第1の発明は、室内機に設けられた人体検知センサにより人の在室状況を検知すると共に所望の設定温度により設定された制御目標値に基づき空調制御を行う空気調和機であって、前記人体検知センサの情報を基に人の在室あるいは不在を判別する在不在検知手段と、前記人体検知センサの情報を基に在室している人の活動量レベルを判別する活動量検知手段と、前記所望の設定温度を所定の温度変化率及び所定の温度変化幅で省エネルギー方向にシフトさせて前記所望の設定温度を補正する温度シフト手段と、前記温度シフトが終了後、前記所望の設定温度を所定の上限温度、所定の下限温度及び所定範囲内の周期に基づいて予め決定された上下変動パターンに基づいて前記上下変動パターンを繰り返すように変動させて前記所望の設定温度を補正する温度上下変動手段とを備え、前記在不在検知手段によって在室と判定され、かつ、冷房時において、前記活動量検知手段によって判定された活動量レベルが所定活動量レベル以下の状態が所定時間以上継続すれば、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正を行い、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正が行われた状態で、前記在不在検知手段によって不在と判定さ
れた場合には、直ちに、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正を終了するものである。これによって、冷房時においては、人が在室している時に、室温は設定温度から人が感知することがない温度だけ上げられ、その後さらに、室温を上げた後の人の体温変動を抑制しながら人が感知することがない室温変動パターンを与えることができ、設定温度で冷房運転されている場合よりも少ないエネルギーで冷房運転されているにも拘らず、在室者は長時間在室しても、室温を上げることによる暑さ、不快さを感じることなく、設定温度で冷房運転されている場合と同様の快適性を享受することができる。また、不在になった後再度入室する入室者の快適性をそこなわない。
第2の発明は、室内機に設けられた人体検知センサにより人の在室状況を検知すると共に所望の設定温度により設定された制御目標値に基づき空調制御を行う空気調和機であって、前記人体検知センサの情報を基に人の在室あるいは不在を判別する在不在検知手段と、前記人体検知センサの情報を基に在室している人の活動量レベルを判別する活動量検知手段と、前記所望の設定温度を所定の温度変化率及び所定の温度変化幅で省エネルギー方向にシフトさせて前記所望の設定温度を補正する温度シフト手段と、前記温度シフトが終了後、前記所望の設定温度を所定の上限温度、所定の下限温度及び所定範囲内の周期に基づいて予め決定された上下変動パターンに基づいて前記上下変動パターンを繰り返すように変動させて前記所望の設定温度を補正する温度上下変動手段とを備え、前記在不在検知手段によって在室と判定され、かつ、暖房時において、前記活動量検知手段によって判定された活動量レベルが所定レベル以上の状態が所定時間以上継続すれば、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正を行い、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正が行われた状態で、前記在不在検知手段によって不在と判定された場合には、直ちに、前記温度シフト手段と前記温度上下変動手段とによる補正を終了するものである。これによって、暖房時においては、人が在室している時に、室温は設定温度から人が感知することがない温度だけ下げられ、その後さらに、室温を下げた後の人の体温変動を抑制しながら人が感知することがない室温変動パターンを与えることができ、設定温度で暖房運転されている場合よりも少ないエネルギーで暖房運転されているにも拘らず、在室者は長時間在室しても、室温を下げることによる寒さ、不快さを感じることなく、設定温度で暖房運転されている場合と同様の快適性を享受することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
一般家庭で使用される空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1及び図2は、本発明にかかる空気調和機の室内機を示している
。
室内機は、本体2と、本体2の前面開口部2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面開口部2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面開口部2aを開放する。なお、図1は前面パネル4が前面開口部2aを閉じた状態を示しており、図2は前面パネル4が前面開口部2aを開放した状態を示している。
図3に示されるように、本体2の内部には、熱交換器6と、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気を熱交換器6で熱交換して室内に吹き出すためのファン8と、熱交換した空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下羽根12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右羽根(図示せず)とを備えており、前面開口部2aの下方の本体2には、前面開口部2aの吹出口10側で開閉する中羽根14が中羽根駆動機構16を介して揺動自在に取り付けられている。さらに、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18、20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面開口部2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。また、上下羽根12は、その両端部に設けられた2本のアーム22、24を介して本体2下部に連結されているが、その駆動方法については後述する。
図1(b)及び(c)に示されるように、前面パネル4の上部には、複数(例えば、五つ)のセンサユニット26、28、30、32、34が前面パネル4の主平面から突出した状態で人体検知装置として取り付けられており、これらのセンサユニット26、28、30、32、34は、図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。なお、人体検知装置は、図1(a)に示されるようにカバー5で覆われており、図1(b)はカバー5を取り外した状態を示している。
各センサユニット26、28、30、32、34を前面パネル4の上部に設けたのは、図5(a)に示されるように、各センサユニット26、28、30、32、34の視野範囲(後述する人体位置判別領域)を拡大して遠方視野を最大限確保するためである。また、図5(b)に示されるように、運転開始時に前面パネル4を停止位置より前方に移動させることでより遠くまで視野範囲を確保することができるとともに、図5(c)に示されるように、前面パネル4を停止位置より斜め上方に移動させることで視野範囲をさらに拡大することができる。なお、各センサユニット26、28、30、32、34の位置は前面パネル4の上部に限定されるわけではなく、また、前面パネルが可動でない場合でも、人体検知装置を前面パネルの上部あるいは本体上部に取り付けることにより下部に取り付けた場合に比べ視野範囲を拡大することができる。
また、図5(d)に示されるように、各センサユニット26、28、30、32、34を前面パネル4の主平面から突出させて設けることで、各センサユニット26、28、30、32、34をより前方に配置することができ、図5(b)〜(d)に示されるように、室内機の構成部(例えば、上下羽根12や、前面開口部2aを開放状態の前面パネル4など)による死角発生を防止して視野範囲を拡大させることができる。
本実施の形態では、各センサユニット26、28、30、32、34は前面パネル4に設けられているので、前面パネル4が前面開口部2aを開放状態としたときには前面パネル4に付随して移動することとなり、更に前方に突出することとなる。
また、センサユニット26は、回路基板26aと、回路基板26aに取り付けられたレンズ26bと、レンズ26bの内部に実装された人体検知センサ(図示せず)とで構成されており、この構成は、他のセンサユニット28、30、32、34についても同様である。さらに、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板26aにより人の在否が判定される。すなわち、回路基板26aは人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。以下、互いに対をなすセンサとレンズをセンサ・レンズ対という。
ここで、前後左右方向の検知領域を得るために、図6の側面図に示されるように任意の球Zの表面上にセンサユニット26、28、30、32、34を配置することが考えられる。この場合、各センサユニット26、28、30、32、34のセンサ・レンズ対の光軸は球Zの中心Pで交差し、ねじれの位置にない。室内機から見れば、球Zの表面上にセンサユニット26、28、30、32、34が前後方向に飛び出した配置となるため、人体検知装置の小型化は困難である。
また、上記のようなセンサユニットの飛び出しを抑制するため、図7のように任意の球Zを任意の平面Xで切り取り、平面Xと各センサユニット26、28、30、32、34の光軸(ねじれの位置でない)との交点に各センサユニット26、28、30、32、34を配置することも考えられる。この場合、センサユニット26、28、30、32、34の配置は図8の正面視に示されるように前後方向への飛び出しは少なくなるが、センサユニット26と30のように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットの配置が縦横方向に分散してしまい、人体検知装置の小型化に限界がある。
そこで、本実施の形態においては、センサユニット26、28のセンサ・レンズ対の光軸は同一平面上にあり、センサユニット30、32、34のセンサ・レンズ対の光軸は別の同一平面上にあるものの、センサユニット26、28のセンサ・レンズ対の光軸と、センサユニット30、32、34のセンサ・レンズ対の光軸とは同一平面上にはなく、ねじれの位置となるようにそれぞれの回路基板26a、28a、30a、32a、34aを所定の角度に傾斜させてセンサホルダ36に取り付けている。
このように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸をねじれの位置とすることで、図1および図2に示されるようにセンサユニット26、28、30、32、34は横方向に略直線状に配置でき、人体検知装置の小型化が可能となる。
なお、室内機からセンサユニットの検知領域までの距離の異なるセンサユニットを横方向に略直線状に配置した例について説明したが、左右方向の異なるセンサユニットを室内機の高さ方向に略直線状に配置する場合も同様のことが言える。
以上のように本実施の形態によれば、室内機に設けられた複数のセンサユニット26、28、30、32、34のうち、該センサユニットの視野エリアと空気調和機との距離が異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸が互いにねじれの位置となるようにしたので、センサユニット26、28、30、32、34が室内機の前面パネル4から飛び出さないように設置できるようになり、人体検知装置の小型化が可能となる。
また、センサユニット26、28、30、32、34を略直線上に配置することで、センサユニット26、28、30、32、34が縦横方向に分散することがなく、センサユニット26、28、30、32、34の小型化が可能となる。
また、このようにセンサ・レンズ対の光軸がねじれの位置にある複数のセンサユニット26、28、30、32、34を人体検知装置に設け、各センサ・レンズ対の光軸が視野方向に向くように配設したので、人体検知装置から見て距離方向に複数の検知領域と、左右方向に複数の検知領域を形成することができるとともに、集光効率が向上することでレンズの小型化が可能になる。
図9は、センサユニット26、28、30、32、34で検知される人体位置判別領域を示しており、センサユニット26、28、30、32、34は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット26:領域A+C+D
センサユニット28:領域B+E+F
センサユニット30:領域C+G
センサユニット32:領域D+E+H
センサユニット34:領域F+I
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、センサユニット26、28で検知できる領域と、センサユニット30、32、34で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Iにおける人の在否を検知するようにしている。
また、少なくとも三つの人体検知センサを室内機の上部に取り付けることで、室内における人体の位置を室内機に対して遠近方向と左右方向、すなわち室内フロアのどこにいるのかを二次元的に把握することができる。図10は三つの人体検知センサを設けた場合の検知される領域を示しており、図10の例では、室内機の近傍の領域における人の在否が一つの人体検知センサで検知され、室内機から遠い領域における人の在否が二つの人体検知センサで検知される。
図9に戻って本実施の形態をさらに説明するが、以下の説明ではセンサユニット26、28、30、32、34を第1のセンサ26、第2のセンサ28、第3のセンサ30、第4のセンサ32、第5のセンサ34という。また、領域C、D、E、Fは二つのセンサで検知されるので、重なり領域というのに対し、重なり領域以外の領域(領域A、B、G、H、I)は一つのセンサで検知されるので、通常領域という。また、重なり領域は、左の重なり領域C、Dと右の重なり領域E、Fに分けられる。
図11は、第1乃至第5のセンサ26、28、30、32、34を使用して、領域A〜Iの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図12は、第1乃至第5のセンサ26、28、30、32、34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で左の重なり領域における人の在否がまず判定され、ステップS2において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表1は、左の重なり領域の判定方法を示しており、表1に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第1のセンサ26及び第3のセンサ30の出力をクリアする。ここで、1は反応有り、0は反応無し、クリアは1→0にすることと定義する。
ステップS3では、上述した所定の周期T1で右の重なり領域における人の在否がさらに判定され、ステップS4において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表2は、右の重なり領域の判定方法を示しており、表2に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第2のセンサ28及び第5のセンサ34の出力をクリアする。
また、表1及び表2に示される六つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第4のセンサ32の出力もクリアし、ステップS5に移行する。ステップS5においては、上述した所定の周期T1で通常領域における人の在否が表3に基づいて判定され、ステップS6において、全てのセンサ出力をクリアする。
さらに、図13を参照して第1乃至第3のセンサ26、28、30からの出力のみを使用して領域A、B、Cにおける人の在否を判定する場合について説明する。
図13に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ26、28、30がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A、B、Cに人はいないと判定する(A=0、B=0、C=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ26のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ28、30がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B、Cには人がいないと判定する(A=1、B=0、C=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第3のセンサ26、30がON信号を出力し、第2のセンサ28がOFFの場合、時間t3において領域Cに人がいて、領域A、Bには人がいないと判定する(A=0、B=0、C=1)。以下、同様に周期T1毎に各領域A、B、Cにおける人の在否が判定される。
実際には、第1乃至第5のセンサ26、28、30、32、34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人が存在するかどうかの判定が行われるが、この判定結果に基づいて各領域A〜Iを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域
(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分ア、生活区分イ、生活区分ウといい、生活区分ア、生活区分イ、生活区分ウはそれぞれ、領域特性アの領域、領域特性イの領域、領域特性ウの領域ということもできる。また、生活区分ア(領域特性ア)、生活区分イ(領域特性イ)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分ウ(領域特性ウ)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図11のフローチャートにおけるステップS7以降で行われ、この判別方法について図14及び図15を参照しながら説明する。
図14は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図14における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Iにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS7において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS7において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Iにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Iをそれぞれ生活区分ア〜ウのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図15を参照して、さらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS9において生活区分アと判別する。また、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS10において、各領域A〜Iの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS11において生活区分イと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS12において生活区分ウと判別する。
図15の例では、領域E、F、Iが生活区分Iとして判別され、領域B、Hが生活区分イとして判別され、領域A、C、D、Gが生活区分ウとして判別される。
また、図16は別の1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図17はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Iを判別した結果を示している。図16の例では、領域C、E、Gが生活区分Iとして判別され、領域A、B、D、Hが生活区分イとして判別され、領域F、Iが生活区分ウとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図12のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Iにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S26は、上述した図11のフローチャートにおけるステップS1〜S6と同じなので、その説明は省略する。ステップS27において、所定数M(例えば、
15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS28において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS29において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS30において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Iにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS31において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表4は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表4中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、領域における過去の数回分の履歴(例えば、ΣA3、ΣA2、ΣA1、ΣA0の4回分)と生活区分と累積反応期間回数から人の在否を推定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、判別領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表5は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明にかかる空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第5のセンサ26、28、30、32、34により複数の領域A〜Iに区分した後、各領
域A〜Iの領域特性(生活区分ア〜ウ)を決定し、さらに各領域A〜Iの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Iにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分イと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分アと判別された領域では、生活区分イと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分イと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分ウと判別された領域では、生活区分イと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分イと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、前述のように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
また、各領域A〜Iにおける空調設定に応じて、ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根の風向制御が行われるが、これらの制御について以下説明する。
暖房時の風向制御は、人がいると判定された領域における人の足元手前に風向きを制御することで足元近傍に温風を到達させ、冷房時の風向制御は、人の頭上上方に風向きを制御することで頭上上方に冷風を到達させる。風向きはファン8の回転数と、上下羽根12あるいは左右羽根の角度により調節する。
図18は、上下羽根12の回転制御を示しており、空気調和機停止時には、図18(a)に示されるように、前面パネル4と上下羽根12と中羽根14は全て閉塞した状態にある。
冷房時は、吹き出し空気(冷風)を人の頭上上方に到達させるため(冷房天井気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(c)に示される状態に至る。まず、アーム18、20が駆動制御されて前面パネル4が前面開口部2aから離反するとともに、アーム22、24が駆動制御されて上下羽根12が吹出口10から離反する。
図18(c)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により水平方向に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が上方へ湾曲しているため、部屋の遠方まで空気を送ることができる。この時、吹出口10の上方、すなわち前面パネル4の下方は中羽根14により閉塞されており、吹出口10から吹き出した空気の一部が前面開口部2aに導かれることはない。
一方、暖房時は、吹き出し空気(温風)を人の足元近傍に到達させるため(暖房足元気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(d)に示される状態に至る。図18(d)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により斜め下方に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が本体側へ湾曲しているため、部屋の上方に溜まりやすい暖かい空気を部屋の下方に送ることができる。
なお、図18(e)は、安定前の冷房時に利用され、吹き出し空気は人体に向けられる(人体向け気流)。
図19は、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数を示しており、A1、A2、A3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準回転数で、A4は距離が同じ場合の領域の違いによる回転数差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。
A1:800rpm(暖房時)、700rpm(冷房時)
A2:1000rpm(暖房時)、900rpm(冷房時)
A3:1200rpm(暖房時)、1100rpm(冷房時)
A4:100rpm(冷暖共通)
ここで、各領域における室内機からの距離、室内機正面からの角度、高低差等、室内機との位置関係を表す表現として、相対位置という表現を導入する。
また、各領域において空調がし易い、空調がし難い度合いを空調要求度という表現により表し、空調要求度が高いほど空調がよりし難い、空調要求度が低いほど空調がよりし易いとする。例えば、室内機からの距離が遠いほど吹き出し空気が届き難く空調がし難いので空調要求度が高くなる。即ち、空調要求度と室内機からの相対位置には密接な関連性があり、本実施の形態では、室内機からの相対位置に応じて空調要求度を定める。
したがって、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数は、空調要求度が高いほど高く設定されることを意味している。すなわち、空調すべき領域の位置が室内機より遠いほどファン8の設定回転数は高く設定されるとともに、室内機からの距離が同じ場合には室内機の正面より左右にずれた領域ほどファン8の設定回転数は高く設定される。また、空調すべき領域が一つの場合、その領域の設定回転数(風量)に設定され、空調すべき領域が複数の場合、空調要求度が高い領域の設定回転数に設定される。
また、図20は、暖房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、B1、B2、B3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、B4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、C1及びC2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、C3及びC4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、上下羽根12の角度とは、羽根が上に凸の状態で羽根の前後端を結んだ線が水平の場合を0°とし、この位置を基準にして反時計方向に計測した場合の角度のことである。
B1:70°
B2:55°
B3:45°
B4:10°
C1:0°
C2:15°
C3:30°
C4:45°
すなわち、室内機に近い領域AあるいはBの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度(例えば、70°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数(例えば、800rpm)に設定され、領域AあるいはBにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。また、室内機から中距離にある領域C、D、EあるいはFの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度よ
り小さい第2の角度(例えば、55°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(例えば、1000rpm)に設定され、領域C、D、EあるいはFにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。さらに、室内機から最も遠い領域G、HあるいはIの暖房を行う場合、上下羽根12は、第2の角度より小さい第3の角度(例えば、45°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(例えば、1200rpm)に設定され、領域G、HあるいはIにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。
図21は、立ち上がりあるいは不安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、E1、E2、E3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、E4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、F1及びF2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、F3及びF4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、立ち上がりとは、空気調和機の運転開始時のことで、不安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっていない状態のことである。
E1:50°
E2:35°
E3:25°
E4:10°
F1:0°
F2:15°
F3:25°
F4:35°
また、図22は、安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、H1は天井気流の場合の基準上下羽根角度で、H2はにがし気流の場合の基準上下羽根角度で、H3は距離の違いによる上限羽根角度差分であるのに対し、I1及びI2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、I3及びI4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっている状態のことである。
H1:180°
H2:190°
H3:5°
I1:0°
I2:15°
I3:25°
I4:35°
ここで、天井気流とは、図18(c)に示されるように、上下羽根12を吹出口10の下部に位置させて吹き出し風を全て羽根の凹面で受けて風を送り出した場合の気流のことであり、にがし気流とは、上下羽根12を天井気流時より多少上部に位置させて、吹き出し風の一部(微量)を羽根の凸面側(羽根の下方)にも流し羽根凸面に結露が発生しにくい状態にして風を送り出した場合の気流のことである。
室内機に近い領域AあるいはBの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ下方に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数(暖房時の第1の回転数より少ない回転数で、例えば、700rpm)に設定され、領域AあるいはBの頭上上方に冷風を到達させ、冷気がシャワー状に落ちてくるように設定されている。また
、室内機から中距離にある領域C、D、EあるいはFの冷房を行う場合、上下羽根12は、略水平に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(暖房時の第2の回転数より少ない回転数で、例えば、900rpm)に設定され、領域C、D、EあるいはFの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。さらに、室内機から最も遠い領域G、HあるいはIの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ上方に設定され、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(暖房時の第3の回転数より少ない回転数で、例えば、1100rpm)に設定され、領域G、HあるいはIの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。
次に、空調すべき領域の数に応じて行われる風向制御について図23のフローチャートを参照しながら説明する。
空気調和機の運転開始後、ステップS41において、領域A〜Iにおける人の在否判定がまず行われ、ステップS42において、人がいると判定された領域が一つ、すなわち空調すべき領域が一つの場合、ステップS43において、その領域に応じて設定された風量、風向に基づいて空調が行われる。ステップS42において、空調すべき領域が一つではないと判定されると、ステップS44において、空調すべき領域が二つかどうかを判定し、空調すべき領域が二つの場合、ステップS45に移行する。
ステップS45においては、風量は空調要求度の高い領域の設定風量に設定され、二つの領域の配置モードを図24に示されるように五つのモードのいずれかに識別し、次のステップS46において、識別されたモードに応じて表6のように制御する。
ここで、モード1は中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域の場合を表し、モード2は室内機との角度が略一致し、前後関係に隣接する2領域の場合を表している。また、モード3は室内機との角度が略一致し、前後関係に離間する2領域の場合を表し、モード4は室内機との距離が略一致し、角度が異なる2領域の場合を表し、モード5は離間する2領域、換言すれば室内機との距離も角度も異なる2領域の場合を表している。
モード1〜4の上下風向は、暖房時は要求度の低い領域に固定される一方、冷房時は要求度の高い領域に固定される。また、モード5の上下風向は、上下羽根12の動作を制御して、二つの領域(第1及び第2の領域)のうち、第1の領域に所定時間停留(角度固定)した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、例えば室内機からの距離に応じてそれぞれ設定され、室内機からの距離が遠いほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、モード1の左右風向は、隣接した二つの領域の中央に固定され、モード2及び3の場合、二つの領域が室内機から見て距離の異なる略同一方向にあると見なして、その左
右風向は、要求度の高い領域に固定される。さらに、モード4及び離間する二つの領域の配置からなるモード5の左右風向は、上下羽根12の制御と同様に左右羽根の動作を制御して、第1の領域に所定時間停留した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域に向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、各領域に対する室内機からの相対位置、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、ステップS44において空調すべき領域が二つではないと判定されると、ステップS47において、空調すべき三つ以上の領域をその配置に応じて通常モードと特殊モードの二つのモードのいずれかに判定する。ここで、特殊モードは、中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域と、遠距離であり、かつ室内機正面に位置する1領域、計3領域の場合を表し、それを除く三つ以上の領域の場合を通常モードと表す。空調すべき領域が三つ以上の場合、風量は空調要求度の最も高い領域の設定風量に設定され、ステップS47において、図21(a)に示される特殊モード(中央隣接)と判定されると、ステップS48において、風向は図20のモード1と同様に設定される。
一方、ステップS47において、特殊モードではないと判定されると、ステップS49において、図25(b)あるいは(c)に示される通常モードの制御が行われ、上下風向は、室内機に最も近い領域の上下羽根12の設定角度と、室内機に最も遠い領域の上下羽根12の設定角度との間で上下羽根12の角度を変更する。
また、通常モードの場合の左右風向は、両端の領域(図25(b)では領域CとI、図25(c)では領域CとH)における左右羽根の設定角度を左端角度及び右端角度に設定して、左端角度に所定時間停留した後、右端側の領域に向かって風向を変え(スイング)、右端角度に所定時間停留した後、左端側の領域に向かって風向を変える動作(スイング)を繰り返す。なお、スイング時の左右羽根の作動速度は、上述したモード4及び5における左右羽根の作動速度より遅く設定される。また、左端角度あるいは右端角度における停留時間は、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
なお、ステップS43、S46、S48あるいはS49においてそれぞれの空調制御が行われた後、ステップS41に戻る。
上述したように、人がいる領域に応じて上下羽根12あるいは左右羽根による風向制御が行われるが、空調要求度が高いほど、また外気の負荷が大きいほど、リモコンで設定した設定温度と人がいる領域の実温度との温度差が大きくなる傾向がある。そこで、この温度差を極力小さくするための温度補正方法につき、以下説明する。
まず、一つの領域にのみ人がいる場合の温度補正について説明する。
暖房時は、空調すべき領域が室内機から遠いほど、あるいは室内機から見て左右端寄りの領域ほど、温風が届きにくいので、これらの領域は高めに補正する一方、室内機に近い領域ほど、あるいは室内機から見て中央寄りの領域ほど低めに補正する。冷房時は逆に、冷風が届きにくい領域ほど低めに補正する一方、冷風が届きやすい領域ほど高めに補正する。
図26及び図27は、暖房時、外気温センサ(図示せず)で検知された外気温に応じて各領域A〜Iの温度がリモコン設定温度になるように、室内機の吸込空気温度を補正するための温度補正値を示しており、図26の温度補正値は図28の外気温領域Xに対応し、
図27の温度補正値は図28の外気温領域Yに対応している。
すなわち、外気温が低いほど補正値は大きく、下降傾向の外気温変化では、第1の外気温(13℃)より高い外気温では温度補正はせず、外気温が第1の外気温より低下すると、補正なしの領域から外気温領域Xに入り、外気温が第2の外気温(5℃)よりさらに低下すると外気温領域Xから外気温領域Yに入る。逆に、上昇傾向の外気温変化では、第3の外気温(9℃)より低い外気温が外気温領域Yで、外気温が第3の外気温より上昇すると、外気温領域Yから外気温領域Xに入り、外気温が第4の外気温(17℃)よりさらに上昇すると、温度補正はしない。
一方、冷房時の温度補正値は、図26及び図27に示される温度補正値の+と−を逆にした値となり、外気温変化に対する図28に対応する外気温領域は図29のように設定され、この場合の第1乃至第4の外気温は適宜設定される。
一例として、暖房時、外気温が3℃、リモコン設定温度が23℃で、領域Gに人がいる場合、温度補正値は+1℃となるので、制御目標値(リモコン設定温度+補正値)は24℃となる。
次に複数の領域に人がいる場合の温度補正について詳述すると、まず領域A〜Iを次のように三つのブロックに区分する。
第1ブロック:領域A、C、G
第2ブロック:領域D、E、H
第3ブロック:領域B、F、I
これら三つのブロックは、室内機から見て左側、中央、右側にそれぞれ位置しており、六つ以上のセンサを使用して空調すべき領域をさらに多くの領域に区分し、これらの領域を三つ以上のブロックに分割する場合についても、室内機から見て略同一方向に位置する複数の領域を同一のブロックに割り当てる。
さらに、室内機からの距離に応じて各領域A〜Iを次のように距離1の領域、距離2の領域、距離3の領域に区分する。
距離1の領域:領域A、B
距離2の領域:領域C、D、E、F
距離3の領域:領域G、H、I
このようにブロック別、距離別に各領域A〜Iを区分し、暖房時複数の人が同一ブロックにいる場合には、各領域A〜Iに設定された温度補正値をまず算術平均し、得られた温度補正値を図30に示される温度補正値を使用してさらに補正する。図30に示される補正なしの領域、領域X、領域Yは、図28に示される各領域と同じであるが、同一ブロック内の距離の差に応じて補正値を変えている点が図28とは異なる。暖房時、室内機から見て複数の人が前後方向に位置している場合、上述したように、室内機に最も近い人の足元手前に風向きを制御するようにしており、室内機から遠い人に温風が届きにくい。
そこで、図30に示されるように、ブロック内の距離差に応じて温度補正値を次のように設定して制御目標値を高めにしている。
領域X
ブロック内の距離差が2:温度補正値を+0.5℃に設定
ブロック内の距離差が1あるいは0:温度補正せず
領域Y
ブロック内の距離差が2:温度補正値を+1.0℃に設定
ブロック内の距離差が1:温度補正値を+0.5℃に設定
ブロック内の距離差が0:温度補正せず
この場合、図26あるいは図27に示される領域別の温度補正値を使用してブロック内の平均温度補正値をまず算出し、この平均温度補正値を前後の距離差に基づく温度補正値に加算して合計温度補正値を決定する。
一例として、暖房時、外気温が3℃、リモコン設定温度が23℃で、同一ブロック内の領域Bと領域Iに人がいる場合、制御目標値(リモコン設定温度+補正値)は次のように決定される。
領域別温度補正値=(−1℃+1℃)/2=0℃
距離差に基づく温度補正値=+1℃
制御目標値=23℃+0℃+1℃=24℃
一方、暖房時複数のブロックに人がいる場合、図31に示される温度補正値を使用して温度補正する。暖房時、複数のブロックに人がいる場合、室内機から見て左右のずれ幅が大きいほど複数の人への温風配分量が減少するので、図31に示されるように、人がいる複数のブロックの位置に応じて温度補正値を次のように設定して制御目標値を高めにしている。
領域X
離れた二つのブロック(第1のブロックと第3のブロック)に人がいる場合:温度補
正値を+0.5℃に設定
それ以外の二つのブロックに人がいる場合:温度補正せず
領域Y
離れた二つのブロックに人がいる場合:温度補正値を+1.0℃に設定
それ以外の二つのブロックに人がいる場合:温度補正値を+0.5℃に設定
この場合、図26あるいは図27に示される領域別の温度補正値を使用してブロック内の平均温度補正値をまず算出し、さらにこのブロック内の平均温度補正値に基づいて全ブロックの平均温度補正値を算出し、算出された全ブロックの平均温度補正値を図31に示される温度補正値に加算して合計温度補正値を決定する。
一例として、暖房時、外気温が3℃、リモコン設定温度が23℃で、二つのブロックにまたがる領域Gと領域Iに人がいる場合、制御目標値(リモコン設定温度+補正値)は次のように決定される。
領域別温度補正値=(1℃+1℃)/2=1℃
ブロック間の温度補正値=+1℃
制御目標値=23℃+1℃+1℃=25℃
なお、複数のブロックに人がいる場合の冷房時の温度補正値については、暖房時の温度補正値を適宜修正して算出できるので、その説明は省略する。
また、左右羽根による風向制御の場合、ブロック別温度補正値に人の「活動量」の概念を導入することもできる。まず、この「活動量」について説明する。
人の活動量とは人の動きの大きさの度合いを示す概念で、複数の活動量レベルに分類され、例えば「安静」、「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」に分類される。
「安静」とは、ソファで寛いでいる、テレビを視聴している、パソコンを操作している等、同じ場所に人が継続している状態が持続している場合のことで、安静状態が持続した
場合、代謝量が低下して寒く感じる。活動量「大」とは、室内の清掃等広域で活動している場合のことで、代謝量増加により暑く感じる。活動量「中」とは、炊事等狭域で活動している場合のことで、代謝量増加によりやや暑く感じる。活動量「小」とは、食事等同じ場所で多少活動している場合のことで、代謝量に大きな変化は見られない。
次に、人の活動量の分類方法について図32のフローチャートを参照しながら詳述する。
まずステップS51において、所定時間T1毎に各センサ26、28、30、32、34の反応頻度(出力パルス有り)を計測し、ステップS52において、計測回数が所定回数に達したかどうかを判定する。なお、所定時間T1は、上述した人の在否判定における所定の周期T1と同じであるが、ここでは、例えば2秒に設定され、計測回数の所定回数は、例えば15回に設定されるものと仮定し、15回の計測を総称して1ユニット計測(30秒間の計測)という。また、ここでいう「計測回数」とは、領域A〜Iのいずれかの領域における計測回数のことで、全ての領域A〜Iに対し同様の計測が行われる。
ステップS52において、計測回数が所定回数に達していないと判定されるとステップS51に戻り、計測回数が所定回数に達し1ユニット計測が終了したと判定されると、ステップS53において、4ユニット計測(2分間の計測)が終了したかどうかを判定する。ステップS53において、4ユニット計測が終了していない場合にはステップS51に戻り、4ユニット計測が終了している場合にはステップS54に移行する。
ステップS54においては、4ユニット計測(現在の1ユニット計測を含め過去4回のユニット計測)のセンサの合計反応頻度が所定数(例えば、5回)に達したかどうかを判定し、所定数に達していれば、ステップS55において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p、詳しくは後述)がクリアされた後、ステップS56に移行する。
ステップS56においては、全領域A〜Iにおけるセンサの合計反応頻度が所定数(例えば、40回)に達したかどうかを判定し、所定数に達している場合には、ステップS57において、「安静」と判定されたブロック(後述)を除き在判定された全てのブロックが「活動量大」と判定される一方、所定数に達していない場合には、ステップS58において、4ユニット計測のセンサの合計反応頻度が所定数に達した領域の属するブロックが「活動量中」と判定される。ステップS57あるいはステップS58における活動量判定後、ステップS59において、ユニット計測数(q)から1を減算してステップS51に戻る。すなわち、連続する4ユニット計測で各センサの合計反応頻度が所定数を超え「活動量大」あるいは「活動量中」と判定された領域の属するブロックは、さらに次回の1ユニット計測後、その時点における4ユニット計測の合計反応頻度が所定数を超えた場合には、引き続き「活動量大」あるいは「活動量中」と判定される。
また、ステップS54において、4ユニット計測でセンサの合計反応頻度が所定数未満と判定されると、ステップS60において、その領域の属するブロックが「安静」かどうかが判定され、「安静」でなければ、ステップ61において「活動量小」と判定される。次のステップS62において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)がカウントされ、ステップS63において、「活動量小」と判定された後60ユニット計測(30分間の計測)が終了したかどうかを判定する。
ステップS63において、60ユニット計測が終了していないと判定されると、ステップS59に移行する一方、60ユニット計測が終了したと判定されると、その領域だけが当該領域の属するブロックにある場合に限り、ステップS64において「安静」と判定さ
れた後、ステップS59に移行する。すなわち、ステップS59に移行することで、次の1ユニット計測を含む過去4回のユニット計測で各センサの合計反応頻度に応じて、各ブロックは「活動量大」、「活動量中」、「活動量小」あるいは「安静」と新たに判定されることになる。
空気調和機の電源をONした後の活動量計測当初は、どの領域の活動量も不明であるが、このフローチャートによれば、計測開始から4ユニット計測が終了して初めて、各領域A〜Iの属するブロックにおいて「活動量大」、「活動量中」あるいは「活動量小」の判定が行われ、60ユニット計測が終了して初めて、「安静」の判定が行われることになる。したがって、計測開始後しばらくは「安静」のブロックは存在しないので、ステップS60においてNOと判定され、ステップS61において「活動量小」と判定される。その後、「活動量小」と継続して判定されたブロックは、60ユニット計測終了後、ステップS64において「安静」と判定され、その後4ユニット計測のセンサの合計反応頻度が所定数未満であれば、引き続き「安静」と判定される。
なお、ステップS55において、「活動量小」と判定された後の合計ユニット計測数(p)をクリアするのは、「安静」との判定は、「活動量小」の判定が起点となるからである。
要約すると、各センサ26、28、30、32、34は、人体検知手段としての機能に加え、活動量検知手段としても機能し、図32のフローチャートにより、各領域A〜Iの属するブロックは、例えば次のように判定される。
(1)安静
センサ反応頻度が5回未満/2分が30分以上継続した領域のみあるブロック
(2)活動量大
全領域A〜Iのセンサ反応頻度の総和が40回以上/2分で、少なくとも一つの領域でセンサ反応頻度が2分間で5回以上継続した場合において、「安静」と判定されたブロックを除く全てのブロック
(3)活動量中
全領域A〜Iのセンサ反応頻度の総和が40回未満/2分の場合に、センサ反応頻度が2分間で5回以上継続した領域の属するブロック
(4)活動量小
安静、活動量大、活動量中と判定されなかった領域の属するブロック
また、このように決定された人の活動量に応じて各ブロックの温度補正値は次のように設定される。
(1)安静
代謝量が徐々に低下するので、次の温度補正値を上限値として、例えば30分毎に+0.5℃補正する。
冷房時の上限値:+1℃
暖房時の上限値:+1℃
(2)活動量大
冷房時:−2℃
暖房時:−2℃
(3)活動量中
冷房時:−1℃
暖房時:−1℃
(4)活動量小
冷房時:標準的活動量として補正せず
暖房時:標準的活動量として補正せず
なお、不在ブロックについては補正はしない。したがって、ブロック別温度補正値と人の活動量を考慮して左右羽根の風向制御を行う場合、人の位置に基づくブロック別温度補正値を上述した方法で算出するとともに、活動量に応じてブロック別温度補正値を算出し、これらの温度補正値をリモコン設定温度に加算して制御目標値とする。
次に、本発明の空気調和機では、人の在不在状況や活動量に応じて快適性を損なうことなく省エネルギー方向に室温を変動させて制御する温度制御装置の実施形態について図面を用いて説明する。
図33は本発明の第1実施形態に係る空調機器の温度制御装置のブロック図である。
本装置は、制御部105を中心として、入力装置101、室温検出部104、記憶部107、及び冷暖房出力部106から構成される。入力装置101は、在室者が希望する室温、即ち設定温度の入力を受け付ける室温設定部102や冷暖房モードを選択するための冷暖房モード選択部103を有し、さらに図示されていないが、本実施形態にかかる室温制御を起動させる指示部と、前述したとおり人体を検知する人体検知センサを有し、人体検知センサの出力情報を基に在室あるいは不在を判定する在不在判定部111及び活動量のレベルを判定する活動量検出部112を有している。なお、人体検知センサは、赤外線量の変化を検出する赤外線センサや、画像から人を検出する画像センサ等の種々のタイプが使用が可能とされる。また、本実施例では複数の人体検出センサを備えた例を用いて室内の各エリアに分けて在不在及び活動量を判定するようにしたが、人体検出センサは1つで室内全体の在不在及び活動量を判定するものであってもよい。入力装置101は、例えばリモートコントロール方式で入力できる操作装置であり、これにより在室者が手元で設定した室温やモードに関する情報が無線によって制御部105に伝送される。
室温検出部104は、サーミスタからなり、冷暖房出力部106に備えられた図示されていない空気吸い込み口に取り付けられ、常時、室温を検出してその情報を制御部105に送っている。なお、室温検出部104が検出した室温を「検出室温」という。記憶部107は、リードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)を含み、制御部105の制御手順を規定したプログラムを記憶している。該制御手順の内容は、図34、図36及び図37に示すフローチャートの通りである。
また、記憶部107は、人が感知できる臨界的な温度変化幅及び温度変化率(以下、「Wb値」という。)も記憶している。ここで、人が感知できる臨界的な温度変化幅及び変化率とは、それらの値を超えない温度変化幅及び変化率の温度変化であれば、一般に人はその変化に気付くことがないと言われている値である。これは、人体の感覚特性である刺激に対する弁別閾と感覚の相対性、即ち、「人は、温熱刺激(室温変化)において、ある大きさまでの変化に対しては感知することができない」という法則(Weberの法則)によって裏付けられるものである(武藤真介「計量心理学」朝倉書店、1982参照)。Wb値は、文献(例えば、佐藤方彦 監修「人間工学基準数値数式便覧」技報堂出版)及び実験によって得られる値であり、例えば、室温25℃における人の感知できる温覚(温度上昇率)のしきい値は0.001℃/secで冷覚(温度低下率)のしきい値は0.004℃/secのごとく、室温とその室温における温覚及び冷覚のしきい値を一組の要素とするデータの集合からなっている。
さらに、記憶部107は、制御部105によって演算された一時的な温度データも記憶する。制御部105は、マイクロプロセッサを主体に構成されており、制御目標温度算出部108、温度到達検出部109、及び出力制御部110を有している。これらは、記憶部107に記憶されたプログラムに従って動作する。
制御目標温度算出部108は、記憶部107に記憶されたWb値に基づいて、経時的に単調変化する制御目標温度を算出する。その際のWb値は、冷暖房モード選択部103によって選択されたモード、その時の室温及び活動量から決定される。ここで、制御目標温度とは、温度制御の目標となる温度をいい、一時的に用いられる値である。
出力制御部110は、算出された制御目標温度と室温検出部104が検出した室温(以下、「検出室温」という。)とを比較し、両温度の差がゼロになるように冷暖房出力部106の出力を制御する。温度到達検出部109は、室温が制御目標温度に到達したかどうか、又は室温が記憶部107に記憶された最終目標温度に達したかどうかを判断する。
また、図示されていないが、制御部105は内部にタイマーを有し、時間の計測や判断もできる。冷暖房出力部106は、圧縮機、熱交換器、膨張弁及びインバータ等から構成され、出力制御部110からの信号に基づいて室内への吹き出し空気温度を調整している。
以上のように構成された本発明の第1実施形態に係る冷暖房機器の温度制御装置の制御部105における制御手順について、図34、図36及び図37のフローチャートを用いて説明する。制御手順は、制御開始時の室温の状態によって、次の2種類に分類される。即ち、本装置が定常運転状態にあり、室温が既に設定温度に維持されている第1のケースにおける制御手順(図34)と、本装置が定常運転状態になく、室温が設定温度と離れた温度にある第2のケースにおける制御手順(図36及び図37)とがある。以下に、それぞれの場合に分けて制御手順の内容を説明する。(装置が定常状態にある第1のケースにおける制御手順)図34は、本装置が定常状態にある第1のケースにおける制御手順を示すフローチャートである。
在室者が、入力装置101によって本制御の起動を指示すると、先ず、本装置が定常運転状態にあるかどうかが判断される(ステップS201)。具体的には、検出室温が、室温設定部102によって既に設定された設定温度Tsに近い温度(例えば、Ts±0.5℃の範囲)であるかどうかが、制御部105によって判断される。
さらに、この時点において、判定された在不在判定が在室であり、且つ、判定された活動量が冷房時では所定の活動量レベル以下(例えば「安静」または「活動量小」)、暖房時では所定の活動量レベル以上(「活動量中」または「活動量大」)の状態が所定時間以上継続しているかどうかが、制御部105によって判断される。
判断の結果、本装置が定常運転状態にない場合、または、不在の場合、または上記所定の活動量範囲外の場合、あるいは所定の活動量範囲内でも所定時間以上継続していない場合は、なんの制御も行われずに本制御は終了する。一方、本装置が定常運転状態にある場合、且つ、人が在室していて冷房時は活動量がより小さい状態で所定時間経過し暑さを感じにくい状態、暖房時は活動量がより大きい状態で所定時間経過して寒さを感じにくい状態、即ち、在室者が既に快適な状態にある場合にのみ、以下の制御が行われる。
(なお、活動量の継続を判定する前記所定時間は、活動量が活動状態から安静状態へ、または、活動量が安静状態から活動状態へ変化して体感が安定するまでの時間として、少なくとも必要な時間として例えば30分に設定する。)
先ず、制御開始時における室温T0を計測し、その時刻t0と共に記憶しておく(ステップS202)。
次に、その室温T0よりも所定の温度ΔTm(例えば、1.0℃)だけ、冷房時は高い温度を暖房時は低い温度を、最終目標温度Teとして記憶部107に記憶しておく(ステップS203)。ここで、ΔTmは、その室温において人が感知することのない最大の温
度変化幅であり、実験によって各室温における値として既に記憶部107に記憶されていたものである。
次に、所定時間間隔Δtごとに冷暖房出力部106の出力を制御するためのカウンタnが1に初期化された後(ステップS204)、制御目標温度算出部108によって時刻t0+nΔtにおける制御目標温度Tcが算出される(ステップS205)。制御目標温度Tcは、記憶部107に記憶されたWb値に基づいて、T0+nΔTrの値に設定される。
ここで、目標とする温度変化率をΔTr/Δtとしているのは、人が感知できない温度変化率で室温を変化させるためであり、記憶部107に記憶されたWb値を超えない温度変化率に設定される。そして、制御部105の内部に有するタイマーによって時刻t0+nΔtを判断し、その時刻における室温Tnが計測される(ステップS206)。
その室温TnとステップS205で算出したTcに基づいて、出力制御部110は、TnとTcの差をゼロにするように冷暖房出力部106の出力を制御する(ステップS207)。次に、制御部105は、室温Tnと制御目標温度Tcの大小関係を判断し(ステップS208)、室温Tnが大きい場合にはΔTrを小さくし(ステップS209)、室温Tnが小さい場合にはΔTrを大きくする(ステップS210)。
ここで、上記のように、ステップS208の判断結果に基づいてΔTrを変化させているのは、室温Tnを制御目標温度Tcに、より早く近付くようにするためである。但し、いかなる場合においても、ΔTr/ΔtがWb値を超えないように、その変化範囲を制限している。次に、室温Tnが、ステップS203で記憶された最終目標温度Teに到達したかどうかが温度到達検出部109によって判定される(ステップS211)。
室温Tnが最終目標温度Teに到達していない場合には、到達するまで室温変化を継続させるために、カウンタnを1だけ増加し(ステップS212)、再びステップS205からステップS211の制御を繰り返す。一方、室温Tnが最終目標温度Teに到達した場合には、以降の室温は最終目標温度Teに維持されるように、冷暖房出力部106の出力を制御する(ステップS213)。
なお、本制御の途中であっても、室温が定常運転状態から外れた場合、または、不在となった場合、または、所定範囲の活動量以外となった場合は直ちに本制御を終了し、室温は在室者が設定した設定温度Tsに戻される。これによって、室温が所望の設定温度よりも暖房時は低くならないように、冷房時は高くならないようにすることによって、暖房時は人の活動量が小さくなって寒さをより感じやすくなってきた時でも快適な状態を保つことができ、冷房時は人の活動量が大きくなって暑さをより感じやすくなってきた時でも快適な状態を保つことができる。また、不在となった後は室温が所望の設定温度に戻っているため、再度入室した時に室温が設定温度よりも冷房時は高くならないように、暖房時は低くならないようにし、在室状況が変化した時でも常に快適な状態を得ることができる。
以上のような制御手順によって冷暖房出力部106の出力が制御された場合の室温の時間的変化を、図35a及び図35bのグラフを用いて説明する。図35aは冷房時における室温の変化を、図35bは暖房時における室温の変化を示している。時刻t0において、入力装置101によって本制御が開始されると、それまで定常運転状態にあって温度T0に維持されていた室温が、冷房時は上昇し暖房時は下降する。その際の温度変化率はΔTr/Δtになるように制御され、従って、人が感知できる温度変化率Wbを超えることはない。そして、室温が、最終目標温度Teに達すると、以降はその室温Teに維持される。
本実施形態に係る冷房時の実験によると、室温変化率が3℃/hで室温を1℃上昇させた場合に、10名中9名は温冷感(暑い、寒いの感覚)が変わらなかったという結果が得られている。従って、在室者の快適性を損なうことなく、より高い室温を維持することで足りる結果、その分の省エネルギー化が図られることになる。(室温が設定温度と離れた温度にある第2のケースにおける制御手順)
次に、制御開始時において、本装置が定常運転状態にない場合の制御手順について説明する。
図36及び図37は、その制御手順を示すフローチャートである。在室者が入力装置101によって本制御の起動を指示すると、先ず、本装置が定常運転状態にあるかどうかが判断される(ステップS401)。即ち、冷房時にあっては室温を下げる必要があるか又は暖房時にあっては室温を上げる必要があるかが判断される。具体的には、冷房時にあっては室温が設定温度Tsよりも所定温度だけ高い温度Tsh(例えば、Ts+0.5℃)よりもさらに高いか、又は暖房時にあっては室温が設定温度Tsよりも所定温度だけ低い温度Tsl(例えば、Ts−0.5℃)よりもさらに低いかどうかが、制御部105によって判断される。
判断の結果、冷房時にあっては室温がTshよりも低いか又は暖房時にあっては室温がTslより高い場合、または、上記所定の活動量が所定時間継続していない場合は、なんの制御も行われずに本制御は終了する。一方、冷房時にあっては室温がTshよりも高いか又は暖房時にあっては室温がTslより低い場合、即ち、室温が設定温度Tsから大きく離れているために、冷房又は暖房を行う必要がある場合には、以下の制御が行われる。
先ず、制御開始時における室温T1を計測し、その時刻t1と共に記憶しておく(ステップS402)。次に、第1段階の室温制御における最終目標温度として、設定温度Tsよりも所定の温度ΔTm1(例えば、1.0℃)だけ冷房時にあっては低い温度を又は暖房時にあっては高い温度を制御切換温度Te1として算出し、その値を記憶部107に記憶しておく(ステップS403)。
ここで、ΔTm1は、既に記憶部107に記憶されていたものである。続いて、第1段階の室温制御として、室温を制御切換温度Te1に達するまで変化させるが(ステップS404〜S412)、その制御手順は図34に示すフローチャートのステップS204〜S212と基本的に同じであるため、説明は省略する。
但し、この第1段階の室温制御における温度変化率ΔTr1/Δtを、Wb値よりも常に大きい値を採るように算出し制御している点において、図34における制御方法とは異なる。これは、人が明確に感知できる温度変化率で室温を変化させるためであり、在室者がその室温変化に気付き、快適性を感受することができるようにするためである。
室温が制御切換温度Te1に到達すると、この時点において、判定された在不在判定が在室であり、且つ、判定された活動量が冷房時では所定の活動量レベル以下(例えば「安静」または「活動量小」)、暖房時では所定の活動量レベル以上(「活動量中」または「活動量大」)の状態が所定時間(例えば30分)以上継続しているかどうかが、制御部105によって判断され、この状態を満たした場合のみ、以下の制御が開始される。
今度は、図37に示すように、第2段階の室温制御として第1段階の室温制御における室温変化の方向と逆の方向に室温を変化させる。先ず、室温検出部104によって室温T2を計測し、その時点の時刻t2と共に記憶しておく(ステップS501)。
次に、設定温度Tsよりも所定の温度ΔTm2(例えば、1.0℃)だけ冷房時にあっては高い温度が暖房時にあっては低い温度を、最終目標温度Te2として算出する(ステ
ップS502)。次に、室温を、在室者が気付くことのない温度変化率ΔTr2/Δtで最終目標温度Te2まで変化させた後室温を最終目標温度Teに保持するが(ステップS503〜S512)、その制御手順は図34における制御手順(ステップS204〜S213)と同様であるので説明は省略する。
このように、第1段階の室温制御においては、人が感知できる大きな温度変化で室温を変化させたが、続く第2段階の室温制御においては、人が感知できない小さな温度変化で室温を変化させている。以上のような制御手順によって冷暖房出力部106の出力が制御された場合の室温の時間的変化を、図38a及び図38bのグラフを用いて説明する。
図38aは冷房時における室温の変化を、図38bは暖房時における室温の変化を示している。時刻t1において、入力装置101によって本制御が開始されると、先ず、第1段階の室温制御によって、温度T1であった室温が冷房時にあっては下降し暖房時にあっては上昇する。その際の室温の温度変化率はΔTr1/Δtとなるように制御され、人が明確に感知できる温度変化率で室温が変化する。
そして、時刻t2において室温が温度Te1に達すると、次に、第2段階の室温制御によって、第1段階の室温制御における室温変化の方向とは逆の方向に室温が変化する。その際の室温の温度変化率はΔTr2/Δtとなるように制御され、人が感知できない温度変化率で室温が変化する。室温が最終目標温度Te2に達すると、以降はその温度Te2に維持される。
本実施形態に係る暖房時の実験によると、制御開始時の室温T1=18℃、設定温度Ts=20℃、制御切換温度Te1=22℃、最終目標温度Te2=19℃として本冷暖房機器の温度制御装置を制御した場合に、10名中10名が、従来の制御方法による場合(室温を単調変化させて18℃から設定温度20℃にした場合)と同様の暖かさを感じることができたという結果が得られている。
従って、制御の最終目標温度が設定温度よりも1℃低い温度であるにも拘らず、在室者の快適性を損なうことがなかった。なお、本実施形態に係る空調機器の温度制御装置においては、在室者が入力装置101の操作をすることによって室温制御が起動したが、室温制御の起動条件として、かかる操作に限定するものではない。例えば、制御部105によって本装置が定常運転状態に初めて達したことが検出された後、一定時間経過後にかかる室温制御が自動的に起動されるようになっていてもよい。図44a及び図44bは、暖房時の温度シフト後における人の皮膚温の時間的変化を示す実験結果である。図44aは室温、図44bは複数の被験者の体の表面である皮膚温の平均値の時間変化を示している。皮膚温は、温度シフト(t1〜t2)による室温の低下と共に一旦低下するが(t1〜t3)、その後はしばらく一定に保たれる(t3〜t4)。従って、ここでの皮膚温の低下が一定の値を超えなければ、被験者は快適性を維持する。
ところが、その後の室温が一定であるにも拘らず、皮膚温はさらに低下する(t2’〜t3’)という実験結果が得られている。即ち、在室者の体が時間経過と共に再び冷えるという現象を繰り返す。そのために、温度シフトのみによる方法では、在室者が快適性を維持し続けるには時間的な限界があり、温度シフト後の一定時間が経過した後においては、在室者は快適性を維持できなくなり、もはや真の省エネルギー化が図られているとは言えなかった。
(構成)
図39は、本実施形態の冷暖房機器の温度制御装置の構成を示すブロック図である。本制御装置は、室温設定部701、初期制御部702、室温検出部703、シフト制御部704、上下変動制御部705及び吹き出し部706から構成される。
室温検出部703は、サーミスタ等からなり、室温を検出する。吹き出し部706は、初期制御部702、シフト制御部704又は上下変動制御部705からの指示に従って、図39には示されていない空気調和機の圧縮機とファンへの制御信号を出力し空気調和機からの空気の吹き出し温度と吹き出し量を調整する。さらに、人体を検知する人体検知センサを有し、人体検知センサの出力情報を基に在室あるいは不在を判定する在不在判定部707及び活動量のレベルを判定する活動量検出部708を有している。
室温設定部701は、在室者が希望する室温を設定するためのリモコン等からなり、在室者によって設定された温度、即ち、設定温度の入力を受け付ける。室温設定部701が受け付けた設定温度は、在室者によって設定される度に初期制御部702に出力され、一旦室温設定部701に記憶され、必要に応じて初期制御部702に出力される。
初期制御部702は、室温検出部703によって検出された室温、即ち、検出室温が設定温度になるよう吹き出し部706を制御する。また、初期制御部702は、制御を開始する際に、検出室温と設定温度とを比較することにより本制御装置の運転モードが暖房運転であるか冷房運転であるかを判断し、その結果をシフト制御部704及び上下変動制御部705に伝える。初期制御部702は、検出室温が設定温度に達したかどうかと、判定された室内の在不在状況が在室かどうかと、判定された活動量が所定の活動量レベル範囲かどうかを繰り返して判断し、これら条件を満たしたと判断するとシフト制御部704を起動する。
シフト制御部704は、初期制御部702による室温の変化とは逆の変化方向、即ち、暖房運転時には温度を下げる方向、冷房運転時には温度を上げる方向に、人が感知できない温度幅及び変化率で室温がシフトするよう吹き出し部706を制御する。これらの温度幅及び変化率は、シフト制御部704が有する図39には示されていないROMに格納されている。シフト制御部704は、検出室温を監視することにより室温のシフトが終了したと判断すると、上下変動制御部705を起動する。
上下変動制御部705は、室温が所定の上限温度と下限温度とを交互に繰り返して変動するよう吹き出し部706を制御する。上下変動制御部705は、暖房運転時においては、シフト制御部704によるシフト後の温度(以下、「シフト後温度」という。)を下限温度とし、その下限温度より高く、かつ、設定温度以下の温度を上限温度とし、一方、冷房運転時においては、シフト後温度より低く、設定温度以上の温度を下限温度とし、シフト後温度より高い温度を上限温度とする。
具体的には、設定温度をT0、シフト後温度をT1、下限温度をTmin、上限温度をTmaxとすると、Tmin及びTmaxは、以下の通り決定される。暖房運転時においては、T0>T1となるが、Tmin=T1とし、Tmax=Tmin+K1(T0−Tmin) (但し、0<K1≦1) とする。一方、冷房運転時においては、T0<T1となるが、Tmin=T0+K2(T1−T0) (但し、0≦K2<1) とし、Tmax=T1+K3 (但し、0<K3)とする。
尚、上記のK1、K2及びK3は、予め上下変動制御部705が有する図示されていないROMに記憶されている。変動周期記憶部105aは、上下変動制御部705によって室温が上限温度と下限温度とを交互に繰り返して変動するよう制御される際の1周期を構成する4つの時間、即ち、室温を下限温度から上限温度までシフトさせる際に要する第1の時間と上限温度に達した室温をその温度に維持させておく第2の時間と室温を上限温度から下限温度にシフトさせる際に要する第3の時間と下限温度に達した室温をその温度に維持させておく第4の時間とを記憶している。尚、これら4つの時間を合計した1周期は
、予め実験によって得られた温度シフト後における人の体温の変動周期となるように設定されている。この周期は、暖房運転時と冷房運転時では異なり、変動周期記憶部105aは、暖房運転時における上記4つの時間と冷房運転時における上記4つの時間の合計2組の周期を記憶している。この周期の詳細については後述する。
上下変動制御部705は、室温が、上記の通り決定した上限温度及び下限温度並びに変動周期記憶部105aに記憶された4つの時間によって決定される1周期の温度変動を繰り返すよう吹き出し部706を制御する。
(動作)
以上のように構成された本制御装置の動作について説明する。図40及び図41は、本制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
まず、初期制御部702は、在室者によって室温設定部701を用いて設定温度Ts(0)がセットされると(ステップS801)、室温検出部703から検出室温Tを読み(ステップS802)、それらの差(|Ts(0)−T|)が所定の温度差dTより小さいか否かを判定する(ステップS803)。判定の結果、Noの場合、即ち|Ts(0)−T|≧dTの場合は、初期制御部702は、室温が設定温度に達していないと判断し、制御情報(Ts(0)−T)を吹き出し部706に送る。その結果、吹き出し部706は、送られてきた制御情報に基づいて、検出室温Tが設定温度Ts(0)に近づくように空気調和機の圧縮機とファンに制御信号を出力する(ステップS804)。
一方、Yesの場合、即ち|Ts(0)−T|<dTの場合は、初期制御部702は、室温が設定温度に達していると判定する。さらにこの時点において、判定された在不在状況が在室でかどうかと、判定された活動量が冷房時では所定の活動量レベル以下(例えば「安静」または「活動量小」)、暖房時では所定の活動量レベル以上(「活動量中」または「活動量大」)の状態が所定時間(例えば30分)以上継続しているかどうかが、制御部105によって判断され、これらの状態を満たした場合のみ、以下の制御が開始される。
初期制御部702は、タイマーをスタートする(ステップS805)。続いて、室温を設定温度にしばらく保持させるために、初期制御部702は、経過時間tを計測し(ステップS806)、tが所定時間t1だけ経過したかどうかを判定する(ステップS807)。
その判定の結果がNo(t<t1)の場合には、初期制御部702は、検出室温Tが設定温度Ts(0)に保持されるように吹き出し部706を制御する(ステップS808)。その結果、吹き出し部706は、(Ts(0)−T)に基づいた制御信号を圧縮機とファンに出力する(ステップS809)。以上の制御は、経過時間tがt1になるまで繰り返される(ステップS806〜S809)。
一方、経過時間tがt1に達すると、初期制御部702は、室温が定常に達しかつ在室者が設定温度Ts(0)に感覚的にも生理的にも順応するのに十分な時間が経過したと判定し、シフト制御部704を起動する(ステップS810〜S814)。起動されたシフト制御部704は、先ず、室温がTs(0)から所定時間△t1でTs(1)まで段階的にシフトするように経過時間tにおける制御目標温度Ts(t)を設定する(ステップS810)。なお、Ts(0)とTs(1)の温度幅は、在室者の快適性が損なわれず、かつ経済的に有利となるように、在室者が一定温度に順応した後の温度シフトにおいて温度感覚的に感知できない最大の温度幅となるように設定される。これによって、在室者の快適性を損なうことなく省エネルギー化を図るための運転が開始される。
次に、シフト制御部704は経過時間tを計測し(ステップS811)、時刻t1から
さらに所定時間△t1だけ経過した時刻、即ち時刻t2に達したかどうかを判定する(ステップS812)。No(t<t2)の場合は、シフト制御部704は、検出室温TがステップS810で設定した経過時間tにおける制御目標温度Ts(t)に常に一致するように、吹き出し部706を制御し(ステップS813、S814)、ステップS811に戻り経過時間tを計測する。一方、Yes(t=t2)の場合は、シフト制御部704は、温度シフトが終了したと判断し、上下変動制御部705を起動する(ステップS815〜S826)。
起動された上下変動制御部705は、先ず、その後の制御目標温度となる下限温度Ts(min)と上限温度Ts(max)を設定し、室温がTs(1)から所定時間△t2でTs(min)(またはTs(max))までシフトするように経過時間tにおける制御目標温度Ts(t)を設定する(ステップS815)。次に、上下変動制御部705は経過時間tを計測し(ステップS816)、t2からさらに所定時間△t2経過した時刻、即ち時刻t3に達したかどうかを判定する(ステップS817)。No(t<t3)の場合は、上下変動制御部705は、検出室温TがステップS815で設定した経過時間tにおける制御目標温度Ts(t)に常に一致するように、吹き出し部706を制御し(ステップS818、S819)、ステップS816に戻り経過時間tを計測する。一方、Yes(t=t3)の場合は、上下変動制御部705は、タイマーをリセットして再スタートさせた後(ステップS820)、室温がTs(min)から所定時間△t3でTs(max)までシフトするように経過時間tにおける制御目標温度Ts1(t)を設定する(ステップS821)。
次に、上下変動制御部705は、経過時間tを計測し(ステップS822)、tが所定時間△t3経過してt4に達したかどうか、tがt4からさらに所定時間△t4経過してt5に達したかどうか、tがt5からさらに所定時間△t5経過してt6に達したかどうか、tがt6からさらに所定時間△t6経過してt7に達したかどうかをそれぞれ判定する(ステップS823)。Noの場合は、上下変動制御部705は、検出室温TがTs(t)なるよう吹き出し部706を制御する(ステップS824、S825)。
一方、Yesの場合は、上下変動制御部705は、t=t4のときには、室温がTs(max)のまま所定時間△t4保持するように制御目標温度を経過時間tにおける制御目標温度Ts2(t)に設定変更し、t=t5のときには、室温がTs(max)から所定時間△t5でTs(min)までシフトするように制御目標温度を経過時間tにおける制御目標温度Ts3(t)に設定変更し、t=t6のときには、室温がTs(min)のまま所定時間△t6保持するように制御目標温度を経過時間tにおける制御目標温度Ts4(t)に設定変更し(ステップS826)、その後ステップS822に戻り再び経過時間tを計測しする。また、t=t7のときには、上下変動制御部705は、室温が制御目標温度Ts1(t)、Ts2(t)、Ts3(t)、Ts4(t)によって定まる温度変動を1周期とする周期的変動を繰り返すように、吹き出し部706を制御する(ステップS820〜S826)。なお、上下変動制御部705は、t4、t5、t6及びt7を決定するに際しては、変動周期記憶部105aから読み出した1周期を構成する4つの時間△t3、△t4、△t5、△t6を用いる。
以上のような室温の上下変動による制御は、予め得られている実験データ、即ち、温度シフト後における人の体温及び温度感覚についての実験データに基づくものであり、このような温度制御によって、温度シフト後における在室者の体温及び温度感覚を一定範囲に維持させている。即ち、温度シフト後において在室者の快適性が損なわれてしまうことを回避している。
また、この温度制御の途中であっても、室温が定常運転状態から外れた場合、または、
不在となった場合、または、所定範囲の活動量以外となった場合は、直ちにこの温度制御を終了し、室温は設定温度Ts(0)に戻して、在室者の快適性維持するとともに、不在になった後再度入室する入室者の快適性をそこなわないようにしている。
(暖房運転時のタイミングチャート)
図42a及び図42bは、本発明の本実施形態の暖房運転時における室温制御による室温と制御目標温度のタイミングチャートを示す。図42aは室温、図42bは制御目標温度の時間変化を示す。設定温度をTs(0)にセットして運転がスタートされると、初期制御部702による温度制御により、運転前にTaであった室温は、t0においてTs(0)に達し、Ts(0)で安定して所定時間(例えば30分)継続したかどうかと、在不在判定が在室かどうかと、活動量が所定の活動量レベル以上(例えば「活動量中」または「活動量大」)で所定時間以上(例えば30分)継続したかどうかのこれら全てを満たした時点t1まで(Δt0時間だけ)一定に保持される。
続いて、シフト制御部704による温度制御により、室温は、t1からt2の間の時間(Δt2)において△T1だけ低下し、Ts(1)に達する。これによって、在室者の快適性を損なうことなく省エネルギー化を図るための運転が開始されたことになる。t2においては、上下変動制御部705により、その後の温度変動シフトさせるための制御目標温度である下限温度Ts(min)と上限温度Ts(max)が決定される。ここで、暖房時においては、Ts(1)がすでにTs(min)に設定されているので、室温をTs(1)からTs(min)にシフトさせる必要がないため、図41におけるステップS815からステップS819までの処理は行われない。そのために、図42a及び図42bにおいては、時間軸のt2とt3を同一の時刻としている。
以後、上下変動制御部705は、t3からt4の間の時間(Δt3)においては制御目標温度を段階的にTs(min)から△T2上昇させることによって室温をTs(max)に上昇させ、t4からt5の間の時間(Δt4)においては室温をTs(max)で一定に保ち、t5でからt6の間の時間(Δt5)で制御目標温度を段階的にTs(max)から△T2低下させることによって室温をTs(min)に低下させ、t6からt7の時間(Δt6)においては室温をTs(min)で一定に保つ。その後、室温は、t3からt7までを1周期とする温度変動を繰り返す。このようにして、在室者の体温の変動を考慮した温度制御が継続される。
図42a及び図42bに示された室温の変動から明らかなように、温度シフト後における室温は設定温度よりも低い温度になるように制御される。これによって、在室者の快適性を損なうことなく省エネルギー化を図った空気調和機の運転が継続される。
(冷房運転時のタイミングチャート)
図43a及び図43bは、本発明の本実施形態の冷房運転時における室温制御による室温と制御目標温度のタイミングチャートを示す。図43aは室温、図43bは制御目標温度の時間変化を示す。
設定温度をTs(0)にセットして運転がスタートされると、初期制御部702による温度制御により、運転前にTaであった室温は、t0でTs(0)に達し、Ts(0)で安定して所定時間(例えば30分)継続したかどうかと、活動量が所定の活動量レベル以下(例えば「安静」または「活動量小」)で所定時間以上(例えば30分)継続したかどうかの両方を満たした時点t1まで(Δt0時間だけ)一定に保持される。
続いて、シフト制御部704による温度制御により、室温は、t1からt2の間の時間(Δt1)において△T1だけ上昇し、Ts(1)に達する。これによって、在室者の快適性を損なうことなく省エネルギー化を図るための運転が開始されたことになる。
t2においては、上下変動制御部705により、その後の温度変動シフトさせるための
制御目標温度である下限温度Ts(min)と上限温度Ts(max)が決定される。その後、上下変動制御部705により、室温は、t2からt3の間の時間(△t2)において△T3低下してTs(min)に達する。以後、上下変動制御部705は、t3からt4の間の時間(Δt3)においては室温をTs(min)で一定に保ち、t4からt5の間の時間(△t4)においては制御目標温度を段階的にTs(min)から△T2上昇させることによって室温をTs(max)に上昇させ、t5からt6の間の時間(△t5)においては室温をTs(max)で一定に保ち、t6でからt7の間の時間(△t6)においては制御目標温度を段階的にTs(max)から△T2低下させることによって室温をTs(min)に低下させる。その後、室温は、t3からt7までを1周期とする上下の温度変動を繰り返す。このようにして、在室者の体温の変動を考慮した温度制御が継続される。
図43a及び図43bに示された室温の変動から明らかなように、温度シフト後における室温は設定温度よりも高い温度になるよう制御される。これによって、在室者の快適性を損なうことなく省エネルギー化を図った空気調和機の運転が継続される。
(暖房運転時の実験結果)
次に、室温を周期的に上下変動させる場合の周期について、実験データに基づいてさらに詳しく説明する。先ず、暖房運転時の場合について説明する。
図44a、図44b及び図44cは、暖房運転時の温度シフト後における、被験者の皮膚温及び温度感覚の時間変化を示す実験データである。図44aは室温、図44bはその室温における複数の被験者の皮膚温の平均値、図44cはそれら被験者からの温度感覚についての申告の平均値を示す。この実験では、まず、被験者を暑くも寒くもない中立で快適な設定温度Ts(0)に順応させる。このとき、被験者はTs(0)に順応すると共に皮膚温および温度感覚は一定となる。
次に、室温を、人が感知できない最大の温度幅△T1だけシフトするよう低下させる(t1〜t2)。本実験では△T1を被験者実験に基づき約1.5℃に設定した。すると、皮膚温および温度感覚は、t1〜t2での室温低下と共に低下し始め、室温が一定となるt2後もさらに低下を続け、その後t3からt4までしばらく一定に保たれる。
ところが、その後の室温が一定に保たれているにも拘らず、t2’より皮膚温および温度感覚は再び低下し始め、その後のt2’〜t4’間においてもt2〜t4間で生じた変化パターン(P1)と同様の変化パターン(P2)が繰り返される。つまり、一定の設定温度に在室者が順応している時に経済的な温度低下シフトを行った後一定室温を保つと、皮膚温および温度感覚は低下から一定となる変化パターンを周期的に繰り返す。この周期は被験者平均で約60分を示し、このような皮膚温の周期的な低下パターンはほとんどの被験者において共通して観察された。
以上の実験結果から、温度シフトだけによる温度制御では、皮膚温および温度感覚は時間経過と共に周期的に低下し続ける、つまり、在室者の体が時間経過と共に周期的に冷え続けるため、在室者の快適性を維持するには時間的な限界があることが判る。そこで、上記実施形態の暖房運転時においては、上下変動制御部705は、経済的な温度低下シフト後の皮膚温および温度感覚の周期的な低下を抑制するよう室温を制御している。即ち、上下変動制御部705は、温度シフト後の温度Ts(1)を下限温度Ts(min)とすることによって、室温がTs(min)より低下することがないように制御し、さらに、図44b及び図44cにおける皮膚温および温度感覚の低下を示す時間t2〜t3、t2’〜t3’に該当する時間において室温が上限温度まで上昇するよう制御している。
ここで、Ts(max)をTs(1)<Ts(max)≦Ts(0)としているのは、
Ts(max)をTs(0)よりも高く設定しなくとも皮膚温および温度感覚の低下を抑制できることが実験から確かめられたからである。また、図44B及び図44Cにおいて、周期的な皮膚温および温度感覚の低下の変化パターンP1、P2の周期S、S’は、40分から80分の範囲内を示すことが判明している。従って、変動周期記憶部105aが記憶する暖房運転時における△t3、△t4、△t5、△t6は、それらを合計した時間、即ち、室温の上下変動の周期が40分から80分の範囲内となるように予め決定されている。本実施形態においては、暖房運転時における△t3、△t4、△t5、△t6は、それらの合計を60分とし、かつ、それらによって定まる上下変動パターンが図44Bに示された皮膚温の変化パターンに近似するような値に設定されている。これらの時間に基づく室温の制御により、在室者の皮膚温の周期的な低下という現象が確実に抑制され、経済的な温度シフト後の在室者の快適性が維持される。
(冷房運転時の実験結果)
次に、冷房運転時の場合について説明する。図45a、図45b及び図45cは、冷房運転時の温度シフト後における、被験者の皮膚温及び温度感覚の時間変化を示す実験データである。図45aは室温、図45bはその室温における複数の被験者の皮膚温の平均値、図45cはそれら被験者からの温度感覚についての申告の平均値を示す。
暖房運転時の場合と同様に、この実験においても、被験者を快適な設定温度Ts(0)に順応させた後、室温を、人が感知できない最大の温度幅△T1だけシフトするよう上昇させる(t1〜t2)。本実験では△T1を被験者実験に基づき約1.0℃に設定した。すると、皮膚温および温度感覚は、t1〜t2での室温上昇と共に上昇し始め、室温が一定となるt2後もさらに上昇を続け、その後t3からt4までしばらく一定に保たれる。
ところが、その後の室温が一定に保たれているにも拘らず、t4より皮膚温および温度感覚は低下し始め、温度上昇時(t2)と比べてより涼しく感じるような皮膚温および温度感覚に達する。その後のt2’〜t4’間においてもt2〜t4間で生じた変化パターン(P1)と同様の変化パターン(P2)が繰り返される。つまり、一定の設定温度に在室者が順応している時に経済的な温度低下シフトを行った後一定室温を保つと、皮膚温および温度感覚は上下変動パターンを周期的に繰り返す。この周期は被験者平均で約50分を示し、このような皮膚温の周期的な低下パターンはほとんどの被験者において共通して観察された。
以上の実験結果から、温度シフトだけによる温度制御では、皮膚温および温度感覚は時間経過と共に周期的に上下変動する、つまり、在室者の体が時間経過と共に周期的に温まったり冷えたりするため、在室者の快適性を維持するには時間的な限界があることが判る。
そこで、上記実施形態の冷房運転時においては、上下変動制御部705は、経済的な温度上昇シフト後の皮膚温および温度感覚の周期的な上下変動を抑制するよう室温を制御している。即ち、上下変動制御部705は、皮膚温が上昇し温度感覚がより高くなる時間t2〜t3、t2’〜t3’においてはそれらの変化を抑制するために室温が設定温度Ts(1)よりも低い下限温度Ts(min)まで低下するよう制御し、一方、皮膚温が低下し温度感覚がより低くなる時間t4〜t5、t4’〜t5’においては室温がTs(1)よりも高い上限温度Ts(max)まで上昇するよう制御している。
ここで、Ts(min)をTs(0)≦Ts(min)<Ts(1)としているのは、Ts(min)をTs(0)よりも低く設定しなくとも皮膚温および温度感覚の上昇を抑制できることが被験者実験から確かめられたからである。また、図45a及び図45bにおいて、周期的な皮膚温および温度感覚の上下変動パターンP1、P2の周期S、S’は、30分から70分の範囲内を示すことが判明している。従って、変動周期記憶部105
aが記憶する冷房運転時における△t3、△t4、△t5、△t6は、それらを合計した時間、即ち、室温の上下変動の周期が30分から70分の範囲内となるように予め決定されている。本実施形態においては、冷房運転時における△t3、△t4、△t5、△t6は、それらの合計を50分とし、かつ、それらによって定まる上下変動パターンが図45Bに示された皮膚温の変化パターンに近似するような値に設定されている。これらの時間に基づく室温の制御により、在室者の皮膚温の周期的な低下という現象が確実に抑制され、経済的な温度シフト後の在室者の快適性が維持される。
なお、本実施形態の変動周期記憶部105aは、△t3、△t4、△t5、△t6の組み合わせを冷房・暖房各1組だけ記憶していたが、この数に限定されるものではない。複数組の組合せを予め変動周期記憶部105aに記憶させておき、上下変動制御部705は、組合せを適当に変化させて用いたり、それら複数の組合せから在室者の希望や空気調和機が置かれている環境等に応じて選択した組合せを用いて制御を行うものであってもよい。これによって、より柔軟で効率のよい温度制御が可能になる。
また、上記△t3、△t4、△t5、△t6は、実験における被験者の皮膚温の変化パターンに近似するような値に設定されているが、被験者の温度感覚の変化パターンを加味した値であってもよい。