JP6965870B2 - 熱伝導性シリコーン組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
従って、この熱を放熱する多くの方法が提案されている。特に発熱量の多い電子部品では、電子部品とヒートシンク等の部材の間に熱伝導性グリースや熱伝導性シートの熱伝導性材料を介在させて熱を逃がす方法が提案されている。
窒化アルミニウムの熱伝導率は70〜270W/mKであり、これより熱伝導性の高い材料として熱伝導率900〜2,000W/mKのダイヤモンドがある。特開2002−30217号公報(特許文献5)には、シリコーン樹脂に、ダイヤモンド、酸化亜鉛、分散剤を用いた熱伝導性シリコーン組成物が開示されている。
更に、特開2000−63873号公報(特許文献6)や特開2008−222776号公報(特許文献7)には、シリコーンオイル等の基油に金属アルミニウム粉末を混合した熱伝導性グリース組成物が開示されている。
更には熱伝導率の高い銀粉末を充填剤として用いている特許3130193号公報(特許文献8)、特許3677671号公報(特許文献9)等も開示されている。
しかし、いずれの熱伝導性材料や熱伝導性グリースも、最近のCPU等の集積回路素子の発熱量に対する放熱効果は不十分なものとなってきている。
系内で発生する水素ガスを低減する手段として、SiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてSiH基の量が少ない又は活性の低い構造を持つSiH基を含有するオルガノハイドロジェンシロキサンを用いること、SiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量を低減することなどが挙げられるが、架橋剤として作用する成分の構造及び配合量が限られるため、組成物の特性が制限され、所望とする物性や放熱効果が得られないという問題がある。
従って、本発明の目的は、良好な放熱効果を奏し、かつ系内の気泡を効果的に抑制させ、良好な外観や物性を有する硬化物を与える熱伝導性シリコーン組成物を提供することにある。
すなわち、本発明は、次の熱伝導性シリコーン組成物等を提供するものである。
下記、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.2〜10モルとなる量
(C)ヒドロシリル化反応用触媒:有効量
(D)タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が、1〜30である銀粉末:(A)成分100質量部に対して、300〜11,000質量部
(E)平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカ:(A)成分100質量部に対して、パラジウム粉が0.00001〜0.05質量部
<2>
発熱性電子部品と、放熱体とを備えている半導体装置であって、前記発熱性電子部品と放熱体との間に、<1>に記載の熱伝導性シリコーン組成物が介在していることを特徴とする半導体装置。
<3>
<1>に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間で、0.01MPa以上の圧力を掛けられた状態で80℃以上に加熱する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは本発明の組成物のベースポリマーであり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有する。
(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状構造、環状構造が挙げられ、これらの構造は分岐を有していてもよいが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサンが(A)成分として好ましく用いられる。
(A)成分の25℃における動粘度は、10mm2/sより小さいと組成物にした時にオイルブリードが出やすくなり、100,000mm2/sより大きいと組成物に配合したときの組成物の絶対粘度が高くなることから取り扱い性が低下する。そのため、(A)成分の25℃における動粘度は10〜100,000mm2/sであることが好ましく、特に100〜50,000mm2/sであることが好ましい。なお、本明細書に記載される(A)成分のオルガノポリシロキサンの動粘度はオストワルド粘度計で測定した25℃の値である。
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分と反応し、架橋剤として作用する。(B)成分の分子構造に特に制限はなく、例えば、線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来公知の各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
R3 aHbSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R3は、脂肪族不飽和基を除く、非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜14、より好ましくは1〜10の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基であり、aおよびbは、好ましくは0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0、より好ましくは、0.9≦a≦2.0、0.01≦b≦1.0、かつ1.0≦a+b≦2.5を満足する正数である)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられる。
(C)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のSiH基との付加反応を促進するものであれば、いかなる触媒を使用してもよい。例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンもしくはアセチレン化合物との配位化合物等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム系触媒;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒が(C)成分として使用されるが、特に好ましくは白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体等の白金系触媒である。
(D)成分は、タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が1〜30の銀粉末である。
(D)成分の銀粉末のタップ密度は、3.0g/cm3より小さいと(D)成分の組成物への充填率が上げられなくなり、組成物の粘度が上がってしまい、作業性が悪くなるため、3.0g/cm3〜8.0g/cm3の範囲が好ましく、4.5g/cm3〜8.0g/cm3の範囲がより好ましく、5.5g/cm3〜8.0g/cm3の範囲がさらに好ましい。
(D)成分の銀粉末の比表面積は、2.0m2/gより大きいと(D)成分の組成物への充填率が上げられなくなり、組成物の粘度が上がってしまい、作業性が悪くなるため0.08m2/g〜2.0m2/gの範囲が好ましく、0.08m2/g〜1.5m2/gの範囲がより好ましく、0.08m2/g〜1.0m2/gの範囲がさらに好ましい。
尚、本明細書に記載のタップ密度は、銀粉末100gをはかり、該銀粉末をロートで100mlメスシリンダーに静かに落とした後、シリンダーをタップ密度測定器にのせて落差距離20mm、60回/分の速さで600回落下させ、圧縮した銀粉末の容積から算出した値である。
また、比表面積は、銀粉末約2gをサンプルにとり、60±5℃で10分間脱ガスした後、比表面積自動測定装置(DET法)にて総表面積を測定した。その後、サンプル量をはかり、下記式(2)で計算し、算出したものである。
銀粉末は、上記方法で製造されたものをそのまま用いてもよく、上記数値範囲を満たす範囲で粉砕して用いてもよい。銀粉末を粉砕する場合、装置は特に限定されず、例えば、スタンプミル、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、圧延ローラ、乳鉢等の公知の装置を用いることができる。なかでも、スタンプミル、ボールミル、振動ミル、ハンマーミルが好ましい。
(E)成分は平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカである。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、微細な特定の粒径範囲のパラジウム粉を有する(E)成分を特定のごく少量含むことにより、組成物の硬化反応中に発生する水素ガスを(E)成分のパラジウム粉が吸着し、熱伝導性を損なうことなく、硬化物の外観や物性が良好なものとなる。(E)成分中のパラジウム粉の平均粒径は、1nmから100nmであり、5nmから70nmが好ましく、更に10nmから50nmが好ましい。該平均粒径が1nmより小さいと配合に不都合が生じ、また該平均粒径が100nmより大きいと配合量に対する水素ガスの吸着効率が低くなり、コストパフォーマンス性に劣ることとなる。なお、(E)成分中のパラジウム粉の平均粒径は粒子の電子顕微鏡写真を撮り、数千倍に拡大した写真を数枚撮影した後、任意に100個の粒子の長径を測定した値である。
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上記の(A)〜(E)成分に加えて任意の成分として、以下の成分を含有してもよい。
本発明の組成物において、上記の(A)〜(E)成分に加えて任意の成分として、付加反応触媒に対して硬化抑制効果を有するとされている従来公知のすべての硬化反応制御剤を使用することができる。このような化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物、トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物、硫黄含有化合物、1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどのアセチレン系化合物、トリアリルイソシアヌル酸、ハイドロパーオキシ化合物、マレイン酸誘導体などが挙げられる。硬化反応制御剤による硬化遅延効果の度合は、硬化反応制御剤の化学構造によって大きく異なる。従って、硬化反応制御剤の添加量は、使用する硬化反応制御剤の個々について最適な量に調整すべきであるが、そのような調整は当業者に周知の方法によって容易に行うことができる。一般には、該添加量が少なすぎると室温において本発明組成物の長期貯蔵安定性が得られず、逆に該添加量が多すぎると該組成物の硬化が阻害される。
(D)成分及び(E)成分以外の無機化合物粉末及び/又は有機化合物材料としては、
アルミニウム、金、銅、ニッケル、インジウム、ガリウム、金属ケイ素等の金属粉末;
ダイヤモンド粉末;
炭素繊維、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等のカーボン材料;
酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化鉄、二酸化ケイ素(ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ等)等の金属酸化物粉末;
水酸化アルミニウム等の金属水酸化物粉末;
窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物粉末;
炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の炭酸塩;
中空フィラー;シルセスキオキサン;層状マイカ;ケイ藻土;ガラス繊維;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
これらの中でも、熱伝導率が高いものが好ましい。熱伝導率が高い無機化合物粉末及び/又は有機化合物材料としては、アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末、酸化マグネシウム粉末、アルミナ粉末、水酸化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化アルミニウム粉末、ダイヤモンド粉末、金粉末、銅粉末、カーボン粉末、ニッケル粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末、金属ケイ素粉末、二酸化ケイ素粉末、炭素繊維、グラフェン、グラファイト及びカーボンナノチューブが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の半導体装置は、発熱性電子部品の表面と放熱体との間に、本発明の熱伝導性シリコーン組成物が介在することを特徴とする。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、10〜500μmの厚さで介在させることが好ましい。
代表的な構造を図1に示すが本発明はこれに限定されるものではない。本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、図1の3に示すものである。
本発明に関わる効果に関する試験は次のように行った。
組成物の絶対粘度は、マルコム粘度計(タイプPC−1TL)を用いて25℃で測定した。
下記表記載の実施例1〜12及び比較例1〜6の各組成物を6mm厚の型に流し込み、0.35MPaの圧力を掛けられた状態で150℃に加熱した後、京都電子工業(株)社製のTPS−2500Sにより、いずれも25℃において熱伝導率を測定した。
実施例1〜12及び比較例1〜6の各組成物をスライドガラスに0.1gになるよう計量し、もう1枚のスライドガラスで挟み、25psi(0.17MPa)の圧力で25℃にて15分保持した。その後、無加圧で150℃にて1時間加熱処理して硬化させ、発泡具合を目視で確認した。なお、本気泡発生試験では、組成物由来で発生する気泡の有無を確認する目的のため、硬化は無加圧で行なった。
A−1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が600mm2/sのジメチルポリシロキサン
C−1:(白金触媒):白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のA−1溶液、白金原子として1wt%含有
D−1:タップ密度が6.6g/cm3、比表面積が0.28m2/g、アスペクト比が8の銀粉末
D−2:タップ密度が6.2g/cm3、比表面積が0.48m2/g、アスペクト比が13の銀粉末
D−3:タップ密度が3.0g/cm3、比表面積が2.0m2/g、アスペクト比が30の銀粉末
E−1:0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は5nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−2:0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は90nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−3:1.0wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は2nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は約5μmである)
E−4(比較例):0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は110nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
E−5(比較例):0.8wt%パラジウム粉担持結晶性シリカ(パラジウム粉の平均粒径は0.5nmであり、担持に用いた結晶性シリカの平均粒径は5μmである)
F−1:1−エチニル−1−シクロヘキサノール
下記表1〜3に示す組成で、次のように混合して実施例1〜12及び比較例1〜6の組成物を得た。
即ち、5リットルプラネタリーミキサー(井上製作所(株)社製)に(A)及び(D)成分を取り、(C)、(E)及び(F)成分を加え25℃で1.5時間混合した。次に、(B)成分を加えて均一になるように混合した。
一方、特定の粒径範囲にあるパラジウム粉を有する(E)成分を特定量配合した本願発明の熱伝導性シリコーン組成物の硬化物は、熱伝導性に優れ、発泡がなかった。
2.発熱性電子部品(CPU)
3.熱伝導性シリコーン組成物層
4.放熱体(リッド)
Claims (3)
- 下記、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン:100質量部
(B)ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を1分子中に少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:全組成物中のアルケニル基1モル当たり、本(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.2〜10モルとなる量
(C)ヒドロシリル化反応用触媒:有効量
(D)タップ密度が3.0g/cm3以上であり、比表面積が2.0m2/g以下であり、かつアスペクト比が、1〜30である銀粉末:(A)成分100質量部に対して、300〜11,000質量部
(E)平均粒径が1nmから100nmであるパラジウム粉が担持された結晶性シリカ:(A)成分100質量部に対して、パラジウム粉が0.00001〜0.05質量部 - 発熱性電子部品と、放熱体とを備えている半導体装置であって、前記発熱性電子部品と放熱体との間に、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物が介在していることを特徴とする半導体装置。
- 請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物を、発熱性電子部品と放熱体との間で、0.01MPa以上の圧力を掛けられた状態で80℃以上に加熱する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
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