<丸干し芋の製造方法について、その第1の実施態様>
本発明に係る丸干し芋の製造方法について、その第1の実施態様(以下「本製法1」という。)は、図1に示すように、安納芋を準備する工程S10と、焼き芋を得る工程S30と、冷蔵された芋を得る工程S40と、乾かす工程S50と、を含む。
本製法1における安納芋は、同名の植物から採取された塊根の部分であり、生の状態、つまり、加熱処理や殺菌処理をされていない状態のものである。本製法1における焼き芋、冷蔵された芋、及び丸干し芋の各々は、安納芋の加工品である。
本製法1により得られる丸干し芋は、原料として用いられた安納芋と比べて、水分を多く除かれて収縮しているものの、全体的な形状がなるべく保たれた干し芋である。例えば、原料として用いられた安納芋が紡錘形であれば、丸干し芋も概ね紡錘形である。なお、切り干し芋や平干し芋は、その製造過程で薄切りされているから、原料として用いられた安納芋の全体的な形状が保たれていないため、丸干し芋とはいえない。
本製法1における糖度は、20℃でのBrixの値により示される。本製法1で試料(例えば、安納芋、焼き芋、冷蔵された芋、丸干し芋など)の糖度を測定する際は、試料をすり潰して、水で5倍希釈して、得られた組成物の温度を20℃に調整して、20℃の組成物についてポケット糖度計(株式会社アタゴ製、型番:APAL−1)を用いてBrixを測定する。得られた測定表示値を5倍した値を、試料の20℃でのBrixの値として扱う。なお、Brixは、試料中における可溶性固形分の質量パーセント濃度を示す。可溶性固形分とは、試料に含有されている糖に限らず、塩類、タンパク質、酸などの水溶性の物質全てを含んでいる。測定の際には、これらの水溶性の物質全ての質量パーセント濃度の合算値が、糖度計に表示される(詳細については非特許文献1を参照)。
安納芋を準備する工程S10では、丸干し芋の原料として、質量が120g未満である安納芋を準備する。安納芋としては、例えば、安納紅、安納こがね、安納もみじ(種子屋久農業協同組合の登録商標)、安納みつき(株式会社九州トータルプランニングの登録商標)、フルーツこがね、灯籠蜜いも等が挙げられる。質量が120g未満である安納芋の20℃でのBrixは、例えば5%以上かつ15%以下の範囲で、安納芋の個体ごとに大きく異なる。
安納芋を準備する工程S10では、Sサイズ安納芋よりも更に廃棄されることが多いSSサイズ安納芋を有効利用する観点から、丸干し芋の原料として、好ましくは質量90g未満である安納芋を準備する。なお、質量が90g未満である安納芋の20℃でのBrixは、例えば5%以上かつ12%以下の範囲で、安納芋の個体ごとに大きく異なる。また、安納芋を準備する工程S10では、本製法1により得られる丸干し芋を食べた喫食者が量的に満足感を得る観点から、その原料として、好ましくは質量30g以上である安納芋、さらに好ましくは質量50g以上である安納芋を準備する。
本製法1における安納芋の質量は、前述した塊根の部分である生の状態の安納芋の質量である。なお、安納芋の質量は安納芋が収穫されてから水分の蒸散などにより徐々に減少することを考慮すると、本製法1における安納芋の質量は、例えば、安納芋の収穫時や、生産農家が安納芋を収穫してから出荷するまでの期間、などの安納芋の水分があまり減少していない時期での安納芋の質量であっても良い。また、準備した安納芋に土や泥などが付着している場合には、その混入を避ける観点から、安納芋を水洗することが好ましい。水洗した場合には、安納芋がふやけない程度に水洗して外皮上の水滴をふき取った後の質量を、安納芋の質量とする。
焼き芋を得る工程S30では、準備した安納芋を焼く。このためには、熱輻射による加熱調理方法、熱伝導による加熱調理方法、及び対流による加熱調理方法からなる群より選ばれた1種又は2種以上の加熱調理方法が挙げられる。熱輻射による加熱調理方法とは、安納芋を直接に火または熱源に近づける加熱調理方法(いわゆる直火焼き)であり、例えば、串焼き、網焼き、炭火焼き、ガス火焼き、電気焼き、バーナー焼きなどが挙げられる。熱伝導による加熱調理方法とは、火または熱源により熱媒体(例えば、鉄板、焼き石など)を熱してこの熱媒体を介して安納芋を熱する加熱調理方法であり、例えば、鉄板焼き、挟み焼き、煎り焼き、石焼きなどが挙げられる。対流による加熱調理方法とは、密閉された容器内などで火または熱源により熱された気体を介して安納芋を熱する加熱調理方法であり、例えば、蒸し焼き、天火焼き(オーブン焼き)、窯焼きなどが挙げられる。
焼き芋を得る工程S30では、例えば、短時間の天火焼きをしてから、その後に安納芋の焼け上がりを確認しながら直火焼きをするなど、2種以上の加熱調理方法を組み合わせても良い。焼くときに、安納芋を例えばアルミホイル又は葉で包んでも良い。
上記した工程S30により得られた焼き芋では、原料として用いられた安納芋の全体的な形状が、ほとんど保たれている。この焼き芋の表面部分は、安納芋由来の焼けた外皮に概ね覆われている。この焼き芋の中心部分は、熱せられて生じた蜜と、元から安納芋に含有されていた水分と、が混ざって黄色く軟らかいクリーム状になっており、ねっとりとした食感を呈する。なお、安納芋が焼かれたときに、安納芋に含有されているβ−アミラーゼによりデンプンが分解されたことによって、焼き芋の20℃でのBrixは例えば15%より大きくかつ30%以下になっている。
上記した工程S30により得られた焼き芋は、焼き上がってから時間の経過と共に、その中心部分から表面部分へ水分が浸み出して、濡れた外観となる。なお、本製法1における濡れとは、焼き芋の表面部分を観察したときに、この表面部分の少なくとも一部に液状物があることを視認できる状態をいう。焼き芋に乾燥した部分(例えば表面部分)があっても、この乾燥した部分は湿った部分(例えば中心部分)から吸水して湿るため、焼き芋が濡れたままであるということは、この焼き芋が全体的に湿った状態に保たれていることを示す指標となる。また、原料として用いられた安納芋ごとに個体差があるが、焼き芋の中心部分から表面部分へ蜜が浸み出している場合があり、この場合に浸み出している蜜は飴色に濡れて蜂蜜のような外見になっている。
焼き芋を得る工程S30では、原料として用いられた安納芋の形状が保たれやすい観点、焼き芋の表面部分が焼け焦げにくい観点、及び糖度が高い焼き芋を得る観点から、安納芋を焼く方法が、石焼き、天火焼き(オーブン焼き)、及び窯焼きからなる群より選ばれた1種又は2種以上の加熱調理方法であることが好ましい。これらの観点に加えて、焼き芋の焼け上がりを適度に調整しやすいため丸干し芋の品質を安定させやすい観点から、安納芋を焼く方法が天火焼き(オーブン焼き)であることがさらに好ましい。安納芋を天火焼きする場合には、同様の観点から、オーブン内が150℃以上かつ270℃以下の温度で、20分以上かつ2時間以下かけて、安納芋を天火焼きすることが挙げられる。また、同様の観点から、オーブン内が170℃以上かつ200℃以下の温度で、30分以上かつ1時間以下かけて、安納芋を天火焼きすることが、さらにより好ましい。
焼き芋を得る工程S30では、焼かれている安納芋の中心部分で生じた水蒸気が安納芋の外皮の内側に溜まって形状を崩すことがあるのを避ける観点から、安納芋の外皮の少なくとも一部を除いてから焼くことが好ましい。このためには、例えば、包丁、ピーラーなどの調理器具を用いて、安納芋の外皮の一部を切除する。外皮の一部を切除しておくと、焼かれている安納芋の中心部分から生じた水蒸気が、切除部分を介して蒸散しやすい。
冷蔵された芋を得る工程S40では、安納芋由来の焼き芋が濡れたままになるように冷蔵する。なお、本製法1における「冷蔵」とは、焼き芋の水分の凝固点よりも高温かつ10℃未満の温度で、焼き芋を冷やしながら貯蔵することをいう。例えば、焼き芋の糖度が高まっていれば、−1℃の雰囲気下であっても焼き芋の水分が凍結しない場合がある。
仮に、焼き芋をそのまま冷蔵庫に収容して冷蔵したのでは、この焼き芋から水分が次第に蒸発して行き、焼き芋の全体が乾燥してしまう。本製法1において、焼き芋が濡れたままになるように冷蔵するためには、例えば、焼き芋をプラスチックフィルムで包んだ状態でこのフィルムごと冷蔵したり、焼き芋を気密性の高い容器に収容した状態でこの容器ごと冷蔵する等の方法が挙げられる。例えば、これらの方法で熱い焼き芋を冷蔵すると、焼き芋からの水分の蒸発が抑えられる他、冷やされた焼き芋で結露水が生じるから、焼き芋が濡れたままになるように冷蔵することができる。冷蔵期間中に焼き芋が乾燥しそうな場合には、冷蔵されている焼き芋に水を吹きかけることで、焼き芋が濡れたままになるように冷蔵しても良い。
上記した工程S40により、冷蔵された芋を得ることができる。冷蔵された芋は、冷蔵前の焼き芋と比べると、全体的に冷えて硬くなっており、糖度が高まっている。また、冷蔵された芋の表面部分は、冷蔵前の焼き芋の表面部分と比べて、蜜に覆われて飴色になっている部分の面積が拡大している。冷蔵された芋の20℃でのBrixは、原料として準備した安納芋ごとの個体差、焼く時間の長さ、冷蔵期間の長さなどによって大きく異なるが、例えば30%より大きくかつ45%未満になっている。
冷蔵された芋を得る工程S40での冷蔵温度は、水分の凍結により後述する酵素反応が妨げられるのを避ける観点から、好ましくは0℃より高温、さらに好ましくは2℃以上である。また、この冷蔵温度は、冷蔵時に焼き芋で雑菌が繁殖するのを避ける観点から、好ましくは8℃未満、さらに好ましくは6℃以下である。この工程S40での冷蔵期間は、後述する酵素反応を進めて焼き芋の糖度を充分に高める観点から、好ましくは36時間以上、さらに好ましくは42時間以上である。また、この冷蔵期間は、短期間で丸干し芋を製造する観点から、好ましくは60時間以下、さらに好ましくは54時間以下である。
冷蔵された芋を得る工程S40では、焼き芋を濡れたままに保つことにより後述する酵素反応を促進させて焼き芋の糖度を高める観点から、多湿の雰囲気下で焼き芋を冷蔵することが好ましい。このためには、例えば、庫内に水蒸気を吹き込む機能など、庫内を多湿の雰囲気に保持できる機能を備えた冷蔵庫を用いて焼き芋を冷蔵する。あるいは、例えば、水を多く含ませたスポンジや布を庫内に入れて一定時間おきに交換したり、霧吹きで庫内に一定時間おきに水を吹きかけたりしながら、冷蔵庫で焼き芋を冷蔵する。なお、本製法1における多湿の雰囲気は、相対湿度70%RH以上かつ100%RH以下の気体で満たされた状態の空間であり、好ましくは相対湿度90%RH以上かつ100%RH以下の気体で満たされた状態の空間である。
また、焼き芋を多湿の雰囲気下で冷蔵する場合には、焼き芋で雑菌が繁殖するのを避ける観点から、乾燥した雰囲気下で焼き芋の表面温度を40℃未満に降温させてからこの焼き芋を多湿の雰囲気下で冷蔵することが好ましい。なお、本製法1における「乾燥した雰囲気」は、相対湿度0%RH以上かつ70%RH未満の気体で満たされた状態の空間であり、好ましくは相対湿度0%RH以上かつ50%RH以下の気体で満たされた状態の空間である。また、焼き芋の表面温度を40℃未満に降温させるためには、好ましくは焼き芋を10℃以上かつ25℃以下である乾燥した雰囲気下で放冷させ、さらに好ましくは焼き芋を12℃以上かつ18℃以下である乾燥した雰囲気下で放冷させる。放冷期間は、焼き芋を濡れたままの状態に保ちつつ適度に冷やす観点から、好ましくは2時間以上かつ24時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上かつ18時間以下である。表面温度が40℃未満にまで降温した焼き芋は、その後の冷蔵によって短期間で中心温度が10℃未満に冷やされるため、多湿の雰囲気下で冷蔵されても雑菌が繁殖しにくい。
あるいは、冷蔵された芋を得る工程S40では、焼き芋を濡れたままに保つことにより後述する酵素反応を促進させて焼き芋の糖度を高める観点、冷蔵時に焼き芋で雑菌が繁殖するのを避ける観点、工程を簡略化する観点、及び冷蔵時に焼き芋の形状が崩れにくくする観点から、焼き芋を真空包装して冷蔵することが好ましい。この場合には、焼き芋が真空に晒されることにより安納芋由来の細胞が壊れやすいことに起因して、後述する酵素反応が更に促進されて、焼き芋の糖度がさらに高まりやすいと考えられる。
なお、本製法1における真空とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態である(JIS Z 8126−1:1999を参照)。本製法1における真空包装とは、ガスバリア性に優れた包装材料を含んで成る容器に内容物を充填するときに、前記容器から空気を吸引排気して密封する包装である(JIS Z 0108:2012を参照)。
乾かす工程S50では、水分を多く除くために、冷蔵された芋を乾かす。このための方法としては、例えば、弱火で焼く、日干しする、陰干しする、乾燥した雰囲気下で乾燥させる等の方法が挙げられる。なお、冷蔵された芋を得る工程S40で焼き芋を真空包装した場合には、乾かす工程S50では大気に開放してから冷蔵された芋を乾かす。この工程S50によって、冷蔵された芋から水分が蒸発するため、乾かす前と比べて全体的に収縮した丸干し芋を得ることができる。
乾かす工程S50では、呈味成分の好ましくない変質を避けるために温和な条件で乾燥させる観点から、冷蔵された芋を乾燥した雰囲気下で乾かすことが好ましい。この場合には、例えば、冷蔵された芋を乾燥した室内に置いて乾かす、あるいは、冷蔵された芋を除湿剤と共に包装して商品として輸送する過程で乾かす、等の方法が挙げられる。
乾かす工程S40で冷蔵された芋を日干し、陰干し、あるいは乾燥した雰囲気下で乾燥させる場合には、乾燥期間を短縮して管理の手間を省く観点から、冷蔵された芋を乾かす温度が、好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上である。また、この温度は、冷蔵された芋が乾く前に雑菌が繁殖するのを避ける観点から、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは18℃以下である。さらに、乾かす工程S40での乾燥期間は、充分に乾かす観点から、好ましくは120時間以上、さらに好ましくは144時間以上である。また、この乾燥期間は、丸干し芋に少量の水分が残されている方が喫食しやすい観点から、好ましくは180時間以下、さらに好ましくは168時間以下である。
以上の工程を含む本製法1によれば、質量が120g未満である安納芋を焼き、得られた焼き芋が濡れたままになるように冷蔵することによって、冷蔵された芋で糖度が高められる。この冷蔵された芋を乾燥することにより、質量が120g未満である安納芋由来であるにも関わらず、糖度が高い丸干し芋を容易に得ることができる。この丸干し芋の20℃でのBrixは、原料として準備した安納芋ごとの個体差、焼く時間の長さ、冷蔵期間の長さ、乾燥期間の長さ、などによって異なるが、例えば45%以上になっている。
焼き芋が濡れたままになるように冷蔵することによって焼き芋の糖度が高められるメカニズムは、不明であるが、次のように推定される。生のサツマイモをそのまま冷蔵すると低温により細胞が代謝異常などを起こすため、冷蔵されたサツマイモではデンプンの含有量が減ってショ糖の含有量が増していることが知られている。このことから、生の安納芋には、冷蔵の温度帯で多糖類を効率よく分解できる加水分解酵素が含有されているのだろうと、本発明者は考えた。また、本製法1において安納芋を焼くと高熱で細胞が壊れるが、加水分解酵素の一部は失活しないまま焼き芋に残存しているのだろうと推察される。生の安納芋では細胞の膜構造は加水分解酵素が分散するのを阻んでいるが、焼き芋ではこの膜構造が既に壊れており分散するのをあまり阻まないだろうと想定される。この焼き芋が濡れたままであると、焼き芋に含有されている水を介して、加水分解酵素が焼き芋の広範囲にわたり満遍なく分散しやすいものと考えられる。また、焼き芋が濡れたままであると、デンプンが糊状に保たれており、その加水分解に要する水は充分に足りているため、酵素反応によりデンプンが加水分解されやすいと考えられる。これらの要因が重なることにより、冷蔵期間中に焼き芋の広範囲にわたり多糖類の加水分解が進み、単糖や二糖が数多く生成したため、焼き芋の糖度が高められたものと推定される。
本製法1では、丸干し芋の品質が喫食前に劣化するのを避ける観点から、さらに、製造された直後の丸干し芋を真空包装することが好ましい。
<丸干し芋の製造方法について、その第2の実施態様>
丸干し芋は、原料として用いられた安納芋の外皮の大半が残されたものよりも、外皮の全部又は大半が除かれたものの方が、見た目や食感が良いため商品価値が高い。しかし、紅はるか等の他品種のサツマイモ由来の焼き芋と比べると、安納芋由来の焼き芋には、加熱調理によりその中心部分が軟らかいクリーム状になってしまう特徴がある。このため、安納芋を焼いて得られた焼き芋から外皮の全部又は大半を除こうとすると、その過程でクリーム状の中心部分が崩れやすいため、原料として用いられた安納芋の全体的な形状が保たれた丸干し芋を製造するのが非常に難しいという問題がある。仮に、安納芋由来の焼き芋の皮むきに熟練したとしても、全体的な形状が崩れていない丸干し芋を量産しようとすると、その歩留まり率が低くなってしまうと考えられる。本発明者は、この問題を解決しようと鋭意検討した結果、本発明に係る丸干し芋の製造方法について、その第2の実施態様(以下「本製法2」という。)を見い出した。
本製法2について説明するにあたり、本製法1での説明と共通する事項を省略し、本製法1での説明と異なる事項を説明する。本製法2は、図2に示すように、安納芋を準備する工程S10と、皮むき芋を得る工程S20と、焼き芋を得る工程S30と、冷蔵された芋を得る工程S40と、乾かす工程S50と、を含む。なお、本製法2における皮むき芋は、原料として準備した安納芋から外皮の全部又は大半が除かれたものである。
皮むき芋を得る工程S20では、準備した安納芋から外皮の全部又は大半を除く。このためには、例えば、包丁、ピーラーなどの調理器具を用いて、安納芋において強度の高い繊維質が多い先端部とその反対側にある端部を切除する。生じた2つの切除面のいずれかに調理器具の刃をあてて、この刃を外皮部分に押し込みながら安納芋を回転させる。この手法により、サトイモから外皮の全部又は大半を剥くのと同様の要領で、安納芋から外皮の全部又は大半を容易に除くことができる。その後、本製法2での焼き芋を得る工程S30では、皮むき芋を焼いて焼き芋を得る。
上記した工程S20により得られる皮むき芋は、原料として準備した安納芋と比べて、その質量が85質量%から95質量%程度になっている。安納芋ごとに個体差があるが、質量が大きい安納芋ほど、皮むき芋を得る工程S20により質量が減少する程度が大きい傾向にある。また、皮むき芋では、その表面積の50%以上かつ100%以下において、皮層、内皮、維管束、及び維管束形成層、並びにこれらの組織から溶出した液状物、からなる群より選ばれた1種又は2種以上のものが露出している。皮むき芋では、その表面に外皮もしくは側根が全く残されていないか、または、その表面積の0%よりも多くかつ50%未満において外皮もしくは側根が残されている。
外皮が残された部分が小さいほど丸干し芋の見た目や食感が良いため商品価値が高いという観点から、皮むき芋を得る工程S20では、全部又は略全部の外皮を除いて皮むき芋を得ることが好ましく、全部の外皮を除いて皮むき芋を得ることがさらに好ましい。なお、略全部の外皮が除かれた皮むき芋では、その表面積の0%よりも多くかつ10%未満において外皮または側根が残されていても良い。
本製法2によれば、生の安納芋は触れても崩れにくいため、皮むきに熟練していなくても、安納芋の全体的な形状をなるべく保ったまま外皮の全部又は大半を容易に除くことができる。その後、工程S30により得られる焼き芋では、その中心部分がクリーム状に軟らかくなっており、かつ、外皮の全部又は大半が除かれているにも関わらず、意外にも、原料として用いられた安納芋の全体的な形状が保たれている。この焼き芋での外皮が除かれた表面部分は、触れても崩れない程度には硬く焼け上がっており、焼け焦げていなければ白くなっている。本製法2での焼き芋について、その他の点は、本製法1において前述した焼き芋と同様である。したがって、本製法2によれば、質量120g未満である安納芋から外皮の全部又は大半が除かれ、この安納芋の全体的な形状がなるべく保たれた、糖度が高い丸干し芋を容易に製造することができる。
本製法2での焼き芋を得る工程S30では、皮むき芋の中心部分と比べて、皮むき芋の表面部分の方が熱源に近く高熱に晒されやすいから、中心部分は水分が多く残存して軟らかいクリーム状になるのに対して、表面部分は少し焦げて硬く焼け上がりやすいものと考えられる。また、硬く焼け上がった表面部分が軟らかい中心部分を支えることによって、焼き芋の全体的な形状が崩れにくくなっているものと考えられる。
なお、図1に示す本製法1の乾かす工程S50において、安納芋由来の外皮の全部または大半が残された冷蔵された芋から、その外皮を除いて乾かした場合にも、外皮の全部又は大半を除かれた丸干し芋を製造することができる。この場合と比べると、図2に示すように生の安納芋から外皮を除く本製法2の方が、外皮を除くときに外皮に蜜が付着しておらず、また外皮を除く際に雑菌が混入してもその後に皮むき芋が焼かれて殺菌されるため、雑菌の繁殖を避ける観点、及び外皮の全部又は大半が除かれた丸干し芋をさらに容易に製造可能な観点から好ましい。
<丸干し芋の製造方法について、その第3の実施態様>
本発明に係る丸干し芋の製造方法について、その第3の実施態様(以下「本製法3」という。)を説明するにあたり、本製法1及び本製法2での説明と共通する事項を省略し、異なる事項を説明する。本製法3は、図3に示すように、安納芋を準備する工程S10と、皮むき芋を得る工程S20と、焼き芋を得る工程S30と、冷蔵された芋を得る工程S40と、乾かす工程S50と、燻製する工程S60と、を含む。なお、本製法3では、本製法1と同様に皮むき芋を得る工程S20を省略しても良い。
燻製する工程S60では、丸干し芋の色つやを良くする観点、及び丸干し芋にスモーク臭を付して味わいに深みを持たせる観点から、乾かす工程S50を経た芋を燻製する。このためには、例えば、80℃よりも高温の煙で10分以上かつ60分以下かけて燻す熱燻法、30℃以上かつ60℃以下の煙で数時間かけて燻す温燻法、及び燻液に浸してから乾燥した雰囲気下で乾かす方法からなる群より選ばれた1種又は2種以上の方法により、乾かす工程S50を経た芋を燻製する方法が挙げられる。また、燻製する工程S60では、同様の観点から、さらに好ましくは前述した熱燻法を行う。2種以上の方法を組み合わせる場合には、例えば、まずは熱燻法により大まかに燻しておき、その後に温燻法により燻される様子を観察しながらじっくり燻製することが挙げられる。
熱燻法または温燻法により燻製する場合には、例えば、燻製窯(スモーカー)、オーブン等の機器を用いて、燻煙材を燃やすことによって、乾かす工程S50を経た芋を燻す。燻煙材としては、例えば、クルミ、サクラ、ナラ、ヒッコリー、ブナ、リンゴ、おがくずからなる群より選ばれた1種又は2種以上を含んで成る、スモークチップ、スモークウッド、小枝または薪が挙げられる。燻製後に得られる丸干し芋に付与される風味が良い観点から、燻煙材は、好ましくはサクラを含んで成るスモークチップである。
<丸干し芋>
本発明に係る丸干し芋(以下「本丸干し芋」という。)を説明するにあたり、本製法1から本製法3と共通する事項の説明を省略し、説明されてない事項を説明する。本丸干し芋は、質量が120g未満である安納芋由来の丸干し芋であって、質量が100g以下であり、20℃でのBrixが45%以上である。
本丸干し芋によれば、原料として質量120g未満である安納芋が用いられたにも関わらず、本製法1から本製法3のいずれかにより製造されたことにより、20℃でのBrixが45%以上に高められている。なお、原料として用いられた安納芋の質量は120g未満であるが、その製造過程で水分が蒸発したため、本丸干し芋の質量は100g以下になっている。
また、本丸干し芋は、原料として用いられた安納芋と比べて、収縮している等の相違点はあるものの、その全体的な形状がなるべく保たれたものである。このため、切り干し芋や平干し芋と比べると、本丸干し芋の方が、喫食者に元の安納芋を連想させて楽しませることができる。なお、本丸干し芋は、製造過程で焼かれたことにより、その中心部分よりも表面部分の方が硬い。本丸干し芋を喫食すると、例えるならば、こしあんやグミのような食感を楽しむことができる。
一方、本丸干し芋において、外皮由来の部分は、パリパリした食感を呈する。この外皮由来の部分が少ないほど外観が良く、こしあんやグミのような食感を楽しみやすいため商品価値が高いという観点から、本丸干し芋は、安納芋の外皮由来の部分の全部又は大半が除かれたものであることが好ましい。この場合の本丸干しでは、その表面積の50%以上かつ100%以下において、皮層、内皮、維管束、及び維管束形成層、並びにこれらの組織から溶出した液体(例えば蜜)、からなる群より選ばれた1種又は2種以上の安納芋由来のものが露出している。また、本丸干し芋では、その表面に安納芋の外皮および側根由来の部分が全く残されていないか、あるいは、その表面積の0%よりも多くかつ50%未満において安納芋の外皮および側根由来の部分が残されている。この場合の本丸干し芋の質量は、製造過程で外皮の全部又は大半が除かれて水分が除かれたことにより、例えば85g以下である。
本丸干し芋は、上記した外観や食感により商品価値が高いという観点から、さらに好ましくは安納芋の外皮由来の部分の全部又は略全部が除かれ丸干し芋であり、さらにより好ましくは安納芋の外皮由来の部分の全部が除かれた安納芋である。なお、安納芋から外皮の略全部が除かれた場合の本丸干し芋は、その表面積の0%よりも多くかつ10%未満において外皮および側根由来の部分が残されていても良い。
本丸干し芋の20℃でのBrixは、糖度の高い丸干し芋ほど甘味を呈して商品価値が高い観点から、好ましくは50%以上である。また、Brixの値が高いほど水分が少ないことになるが、ある程度の水分が残されている方が味わい深くおいしいという観点から、本丸干し芋の20℃でのBrixは、好ましくは70%未満、さらに好ましくは65%未満、さらにより好ましくは60%未満である。
原料として質量が90g未満である安納芋を用いて、本製法1から本製法3のいずれかにより本丸干し芋を製造した場合には、製造過程で水分が除かれたことにより、本丸干し芋の質量が75g以下である。この場合に、本丸干し芋が外皮の全部又は大半を除かれたものであれば、本丸干し芋の質量が例えば70g以下である。これらの場合の本丸干し芋は、一口で食べやすい観点から好ましい。同様の観点から、外皮の全部又は大半を除かれた本丸干し芋の質量は、さらに好ましくは65g以下である。また、本丸干し芋の質量は、喫食者が量的に満足感を得る観点から、好ましくは25g以上、さらに好ましくは42g以上である。
本丸干し芋は、喫食時にこしあんやグミのような食感を感じやすい観点から、その20℃での最大圧縮荷重が、好ましくは100N以上かつ640N以下であり、さらに好ましくは200N以上かつ500N以下であり、さらにより好ましくは300N以上かつ400N以下である。なお、本丸干し芋における最大圧縮荷重は、テンシロン万能材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、型式:RTC−1350A)と、円柱状(直径16mm程度×高さ150mm程度)の冶具を用いて、20℃の雰囲気下でこの冶具の側面を押し付けるように本丸干し芋を圧縮してせん断した場合に、圧縮開始からせん断されるまでに示された荷重の最大の測定値である。
本丸干し芋は、色つやが良く、スモーク臭により味わいに深みが付されている観点から、燻製された丸干し芋であることが好ましい。本丸干し芋は、喫食前に劣化するのを避ける観点から、製造直後に真空包装された丸干し芋であることが好ましい。
<実施例1>
質量80gの安納芋3個を準備し、包丁で外皮を除き、外皮の全部が除かれた皮むき芋を得た。この皮むき芋3個を、遠赤外線ヒーターを備えたオーブントースター(象印マホービン株式会社製、品番:ET−WM22)により180℃で45分かけて焼き、焼き芋を得た。この焼き芋3個を、室温15℃から22℃であり相対湿度48%RHから60%RHに保たれた室内で3時間かけて放冷し、表面温度を約37℃にまで降温させた。降温した焼き芋3個の各々の表面部分は、結露水や蜜で濡れていた。
冷蔵庫(三洋電機株式会社製、型番:SR−9T)を用いて、約4℃で相対湿度70%RHから100%RHに保たれた雰囲気下で、上記の焼き芋3個を48時間かけて冷蔵した。冷蔵期間中、数時間おきに焼き芋の外観を観察したところ、焼き芋3個の各々の表面部分に常に水滴や蜜があった。48時間経過後に、庫内から冷蔵された芋を取り出した。これらの冷蔵された芋3個を、10℃から18℃の温度で相対湿度55%RHから65%RHに保たれた室内で152時間かけて乾燥させることによって、実施例1に係る丸干し芋3個を得た。この丸干し芋3個の平均質量は60gであった。
<実施例2>
質量80gの安納芋3個を準備し、実施例1と同様に外皮の全部を除いてから焼き、焼き芋を得た。自動真空包装機(東静電気株式会社製、型式:V−550G型)を用いて、この焼き芋3個を個別に真空包装した。冷蔵庫を用いて、その約4℃に保たれた庫内で焼き芋3個を包装材料ごと48時間かけて冷蔵した。冷蔵期間中、焼き芋3個の外観を数時間おきに観察したところ、包装材料の内側において焼き芋の表面部分に常に蜜があった。冷蔵後に、真空包装から取り出して、冷蔵された芋を得た。これらの冷蔵された芋3個を、10℃から18℃の温度で相対湿度55%RHから65%RHに保たれた室内で152時間かけて乾燥させて、実施例2に係る丸干し芋3個を得た。この丸干し芋3個の平均質量は58gであった。
<比較例1>
質量80gの安納芋を準備し、そのままオーブントースターにより180℃で45分かけて焼き、焼き芋を得た。この焼き芋を室温で30分かけて放冷してから、包丁を用いて外皮の全部を除こうとした。しかし、この焼き芋では、外皮の内側部分がクリーム状になっていたから、この内側部分は触れるだけで崩れた。外皮の半分程度を除いたときには、内側部分が著しく崩れていたため、元の安納芋の形状が分からなくなった。このため、安納芋を焼いてから外皮を除くのは、非常に難しいと分かった。また、この焼き芋を試食したが、甘味を感じにくかった。
<比較例2>
質量80gの安納芋を準備し、包丁を用いてこの安納芋から外皮の全部を除き、皮むき芋を得た。この皮むき芋を鍋で30分かけて茹でたところ、崩れて元の安納芋の形状が分からなくなった。このため、安納芋由来の皮むき芋を茹でると、丸干し芋を得るのが非常に難しいと分かった。また、崩れた茹で芋を試食したが、甘味を感じにくかった。
<比較例3>
質量120gである生の状態の紅はるかを準備し、そのままオーブントースターにより180℃で45分かけて焼き、30分放冷してから、包丁を用いて全部の外皮を除いた。原料として安納芋を用いた比較例1の場合とは異なり、容易に外皮を全て除くことができた。さらに、冷蔵庫を用いて、約4℃で相対湿度70%RHから100%RHに保たれた雰囲気下で、48時間かけて冷蔵した。冷蔵後に、10℃から18℃の温度で相対湿度55%RHから65%RHに保たれた室内で152時間かけて乾燥させて、紅はるか由来の丸干し芋を得た。この丸干し芋を試食したが、甘味を充分に感じることはできなかった。
<比較例4>
質量80gの安納芋3個を準備し、この安納芋の先端部とその反対側の端部のみを包丁で切除してから、外皮の略全部が残された安納芋をオーブントースターで180℃で45分かけて焼き、焼き芋を得た。この焼き芋3個を10℃から18℃の温度で相対湿度55%RHから65%RHに保たれた室内に156時間置いて乾かし、比較例4に係る丸干し芋3個を得た。この丸干し芋3個の平均質量は67gであった。
<比較例5>
比較例4と同様にして得られた丸干し芋3個について、さらに、冷蔵庫の約4℃に保たれた庫内にそのまま収容して48時間かけて冷蔵し、比較例5に係る丸干し芋3個を得た。この丸干し芋3個の平均質量は66gであった。
<実験および考察>
糖度を比較するために、次の試料を準備した。
・質量80gである安納芋(以下「対照安納芋」という。)
・実施例1の製造過程における焼き芋と同様のもの(以下「参考焼き芋」という。)
・実施例1の製造過程における冷蔵された芋と同様のもの(以下「参考冷蔵芋」という。)
・比較例4、比較例5、実施例1、及び実施例2の各々に係る丸干し芋
上記した試料の各々について、すり潰して水で5倍希釈した溶液を得た。ポケット糖度計(APAL−1)を用いて、これらの溶液の各々が20℃であるときのBrixを測定した。測定値を5倍して算出したBrixの値を、次の表1に示す。
Mサイズ以上(質量が120g以上)である安納芋のBrixは16%前後であり、その焼き芋のBrixは40%前後である。このことを考慮すると、表1に示すように、対照安納芋(SSサイズ安納芋)や参考焼き芋のBrixの値は低かった。また、SSサイズ安納芋由来の焼き芋をそのまま乾燥させたもの(比較例4)や、さらに冷蔵したもの(比較例5)では、乾燥により水分が除かれて糖分が濃縮されたにも関わらず、そのBrixが34.0%に留まった。なお、比較例4と比較例5ではBrixが同じ値であったため、安納芋由来の焼き芋を乾燥させてから冷蔵しても、糖度がほとんど高まらないことが示された。その原因としては、安納芋由来の焼き芋が乾燥していると、その後の冷蔵時にこの焼き芋で酵素反応がほとんど起こらなかったのだろうと考えられる。
これに対して、参考焼き芋が濡れたままになるように冷蔵された参考冷蔵芋では、まだ乾燥によって糖分が濃縮されていないにも関わらず、乾燥された比較例4や比較例5に近いBrixの値が示された。参考冷蔵芋と比べて、さらに乾燥された、実施例1に係る丸干し芋や、実施例2に係る丸干し芋では、Brixの値が45%よりも明らかに高くなっていた。このため、原料として質量120g未満である安納芋を用いるにも関わらず、この安納芋由来の焼き芋が濡れたままになるように冷蔵することによって、糖度の高い丸干し芋を製造できることを、本発明者は見い出した。
さらに、上記した実施例や比較例の他にも、丸干し芋を多数試作して試食した。例えば、質量95gから99gの安納芋を準備して本製法2により得られた丸干し芋は、質量70g前後であり、20℃でのBrixが48%以上かつ60%以下であり、Brixが大きいものほど甘味を呈した。また、実施例1や実施例2と同様の条件で試作された丸干し芋では、前述した最大圧縮荷重が300N以上かつ400N以下であった。
紅はるか由来の丸干し芋(比較例3)を試食したときには、参考焼き芋を試食したときよりも、甘味を感じにくかった。このため、比較例3の20℃でのBrixは、28.5%よりも低かったと考えられる。比較例3では、紅はるかを焼いて多湿の雰囲気下で冷蔵してから乾燥させたにも関わらず、糖度が高まらなかったことになる。このことから、焼き芋が濡れたままになるように冷蔵することにより糖度が高まるという現象は、本製法のように原料として安納芋を用いる場合に限って起こる可能性があると考えられる。
なお、生のサツマイモをそのまま冷蔵した場合には、サツマイモの細胞が低温下で代謝異常を起こすことに起因して、このサツマイモを常温に戻すと腐りやすいと考えられる。そこで、本発明者は、実施例1や実施例2と同様の条件で試作された丸干し芋について、腐っていないか確認するために、食品衛生検査指針に準拠した手法により細菌検査を行った。その結果、これらの丸干し芋で一般細菌は検出されず、大腸菌および黄色ブドウ球菌について陰性と判定された。このため、安納芋由来の焼き芋が濡れたままになるように冷蔵しても、冷蔵された芋や丸干し芋は腐っていないことが分かった。その原因としては、皮むき芋を焼いたときに細胞が壊れたから、冷蔵時に細胞の代謝異常が起こりにくくなったため、その後に常温に戻しても腐らなかったのだろうと考えられる。