本発明の一態様の空気調和システムは、ユーザが存在する室内の空調を行う空気調和システムであって、複数の運転モードの空調運転を実行する空気調和装置と、室内空気の空気質を改善する空気質改善装置と、前記ユーザが前記空気調和装置に前記運転モードの変更の指示をするための指示入力部と、を有し、前記空気調和装置は、前記空調運転として、前記空気質改善装置が、前記指示入力部による前記運転モードの変更後において、前記指示入力部による前記運転モードの変更前における出力に比べて低い出力で駆動する集中モード運転を実行する。
このような態様によれば、ユーザが集中するための空調と空気質改善を提供することができる。
例えば、前記空気調和システムが、前記室内空気の空気質を測定する空気質測定センサをさらに有し、前記空気質測定センサによって測定された空気質が所定のしきい値未満で良好である場合、前記集中モード運転の開始から所定の時間が経過するまで、前記空気質改善装置の出力をオフにしてもよい。これにより、集中しやすい環境をユーザに提供することができる。
例えば、前記空気質測定センサによって測定された空気質が所定のしきい値を超えている場合、前記集中モード運転の開始から前記所定の時間が経過するまで、前記空気質改善装置の出力が段階的または連続的に増加してもよい。これにより、良好な空気質の室内空気を集中途中のユーザに提供することができる。
例えば、前記所定の時間は、前記集中モード運転の開始から13分から17分間としてもよい。
例えば、前記空気調和システムが、前記空気質測定センサと前記空気質改善装置との組み合わせとして、前記室内の有害物質の濃度を測定する有害物質センサと前記有害物質センサの測定結果に基づいて駆動して前記室内にイオンを供給するイオン発生装置との第1の組み合わせ、前記室内の微粒子の濃度を測定する微粒子センサと前記微粒子センサの測定結果に基づいて駆動して前記微粒子を捕集する空気清浄装置との第2の組み合わせ、および、前記室内の所定のガスのガス濃度を測定するガスセンサと前記ガスセンサの測定結果に基づいて駆動して前記室内を換気する換気装置との第3の組み合わせ、の少なくとも2つを有してもよい。
例えば、前記空気調和システムが前記第1および第2の組み合わせを少なくとも有し、前記集中モード運転の開始から前記所定の時間が経過するまでの期間において、前記有害物質センサおよび前記微粒子センサそれぞれの測定結果に基づけば前記イオン発生装置と前記空気清浄装置の両方が駆動する場合、前記イオン発生装置が、前記空気清浄装置に対して優先的に駆動してもよい。これにより、イオン発生装置と空気清浄装置の両方が同時に駆動してユーザの集中を妨げることが抑制される。
例えば、前記空気調和システムが前記第1および第3の組み合わせを少なくとも有し、前記集中モード運転の開始から前記所定の時間が経過するまでの期間において、前記有害物質センサおよび前記ガスセンサそれぞれの測定結果に基づけば前記イオン発生装置と前記換気装置の両方が駆動する場合、前記イオン発生装置が、前記換気装置に対して優先的に駆動してもよい。これにより、イオン発生装置と換気装置の両方が同時に駆動してユーザの集中を妨げることが抑制される。
例えば、前記空気調和システムが前記第2および第2の組み合わせを少なくとも有し、前記集中モード運転の開始から前記所定の時間が経過するまでの期間において、前記微粒子センサおよび前記ガスセンサそれぞれの測定結果に基づけば前記空気清浄装置と前記換気装置の両方が駆動する場合、前記空気清浄装置が、前記換気装置に対して優先的に駆動してもよい。これにより、空気清浄装置と換気装置の両方が同時に駆動してユーザの集中を妨げることが抑制される。
例えば、前記空気質改善装置は、前記集中モード運転の開始タイミング前から駆動している場合、前記集中モード運転の開始タイミングに出力を低下あるいは停止させてもよい。これにより、集中しやすい環境をユーザに提供することができる。
例えば、前記空気質改善装置は、前記集中モード運転の開始から6分経過するまでの出力が、6分経過後から前記集中維持運転が開始するまでの出力に比べて低くてもよい。これにより、空気質改善装置によって集中し始めたばかりのユーザの集中が妨げられることが抑制される。
例えば、前記指示入力部が、前記集中モード運転の開始を予約入力可能に構成され、前記空気質改善装置は、予約入力された前記集中モード運転の開始前から前記集中モード運転の開始まで駆動してもよい。これにより、集中モード運転中での空気質改善装置の駆動が抑制され、空気質改善装置によってユーザの集中が妨げられることが抑制される。
例えば、前記空気調和システムは、前記ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部、を有し、前記生体情報から第1の温冷感算出式または第2の温冷感算出式を用いて前記ユーザの温冷感値を算出する。前記空気調和装置は、算出された温冷感値が快適範囲で維持されるように空調運転を実行し、前記集中モード運転の開始後、所定の開始条件が成立すると、前記第2の温冷感算出式を用いて算出された温冷感値に基づく集中維持運転を開始する。そして、前記生体情報が同一である場合、前記第2の温冷感算出式が、前記第1の温冷感算出式に比べて高い温冷感値を算出するように構成されている。これにより、集中維持運転において、集中によって「暑い」と感じているユーザの温冷感を低下させることができる。
例えば、前記所定の開始条件は、前記集中モード運転の開始後、前記第1の温冷感算出式を用いて算出された温冷感値の単位時間あたりの低下量が所定のしきい値を超えると成立する条件であってもよい。
例えば、前記所定の開始条件は、前記集中モード運転の開始タイミングから前記所定の時間経過すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記空気調和システムは、前記ユーザの体温を測定する体温測定部を有し、前記所定の開始条件は、前記ユーザの体温が前記集中モード運転開始時の体温から所定の温度上昇すると成立する条件であってもよい。
本発明の別態様の空気調和方法は、ユーザが存在する室内の空調を行う空気調和方法であって、空気調和装置が複数の運転モードの空調運転を実行し、空気質改善装置が室内空気の空気質を改善し、前記空気調和装置が前記ユーザからの指示を受けて運転モードを経変更し、前記空気調和装置は、前記空調運転として、前記空気質改善装置が、前記ユーザからの指示による前記運転モードの変更後において、前記ユーザからの指示による前記運転モード変更前における出力に比べて低い出力で駆動する集中モード運転を実行する。
このような態様によれば、ユーザが集中するための空調と空気質改善を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和システムを概略的に示している。図2は、空気調和システムにおける空気調和機の構成を概略的に示している。
図1に示すように、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、ユーザUが存在する室内Rinの空調を行うシステムであって、特に集中して勉強などの知的作業を行うユーザUに対して快適な空調を提供可能に構成されている。
そのために、空気調和システム10は、室内Rinの空調を行う空気調和装置20を有する。
図2に示すように、本実施の形態1の場合、空気調和装置20は、室内機22と室外機24とを有する。図1に示すように、空気調和装置20の室内機22は、室内Rinに設置される。室外機24は、その室外に設置される。空気調和装置20のユーザUは、室内機22が設置された室内Rinに存在する。
図2に示すように、空気調和装置20は、室内機22に設けられた室内熱交換器26と、室外機24に設けられた室外熱交換器28と、冷媒を圧縮する圧縮機30と、冷媒の流れ方向を切り換える四方弁32と、冷媒を減圧する膨張弁34と、これらを接続する冷媒配管36とを有する。また、室内機22には、室内熱交換器26と熱交換した後の空気を室内に送風する室内ファン38と、室内機22から送出される空気(気流AF)の向きを変更する上下ルーバー40、左右ルーバー42とが設けられている。さらに、室外機24には、室外熱交換器28と熱交換した後の空気を屋外に送風する室外ファン44が設けられている。
図2は、冷房運転時の空気調和装置20の状態を示している。冷房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室外熱交換器28、膨張弁34、室内熱交換器26、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。一方、暖房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室内熱交換器26、膨張弁34、室外熱交換器28、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。
室内ファン38は、冷房運転時には室内熱交換器26との熱交換によって冷やされた空気を室内Rinに向かって送風し、暖房運転時には室内熱交換器16との熱交換によって温められた空気を送風する。
上下ルーバー40および左右ルーバー42は、室内機22から室内Rinに向かって送風される気流AF(室内熱交換器26と熱交換した後の空気)の向きを上下方向および左右方向について変更する。
また、空気調和システム10は、室内空気の空気質を改善する空気質改善装置を含んでいる。本実施の形態1の場合、空気調和システム10は、空気質改善装置として、室内にイオンを供給するイオン発生装置と、室内に漂う微粒子を捕集する空気清浄装置と、室内空気を換気する換気装置とを含んでいる。
これらのイオン発生装置、空気清浄装置、および換気装置は、本実施の形態1の場合、空気調和装置20に組み込まれている。なお、本実施の形態では空気調和装置20に組み込まれたものを開示するが、これら各種装置が空気調和装置20の外部に設けられていてもよい。例えば、イオン発生装置と空気清浄装置が空気調和装置20に組み込まれており、換気装置は室内Rinと室外との空気を入れ替える換気扇として室内Rinの壁面あるいは天井面に設けられていてもよい。また、空気質改善装置として開示した各種装置は1つと限らない。例えば、空気清浄装置が空気調和装置と加湿器の両方に設けられていてもよい。
図3および図4は、空気調和装置(室内機)の内部構成を概略的に示す断面図である。図3は左右方向に見た断面図であって、図4は上下方向に見た断面図である。
図3に示すように、イオン発生装置50は、空気調和装置20の室内機22に搭載されている。イオン発生装置50は、具体的には水分に高電圧をかけてイオンを発生するものである。例えばOHラジカルを含む微粒子イオンを発生するように構成されている。また、室内ファン38もイオン発生装置50に含まれる。イオン発生装置50は、室内ファン38と吹き出し口22aとの間の流路22bに対面するように配置されている。これにより、流路22bを流れる気流AFに向かってイオン発生装置50から発生したイオンが誘引される。その結果、イオンは、気流AFに同伴して室内Rinに供給される。
このようなイオン発生装置50から発生して室内に供給されるイオンにより、室内を漂う有害物質がユーザに与える影響が低減される。例えば、カビや細菌の増殖が抑制され、アレルギ物質、花粉などがその機能を低減され、悪臭が消臭される。その結果、室内空気の空気質が改善される。
また、イオン発生装置50は、図2に示すように、空気調和装置20の室内機22に空気質測定センサとして設けられた有害物質センサ52の測定結果に基づいて駆動する。この有害物質センサ52は、室内Rinの有害物質の濃度を測定するセンサであって、例えば、カビセンサ、細菌センサ、アレルギ物質センサ、花粉センサ、悪臭センサなどである。有害物質センサ52によって測定される有害物質の濃度が高いほど、より多くのイオンが室内Rinに供給されるように、高出力でイオン発生装置50は駆動する。すなわち、室内Rinのイオン濃度を高めるために、イオン発生量が増加するおよび/または室内ファン38の回転数が増加する(設定温度を維持するための回転数から増加する)。
なお、室内へのイオン供給は、室内ファン38が回転していれば、空調を停止した状態で、すなわち圧縮機30を停止した状態でも可能である。
図3に示すように、空気清浄装置54が、空気調和装置20の室内機22に搭載されている。本実施の形態1の場合、空気清浄装置54は、空気清浄フィルタ56と、空気清浄フィルタ56を進退させるモータなどの動力源(図示せず)とを備える。また、室内ファン38も、空気清浄装置54に含まれる。空気清浄フィルタ56は、動力源により、空気調和装置20の室内機22の吸い込み口22cを覆う位置(空気清浄位置)と室内機22に格納される位置(格納位置)との間で進退する。
空気清浄フィルタ56が空気清浄位置に配置されているとき、室内ファン38の回転によって吸い込み口22cに向かう室内空気Ar内のカビ、細菌、アレルギ物質、花粉、PM2.5、ほこりなどの微粒子が空気清浄フィルタ56に捕集される。それにより、清浄化された室内空気Arが、吸い込み口22c、フィルタ48、室内熱交換器26、吹き出し口22aを経て、気流AFとして室内Rinに戻る。その結果、室内空気の空気質が改善される。
また、空気清浄装置54は、図2に示すように、空気調和装置20の室内機22に空気質測定センサとして設けられた微粒子センサ58の測定結果に基づいて駆動する。この微粒子センサ58は、室内Rinの微粒子濃度を測定するセンサであって、例えば、カビセンサ、細菌センサ、アレルギ物質センサ、花粉センサ、PM2.5センサ、ほこりセンサなどである。微粒子センサ58によって測定される微粒子の濃度が高いほど、より多くの微粒子が捕集されるように、高出力で空気清浄装置54は駆動する。すなわち室内ファン38の回転数が増加する(設定温度を維持するための回転数から増加する)。
なお、空気清浄装置54が駆動していない場合、空気清浄フィルタ56は待機位置で待機し、室内空気Arがそのまま吸い込み口22cを介して室内機22内に流入する。また、空気清浄は、室内ファン38が回転していれば、空調を停止した状態で、すなわち圧縮機30を停止した状態でも可能である。
図4に示すように、換気装置60が空気調和装置20の室内機22に搭載されている。本実施の形態1の場合、換気装置60は、室内機22内の空気を室外Routに排出することによって室内Rinを換気する。そのために、換気装置60は、換気ファン62と、室内Rinと室外Routとを隔てる壁Wを貫通する貫通ダクト64とを備える。換気ファン62の回転によって室内機22の内部から貫通ダクト64を経て室外Routに向かう空気の流れが発生し、それにより室内空気が室外Routに排出される。その結果、室内空気が入れ換えられ、室内空気の空気質が改善される。
また、換気装置60は、図2に示すように、空気調和装置20の室内機22に空気質測定センサとして設けられたガスセンサ66の測定結果に基づいて駆動する。このガスセンサ66は、室内空気中の所定のガス、例えば二酸化炭素や一酸化炭素などの濃度を測定する。ガスセンサ66によって測定されるガス濃度が高いほど、より多くの室内空気を入れ換えるために、高出力で換気装置60は駆動する。すなわち換気ファン62の回転数が増加する。
なお、換気は、室内ファン38および圧縮機30が停止した状態でも可能である。
図5は、空気調和システムのブロック図である。
図5に示すように、空気調和システム10は、リモートコントローラ70と、空気調和装置20と、それに搭載されたイオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60を制御する制御装置72を有する。なお、本実施の形態1の場合、空気調和システム10の制御装置72は、空気調和装置20自体の制御装置である。また、空気調和システム10は、リモートコントローラ70を有する。
なお、本実施の形態では、空気質測定センサとして、有害物質センサ52と、微粒子センサ58と、ガスセンサ66とを備えているが、空気質測定センサとしてこれらに限定しない。すなわち、空気質として、ウイルス、カビ、細菌、タバコの煙、PM2.5、花粉、ホコリのうち少なくとも1つを測定できればよい。
リモートコントローラ70は、空気調和システム10の指示入力部として機能し、ユーザUが空気調和装置20を遠隔操作するためのコントローラである。また、リモートコントローラ70は、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60を遠隔操作するためのコントローラでもある。
制御装置72は、例えば、空気調和装置20の室内機22に搭載された回路基板であって、プログラムなどが記憶されたメモリなどの記憶装置と、記憶デバイスに記憶されたプログラムにしたがって動作するCPUなどのプロセッサとを備える。これにより、制御装置72は、プロセッサがプログラムにしたがって動作することにより、下記の動作を実行することができる。なお、制御装置72は空気調和装置20の外部に設けてもよい。例えば、制御装置72をサーバに設け、各種センサから得られた情報を無線通信等でサーバへ送り、制御装置72で処理した駆動条件を各種空気質改善装置で実施するものでもよい。
図3に示すように、制御装置72は、リモートコントローラ70に対するユーザUの指示入力に基づいて、圧縮機30、室内ファン38、上下ルーバー40、および左右ルーバー42を制御して室内Rinに対する空調運転を実行するように構成されている。例えば、リモートコントローラ70に対して設定温度が入力されると、制御装置72は、室内温度を設定温度で維持する空調運転を実行する。なお、そのために、室内温度を測定する温度センサ(図示せず)が、例えば室内機22に設けられている。
また、制御装置72は、リモートコントローラ70に対するユーザUの指示入力に基づいて、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60を制御するように構成されている。例えば、ユーザUがリモートコントローラ70に対して空気質の改善を指示入力すると、制御装置72が、有害物質センサ52、微粒子センサ58、およびガスセンサ66それぞれの測定結果に基づいて、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60を制御する。なお、ユーザUが、空気質の改善のために使用する装置を、これらの装置50、54、および60から選択することができるように、リモートコントローラ70を構成してもよい。
また、制御装置72は、ユーザUの温冷感に基づいて、室内Rinの空調を行うことが可能に構成されている。そのために、空気調和システム10は、赤外線センサ74を含んでいる。
赤外線センサ74は、例えばサーモパイルセンサであり、空気調和システム10の生体情報取得部として機能し、ユーザUの生体情報として該ユーザUの熱量を検出する。赤外線センサ74は、ユーザUを含む熱源から放射される赤外線を感知してこれらの熱量を検出するように構成されている。本実施の形態1の場合、赤外線センサ74は、空気調和装置20の室内機22に搭載されている。また、赤外線センサ74は、赤外線を感知する複数のセンサ素子を備え、室内Rinの熱量の分布を示す熱画像を検出結果として出力するように構成されている。例えば、64個のセンサ素子が8行8列のマトリックスに配置され、それらのセンサ素子の赤外線感知レベルに基づいて8×8の熱画像が作成される。
このような赤外線センサ74の検出結果に基づいて、制御装置72は、ユーザUの温冷感(値)を算出し、その算出された温冷感に基づいて運転条件を決定し、その決定された運転条件に基づいて空調運転を実行する。このユーザUの温冷感に基づく空調運転について説明する。
まず、ユーザUの温冷感とは、「暑い」、「暖かい」、「涼しい」、または「寒い」などの温度に関するユーザUの感覚を言う。本実施の形態1の場合、ユーザUの温冷感は、温冷感値Tsとして数値化されている。温冷感値Tsは、-4から+4の値であって、PMV(Predicted Mean Vote)に対応している。温冷感値Tsが-4から-2までの値である場合は「寒い」温冷感を表し、-2から0までは「涼しい」温冷感、0から+2までは「暖かい」温冷感、そして+2から+4までは「暑い」温冷感を表している。
制御装置72は、ユーザUの温冷感値Tsを算出するために、赤外線センサ74から取得した熱画像に基づいてユーザUの放熱量Hを算出する。
このユーザUの放熱量H、すなわち人体の放熱量Hは、下記の数式1のように表すことができる。
数式1において、Rは人体の放射による放熱量、Cは人体の対流による放熱量、Kは人体の伝導による放熱量を示している。また、Eskは皮膚からの水分蒸発による放熱量、Eresは呼気の水分蒸発による放熱量、Cresは呼気の対流による放熱量を示している。
衣類を含めた人体の表面温度をtcl、人体近傍の壁面温度をtr、人体の周囲温度をtaとすると、放熱量RおよびCは、下記の数式2および3のように表すことができる。
数式2および3において、hrは放射熱伝導率[W/m2℃]であって、hcは対流熱伝導率[W/m2℃]である。
なお、人体における床などとの接触面積が小さく、人体の伝導による放熱量Kが無視できるほど少なく、呼気からの対流による放熱量(Cres)が少ない場合には、式(1)を下記の数式4で表すことができる。
上記のように式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)は下記式(5)となる。
すなわち、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl-tr)と、人の表面温度(tcl)と周囲気温(ta)との差(tcl-ta)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
周囲気温(ta)には、空気調和機に搭載されている温度センサの検出値や、その検出値を運転状況や検知した人の状態により補正した値を採用することができる。
さらに、特に周囲気温(ta)と周囲の壁面温度(tr)がほぼ等しい(ta≒tr)場合、すなわち空調が充分安定した場合に於いては、式(1)を下記式(6)で表すことができる。
つまり、式(4)で表すことができる状態において、人が安静状態および人の活動量が小さい場合、皮膚からの水分蒸発による放熱量Esk、および呼気の水分蒸発による放熱量Eresが、略一定とみなせる状況であれば、式(4)の変数は(tcl-tr)のみとなる。
このため、人が安静状態および人の活動量が小さい場合であり、かつ空調運転が充分安定した状態に於いては、人の表面温度(tcl)と壁面温度(tr)との差(tcl-tr)が分かれば、その人の放熱量(H)を推定することが可能となる。
人の放熱量(H)とその人の代謝量(産熱量M)が釣り合っていれば(H=M)、その人の熱収支のバランスがとれており、その人は快適と感じていると推定できる。一方、放熱量(H)が代謝量(産熱量M)より大きければ(H>M)、その大きさの程度に応じてその人は寒く感じており、逆に放熱量(H)が代謝量より小さければ(H<M)、その人は暑く感じていると推定できる。
したがって、人が安静状態および人の活動量が小さい場合においては、周囲気温(ta)と、赤外線センサ48であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
さらには、空調運転が充分安定した状態においては、赤外線センサ48であるサーモパイルセンサから得られた熱画像情報から人の表面温度(tcl)と、周囲の壁面温度(tr)とを抽出して、その人の放熱量(H)を検知することにより、その人の「温冷感」を非接触で検知することが可能となる。
以上のことから、温冷感値Tsは、下記式(7)に示す温冷感算出式(第1の温冷感算出式)を用いることにより、放熱量Hから算出することができる。
ここで、A、Bは係数であって、予め実験的に求められている。Aは、放熱量Hを補正する補正係数であって負の値である。Bは、人体の産熱量を係数をかけて無次元数にしたものであり、人体の産熱量に相当する。数式5に示すように、温冷感値Tsは、産熱量Bから補正された放熱量を減算したものである。したがって、温冷感値Tsが正の値である場合(0<Ts<+4)、ユーザUの産熱量に対して放熱量が足らず、ユーザUは「暖かい」または「暑い」と感じている。温冷感値Tsが負の値である場合(-4<Ts<0)、ユーザUの産熱量に対して放熱量が過剰であり、ユーザUは「涼しい」または「寒い」と感じている。
なお、係数A、Bそれぞれには、冬用(例えば10~3月)の値と夏用(例えば4~9月)の値とがあって、季節に応じて使い分けられる。また、夏用の値の場合、放熱量Hが所定のしきい値(例えば26.315)を越える場合の値と、放熱量Hが所定のしきい値を超えない場合の値とがある。
制御装置72は、温冷感算出式(数式5)を用いて、室内Rinに存在するユーザUの温冷感値Tsを算出する。また、定期的に温冷感値Tsを算出することにより、ユーザUの温冷感がモニタリングされている。
制御装置72は、算出されたユーザUの温冷感値Tsに基づいて、具体的には温冷感値Tsが快適範囲で維持されるように空気調和装置20の空調運転の運転条件を決定する。
例えば、温冷感値Tsがゼロから+2に近づくと、すなわちユーザUの温冷感が「暑い」にならないように、そのユーザUの温冷感を低下させるための運転条件を決定する。例えば、設定温度に比べて数℃低い室内温度になるような運転条件を決定する。冷房運転を実行している場合、圧縮機30の出力を上げる、室内ファン38の回転数を上げるなどの運転条件を決定する。暖房運転の場合、圧縮機30の出力を下げる、室内ファン38の回転数を下げるなどの運転条件を決定する。また例えば、現在の室内湿度に比べて低い室内湿度になるような運転条件を決定する。
また例えば、温冷感値Tsがゼロから-2に近づくと、即ちユーザUの温冷感が「寒い」にならないように、そのユーザUの温冷感を上昇させるための運転条件を決定する。例えば、設定温度に比べて数℃高い室内温度になるような運転条件を決定する。冷房運転を実行している場合、圧縮機30の出力を下げる、室内ファン38の回転数を下げるなどの運転条件を決定する。暖房運転の場合、圧縮機30の出力を上げる、室内ファン38の回転数を上げるなどの運転条件を決定する。また例えば、現在の室内湿度に比べて高い室内湿度になるような運転条件を決定する。
このように、温冷感値Tsが-2から+2までの範囲、好ましくは-1から+1までの範囲、すなわち快適範囲で維持されるような運転条件が決定される。この決定された運転条件に基づいて制御装置72は空気調和装置20の空調運転を実行する。これにより、ユーザUは、「暑い」または「寒い」と感じることなく、快適な空調環境で過ごすことができる。
ところで、図1に示すように、ユーザUが、例えば勉強などの知的作業を行っている場合、すなわち身体を実質的に動かすことなく集中している場合がある。この場合、数式5に示す温冷感算出式を用いて算出された温冷感である算出温冷感(温冷感値)と、ユーザUの実際の温冷感である主観温冷感が大きく異なることがある。
ここで、主観温冷感とは、ユーザW自身が感じる実際の温冷感である。一方後述する算出温冷感とは、各種検出手段で測定した値に基づいて推定する温冷感である。
図6は、集中状態のユーザの主観温冷感の変化と算出温冷感の変化とを示す図である。
図6に示すように、ユーザUが集中を要する知的作業を開始すると、すなわちユーザUが集中し始める(タイミングP1)と、その開始からしばらくした後(タイミングP2)、ユーザUの主観温冷感が上昇し始める。このとき、ユーザUは、身体全体ではなく、頭部が熱いと感じ始めている。なお、タイミングP1からタイミングP2までの所定の第1の時間PP1は、集中し始めてから集中力が最大になるまでの時間であって、個人差はあるものの13分~17分の範囲で平均15分である。
ユーザUが主観温冷感として頭部が熱いと感じているとき(タイミングP2後)、図6に示すように、制御装置72は、負の温冷感(温冷感値Ts)、すなわち「寒い」または「涼しい」温冷感を算出することがある。これは、上述したように、ユーザUの放熱量Hを算出するときに、ユーザUの表面温度tclを使用しているからである。具体的には、身体を実質的に動かすことなく集中している場合、時間の経過とともに身体全体への血液の流れが鈍くなり、その結果として、頭部を除く人体の表面全体、特に手先や足先の温度が低下する。そのような表面温度の低下に基づけば、負の温冷感値Ts、すなわち「寒い」または「涼しい」温冷感が算出される。したがって、図6に示すように、ユーザUの主観温冷感が上昇し始めるタイミングP2から、主観温冷感と算出温冷感との間の差が拡大し始める。
図6に示すように主観温冷感と異なる算出温冷感に基づけば、ユーザUが「暑い」と感じているにもかかわらず、温冷感を上昇させる、例えば室内温度を上昇させる空調運転が実行される。その結果、ユーザUは不快に感じ、その集中力が低下する。
この対処として、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、ユーザUが実質的に身体を動かすことなく集中して知的作業を行う場合、集中力が最大になるタイミングP2後、数式5に示す温冷感算出式(以下、「通常用」温冷感算出式と称する)ではなく、「集中用」温冷感算出式(第2の温冷感算出式)を使用するように構成されている。
「集中用」温冷感算出式は、下記の数式8のように表すことができる。
係数A、Bは、「通常用」温冷感算出式(数式7)の係数と同一である。kは、1以上の補正係数(例えば1.7)であって、これにより産熱量Bを通常時に比べて増加させている。その結果、表面温度tclと壁面温度trが同一であれば、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsは、「通常用」温冷感算出式(数式7)を用いて算出されたものに比べて高い値になる。
ユーザUがその頭部が熱いと感じ始めるタイミングP2以降において、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsに基づけば、制御装置72は、ユーザUの温冷感を低下させる運転条件を決定しやすくなる。その結果、集中によってユーザUが「暑い」と感じているにもかかわらず、温冷感を上昇させる、例えば室内温度を上昇させる空調運転が実行されることが抑制される。また、集中によって「暑い」と感じているユーザUに対して、その温冷感を低下させる、例えば室内温度を下げる空調運転が実行され、それにより、ユーザUの集中を維持することができる。
このような「集中用」温冷感算出式(数式8)を用い始めるタイミングP2、すなわち集中力が最大に達したタイミングP2を知るためには、ユーザUが集中し始めるタイミングP1を知る必要がある。そこで、本実施の形態1の空気調和システム10は、集中モード運転をユーザUに提供するように構成されている。
具体的には、空気調和システム10は、ユーザUが集中モード運転の開始を空気調和装置20に支持するための指示入力部を有する。本実施の形態1の場合、指示入力部は、リモートコントローラ70である。例えば、リモートコントローラ70は、「集中モード」ボタンを備える。なお、集中モード運転の開始時刻を入力することにより、集中モード運転の開始を予約できるようにしてもよい。また、リモートコントローラ70は、空気調和装置20を操作する専用のコントローラであってもよいし、ユーザUの携帯端末であってもよい。携帯端末である場合、空気調和装置20を操作するためのソフトウェアが携帯端末にインストールされる。
ユーザUがリモートコントローラ70を介して空気調和装置20に集中モード運転の開始を指示すると、空気調和装置20は、その指示タイミングをユーザUが集中し始めるタイミングP1とし、集中モード運転を開始する。その集中モード運転について具体的に説明する。
図7は、集中モード運転開始後のユーザの主観温冷感の変化と算出温冷感の変化とを示している。また、図8は、集中モード運転開始後のユーザの体温変化を示している。
図7に示すように、本実施の形態1の場合、集中モード運転が開始されると、空気調和装置20は、ユーザUの温冷感の低下させる予冷運転、例えば室内温度を低下させる空調運転を実行する。予冷運転として、例えば、所定の第2の時間PP2(例えば3~5分間)が経過するまでに、集中モード運転の開始タイミングP1における設定温度に比べて3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。この予冷運転により、ユーザUに対して冷刺激を与え、ユーザUの集中力の上昇を促進することができる。
予冷運転の完了後、空気調和装置20は、予冷運転によって低下したユーザUの温冷感を維持する、例えば予冷運転完了後の室内温度を維持する空調運転を実行する。
集中モード運転の開始タイミングP1後、所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出された温冷感値Tsに基づく集中維持運転を開始する。この集中維持運転は、集中モード運転の一部である。したがって、図7に示す算出温冷感は、所定の開始条件が成立する前は「通常用」温冷感算出式(数式7)を用いて算出されたものであって、所定の開始条件が成立した後は「集中用」温冷感算出式を用いて算出されたものである。また、所定の開始条件は、ユーザUの集中力が最大に達したときに成立する条件である。本実施の形態1の場合、所定の開始条件は、集中モード運転の開始タイミングP1から所定の第1の時間PP1、例えば15分経過すると成立する、すなわちタイミングP2が発生すると成立する。
所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、集中維持運転として、例えば、「集中用」温冷感算出式(数式8)を用いて算出する温冷感値Tsが-0.5から0の間で維持される空調運転を実行する。これにより、図8に示すように、集中力が最大に達することによって体温が上昇し始めたユーザU、すなわち「暑い」と感じ始めたユーザUに対して「やや涼しい」温冷感を維持するための空調運転が実行される。なお、ここで言う「体温」は、上述したようにユーザUの放熱量Hを算出するときに用いたユーザUの表面温度ではなく、ユーザUの内部温度、すなわちユーザUの身体表面に直接的に接触して測定される温度、例えば体温計などで測定できる温度を言う。
このような集中モード運転により、空調によってユーザUの集中が妨害されずに、ユーザUの集中力は、スムーズに上昇し、最大に達した後はその状態を維持される。
このようなユーザUの温冷感を低下させる集中モード運転によってユーザが集中できる環境を提供することができる。その環境を、空気質改善装置(イオン発生装置50、空気清浄装置54、換気装置60)により、ユーザがより集中できる環境にすることも可能である。例えば、イオン発生装置50から発生したイオンによって花粉やアレルギ物質の影響を低減することにより、花粉症やアレルギ症のユーザの集中を維持することができる。例えば、空気清浄装置54によってほこりなどの微粒子を室内から除去することによってユーザが咳き込むことが抑制され、それによりユーザの集中を維持することができる。例えば、換気装置60によって室内空気を入れ換えて二酸化炭素濃度を低下させることにより、ユーザの集中を維持することができる。
ただし、集中モード運転中に、特に集中し始めに、空気質改善装置が駆動していると、ユーザUの集中(集中力の上昇)が妨げられる可能性がある。例えば、イオン発生装置50では、放電によってイオンを発生させる場合に放電音がユーザUの集中を妨げる可能性がある。空気清浄装置54では、図3に示すように空気清浄フィルタ56が吸い込み口22cを覆う位置に移動するときの動作音がユーザUの集中を妨げる可能性がある。また、空気清浄装置54の場合、空気清浄フィルタ56によって通風抵抗が増加し、それにより吹き出し口22aからの気流AFの風量が減少し、その結果としてユーザは温冷感が変化して集中を妨げられる可能性がある。換気装置60の場合、換気ファン62の回転音によってユーザUの集中が妨げられる可能性がある。また、換気装置60の場合、室内空気を室外に排出するために室内温度が変化し、その結果としてユーザは温冷感が変化して集中を妨げられる可能性がある。
そこで、本実施の形態1の空気調和システム10では、空気質改善装置は、集中モード運転の開始タイミングP1後において、集中維持運転開始タイミングP2前の出力が、その集中維持運転開始タイミングP2後の出力に比べて低くなるように駆動する。
図9は、空気質改善装置の出力の変化の一例を示している。
図9に示すように、集中モード運転の開始タイミングP1後において、ユーザUの集中力が最大になるタイミングである集中維持運転開始タイミングP2前の空気質改善装置の出力は、タイミングP2後に比べて低くされている。これは、タイミングP1で集中し始めてタイミングP2で集中力が最大になるまで、騒音の発生、温冷感の変化などがユーザUの集中力の上昇の妨げになりうるからである。集中力が最大になると(タイミングP2後は)、集中モード運転の開始タイミングP1前の出力に段階的にまたは連続的に戻る。
また、本実施の形態1の場合、図9に示すように、集中モード運転の開始タイミングP1前から空気質改善装置が駆動している場合、集中モード運転の開始タイミングP1と同時に、空気質改善装置は出力を低下させる。これにより、集中しやすい環境をユーザUに提供することができる。なお、集中モード運転の開始タイミングP1と同時に、停止状態の空気質改善装置が駆動を自動的に開始してもよい。
集中モード運転の開始タイミングP1から集中力が最大になる集中維持運転の開始タイミングP2までにおいて、集中し始め(集中モード運転の開始タイミングP1)から6分経過するまでの期間PP3の出力は、6分経過後の出力に比べて低くするのが好ましい。集中し始めてから6分経過するまでの期間PP3では、集中が切れやすく、また集中力はほとんど上昇しない。集中力は、この期間PP3を過ぎてから上昇し始める。したがって、集中力が上昇し始めるまでの期間PP3では、ユーザUが気を取られて集中できない状況を回避するために、出力を低くするのが好ましい。その結果、図9に示すように、集中し始めから集中力が最大になるまでは、空気質改善装置の出力は、段階的に増加する。なお、段階的に増加することに代わって、空気質改善装置の出力は連続的に増加してもよい。
集中し始めから集中力が最大になるまで、すなわち集中モード運転の開始タイミングP1から集中維持運転の開始タイミングP2まで、空気質改善装置の出力をオフにしてもよい(ゼロにしてもよい)。すなわち、空気質改善装置の駆動を一時停止してもよい。
図10は、空気質改善装置の出力の変化の別例を示している。
図10に示すように、集中モード運転の開始タイミングP1後、空気質改善装置は、駆動停止し、その出力がゼロになる。なお、集中モード運転の開始タイミングP1後に空気質改善装置の出力をオフにするか否かの判断を、空気質測定センサによって測定された空気質の値に基づいて行ってもよい。空気質が所定のしきい値未満で良好である場合に、空気質改善装置の出力をオフにしてもよい。例えば、有害物質センサ52によって測定された有害物質濃度が所定のしきい値未満である場合、イオン発生装置50の出力をオフにする。また例えば、微粒子センサ58によって測定された微粒子濃度が所定のしきい値未満である場合、空気清浄装置54の出力をオフにする。そして、ガスセンサ66によって測定された所定のガスの濃度が所定のしきい値未満である場合、換気装置60の出力をオフにする。すなわち、室内空気がある程度きれいである場合には、集中し始め(タイミングP1)から集中力が最大になる(タイミングP2)まで、空気質改善装置は一時停止する。それにより、集中しやすい環境をユーザUに提供し、ユーザUの集中力の上昇を優先させる。
なお、空気質が所定のしきい値を超えていて良好でない場合には、図9に示すように、空気質改善装置の出力を段階的または連続的に増加させる。
集中モード運転の開始タイミングP1から集中維持運転の開始タイミングP2までにおける図9および図10に示す空気質改善装置の2つの出力制御は、イオン発生装置50、空気清浄装置54、換気装置60それぞれに対して実行されてもよい。あるいは、図9に示す出力制御および図10に示す出力制御の一方のみが実行されてもよい。例えば、イオン発生装置50の場合、発生する騒音は、空気清浄装置54や換気装置60の騒音に比べて小さい。したがって、イオン発生装置50に対して、有害物質センサ52の測定結果にかかわらず、図9に示す出力制御、すなわち出力を段階的または連続的に増加させる制御を実行してもよい。一方、換気装置60の場合、発生する騒音が大きい。したがって、換気装置60に対して、ガスセンサ66の測定結果にかかわらず、図10に示す出力制御、すなわち出力をオフにする制御を実行してもよい。
集中モード運転の開始タイミングP1から集中維持運転の開始タイミングP2までの期間において、有害物質センサ52、微粒子センサ58、およびガスセンサ66の測定結果に基づけば、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60の少なくとも2つが同時に駆動する可能性がある。個々ではユーザUの集中の妨げにはならないものの、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60の少なくとも2つが同時に駆動すると、ユーザUの集中を妨げる可能性がある。
そこで、本実施の形態1の場合、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60は、干渉しあう場合がある。そこで、予め優先順位をつけることで、イオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60が互いに集中度の維持に関する効果において干渉しないようにしている。
まず、有害物質センサ52および微粒子センサ58それぞれの測定結果に基づけばイオン発生装置50と空気清浄装置54の両方が駆動する場合、イオン発生装置50が空気清浄装置54に対して優先的に駆動する。例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前にこれらの装置が駆動していない場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、イオン発生装置50のみが駆動を開始する。また例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前からこれらの装置が駆動している場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、空気清浄装置54のみが停止する。なお、集中維持運転開始タイミングP2までに有害物質の濃度が十分に低下すればイオン発生装置50を停止し、集中維持運転開始タイミングP2まで空気清浄装置54を駆動してもよい。
イオン発生装置50が空気清浄装置54に対して優先される理由は、空気清浄装置54が、イオン発生装置50に比べて騒音が大きく、またユーザの温冷感を大きく変化させうるからである。
また、有害物質センサ52およびガスセンサ66それぞれの測定結果に基づけばイオン発生装置50と換気装置60の両方が駆動する場合、イオン発生装置50が換気装置60に対して優先的に駆動する。例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前にこれらの装置が駆動していない場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、イオン発生装置50のみが駆動を開始する。また例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前からこれらの装置が駆動している場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、換気装置60のみが停止する。なお、集中維持運転開始タイミングP2までに有害物質の濃度が十分に低下すればイオン発生装置50を停止し、集中維持運転開始タイミングP2まで換気装置60を駆動してもよい。
イオン発生装置50が換気装置60に対して優先される理由は、換気装置60が、イオン発生装置50に比べて騒音が大きく、またユーザの温冷感を大きく変化させうるからである。
そして、微粒子センサ58およびガスセンサ66それぞれの測定結果に基づけば空気清浄装置54と換気装置60の両方が駆動する場合、空気清浄装置54が換気装置60に対して優先的に駆動する。例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前にこれらの装置が駆動していない場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、空気清浄装置54のみが駆動を開始する。また例えば、集中モード運転の開始タイミングP1前からこれらの装置が駆動している場合、集中モード運転の開始タイミングP1に、換気装置60のみが停止する。なお、集中維持運転開始タイミングP2までに微粒子濃度が十分に低下すれば空気清浄装置54を停止し、集中維持運転開始タイミングP2まで換気装置60を駆動してもよい。
空気清浄装置54が換気装置60に対して優先される理由は、換気装置60が、空気清浄装置54に比べて騒音が大きく、またユーザの温冷感を大きく変化させうるからである。
以上のような本実施の形態1によれば、ユーザが集中するための空調と空気質改善を提供することができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態2は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態2について説明する。
図6に示すように、「通常用」温冷感算出式(数式5)を用いて算出される温冷感(温冷感値)は、集中維持運転を開始すべきタイミングP2、すなわちユーザUの集中力が最大に達したタイミングP2から低下し始める。したがって、「通常用」温冷感算出式を用いて算出される温冷感をモニタリングし、その温冷感が低下し始めるタイミングを、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立するタイミングとみなすことができる。例えば、「通常用」温冷感算出式を用いて算出される温冷感値の単位時間あたりの低下量が所定のしきい値を超えると、所定の開始条件が成立し、「集中用」温冷感算出式を用いて算出された温冷感に基づく集中維持運転が開始される。具体例として、1分間あたり6つの温冷感値をサンプリングし、前半3つの温冷感値の平均値(前半平均値)と後半3つの温冷感値の平均値(後半平均値)とを算出する。この前半平均値と後半平均値との差が、所定の値(例えば1)以上である場合に、所定の開始条件が成立する。
以上のような本実施の形態2によれば、ユーザが集中するための空調と空気質改善を提供することができる。
(実施の形態3)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態3は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態3について説明する。
図8に示すように、ユーザUの体温は、集中維持運転を開始すべきタイミングP2、すなわちユーザUの集中力が最大に達したタイミングP2の直前から上昇し始める。したがって、ユーザUの体温をモニタリングし、そのモニタリング中の体温が、運転モード運転の開始時の体温から所定の温度Δtb上昇したタイミングを、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立するタイミングとみなすことができる。
なお、ユーザの体温のモニタリングは、ユーザの身体に装着可能な、例えば体温センサ付きのウェラブル端末によって行うことができる。すなわち、本実施の形態3に係る空気調和システムは、ユーザの体温を測定する体温測定部を含んでいる。
以上のような本実施の形態3によれば、ユーザが集中するための空調と空気質改善を提供することができる。
以上、上述の3つの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
例えば、上述の実施の形態1の場合、図7に示すように、集中モード運転の開始後(タイミングP1後)、ユーザの集中力の上昇を促すためにユーザの温冷感を低下させる予冷運転が実行される。例えば、予冷運転として、設定温度より3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、集中モード運転開始タイミング時の室内温度が低い場合、例えばユーザが「寒い」または「涼しい」と感じるような室内温度である場合、予冷運転を実行してユーザの温冷感をさらに低下させると、かえってユーザの集中を妨げる場合がある。したがって、例えば、集中モード運転開始時に温冷感算出部によって算出された温冷感値がゼロ以上である場合には予冷運転を実行し、温冷感値が負の値である場合には予冷運転を実行しないようにしてもよい。
また、上述の実施の形態1の場合、温冷感算出式(数式5および数式6)に含まれる産熱量Bは、予め実験的に求められた定数である。これに代わって、ユーザの産熱量を算出してもよい。ユーザの産熱量は、例えば、脈拍に基づいて算出可能である。具体的には、脈拍からユーザの呼吸量、すなわち産熱量に相当する代謝量を算出することができる。この場合、ユーザの脈拍を測定する脈拍センサを空気調和システムは含んでいる。
さらに、集中モード運転の開始時刻を入力することによって該集中モード運転の開始を予約できるように空気調和システムが構成されている場合、予約された集中モード運転が開始される前からその集中モード運転の開始まで空気質改善装置を駆動してもよい。例えば、集中モード運転が予約されたタイミングから、または予約された集中モード運転の開始時刻の1時間前から空気質改善装置が稼動を開始してもよい。集中モード運転の開始前に、空気質改善装置によって室内空気の空気質を十分に改善することにより、集中モード運転中において、空気質改善装置の出力を低出力にすることができるまたはゼロにすることができる。その結果、空気質改善装置の駆動によってユーザの集中が妨げられることが抑制される。
さらにまた、上述の実施の形態1の場合、空気質改善装置としてイオン発生装置50、空気清浄装置54、および換気装置60を含み、これらの装置は空気調和装置20に組み込まれている。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。イオン発生装置、空気清浄装置、および換気装置以外の空気質改善装置が空気調和システムに含まれてもよい。また、イオン発生装置、空気清浄装置、および換気装置など、複数の異なる空気質改善装置を空気調和システムが含む場合、こられの装置の少なくとも1つが、空気調和装置から独立した装置として、空気調和システムに含まれてもよい。
例えば、イオン発生装置や空気清浄装置が空気調和装置から独立した装置である場合、これらの装置を、空気調和装置に比べて、ユーザの近くに配置することができる。また、例えば、空気清浄装置が空気調和装置から独立した装置である場合、図3に示すように、空気清浄フィルタ56が空気調和装置20の吸い込み口22cを覆うことがないために気流AFの風量が変わらず、ユーザの温冷感が変化しない。この場合、空気清浄装置が、イオン発生装置に対して優先的に駆動されてもよい。
また例えば、室内におけるユーザの位置を特定できる場合、例えば空気調和装置がユーザの位置を特定する人体検出センサを備える場合、ユーザに向かう方向ではなく、ユーザの周囲に気流を向けるのが好ましい。ユーザに直接的に気流が当たると、ユーザの温冷感が変化しうる。その結果、ユーザの集中が妨げられる。これを回避するために、上下ルーバーおよび左右ルーバーにより、ユーザの周囲に気流を向ける。その結果、空気清浄装置によって空気清浄された空気やイオン発生装置によって発生したイオンを同伴する空気が、ユーザの周囲に供給される。これにより、ユーザの温冷感を変化させることなく、空気質が改善された空気によってより集中しやすい環境をユーザに提供することができる。
さらにまた、ある実施の形態の少なくとも一部に対して別の少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。