この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図7を参照しながら、この発明の実施の形態1について説明する。図1は空調制御装置により制御される空調機器が設置された作業空間の構成を模式的に示す側面図である。図2は空調機器の室内機の斜視図である。図3は空調制御装置の制御系統の構成を示すブロック図である。図4及び図5は空調制御装置における作業空間の環境情報等に応じた制御内容例を説明するための図である。図6は空調制御装置の動作の一例を示すフロー図である。そして、図7は空調制御装置の動作の一例を説明する図である。
この実施の形態に係る空調制御装置は、空調機器の動作を制御するものである。空調制御装置の制御対象である空調機器は、図1に示すような作業空間100を空気調和の対象としている。作業空間100は、例えば会議室等の1つの部屋の内部空間である。ここで説明する構成例では、空調機器として温調室内機31及び換気室内機32が備えられている。温調室内機31及び換気室内機32は、作業空間100に係る部屋の壁面52又は天井面54に設置される。ここで説明する構成例では、温調室内機31及び換気室内機32は、天井面54に設置されている。
温調室内機31は、作業空間100内の空気の温度を調節することで空気調和を行う機器である。温調室内機31は、冷房運転及び暖房運転を含む空調運転が可能である。また、温調室内機31は、除湿運転、加湿運転のいずれか1つ以上の運転を可能としてもよい。なお、除湿運転、加湿運転については、温調室内機31とは別に設置される機器により行えるようにしてもよい。この場合、除湿運転及び加湿運転の一方又は両方を行う機器は、天井面54に設置されてもよいし、使用者50が作業を行う机53上に設置してもよいし、壁面52又は床面51等に設置してもよい。換気室内機32は、作業空間100内の空気を換気することで空気調和を行う機器である。
次に図1に加えて図2も参照しながら、温調室内機31の構成について説明する。温調室内機31は、筐体311を備えている。温調室内機31の筐体311は、略直方体形を呈する箱状に形成されている。温調室内機31の筐体311の下部には、矩形状又は正方形状の下面パネル316が設けられている。筐体311の下面パネル316には、吸込口314及び吹出口312が形成されている。
吸込口314は、外部から筐体311の内部に空気を取り込むための開口である。吸込口314は、下面パネル316の中央に配置されている。吹出口312は、筐体311の内部から外部へと空気を排出するための開口である。吹出口312は、下面パネル316における吸込口314の周囲に配置されている。この構成例では、吹出口312は、下面パネル316の各辺に沿って4つ設けられている。このように、温調室内機31は、吹出口312が形成された本体を備えている。
それぞれの吹出口312には、ルーバーが設けられている。ルーバーは、吹出口312から吹き出す空気の上下方向及び左右方向の吹き出し角度を調整するためのものである。ルーバーは、矩形板状を呈する部材である。ルーバーの一端は、吹出口312のパネル中央側の縁部に回動可能に取り付けられている。この一端を軸にしてルーバーを回動させることで、吹出口312から吹き出す空気の上下方向及び左右方向の吹き出し角度を変更できる。
以上のように構成された、この実施の形態におけるルーバーは、吹出口312から吹き出す空気の上下風向を変更可能な風向可変手段の例である。なお、この構成例では、ルーバーの向きを最も上向きにすることで、吹出口312をルーバーで閉塞できる。ルーバーで閉塞することで、一部の吹出口312からの送風を停止させることが可能である。
筐体311の内部には、吸込口314から吹出口312へと通じる風路が形成されている。風路中には、いずれも図示しない熱交換器及び送風ファンが設置されている。熱交換器は、風路を流れる空気と熱交換して、風路を流れる空気を加熱又は冷却する。空気を加熱するか冷却するかは、温調室内機31が暖房運転であるか冷房運転であるかによる。具体的には、暖房運転時には熱交換器は空気を加熱する。一方、冷房運転時には熱交換器は空気を冷却する。
熱交換器は、風路を流れる空気を加熱又は冷却することで、当該空気の温度、湿度等を調整し、調和空気を生成する。熱交換器は、このようにして、吸込口314から吸い込まれた空気と熱交換して調和空気を生成する。なお、暖房運転時には、調和空気として温風が生成され、冷房運転時には、調和空気として冷風が生成される。なお、風路内にデシカントを配置して風路を流れる空気を除湿又は加湿することで、当該空気の湿度を調整し、調和空気を生成してもよい。
送風ファンは、吸込口314から吹出口312へと向かう空気流を風路中に生成するためのものである。送風ファンが動作すると、吸込口314から吹出口312へと向かう空気流が風路中に生成され、吸込口314から空気が吸い込まれ、吹出口312から空気が吹き出される。吸込口314から吸い込まれた空気は、温調室内機31の内部の風路を、熱交換器、送風ファンの順に通過する空気流となり、吹出口312から吹き出す。この際、送風ファンの風下側に配置されたルーバーにより、吹出口312から吹き出される風の方向(送風方向)が調整(変更)される。
温調室内機31の筐体311の下面パネル316には、環境情報センサ315及び表面温度センサ313が取り付けられている。環境情報センサ315は作業空間100内の環境情報を検出するセンサである。環境情報センサ315として、具体的に例えば、作業空間100内の空気の温度を検出する温度センサ、作業空間100内の空気の湿度を検出する湿度センサ、作業空間100内の空気の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素センサ等が挙げられる。また、環境情報として、作業空間100の外部の空気すなわち外気の温度、湿度を検出してもよい。
表面温度センサ313は、例えば、一方向に並べた複数のサーモパイルを備えている。複数のサーモパイルのそれぞれは、赤外線の受光及び温度の検出を個別に実行可能な素子を有している。そして、表面温度センサ313は、複数のサーモパイルの前述の一方向と直交する方向の向きを変えることができる。このようにすることで、表面温度センサ313は、一方向に並んだ複数のサーモパイルのそれぞれを走査させて、温調室内機31の下方の予め設定された対象範囲内について表面温度を検出することができる。この対象範囲は、作業空間100内の全体をカバーすることが望ましい。
表面温度センサ313は、サーモパイルに代えて、SOI(Silicon on Insulator)ダイオード方式の非冷却赤外線イメージセンサを備えていてもよい。SOIダイオード方式の場合、センサ部にシリコンダイオードを使用しているため、シリコン半導体ラインのみで製造可能であり、生産コストが安いというメリットがある。
表面温度センサ313は、このような構成により、前述した対象範囲内を走査して当該範囲内の表面温度分布を非接触で取得する。表面温度センサ313の検出結果、すなわち、表面温度センサ313により取得した表面温度分布データを、後述する制御装置本体20等で処理することで、作業空間100内の床面51及び壁面52、机53等の障害物、人(使用者50)を含む熱源の有無等を検出できる。また、作業空間100内に使用者50がいる場合、当該使用者50の位置及び皮膚温度を検出できる。
また、表面温度センサ313により取得した表面温度分布データを、後述する制御装置本体20等で処理することで、作業空間100内の使用者50の人数も検出できる。さらに、作業空間100内の使用者50の人数の変化から、作業空間100への使用者50の入退出も検知できる。
次に、図3を参照しながら、温調室内機31及び換気室内機32の動作を制御する空調制御装置の構成について説明する。なお、以降においては、温調室内機31及び換気室内機32を総称して空調機器30と呼ぶ。
この実施の形態の空調制御装置は、制御装置本体20を備えている。制御装置本体20は、空調制御部21、情報取得部22及び開始予定時刻特定部23を備えている。空調制御部21は、対象空間である作業空間100の空調を行う空調機器30の動作を制御する制御手段である。
情報取得部22は、情報取得手段である。情報取得部22が取得する情報には、作業空間100の使用予定者の現在の位置及び移動に関する情報、又は、作業空間100の使用予定に関する情報の少なくとも一方が含まれている。
次に、情報取得部22による情報の取得について説明する。ここで説明する構成例では、情報取得部22の情報取得源として、記憶部11、GPS情報受信部12、生体情報センサ13、表面温度センサ313及び環境情報センサ315がある。
記憶部11には、作業空間100の使用予定に関する情報が予め記憶されている。記憶部11に記憶する情報は、情報入力者が入力部10から入力できる。作業空間100の使用予定に関する情報には、少なくとも作業空間100の使用開始予定時間が含まれている。ここで説明する構成例では、作業空間100の使用予定に関する情報には、さらに、作業空間100の使用終了予定時間及び使用予定人数が含まれている。また、ここで説明する構成例では、記憶部11に、さらに、作業空間100に関する情報が予め記憶されている。作業空間100に関する情報とは、例えば、作業空間100の収容可能人数である。情報取得部22は、記憶部11から作業空間100の使用予定に関する情報を取得する。
この実施の形態では、作業空間100の使用予定者(以下、単に「使用予定者」ともいう)について、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により現在の位置及びその時間変化(移動)を計測可能である。具体的に例えば、使用予定者が所持するスマートフォン等の携帯情報端末により、当該使用予定者の位置情報が計測される。そして、計測された使用予定者の現在の位置及びその時間変化の情報は、携帯情報端末から送信される。計測された使用予定者の現在の位置及びその時間変化の情報は、GPS情報受信部12により受信される。この通信には、必要に応じてインターネット等の通信ネットワークが利用される。情報取得部22は、GPS情報受信部12により受信された情報から、作業空間100の使用予定者の現在の位置及び移動に関する情報を取得する。
生体情報センサ13は、作業空間100の使用者50の生体情報を検出する例えばウェアラブルセンサである。生体情報センサ13が検出する生体情報として具体的に例えば、心拍数、血圧、活動量、眼(瞳)の大きさ等が挙げられる。また、前述したように、表面温度センサ313は、作業空間100内に使用者50がいる場合、当該使用者50の位置及び皮膚温度を検出できる。表面温度センサ313により検出された皮膚温度も、使用者50の生体情報である。情報取得部22は、検出された使用者50の生体情報を生体情報センサ13及び表面温度センサ313から取得する。
前述したように、この実施の形態では、環境情報センサ315は作業空間100内の環境情報として、作業空間100内の空気の温度、湿度及び二酸化炭素濃度を検出する。情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。
開始予定時刻特定部23は、対象空間である作業空間100の使用開始予定時刻を特定する開始予定時刻特定手段である。開始予定時刻特定部23は、作業空間100の使用開始予定時刻の特定を、情報取得部22が取得した情報に基づいて行う。情報取得部22が取得した情報には、作業空間100の使用予定に関する情報、又は、使用予定者の現在の位置及び移動に関する情報の少なくとも一方が含まれている。開始予定時刻特定部23は、これらの情報の少なくともいずれかを用いて、作業空間100の使用開始予定時刻を特定する。
例えば、使用予定者の現在の位置及び移動に関する情報を用いる場合、使用予定者の現在の位置と移動速度とから、当該使用予定者の作業空間100への到着予想時刻を算出する。そして、当該使用予定者の作業空間100への到着予想時刻から、作業空間100の使用開始予定時間を特定する。
空調制御部21は、空調機器30の動作を制御する際に、開始予定時刻特定部23により特定された作業空間100の使用開始予定時間を用いる。より詳しくは、空調制御部21は、空調機器30の動作について、使用開始予定時刻までは第1の制御を行う。そして、空調制御部21は、空調機器30の動作について、使用開始予定時刻以降は第2の制御を行う。第2の制御は、前述した第1の制御とは異なる制御である。
空調制御部21は、情報取得部22により取得された情報に応じて、前述した第1の制御及び第2の制御の内容を決定する。空調制御部21は、少なくとも作業空間100の環境情報に応じて、第1の制御及び第2の制御の内容を決定する。空調制御部21は、さらに作業空間100の収容可能人数及び使用予定者の人数に応じて第1の制御の内容を決定してもよい。また、空調制御部21は、さらに使用者50の生体情報に応じて第2の制御の内容を決定してもよい。
なお、図3に示すように、空調制御部21は、複数の空調機器30のそれぞれの動作を制御可能である。したがって、第1の制御及び第2の制御の内容を決定することの中には、複数の空調機器30のうちから動作させるものを選択することも含まれる。
次に、図4及び図5を参照しながら、作業空間100の環境情報等に応じた空調制御部21により決定される前述した第1の制御及び第2の制御の内容の具体例について説明する。図4は、作業空間100の環境情報等の一例である。なお、同図に示す例では、作業空間100の環境情報だけでなく、作業空間100の収容可能人数及び使用予定者の人数に関する情報と、使用予定者の生体情報も含まれている。ここに含まれる使用予定者の生体情報は、具体的には使用予定者の活動量である。なお、ここでは、使用予定者の活動量として、使用予定者の全体のうちで活動量が多い者の割合により評価したものを用いる。そして、ここでは、外部から作業空間100まで長距離を移動してしてくる使用予定者は「活動量が多い」とし、そうでない使用予定者は「活動量が少ない」とする。
ここでは、具体例として3つのケースを取り上げる。第1のケースは、作業空間100の環境情報について、作業空間100の室温が中立温度より大きく、作業空間100の湿度が60%より大きく、作業空間100の二酸化炭素濃度が1500ppmより大きい。また、この第1のケースは、作業空間100の収容可能人数(定員)に対する使用予定者の人数の比が100%である。さらに、この第1のケースは、使用予定者の生体情報について、使用予定者全体で活動量が「高」である。
ここで、活動量が「高」であるとは、外部から作業空間100まで長距離を移動してくる使用予定者の割合が全体の70%以上であることを指すとする。また、活動量が「中」であるとは、外部から作業空間100まで長距離を移動してくる使用予定者の割合が全体の30%から70%であることを指すとする。そして、活動量が「低」であるとは、外部から作業空間100まで長距離を移動してくる使用予定者の割合が全体の30%以下であることを指すとする。
第2のケースは、作業空間100の環境情報として、作業空間100の室温が中立温度より大きく、作業空間100の湿度が40%から60%で、作業空間100の二酸化炭素濃度が500ppm未満である。また、この第2のケースは、作業空間100の収容可能人数(定員)に対する使用予定者の人数の比が100%である。さらに、この第2のケースは、使用予定者の生体情報について、使用予定者全体で活動量が「高」である。
第3のケースは、作業空間100の環境情報として、作業空間100の室温が中立温度より大きく、作業空間100の湿度が40%から60%で、作業空間100の二酸化炭素濃度が500ppm未満である。また、この第3のケースは、作業空間100の収容可能人数(定員)に対する使用予定者の人数の比が20%である。さらに、この第3のケースは、使用予定者の生体情報について、使用予定者全体で活動量が「低」である。
図5は、以上の第1のケースから第3のケースのそれぞれの場合における、前述した第1の制御及び第2の制御の内容の一例である。まず、第1のケースでの制御内容例について説明する。第1のケースでは、作業空間100は、蒸し暑く、かつ、二酸化炭素濃度が作業効率が低下すると予想される程度に高い。さらに、定員に対し満員の状態のスケジュールが予定されている。
この場合、第1の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにし、かつ、除湿運転をONにする。また、換気室内機32については、換気量「中」でONにする。このようにすることで、使用開始時に使用者50が入室した際、温冷的快適を実現できる。また、除湿することで使用開始時に使用者が入室した際における快適性を向上できる。さらに換気量「中」で換気することで一般大気中と同等の400ppm程度に二酸化炭素濃度を下げ、入室時の空気のよどみ感と作業効率の低下を抑制できる。
また、この第1のケースの場合、第2の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにし、かつ、除湿運転をONにする。また、換気室内機32については、換気量「強」でONにする。作業空間100の使用開始後は、作業空間100内が満員で、かつ、遠方からの長距離移動者が多いことから、使用者50の代謝量が多く呼気中の単位時間当たりの水分発生量、二酸化炭素発生量及び人体からの発熱量が多いことが予想される。このため、上述した第2の制御の内容にすることで、快適性の向上を図ることができる。
次に、第2のケースでの制御内容例について説明する。第2のケースでは、作業空間100は、暑いが蒸し暑くはなく、かつ、二酸化炭素濃度は作業効率が低下しないと予想される程度に低い。さらに、定員に対し満員の状態のスケジュールが予定されている。
この場合、第1の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにして、使用開始時に使用者50が入室した際の温冷的快適を実現できる。また、除湿運転をOFFにし、換気室内機32をOFFにすることで、消費電力量の低減を図ることができる。
そして、この第2のケースの場合、第2の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにし、かつ、除湿運転をONにする。また、換気室内機32については、換気量「強」でONにする。作業空間100の使用開始後は、作業空間100内が満員で、かつ、遠方からの長距離移動者が多いことから、使用者50の代謝量が多く呼気中の単位時間当たりの水分発生量、二酸化炭素発生量及び人体からの発熱量が多いことが予想される。このため、上述した第2の制御の内容にすることで、快適性の向上を図ることができる。
最後に、第3のケースでの制御内容例について説明する。第3のケースでは、作業空間100は、暑いが蒸し暑くはなく、かつ、二酸化炭素濃度は作業効率が低下しないと予想される程度に低い。さらに、定員に対し2割程度の人員となるスケジュールが予定されている。
この場合、第1の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにして、使用開始時に使用者50が入室した際の温冷的快適を実現できる。また、除湿運転をOFFにし、換気室内機32をOFFにすることで、消費電力量の低減を図ることができる。
そして、この第3のケースの場合、第2の制御の内容として、温調室内機31の冷房運転をONにし、かつ、除湿運転をOFFにする。また、換気室内機32については、換気量「弱」でONにする。作業空間100の使用開始後は、作業空間100内の人数が定員に対し2割程度と少なく、かつ、遠方からの長距離移動者も少ないことから、使用者50の代謝量が比較的に少なく、呼気中の単位時間当たりの水分発生量、二酸化炭素発生量及び人体からの発熱量が多くないことが予想される。
ただし、作業空間100の使用開始後は、使用開始前よりも二酸化炭素発生量が若干増加することが予想される。このため、第2の制御において換気室内機32を換気量「弱」で運転させることで、消費電力量を低減し、換気による冷房負荷の上昇を抑えつつ、空気のよどみ解消と作業効率の低下抑制を実現できる。
次に、図6を参照しながら、この実施の形態における空調制御装置の動作の流れの一例を説明する。まず、ステップS1において、情報取得部22は、記憶部11から作業空間100の使用予定に関する情報を取得する。続くステップS2において、開始予定時刻特定部23は、ステップS1で情報取得部22が取得した情報に基づいて、作業空間100の使用開始予定時刻を特定する。また、ステップS1で情報取得部22が取得した情報に基づいて、空調制御部21は、作業空間100の収容可能人数及び使用予定人数についても確認する。さらに、空調制御部21は、作業空間100の使用終了予定時刻についても確認する。ステップS2の後、処理はステップS3へと進む。
ステップS3においては、環境情報センサ315は、作業空間100の環境情報を検出する。そして、情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。続くステップS4において、空調制御部21は、前述した第1の制御及び第2の制御の内容を決定する。すなわち、空調制御部21は、作業空間100の使用開始予定時刻前と、使用開始予定時刻後のそれぞれにおける空気質の制御スケジュールを決定する。ステップS4の後、処理はステップS5へと進む。
ステップS5においては、空調制御部21は、ステップS4で決定した第1の制御の内容に従って、空調機器30の動作を制御する。続くステップS6において、環境情報センサ315は作業空間100の環境情報を検出し、情報取得部22は環境情報を環境情報センサ315から取得する。そして、空調制御部21は、ステップS4で決定した第1の制御の内容において目標とする環境が達成できたか否かを確認する。目標とする環境が達成できていれば処理はステップS7へと進み、空調制御部21は、空調機器30の動作を停止させて待機する。そして、ステップS8で作業空間100の使用開始予定時刻になったことを空調制御部21が検知すると、処理はステップS9へと進む。
ステップS9においては、再び、環境情報センサ315は作業空間100の環境情報を検出し、情報取得部22は環境情報を環境情報センサ315から取得する。続くステップS10において、空調制御部21は、ステップS9で取得した環境情報に応じて前述した第2の制御の内容を修正する。すなわち、空調制御部21は、作業空間100の使用開始予定時刻後における空気質の制御スケジュールを修正する。ステップS10の後、処理はステップS11へと進む。
ステップS11においては、空調制御部21は、ステップS10で修正した第2の制御の内容に従って、空調機器30の動作を制御を開始する。そして、ステップS12で作業空間100の使用終了予定時刻になったことを空調制御部21が検知すると、処理はステップS13へと進む。ステップS13においては、空調制御部21は、空調機器30の動作を停止させる。ステップS13の処理が完了すると、一連の動作は終了となる。
ここで、前述したように、表面温度センサ313の検出結果から、作業空間100内に使用者50が在室しているか否かを検知可能である。そこで、開始予定時刻特定部23は、作業空間100内に使用者50が在室していることが検知された時刻をもって、作業空間100の実際の使用開始時刻を特定するようにしてもよい。そして、この場合、空調制御部21は、作業空間100の実際の使用開始時刻まで前述した第1の制御を行い、実際の使用開始時刻以降に前述した第2の制御を行うようにしてもよい。
次に、図7を参照しながら、この場合の空調制御装置の動作の一例を説明する。まず、ステップS21において、作業空間100である会議室等の管理責任者、使用予定者等が、作業空間100の使用スケジュールを入力部10で入力する。入力した情報は記憶部11に記憶される。続くステップS22において、制御装置本体20の情報取得部22は、記憶部11から作業空間100の使用予定に関する情報を取得する。ステップS22の後、処理はステップS23へと進む。
ステップS23においては、環境情報センサ315は、作業空間100の環境情報を検出する。そして、情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。空調制御部21は、前述した第1の制御及び第2の制御の内容を決定する。そして、ステップS24において、空調制御部21は、決定した第1の制御の内容に従って、動作させる空調機器30を選択する。ステップS24の後、処理はステップS25へと進む。
ステップS25においては、空調制御部21は、第1の制御の内容に従って空調機器30の動作を制御する。これにより、ステップS24で選択された空調機器30が動作する。その後、ステップS26において、表面温度センサ313の検出結果から作業空間100内に使用者50が在室していることが検知されると、開始予定時刻特定部23は作業空間100の実際の使用開始時刻を特定する。ステップS26の後、処理はステップS27へと進む。
ステップS27においては、環境情報センサ315は、再び作業空間100の環境情報を検出する。そして、情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。空調制御部21は、必要に応じて前述した第2の制御の内容を修正する。そして、ステップS28において、空調制御部21は、第2の制御の内容に従って、動作させる空調機器30を選択する。ステップS28の後、処理はステップS29へと進む。
ステップS29においては、空調制御部21は、第2の制御の内容に従って空調機器30の動作を制御する。これにより、ステップS28で選択された空調機器30が動作する。ステップS29の処理が完了すると、一連の動作は終了となる。
以上のように構成された空調制御装置においては、空調制御部21は、空調機器30の動作について、使用開始予定時刻までは第1の制御を行い、使用開始予定時刻以降は第1の制御とは異なる第2の制御を行う。そして、空調制御部21は、情報取得部22により取得された少なくとも作業空間100の環境情報に応じて、第1の制御及び第2の制御の内容を決定する。このため、使用者の過去の行動データを必要とすることなく、空気調和の対象となる作業空間100が使用される事前に作業空間100を使用者50を受け容れるのに適した空気環境にすることができる。また、作業空間100の使用開始後にも快適性を維持できるという。この際、作業空間100内の環境の変動が少ない使用前に空気質を調整しておくことで、使用開始後における制御を容易にし、空気調和に係る消費エネルギー量の削減を図ることも可能である。
具体的に例えば、冬季において外気が10℃以下で非常に寒く、使用前の作業空間100内の温度も人が滞在するには寒くて不快な10℃であったとする。この場合、作業空間100の使用開始予定時刻前に、温調室内機31は室内に温風を吐出して人の滞在に適した22℃にする。また、室内の二酸化炭素濃度が高いほど作業の生産性は低下する。そこで、一般的には、換気により室内の二酸化炭素濃度が一定以下になるように制御するとよい。ただし、作業空間100の使用開始予定時刻前には、作業空間100に人がいないため換気をしない方がよい。このようにすることで、使用開始予定時刻前の作業空間100内に冷たい外気が流入し、温調室内機31による暖房負荷が増すことを抑制できる。
なお、例えば夏季等に温調室内機31が冷房運転又は送風運転を行う場合、使用開始予定時刻以降に行う前述した第2の制御において、風向可変手段であるルーバーにより、温調室内機31の吹出口312から吹き出す風が使用者50の頭部に当たるようにするとよい。使用者50の頭部に風が当たることにより、表面温度センサ313により検知される使用者50の頭部温度が低下する。この際、使用者50の頭部温度が0.5~2℃低くなるまで風向を維持するとよい。
このようにすることで、使用者50の頭部温度を低下させつつ体感温度を中立に保つことができ、使用者50の作業効率向上を支援することが可能である。これは、いわゆる「頭寒足熱」の状態であるが、頭部温度の低減が0.5~2℃の場合がもっとも作業効率が向上する条件である。
温調室内機31のルーバーの1つに対し使用者50が複数人存在する場合もある。その場合には、複数の使用者50に対し順番に風が当たるようにルーバーを制御するとよい。例えば、はじめの使用者50に風を当て、その使用者50の頭部温度が0.5~2℃低くなったら、次の使用者50に風を当てる。この際、表面温度センサ313により検出された皮膚温の高い人間を優先することも有効である。
また、吹出口312から吹き出す風速、風量は一定としてもよいし、不規則に揺らがせてもよい。風速、風量を不規則に変化されることで、使用者50の風当たり感を低滅でき、さらなる快適性の向上を図ることが可能である。
実施の形態2.
図8を参照しながら、この発明の実施の形態2について説明する。図8は空調制御装置の動作の一例を説明する図である。
ここで説明する実施の形態2は、前述した実施の形態1の構成において、空気調和の対象空間から使用者が退出したことを検知した場合に、空調機器の制御を行うようにしたものである。以下、この実施の形態2に係る空調制御装置について、実施の形態1との相違点を中心に説明する。説明を省略した構成については実施の形態1と基本的に同様である。
実施の形態1で前述したように、表面温度センサ313の検出結果から、作業空間100内に使用者50が在室しているか否かを検知可能である。したがって、制御装置本体20は、表面温度センサ313の検出結果から、作業空間100内に在室していた使用者50が退出したことも検知可能である。この意味で、この実施の形態に係る空調制御装置は、空気調和の対象空間である作業空間100からの使用者50の退出を検知する退出検知手段を備えている。
また、退出検知手段としては、他にも以下のような構成例が挙げられる。
・作業空間100の照明が消灯されたことを検出した場合に、作業空間100からの使用者50の退出を検知する。
・GPS情報受信部12により受信された使用者50の位置情報に基づいて作業空間100からの使用者50の退出を検知する。
・作業空間100への入退室を管理する入退室管理装置からの情報に基づいて作業空間100からの使用者50の退出を検知する。
・記憶部11に記憶されている、作業空間100の使用終了予定時刻になった時に、作業空間100からの使用者50の退出を検知する。
そして、空調制御部21は、空調機器30の動作について、前述の退出検知手段により作業空間100からの使用者50の退出を検知した場合に、前述した第2の制御とは異なる制御を行う。すなわち、制御手段である空調制御部21は、空調機器30の動作について、対象空間である作業空間100からの使用者50の退出後に、前述した第2の制御とは異なる制御を行う。
作業空間100からの使用者50の退出後に行われる空調機器30の動作の制御には、次の2通りがある。まず、1つめは、空調制御部21は、空調機器30の動作について、作業空間100からの使用者50の退出後に、前述した第1の制御を行うものである。すなわち、作業空間100からの使用者50の退出後に、作業空間100の空気質を使用開始前の状態に戻すように空調機器30を動作させる。このようにすることで、作業空間100の使用終了後に速やかに使用前の状態に復帰させ、次の使用に適した環境にできる。
次に、作業空間100からの使用者50の退出後に行われる空調機器30の動作の制御の2つめは、空調制御部21は、空調機器30の動作について、作業空間100からの使用者50の退出後に、第3の制御を行うものである。この第3の制御は、前述した第1の制御及び第2の制御のいずれとも異なる内容である。
第3の制御の内容として、具体的に例えば、作業空間100の内部の空気質が作業空間100の外部の空気質と同等になるようにする、すなわち、作業空間100内が外気と同じ環境になるようにすることが挙げられる。また、第3の制御の他の例として、同一の日において、当該作業空間100が使用される予定がもうない場合等において、作業空間100に係る全ての空調機器30の動作を停止させてもよい。
次に、図8を参照しながら、この場合の空調制御装置の動作の一例を説明する。同図の例は、実施の形態1で説明した図7の例と同様に、作業空間100内に使用者50が在室していることが検知された時刻をもって、作業空間100の実際の使用開始時刻を特定した場合の例である。まず、ステップS31からステップS39は、実施の形態1で説明した図7のステップS21からステップS29と同じである。このため、ここでの説明は省略する。
ステップS39では、空調制御部21は、前述した第1の制御の内容に従って空調機器30の動作を制御する。これにより、ステップS38で選択された空調機器30が動作する。その後、ステップS40において、表面温度センサ313の検出結果から作業空間100内に使用者50の退室が検知されると、開始予定時刻特定部23は作業空間100の実際の使用終了時刻を特定する。ステップS40の後、処理はステップS41へと進む。
ステップS41においては、環境情報センサ315は、再び作業空間100の環境情報を検出する。そして、情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。空調制御部21は、必要に応じて前述した第1の制御の内容を修正する。そして、ステップS42において、空調制御部21は、再び第1の制御の内容に従って、動作させる空調機器30を選択する。ステップS42の後、処理はステップS43へと進む。
ステップS43においては、空調制御部21は、第1の制御の内容に従って空調機器30の動作を制御する。これにより、ステップS42で選択された空調機器30が動作するその後、ステップS44において、情報取得部22は、検出された環境情報を環境情報センサ315から取得する。そして、作業空間100内の環境が作業空間100の使用開始前に復帰したことが確認できた場合には、処理はステップS45に移り、空調制御部21は空調機器30の動作を停止させる。これにより空調機器30の動作は停止する。ステップS45の処理が完了すると、一連の動作は終了となる。
なお、ステップS41からステップS43において、ここでは、再び第1の制御により作業空間100を使用開始前の環境に復帰させる場合について説明したが、これは前述した第3の制御であっても構わない。第3の制御の場合、例えば、ステップS44で作業空間100内の環境が外気と同等になったことを確認できた場合には、処理はステップS45に移り、空調制御部21は空調機器30の動作を停止させる。
以上のように構成された空調制御装置においても、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。さらに、作業空間100からの使用者50が退出した場合に、その後の使用に備えて、作業空間100の環境を使用開始前の状態に復帰させる等の制御を行うことで、その後の空気調和に必要なエネルギー量のさらなる削減を図ることができる。
これまでに説明してきた各実施の形態では、作業空間100としてオフィスの会議室を例に挙げた。しかし、空調の対象となる作業空間100はこれに限られず、他に例えば一般住宅の寝室、キッチン等でもよい。
例えば、複数の人が同じ寝室で就寝する場合、寝室の使用開始予定時刻前に入眠に適した温度となるように温調室内機31を動作させて予め環境を作り、使用者50が寝室に入室した後に換気室内機32を動作させることで室内の二酸化炭素濃度を一定レベル以下に抑制することで質の高い眠りを実現することが可能となる。
また、例えば、キッチンで調理を行う場合に、キッチンの使用開始予定時刻前に温調室内機31を動作させて人が快適に調理できる室温に調整し、使用者50がキッチンで調理を開始した後に換気室内機32を動作させることで調理で発生した蒸気、油煙等を屋外に排出することが可能である。
さらに家庭内で用いる場合、入力部10としては個人が所持するスマートフォン、PC等を使用し、記憶部11としてはスケジュール管理用のクラウドサービス等を利用する。このようにすることで、家族のそれぞれのスケジュールに応じた空調制御ができる。具体的に例えば、いつもは大人2人、こども1人で就寝する家庭で、大人1人が宿泊出張等で不在となる場合、家族のスケジュール情報から就寝人数を推定し、換気室内機32を動作なしとする、又は、換気風量を減らすことで、使用者50の快適性と消費エネルギー量の削減とを両立できる。