本発明の一態様の空気調和システムは、ユーザが存在する室内の空調を行い、少なくとも第1の運転制御モードと第2の運転制御モードの空調運転を行う空気調和システムであって、前記ユーザの動きの量を検出する体動検出装置と、前記動きの量に基づいて前記ユーザの活動量を推定する活動量推定部と、前記活動量に基づいて温度と風向と風速の少なくともいずれか1つを変更して空調を調整する空気調和装置と、前記第1の運転制御モードと前記第2の運転制御モードとを切り換える指示を前記ユーザが行うための指示入力部と、を備え、前記活動量推定部は、前記第1の運転制御モードにおいて推定される活動量に比べ、前記第2の運転制御モードにおいて推定される活動量の方が大きいことを特徴とし、その活動量に対応する空調運転が実行される。
ここで、ユーザの動きの量とは、ユーザの体の部位の移動量に相当するものである。後述するように、ユーザの体の部位の移動量を用いて推定するものでもよい。また、加速度を用いて、ユーザの体の部位の動きの速度や加速度を用いて推定してもよい。
このような態様によれば、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を提供することができる。
例えば、前記指示入力部に前記第1の運転制御モードから前記第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされる前において前記活動量が所定の値比べて高い場合、前記第2の運転制御モードへの切り替えを行わずに、前記第1の運転制御モードを維持してもよい。これにより、室内で知的作業を行っておらず、活動量の大きい作業を行っているユーザに対しては、活動量に対応した快適な空調を提供できる。
例えば、前記指示入力部に前記運転制御モードの切り換えが指示された後、前記第2の運転制御モードにおいて推定される活動量が、前記運転制御モードの切り換えが指示された時の活動量に比べて上昇すると、前記空気調和装置が前記第2の運転制御モードを終了してもよい。これにより、集中が切れたユーザに対して不必要な空調を提供することが抑制される。
例えば、前記空気調和システムが、少なくとも前記空気調和装置に対する前記ユーザが存在する方向を取得する位置情報取得部を、さらに備え、前記ユーザの存在する位置周辺に対して前記第2の運転制御モードの空調運転を実行してもよい。
例えば、前記位置情報取得部は、前記室内を複数の領域に分けて、前記ユーザの存在する位置が前記複数の領域のいずれに該当するかで検出するものでもよい。これにより、前記第1の運転制御モードと前記第2の運転制御モードとを切り換える指示を行っていない別のユーザに対して不要な空調運転を実行して該別のユーザが不快に感じることが抑制される。
例えば、前記体動検出装置は、前記ユーザに装着されて加速度を測定する加速度測定装置であって、前記活動量推定部が、加速度の変化に基づいて前記ユーザの活動量を推定してもよい。これにより、ユーザの細かな動きに基づいて活動量を推定することができる。
例えば、前記第2の運転制御モードの空調運転は、前記指示入力部に前記第1の運転制御モードから前記第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされた後、所定の開始条件が成立すると、開始されてもよい。
例えば、前記所定の開始条件は、前記指示入力部に前記第1の運転制御モードから前記第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされた後から所定の第1の時間経過すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記所定の開始条件は、前記指示入力部に前記第1の運転制御モードから前記第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされた後に、前記活動量推定部によって推定される活動量が低下すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記空気調和システムは、前記ユーザの体温を測定する体温測定部を有し、前記所定の開始条件は、前記ユーザの体温が前記切り替えの指示時の体温から所定の温度まで上昇すると成立する条件であってもよい。
例えば、前記空気調和装置が、前記指示入力部に前記第1の運転制御モードから前記第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされた後から所定の第2の時間経過するまで、前記ユーザの温冷感を低下させる予冷運転を実行してもよい。これにより、ユーザに対して冷刺激を与え、ユーザの集中力の上昇を促進することができる。
本発明の別態様の空気調和方法は、ユーザが存在する室内の空調を行い、少なくとも第1の運転制御モードと第2の運転制御モードの空調を行う空気調和方法であって、前記ユーザの動きの量を検出し、前記動きの量に基づいて前記ユーザの活動量を推定し、前記活動量に基づいて温度と風向と風速の少なくとも1つを変更して空調を調整する空気調和を行い(前記活動量に基づいて、温度と風向と風速のいずれかを補正し、空調を調整する空気調和を実行し、)、前記第1の運転制御モードにおいて推定される活動量に比べ、前記第2の運転制御モードにおいて推定される活動量の方が大きいことを特徴とし、活動量に対応する空調運転が実行される。
このような態様によれば、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和システムを概略的に示している。図2は、空気調和システムにおける空気調和機の構成を概略的に示している。
図1に示すように、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、ユーザWが存在する室内Sの空調を行うシステムであって、特に集中して勉強などの知的作業を行うユーザWに対して快適な空調を提供可能に構成されている。
そのために、空気調和システム10は、室内Sの空調を行う空気調和装置20を有する。
図2に示すように、本実施の形態1の場合、空気調和装置20は、室内機22と室外機24とを有する。図1に示すように、空気調和装置20の室内機22は、室内Sに設置される。室外機24は、その室外に設置される。空気調和装置20のユーザWは、室内機22が設置された室内Sに存在する。
図2に示すように、空気調和装置20は、室内機22に設けられた室内熱交換器26と、室外機24に設けられた室外熱交換器28と、冷媒を圧縮する圧縮機30と、冷媒の流れ方向を切り換える四方弁32と、冷媒を減圧する膨張弁34と、これらを接続する冷媒配管36とを有する。また、室内機22には、室内熱交換器26と熱交換した後の空気を室内に送風する室内ファン38と、室内機22から送出される空気(気流AF)の向きを変更する上下ルーバー40、左右ルーバー42とが設けられている。さらに、室外機24には、室外熱交換器28と熱交換した後の空気を屋外に送風する室外ファン44が設けられている。
図2は、冷房運転時の空気調和装置20の状態を示している。冷房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室外熱交換器28、膨張弁34、室内熱交換器26、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。一方、暖房運転時、圧縮機30から吐出された冷媒は、四方弁32、室内熱交換器26、膨張弁34、室外熱交換器28、および四方弁32を順に通過して圧縮機30に戻る。
室内ファン38は、冷房運転時には室内熱交換器26との熱交換によって冷やされた空気を室内Sに向かって送風し、暖房運転時には室内熱交換器26との熱交換によって温められた空気を送風する。
上下ルーバー40および左右ルーバー42は、室内機22から室内Sに向かって送風される気流AF(室内熱交換器26と熱交換した後の空気)の向きを上下方向および左右方向について変更する。
図3は、空気調和システムのブロック図である。
図3に示すように、空気調和システム10は、ユーザWの活動量に基づいて空気調和装置20を制御するために、リモートコントローラ46、人体検出センサ48、および制御装置50を有する。なお、本実施の形態1の場合、空気調和システム10の制御装置50は、空気調和装置20自体の制御装置である。
リモートコントローラ46は、空気調和システム10の指示入力部として機能し、ユーザWが空気調和装置20を遠隔操作するためのコントローラである。
人体検出センサ48は、室内SでのユーザWを検出するためのセンサであって、具体的にはユーザの動きの量を検出する体動検出装置として機能する。本実施の形態1の場合、図1に示すように、人体検出センサ48は、空気調和装置20の室内機22に搭載されている。また、人体検出センサ48は、検出エリアが異なる複数の赤外線センサ素子から構成されている。赤外線センサ素子それぞれは、例えば人体から放射される赤外線を検知し、検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて人体の在否が判定され、制御装置50に出力するように構成されている。制御装置50は、赤外線量の変化に応じたパルス信号に基づいて、活動の頻度と、変化量が検知される赤外線センサ素子に対する領域の大きさとに基づいて活動量を判断する。
また、空気調和システム10は位置情報取得部を有する。位置情報取得部は、少なくとも前記空気調和装置に対する前記ユーザが存在する方向を取得する。本実施の形態では、人体検出センサ48が、位置情報取得部を兼ねる。すなわち、複数の赤外線センサ素子それぞれが検知する室内Sの領域と空気調和機20との距離が異なり、赤外線センサ素子それぞれの光軸が互いにねじれの位置に設けられている。これにより、室内Sを図4に示すような複数の領域である空調対象領域A〜Hに分割して検知することができる。このような人体検出センサ48により、空調対象領域A〜Hと活動量との関係を明確にする。すなわち、活動量が空調対象領域A〜Hのいずれの位置で起こっているかを判定する。
制御装置50は、例えば、空気調和装置20の室内機22に搭載された回路基板であって、プログラムなどが記憶されたメモリなどの記憶装置と、記憶装置に記憶されたプログラムにしたがって動作するCPUなどのプロセッサとを備える。これにより、制御装置50は、運転制御部52、活動量推定部54、および運転条件決定部56を備える(記憶装置58に記憶されているプログラムにしたがって動作するプロセッサがこれらとして機能する)。
図3に示すように、制御装置50の運転制御部52は、リモートコントローラ46に対するユーザWの指示入力に基づいて、圧縮機30、室内ファン38、上下ルーバー40、および左右ルーバー42を制御して室内Sに対する空調運転を実行するように構成されている。例えば、リモートコントローラ46に対して設定温度が入力されると、制御装置50の運転制御部52は、室内温度を設定温度で維持する空調運転を実行する。なお、そのために、室内温度を測定する温度センサ(図示せず)が、例えば室内機22に設けられている。
また、制御装置50の運転制御部52は、ユーザWの活動量に基づいて、室内Sの空調を行うことが可能に構成されている。具体的には、活動量推定部54が人体検出センサ48の検出結果に基づいてユーザWの活動量を推定し、その推定された活動量に基づいて運転条件決定部56が運転条件を決定し、その決定された運転条件に基づいて運転制御部52が空調運転を実行する。この活動量に基づく空調運転(第1の運転制御モードの空調運転)について説明する。
まず、活動量は人の動きの激しさ(すなわち単位時間あたりの動きの大きさ)を表す指標であって、大きいほど、動きが激しく、そのために人の温冷感を上昇させる。ここで言う「温冷感」は、「暑い」、「暖かい」、「快適」、「涼しい」、または「寒い」などの温度に関する人の感覚を言う。
活動量推定部54は、このような活動量を、人体検出センサ48の検出結果に基づいて推定するように構成されている。本実施の形態1の場合、活動量推定部54は、活動量を4つのレベルに分類して推定するように構成されている。具体的には、活動量を、「安静」レベル、「小」レベル、「中」レベル、および「大」レベルに分類する。
「安静」レベルの活動量は、例えば、ソファでくつろいでいる、テレビを視聴しているなど、人が実質的に身体を動かすことなく同じ場所に居続ける場合の活動量である。この場合、代謝量が低下するので、人は寒く感じる。
「小」レベルの活動量は、例えば、食事をしているなど、同じ場所に居続ける状態で実質的に上半身のみが部分的に動いている場合の活動量である。この場合、代謝量に大きな変化はなく、人は暑くもなく寒くもない。
「中」レベルの活動量は、例えば炊事をしているなど、全身を使いつつ狭い範囲で移動している場合の活動量である。この場合、代謝量がやや増加し、人はやや暑く感じる。
そして、「大」レベルの活動量は、例えば室内を掃除しているなど、全身を使いつつ広い範囲で移動している場合の活動量である、この場合、代謝量が増加し、人は暑く感じる。
活動量推定部54は、例えば、人体検出センサ48における複数の赤外線センサ素子それぞれの反応頻度、すなわち赤外線量の変化を検出して信号を出力する頻度に基づいて、ユーザWの活動量を推定する。
まず、活動量推定部54は、人体検出センサ48の複数の赤外線センサ素子において、反応頻度が2分あたり5回未満であって且つその状態が30分以上継続している赤外線センサ素子が存在する場合、その検出エリアを「安静」レベルの活動量のユーザWが存在しうる「安静」領域と推定する。
また、活動量推定部54は、全ての赤外線センサ素子の反応頻度合計が2分あたり40回以上であって且つ少なくとも1つの赤外線センサ素子の反応頻度が2分あたり5回以上である場合、「安静」領域を除く領域を、「大」レベルの活動量のユーザWが存在しうる「活動量大」領域と推定する。
さらに、活動量推定部54は、全ての赤外線センサ素子の反応頻度合計が2分あたり40回未満である場合、反応頻度が2分あたり5回以上である赤外線センサ素子の検出エリアを「中」レベルの活動量のユーザWが存在しうる「活動量中」領域と推定する。
そして、活動量推定部54は、「安静」領域、「活動量大」領域、および「活動量中」領域を除く領域を「活動量小」領域と推定する。
このような判定基準に基づけば、図4に示す複数の空調対象領域A〜Hそれぞれを、「安静」領域、「活動量小」領域、「活動量中」領域、および「活動量大」領域に分類することができる。すなわち、ユーザWの活動量(活動量レベル)と該ユーザWが居る空調対象領域とを推定することができる。
運転条件決定部56は、活動量推定部54によって推定されたユーザWの活動量に基づいて、すなわち「安静」領域、「活動量小」領域、「活動量中」領域、および「活動量大」領域それぞれに対する空気調和装置20の運転条件を決定する。
「安静」領域に対する運転条件として、ユーザは代謝量が低下して寒く感じているので、運転条件決定部56は、室内温度を設定温度に比べて高い温度にする、例えば1℃上げる運転条件を決定する。
「活動量小」領域に対する運転条件として、運転条件決定部56は、室内温度を維持する運転条件を決定する。
「活動量中」領域に対する運転条件として、ユーザは代謝量がやや増加してやや暑く感じているので、運転条件決定部56は、室内温度を設定温度に比べてやや低い温度にする、例えば1℃下げる運転条件を決定する。
そして、「活動量大」領域に対する運転条件として、ユーザは代謝量が増加して暑く感じているので、運転条件決定部56は、室内温度を設定温度に比べて低い温度にする、例えば2℃下げる運転条件を決定する。
すなわち、運転条件決定部56は、ユーザWの活動量が大きいほど、そのユーザWの温冷感を大きく低下させる運転条件を決定する。そして、このように運転条件決定部56によって決定された運転条件に基づいて運転制御部52が空気調和装置20の空調運転を実行する。これにより、ユーザWは、「暑い」または「寒い」と感じることなく、快適な空調環境で過ごすことができる。
なお、このように空調対象領域ごとに異なる空調は、図2に示す上下ルーバー40および左右ルーバー42を介して気流AFの向きを適切に制御しつつ、圧縮機30の回転数や室内ファン38の出力を適切に制御することによって実現可能である。例えば、冷房運転時においては、「安静」領域に向かって気流AFが流れるタイミングでは室内ファン38の回転数を低下させ、「活動量大」領域に向かって気流AFが流れるタイミングでは室内ファン38の回転数を上昇させる。これにより、空調対象領域ごとに、すなわち活動量が異なる複数のユーザそれぞれに対して快適な空調を提供することができる。
ところで、図1に示すように、ユーザWが、例えば勉強などの知的作業を行っている場合、すなわち身体を実質的に動かすことなく集中している場合がある。この場合、活動量推定部54は、ユーザWの活動量を低いと推定する可能性がある。
図5は、集中状態のユーザの温冷感変化を示す図である。
図5に示すように、ユーザWが集中を要する知的作業を開始すると、すなわちユーザWが集中し始める(タイミングP1)と、その開始からしばらくした後(タイミングP2)、ユーザWの温冷感が上昇し始める。このとき、ユーザWは、身体全体ではなく、頭部が熱いと感じ始めている。なお、タイミングP1からタイミングP2までの所定の第1の時間PP1は、集中し始めてから集中力が最大になるまでの時間であって、個人差はあるものの13分〜16分の範囲で平均15分である。また、温冷感は、例えばPMV(Predicted Mean Vote)に基づくものである。
ユーザWが温冷感として頭部が熱いと感じているとき(タイミングP2後)、活動量推定部54は、ユーザWの活動量として、「安静」レベルまたは「小」レベルの活動量を推定しうる。これは、ユーザWが実質的に動いておらず、上述した活動量の判定基準によれば、ユーザWの活動量が「安静」レベルまたは「小レベル」に相当するからである。
したがって、ユーザWが最大の集中によって「暑い」と感じているにもかかわらず、活動量推定部54がユーザWの活動量を「安静」レベルまたは「小」レベルと推定すると、運転条件決定部56が室内温度を上昇させるまたは室内温度を維持する運転条件を決定する。その運転条件に基づいて空気調和装置20が空調運転を実行する。その結果、「暑い」と感じているユーザWが室内温度の上昇または維持によって不快感を覚え、集中力が低下する。
この対処として、本実施の形態1に係る空気調和システム10は、集中によって「暑い」と感じているユーザWにとって快適な空調(第2の運転制御モードの空調)を提供するように構成されている。
集中によって「暑い」と感じているユーザWにとって快適な空調を提供するためには、ユーザWの集中が最大に達したタイミングP2を知る必要があり、また、そのタイミングP2を知るためには、ユーザWが集中し始めるタイミングP1を知る必要がある。そこで、本実施の形態1の空気調和システム10は、集中モード運転をユーザWに提供するように構成されている。
具体的には、空気調和システム10は、ユーザWが集中モード運転の開始を空気調和装置20に指示するための指示入力部を有する。すなわち、第1の運転制御モードから第2の運転モードに切り替え指示するための指示入力部を有する。本実施の形態1の場合、指示入力部は、リモートコントローラ46である。例えば、リモートコントローラ46は、「集中モード」ボタンを備える。なお、集中モード運転の開始時刻を入力することにより、集中モード運転の開始を予約できるようにしてもよい。また、リモートコントローラ46は、空気調和装置20を操作する専用のコントローラであってもよいし、ユーザWの携帯端末であってもよい。携帯端末である場合、空気調和装置20を操作するためのソフトウェアが携帯端末にインストールされる。
ユーザWがリモートコントローラ46を介して空気調和装置20に集中モード運転の開始を指示すると、空気調和装置20は、その指示タイミングをユーザWが集中し始めるタイミングP1とし、集中モード運転を開始する。その集中モード運転について具体的に説明する。
図6は、集中モード運転時のユーザの温冷感の変化を示している。また、図7は、集中モード運転時のユーザの体温変化を示している。なお、図6において、破線は、集中モード運転を実行していない場合、算出されるユーザの温冷感の変化を示している。
図6に示すように、本実施の形態1の場合、集中モード運転が開始されると、空気調和装置20は、まず、集中モード運転の開始後に活動量推定部54によって推定された「安静」領域および「小」領域を、集中し始めたユーザWが存在する「集中」領域と認定する。
その「集中」領域に対して、ユーザWの温冷感の低下させる予冷運転、例えば室内温度を低下させる空調運転を、空気調和装置20は実行する。予冷運転として、例えば、所定の第2の時間PP2(例えば3〜5分間)が経過するまでに、集中モード運転の開始タイミングP1における設定温度に比べて3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。この予冷運転により、ユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進することができる。
予冷運転の終了後、空気調和装置20は、「集中」領域に対して、予冷運転によって低下したユーザWの温冷感を維持する、例えば予冷運転完了後の室内温度を維持する空調運転を実行する。
集中モード運転の開始タイミングP1後、所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、「集中」領域に対して、ユーザWの活動量に基づく集中維持運転(第2の運転制御モードの空調運転)を開始する。すなわち、ユーザによる第1の運転制御モードから第2の運転モードに切り替え指示後、所定の開始条件が成立すると、第1の運転制御モードから第2の運転制御モードに切り替わる。この集中維持運転は、集中モード運転の一部である。所定の開始条件は、ユーザWの集中力が最大に達したときに成立する条件である。本実施の形態1の場合、所定の開始条件は、集中モード運転の開始タイミングP1から所定の第1の時間PP1、例えば15分経過すると成立する、すなわちタイミングP2が発生すると成立する。
所定の開始条件が成立すると、空気調和装置20は、集中維持運転として、活動量推定部54によって推定された活動量に比べて高い活動量に対応する空調運転を実行する。
本実施の形態1の場合、運転条件決定部56は、集中維持運転として、「集中」領域が「安静」領域である場合には、「活動量小」領域に対応する運転条件を決定する。また、「集中」領域が「活動量小」領域である場合には、「活動量中」領域に対応する運転条件を決定する。あるいは、集中維持運転として、「集中」領域が「安静」領域および「活動量小」領域のいずれであっても、「活動量中」領域に対応する運転条件が決定される。言い換えると、集中モード運転において集中維持運転が開始されると、活動量推定部54によって推定される活動量が増加補正され、その増加補正された活動量に基づく空調運転が実行される。これにより、図7に示すように集中力が最大に達することによって体温が上昇し始めたユーザW、すなわち「暑い」と感じ始めたユーザWの温冷感を、増加補正されていない活動量に基づく場合に比べて、「涼しい」側にシフトさせることができる。なお、ここで言う「体温」は、上述したように赤外線を放射するユーザWの身体表面の温度ではなく、ユーザWの内部温度、すなわちユーザWの身体表面に直接的に接触して測定される温度、例えば体温計などで測定できる温度を言う。
ただし、集中モード運転の開始前において(すなわち第1の運転制御モードから第2の運転制御モードへの切り替えの指示がされる前において)、ユーザの活動量が所定の値に比べて高い場合、例えば活動量が「中」レベルまたは「大」レベルである場合、集中維持運転を実行しない(すなわち第2の運転制御モードへの切り替えを行わずに、第1の運転制御モードを維持する)。これにより、室内で知的作業を行っておらず、活動量の大きい作業を行っているユーザに対しては、活動量に対応した快適な空調を提供できる。
このような集中モード運転により、図6に示すように、「集中」領域に存在し、集中力が最大に達することによって「暑い」と感じ始めた(温冷感が上昇し始めた)ユーザWに対して、その温冷感を低下させる、すなわち温冷感の上昇を抑制する空調が提供される。その結果、空調によってユーザWの集中が妨害されずに、ユーザWの集中力は、スムーズに上昇し、最大に達した後はその状態を維持される。また、「集中」領域以外の空調対象領域に対しては集中モード運転が行われないため、「集中」領域に存在しない、集中モード運転を指示していない別のユーザに対して不要な集中モード運転を実行して該別のユーザが不快に感じることが抑制される。
このような集中モード運転は、ユーザWによってリモートコントローラ46を介して終了指示が空気調和装置20に対して実行されると終了する。あるいは、ユーザの集中が切れると、集中モード運転は自動的に終了する。例えば、集中モード運転中において、活動量推定部54によって推定された活動量が上昇すると、例えば活動量が「中」レベルまたは「大」レベルに上昇すると、すなわちユーザWが移動し始めると、集中モード運転は自動的に終了する。これにより、集中が切れたユーザに対して不必要な空調を提供することが抑制される。なお、集中モード運転の継続時間をユーザが設定し、集中モード運転の開始からその設定された継続時間が経過すると、集中モード運転を終了するようにしてもよい。集中モード運転が終了すると、空気調和装置20は、集中モード運転直前の空調運転に戻る、または駆動停止する。
次に、空気調和装置20の集中モード運転時における動作の流れについて説明する。
図8は、空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図8に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
ステップS100において、空気調和装置20は、活動量推定部54によって推定された「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在するか否かを判定する。すなわち、実質的に身体を動かすことなく集中しているユーザWが存在しているか否かを判定する。「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在する場合、ステップS110に進む。そうでない場合、集中モード運転を終了する。
ステップS110において、空気調和装置20は、「安静」領域および/または「活動量小」領域を、集中し始めたユーザWが存在する「集中」領域と認定する。
ステップS120において、空気調和装置20は、ステップS110で認定された「集中」領域に対して、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。これにより、室内温度が設定温度より低い温度になり、「集中」領域に存在するユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進する。
ステップS120での予冷運転が完了すると、ステップS130において、空気調和装置20は、「集中」領域に対して、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、集中途中のユーザWの温冷感を維持する空調運転を開始する。
ステップS140において、空気調和装置20は、「集中」領域の活動量レベルが変化していないか否か、すなわちユーザWの活動量が「安静」レベルおよび/または「小」レベルであるか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS150に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS150において、空気調和装置20は、集中モード運転が開始されてから15分経過したか否かを判定する。すなわち、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立したか否かを判定する。15分経過した場合、ステップS160に進む。そうでない場合、ステップS140に戻る。
ステップS160において、「安静」領域および/または「活動量小」領域である「集中」領域に対して、集中維持運転として、「活動量中」領域に対応する空調運転を開始する。すなわち、集中によって「暑い」と感じているユーザWの温冷感を低下させる、例えば室内温度を設定温度に比べてやや低い温度にする、例えば1℃下げる集中維持運転を開始する。
ステップS170において、ステップS140と同様に、空気調和装置20は、「集中」領域の活動量レベルが変化していないか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS180に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS180において、空気調和装置20は、集中モード運転を終了するフラグが発生したか否かを判定する。この運転終了フラグは、例えは、ユーザが集中モード運転の終了や駆動停止を空気調和装置20にリモートコントローラ46を介して指示したときに発生する。なお、集中モード運転の継続時間をユーザが設定し、集中モード運転の開始からその設定された継続時間が経過すると運転終了フラグが発生するように空気調和装置20は構成されてもよい。運転終了フラグが発生すると、空気調和装置20は、集中モード運転を終了する。集中モード運転の終了後は、空気調和装置20は、集中モード運転開始直前の空調運転を開始してもよいし、駆動停止してもよい。運転終了フラグが発生していない場合には、ステップS170に戻る。
なお、実際には、活動量推定部54によって推定される「安静」領域と「活動量小」領域の合計が2つ以上の場合がありうる。例えば、二人のユーザが異なる空調対象領域で集中を要する知的作業を行う可能性がある。
この場合の空気調和装置20の集中モード運転時における動作の流れについて説明する。
図9は、空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの別例を示すフローチャートである。図8に示すフローチャート図と異なる点は、ステップS142、S144が追加されている点である。したがって、追加されたステップS142、144について説明する。
ステップS140で「集中」領域の活動量レベルが変化していると判定された場合、ステップS142において、空気調和装置20は、「集中」領域から活動量レベルが上昇した領域を削除する。
続いて、ステップS144において、空気調和装置20は、「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在するか否か、すなわちステップS142での削除後に残っているか否かを判定する。「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在する場合は、ステップS150に進む。そうでない場合は、集中モード運転を終了する。
以上のような本実施の形態1によれば、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を提供することができる。
(実施の形態2)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態2は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態2について説明する。
本実施の形態2の空気調和システムの場合、集中モード運転中において、「集中」領域の活動量が低下すると(例えば所定量低下すると)、所定の開始条件が成立したとして、集中維持運転を開始する。例えば、「集中」領域と認定された「活動量小」領域の活動量レベルが「安静」領域の活動量レベルに低下すると所定の開始条件が成立する。また、「集中」領域と認定された「安静」領域および「活動量小」領域それぞれにおいて、人体検出センサにおける複数の赤外線センサ素子の反応頻度が所定のしきい値を超えて低下すると所定の開始条件が成立する。
次に、本実施の形態2に係る空気調和システムの空気調和装置における集中モード運転時の動作の流れについて説明する。
図10は、本実施の形態2に係る空気調和システムの空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャート図である。
図10に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
ステップS200において、空気調和装置は、活動量推定部によって推定された「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在するか否かを判定する。「安静」領域または「活動量小」領域が存在する場合、ステップS210に進む。そうでない場合、集中モード運転を終了する。
ステップS210において、空気調和装置は、「安静」領域および/または「活動量小」領域を、集中し始めたユーザWが存在する「集中」領域と認定する。
ステップS220において、空気調和装置は、ステップS210で認定された「集中」領域に対して、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。これにより、室内温度が設定温度より低い温度になり、「集中」領域に存在するユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進する。
ステップS220での予冷運転が完了すると、ステップS230において、空気調和装置は、「集中」領域に対して、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、集中途中のユーザWの温冷感を維持する空調運転を開始する。
ステップS240において、空気調和装置は、「集中」領域の活動量レベルが変化しているか否か、すなわちユーザWの活動量が「安静」レベルおよび/または「小」レベルであるか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS250に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS250において、空気調和装置は、集中モード運転が開始されてから「集中」領域の活動量が低下したか否かを判定する。すなわち、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立したか否かを判定する。活動量が低下した場合、ステップS260に進む。そうでない場合、ステップS240に戻る。
ステップS260において、「安静」領域および/または「活動量小」領域である「集中」領域に対して、集中維持運転として、「活動量中」領域に対応する空調運転を開始する。
ステップS270において、ステップS240と同様に、空気調和装置は、「集中」領域の活動量レベルが変化していないか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS280に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS280において、運転終了フラグが発生すると、空気調和装置は、集中モード運転を終了する。運転終了フラグが発生していない場合には、ステップS270に戻る。
以上のような本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様に、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を提供することができる。
(実施の形態3)
上述の実施の形態1では、集中モード運転中において、集中維持運転を開始するための所定の開始条件は、集中モード運転を開始してから所定の第1の時間(例えば15分)経過すると成立する。本実施の形態3は、集中モード運転中において集中維持運転を開始する所定の開始条件が上述の実施の形態1のものと異なる。したがって、この異なる所定の開始条件を中心にして本実施の形態3について説明する。
図7に示すように、ユーザの体温は、集中維持運転を開始すべきタイミングP2、すなわちユーザWの集中力が最大に達したタイミングP2の直前から上昇し始める。したがって、ユーザの体温をモニタリングし、そのモニタリング中の体温が、集中モード運転の開始時の体温から所定の温度Δtb上昇したタイミングを、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立するタイミングとみなすことができる。
所定の温度Δtb上昇の判定は、温度の変化量に基づく。例えば、集中モード運転の開始時に体温を測定し、その後5分おきにユーザWの体温を測定する。集中モード運転の開始時の体温に対して、0.2℃以上上昇したタイミングを所定の開始条件が成立するタイミングとしている。
なお、集中モード運転の開始時の体温に基づかず、定期的に使用者Wの体温を測定し、その平均値を「集中モード運転の開始時の体温」としてもよい。また、体温上昇については、変化量に基づかずとも、体温の絶対量に基づいてもよいし、変化率でもよい。絶対量に基づく場合は、運転モード運転の開始時に体温に0.2℃を加えた値を閾値とすることが好ましい。変化率に基づく場合は5分間の変化率が1%であることが好ましい。
なお、ユーザの体温のモニタリングは、ユーザの身体に装着可能な、例えば体温センサ付きのウェラブル端末によって行うことができる。すなわち、本実施の形態3に係る空気調和システムは、ユーザの体温を測定する体温測定部を含んでいる。
次に、本実施の形態3に係る空気調和システムの空気調和装置における集中モード運転時の動作の流れについて説明する。
図11は、本実施の形態3に係る空気調和システムの空気調和装置の集中モード運転時における動作の流れの一例を示すフローチャート図である。
図11に示す一連の動作は、ユーザWによって集中モード運転の開始が指示されてスタートする。
ステップS300において、空気調和装置は、活動量推定部によって推定された「安静」領域および/または「活動量小」領域が存在するか否かを判定する。「安静」領域または「活動量小」領域が存在する場合、ステップS310に進む。そうでない場合、集中モード運転を終了する。
ステップS310において、空気調和装置は、「安静」領域および/または「活動量小」領域を、集中し始めたユーザWが存在する「集中」領域と認定する。
ステップS320において、空気調和装置は、ステップS310で認定された「集中」領域に対して、設定温度より3℃低い室内温度にするための予冷運転を、3〜5分間で実行する。これにより、室内温度が設定温度より低い温度になり、「集中」領域に存在するユーザWに対して冷刺激を与え、ユーザWの集中力の上昇を促進する。
ステップS320での予冷運転が完了すると、ステップS330において、空気調和装置は、「集中」領域に対して、予冷運転完了後の室内温度、すなわち設定温度より3℃低い温度を維持し、集中途中のユーザWの温冷感を維持する空調運転を開始する。
ステップS340において、空気調和装置は、「集中」領域の活動量レベルが変化していないか否か、すなわちユーザWの活動量が「安静」レベルおよび/または「小」レベルであるか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS350に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS350において、空気調和システムの体温測定部(例えばウェラブル端末)は、ユーザの体温を測定する。
ステップS360において、空気調和装置は、ユーザの体温が集中運転モード開始時の体温からの体温上昇量が所定のしきい値を超えているか否か、すなわち集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しているか否かを判定する。超えている場合には、ステップS370に進む。そうでない場合はステップS340に戻る。
ステップS370において、「安静」領域および/または「活動量小」領域である「集中」領域に対して、集中維持運転として、「活動量中」領域に対応する空調運転を開始する。
ステップS380において、ステップS340と同様に、空気調和装置は、「集中」領域の活動量レベルが変化していないか否かを判定する。活動量レベルが変化していない場合、ステップS390に進む。そうでない場合、ユーザWの集中が切れて該ユーザWの活動量が増加したと判定し、集中モード運転を終了する。
ステップS390において、運転終了フラグが発生すると、空気調和装置は、集中モード運転を終了する。運転終了フラグが発生していない場合には、ステップS370に戻る。
以上のような本実施の形態3によれば、上述の実施の形態1と同様に、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を提供することができる。
(実施の形態4)
上述の実施の形態1〜3の場合、ユーザの活動量は人体検出センサの検出結果に基づいて推定される。具体的には、人体検出センサに含まれる複数の赤外線センサ素子の検出エリアそれぞれでの人体検出頻度に基づいて、ユーザの活動量と該ユーザの位置とを推定する。これと異なり、本実施の形態4にでは、異なる方法でユーザの活動量を推定する。したがって、この異なる点を中心に、本実施の形態4について説明する。
本実施の形態4に係る空気調和システムは、体動検出装置として、ユーザに装着されて該ユーザの加速度を測定する加速度測定装置を含んでいる。加速度測定装置は、例えば加速度センサを備えたウェラブル端末である。
本実施の形態4に係る空気調和システムにおける活動量推定部は、加速度測定装置によって測定された加速度の変化に基づいてユーザの活動量を推定する。例えば、所定のしきい値を超える加速度の変化頻度が高いほど、またその変化量が大きいほど、大きい活動量が推定される。そして、集中モード運転中に、集中維持運転の所定の開始条件(例えば、集中モード運転の開始から15分経過またはユーザの体温の上昇)が成立すると、活動量推定部によって推定された活動量を増加補正し(例えば30%増分する)、その増加補正された活動量に対応する空調運転を、空気調和装置が実行する。
なお、本実施の形態4の場合、上述の実施の形態1〜3とは異なり、ユーザの位置を推定しないため、ユーザが存在する室内全体に対して集中モード運転が実行される。
以上のような本実施の形態4によれば、上述の実施の形態1〜3と同様に、知的作業に集中しているユーザに対して快適な空調を実現することができる。
以上、上述の4つの実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されない。
例えば、上述の実施の形態1の場合、図5に示すように、集中モード運転の開始後(タイミングP1後)、ユーザの集中力の上昇を促すためにユーザの温冷感を低下させる予冷運転が実行される。例えば、予冷運転として、設定温度より3℃低い室内温度にする空調運転が実行される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
例えば、集中モード運転開始タイミング時の室内温度が低い場合、例えばユーザが「寒い」または「涼しい」と感じるような室内温度である場合、予冷運転を実行してユーザの温冷感をさらに低下させると、かえってユーザの集中を妨げる場合がある。したがって、例えば、集中モード運転開始時の室内温度が所定の温度に比べて低い場合には、予冷運転を実行しないようにしてもよい。
さらに、上述の実施の形態2および3の場合、図10および図11に示すように、集中モード運転を開始してから15分経過する前に、ステップS260およびS370の集中維持運転を開始する可能性がある。15分経過する前に集中維持運転を開始すると、集中力が最大に達していない状態、すなわち「暑い」と感じていないユーザの温冷感を低下させることなり、ユーザの集中力が低下する可能性がある。そこで、集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しても集中モード運転を開始してから13分経過していないときは、15分経過するまで集中維持運転の開始を遅らせるようにしてもよい。また、これと異なり、集中モード運転を開始してから15分経過しても集中維持運転を開始する所定の開始条件が成立しない場合には、17分経過後に強制的に集中維持運転を開始してもよい。
さらにまた、上述の実施の形態1〜3の場合には、図4に示すように、複数の空調対象領域において、ユーザが存在する空調対象領域である「集中」領域に対して集中モード運転が実行される。また、ユーザが存在する「集中」領域は、活動量推定部によって推定される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、ユーザが、集中モード運転が実行される空調対象領域を選択できるように空気調和システムを構成してもよい。例えば、リモートコントローラがタッチスクリーン部を備え、そのタッチスクリーン部に図4に示す複数の空調対象領域を表示する。タッチスクリーン部に表示された複数の空調対象領域のいずれかをユーザがタッチすることにより、集中モード運転が実行される空調対象領域がユーザによって選択される。
また例えば、上述の実施の形態1〜3において、集中モード運転が実行される度に「集中」領域と認定された空調対象領域をメモリなどの記憶部に記憶し、その記憶部に蓄積された「集中」領域の履歴に基づいて、集中モード運転が実行される、すなわち集中して知的作業を行うユーザが存在する「集中」領域を認定してもよい。実質的に身体を動かすことなく集中して行われる知的作業は、図1に示すように、例えば机が設置されている空調対象領域で行われる。そのため、「集中」領域は、机のレイアウト変更がないかぎりは、変わらない。
加えて、ユーザの活動量は、上述の実施の形態1〜3では人体検出センサの検出結果に基づいて、上述の実施の形態4では加速度センサの検出結果に基づいて推定される。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。例えば、空気調和システムが体動検出装置としてカメラを含み、カメラの撮影画像に写るユーザの像の変化量に基づいて、そのユーザの活動量を推定することも可能である。
加えてまた、ある実施の形態の少なくとも一部に対して別の少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。