JP6963855B1 - 歯科矯正具 - Google Patents

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Abstract

【課題】上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができ、上顎前突を確実かつ早期に矯正可能な歯科矯正具を提供する。【解決手段】歯科矯正具10は、上顎の上歯列及び下顎の下歯列に挟まれ、平面視コ字状に形成されたベース部11と、ベース部11の外周縁側に設けられ、上下方向に突出する外周壁20と、ベース部11の内周縁側に設けられ、上下方向に突出する内周壁40とを備え、内周壁40は、ベース部11よりも上方に設けられた内周上部壁41と、ベース部11よりも下方に設けられた内周下部壁42とを備え、内周下部壁42は、下歯列の切歯1bに臨む内周下部前面部44と、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部48とを有し、内周下部前面部44の下辺部が内周下部側面部48の下辺部よりも下方に延びるように形成した。【選択図】図7

Description

本発明は、例えば乳歯列から永久歯列に生え変わる小児に用いられる歯科矯正具に関する。
従来、歯列を矯正する器具には、例えば歯列に装着するマウスピースがある。このようなマウスピースは、上歯全体又は下歯全体を覆う形状に形成されている。すなわち、上記マウスピースは、口腔内に挿入し、使用者の該当する歯列弓(アーチ)上に装着したとき、そのアーチに歯係合部材が矯正力を与えるように、オープンフレーム構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
特許第5705794号公報
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたような従来のマウスピースでは、上顎前突に対して矯正力が弱く、時間が掛かるという問題があった。加えて、上記従来のマウスピースでは、上顎前突の使用者が口腔内に挿入しようとすると、上顎が下顎に対して突出していることから、装着しにくいという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができ、上顎前突を確実かつ早期に矯正可能な歯科矯正具を提供することを課題としている。
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、上顎の上歯列及び下顎の下歯列に挟まれ、平面視コ字状に形成されたベース部と、前記ベース部の外周縁側に設けられ、上下方向に突出する外周壁と、前記ベース部の内周縁側に設けられ、上下方向に突出する内周壁と、を備え、前記外周壁は、前記ベース部よりも上方に設けられた外周上部壁と、前記ベース部よりも下方に設けられた外周下部壁とを備え、前記内周壁は、前記ベース部よりも上方に設けられた内周上部壁と、前記ベース部よりも下方に設けられた内周下部壁とを備え、前記外周上部壁は、前記上歯列の複数の切歯に臨む外周上部前面部と、前記上歯列の犬歯及び臼歯に臨む外周上部側面部とを有し、前記外周下部壁は、前記下歯列の複数の切歯に臨む外周下部前面部と、前記下歯列の犬歯及び臼歯に臨む外周下部側面部とを有し、前記内周上部壁は、前記上歯列の複数の切歯に臨む内周上部前面部と、前記上歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周上部側面部とを有し、前記内周下部壁は、前記下歯列の複数の切歯に臨む内周下部前面部と、前記下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部とを有し、前記内周下部前面部と前記内周下部側面部とが連続して形成され、前記内周下部前面部の下辺部が前記内周下部側面部の下辺部よりも下方に位置するように前記内周下部前面部の下辺部と前記内周下部側面部の下辺部との間に段差部が形成されることで、前記内周下部前面部が下方に延びる舌片状に形成されており、前記内周上部前面部は、上辺から下辺にいくに従って前記外周壁との間隔が狭くなるような上部傾斜面が形成される一方、前記内周下部前面部側は、下辺から上辺にいくに従って前記外周壁との間隔が狭くなるような下部傾斜面が形成され、前記下部傾斜面が前記上部傾斜面よりも後方に形成されており、前記内周下部前面部が下方に延びていることで、前記下部傾斜面が前記上部傾斜面より長く形成されるようになっている歯科矯正具としたことを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ベース部における前記上歯列の切歯が対向する上歯列切歯配置部の水平位置と前記下歯列の切歯が対向する下歯列切歯配置部の水平位置の間の厚みは、前記上歯列の他の歯が対向する箇所の水平位置と前記下歯列の他の歯が対向する箇所の水平位置の間の厚みより、厚く形成されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記外周下部前面部の前面側には、突起が形成されていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の構成に加え、前記外周下部前面部は、前記外周上部前面部よりも肉厚に形成されていることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の構成に加え、前記外周上部前面部の上部に、互いに平行な目印が一定間隔をおいて上下方向に複数形成されていることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の構成に加え、前記ベース部は、前記外周上部側面部及び前記外周下部側面部の後端よりも後方に延びるように形成された延長部を有していることを特徴とする。
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の構成に加え、前記延長部に、平行な目印が一定間隔をおいて延長方向に複数形成されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、内周下部壁は、下歯列の切歯に臨む内周下部前面部と、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部とを有し、内周下部前面部の下辺部が内周下部側面部の下辺部よりも下方に延びるように形成したことにより、上顎前突の使用者が口腔内に挿入する場合、内周下部前面部の下辺部が下歯列の切歯の奥側に挿し込まれるガイドとなるため、上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができ、装着感を高めることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、下部傾斜面が上部傾斜面よりも後方に形成されていることにより、上顎前突の使用者の後方に位置している下顎前面を、早い段階から強制的に前面側に案内する力を加えることで、上顎前突を確実かつ早期に矯正することが可能となる。
また、請求項2に記載の発明によれば、ベース部における上歯列の切歯が対向する上歯列切歯配置部の水平位置と下歯列の切歯が対向する下歯列切歯配置部の水平位置の間の厚みが、上歯列の他の歯が対向する箇所の水平位置と下歯列の他の歯が対向する箇の水平位置の間の厚みより、厚く形成されていることにより、上顎前突の使用者の上歯列の切歯を圧下させて上方位置に保持しやすくすると共に、臼歯に圧力を掛けずに萌出を促すことができ、上顎前突の深い咬合を矯正することが可能となる。
また、請求項3に記載の発明によれば、外周下部前面部の前面側に突起が形成されているので、外周下部前面部の前面側に使用者の下唇からの押圧力が加わりにくくなり、上顎前突を一段と確実かつ早期に矯正することが可能となる。
また、請求項4に記載の発明によれば、外周下部前面部は、外周上部前面部よりも肉厚に形成されていることにより、上顎前面が下顎前面より所定量だけ前面側に位置する理想的な位置に矯正することが可能となる。
また、請求項に記載の発明によれば、外周上部前面部の上部に、互いに平行な目印が一定間隔をおいて上下方向に複数形成されていることにより、使用者の上顎の前面の歯茎の長さに対応して外周上部前面部の上下方向の長さを、目印を用いて切断して調整することで、使用者の上顎の前面の歯茎の長さに外周上部前面部の上下方向の長さを適合させることができ、装着感を高めることができるとともに、汎用性も高めることができる。
また、請求項に記載の発明によれば、ベース部は、外周上部側面部及び外周下部側面部の後端よりも後方に延びるように形成された延長部を有していることにより、使用者の歯列の長さに対応して延長部の長さを切断して調整することで、使用者の歯列の長さにベース部の長さを適合させることができ、装着感を高めることができるとともに、汎用性も高めることができる。
また、請求項に記載の発明によれば、延長部に、平行な目印が一定間隔をおいて延長方向に複数形成されていることにより、使用者の歯列の長さに対応して延長部の長さを、目印を用いて切断して調整することができ、簡単に使用者の歯列の長さにベース部の長さを適合させることができる。
本発明の一実施形態に係る歯科矯正具を示す斜視図である。 図1の正面図である。 図1の背面図である。 図1の左側面図である。 図1の平面図である。 図1の底面図である。 図2のA−A線による断面図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の一実施形態は、乳歯列から永久歯列に生え変わるときに上顎の上歯列及び下顎の下歯列に装着する例について説明する。
[発明の一実施形態]
図1乃至図7は、本発明の一実施形態を示す。
図1は、本発明の一実施形態に係る歯科矯正具を示す斜視図である。図2は、図1の正面図である。図3は、図1の背面図である。図4は、図1の左側面図である。図5は、図1の平面図である。図6は、図1の底面図である。図7は、図2のA−A線による断面図である。
なお、以下の実施形態では、歯科矯正具10を口腔部内に挿入し、上歯列及び下歯列に装着した状態で、その切歯側を前側、犬歯及び臼歯側を後側とし、切歯に対する左側、右側をそれぞれ左側、右側として説明する。ここで、上歯列及び下歯列は、それぞれ前側から後側に、左右の中切歯、左右の側切歯、左右の犬歯、左右の第1、第2小臼歯、及び左右の第1〜第3大臼歯の順に配列されている。以下、左右の中切歯、左右の側切歯は、一括して説明する場合には切歯という。また、左右の第1、第2小臼歯、及び左右の第1〜第3大臼歯は、一括して説明する場合に臼歯という。
本実施形態の歯科矯正具10は、図1乃至図7に示すように、上顎の上歯列及び下顎の下歯列に装着されるマウスピース型である。本実施形態の歯科矯正具10は、上顎の上歯列及び下顎の下歯列に装着して上歯列及び下歯列を横方向に拡げ、萌出途中の歯又は萌出完了後で歯根完成後の個々の歯を整列すべき方向に誘導させて矯正するとともに、上顎前突を矯正するものである。
本実施形態の歯科矯正具10は、全体が弾性を有する樹脂材料で一体成形されている。具体的に、上記樹脂材料は、例えばシリコン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はエラストマー等から選択される。上記樹脂材料は、無色透明又は乳白色であることが望ましく、これにより口腔内に挿入した場合、上歯列及び下歯列に装着していることが目立たず、審美性に優れたものとなる。歯科矯正具10は、単一のものであって、長時間かけて、頬圧を排除しつつ口唇を閉じる程度の咥える力を利用して歯の誘導及び移動を行うものである。
歯科矯正具10は、主としてベース部11と、外周壁20と、内周壁40と、を備える。ベース部11は、歯科矯正具10を口腔内に挿入したとき、上顎の上歯列及び下顎の下歯列に挟まれる部位であり、図5及び図6に示すように外周壁20と内周壁40との間で平面視コ字状(略U字状)に形成されている。ベース部11は、上歯列及び下歯列の左右の切歯1a,1bが当接する切歯当接範囲R1と、上歯列及び下歯列の犬歯及び臼歯が当接する左右の犬歯及び臼歯当接範囲R2とが連続して形成されている。
外周壁20は、ベース部11の外周縁側に設けられ、上下方向に突出するように形成されている。外周壁20は、ベース部11よりも下方に設けられた外周下部壁21と、ベース部11よりも上方に設けられた外周上部壁30とを備えている。外周下部壁21及び外周上部壁30は、中切歯に対応する部分を中心として左右対称の形状に形成されている。
外周下部壁21は、下歯列の切歯1bに臨む外周下部前面部22と、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む左右の外周下部側面部23とが連続して形成されている。外周下部壁21は、犬歯及び臼歯側の外周下部側面部23から切歯側の外周下部前面部22に掛けて徐々にベース部11からの突出量が大きくなっていくように形成されている。
外周下部前面部22における前面側には、突起群27が横方向に帯状に設けられている。突起群27は、先端がやや尖った微小な突起が互いに一定間隔をおいて多数形成されている。この突起群27は、歯科矯正具10を口腔部内に装着したときに下唇に対応する位置となるように配置されている。外周下部前面部22は、図7に示すように後述する外周上部前面部31よりも厚肉であって、やや後方に傾斜するように形成されている。なお、外周下部前面部22の背面側は、図7に示すように略平面状に形成された外周下部背面部28となる。
外周上部壁30は、上歯列の切歯1aに臨む外周上部前面部31と、上歯列の犬歯及び臼歯に臨む左右の外周上部側面部32とが連続して形成されている。外周上部壁30は、切歯側の外周上部前面部31の上辺部が犬歯及び臼歯側の外周上部側面部32の上辺部よりも上方に延びるように形成されている。そのため、外周上部壁30は、外周上部前面部31と外周上部側面部32との間における左右対称位置にそれぞれ頬小帯を回避するために左右一対の段差部33が形成されている。外周上部前面部31の上辺部の両角部は、R面取りされている。外周上部側面部32は、最も後方の位置から外周上部前面部31にかけて徐々に上方に傾斜するように形成されている。
外周上部壁30の外周上部前面部31には、左右方向の中央に上唇小帯が嵌り込む正面視V字状の切欠き部34が形成されている。この切欠き部34は、外周上部前面部31の上辺からその下方に切り欠かれている。切欠き部34の左右には、上辺に対して互いに平行な目印35が一定間隔(例えば1mm程度)をおいて上下方向に複数形成されている。これらの目印35は、例えば溝状に形成され、鋏等の切断具を用いて容易に切断可能である。
なお、外周下部前面部22は、図7に示すように外周上部前面部31よりも2倍以上の肉厚に形成されている。外周上部前面部31は、前面側が後方に傾斜するように形成され、背面側が前面側よりも小さな角度で後方に傾斜している。これにより、外周上部前面部31は、ベース部11から上辺にかけて徐々に薄くなるように形成されている。
また、外周上部前面部31の背面側は、図7に示すように略平面状に形成された外周上部背面部38となる。この外周上部背面部38は、外周下部背面部28よりも所定量だけ前方に配置されている。これにより、下歯列の切歯1bよりも上歯列の切歯1aが所定量だけ前方となる理想的な位置に矯正するように案内することができ、上顎前突を理想的な状態に矯正することができるようにしている。
内周壁40は、ベース部11の内周縁側に設けられ、上下方向に突出するように形成されている。内周壁40は、図5に示すようにベース部11よりも上方に設けられた内周上部壁41と、ベース部11よりも下方に設けられた内周下部壁42とを備えている。内周上部壁41は、上歯列の切歯1aに臨む内周上部前面部43を有する一方、内周下部壁42は、下歯列の切歯1bに臨む内周下部前面部44を有している。
内周上部前面部43は、上歯列の切歯1aが当接可能であって、図5〜図7に示すように上辺から下辺にいくに従って外周上部壁21との間隔が狭くなるような上部傾斜面45が形成される一方、内周下部前面部44は、下歯列の切歯1bが当接可能であって、下辺から上辺にいくに従って外周下部壁30との間隔が狭くなるような下部傾斜面46が形成され、この下部傾斜面46が上部傾斜面45よりも後方に形成されている。
また、上部傾斜面45の傾斜角度は、ベース部11に対して35〜45度であって、望ましくは40度に設定されている。この場合、上部傾斜面45の傾斜角度が35度未満では、矯正効果がなくなる一方、45度を超えると、顎部をずらして装着しなければ装着することが困難であって、ひいては顎関節症をひきおこす要因となる。
また、下部傾斜面46の傾斜角度は、ベース部11に対して32〜42度であって、望ましくは37度に設定されている。この場合、上記と同様に下部傾斜面46の傾斜角度が32度未満では、矯正効果がなくなる一方、42度を超えると、顎部をずらして装着しなければ装着することが困難であって、ひいては顎関節症をひきおこす要因となる。
したがって、歯科矯正具10を口腔部内に装着したとき、上部傾斜面45と外周上部壁21との間に上歯列の切歯1aが入り込み、下部傾斜面46と外周下部壁30との間に下歯列の切歯1bが入り込むようになっている。
内周上部壁41は、図5及び図6に示すように上歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周上部側面部47を有する一方、内周下部壁42は、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部48を有している。内周上部側面部47は、外周上部側面部23側に内周上部側面部斜面47aが形成される一方、内周下部側面部48は、外周下部側面部32側に内周下部側面部斜面48aが形成されている。これら内周上部側面部斜面47a及び内周下部側面部斜面48aは、乳歯列から永久歯列に生え変わるときに、歯列を横方向に広げるとともに、歯列を矯正するために形成されている。
また、内周下部壁42は、下歯列の切歯1bに臨む内周下部前面部44と、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む左右の内周下部側面部48とが連続して形成されている。内周下部壁42は、切歯側の内周下部前面部44の下辺部が犬歯及び臼歯側の内周下部側面部48の下辺部よりも下方に延びるように形成されている。具体的には、内周下部前面部44と内周下部側面部48との間における左右対称位置にそれぞれ段差を介して高さが変化するように形成されている。内周下部前面部44の下辺部の両角部は、R面取りされている。内周下部側面部48は、最も後方の位置が、R面取りされている。
ベース部11は、左右両側において外周上部側面部23及び外周下部側面部32の後端よりもそれぞれ後方に延びるように延長部11aが形成されている。これらの延長部11aには、前後方向に対して互いに平行な目印11bが一定間隔(例えば1mm程度)をおいて複数形成されている。これらの目印11bは、例えば溝状に形成されている。これらの延長部11aは、鋏等の切断具を用いて所望の長さに目印11bに沿って容易に切断可能であり、使用者の口腔内に対応した長さに設定することが可能となる。
また、ベース部11における上歯列の切歯1aが対向(ここでは当接)する上歯列切歯配置部11cと下歯列の切歯1bが対向(ここでは当接)する下歯列切歯配置部11dの間の厚みLは、上歯列の他の歯が対向する(ここでは当接しない)箇所と下歯列の他の歯が対向する(ここでは当接しない)箇所の間の厚みより、厚くなるように形成されている。これにより、上下の切歯1a,1bをベース部11に当接させて上顎前突の使用者の上歯列の切歯1aを圧下させて上方位置に保持しやすくすると共に、上下の臼歯をベース部11に当接させないで臼歯に圧力を掛けずに萌出を促すことができ、上顎前突の深い咬合を矯正することが可能となる。
上下方向において上部傾斜面45と下部傾斜面46との間には、左右方向に所定の間隔をおいて3つの通気孔49が形成されている。これらの通気孔49は、使用者である小児が本実施形態の歯科矯正具10を口腔内に挿入したときに、呼吸するために用いられる。
上部傾斜面45及び下部傾斜面46の各内面から内周上部側面部47及び内周下部側面部48の各内面までは、タングスペース50が連続して形成され、このタングスペース50は、使用者の舌を正確な中央位置に位置付けるための機能を有する。
内周上部壁41及び内周下部壁42は、図5及び図6に示すように上述したように上下方向に突出するように形成され、それぞれ平面視コ字状(略U字状)に形成されている。これら内周上部壁41及び内周下部壁42のそれぞれのコ字状の両角部51,52は、歯科矯正具10を装着したとき、左右の側切歯と左右の犬歯との間に対応する位置に形成されている。内周上部壁41の上部傾斜面45及び内周下部壁42の下部傾斜面46は、それぞれ左右の中切歯及び側切歯に対応する位置に形成され、内周上部壁41の内周上部側面部47及び内周下部壁42の内周下部側面部48は、それぞれ犬歯及び臼歯に対応する位置に形成されている。
内周上部壁41は、図5に示すように上部傾斜面45の傾斜角度が内周上部側面部斜面47aよりも緩やかになるように形成されている。同様に、内周下部壁42は、図6に示すように下部傾斜面46の傾斜角度が内周下部側面部斜面48aよりも緩やかになるように形成されている。これにより、左右の中切歯及び側切歯と、左右の犬歯及び臼歯の生える方向に適合させることができる。
次に、本実施形態の歯科矯正具10の作用について説明する。
本実施形態の歯科矯正具10は、乳歯列から永久歯列に生え変わる例えば生後6歳から9歳の小児に適用される。まず、使用するに際し、使用者の上顎の前面の歯茎の長さに対応して外周上部前面部31の上下方向の長さを、目印35を用いて切断して調整するとともに、使用者の上顎及び下顎の前後方向長さに対応してベース部11の前後方向の長さを、目印11bを用いて切断して調整しておく。
そして、歯科矯正具10を上顎前突の使用者である小児の口腔内に挿入し、上歯列及び下歯列に装着する。このとき、内周下部前面部44の下辺部が下歯列の切歯1bの奥側に挿し込まれるガイドとなるため、上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができる。さらに、外周上部前面部31の上辺部が上唇と上歯列の切歯1aの歯茎との間に挿し込むガイドとなるため、上顎前突の使用者がさらに容易に装着することができる。すると、上歯列及び下歯列の切歯1a,1bが内周壁40の上部傾斜面45及び下部傾斜面46に当接する。同時に、上歯列及び下歯列の犬歯及び臼歯が内周上部側面部斜面47a及び内周下部側面部斜面48aに当接する。
そして、上歯列の切歯1aが上部傾斜面45と外周上部壁30との間に入り込み、下歯列の切歯1bが下部傾斜面46と外周下部壁21との間に入り込む。この状態で上唇と下唇が当たるように口を閉じる。
この場合、外周上部前面部31の上辺部が外周上部側面部32の上辺部よりも上方に延びるように形成されていることにより、外周上部前面部31の上辺部で上顎前面を広範囲に保持することができるようになる。そして、下部傾斜面46が上部傾斜面45よりも後方に形成されているため、上顎前突の使用者の後方に位置している下顎前面を、早い段階から強制的に前面側に案内する力を加えることができる。その結果、上顎前突を確実かつ早期に矯正することができる。
ここで、外周下部前面部22に突起群27が形成されているので、外周下部前面部22の前面側に使用者の下唇からの押圧力が加わりにくくなり、上顎前突の矯正効果を高めることができる。また、外周下部前面部22は、外周上部前面部31よりも肉厚に形成されていることにより、下顎前面を強固に保持することができ、上顎前面が下顎前面より所定量だけ前面側に位置する理想的な位置に矯正することができる。
また、ベース部11における上歯列の切歯1aが対向(ここでは当接)する上歯列切歯配置部11cと下歯列の切歯1bが対向(ここでは当接)する下歯列切歯配置部11dの間の厚みLが、上歯列の他の歯が対向する(ここでは当接しない)箇所と下歯列の他の歯が対向する(ここでは当接しない)箇所の間の厚みより、厚く形成されていることにより、上下の切歯1a,1bをベース部11に当接させて上顎前突の使用者の上歯列の切歯1aを圧下させて上方位置に保持しやすくすると共に、上下の臼歯をベース部11に当接させないで臼歯に圧力を掛けずに萌出を促すことができ、上顎前突の深い咬合を矯正することができる。
同時に、上歯列及び下歯列の左右側の犬歯及び臼歯が内周上部側面部斜面47a及び内周下部側面部斜面48aに当接することで、上歯列及び下歯列の左右側の犬歯及び臼歯が内周上部側面部斜面47a及び内周下部側面部斜面48aに案内されて徐々に横方向に広がるとともに、上歯列及び下歯列の左右側の犬歯及び臼歯の叢生等を矯正することが可能となる。
このように本実施形態の歯科矯正具10によれば、内周下部壁42は、下歯列の切1b歯に臨む内周下部前面部44と、下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部48とを有し、内周下部前面部44の下辺部が内周下部側面部48の下辺部よりも下方に延びるように形成したことにより、上顎前突の使用者が口腔内に挿入する場合、内周下部前面部44の下辺部が下歯列の切歯1bの奥側に挿し込まれるガイドとなるため、上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができ、装着感を高めることができる。
また、本実施形態によれば、外周上部壁30は、上歯列の切歯1aに臨む外周上部前面部31と、上歯列の犬歯及び臼歯に臨む外周上部側面部32とを有し、外周上部前面部31の上辺部が外周上部側面部32の上辺部よりも上方に延びるように形成したことにより、上顎前突の使用者が口腔内に挿入する場合、外周上部前面部31の上辺部が上唇と上歯列の切歯1aの歯冠部及び歯槽部歯肉との間に挿し込むガイドとなるため、上顎前突の使用者でも極めて容易に装着することができ、装着感を高めることができる。また、外周上部前面部31の上辺部で上顎前面を広範囲に保持することができるので、上顎前突を確実かつ早期に矯正することが可能となる。
また、本実施形態によれば、外周下部前面部22の前面側に突起が横方向に帯状に多数形成された突起群27を設けたので、外周下部前面部22の前面側に使用者の下唇からの押圧力が加わると、使用者は反射的にそれを回避することとなり、上顎前突を一段と確実かつ早期に矯正することが可能となる。
また、本実施形態によれば、外周下部前面部22は、外周上部前面部31よりも肉厚に形成されていることにより、上顎前面が下顎前面より所定量だけ前面側に位置する理想的な位置に矯正することが可能となる。
また、本実施形態によれば、ベース部11における上歯列の切歯1aが対向する上歯列切歯配置部11cと下歯列の切歯1bが対向する下歯列切歯配置部11dの間の厚みが、上歯列の他の歯が対向する箇所と下歯列の他の歯が対向する箇所の間の厚みより、厚く形成されていることにより、上顎前突の使用者の上歯列の切歯1aを圧下させて上方位置に保持しやすくすると共に、臼歯に圧力を掛けずに萌出を促すことができ、上顎前突の深い咬合を矯正することが可能となる。
また、本実施形態によれば、下部傾斜面46が上部傾斜面45よりも後方に形成されていることにより、上顎前突の使用者の後方に位置している下顎前面を、早い段階から強制的に前面側に案内する力を加えることで、上顎前突を確実かつ早期に矯正することが可能となる。
また、本実施形態によれば、外周上部前面部31の上部に、互いに平行な目印35が一定間隔をおいて上下方向に複数形成されていることにより、使用者の上顎の前面の歯茎の長さに対応して外周上部前面部31の上下方向の長さを、目印35を用いて切断して調整することで、使用者の上顎の前面の歯茎の長さに外周上部前面部31の上下方向の長さを適合させることができるため、装着感を高めることができるとともに、汎用性も高めることができる。
また、本実施形態によれば、ベース部11は、外周上部側面部32及び外周下部側面部23の後端よりも後方に延びるように形成された延長部11aを有していることにより、使用者の歯列の長さに対応してベース部11の延長部11aの長さを切断して調整することで、使用者の歯列の長さにベース部11の長さを適合させることができ、装着感を高めることができるとともに、汎用性も高めることができる。
また、本実施形態によれば、延長部11aに、平行な目印11bが一定間隔をおいて延長方向に複数形成されていることにより、使用者の歯列の長さに対応して延長部11aの長さを、目印11bを用いて切断して調整することができ、簡単に使用者の歯列の長さにベース部11の長さを適合させることができる。
[発明の他の実施形態]
なお、上記実施形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
例えば、上記実施形態では、外周下部前面部22の前面側に突起が横方向に帯状に多数形成された突起群27を設けた例について説明したが、これに限らず外周下部前面部22の前面側に使用者の下唇からの押圧力が加わると、使用者は反射的にそれを回避することができる突起であれば、その数や配置形態は如何なるものであってもよい。
また、上記実施形態では、歯科矯正具10の素材、形状については、口腔内に挿入することができるもので同様の機能を有するものであれば、適宜の素材で構成されていてもよい。
1a 上歯列の切歯
1b 下歯列の切歯
10 歯科矯正具
11 ベース部
11a 延長部
11b 目印
11c 上歯列切歯配置部
11d 下歯列切歯配置部
20 外周壁
21 外周下部壁
22 外周下部前面部
23 外周下部側面部
27 突起群
28 外周下部背面部
30 外周上部壁
31 外周上部前面部
32 外周上部側面部
33 段差部
34 切欠き部
35 目印
38 外周上部背面部
40 内周壁
41 内周上部壁
42 内周下部壁
43 内周上部前面部
44 内周下部前面部
45 上部傾斜面
46 下部傾斜面
47 内周上部側面部
47a 内周上部側面部斜面
48 内周下部側面部
48a 内周下部側面部斜面
49 通気孔
50 タングスペース
51,52 両角部

Claims (7)

  1. 上顎の上歯列及び下顎の下歯列に挟まれ、平面視コ字状に形成されたベース部と、
    前記ベース部の外周縁側に設けられ、上下方向に突出する外周壁と、
    前記ベース部の内周縁側に設けられ、上下方向に突出する内周壁と、を備え、
    前記外周壁は、前記ベース部よりも上方に設けられた外周上部壁と、前記ベース部よりも下方に設けられた外周下部壁とを備え、
    前記内周壁は、前記ベース部よりも上方に設けられた内周上部壁と、前記ベース部よりも下方に設けられた内周下部壁とを備え、
    前記外周上部壁は、前記上歯列の複数の切歯に臨む外周上部前面部と、前記上歯列の犬歯及び臼歯に臨む外周上部側面部とを有し、
    前記外周下部壁は、前記下歯列の複数の切歯に臨む外周下部前面部と、前記下歯列の犬歯及び臼歯に臨む外周下部側面部とを有し、
    前記内周上部壁は、前記上歯列の複数の切歯に臨む内周上部前面部と、前記上歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周上部側面部とを有し、
    前記内周下部壁は、前記下歯列の複数の切歯に臨む内周下部前面部と、前記下歯列の犬歯及び臼歯に臨む内周下部側面部とを有し、
    前記内周下部前面部と前記内周下部側面部とが連続して形成され、
    前記内周下部前面部の下辺部が前記内周下部側面部の下辺部よりも下方に位置するように前記内周下部前面部の下辺部と前記内周下部側面部の下辺部との間に段差部が形成されることで、前記内周下部前面部が下方に延びる舌片状に形成されており、
    前記内周上部前面部は、上辺から下辺にいくに従って前記外周壁との間隔が狭くなるような上部傾斜面が形成される一方、前記内周下部前面部側は、下辺から上辺にいくに従って前記外周壁との間隔が狭くなるような下部傾斜面が形成され、
    前記下部傾斜面が前記上部傾斜面よりも後方に形成されており、
    前記内周下部前面部が下方に延びていることで、前記下部傾斜面が前記上部傾斜面より長く形成されるようになっていることを特徴とする歯科矯正具。
  2. 前記ベース部における前記上歯列の切歯が対向する上歯列切歯配置部の水平位置と前記下歯列の切歯が対向する下歯列切歯配置部の水平位置の間の厚みは、前記上歯列の他の歯が対向する箇所の水平位置と前記下歯列の他の歯が対向する箇所の水平位置の間の厚みより、厚く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯科矯正具。
  3. 前記外周下部前面部の前面側には、突起が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科矯正具。
  4. 前記外周下部前面部は、前記外周上部前面部よりも肉厚に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の歯科矯正具。
  5. 前記外周上部前面部の上部に、互いに平行な目印が一定間隔をおいて上下方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の歯科矯正具。
  6. 前記ベース部は、前記外周上部側面部及び前記外周下部側面部の後端よりも後方に延びるように形成された延長部を有していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の歯科矯正具。
  7. 前記延長部に、平行な目印が一定間隔をおいて延長方向に複数形成されていることを特徴とする請求項に記載の歯科矯正具。
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