JP6966856B2 - 導電膜,電極,電子機器,静電容量型入力装置及び電極の製造方法 - Google Patents
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Description
そして、タッチパネルなど、表示素子の前面に電極付きの基板を配置する電子機器では、表示の視認性を妨げないことが必要条件となるため、電極には、遮蔽や散乱、迷光、反射等が出来るだけ少ないことが要求される。
しかし、従来の導電性金属酸化物からなる電極を、単に金属に置き換えただけでは、金属特有の高い反射率によってギラツキが生じるため、反射率を低下させる必要がある。また、できるだけ低抵抗で、且つ、電気的に接続可能な導電体で構成することが重要である。
この膜によれば、低反射率であるため、静電容量型のタッチパネル式入力装置の電極に用いた場合でも、ギラツキが抑えられて、ディスプレイのコントラスト比の低下が抑制されると共に、透明導電膜を用いて形成する場合と比較して、抵抗値が小さいため、静電容量型入力装置の消費電力を低減できる。
そこで、透明基板に、Al膜又はAl合金膜からなる第1層と、10〜13at%のCuを含むAl-Cu合金の窒化膜ならなる第2層と、InとZnを少なくとも含む酸化物からなる透明導電膜である第3層を成膜した3層構造の導電性の低反射膜が提案されている(特許文献2)。特許文献2の導電性の低反射膜は、低反射率で導電性を有するため、静電容量方式のタッチパネルセンサーなどの入力装置に電極として用いた場合に、ブラックマトリクスとの色度や反射率(輝度)の差が小さく、電極が視認されにくい。
ガルバニック腐食とは、電解質水溶液中において異種の金属材料を接触させたときに生じる腐食現象であり、電位が卑な方の金属がアノードとなって、単独で置かれている場合よりも一般に腐食速度が増大する。特許文献2の膜では、エッチング工程において、Alが、より貴な金属であるInと電解質水溶液中で長時間にわたり直接接触することにより、極部電池が形成され、Alが液中へ溶けてイオン化する。
タッチパネル式入力装置の電極に要求される低反射率と低抵抗値を備え、2〜3層程度と層数が少なく、電子機器等の電極として使用可能なものは、知られていなかった。
本発明の他の目的は、低抵抗,低反射率の膜からなり、成膜後の工程に支障なく、インラインスパッタにより製造可能な導電膜,電極,電子機器,静電容量型入力装置及び電極の製造方法を提供することにある。
すなわち、前記課題は、本発明の導電膜によれば、透明基板上に形成される導電膜であって、前記透明基板上に形成されるAl膜又はAl合金膜からなる金属層と、該金属層上に形成され、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、少なくとも一部が酸窒化されている酸窒化合金層と、が積層されてなり、前記酸窒化合金層において、前記金属層逆側の表面からSiO 2 換算深さ20nmまでの領域における窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比が、20at%以下であり、前記導電膜を形成した前記透明基板の波長410〜670nmにおける反射率が、10%以下であること、により解決される。
温純水耐性,ウェットエッチング加工性が良好であるため、酸窒化合金層を有しない従来の導電膜のように、成膜後のエッチング工程において、反射率特性が大きく変更することがなく、電子機器,光学機器の金属電極として実用化が可能である。
更に、層数が2層であって少ないため、インラインスパッタ装置での製造が可能となり、カルーセル型スパッタ装置等を用いた場合よりも、装置占有率を高めることができ、工数を圧倒的に低減することができる。
また、金属層及び酸窒化合金層において、Alを用いているため、光学特性が良好で、かつ、導電膜成膜後のエッチング性等の加工特性が良好となる。
また、導電膜の表面層の窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比を、20at%以下まで低減しているため、成膜後の温純水洗浄工程において、導電膜の表面が溶解し、反射率特性が悪化することを抑制できる。
また、液晶,有機EL等の電子機器や光学機器の金属電極として使用した場合に、ギラツキが抑えられ、表示の視認性を妨げることが抑制される。
また、前記導電膜からなり、電子機器に用いられてもよい。
前記導電膜からなる電極を備えることを特徴とする電子機器としてもよい。
このように、前記金属層上に、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、少なくとも一部が酸窒化されている酸窒化合金層と、を積層して導電膜を成膜する工程を備えているため、導電膜の最表層を酸窒化することにより、導電膜の成膜後の温純水耐性を向上して、温純水に浸漬しても反射率特性が悪化することを抑制可能となる。また、Al合金の成膜と酸素及び窒素の供給を同時に行っているため、酸窒化合金層の厚み方向における酸素及び窒素の比率を比較的平均化することが可能となる。さらに、窒化合金膜又は合金膜を成膜した後に酸素イオンを照射する方法では、Alが異常粒子に成長し、Al原子と酸素原子が均質に混合しないが、本発明では、Al合金を成膜しながら、酸素及び窒素の供給を同時に行っているため、酸素原子がAl原子中に均質に混合する。
本発明によれば、電気特性(導電性)、光学特性(屈折率と消衰係数)、エッチング特性(エッチャントでの溶解性、エッチングレート)を、所望の値になるよう自在に制御可能となる。
そして、本発明の積層体からなる導電膜は、電子機器用の電極材料に用いた場合に、応答速度が向上できるとともに、微細加工と反射率低減による視認性の改善、一括エッチングによるパターンニング形成、最低限の層構成により、生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
層数、膜種の低減により、インラインスパッタ装置での成膜が容易になり、生産性向上、コスト低減を図ることができる。
本発明の導電膜,電極,電子機器,静電容量型入力装置及び電極の製造方法は、液晶,有機EL等を利用した各種電子機器や、光学機器等の電極に用いることができる。
本明細書において、透明導電膜とは、電気伝導性が高く(比抵抗が1×10-3Ω・cm以下)で、可視光領域(380〜780nm)で透過率80%以上の二つの性質を併せ持つ薄膜をいい、SnドープIn2O3(ITO),ZnドープIn2O3(IZO),AZOを含む。
本明細書において、at%とは、原子%と同義である。
本実施形態では、電子機器として、タッチパネルの静電容量型入力装置を例に説明する。
タッチパネルとは、タッチセンサと表示装置とを一体に備えたタッチセンサ一体型表示装置をいう。タッチパネルとしては、液晶装置などの表示装置の視認側に、透明基板上に透明導電膜で形成したパターンを検出電極とするタッチセンサ基板を貼り合わせることで製作されたものや、表示装置の基板にタッチセンサ電極パターンを形成してタッチセンサ一体型表示装置とするものがある。
静電容量式とは、指先と、導電膜のパターニングにより形成された検出電極との間での静電容量の変化を捉えて位置を検出する形式である。
この構成により、タッチ検出デバイスでは、駆動電極ドライバが駆動電極に対して駆動信号を印加することにより、タッチ検出電極からタッチ検出信号を出力し、タッチ検出が行われるようになっている。
異なる二面に設けるタイプと同一面に設けるタイプでは、いずれも、カラーフィルタ基板での透過率低下を防ぐため、検出電極を、透明導電膜により形成される透明電極から構成できる。
本実施形態に係る静電容量型入力装置は、タッチセンサと表示装置とを一体に備えたタッチセンサ一体型表示装置1の入力装置であって、本実施形態の導電膜をタッチ検出電極として用いるものである。
タッチセンサ一体型表示装置1は、例えば、図1〜図3で示す静電容量式の液晶表示パネルP1を備えている。
本実施形態の液晶表示パネルP1は、図1に示すように、概略長方形の板状体からなり、視認側から見て、液晶表示パネルP1の全周の縁に沿って端部から所定の幅の領域に枠状に形成された加飾部2と、加飾部2の内側に形成された略長方形の操作部3と、が形成されている。
カラーフィルタ基板10のガラス基板11の非視認側である液晶30側の面には、図2、図3に示すように、格子状のブラックマトリクス12と、ブラックマトリクス12に区分されて配置されたカラーフィルタ13が積層されている。
カラーフィルタ13は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を周期的に配列して構成したもので、各表示画素にR、G、Bの3色が一組として対応付けられている。図2、3において、記号13で示されている矩形が表示画素中のR、G、Bの内の1色を示す。導電膜による矩形パターンは、複数個の表示画素を含むように配置される。
カラーフィルタ基板10の液晶30側の面には、更に配向膜16が形成されている。
タッチ検出電極15,配線パターン50及び接続端子50aを構成する導電膜は、透明基板上に成膜されたAl膜又はAl合金膜からなる金属層と、この金属層上に積層され、Alと、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、一部が酸窒化されている酸窒化合金層と、が積層されてなる。
なお、本実施形態の導電膜は、透明のガラス基板11上に直接成膜されているが、これに限定されるものではなく、基板上に形成された誘電体膜からなる密着層の上に導電膜を成膜してもよい。特に、プラスチック基板は、Al又はAl合金との密着性が弱いため、プラスチック基板の上に形成された密着層上に本実施形態の導電膜を成膜するとよい。
配線用金属として上記Al膜又はAl合金膜を使用することにより、リン硝酢酸系エッチング液によるウェットエッチング加工性が向上する。ここで、上記リン硝酢酸系エッチング液とは、リン酸と硝酸と酢酸を少なくとも含む混合液を意味する。
Al合金膜の合金成分として、高融点金属元素、希土類金属元素の少なくとも一種以上を含有させてもよい。これにより、熱凝集抑制効果が発揮される。ここで、高融点金属元素は、Mo,Ti,Ta,W,Cr,Mnなどの融点が1200℃以上の金属を意味する。また、希土類金属元素とは、ランタノイド元素、即ちLaからLuまでの15元素およびスカンジウムとイットリウムを含む意味である。これらのうち、特にTi,Ta,Mnの高融点金属元素を含有するAl合金を用いることによって耐熱性が高められ、更に使用環境によって存在するハロゲン、塩水などによる腐食に対する耐食性も向上する。また、合金成分として、Cu,Ge,Zr,NiなどのAlに対して貴な電極電位を有する元素を含有することも好ましい。これにより、例えば、Al合金電極と透明電極が接する構造を用いた場合、Al合金薄膜と透明電極との接続界面における電池反応を抑制し、電解腐食を抑制することができる。
また前記高融点金属元素、希土類金属元素、およびAlよりも貴な電極電位を有する元素の合計含有量は、3at%以下とすることが好ましく、より好ましくは2at%以下である。
このように、酸窒化合金層の金属層逆側の表面から10nmまでの最表面層領域において、窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比を、20at%以下とすることにより、ガルバニック腐食の発生を防止して温純水耐性を向上できる。その結果、透明基板上に導電膜を成膜後のウェットエッチングの加工性を向上できる。
以下、本発明の一実施形態における電極の製造方法について説明する。
本実施形態の導電膜は、スパッタリング法により成膜する。バッチ式のスパッタ装置を用いてもよいし、少なくとも2つの成膜室を備えたインラインスパッタ装置を用い、第1の成膜室で金属層成膜工程を行い、その後連続して第2の成膜室で酸窒化合金層成膜工程を行ってもよい。
まず、スパッタ装置に、透明基板と金属層用のターゲットをセットして、透明基板上に金属層をスパッタリング成膜する金属層成膜工程を行う。
ターゲットとしては、Alターゲット又はNd,Cu,Ti,Mn,Ta,Ge,La,ZrおよびNiよりなる群から選択される少なくとも一種の元素と、Alとの合金ターゲットを用いる。
この工程は、以下の条件で行う。
・基板温度:室温〜400℃
・雰囲気ガス:Arガス
・到達真空度:1〜10×10-4Pa
・スパッタ電力:5〜6W/cm2
・膜厚:300〜400nm
なお、透明基板がプラスチック基板である場合には、金属層成膜工程の前に、プラスチック基板上に密着層を成膜する密着層形成工程を行い、金属層成膜工程では、密着層上に金属層を成膜する。
この工程では、ターゲットとして、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrよりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金からなるターゲットを用いる。
この工程は、以下の条件で行う。
・基板温度:室温〜400℃
・雰囲気ガス:Arガス,窒素ガス,酸素ガス
・酸素ガス流量/窒素ガス流量:5〜20%
・到達真空度:1〜10×10-4Pa
・スパッタ電力:2〜3W/cm2
・膜厚:10〜100nm
また、合金膜を形成後に酸素イオンを照射して膜の表面を酸化する方法では、Alが異常粒子に成長し、Al合金と酸素原子が混合しない。また、酸素イオンを照射する方法では、スパッタ装置内に、又は、スパッタ装置とは別に、イオン照射装置が必要となる。それに対し、本工程では、酸窒素混合ガスを導入しているため、Al合金に酸窒素原子をほぼ均一に導入できると共に、製造工程の工数も減少させることが可能となる。
電極のパターン形成においては、まず、導電膜の表面を整面(洗浄)して、スピンコーターや吹付によりフォトレジストをコートするレジストコート工程を行う。
その後、パターニングしたマスク原版を使用して、紫外線を照射してパターンを焼き付ける露光(焼き付け)工程を行う。
次いで、硬化していないフォトレジストを除去し、原版のパターンを現像する現像工程を行う。
その後、フォトレジストが除去された不要な部分を、エッチングにより除去するエッチング工程を行う。
フォトレジストを剥離する剥離工程と、温純水に浸漬して洗浄する洗浄工程を行い、電極のパターン形成を完了する。
そこで、第2層の保護が必要であるが、第2層にAlを含むため、第2層上に酸化インジウム系の膜を成膜すると、第2層のAlと第3層の酸化インジウムとが直接コンタクトし、ガルバニック腐食の原因になるという課題があった。
そこで、参考例1では、第2層のAl合金の代わりにMo-Nb合金を用いることにより、第3層に酸化インジウム系の膜を成膜可能とした。これにより、ガルバニック腐食が抑制され、充分な温純水耐性を有し、フォトリソグラフのプロセスを好適に行うことができる成膜性のよい低反射導電膜とすることができる。また、得られる参考例1の低反射導電膜は、低シート抵抗、低反射率も達成できる。
IGOは、エッチングの特性がMo,Alに近いため、参考例2において、好適に用いることができる。また、従来、インジウム系透明導電酸化物の中でも、IGOを用いた低反射膜成膜のプロセスが確立され、多く用いられてきたため、IGOを用いることにより、従来のエッチング条件等を利用できる。
窒化Mo-Nb合金層におけるNbの比率は20at%以下であり、より好ましくは、Nbが10at%である。
窒化Mo-Nb合金層の膜厚は、30nm以上、好ましくは40nm以上であり、60nm以下、好ましくは50nm以下であるとよい。
IGO層の膜厚は、20nm以上、好ましくは30nm以上であり、60nm以下、好ましくは50nm以下であるとよい。
その後、スパッタ装置に、金属層成膜工程で金属層を成膜した透明基板と、窒化Mo-Nb合金層用のターゲットをセットして、窒素ガスを導入しながら、窒化Mo-Nb合金層をスパッタリング成膜するMo-Nb合金層成膜工程を行う。
この工程では、ターゲットとして、Mo-Nb合金からなるターゲットを用いる。
この工程は、以下の条件で行う。
・基板温度:25℃(室温)
・雰囲気ガス:Arガス,窒素ガス
・到達真空度:1.13×10-4Pa
・スパッタ電力:1.5W/cm2
・膜厚:40nm
この工程では、ターゲットとして、In-Ga合金からなるターゲットを用いる。
この工程は、以下の条件で行う。
・基板温度:25℃(室温)
・雰囲気ガス:Arガス,酸素ガス
・到達真空度:1.13×10-4Pa
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚:30nm
以上の金属層成膜工程、窒化Mo-Nb合金層成膜工程、IGO層成膜工程を行って、導電膜を成膜した後、実施形態1と同様の手順により、電極のパターン形成を行う。
本発明の導電膜,電極及び電子機器及び導電膜の製造方法は、電子機器として、図4〜図7のタッチパネルの静電容量型入力装置101にも適用可能である。本実施形態の静電容量型入力装置101は、X,Yの2方向の検出電極を同一面に設けるタイプである。
本実施形態に係る静電容量型入力装置101は、図4に示すように、画像表示装置102と組み合わせて構成されることにより、入力装置100として用いられる。入力装置100は、少なくとも静電容量型入力装置101と、画像表示装置102とフレキシブルフラットケーブル103を備えている。入力装置100において、静電容量型入力装置101は、画像表示装置102の目視側、すなわちユーザーが操作する側に重ねて配設され、静電容量型入力装置101の表面には、操作者が入力操作を行うための入力部101aと、入力部101aからの信号を外部へ出力するための出力部101bが備えられている。
入力装置100においては、電流量の比率を計測することにより、ユーザーが操作した位置を判別する静電容量方式を採用している。以下、その操作を説明する。
静電容量型入力装置101は、図7に示すように、上面が保護膜171により覆われている。
導電膜及び電極の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
本発明の実施例に係る導電膜(実施例1〜3)と、比較例に係る導電膜(参考例1,対比例1〜3)を成膜し、各導電膜の特性を対比した。以下、各実施例,参考例及び対比例について説明する。
〇 導電膜の作製
まず、以下の手順で、実施例1〜3及び参考例1,対比例1〜3の導電膜を作製した。
ガラス基板上に、膜厚330nmのAl-Nd合金層、膜厚60nmのAl合金の酸窒化層を、以下の手順で作製し、それぞれ、実施例1〜3の導電膜とした。実施例1〜3は、Al合金の酸窒化層成膜時の導入ガスにおける窒素ガスに対する酸素ガスの比率を変化させたものである。
すなわち、カルーセル型バッチ式スパッタ装置,クライオポンプを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により、ガラス基板上に、以下の成膜条件で、膜厚330nmのAl-Nd合金層を成膜した。
・ターゲット:厚さ14mm Al-Ndターゲット
・到達真空度:1.13×10-4Pa
・基板温度:25℃(室温)
・スパッタ電力:5.5W/cm2
・膜厚 Ai-Nd:330nm
・Ar流量:500sccm
・ターゲット:厚さ6mm Al-Cu-Nd合金(Al 89.6at%,Cu 7.0at%,Nd 3.4at%)ターゲット
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚 :60nm
・Ar流量:650sccm
・N2流量:88sccm
・O2流量:5sccm(実施例1)、10sccm(実施例2)、15sccm(実施例3)
以上により、実施例1〜3の導電膜を得た。
ガラス基板上に、膜厚330nmのAl-Nd合金層、膜厚60nmのAl合金の窒化層を、以下の手順で作製し、対比例1の導電膜とした。
すなわち、実施例1〜3と同様の装置を用い、同様の条件で、DCマグネトロンスパッタリング法により、ガラス基板上に、膜厚330nmのAl-Nd合金層を成膜した。
・ターゲット:厚さ6mm Al-Cu-Nd合金ターゲット
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚 :60nm
・Ar流量:650sccm
・N2流量:88sccm
以上により、対比例1の導電膜を得た。
ガラス基板上に、膜厚330nmのAl-Nd合金層、膜厚40nmのMo-Nb合金の窒化層、膜厚30nmのIGO層を、以下の手順で作製し、参考例1の導電膜とした。
すなわち、実施例1〜3と同様の装置を用い、同様の条件で、DCマグネトロンスパッタリング法により、ガラス基板上に、膜厚330nmのAl-Nd合金層を成膜した。
・ターゲット:厚さ9mmMo-Nbターゲット
・スパッタ電力:1.5W/cm2
・膜厚 :40nm
・Ar流量:500sccm
・N2流量:88sccm
・ターゲット:IGO 6t 5”×62”ターゲット
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚 :30nm
・Ar流量:500sccm
・O2流量:12sccm
以上により、参考例1の導電膜を得た。
ガラス基板上に、膜厚10nmのMo-Nb層、膜厚330nmのAl-Nd合金層、膜厚40nmのITO層を順次成膜することにより、Mo-Nb(10nm)/Al-Nd(330nm)/Mo-Nb(30nm)/ITO(40nm)/Mo-Nb(10nm)/ITO(40nm)を、以下の手順で作成し、対比例2の導電膜とした。
すなわち、まず、実施例1〜3と同様の装置を用い、DCマグネトロンスパッタリング法により、ガラス基板上に、以下の成膜条件で、膜厚10nmのMo-Nb層を成膜した。
・ターゲット:厚さ9mmMo-Nbターゲット
・スパッタ電力:1.5W/cm2
・膜厚 :10nm
・Ar流量:100sccm
・ターゲット:厚さ14mmターゲット
・スパッタ電力:5.5W/cm2
・膜厚 :330nm
・Ar流量:500sccm
その後、ガラス基板上に最初に成膜したMo-Nb層と同様の手順で、膜厚10nmのMo-Nb層を成膜した。
・ターゲット:ITO 6t 5”×62”ターゲット
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚 :40nm
・Ar流量:500sccm
・O2流量:12sccm
以上により、対比例2の導電膜を得た。
ガラス基板上に、膜厚10nmのMo-Nb層、膜厚330nmのAl-Nd合金層、膜厚40nmのIGO層を順次成膜することにより、Mo-Nb(10nm)/Al-Nd(330nm)/Mo-Nb(30nm)/ITO(40nm)/Mo-Nb(10nm)/ITO(40nm)を、以下の手順で作成し、対比例3の導電膜とした。
すなわち、まず、実施例1〜3と同様の装置を用い、DCマグネトロンスパッタリング法により、ガラス基板上に、以下の成膜条件で、膜厚10nmのMo-Nb層を成膜した。
・ターゲット:厚さ9mmMo-Nbターゲット
・スパッタ電力:1.5W/cm2
・膜厚 :10nm
・Ar流量:100sccm
・ターゲット:厚さ14mmターゲット
・スパッタ電力:5.5W/cm2
・膜厚 :330nm
・Ar流量:500sccm
その後、ガラス基板上に最初に成膜したMo-Nb層と同様の手順で、膜厚10nmのMo-Nb層を成膜した。
・ターゲット:IGO 6t 5”×62”ターゲット
・スパッタ電力:2.5W/cm2
・膜厚 :40nm
・Ar流量:500sccm
・O2流量:12sccm
以上により、対比例3の導電膜を得た。
以上の通りに成膜した実施例1〜3,参考例1及び対比例1〜3の導電膜の特性を測定した。
・実施例1及び参考例1の導電膜の抵抗値及び反射率
実施例1及び参考例1の導電膜について、分光光度計(日立製作所製 U-4100)を用いて、波長400nmから700nmまでの可視光域における反射率を測定した。また、抵抗率計(三菱化学製ロレスターGP)を用いて抵抗値を、膜厚計(アルバック製 DEKTAKXT)を用いて反射率を、測定した。反射率の測定結果を図8に、抵抗値及び膜厚の測定結果を、表1に示す。
実施例1〜3,参考例1及び対比例1〜3で使用した透明基板であるガラスに、実施例2の条件、つまり酸素ガス導入量10sccmで酸窒化Al合金層(60nm)を成膜して、分光エリプソメータ(日本分光製 M-220)を用いて、可視光域400〜700nmにおける光学定数を測定した。結果を図9に示す。
・酸窒化Al合金層の組成分析
光電子分光装置(日本電子製 JPS-9000MC)を用いて、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)により、実施例1〜3及び対比例1の酸窒化Al合金層の組成分析を行った。分光装置における測定において、入射イオンとしては、Arイオンを用いた。
結果を、図10に示す。横軸は、酸窒化Al合金層の表面からのSiO2換算深さを示している。
実施例1の導電膜では、窒素原子の濃度比は、10.6〜22.9at%、酸素原子の濃度比は、77.1〜89.4at%であった。実施例2の導電膜では、窒素原子の濃度比は、12.1〜22.3at%、酸素原子の濃度比は、77.7〜87.9at%であった。実施例3の導電膜では、窒素原子の濃度比は、12.1〜23.7at%、酸素原子の濃度比は、76.3〜87.9at%であった。
対比例1の導電膜では、SiO2換算深さによっては、酸素原子の濃度比が、70at%未満となる箇所があったのに対し、実施例1〜3の導電膜では、酸素原子の濃度比は、すべてのSiO2換算深さにおいて、76at%以上であった。
実施例1〜3、対比例1,参考例1の導電膜を、40℃,60℃,80℃の温純水に20分浸漬し、浸漬前後の導電膜について、波長400nmから700nmまでの可視光域における反射率を測定した。反射率の測定は、分光光度計(日立製作所製 U-4100)を用いて行った。
40℃,60℃,80℃の温純水に20分浸漬した場合の結果を、それぞれ、図11〜図13に示す。
図11の結果より、40℃の温純水に20分浸漬した場合には、いずれの導電膜においても、浸漬前後で、反射率に変化は見られなかった。
しかし、図12及び図13のように、60℃,80℃の温純水に20分浸漬した場合には、対比例1の導電膜において、浸漬後の反射率が、浸漬前に比べて、大きく変化していた。
図10の組成分析結果と図11〜図13の温純水浸漬試験結果より、すべてのSiO2換算深さにおいて、窒素原子の濃度比が、30at%以下であり、すべてのSiO2換算深さにおいて、酸素原子の濃度比が、70at%以上であると、40℃〜80℃の温純水に浸漬したときであっても、浸漬前後で反射率特性に実質的に変化がないことが分かった。
実施例1,参考例1の導電膜について、エッチング評価を行った。
実施例1,参考例1の導電膜に、フォトレジスト(東京応化製OFPR-800LB)をコートし、パターニングしたマスク原版を使用して、紫外線を照射しフォトレジストにパターンを焼き付けた。現像液(TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液)を用いて、硬化していないフォトレジストを除去して原版のパターンを現像し、フォトレジストが除去された導電膜の不要な部分を、エッチング液(リン酸、硝酸、酢酸混合液)を用いたエッチングで、除去した。その後、導電膜上に残ったフォトレジストを剥離・洗浄して、実施例1,参考例1のエッチングサンプルを得た。
その後、実施例1,参考例1のエッチングサンプルについて、SEM断面分析(日本電子製 JSM-6700F)を行った。
実施例1,参考例1のエッチングサンプルのSEM断面写真を、図14,図15に示す。図14,図15のように、参考例1では、エッチング面の写真に明確な境界が観察されず、エッチング面に凹凸があることが分かったのに対し、実施例1では、エッチング面が、明確な境界として観察され、良好なエッチングが行われることが分かった。
実施例1,参考例1及び対比例1〜3の導電膜について、以下の信頼性評価を行った。
各導電膜を、60℃90%の条件で24時間保持する耐湿試験を行った。耐湿試験では、試験前及び60℃90%の条件で24時間保持試験後の抵抗値を測定し、{(試験後抵抗値−試験前抵抗値)/試験前測定値}×100(%)の式により抵抗値の変化率を算出した。また、60℃90%の条件で24時間保持後の各導電膜について、外観を目視で評価し、膜剥離の場合を×、表面変化の場合を△、変化なしの場合を〇として評価した。
試験の結果を、図16に示す。図16に示すように、いずれの導電膜も、外観は○で、抵抗値の変化率もすべて±2.0%以内であり、いずれの導電膜も、耐湿性に問題はなかった。
その結果、図16に示す通り、実施例1及び対比例3の導電膜は、外観は○で良好、参考例1の導電膜は△であったが、対比例1,2の導電膜は、×であった。実施例1及び対比例4の導電膜は、抵抗値の変化率も±15%以内であって許容範囲であったが、参考例1,対比例1,2の導電膜の抵抗値の変化率は、±20%を超えていた。特に、対比例1,2の現像液に対する耐薬性は、実用化に充分でないことが分かった。
ユーザ製品規格では、エッチング時間は、95秒以下と規定されているところ、その結果、図16に示す通り、すべての導電膜において、87秒以下となっており、いずれの導電膜も、規格の水準を満たしていた。
また、40℃のエッチング液(リン酸、硝酸、酢酸混合液からなる混酸)に95秒浸漬したときに、エッチングが完了せずに残るエッチング残渣有無確認試験を行った。浸漬後のエッチング残渣有無を目視で確認し、溶解しきれていない場合を×、点状に膜残りした場合を△、完全に膜溶解した場合を〇として評価した。
その結果、図16に示す通り、すべての導電膜について、評価は〇であり、規格で規定された95秒の浸漬試験において、エッチング残渣は残らず、規格の水準を満たしていた。
その結果、図16に示す通り、すべての導電膜について、評価は〇であり、膜面異常は見られなかった。レジスト剥離剤95秒浸漬に対する充分な耐薬性を備えることが確認された。
その結果、図16に示す通り、すべての導電膜について、評価は〇であり、充分な膜付着強度を備えることが確認された。
本試験では、Al合金の窒化膜上に、Al合金の酸窒化膜を形成し、Al合金の窒化膜で課題となる温純水の洗浄後の分光特性の変化が改善されるかどうかについて確認する試験を行った。
本発明の試験例に係る導電膜(試験例1)と、比較例に係る導電膜(対比例4)を成膜し、洗浄前後の分光特性変化を検討した。
〇 導電膜の作製
まず、以下の手順で、試験例1及び対比例4の導電膜を作製した。
ガラス基板上に、膜厚320nmのAl-Nd合金層(Nd1wt%)、膜厚40nmのAl合金(Cu,Nd)の酸窒化層、実施例1〜3,参考例1及び対比例1〜3の手順に準じて作製し、試験例1の導電膜とした。
このとき、ターゲットとしては、Al-Nd合金ターゲット、Al合金(Cu,Nd)ターゲット(Al 89.6at%,Cu 7.0at%,Nd 3.4at%)を使用し、Al合金(Cu,Nd)の酸窒化層成膜時のArガス,窒素ガス,酸素ガス導入量は、それぞれ500sccm、88sccm、10sccmとした。
試験例1の導電膜は、同じスパッタリング装置内で3枚のガラス基板上に作成し、3つの導電膜の抵抗値及び膜厚及びそれらの平均値は、表2の通りであった。
最上層のAl合金(Cu,Nd)の酸窒化層を備えないことを除いては、試験例1と同様の導電膜を作製して、対比例4の導電膜とした。つまり、ガラス基板上に膜厚320nmのAl-Nd合金層(Nd1wt%)、膜厚40nmのAl合金(Cu、Nd)の窒化層を、実施例1〜3,参考例1及び対比例1〜3の手順に準じて作製し、対比例4の導電膜とした。
結果を、図17に示す。
洗浄前後における反射率の変化率を、{(洗浄後反射率−洗浄前反射率)/洗浄前反射率}×100(%)の絶対値としたとき、図17のグラフより、対比例4では、洗浄前後において、反射率の変化率が、最大で138%(波長636nm)であったのに対し、試験例1では、反射率の変化率の最大値が、5.5%(波長540nm)であった。
本試験例の結果より、合金の窒化膜表面に合金の酸窒化膜を成膜することにより、温純水耐性が向上することが分かった。
1 タッチセンサ一体型表示装置
2 加飾部
3 操作部
10 カラーフィルタ基板
11、21 ガラス基板
12 ブラックマトリクス
13 カラーフィルタ
15 タッチ検出電極
15L 下部タッチ検出電極
16、26 配向膜
17、27 粘着層
18、28 偏光板
19、121b、131b、141a 絶縁膜
20 TFT基板
15U 駆動電極
25 共通電極
30 液晶
31 スペーサ
50、60 配線パターン
50a、150a、160a 接続端子
100 入力装置
101 静電容量型入力装置
101a 入力部
101b 出力部
102 画像表示装置
103 フレキシブルフラットケーブル
104 透明基板
120 第1の電極パターン
121a 第1透明導電膜
122 接触孔
130 第2の電極パターン
131a 第2透明導電膜
131c 接続部
150、160 配線パターン
151a 導電部材
171 保護膜
Claims (6)
- 透明基板上に形成される導電膜であって、
前記透明基板上に形成されるAl膜又はAl合金膜からなる金属層と、
該金属層上に形成され、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、少なくとも一部が酸窒化されている酸窒化合金層と、が積層されてなり、
前記酸窒化合金層において、前記金属層逆側の表面からSiO 2 換算深さ20nmまでの領域における窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比が、20at%以下であり、
前記導電膜を形成した前記透明基板の波長410〜670nmにおける反射率が、10%以下であることを特徴とする導電膜。 - 前記透明基板がプラスチック基板からなり、
前記金属層は、前記プラスチック基板上に成膜された密着膜上に成膜されていることを特徴とする請求項1に記載の導電膜。 - 請求項1又は2に記載の導電膜からなり、電子機器に用いられることを特徴とする電極。
- 請求項1又は2に記載の導電膜からなる電極を備えることを特徴とする電子機器。
- 透明基板の一面上に、第1方向に延在する第1の電極パターンと、該電極パターンと異なる第2方向に延在する第2の電極パターンと、を備え、静電容量を検出する静電容量型入力装置であって、
前記第1の電極パターン及び前記第2の電極パターンのうち少なくとも一方が、
透明基板上に形成されるAl膜又はAl合金膜からなる金属層と、
該金属層上に形成され、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、少なくとも一部が酸窒化されている酸窒化合金層と、が積層されてなる導電膜から形成されており、
前記酸窒化合金層において、前記金属層逆側の表面からSiO 2 換算深さ20nmまでの領域における窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比が、20at%以下であり、
前記導電膜を形成した前記透明基板の波長410〜670nmにおける反射率が、10%以下であることを特徴とする静電容量型入力装置。 - Alターゲット又はAl合金ターゲットを用いて、スパッタリングにより、透明基板上に、Al又はAl合金からなる金属層を成膜する工程と、
Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金からなるターゲットを用いて、酸素ガス及び窒素ガスを導入したスパッタリングにより、前記金属層上に、Alと、Nd,Mn,Cu,Ti,Ta,Ge,La,Zrを含む群から選択される少なくとも一種の金属を含むAl合金であって、少なくとも一部が酸窒化されている酸窒化合金層を積層して、導電膜を成膜する工程と、
前記導電膜を40℃よりも高い温度の純水で洗浄する工程と、を含み、
前記酸窒化合金層において、前記金属層逆側の表面からSiO 2 換算深さ20nmまでの領域における窒素原子と酸素原子の合計に対する窒素原子の原子濃度比が、20at%以下であり、
前記導電膜を形成した前記透明基板の波長410〜670nmにおける反射率が、10%以下であることを特徴とする電極の製造方法。
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