JP6964902B2 - 口臭抑制剤およびその製造方法、ならびに、口臭抑制剤を含む食品組成物、オーラルケア組成物、医薬品組成物 - Google Patents

口臭抑制剤およびその製造方法、ならびに、口臭抑制剤を含む食品組成物、オーラルケア組成物、医薬品組成物 Download PDF

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Description

本発明は、口臭抑制剤およびその製造方法に関する。また、口臭抑制剤を含む、食品組成物、オーラルケア組成物、医薬品組成物に関する。
口臭を抑制する種々の素材が知られている。これらの素材は、歯磨剤や洗口液から、キャンディーやガムなどの食品まで種々の形態で応用されている。例えば、ペパーミントなどの香料を配合したガムやタブレットなどの製品が知られている。
口臭の原因の一つである揮発性硫黄化合物(VSCs)を産生する歯周病原因菌などの口腔内細菌を殺菌、静菌、抗菌する方法として、二酸化塩素分子と、亜塩素酸イオンとを有する水溶液を用いる方法(特許文献1)、銅化合物、亜鉛化合物、及びL−メントールを含有する組成物を用いる方法(特許文献2)、乳酸菌を用いる方法(特許文献3)などが知られている。
特開2019−006797号公報 特開2017−193538号公報 特開2012−025699号公報
しかしながら、香料を用いてマスキングする方法は、香料の強い匂いによって、かえって人に不快感を与えてしまう場合もある。口腔内細菌を殺菌等する方法は、速効性が低いという問題があった。
また、口臭を抑制するための製品は、口臭の抑制が主目的となるので、その製品の摂取のしやすさを考慮した風味の検討まで十分にされているとはいえなかった。
キャンディーなど甘みがある食品の形態とすることで、子供からお年寄りまで幅広い世代が日常的に簡単に摂取しやすいものにすることができるが、キャンディーなどの食品は、糖分の含有量が多く、高カロリーという問題があった。そのため、口臭は抑制できても、虫歯になりやすかったり、健康志向の消費者からは敬遠されがちになったりするという問題があった。また、生活習慣病の消費者にとっても、摂取しにくいものとなるという問題があった。
係る状況下、速効性を有し、摂取しやすい風味を有する口臭抑制剤が求められていた。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、速効性に優れ、摂取しやすい風味を有する、新たな口臭抑制剤およびその製造方法を提供することである。また、本発明の目的は、前記口臭抑制剤を含む食品組成物、医薬組成物、オーラルケア組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物を含む口臭抑制剤。
<2> 前記希少糖が、D−アルロースおよび/またはD−アロースである前記<1>に記載の口臭抑制剤。
<3> 前記アミノ化合物が、アミノ酸である前記<1>または<2>に記載の口臭抑制剤。
<4> 前記アミノ化合物が、タンパク質である前記<1>または<2>に記載の口臭抑制剤。
<5> 単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合した後、加熱する加熱工程を有する口臭抑制剤の製造方法。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の口臭抑制剤を含む食品組成物。
<7> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の口臭抑制剤を含むオーラルケア組成物。
<8> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の口臭抑制剤を含む医薬品組成物。
本発明によれば、速効性に優れ、摂取しやすい風味を有する、新たな口臭抑制剤およびその製造方法が提供される。また、前記口臭抑制剤を含む食品組成物、医薬組成物、オーラルケア組成物が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
<本発明の口臭抑制剤>
本発明は、単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物を含む口臭抑制剤(以下、「本発明の口臭抑制剤」と記載する場合がある。)に関するものである。本発明の口臭抑制剤は、口臭を抑制するために用いられ、特に、揮発性硫黄化合物の揮発を抑制するために用いられる。
本発明者は、単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物が、口腔内細菌により産生された硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物の揮発を抑制できることを発見した。揮発性硫黄化合物の量を低減することで、口臭を抑制することができる。
本発明の口臭抑制剤を用いることで、揮発性硫黄化合物の量を低減でき、中でも、口臭の主な原因となる硫化水素および/またはメチルメルカプタンの量を低減できる。
本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物は、単糖の希少糖とアミノ化合物とが反応して生成される褐色物質である。単糖の希少糖およびアミノ化合物については、本発明の口臭抑制剤の製造方法にて詳述する。
本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物としては、例えば、D−アルロースおよび/またはD−アロースと、アミノ化合物とのメイラード反応物が挙げられる。また、単糖の希少糖と、アミノ酸とのメイラード反応物が挙げられる。
中でも、単糖との反応部位が多く、硫化水素等の揮発性硫黄化合物の低減効果が高まると考えられるため、D−アルロースおよび/またはD−アロースと、アミノ酸とのメイラード反応物であることが好ましく、D−アルロースおよび/またはD−アロースと、親水性アミノ酸とのメイラード反応物がより好ましい。
また、本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物として、D−アルロースおよび/またはD−アロースと、タンパク質とのメイラード反応物が挙げられる。
希少糖は、国際希少糖学会にて、「自然界に存在量が少ない単糖とその誘導体」と定義されている。本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物は、希少糖の中でも、還元性を示す単糖(アルドース、ケトース)に由来するものである。希少糖は、砂糖やショ糖と同様の甘味を有するが、砂糖やショ糖に比べてカロリーが少ないことが知られている。
本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物は、甘味を有する単糖の希少糖と、アミノ化合物とが反応したものであり、本発明の口臭抑制剤は、甘味を有する組成物とできる。そのため、口臭を抑制するための飲食品などに応用した場合も、口臭抑制の効果だけでなく、甘味を付与することで摂取しやすいものとできる。
本発明の口臭抑制剤は、ブリックス値60°以上であることが好ましく、70°以上であることがより好ましい。なお、ブリックス値とは、甘さを表す指標の一つであり、市販の屈折率糖度計で測定することができる。
また、本発明の口臭抑制剤は、低カロリーとすることができ、カロリーを実質ゼロとすることもできる。口臭を抑制するための飲食品に応用する場合も、カロリーを少ないものとできるため、健康面の観点からも好ましい。飲食品加工時に甘味料を使用する場合も、甘味料の使用量を低減でき、好ましい。
本発明の口臭抑制剤は、メイラード反応物以外の成分を含んでもよい。例えば、後述する本発明の口臭抑制剤の製造方法の加熱工程後の生成物をそのまま本発明の口臭抑制剤とすることもできる。この場合、本発明の口臭抑制剤には、メイラード反応物以外に、未反応の単糖の希少糖やアミノ化合物が含まれうる。
後述するように、本発明の口臭抑制剤に含まれるメイラード反応物は、後述するように単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合し、加熱することで得られるため、通常、未反応の単糖の希少糖や、未反応のアミノ化合物が存在する。そのため、本発明の口臭抑制剤は、単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物を有効成分として含み、さらに、単糖の希少糖および/またはアミノ化合物を含むものとすることができる。
摂取のしやすさや甘味を向上させる観点から、好適な本発明の口臭抑制剤の一つは、単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物を有効成分として含み、さらに、単糖の希少糖を含むものである。例えば、D−アルロースとアミノ化合物とのメイラード反応物(D−アルロース由来メイラード反応物)を有効成分として含み、さらにD−アルロースを含有する口臭抑制剤や、D−アロースとアミノ化合物とのメイラード反応物(D−アロース由来メイラード反応物)を有効成分として含み、さらにD−アロースを含有する口臭抑制剤は、本発明の口臭抑制剤の好適な例である。
<本発明の口臭抑制剤の製造方法>
本発明は、単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合し、加熱する加熱工程を有する口臭抑制剤の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合し、加熱することで、メイラード反応が起こり、メイラード反応物が生成される。上記の通り、このメイラード反応物は、口腔内において揮発性硫黄化合物の量を低減することができる。
本発明の製造方法によって、本発明の口臭抑制剤を製造することができる。
単糖の希少糖としては、D−アルロース(D−プシコース)、D−アロース、D−タガトース、D−ソルボース、D−リキソース、D−アラビノース、D−エリトロース、L−リボース、L−アルロース(L−プシコース)、L−キシロース、L−ソルボース、L−フラクトース、L−タガトースなどが挙げられる。これらは単独でもよく、2種以上であってよい。この中でも、D−アルロースおよび/またはD−アロースを用いることが好ましい。
D−アルロースは、ケトヘキソースに分類されるアルロース(プシコース)のD体であり、六炭糖である。D−アロースは、アルドースに分類されるアロースのD体であり、六炭糖である。D−アロースなどのアルドースや、D−アルロースなどのケトースは、還元糖であり、アミノ酸やペプチド、タンパク質との間でメイラード反応が起こる。
アミノ化合物とは、アミノ基を有する化合物のことであり、アミノ酸やペプチド、タンパク質などが挙げられる。アミノ酸は、親水性塩基性アミノ酸として、リシン、アルギニン、ヒスチジン、親水性酸性アミノ酸として、アスパラギン酸、グルタミン酸、親水性中性アミノ酸として、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、メチオニン、疎水性アミノ酸として、アラニン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンが挙げられる。また、コラーゲンやコラーゲンペプチドを用いることもできる。
中でも、単糖の希少糖と反応しやすいため、アミノ酸を用いることが好ましい。
また、アミノ化合物として、アルブミンやグロブリンなどのタンパク質を用いてもよい。これらを含むものとしては、例えば、卵タンパク質(卵白タンパク質、卵黄タンパク質)、乳清タンパク質、カゼイン、大豆たんぱく質、小麦タンパク等が挙げられる。
単糖の希少糖やアミノ化合物の種類等によるが、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物のモル数(アミノ化合物のモル数/単糖の希少糖のモル数)は、例えば、0.01〜100や、0.01〜50などとすることができる。単糖の希少糖を効率的に反応させるため、単糖の希少糖に対してアミノ化合物を過剰に加えてもよく、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物のモル数は、1〜50や、1〜20などとできる。
単糖の希少糖やアミノ化合物の種類等によるが、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物のモル数(アミノ化合物のモル数/単糖の希少糖のモル数)が、0.01〜3となるように混合することが好ましく、0.1〜2とすることがより好ましく、0.3〜1とすることがさらに好ましい。
未反応の単糖の希少糖を含むことで、糖度を高めやすいので、アミノ化合物に比べて、単糖の希少糖のモル数が多くなるように混合し、加熱したものをそのまま用いてもよい。この場合、例えば、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物のモル数は、0.3〜0.95となるように混合することができる。
また、アミノ基を複数有するアミノ化合物(例えば、タンパク質など)を用いる場合もあるため、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物中のアミノ基のモル数に応じて、単糖の希少糖とアミノ化合物の混合比を決定してもよい。単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物中のアミノ基のモル数(アミノ化合物中のアミノ基のモル数/単糖の希少糖のモル数)を0.01以上や、0.05以上、0.1以上、0.3以上、0.5以上、0.8以上などとすることができる。また、単糖の希少糖のモル数に対するアミノ化合物中のアミノ基のモル数は、3以下や、2.5以下、2以下、1.5以下、1以下などとすることができる。
本発明の製造方法は、単糖の希少糖とアミノ化合物の混合物を加熱する加熱工程を有する。これにより、メイラード反応が起こり、メイラード反応物が得られる。メイラード反応では、初期段階においては、糖とアミノ化合物のアミノ基とが反応し、不安定なシッフ塩基を経て、安定なアマドリ転移生成物またはハインズ転移生成物が形成される。中期・終期段階においては、多くのさまざまな化学反応が進行し、褐色のメラノイジンが形成される。メイラード反応物は、これらのメイラード反応の過程で形成されるものを指す。
加熱温度や加熱時間などの加熱条件は、還元性を示す希少糖とアミノ化合物とが反応して褐変化が起きる範囲であればよく、特に限定されない。
加熱温度は50℃以上が好ましい。例えば、60℃以上や、70℃以上、80℃以上、90℃以上とすることができる。また、加熱温度が高すぎると、メイラード反応以外の副反応が生じやすくなる傾向になるので、加熱温度の上限は、150℃以下が好ましい。例えば、140℃以下や、130℃以下、120℃以下とすることができる。
加熱時間は、10分以上が好ましく、30分以上や60分以上としてもよい。その上限は、300分以下や、200分以下、120分以下とすることができる。
また、加熱はアルカリ条件下で行うことが好ましい。例えば、pH7超pH11以下や、pH7.5以上pH10以下、pH8以上pH9以下の条件で加熱することでメイラード反応をさせることができる。pH調整剤としては、公知のものを使用することができる。例えば、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液等の水溶液を用いることができる。
加熱工程後に得られた組成物は、そのまま本発明の口臭抑制剤として用いてもよく、適宜濃縮等を行った後、本発明の口臭抑制剤としてもよい。
例えば、単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合し、加熱することでメイラード反応させて得られた、ブリックス値60〜80°の褐色組成物を、そのまま口臭抑制剤とすることもできる。
<本発明の食品組成物>
本発明の口臭抑制剤は、各種の食品や飲料に配合し、食品組成物とすることができる。食品組成物とすることで、本発明の口臭抑制剤を日常的に簡単に摂取することができる。具体的には、一般食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能食品、健康食品、栄養補助食品、機能性表示食品、特別用途食品、食品添加物、サプリメント、ペットフードなどとすることができる。
本発明の口臭抑制剤を含む食品組成物の形態は特に限定されず、ガム、グミ、ジェリービーンズ、飴(キャンディー)、ラムネ、チョコレート、ゼリー、ムース、ケーキ、クッキー、ビスケット、氷菓、ヨーグルト、アイスクリーム等の菓子類、タブレット、チーズ、パン、ソーセージ、ハム、パスタ、各種の茶類、清涼飲料水、炭酸飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、酒類、栄養ドリンクなど経口摂取上可能な公知の形態とすることができる。サプリメントとする場合は、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、糖衣錠、フィルム剤、トローチ剤、チュアブル剤、溶液、乳濁液、懸濁液等の任意の形態でよい。また、ラムネ状、飴状、グミ状、ソフトキャンディ状等の任意の形態でよい。
本発明の口臭抑制剤は甘味を有するため、菓子類の形態としたとき、その他の甘味料の使用量を低減することができる。そのため、菓子類は好適な形態のひとつである。ガム、トローチ、グミ、ジェリービーンズ、飴などの形態にすることで、口腔内に本発明の口臭抑制剤を長く保持することができ、口臭抑制の効果の向上が期待できる。
<本発明のオーラルケア組成物>
本発明の口臭抑制剤は、オーラルケアに用いられる製品に配合し、オーラルケア組成物とすることができる。なお、本発明のオーラルケア組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品を含むものである。
本発明のオーラルケア組成物の形態は特に限定されず、ペースト状歯磨き粉、液状歯磨き粉、ジェル状歯磨き粉、粉状歯磨き粉、顆粒歯磨き粉、歯磨きガム、洗口剤、うがい薬、口腔内ジェル、マウススプレー、フィルム状製品、舌磨きジェル、舌磨きペースト等の任意の形態であってよい。
<本発明の医薬組成物>
本発明の口臭抑制剤は、薬学的に許容される担体とともに配合し、医薬組成物とすることができる。本発明の口臭抑制剤を含む医薬組成物は、口臭に対する予防治療用とすることができる。なお、本願において、医薬組成物とは、対象となる疾患の予防、治療、症状の改善の少なくとも一つに対して有用な薬剤を意味し、医薬品のみならず医薬部外品も含む。
本発明の医薬組成物の剤形は、経口用または口腔用であれば特に限定されず、固体製剤であっても液体製剤であってもよい。例えば、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、フィルム剤、トローチ剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、軟膏、スプレー剤などが挙げられる。
また、薬学的に許容される担体としては、例えば、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝材、増粘剤、着色剤、分散剤、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤等が挙げられる。
本発明の組成物(本発明の食品組成物、本発明の医薬組成物または本発明のオーラルケア組成物)において、本発明の口臭抑制剤の配合量(本発明の口臭抑制剤の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、組成物の形態等に応じて適宜決定されるものであるが、0.1〜99.5質量%や1〜90質量%、5〜80質量%などとすることができる。
また、本発明の組成物の1日当たりの摂取量は、組成物の形態等に応じて適宜決定され、特に限定されないが、例えば、0.01〜50gや、0.1〜25g、0.5〜15gなどとすることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.D−アルロースとグリシンとのメイラード反応物の作製
D−アルロースを精製水に溶解して、0.01mol/Lのアルロース水溶液を調整した。グリシンを精製水に溶解して、0.01mol/Lのグリシン水溶液を調整した。調製したアルロース水溶液5mLと、調製したグリシン水溶液5mLとを混合し、水酸化ナトリウムを加えて、pH9に調整した。95℃で90分間加熱し、メイラード反応させて、褐色溶液(1)を得た。D−アルロースとグリシンとのメイラード反応物を含む組成物として、褐色溶液(1)をそのまま評価に用いた。
2.揮発性硫黄化合物(VSCs)の抑制効果の評価
(1)Fusobacterium nucleatum の培養上清の作製
Fusobacterium nucleatum(F.nucleatum) ATCC25586をヒツジ血液寒天培地で培養した。実験の際はコロニーをTriptic Soy Brothに接種し、37℃で48時間嫌気培養した。培養液を遠心分離し、培養上清を得た。
(2)揮発性硫黄化合物の発生量の評価
培養液を遠心分離した後の、培養上清2mLを、別途、容器にサンプリングした。培養上清2mLに褐色溶液(1)2mLを添加し、ボルテックスして混合した後、容器のヘッドスペースのガスを注射器で採取した。オーラルクロマ(エフアイエス株式会社製)で、口臭の主な原因となる、硫化水素(H2S)とメチルメルカプタン(CH3SH)について測定した。
[実施例2]
1.D−アルロースとリシンとのメイラード反応物の作製
グリシンに代えてリシンを用いた以外は、実施例1と同様にして、褐色液体(2)を得た。D−アルロースとリシンとのメイラード反応物を含む組成物として、褐色溶液(2)をそのまま評価に用いた。
2.揮発性硫黄化合物(VSCs)の抑制効果の評価
褐色液体(1)に代えて褐色液体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。
[比較例1(コントロール)]
褐色液体(1)に代えて精製水を用いた以外は、実施例1と同様にして、揮発性硫黄化合物の抑制の効果を評価した。
表1に、揮発性硫黄化合物の抑制効果の評価結果を示す。表1に示すように、比較例1(コントロール)と比較して、実施例1、2は、硫化水素(H2S)およびメチルメルカプタン(CH3SH)の量が少なかった。
また、褐色溶液(1)、(2)を食したところ、甘みが感じられた。
Figure 0006964902
[実施例3]
(1)Fn粉砕液の調製
F.nucleatum ATCC25586をTriptic Soy Broth200mlで嫌気培養し、菌体を蒸留水で洗浄した。菌体ペレットに蒸留水10mLを添加し、氷冷下で超音波破砕した。遠心して沈殿を除いた上清をFn粉砕液とした。
(2)Fn粉砕液2mLを、別途、容器にサンプリングした。Fn粉砕液2mLに、実施例1で作製した褐色溶液(1)2mLを添加し、ボルテックスして混合した後、容器のヘッドスペースのガスを注射器で採取した。オーラルクロマ(エフアイエス株式会社製)で、硫化水素(H2S)とメチルメルカプタン(CH3SH)について測定した。さらに、褐色溶液(1)を添加15分後、30分後に容器のヘッドスペースのガスを採取し、オーラルクロマで、硫化水素とメチルメルカプタンについて測定し、経時的な変化を評価した。
[比較例2]
褐色液体(1)に代えて精製水を用いた以外は、実施例3と同様にして、揮発性硫黄化合物の経時的な抑制の効果を評価した。
[参考例1]
メープルシュガー1.5gを精製水2.0mLに溶かし、メープルシュガー水溶液を調製した。褐色液体(1)に代えてメープルシュガー水溶液を用いた以外は、実施例3と同様にして、揮発性硫黄化合物の経時的な抑制の効果を評価した。
表2に、実施例3、比較例2および参考例1の揮発性硫黄化合物の抑制の経時的な効果の評価結果を示す。
Figure 0006964902
[実施例4]
実施例1の2の(1)と同様にして作製した培養上清1mLに蒸留水4mLを加えて、5倍希釈液を作製した。この5倍希釈液2mLに、実施例1で作製した褐色溶液(1)2mLを添加し、ボルテックスして混合した後、容器のヘッドスペースのガスを注射器で採取した。オーラルクロマ(エフアイエス株式会社製)で、口臭の主な原因となる、硫化水素(H2S)とメチルメルカプタン(CH3SH)について測定した。
[実施例5]
蒸留水4mLに代えて、蒸留水9mLを用い10倍希釈液とした以外は、実施例4と同様にして、硫化水素とメチルメルカプタンについて測定した。
[比較例3、4]
褐色液体(1)に代えて精製水を用いた以外は、実施例4と同様にして揮発性硫黄化合物の経時的な抑制の効果を評価し、比較例3とした。
また、褐色液体(1)に代えて精製水を用いた以外は、実施例5と同様にして揮発性硫黄化合物の経時的な抑制の効果を評価し、比較例4とした。
表3に、実施例4、5、および比較例3、4の揮発性硫黄化合物の抑制効果の評価結果を示す。
Figure 0006964902
[製造例1]
実施例1で作製した褐色溶液(1)10gを、水100mLに溶かすことで、マウスウォッシュを製造することができる。
[製造例2]
お湯50mLを用いてゼラチン5gを溶かし、これに、水150mLと、実施例2で作製した褐色溶液(2)30gを加えて、混ぜ合わせる。次いで、混ぜ合わせた溶液を型に流し込んで、冷蔵庫で冷やし固めることでゼリーを製造することができる。製造したゼリーは、食品組成物やオーラルケア組成物、医薬組成物として使用することができる。
[実施例6]
1.D−アルロースとアルギニンとのメイラード反応物の作製
0.01mol/LのD−アルロース水溶液5mLと、0.01mol/Lのアルギニン5mLとを混合した後、炭酸ナトリウムを加えて、pH9に調整した。次いで、85℃で120分間加熱し、メイラード反応させて、褐色溶液(3)を得た。D−アルロースとアルギニンとのメイラード反応物を含む組成物として、褐色溶液(3)をそのまま評価に用いた。
2.揮発性硫黄化合物(VSCs)の抑制効果の評価
Porphyromonas gingivalis 33277株を蒸留水で洗浄し、超音波粉砕機にて粉砕を行なった(以下、P.gSEとする)。プラスチック容器に入れたP.gSE1.5mLに蒸留水1.0mL、褐色溶液(3)0.2mLを加え、5分間静置し、容器蓋より注射針を刺し、気体を採取、オーラルクロマCHM−2にてVSCsを測定した。その結果、メチルメルカプタンは、1.7(ng/10mL)であった。
また、SPME法にてヘッドスペースの気体を捕集し、ガスクロマトグラフィーにてVSCsの測定を行なった。その結果、メチルメルカプタンは、0.26(ng/10mL)であった。
褐色溶液(3)の代わりに蒸留水を用いたコントロールでは、メチルメルカプタンは、オーラルクロマCHM−2で3.57(ng/10mL)であり、ガスクロマトグラフィーで0.824(ng/10mL)であった。いずれの測定方法において、メイラード反応物を含む組成物を用いることでメチルメルカプタンが少なくなることがわかる。
[実施例7]
1.D−アルロースとリシンとのメイラード反応物の作製
0.01mol/LのD−アルロース水溶液5mLと、0.01mol/Lのリシン5mLとを混合した後、炭酸ナトリウムを加えて、pH9に調整した。次いで、90℃で60分間加熱し、メイラード反応させて、褐色溶液(4)を得た。D−アルロースとリシンとのメイラード反応物を含む組成物として、褐色溶液(4)をそのまま評価に用いた。
2.揮発性硫黄化合物(VSCs)の抑制効果の評価
Porphyromonas gingivalis 33277株を蒸留水で洗浄し、超音波粉砕機にて粉砕を行なった(以下、P.gSEとする)。プラスチック容器に入れたP.gSE1mLに蒸留水0.5mL、褐色溶液(4)0.5mLを加え、5分間静置し、容器蓋より注射針を刺し、気体を採取、オーラルクロマCHM−2にてVSCsの測定を行なった。結果を表4に示す。
[実施例8〜実施例11]
リシンに代えて、アラニン、アルギニン、グリシン、アルブミン(富士フイルム和光純薬株式会社製、アルブミン牛血清由来 pH5.2)を用いた以外は、実施例7の1と同様にしてメイラード反応物を含む組成物を作製した。得られたメイラード反応物を含む組成物を用いて、実施例7の2と同様の方法で揮発性硫黄化合物(VSCs)の抑制効果を評価した。メイラード反応物を含む組成物に代えて蒸留水を用いたものをコントロールした。結果を表4に示す。
Figure 0006964902
本発明の口臭抑制剤は、食品組成物やオーラルケア組成物、医薬組成物に応用し、簡単に口臭の抑制ができる製品とすることができるため産業上有用である。

Claims (6)

  1. 単糖の希少糖とアミノ化合物とのメイラード反応物を含む口臭抑制剤であり、
    前記単糖の希少糖が、D−アルロースであり、
    前記アミノ化合物が、アミノ酸またはアルブミンである、口臭抑制剤
  2. 揮発性硫黄化合物の揮発を抑制することによって、口臭を抑制するために用いられる、請求項1に記載の口臭抑制剤。
  3. 単糖の希少糖とアミノ化合物とを混合し、加熱する加熱工程を有し、
    前記単糖の希少糖が、D−アルロースであり、
    前記アミノ化合物が、アミノ酸またはアルブミンである、請求項1または2に記載の口臭抑制剤の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の口臭抑制剤を含む、口臭抑制用食品組成物。
  5. 請求項1または2に記載の口臭抑制剤を含む、口臭抑制用オーラルケア組成物。
  6. 請求項1または2に記載の口臭抑制剤を含む、口臭抑制用医薬品組成物。
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