)の変数は(tcl−tr)のみとなる。
このため、人が安静状態および人の活動量が小さい場合であり、かつ空調運転が充分安定した状態においては、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl−tr)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
人の放熱量(H)とその人の代謝量(産熱量M)が釣り合っていれば(H=M)、その人の熱収支のバランスがとれており、その人は快適と感じていると推定できる。一方、放熱量(H)が代謝量(産熱量M)より大きければ(H>M)、その大きさの程度に応じてその人は寒く感じており、逆に放熱量(H)が代謝量より小さければ(H<M)、その人は暑く感じていると推定できる。
したがって、人が安静状態および人の活動量が小さい場合においては、周囲気温(ta)と、赤外線センサ48であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
さらには、空調運転が充分安定した状態においては、赤外線センサ48であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
以上のことから、温冷感値Tsは、下記式(7)に示す温冷感算出式(第1の温冷感算出式)を用いることにより、放熱量Hから算出することができる。
ここで、A、Bは係数であって、予め実験的に求められている。Aは、放熱量Hを補正する補正係数であって負の値である。Bは、人体の産熱量を係数をかけて無次元数にしたものであり、人体の産熱量に相当する。数式7に示すように、温冷感値Tsは、産熱量Bから補正された放熱量を減算したものである。したがって、温冷感値Tsが正の値である場合(0<Ts<+4)、ユーザWの産熱量に対して放熱量が足らず、ユーザWは「暖かい」または「暑い」と感じている。温冷感値Tsが負の値である場合(−4<Ts<0)、ユーザWの産熱量に対して放熱量が過剰であり、ユーザWは「涼しい」または「寒い」と感じている。
なお、係数A、Bそれぞれには、冬用(例えば10〜3月)の値と夏用(例えば4〜9月)の値とがあって、季節に応じて使い分けられる。また、夏用の値の場合、放熱量Hが所定のしきい値(例えば26.315)を越える場合の値と、放熱量Hが所定のしきい値を超えない場合の値とがある。
温冷感算出部54は、温冷感算出式(数式7)を用いて、室内Sに存在するユーザWの温冷感値Tsを算出する。また、温冷感算出部54が定期的に温冷感値Tsを算出することにより、ユーザWの温冷感がモニタリングされている。
運転条件決定部56は、温冷感算出部54によって算出されたユーザWの温冷感値Tsに基づいて、具体的には温冷感値Tsが快適範囲で維持されるように空気調和装置20の空調運転の運転条件を決定する。
例えば、運転条件決定部56は、温冷感値Tsがゼロから+2に近づくと、すなわちユーザWの温冷感が「暑い」にならないように、そのユーザWの温冷感を低下させるための運転条件を決定する。例えば、設定温度に比べて数℃低い室内温度になるような運転条件を決定する。冷房運転を実行している場合、圧縮機30の出力を上げる、室内ファン38の回転数を上げるなどの運転条件を決定する。暖房運転の場合、圧縮機30の出力を下げる、室内ファン38の回転数を下げるなどの運転条件を決定する。また例えば、現在の室内湿度に比べて低い室内湿度になるような運転条件を決定する。
また例えば、運転条件決定部56は、温冷感値Tsがゼロから−2に近づくと、即ちユーザWの温冷感が「寒い」にならないように、そのユーザWの温冷感を上昇させるための運転条件を決定する。例えば、設定温度に比べて数℃高い室内温度になるような運転条件を決定する。冷房運転を実行している場合、圧縮機30の出力を下げる、室内ファン38の回転数を下げるなどの運転条件を決定する。暖房運転の場合、圧縮機30の出力を上げる、室内ファン38の回転数を上げるなどの運転条件を決定する。また例えば、現在の室内湿度に比べて高い室内湿度になるような運転条件を決定する。
このように運転条件決定部56が、温冷感算出部54によって算出される温冷感値Tsが−2から+2までの範囲、好ましくは−1から+1までの範囲、すなわち快適範囲で維持されるような運転条件を決定する。このように運転条件決定部56によって決定された運転条件に基づいて運転制御部52が空気調和装置20の空調運転を実行する。これにより、ユーザWは、「暑い」または「寒い」と感じることなく、快適な空調環境で過ごすことができる。
ところで、図1に示すように、ユーザWが、例えば勉強などの知的作業を行っている場合、すなわち身体を実質的に動かすことなく集中している場合がある。この場合、数式7に示す温冷感算出式を用いて算出された温冷感である算出温冷感(温冷感値)と、ユーザWの実際の温冷感である主観温冷感が大きく異なることがある。
ここで、主観温冷感とは、ユーザW自身が感じる実際の温冷感である。一方後述する算出温冷感とは、各種検出手段で測定した値に基づいて推定する温冷感である。
図4は、集中状態のユーザの主観温冷感の変化と算出温冷感の変化とを示す図である。
図4に示すように、ユーザWが集中を要する知的作業を開始すると、すなわちユーザWが集中し始める(タイミングP1)と、その開始からしばらくした後(タイミングP2)、ユーザWの主観温冷感が上昇し始める。このとき、ユーザWは、身体全体ではなく、頭部が熱いと感じ始めている。なお、タイミングP1からタイミングP2までの所定の第1の時間PP1は、集中し始めてから集中力が最大になるまでの時間であって、個人差はあるものの13分〜16分の範囲で平均15分である。
ユーザWが主観温冷感として頭部が熱いと感じているとき(タイミングP2後)、図4に示すように、温冷感算出部54は、負の温冷感(温冷感値Ts)、すなわち「寒い」または「涼しい」温冷感を算出することがある。これは、上述したように、ユーザWの放熱量Hを算出するときに、ユーザWの表面温度tclを使用しているからである。具体的には、身体を実質的に動かすことなく集中している場合、時間の経過とともに身体全体への血液の流れが鈍くなり、その結果として、頭部を除く人体の表面全体、特に手先や足先の温度が低下する。そのような表面温度の低下に基づけば、温冷感算出部54は、負の温冷感値Ts、すなわち「寒い」または「涼しい」温冷感を算出する。したがって、図4に示すように、ユーザWの主観温冷感が上昇し始めるタイミングP2から、主観温冷感と温冷感算出部54によって算出された算出温冷感との間の差が拡大し始める。
図4に示すように主観温冷感と異なる温冷感算出部54によって算出された算出温冷感に基づけば、ユーザWが「暑い」と感じているにもかかわらず、温冷感を上昇させる、例えば室内温度を上昇させる空調運転が実行される。その結果、ユーザWは不快に感じ、その集中力が低下する。
この対処として、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、ユーザWが実質的に身体を動かすことなく集中して知的作業を行う場合、集中力が最大になるタイミングP2後、数式5に示す温冷感算出式(以下、「通常用」温冷感算出式と称する)ではなく、「集中用」温冷感算出式(第2の温冷感算出式)を使用するように構成されている。
「集中用」温冷感算出式は、下記式8のように表すことができる。
係数A、Bは、「通常用」温冷感算出式(数式7)の係数と同一である。kは、1以上の補正係数(例えば1.7)であって、これにより産熱量Bを通常時に比べて増加させている。その結果、表面温度tclと壁面温度trが同一であれば、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsは、「通常用」温冷感算出式(数式7)を用いて算出されたものに比べて高い値になる。
ユーザWがその頭部が熱いと感じ始めるタイミングP2以降において、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsに基づけば、運転条件決定部56は、ユーザWの温冷感を低下させる運転条件を決定しやすくなる。その結果、集中によってユーザWが「暑い」と感じているにもかかわらず、温冷感を上昇させる、例えば室内温度を上昇させる空調運転が実行されることが抑制される。また、集中によって「暑い」と感じているユーザWに対して、その温冷感を低下させる、例えば室内温度を下げる空調運転が実行され、それにより、ユーザWの集中を維持することができる。
このような「集中用」温冷感算出式(数式8)を用い始めるタイミングP2、すなわち集中力が最大に達したタイミングP2を知るためには、ユーザWが集中し始めるタイミングP1を知る必要がある。そこで、本実施の形態1の空気調和システム10は、集中モード運転をユーザWに提供するように構成されている。
具体的には、空気調和システム10は、ユーザWが集中モード運転の開始を空気調和装置20に指示するための指示入力部を有する。本実施の形態1の場合、指示入力部は、リモートコントローラ46である。例えば、リモートコントローラ46は、「集中モード」ボタンを備える。なお、集中モード運転の開始時刻を入力することにより、集中モード運転の開始を予約できるようにしてもよい。また、リモートコントローラ46は、空気調和装置20を操作する専用のコントローラであってもよいし、ユーザWの携帯端末であってもよい。携帯端末である場合、空気調和装置20を操作するためのソフトウェアが携帯端末にインストールされる。
ユーザWがリモートコントローラ46を介して空気調和装置20に集中モード運転の開始を指示すると、空気調和装置20は、その指示タイミングをユーザWが集中し始めるタイミングP1とし、集中モード運転を開始する。その集中モード運転について具体的に説明する。
図5は、集中モード運転開始後のユーザの主観温冷感の変化と算出温冷感の変化とを示している。また、図6は、集中モード運転開始後のユーザの体温変化を示している。
図5に示すように、本実施の形態1の場合、集中モード運転が開始されると、空気調和装置20は、ユーザWの温冷感の低下させる予冷運転、例えば室内温度を低下させる空調運転を実行する。予冷運転として、例えば、所定の第2の時間PP2(例えば3〜5分間)が経過するまでに、集中モード運転の開始タイミングP1における設定温度に比べて3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。この予冷運転により、ユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進することができる。
予冷運転の完了後、空気調和装置20は、予冷運転によって低下したユーザWの温冷感を維持する、例えば予冷運転完了後の室内温度を維持する空調運転を実行する。
集中モード運転の開始タイミングP1後、所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsに基づく集中維持運転を開始する。この集中維持運転は、集中モード運転の一部である。したがって、図5に示す温冷感算出部54によって算出された算出温冷感は、所定の開始条件が成立する前は「通常用」温冷感算出式(数式7)を用いて算出されたものであって、所定の開始条件が成立した後は「集中用」温冷感算出式を用いて算出されたものである。また、所定の開始条件は、ユーザWの集中力が最大に達したときに成立する条件である。本実施の形態1の場合、所定の開始条件は、集中モード運転の開始タイミングP1から所定の第1の時間PP1、例えば15分経過すると成立する、すなわちタイミングP2が発生すると成立する。
所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、集中維持運転として、例えば、温冷感算出部54が「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出する温冷感値Tsが−0.5から0の間で維持される空調運転を実行する。これにより、図6に示すように、集中力が最大に達することによって体温が上昇し始めたユーザW、すなわち「暑い」と感じ始めたユーザWに対して「やや涼しい」温冷感を維持するための空調運転が実行される。なお、ここで言う「体温」は、上述したようにユーザWの放熱量Hを算出するときに用いたユーザWの表面温度ではなく、ユーザWの内部温度、すなわちユーザWの身体表面に直接的に接触して測定される温度、例えば体温計などで測定できる温度を言う。
本実施の形態では、例えば、「集中用」温冷感算出式(数式8)と「通常用」温冷感算出式(数式7)とを記憶部58に記憶している。所定の開始条件が成立すると、温冷感算出部54で使用する数式を「通常用」温冷感算出式(数式7)から「集中用」温冷感算出式(数式8)へ変更するものを実行する。
なお、例えば、温冷感算出部54が温冷感算出式(下記式9)を実行するものであり、記憶部58に記憶された係数l(エル)を取得するものであってもよい。
ここで、記憶部58は、「通常用」温冷感算出式(数式7)に対応する係数lとして1と、「集中用」温冷感算出式(数式8)に対応する係数lとして係数kを記憶する。温冷感算出部54は、記憶部58から係数lを取得し、温冷感算出式(数式9)を組み立てて実行する。
このような集中モード運転により、空調によってユーザWの集中が妨害されずに、ユーザWの集中力は、スムーズに上昇し、最大に達した後はその状態を維持される。
次に、空気調和装置20の集中モード運転時における動作の流れについて説明する。
図7は、空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャート図である。
図7に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
ステップS100において、空気調和装置20は、集中モード運転開始時の室内Sの室内温度が設定温度に比べて低い温度であるか否かを判定する。低い場合には、ステップS110に進む。そうでない場合はステップS150に進む。
ステップS110において、空気調和装置20は、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。これにより、室内温度が設定温度より低い温度になり、ユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進する。
ステップS110での予冷運転が完了すると、ステップS120において、空気調和装置20は、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、ユーザWの温冷感を維持する空調運転を実行する。この空調運転は、所定の開始条件が成立するまで、すなわち集中モード運転が開始されてから15分経過するまで継続される。
集中モード運転が開始されてから15分経過すると(集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立すると)、ステップS130において、空気調和装置20は、集中維持運転を開始する。すなわち、「集中用」温冷感算出式(数式6)を用いて算出される温冷感を「やや涼しい」(温冷感値Tsを−0.5から0の範囲)で維持する空調運転を、集中維持運転として開始する。これにより、最大になったユーザWの集中力が維持される。
ステップS140において、空気調和装置20は、集中モード運転を終了するフラグが発生したか否かを判定する。この運転終了フラグは、例えは、ユーザが集中モード運転の終了や駆動停止を空気調和装置20にリモートコントローラ46を介して指示したときに発生する。なお、集中モード運転の継続時間をユーザが設定し、集中モード運転の開始からその設定された継続時間が経過すると運転終了フラグが発生するように空気調和装置20は構成されてもよい。運転終了フラグが発生すると、空気調和装置20は、集中モード運転を終了する。集中モード運転の終了後は、空気調和装置20は、集中モード運転開始直前の空調運転を開始してもよいし、駆動停止してもよい。
ステップS100で集中モード運転開始時の室内Sの室内温度が設定温度に比べて低い温度ではないと判定された場合、ステップS150において、空気調和装置20は、集中モード運転を開始してから15分間で、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を完了することが可能か否かを判定する。例えば、室内温度と設定温度との間の温度差、現時点での圧縮機30の出力などに基づいて判定する。15分間での予冷運転の完了が可能である場合には、ステップS160に進んで15分間の予冷運転を実行し、その予冷運転の終了後にステップS130に進む。一方、15分間での予冷運転の完了が不可能である場合には、ステップS170に進む。
ステップS170において、空気調和装置20は、15分間で室内温度を設定温度より1℃低い温度にする空調運転を実行する。その空調運転の完了後、ステップS130に進む。
以上のような本実施の形態1によれば、ユーザの集中力の低下を抑制しつつ該ユーザに対して快適な空調を提供することができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態2は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態2について説明する。
図4に示すように、「通常用」温冷感算出式(数式5)を用いて算出される温冷感(温冷感値)は、集中維持運転を開始すべきタイミングP2、すなわちユーザWの集中力が最大に達したタイミングP2から低下し始める。したがって、「通常用」温冷感算出式を用いて算出される温冷感をモニタリングし、その温冷感が低下し始めるタイミングを、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立するタイミングとみなすことができる。例えば、「通常用」温冷感算出式を用いて算出される温冷感値の単位時間あたりの低下量が所定のしきい値を超えると、所定の開始条件が成立し、「集中用」温冷感算出式を用いて算出された温冷感に基づく集中維持運転が開始される。具体例として、1分間あたり6つの温冷感値をサンプリングし、前半3つの温冷感値の平均値(前半平均値)と後半3つの温冷感値の平均値(後半平均値)とを算出する。この前半平均値と後半平均値との差が、所定の値(例えば1)以上である場合に、所定の開始条件が成立する。
次に、本実施の形態2に係る空気調和システムの空気調和装置における集中モード運転時の動作の流れについて説明する。
図8は、本実施の形態2に係る空気調和システムの空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャート図である。
図8に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
まず、ステップS200において、空気調和装置は、集中モード運転開始時の室内温度が設定温度に比べて低い温度であるか否かを判定する。低い場合には、ステップS210に進む。そうでない場合はステップS270に進む。
ステップS210において、空気調和装置は、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。
ステップS220において、空気調和装置は、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、ユーザWの温冷感を維持する空調運転を開始する。
ステップS230において、空気調和装置は、「通常用」温冷感算出式(数式5)を用いて温冷感(温冷感値)を算出する。
ステップS240において、空気調和装置は、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しているか否か、温冷感(温冷感値)の単位時間あたりの低下量が所定のしきい値を超えているか否かを判定する。超えている場合には、ステップS250に進む。そうでない場合はステップS230に戻る。
ステップS250において、空気調和装置は、集中維持運転を開始する。すなわち、「集中用」温冷感算出式(数式6)を用いて算出される温冷感を「やや涼しい」(温冷感値Tsを−0.5から0の範囲)で維持する空調運転を、集中維持運転として開始する。
ステップS260において、空気調和装置は、集中モード運転を終了するフラグが発生したか否かを判定する。運転終了フラグが発生すると、空気調和装置は、集中モード運転を終了する。
ステップS200で集中モード運転開始時の室内温度が設定温度に比べて低い温度ではないと判定された場合、ステップS270において、空気調和装置は、集中モード運転を開始してから15分間で、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を完了することが可能か否かを判定する。可能である場合には、ステップS280に進んで15分間の予冷運転を実行し、その予冷運転の終了後にステップS230に進む。一方、15分間での予冷運転の完了が不可能である場合には、ステップS290に進む。
ステップS290において、空気調和装置は、15分間で室内温度を設定温度より1℃低い温度にする空調運転を実行する。その空調運転の完了後、ステップS230に進む。
以上のような本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、ユーザの集中力の低下を抑制しつつ該ユーザに対して快適な空調を提供することができる。
(実施の形態3)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態3は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態3について説明する。
図6に示すように、ユーザの体温は、集中維持運転を開始すべきタイミングP2、すなわちユーザWの集中力が最大に達したタイミングP2の直前から上昇し始める。したがって、ユーザの体温をモニタリングし、そのモニタリング中の体温が、運転モード運転の開始時の体温から所定の温度Δtb上昇したタイミングを、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立するタイミングとみなすことができる。
なお、ユーザの体温のモニタリングは、ユーザの身体に装着可能な、例えば体温センサ付きのウェラブル端末によって行うことができる。すなわち、本実施の形態3に係る空気調和システムは、ユーザの体温を測定する体温測定部を含んでいる。
次に、本実施の形態3に係る空気調和システムの空気調和装置における集中モード運転時の動作の流れについて説明する。
図9は、本実施の形態3に係る空気調和システムの空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャート図である。
図9に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
まず、ステップS300において、空気調和装置は、集中モード運転開始時の室内温度が設定温度に比べて低い温度であるか否かを判定する。低い場合には、ステップS310に進む。そうでない場合はステップS370に進む。
ステップS310において、空気調和装置は、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。
ステップS320において、空気調和装置は、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、ユーザWの温冷感を維持する空調運転を開始する。
ステップS330において、空気調和システムの体温測定部(例えばウェラブル端末)は、ユーザの体温を測定する。
ステップS340において、空気調和装置は、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しているか否か、すなわちユーザの体温が集中運転モード開始時の体温からの体温上昇量が所定のしきい値を超えているか否かを判定する。超えている場合には、ステップS350に進む。そうでない場合はステップS330に戻る。
ステップS350において、空気調和装置は、集中維持運転を開始する。すなわち、「集中用」温冷感算出式(数式6)を用いて算出される温冷感を「やや涼しい」(温冷感値Tsを−0.5から0の範囲)で維持する空調運転を、集中維持運転として開始する。
ステップS360において、空気調和装置は、集中モード運転を終了するフラグが発生したか否かを判定する。運転終了フラグが発生すると、空気調和装置は、集中モード運転を終了する。
ステップS300で集中モード運転開始時の室内温度が設定温度に比べて低い温度ではないと判定された場合、ステップS370において、空気調和装置は、集中モード運転を開始してから15分間で、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を完了することが可能か否かを判定する。可能である場合には、ステップS380に進んで15分間の予冷運転を実行し、その予冷運転の終了後にステップS330に進む。一方、15分間での予冷運転の完了が不可能である場合には、ステップS390に進む。
ステップS390において、空気調和装置は、15分間で室内温度を設定温度より1℃低い温度にする空調運転を実行する。その空調運転の完了後、ステップS330に進む。
以上のような本実施の形態3によれば、上述の実施の形態1と同様に、ユーザの集中力の低下を抑制しつつ該ユーザに対して快適な空調を提供することができる。
以上、上述の3つの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
例えば、上述の実施の形態1の場合、図5に示すように、集中モード運転の開始後(タイミングP1後)、ユーザの集中力の上昇を促すためにユーザの温冷感を低下させる予冷運転が実行される。例えば、予冷運転として、設定温度より3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、集中モード運転開始タイミング時の室内温度が低い場合、例えばユーザが「寒い」または「涼しい」と感じるような室内温度である場合、予冷運転を実行してユーザの温冷感をさらに低下させると、かえってユーザの集中を妨げる場合がある。したがって、例えば、集中モード運転開始時に温冷感算出部によって算出された温冷感値がゼロ以上である場合には予冷運転を実行し、温冷感値が負の値である場合には予冷運転を実行しないようにしてもよい。
また、上述の実施の形態1の場合、温冷感算出式(数式5および数式6)に含まれる産熱量Bは、予め実験的に求められた定数である。これに代わって、ユーザの産熱量を算出してもよい。ユーザの産熱量は、例えば、脈拍に基づいて算出可能である。具体的には、脈拍からユーザの呼吸量、すなわち産熱量に相当する代謝量を算出することができる。この場合、ユーザの脈拍を測定する脈拍センサを空気調和システムは含んでいる。
さらに、上述の実施の形態2および3の場合、図8および図9に示すように、集中モード運転を開始してから15分経過する前に、ステップS250およびS350のユーザの温冷感を低下させる集中維持運転を開始する可能性がある。15分経過する前に集中維持運転を開始すると、集中力が最大に達していない状態、すなわち「暑い」と感じていないユーザの温冷感を低下させることなり、ユーザの集中力が低下する可能性がある。そこで、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しても集中モード運転を開始してから13分経過していないときは、15分経過するまで集中維持運転の開始を遅らせるようにしてもよい。また、これと異なり、集中モード運転を開始してから15分経過しても集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しない場合には、17分経過後に強制的に集中維持運転を開始してもよい。
さらに、上述の実施の形態1の場合、ユーザの温冷感を算出するために必要な該ユーザの表面温度は、赤外線センサによって検出されているが、本発明の実施の形態は、その表面温度の検出方法を問わない。また、ユーザの温冷感を算出するためにユーザの表面温度が使用されるが、例えばユーザの着衣量などの生体情報から温冷感を算出することも可能である。
すなわち、室内Sの温熱環境、具体的には温度、湿度、ユーザ位置における気流、放射温度、活動量(体動)のうち、少なくとも一つを含む情報と、ユーザの着衣量がわかればユーザの温冷感は推定可能である。この際も、知的活動を実施しているか否かで温冷感算出式を変更することにより、正確に温冷感を推定することができる。着衣量の検出には、空気調和装置の制御装置と通信可能なカメラによる画像解析や、圧力センサや電子タグなどを具備しユーザの着衣量を発信する機能を備えた着衣、特定波長の光を放出しその反射強度を検出することによる着衣量推定などの方法を用いることができる。
さらにまた、ある実施の形態の少なくとも一部に対して別の少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。