JP6963596B2 - 電気化学セル - Google Patents

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本発明は、電気化学セルに関する。
電気化学セルの一種である亜鉛空気電池は、亜鉛を負極に使用し、空気極を正極に使用する電池である(例えば、特許文献1参照)。亜鉛空気電池では、電解液として水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液が用いられ、水酸化物イオン伝導性を有する電解質体(セパレータ)が正負極間に設けられる。亜鉛空気電池では、正極活物質として空気中の酸素を利用することができ、電気容量は負極容量のみで決まるため、高いエネルギー密度を実現できる。
亜鉛空気電池における電気化学反応は、下記の式(1),(2)のとおりである。式(1),(2)において、右向きは放電反応、左向きは充電反応である。
・負極: Zn+2OH → ZnO+HO+2e (1)
・正極: O+2HO+4e → 4OH (2)
また、電気化学セルの一種であるアルカリ形燃料電池は、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPdなどの金属触媒を負極とし、空気極を正極に使用する電池である(例えば、特許文献2参照)。アルカリ形燃料電池では、水酸化物イオン伝導性を有する電解質体が正負極間に設けられる。
アルカリ形燃料電池では、様々な液体燃料又は気体燃料を使用することができ、例えばメタノールを燃料とした場合、アルカリ形燃料電池における電気化学反応は、下記の式(3),(4)のとおりである。
・負極: CHOH+6OH → 6e+CO+5HO (3)
・正極: 3/2O+3HO+6e → 6OH (4)
国際公開第2016/088673号 特開2016−071948号公報
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛空気電池及びアルカリ形燃料電池などの電気化学セルでは、電解質体における水のクロスオーバ値とプラスチャージ元素のクロスオーバ値とが性能及び耐久性に影響を与えているという新たな知見を得た。
具体的には、亜鉛空気電池では、電解質体を介して、負極で生成される水を正極に供給することによって、正極における水不足を補って性能向上を図ることができる。そのため、電解質体における水のクロスオーバ値は大きいことが好ましい。一方、亜鉛空気電池では、電解質体を介して、プラスチャージ元素(例えば、電解液に含まれるカリウムイオン)が負極から正極に漏洩すると、電解液が稀釈されて耐久性が低下してしまう。そのため、電解質体におけるプラスチャージ元素のクロスオーバ値は小さいことが好ましい。
また、アルカリ形燃料電池では、電解質体を介して、負極で生成される水を正極に供給することによって、正極における水不足を補って性能向上を図ることができる。そのため、電解質体における水のクロスオーバ値は大きいことが好ましい。一方、アルカリ形燃料電池では、電解質体を介して、プラスチャージ元素(例えば、負極に含まれるルテニウムイオン)が負極から正極に漏洩すると、漏洩したプラスチャージ元素が正極での酸素還元反応時に競争的に還元され触媒表面に析出するため、耐久性が低下する。そのため、電解質体におけるプラスチャージ元素のクロスオーバ値は小さいことが好ましい。
本発明は、性能向上と耐久性向上とを両立可能な電気化学セルの提供を目的とする。
本発明に係る電気化学セルは、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する電解質体とを備える。前記電解質体において、水のクロスオーバ値に対するプラスチャージ元素のクロスオーバ値の比は、10以下である。
本発明によれば、性能向上と耐久性向上とを両立可能な電気化学セルを提供することができる。
第1実施形態に係る亜鉛空気二次電池の構成を模式的に示す断面図 クロスオーバ比の測定に用いるH型セルの構成を模式的に示す断面図 第2実施形態に係るアルカリ形燃料電池の構成を模式的に示す断面図 第3実施形態に係る常温形燃料電池の構成を模式的に示す断面図
1.第1実施形態
(亜鉛空気二次電池10の構成)
図1は、第1実施形態に係る亜鉛空気二次電池10の構成を模式的に示す断面図である。亜鉛空気二次電池10は、空気極12、負極14、電解液16、セパレータ20及び容器26を備える。空気極12は、本発明に係る「正極」の一例である。セパレータ20は、本発明に係る「電解質体」の一例である。
空気極12は、正極として機能する。空気極12には、正極集電体22が接合されていてもよい。負極14は、亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含む。負極14には、負極集電体24が接合されていてもよい。電解液16は、負極14が浸漬される電解液である。本実施形態では、電解液として「水酸化カリウム水溶液」が用いられている。容器26は、開口部26aを有し、負極14及び電解液16を収容する。セパレータ20は、開口部26aを塞ぐとともに、電解液16と接触することによって、空気極12と電解液16を水酸化物イオン伝導可能に隔離する。セパレータ20は、水酸化物イオン伝導性を有しており、電解液16と空気極12との間において水酸化物イオンを効率的に移動させる。
空気極12及び負極14における放電時における反応は以下の式(1),(2)に示されるとおりである。
・負極14: Zn+2OH → ZnO+HO+2e (1)
・空気極12: O+2HO+4e → 4OH (2)
なお、充電反応は、式(1),(2)の逆である。
[セパレータ20]
セパレータ20は、空気極12と負極14との間に配置される。セパレータ20は、板状、膜状、或いは、層状に形成される。
セパレータ20は、水酸化物イオン伝導性を有する。セパレータ20は、無機固体電解質によって構成されるのが好ましい。セパレータ20を無機固体電解質によって構成することで、空気極12と負極14との間で電解液16を隔離しつつ水酸化物イオン伝導性を確保することができる。
セパレータ20を構成する無機固体電解質としては、層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide、以下「LDH」という。)が好適である。
LDHは、M2+ 1−x3+ (OH)n−x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4、mは水のモル数を意味する任意の整数である)の一般式で示される基本組成を有する。M2+の例としてはMg2+、Ca2+、Sr2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、及びZn2+が挙げられ、M3+の例としては、Al3+、Fe3+、Ti3+、Y3+、Ce3+、Mo3+、及びCr3+が挙げられ、Anの例としてはCO 2−及びOHが挙げられる。M2+及びM3+としては、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。特に、M2+としてNi2+を含有し、M3+としてAl3+及びTi3+を含有するNi−AlTi系LDH、M2+としてMg2+を含有し、M3+としてAl3+を含有するMg−Al系LDH、M2+としてMg2+及びMn2+を含有し、M3+としてAl3+を含有するMgMn−Al系LDHは、アルカリ溶液に対する耐性が高いため好適である。
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は、例えば金属MがNi、Al、Tiの場合には、Ni、Al、Ti及びOH基を含む。以下、LDHの水酸化物基本層がNi、Al、Ti及びOH基を含む場合について説明する。
LDH中のNiはニッケルイオンの形態を採りうる。LDH中のニッケルイオンは典型的にはNi2+であると考えられるが、Ni3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のAlはアルミニウムイオンの形態を採りうる。LDH中のアルミニウムイオンは典型的にはAl3+であると考えられるが、他の価数もありうるため、特に限定されない。LDH中のTiはチタンイオンの形態を採りうる。LDH中のチタンイオンは典型的にはTi4+であると考えられるが、Ti3+等の他の価数もありうるため、特に限定されない。水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましいが、他の元素ないしイオンを含んでいてもよいし、不可避不純物を含んでいてもよい。不可避不純物は、製法上不可避的に混入されうる任意元素であり、例えば原料や基材に由来してLDH中に混入しうる。
LDHの中間層は、陰イオン及びHOで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH及び/又はCO 2−を含む。
上記のとおり、Ni、Al及びTiの価数は必ずしも定かではないため、LDHを一般式で厳密に特定することは非実際的又は不可能である。仮に水酸化物基本層が主としてNi2+、Al3+、Ti4+及びOH基で構成されるものと想定した場合、LDHは、一般式:Ni2+ 1−x−yAl3+ Ti4+ (OH)n− (x+2y)/n・mHO(式中、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、好ましくは1又は2であり、0<x<1、好ましくは0.01≦x≦0.5、0<y<1、好ましくは0.01≦y≦0.5、0<x+y<1、mは0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である)なる基本組成で表すことができる。ただし、上記一般式はあくまで「基本組成」と解されるべきであり、Ni2+、Al3+、Ti4+等の元素は、LDHの基本的特性を損なわない程度に他の元素又はイオン(同じ元素の他の価数の元素又はイオンや製法上不可避的に混入されうる元素又はイオンを含む)で置き換え可能である。
このようなLDHは、水熱処理によって作製することができる。LDHの水熱処理は、例えば、国際公開第2013/073292号に記載されるように、耐圧容器に純水と板状の圧粉体を入れ、120〜250℃、好ましくは180〜250℃の温度、2〜24時間で実施される。
セパレータ20は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含む粒子群と、これら粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。セパレータ20は、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質との複合体であってもよい。多孔質体を構成する材料としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスや、発泡樹脂又は繊維状物質からなる多孔性シート等の絶縁性の物質などが挙げられる。
セパレータ20における水及びプラスチャージ元素それぞれのクロスオーバ値については後述する。
[空気極12]
空気極12は、亜鉛空気電池などの金属空気電池に使用される公知の空気極であればよく、特に限定されない。空気極12は、5〜200μmの厚さを有する層状の形態であるのが好ましい。空気極12は、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料を含むのが典型的である。空気極12は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられるが、特に限定されない。また、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いる場合、空気極12は、水酸化物イオン伝導性材料を含んでいてもよい。空気極12は、反応に必要な空気を空気極触媒に十分に行き渡らせるための気孔を含むのが好ましい。
空気極触媒は、金属空気電池における正極として機能するものであれば特に限定されず、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒の好ましい例としては、黒鉛等の酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料、白金、ニッケル、鉄等の酸化還元触媒機能を有する金属、ペロブスカイト型酸化物、ポルフィリン由来の窒素含有錯体、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等の酸化還元触媒機能を有する無機酸化物が挙げられる。空気極12における空気極触媒の含有量は特に限定されないが、空気極12の合計量に対して、5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜70重量%である。空気極12における空気極触媒の含有量を、空気極12の合計量に対して70重量%以下とすることによって、空気極触媒同士が移動して粗大化してしまうことを抑制できる。
電子伝導性材料は、導電性を有し、空気極触媒とセパレータ20との間で電子伝導を可能とするものであれば特に限定されない。電子伝導性材料の好ましい例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。空気極12における電子伝導性材料の含有量は特に限定されないが、空気極12の合計量に対して、10〜80重量%が好ましく、より好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは20〜80重量%である。なお、上述した空気極触媒が電子伝導性を有する場合、空気極12における電子伝導性材料の含有量は実質的に100%となってもよい。
空気極12の形成はあらゆる手法で行われてよく、特に限定されない。例えば、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料をエタノール等の溶媒を用いて不活性ガス雰囲気下で湿式混合して乾燥及び解砕した後、バインダーと混合してフィブリル化して得られたフィブリル状混合物を集電体に圧着して空気極12を形成し、この空気極12/集電体の積層シートの空気極12側をセパレータ20に一軸プレスで熱圧着すればよい。
[負極14]
負極14は、負極活物質として機能する亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含む。負極14は、粒子状、板状、ゲル状等のいかなる形状又は形態であってもよいが、粒子状またはゲル状とするのが反応速度の点で好ましい。粒子状の負極は、30〜350μmの粒径の粒子によって構成することができる。ゲル状の負極は、100〜300μmの粒径の無汞化亜鉛合金粉、アルカリ電解液及び増粘剤(ゲル化剤)を混合攪拌してゲル状にすることで形成できる。
亜鉛合金としては、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、ビスマス、インジウム、鉛等の汞化又は無汞化の合金が挙げられ、負極活物質として所望の性能を確保できる限り、その含有量は特に限定されない。亜鉛合金としては、無水銀かつ鉛無添加の無汞化亜鉛合金が好ましく、アルミニウム、ビスマス、インジウム又はこれらの組合せを含むものがより好ましい。
[電解液16]
本実施形態では、電解液16として、水酸化カリウム水溶液が用いられる。水酸化カリウムの濃度は特に制限されないが、6〜9mol/Lが好ましい。亜鉛合金の自己溶解を抑制するために、電解液16には、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物が溶解されていてもよい。
(セパレータ20におけるクロスオーバ)
次に、セパレータ20における水及びプラスチャージ元素それぞれのクロスオーバ値について説明する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に説明するように、亜鉛空気電池10では、セパレータ20における水のクロスオーバ値とプラスチャージ元素のクロスオーバ値とが性能及び耐久性に影響を与えるという新たな知見を得た。
上記の式(1)で示したとおり、負極14では水が生成される。この負極14で生成される水を、セパレータ20を介して空気極12に効率的に供給できれば、空気極12における水不足が補われて、亜鉛空気電池10の性能が向上する。従って、セパレータ20における水のクロスオーバ値を大きくすることによって、亜鉛空気電池10の性能向上を図ることができる。また、負極14から空気極12に水が供給されることで、空気極12が乾燥して溶解度の低い物質(例えば、炭酸水素カリウム)が析出してしまうことを抑制できる。
一方、電解液16に含まれるカリウムイオン(プラスチャージ元素の一例)が、セパレータ20を介して空気極12に漏洩すると、電解液16が稀釈されて、亜鉛空気電池10の耐久性が低下してしまう。また、酸素と水とを含む酸化剤として空気を空気極12に供給する場合には、空気中の二酸化炭素がカリウムイオンと反応して溶解度の低い炭酸カリウムが生成されると、空気極12における電極反応が阻害されてしまう。従って、セパレータ20におけるカリウムイオンのクロスオーバ値を小さくすることによって、亜鉛空気電池10の耐久性向上を図ることができる。
以上より、セパレータ20における水のクロスオーバ値CV1に対するカリウムイオンのクロスオーバ値CV2のクロスオーバ比(CV2/CV1)を小さくすることによって、亜鉛空気電池10の性能向上と耐久性向上とを両立することができる。
具体的に、本発明者らは、実験の結果、クロスオーバ比(CV2/CV1)を10以下とすることによって、亜鉛空気電池10の性能向上と耐久性向上とを両立できることを見出した。
ここで、クロスオーバ比(CV2/CV1)の測定は、以下に説明する方法で行われる。まず、図2に示すように、H型セル100にセパレータ20を装着する。H型セル100は、連結管101を有する円筒管103と、連結管102を有する円筒管104とを備える。連結管101と連結管102との間にセパレータ20を配置し、セパレータ20の外周を挟持部材105で挟む。挟持部材105としては、例えば、ねじ、スプリングなどを用いることができるが、挟持部材105とセパレータ20との間にPTFE(Poly Tetra Fluoro Ethylene)等の外周シール材を介挿させることが好ましい。
まず、円筒管103に純メタノールを収容し、これと同量の水を円筒管104に収容する。そして、純メタノール及び水の温度を25℃に保持する。次に、1時間おきに6時間まで円筒管103の液体をサンプリングして水の濃度分析を行い、1時間毎の測定で得られた水濃度を円筒管103,104の水の濃度差が1mol/Lになるように純水のモル濃度(55.56mol/L)を用いて規格化した平均水濃度を水のクロスオーバ値CV1とする。なお、水の濃度分析には、予め検量線を作成した振動式密度計を用いる。
次に、円筒管103に水酸化カリウム水溶液(濃度1mol/L)を収容し、これと同量の水を円筒管104に収容する。そして、水酸化カリウム水溶液及び水の温度を25℃に保持し、3時間おきに9時間まで円筒管104の液体をサンプリングしてカリウムイオンの濃度分析を行い、3時間毎の測定で得られたカリウムイオン濃度を平均化した平均カリウムイオン濃度をカリウムイオンのクロスオーバ値CV2とする。なお、カリウムイオンの濃度分析には、予め検量線を作成した振動式密度計を用いる。
次に、カリウムイオンのクロスオーバ値CV2を水のクロスオーバ値CV1で除することによって、クロスオーバ比(CV2/CV1)が算出される。
水のクロスオーバ値CV1は、クロスオーバ比(CV2/CV1)が10以下である限り特に制限されないが、亜鉛空気電池10の性能向上という観点から、0.1μmol/cm・s以上が好ましく、1μmol/cm・s以上がより好ましい。
カリウムイオンのクロスオーバ値CV2は、クロスオーバ比(CV2/CV1)が10以下である限り特に制限されないが、亜鉛空気電池10の耐久性向上という観点から、1μM/cm・s以下が好ましく、0.1μM/cm・s以下がより好ましい。
クロスオーバ比は、基材としての多孔質体と多孔質体の孔に充填された無機固体電解質との複合体をセパレータ20として用いる場合、基材の親水性を調整することによって簡便に制御することができる。基材の親水性の調整によってクロスオーバ比を簡便に制御できる理由は、カリウムイオン(プラスチャージ元素)が無機固体電解質中を透過するのに対して、水は基材と無機固体電解質との界面を透過するからである。基材の親水性の程度は、基材に施す親水化処理の度合いによって調整することができる。親水性(又は、疎水性)の程度は、基材に対する水の接触角によって規定される。ただし、セパレータ20が基材を備えるか否かに関わらず、無機固体電解質自体のクロスオーバ比を調整することによっても、クロスオーバ比を制御することができる。
2.第2実施形態
第2実施形態では、電気化学セルの一例として、アルカリ形燃料電池200について説明する。
(アルカリ形燃料電池200の構成)
図2は、第2実施形態に係るアルカリ形燃料電池200の構成を模式的に示す断面図である。アルカリ形燃料電池200は、カソード212、アノード214、及び電解質216を備える。カソード212は、本発明に係る「正極」の一例である。アノード214は、本発明に係る「負極」の一例である。電解質216は、本発明に係る「電解質体」の一例である。
アルカリ形燃料電池200では、様々な液体燃料又は気体燃料を使用することができ、例えばメタノールを燃料とした場合、アルカリ形燃料電池200における電気化学反応は、下記の式(3),(4)のとおりである。
・アノード214: CHOH+6OH → 6e+CO+5HO (3)
・カソード212: 3/2O+3HO+6e → 6OH (4)
[カソード212]
カソード212は、電解質216に接続される。カソード212は、一般的に空気極と呼ばれる陽極である。アルカリ形燃料電池200の発電中、カソード212には、酸素(O)を含む酸化剤が供給される。酸化剤としては、空気を用いるのが好ましく、空気は加湿されていることがより好ましい。カソード212は、内部に酸化剤を拡散可能な多孔質体である。カソード212の気孔率は特に制限されない。カソード212の厚みは特に制限されないが、例えば10〜200μmとすることができる。
カソード212は、AFCに使用される公知のカソード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。カソード触媒の例としては、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)等の第8〜10族元素(IUPAC形式での周期表において第8〜10族に属する元素)、Cu、Ag、Au等の第11族元素(IUPAC形式での周期表において第11族に属する元素)、ロジウムフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリン、Coサレン、Niサレン(サレン=N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、銀硝酸塩、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
カソード触媒は、担体に担持されていてもよい。担体としては、カーボン粒子が好ましい。カソード212の構成材料の好ましい例としては、白金担持カーボン(Pt/C)、白金コバルト担持カーボン(PtCo/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)などが挙げられる。カソード212における触媒の担持量は特に限定されないが、好ましくは0.05〜10mg/cm、より好ましくは、0.05〜5mg/cmである。
カソード212の作製方法は特に限定されないが、例えば、カソード触媒(所望により担体を含む)をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質216に塗布することによって形成することができる。
[アノード214]
アノード214は、電解質216に接続される。アノード214は、一般的に燃料極と呼ばれる陰極である。アルカリ形燃料電池200の発電中、アノード214には、水素原子(H)を含む燃料が供給される。アノード214は、内部に燃料を拡散可能な多孔質体である。アノード214の気孔率は特に制限されない。アノード214の厚みは特に制限されないが、例えば10〜500μmとすることができる。
水素原子を含む燃料は、アノード214において水酸化物イオン(OH)と反応可能な燃料化合物を含んでいればよく、液体燃料及び気体燃料のいずれの形態であってもよい。
燃料化合物としては、例えば、(i)ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、及びカルボンヒドラジド((NHNHCO)等のヒドラジン類、(ii)尿素(NHCONH)、(iii)アンモニア(NH)、(iv)イミダゾール、1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等の複素環類化合物、(v)ヒドロキシルアミン(NHOH)、硫酸ヒドロキシルアミン(NHOH・HSO)等のヒドロキシルアミン類、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの燃料化合物のうち炭素を含まない化合物(すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、アンモニア、ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン等)は、一酸化炭素による触媒被毒の問題が無いため特に好適である。
燃料化合物は、そのまま燃料として用いてもよいが、水及び/又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコール等)に溶解させた溶液として用いてもよい。例えば、上記燃料化合物のうち、ヒドラジン、水化ヒドラジン、モノメチルヒドラジン及びジメチルヒドラジンは液体であるので、そのまま液体燃料として使用可能である。また、炭酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、カルボンヒドラジド、尿素、イミダゾール、及び3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、及び硫酸ヒドロキシルアミンは固体であるが水に可溶である。1,3,5−トリアジン及びヒドロキシルアミンは固体であるがアルコールに可溶である。アンモニアは気体であるが水に可溶である。このように、固体の燃料化合物は、水又はアルコールに溶解させて液体燃料として使用可能である。燃料化合物を水及び/又はアルコールに溶解させて用いる場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、例えば30〜99.9重量%であり、好ましくは66〜99.9重量%である。
また、メタノール、エタノール等のアルコール類やエーテル類を含む炭化水素系液体燃料、メタン等の炭化水素系ガス、或いは純水素などは、そのまま燃料として用いることができる。特に、本実施形態に係るアルカリ形燃料電池200に用いられる燃料としては、メタノールが好適である。メタノールは、気体状態、液体状態、及び、気液混合状態のいずれであってもよい。
アノード214は、AFCに使用される公知のアノード触媒を含むものであればよく、特に限定されない。アノード触媒の例としては、Pt、Ni、Co、Fe、Ru、Sn、及びPd等の金属触媒が挙げられる。金属触媒は、カーボン等の担体に担持されるのが好ましいが、金属触媒の金属原子を中心金属とする有機金属錯体の形態としてもよく、この有機金属錯体を担体として担持されていてもよい。アノード214及びそれを構成する触媒の好ましい例としては、ニッケル、コバルト、銀、白金担持カーボン(Pt/C)、白金ルテニウム担持カーボン(PtRu/C)、パラジウム担持カーボン(Pd/C)、ロジウム担持カーボン(Rh/C)、ニッケル担持カーボン(Ni/C)、銅担持カーボン(Cu/C)、及び銀担持カーボン(Ag/C)が挙げられる。
アノード214の作製方法は特に限定されないが、例えば、アノード触媒及び所望により担体をバインダーと混合してペースト状にし、このペースト状混合物を電解質216のアノード側表面16Tに塗布することにより形成することができる。
[電解質216]
電解質216は、カソード212とアノード214との間に配置される。電解質216は、カソード212及びアノード214のそれぞれに接続される。電解質216は、膜状、層状、或いは、シート状に形成される。
電解質216は、無機固体電解質体によって構成することができるが、無機固体電解質体と無機固体電解質体が含浸された多孔質基材とによって構成することが好ましい。多孔質基材は、金属材料、セラミックス材料及び高分子材料から選択される少なくとも1種によって構成することができる。無機固体電解質体としては、上記実施形態に係るセパレータ20と同様、LDHが好適である。
(電解質216におけるクロスオーバ)
アルカリ形燃料電池200では、電解質216における水のクロスオーバ値とプラスチャージ元素のクロスオーバ値とが性能及び耐久性に影響を与える。
上記の式(3)で示したとおり、アノード214では水が生成される。このアノード214で生成される水を、電解質216を介してカソード212に効率的に供給できれば、カソード212における水不足が補われて、アルカリ形燃料電池200の性能が向上する。従って、電解質216における水のクロスオーバ値を大きくすることによって、アルカリ形燃料電池200の性能向上を図ることができる。
一方、アノード214に例えばルテニウムが含まれる場合、燃料であるメタノールが部分酸化して生成される蟻酸によってルテニウムが溶出する場合がある。溶出したルテニウムイオン(プラスチャージ元素の一例)が、電解質216を介してカソード212に漏洩すると、漏洩したプラスチャージ元素がカソードでの酸素還元反応時に競争的に還元されて触媒表面に析出するため、アルカリ形燃料電池200の耐久性が低下してしまう。従って、電解質216におけるルテニウムイオンのクロスオーバ値を小さくすることによって、アルカリ形燃料電池200の耐久性向上を図ることができる。
以上より、電解質216における水のクロスオーバ値CV3に対するルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4の比(CV4/CV3)を小さくすることによって、アルカリ形燃料電池200の性能向上と耐久性向上とを両立することができる。
具体的に、本発明者らは、実験の結果、水のクロスオーバ値CV3に対するルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4のクロスオーバ比(CV4/CV3)を10以下とすることによって、アルカリ形燃料電池200の性能向上と耐久性向上とを両立できることを見出した。
ここで、クロスオーバ比(CV4/CV3)は、上記第1実施形態で説明したように、図2に示したH型セル100を用いて測定することができる。
まず、上記実施形態で説明した方法で、水のクロスオーバ値CV3を算出する。
次に、以下の方法で、ルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4を算出する。まず、円筒管103に塩化ルテニウム3水和物水溶液(濃度0.01mol/L)を収容し、これと同量の水を円筒管104に収容する。そして、塩化ルテニウム3水和物水溶液及び水の温度を25℃に保持し、3時間おきに9時間まで円筒管104の液体をサンプリングしてルテニウムイオンの濃度分析を行い、3時間毎の測定で得られたルテニウムイオン濃度を塩化ルテニウム3水和物水溶液の濃度(0.01mol/L)を用いて濃度差が1mol/Lとなるように規格化した平均ルテニウムイオン濃度をルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4とする。
次に、ルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4を水のクロスオーバ値CV3で除することによって、クロスオーバ比(CV4/CV3)が算出される。
水のクロスオーバ値CV3は、クロスオーバ比(CV4/CV3)が10以下である限り特に制限されないが、アルカリ形燃料電池200の性能向上という観点から、0.1μmol/cm・s以上が好ましく、1μmol/cm・s以上がより好ましい。
ルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4は、クロスオーバ比(CV4/CV3)が10以下である限り特に制限されないが、アルカリ形燃料電池200の耐久性向上という観点から、1μM/cm・s以下が好ましく、0.1μM/cm・s以下がより好ましい。
3.第3実施形態
(常温形燃料電池300の構成)
第3実施形態では、電気化学セルの一例として、常温形燃料電池300について説明する。
図4は、第3実施形態に係る常温形燃料電池300の構成を模式的に示す断面図である。常温形燃料電池300は、空気極312、負極314、電解液316、セパレータ320及び容器326を備える。空気極312は、本発明に係る「正極」の一例である。セパレータ320は、本発明に係る「電解質体」の一例である。
常温形燃料電池300の構成は、基本的には、第1実施形態に係る亜鉛空気二次電池10の構成と同じであるため、各構成の説明については省略する。
空気極312に酸化剤ガスを供給するとともに、負極14に燃料として水素ガスを供給すると、セパレータ320の表裏面間に電位差が生じる。この状態で、空気極312及び負極14が外部の負荷に電気的に接続されると、下記(5)、(6)式に示す化学反応が起こって発電状態となる。
・負極14: H+2OH→2HO+2e …(5)
・空気極12: (1/2)・O+HO+2e→2OH …(6)
(セパレータ320におけるクロスオーバ)
次に、セパレータ320における水及びプラスチャージ元素それぞれのクロスオーバ値について説明する。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に説明するように、常温形燃料電池300では、セパレータ320における水のクロスオーバ値とプラスチャージ元素のクロスオーバ値とが性能及び耐久性に影響を与えるという新たな知見を得た。
上記の式(1)で示したとおり、負極314では水が生成される。この負極314で生成される水を、セパレータ320を介して空気極312に効率的に供給できれば、空気極12へ空気極の反応(6)式に必要な水を供給し、常温形燃料電池300の性能向上を図ることができる。
一方、電解液316に含まれるカリウムイオン(プラスチャージ元素の一例)が、セパレータ320を介して空気極312に漏洩すると、電解液316が稀釈されて酸性化して水酸化イオン伝導性が低下してしまうため、常温形燃料電池300の耐久性が低下する。また、酸素と水とを含む酸化剤として空気を空気極312に供給する場合には、空気中の二酸化炭素がカリウムイオンと反応して溶解度の低い炭酸カリウムが生成されると、空気極12における電極反応が阻害されてしまう。従って、セパレータ320におけるカリウムイオンのクロスオーバ値を小さくすることによって、常温形燃料電池300の耐久性向上を図ることができる。
以上より、セパレータ320における水のクロスオーバ値CV5に対するカリウムイオンのクロスオーバ値CV6のクロスオーバ比(CV6/CV5)を小さくすることによって、常温形燃料電池300の性能向上と耐久性向上とを両立することができる。
具体的に、本発明者らは、実験の結果、クロスオーバ比(CV6/CV5)を10以下とすることによって、常温形燃料電池300の性能向上と耐久性向上とを両立できることを見出した。なお、クロスオーバ比(CV6/CV5)の測定には、第1実施形態にかかるクロスオーバ比(CV2/CV1)の測定方法を適用することができる。
水のクロスオーバ値CV5は、クロスオーバ比(CV6/CV5)が10以下である限り特に制限されないが、常温形燃料電池300の性能向上という観点から、0.1μmol/cm・s以上が好ましく、1μmol/cm・s以上がより好ましい。
カリウムイオンのクロスオーバ値CV6は、クロスオーバ比(CV6/CV5)が10以下である限り特に制限されないが、常温形燃料電池300の耐久性向上という観点から、1μM/cm・s以下が好ましく、0.1μM/cm・s以下がより好ましい。
以下、本発明の第2実施形態に係る実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
(アルカリ形燃料電池の作製)
(1)多孔質基材の作製
ジルコニア粉末(東ソー社製、TZ−8YS)100重量部に対して、分散媒(キシレン:ブタノール=1:1)70重量部、バインダー(ポリビニルブチラール:積水化学工業株式会社製BM−2)11.1重量部、可塑剤(DOP:黒金化成株式会社製)5.5重量部、及び分散剤(花王株式会社製レオドールSP−O30)2.9重量部を混合し、この混合物を減圧下で攪拌して脱泡することによりスラリーを得た。
次に、テープ成型機を用いて、PETフィルム上にスラリーをシート状の成形体を得た。得られた成形体をφ20mmの円形サイズに切り出し、1100℃で2時間焼成することによって、ジルコニア製の多孔質基材を得た。なお、多孔質基材の厚さは、多孔質基材に電解質を含浸後に研磨することで所望の厚さに研磨した。実施例1,3,5では30μmであり、実施例2,4,6では300μmであり、比較例1〜3では300μmであった。
次に、実施例1〜6では、硝酸マグネシウムを含浸させたジルコニア多孔質基材を中和滴定することで水酸化マグネシウムを基材内部表層に堆積させ、多孔質基材の表面に親水化処理を施した。一方、比較例1〜3では、多孔質基材に親水化処理を施さなかった。
(2)多孔質基材へのアルミナ・チタニアゾルコート
無定形アルミナ溶液(Al−ML15、多木化学株式会社製)と酸化チタンゾル溶液(M−6、多木化学株式会社製)を溶液の重量比が1:1となるように混合して混合ゾルを作製した。
次に、混合ゾルを多孔質基材に含浸後、電気炉にて150℃で熱処理を行った。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。
次に、0.03mol/Lとなるように、硝酸ニッケル六水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。
次に、得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO (モル比)=32の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(オートクレーブ容器、内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に原料水溶液と多孔質基材とを封入した。このとき、多孔質基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、多孔質基材両面に溶液が接するように水平に設置した。
次に、水熱温度120℃で21時間水熱処理を施すことにより、多孔質基材表面と内部にLDHの形成を行った。所定時間の経過後、多孔質基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄した。続いて、室温で12時間放置した後に乾燥させて、LDHが多孔質基材中に含浸された組み込まれた電解質を得た。
(5)カソード及びアノードの作製
Pt担持量50wt%(田中貴金属工業(株)社製TEC10E50E)の白金担持カーボン(以下、「Pt/C」という。)と、バインダーであるPVDF粉末(以下、「PVDFバインダー」という。)とを準備した。そして、(Pt/C触媒):(PVDFバインダー):(水)の重量比が9wt%:0.9wt%:90wt%の比率となるように、Pt/C、PVDFバインダー及び水を混合してペースト化することによってカソード用ペーストを作製した。
また、Pt−Ru担持量54wt%(田中貴金属工業(株)社製TEC61E54)の白金ルテニウム担持カーボン(以下、「Pt−Ru/C」という。)と、PVDFバインダーとを準備した。そして、(Pt−Ru/C触媒):(PVDFバインダー):(水)の重量比が9wt%:0.9wt%:90wt%の比率となるように、Pt−Ru/C、PVDFバインダー及び水を混合してペースト化することによってアノード用ペーストを作製した。
次に、カソード用ペーストを電解質の一方の面に印刷し、アノード用ペーストを電解質の他方の面に印刷した後、N雰囲気中において180℃で4時間熱処理することによって、カソード/電解質/アノードの接合体を得た。
(電解質のクロスオーバ値)
実施例1〜6及び比較例1〜3に係る電解質について、水のクロスオーバ値CV3とルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4とを測定した。
まず、図2に示したH型セル100に電解質を装着し、円筒管103に収容した純メタノールと円筒管104に収容した水とを25℃に保持した。次に、1時間おきに6時間まで円筒管103の液体をサンプリングして水の濃度分析を行い、1時間毎の測定で得られた水濃度を純水のモル濃度(55.56mol/L)で規格化した平均水濃度を水のクロスオーバ値CV3とした。
また、円筒管103に収容した塩化ルテニウム3水和物水溶液(濃度0.01mol/L)と円筒管104に収容した水とを25℃に保持した。次に、3時間おきに9時間まで円筒管104の液体をサンプリングしてルテニウムイオンの濃度分析を行い、3時間毎の測定で得られたルテニウムイオン濃度を塩化ルテニウム3水和物水溶液の濃度(0.01mol/L)で規格化した平均ルテニウムイオン濃度をルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4とした。
水のクロスオーバ値CV3に対するルテニウムイオンのクロスオーバ値CV4のクロスオーバ比(CV4/CV3)は、表1に示すとおりである。
(アルカリ形燃料電池の運転実験)
まず、アルカリ形燃料電池を120℃に加熱した。
次に、コンプレッサーを用いて、露点0℃以下の乾燥空気に適宜加湿した空気をカソードに供給し、カソードにおける空気利用率が50%となるように調整した。また、気化させたメタノールをアノードに供給し、アノードにおける燃料利用率が50%となるように調整した。
そして、定格負荷(100mA/cm)で発電させながら、アルカリ形燃料電池の初期出力と、100時間運転後出力とを測定した。初期出力と100時間運転後出力との測定結果を表1に纏めて示す。表1において、初期出力は、カソード側を運転温度+2℃の露点に調整した時の出力値を100%として規格化したときに、95%以上であった場合を◎と評価し、90%以上95%未満であった場合を○と評価し、80%以上90%未満であった場合を△と評価し、80%未満であった場合を×と評価した。表1において、100時間運転後出力は、乾燥空気の導入から1時間経過後の出力値を100%として規格化したときに、95%以上であった場合を◎と評価し、90%以上95%未満であった場合を○と評価し、80%以上90%未満であった場合を△と評価し、80%未満であった場合を×と評価した。
Figure 0006963596
表1に示すように、クロスオーバ比を10.0超とした比較例1〜3では、初期出力と100時間運転後出力との両方が低かった。このような結果が得られたのは、アノードで生成された水が電解質を介してカソードに効率的に供給されなかったことと、アノードから溶出したルテニウムイオンが電解質を介してカソードに漏洩してカソードの触媒表面に析出してしまったこととが原因であると考えられる。
一方、クロスオーバ比を10.0以下とした実施例1〜6では、初期出力と100時間運転後出力との両方を高くすることができた。特に、クロスオーバ比を1.0以下とすることによって、更に、クロスオーバ比を0.1以下とすることによって、初期出力と100時間運転後出力との両方をより高められることが確認された。
以上の通り、本実施例では電気化学セルの一例であるアルカリ形燃料電池において、クロスオーバ比を10.0以下とすることによって性能向上と耐久性向上とを両立できることが確認された。
なお、電気化学セルである亜鉛空気電池及び常温形燃料電池においても、クロスオーバ比を10.0以下とすることによって性能向上と耐久性向上とを両立できることを実験的に別途確認済みである。
10 亜鉛空気二次電池(電気化学セルの一例)
12 空気極(正極の一例)
14 負極
16 電解液
20 セパレータ(電解質体の一例)
200 アルカリ形燃料電池(電気化学セルの一例)
212 カソード(正極の一例)
214 アノード(負極の一例)
216 電解質(電解質体の一例)
300 常温形燃料電池(電気化学セルの一例)
312 空気極(正極の一例)
314 負極
316 電解液
320 セパレータ(電解質体の一例)

Claims (2)

  1. 正極と、
    負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する電解質体と、
    を備え、
    前記負極は、水酸化カリウム水溶液に浸漬されており
    前記電解質体において、水のクロスオーバ値に対するカリウムイオンのクロスオーバ値のクロスオーバ比は、10以下である、
    亜鉛空気二次電池。
  2. 正極と、
    負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置され、水酸化物イオン伝導性を有する電解質体と、
    を備え、
    前記負極は、負極触媒としてルテニウムを含有し
    前記電解質体において、水のクロスオーバ値に対するルテニウムイオンのクロスオーバ値のクロスオーバ比は、10以下である、
    アルカリ形燃料電池。
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