JP6961528B2 - 能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法 - Google Patents

能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法に関する。
従来の騒音制御装置及び騒音制御方法として、制御音を出力する音源を用意し、出力した制御音を騒音に干渉させることで制御点での騒音を低減させるアクティブ・ノイズ・コントロール(ANC:Active Noise Control)を行う装置及び方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1には、隣の人のいびき音などを対象者の耳元位置で小さくするために、騒音を検出する参照マイクと、椅子のヘッドレスト部に設けられた2つのスピーカ及び2つの誤差マイクとを備え、フィードフォワード型の能動騒音制御を行う装置が開示されている。この装置は、2つのスピーカを用いてステレオ音を出力する、いわゆる2チャンネルの装置(ステレオ制御)である。また、低周波のみの騒音を対象とする装置として、参照マイクと、椅子のヘッドレスト部に設けられた1つのスピーカ及び1つの誤差マイクとを備え、フィードフォワード型の能動騒音制御を行う装置も開示されている。この装置は、1つのスピーカを用いてモノラル音を出力する、いわゆる1チャンネルの装置(モノラル制御)である。
特開平8−190388号公報
特許文献1記載の2チャンネルの装置は、両耳それぞれに対して最適な制御音を出力するので高い減音効果を期待できるものの、クロストークを考慮して能動騒音制御を行う必要がある。例えば、右耳用のスピーカから出力された制御音を左耳用の誤差マイクが拾うことを考慮する必要がある。クロストークを考慮した場合、騒音の周波数域によっては騒音よりも大きな制御音が必要となり、周囲へ与える影響が大きいという課題がある。また、制御音が大きくなるにつれて、天井や床からの反射音などが無視できなくなる。このように、2チャンネルの装置は、騒音の種類によっては周囲環境への影響が大きく、減音効果も期待できないおそれがある。
これに対して、特許文献1記載の1チャンネルの装置は、クロストークを考慮する必要がないため制御が容易であるものの、かなり低い周波数の騒音のみにしか対応できない。このため、1チャンネルの装置は、騒音の種類によっては減音効果を期待できないおそれがある。
そこで、本発明は、騒音の周波数に適した能動騒音制御をすることができる能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明に係る能動騒音制御装置は、対象者が聴き取る騒音を、制御音を用いて低減させる能動騒音制御装置であって、騒音源からの騒音を検出する参照マイクと、対象者の右耳へ向けて第1制御音を出力する第1制御音源と、対象者の左耳へ向けて第2制御音を出力する第2制御音源と、参照マイクの検出信号に基づいて第1制御音源及び第2制御音源を制御する制御部と、を備え、制御部は、制御音源ごとに構成されたフィルタを用いて第1制御音源及び第2制御音源の制御音を制御するステレオ制御と、1つのフィルタを用いて第1制御音源及び第2制御音源の制御音の少なくとも一方を制御するモノラル制御とを、参照マイクの検出信号の周波数に応じて切り替える。
この能動騒音制御装置には、参照マイク、第1制御音源及び第2制御音源が備わっており、2チャンネルの構成である。制御部により、制御音源ごとに構成されたフィルタを用いて第1制御音源及び第2制御音源の制御音を制御する2チャンネルの制御(ステレオ制御)が行われる。また、制御部により、2チャンネルの構成上において1チャンネルの制御(モノラル制御)が行われる。より具体的には、制御部により、1つのフィルタを用いて第1制御音源及び第2制御音源の制御音の少なくとも一方が制御される。このため、装置構成を変更することなく、参照マイクの検出信号の周波数に応じてステレオ制御とモノラル制御とを切り替えることができる。騒音の周波数に応じて制御の切り替えることにより、騒音の周波数に適した能動騒音制御をすることができる。
フィルタは固定フィルタであってもよい。固定フィルタのパラメータは、測定用の騒音源と対象者の耳元に配置された誤差マイクとを用いて、能動騒音制御前に予め決定される。固定フィルタを用いることで、能動騒音制御時において対象者の耳元に誤差マイクを配置する必要がなくなる。このため、能動騒音装置の構成を簡素化することができる。また、測定用の騒音源は実際の騒音を出力する必要がないため、低周波数から高周波数まで広帯域の波数を用いてフィルタのパラメータを同定することができる。このため、1つの帯域のフィルタのパラメータをより正確に決定することができる。さらに、パラメータを動的に変更する場合と比べて、フィルタ長を長く設定することが可能であるとともに、制御の不安定さを回避することができる。
能動騒音制御装置は、対象者の耳元に配置された第1誤差マイク及び第2誤差マイクをさらに備え、制御部は、参照マイクの検出信号と第1誤差マイクの検出信号と第2誤差マイクの検出信号とに基づいて、適応アルゴリズムによってフィルタのフィルタ係数を調整してもよい。この場合、固定フィルタを用いる場合と比べて、騒音の変化に追従することができる。
制御部は、参照マイクの検出信号の周波数が所定閾値以上の周波数の場合には、ステレオ制御を実行し、参照マイクの検出信号の周波数が所定閾値未満の周波数の場合にはモノラル制御を実行してもよい。これにより、それぞれが減音効果を発揮しやすい周波数域でステレオ制御又はモノラル制御を行うことができるので、高い減音効果を安定して発揮することができる。
所定閾値は、第1制御音源から対象者の右耳までの誤差経路に対する第2制御音源から対象者の右耳までの誤差経路の位相遅れが90°以下となる周波数であってもよい。この場合、ステレオ制御とモノラル制御とをそれぞれが減音効果を適切に発揮できるように切り替えることができる。
所定閾値は、第1制御音源から対象者の右耳までの誤差経路に対する第2制御音源から対象者の右耳までの誤差経路の位相遅れが30°となる周波数であってもよい。この場合、ステレオ制御の制御音が騒音よりも大きくなることを回避することができる。
騒音はいびき音であってもよい。いびき音は低周波数域が主体であるため、ステレオ制御とモノラル制御とを切り替えることで減音効果を最大化することができる。
本発明に係る能動騒音制御方法は、対象者が聴き取る騒音を、第1制御音源及び第2制御音源の制御音を用いて低減させる能動騒音制御方法であって、騒音源からの騒音を検出する参照マイクの検出信号及び制御音源ごとのフィルタに基づいて第1制御音源及び第2制御音源の制御音を制御する第1制御ステップと、参照マイクの検出信号及び1つのフィルタに基づいて第1制御音源及び第2制御音源の制御音の少なくとも一方を制御する第2制御ステップと、を有し、第1制御ステップ及び第2制御ステップは、参照マイクの検出信号の周波数に応じて何れか一方が実行される。この方法によれば、上述した装置と同様の効果を奏する。
本発明によれば、騒音の周波数に適した能動騒音制御をすることができる。
本発明の実施形態に係る能動騒音制御装置の概要図である。 2チャンネルの能動騒音制御の概念を説明するブロック図である。 2チャンネルの能動騒音制御の座標系を説明する図である。 2チャンネルの能動騒音制御における制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数の逆数のグラフである。 周波数と相対音圧レベルとの関係を、いびき音と話し声とで比較したグラフである。 図1中の能動騒音制御装置が備える第1制御部を示すブロック図である。 図1中の能動騒音制御装置が備える第2制御部を示すブロック図である。 制御音源の配置位置を説明する図である。 能動騒音制御における制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数の逆数のグラフである。 図1中の能動騒音制御装置が備える第1制御部の他の例を示すブロック図である。 図1中の能動騒音制御装置が備える第2制御部の他の例を示すブロック図である。 1チャンネルと2チャンネルの能動騒音制御装置の減音効果を比較したグラフである。 固定フィルタを用いた能動騒音制御装置の実施例である。 騒音の周波数及び騒音スピーカの横位置と減音効果との関係を示すグラフである。 騒音の周波数及び騒音スピーカの縦位置と減音効果との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係る能動騒音制御装置は、騒音に対して制御音を出力し位相干渉させてキャンセルする、いわゆるアクティブ・ノイズ・コントロールを行う能動騒音制御装置である。
[能動騒音制御装置の構成]
最初に、本実施形態に係る能動騒音制御装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る能動騒音制御装置の概要図である。図1に示されるように、能動騒音制御装置1は、例えば、医療施設における他床室において患者HM1(対象者の一例)の音環境を改善するために用いられる。医療施設においては、一般的に就寝時間が決められており、眠りにくさに影響を与える音環境を排除することが望まれている。他床室における騒音の1つは他の患者HM2のいびき音である。いびき音は音量が大きく、ブラウンノイズによるマスキングでは十分な効果を得ることができない。また、他床室であるが故に、壁などで区画することによるパッシブな遮音も困難である。このため、能動騒音制御装置1は、患者HM1が聴き取るいびき音を、制御音を用いて患者HM1の耳元で低減させる場合に好適に採用することができる。能動騒音制御装置1が減音の目標とする位置は、患者HM1の両耳に対応する第1制御点P1及び第2制御点P2である。
能動騒音制御装置1は、参照マイク2、第1誤差マイク3、第2誤差マイク4、第1スピーカ5(第1制御音源の一例)、第2スピーカ6(第2制御音源の一例)、及び、DSP(Digital Signal Processor)デバイス7(制御部の一例)を備えている。DSPとは、例えば、デジタル信号処理を高速に行うことができるアプリケーションプロセッサであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、アクセラレータ、A/D(Analog/Digital)変換回路、D/A(Digital/Analog)変換回路、信号増幅回路、ハウリング抑制回路などを有している。参照マイク2、第1誤差マイク3、第2誤差マイク4、第1スピーカ5及び第2スピーカ6は、DSPデバイス7と通信可能に接続されている。
参照マイク2、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4は、音を検出して電気的な信号に変換する検出器である。参照マイク2は、騒音源からの騒音を検出する。参照マイク2は、騒音源である他の患者HM2の近傍に配置される。参照マイク2は、騒音である他の患者HM2のいびき音を検出し、いびき音に応じたアナログ信号(騒音信号)をDSPデバイス7へ出力する。第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4は、対象者である患者HM1の耳元に配置される。第1誤差マイク3は右耳用であり、第2誤差マイク4は左耳用である。
第1スピーカ5及び第2スピーカ6は、制御音を出力する音源である。第1スピーカ5及び第2スピーカ6は、DSPデバイス7の信号に応じた制御音を出力する。第1スピーカ5は、対象者の右耳(第1制御点P1)へ向けて第1制御音を出力する。第2スピーカ6は、対象者の左耳(第2制御点P2)へ向けて第2制御音を出力する。第1スピーカ5及び第2スピーカ6の配置の詳細については後述する。
第1誤差マイク3は、第1制御点P1における音を検出し、検出された音に応じたアナログ信号(第1誤差信号)をDSPデバイス7へ出力する。第1誤差マイク3は、他の患者HM2と患者HM1の左耳の位置(第1制御点P1)との間の経路である第1伝達経路D1を伝搬して到来した騒音と、第1スピーカ5と患者HM1(第1制御点P1)との間の経路である第3伝達経路D3を伝搬して到来した第1制御音と、第2スピーカ6と患者HM1(第1制御点P1)との間の経路である第6伝達経路D6を伝搬して到来した第2制御音と、を検出する。
第2誤差マイク4は、第2制御点P2における音を検出し、検出された音に応じたアナログ信号(第2誤差信号)をDSPデバイス7へ出力する。第2誤差マイク4は、他の患者HM2と患者HM1の右耳の位置(第2制御点P2)との間の経路である第2伝達経路D2を伝搬して到来した騒音と、第2スピーカ6と患者HM1(第2制御点P2)との間の経路である第4伝達経路D4を伝搬して到来した第2制御音と、第1スピーカ5と患者HM1(第2制御点P2)との間の経路である第5伝達経路D5を伝搬して到来した第1制御音と、を検出する。
DSPデバイス7は、能動騒音制御装置1の動作を統括する電子機器である。DSPデバイス7は、騒音信号、第1誤差信号及び第2誤差信号に基づいて、第1スピーカ5及び第2スピーカ6から出力される第1制御音及び第2制御音を制御する。例えば、DSPデバイス7は、騒音信号、第1誤差信号及び第2誤差信号に基づいて第1制御点P1及び第2制御点P2における騒音信号を予測する。そして、DSPデバイス7は、予測した騒音信号の逆位相の信号を生成し、第1スピーカ5及び第2スピーカ6へ出力する。これにより、第1制御点P1及び第2制御点P2において、制御音と騒音とが干渉して減音効果が奏される。
DSPデバイス7は、参照マイク2の検出信号の周波数に応じて能動騒音制御を変更する(切り替える)機能を有する。より具体的には、DSPデバイス7は、1チャンネルの能動騒音制御(モノラル制御)と、2チャンネルの能動騒音制御(ステレオ制御)とを動作可能な構成を有しており、騒音の周波数に応じて何れか一方を適用する。DSPデバイス7は、それぞれが減音効果を発揮しやすい周波数域でステレオ制御又はモノラル制御を行うように動作する。
[2チャンネルの能動騒音制御]
2チャンネルの能動騒音制御は、参照マイク2、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4のそれぞれの検出信号に基づいてスピーカごとにフィルタを構成し、参照マイク2の検出信号及びスピーカごとのフィルタに基づいて第1制御音及び第2制御音を制御する。フィルタとは、設定されたフィルタ係数に基づいて入力信号に対して信号処理を行って、出力信号を生成するものであり、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタが用いられる。
2チャンネルの能動騒音制御が減音効果を発揮しやすい周波数域を説明するために、2チャンネルの能動騒音制御の概念を説明する。図2は、2チャンネルの能動騒音制御の概念を説明するブロック図である。図2では、便宜上、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4を左側に図示している。第1スピーカ5が患者HM1の右耳に対して第1制御音を出力したとき、左耳にも第1制御音が到来する。第2スピーカ6が患者HM1の右耳に対して第2制御音を出力したとき、左耳にも第2制御音が到来する。このようなクロストークを考慮すると、4つの経路に対応する音場特性C(C22(jω),C12(jω),C21(jω),C11(jω))と、それらに対応するフィルタH(H11(jω),H12(jω),H21(jω),H22(jω))とが行列の形となる。第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4がそれぞれ右耳及び左耳での音に略等しいとすると、フィルタHは、音場特性Cの逆行列となる。
Figure 0006961528

図3は、2チャンネルの能動騒音制御の座標系を説明する図である。図3に示されるように、数式(1)におけるΔrは両耳の距離間隔、θは顔正面を基準としたスピーカの傾き角である。
図4は、2チャンネルの能動騒音制御における制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数の逆数のグラフである。図4は、数式(1)をグラフ化したものである。横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は音のレベル[dB]である。図4に示されるように、伝達関数は大きく振動した複雑な形状となる。このため、周波数に応じてピークを追従するように能動騒音制御を行う必要があるため、複雑な処理となる。さらに、ピーク時において音のレベルが大きくなり、周囲環境に悪影響を与えるとともに反射音が大きくなり、結果として制御点での減音効果が損なわれるおそれがある。
このため、2チャンネルの能動騒音制御は、伝達関数の逆数がピークを持たない領域に限定することが好ましい。つまり、2チャンネルの能動騒音制御が減音効果を発揮しやすい周波数域は、最も周波数の低いピークよりも低い周波数域(第1周波数域A1)である。2チャンネルの能動騒音制御は、一例として500[Hz]以下において効果的となる。図5は、周波数と相対音圧レベルとの関係を、いびき音と話し声とで比較したグラフである。横軸が周波数[Hz]、縦軸が相対音圧レベル[dB]である。図5に示されるように、他床室で特に懸念されているいびき音は、話し声と比較して、低周波数域の音が支配的である。つまり、2チャンネルの能動騒音制御を500[Hz]以下に限定したとしても、いびき音については効果的に減音されることが期待される。
一方、図4に示されるように、第1周波数域において、周波数が低くなるほど音のレベルが一次関数的に増加する。そして、音のレベルが0[dB]を超える領域(第2周波数領域A2)が存在する。つまり、2チャンネルの能動騒音制御は、第2周波数領域A2において周囲環境に悪影響を与えるおそれがある。第2周波数領域A2は、一例として100[Hz]以下の低周波域である。
[1チャンネルの能動騒音制御]
1チャンネルの能動騒音制御は、クロストークを考慮する必要がないため、制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数が行列とはならず、その逆数も定数となる。つまり、どの周波数帯域においても伝達関数の逆数が定数になることから、2チャンネルの能動騒音制御で説明したような制限は存在しない。しかし、1チャンネルの能動騒音制御は、2チャンネルの能動騒音制御と比較すると、複数の制御点を持たないため、両耳それぞれに異なる音を出力することができない。そして、高周波数の制御音になるほど波長が短くなるので制御音でカバーできる制御領域が短くなる。このため、1チャンネルの能動騒音制御は、両耳をカバーできる程度に低周波数域で動作させる必要がある。
[能動騒音制御の組み合わせ]
上述したとおり、2チャンネルの能動騒音制御は、第1周波数域A1で動作させることで、好適な減音効果を得ることができる。しかし、2チャンネルの能動騒音制御は、第2周波数領域A2において、音レベルが0[dB]を超えた値となる。上述したとおり、1チャンネルの能動騒音制御は、低周波になるほど波長が長くなることから、低周波数域での動作に向いており、制御も簡易である。このため、参照マイク2の検出信号の周波数に応じて2チャンネルの能動騒音制御と1チャンネルの能動騒音制御とを使い分けることにより、減音効果を最大化させることができる。
[DSPデバイスの詳細]
以下、2チャンネルの能動騒音制御と1チャンネルの能動騒音制御とを1つの装置で実現するDSPデバイス7の詳細について説明する。DSPデバイス7は、2チャンネルの能動騒音制御用の第1制御部8(図6)と、1チャンネルの能動騒音制御用の第2制御部9(図7)とを備える。図6は、図1中の能動騒音制御装置が備える第1制御部を示すブロック図である。図7は、図1中の能動騒音制御装置が備える第2制御部を示すブロック図である。つまり、図6及び図7において、参照マイク2、第1誤差マイク3、第2誤差マイク4、第1スピーカ5及び第2スピーカ6は同一(共通して使用されるもの)である。
最初に、2チャンネルの能動騒音制御用の第1制御部8を説明する。図6に示されるように、第1制御部8は、参照マイク2、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4のそれぞれの信号に基づいて、スピーカ(第1スピーカ5,第2スピーカ6)ごとにフィルタ(第1制御フィルタW1,第2制御フィルタW2)を構成し、参照マイク2の信号及びスピーカごとのフィルタに基づいて第1制御音及び第2制御音を制御する。以下詳細を説明する。
第1制御部8は、第1スピーカ5の第1制御音を制御するための第1制御フィルタW1を備えている。第1制御フィルタW1は、適応アルゴリズムによってフィルタ係数が自動的に調整されて更新される構成とされている。適応アルゴリズムとして、例えばLMS(Least Mean Square algorithm)が用いられる。
騒音信号x(t)は、音場特性を同定したフィルタC12によって信号処理される。フィルタC12は、第1スピーカ5と第2誤差マイク4との間の伝達経路の特性を示すフィルタである。このフィルタC12は予め周知の手法で同定される。続いて、LMSが、フィルタC12により信号処理された騒音信号x(t)と第2誤差マイク4の誤差信号e(t)との差が最小になるように第1制御フィルタW1のフィルタ係数を調整する。並行して、騒音信号x(t)は、音場特性を同定したフィルタC11によって信号処理される。フィルタC11は、第1スピーカ5と第1誤差マイク3との間の伝達経路の特性を示すフィルタである。このフィルタC11は予め周知の手法で同定される。続いて、LMSが、フィルタC11により信号処理された騒音信号x(t)と第1誤差マイク3の誤差信号e(t)との差が最小になるように第1制御フィルタW1のフィルタ係数を調整する。調整された第1制御フィルタW1は、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。第1スピーカ5は、制御信号y(t)に基づいて、第1制御音を出力する。
第1制御部8は、第2スピーカ6の第2制御音を制御するための第2制御フィルタW2を備えている。第2制御フィルタW2は、適応アルゴリズムによってフィルタ係数が自動的に調整されて更新される構成とされている。適応アルゴリズムとして、例えばLMSが用いられる。
騒音信号x(t)は、音場特性を同定したフィルタC22によって信号処理される。フィルタC22は、第2スピーカ6と第2誤差マイク4との間の伝達経路の特性を示すフィルタである。このフィルタC22は予め周知の手法で同定される。続いて、LMSが、フィルタC22により信号処理された騒音信号x(t)と第2誤差マイク4の誤差信号e(t)との差が最小になるように第2制御フィルタW2のフィルタ係数を調整する。並行して、騒音信号x(t)が、音場特性を同定したフィルタC21によって信号処理される。フィルタC21は、第2スピーカ6と第1誤差マイク3との間の伝達経路の特性を示すフィルタである。このフィルタC21は予め周知の手法で同定される。続いて、LMSが、フィルタC21により信号処理された騒音信号x(t)と第1誤差マイク3の誤差信号e(t)との差が最小になるように第2制御フィルタW2のフィルタ係数を調整する。調整された第2制御フィルタW2は、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。第2スピーカ6は、制御信号y(t)に基づいて、第2制御音を出力する。
第1スピーカ5及び第2スピーカ6には、第2制御部9が接続されている。
次に、1チャンネルの能動騒音制御用の第2制御部9を説明する。図7に示されるように、第2制御部9は、第1誤差マイク3の誤差信号e(t)と第2誤差マイク4の誤差信号e(t)とを加算した加算信号e(t)と、騒音信号x(t)とに基づいて、第1スピーカ5及び第2スピーカ6に共通のフィルタ(共通制御フィルタWL)を構成し、騒音信号x(t)と共通のフィルタによって出力される信号を第1スピーカ5及び第2スピーカ6に分岐させて、第1制御音及び第2制御音を制御する。以下詳細を説明する。
第2制御部9は、第1制御音及び第2制御音を制御するための共通制御フィルタWLを備えている。共通制御フィルタWLは、適応アルゴリズムによってフィルタ係数が自動的に調整されて更新される構成とされている。適応アルゴリズムとして、例えばLMSが用いられる。
騒音信号x(t)は、音場特性を同定したフィルタCLによって信号処理される。フィルタCLは、第1スピーカ5と第1誤差マイク3との間の伝達経路の特性を示すフィルタである。なお、第2スピーカ6と第2誤差マイク4との間の伝達経路の特性は、第1スピーカ5と第1誤差マイク3との間の伝達経路の特性と同一として取り扱う。続いて、LMSが、フィルタCLにより信号処理された騒音信号x(t)と加算信号e(t)との差が最小になるように共通制御フィルタWLのフィルタ係数を調整する。調整された共通制御フィルタWLは、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。制御信号y(t)は、制御信号y(t)及び制御信号y(t)に分岐される。制御信号y(t)及び制御信号y(t)は、制御信号y(t)を等分した信号である。第1スピーカ5は、制御信号y(t)に基づいて、第1制御音を出力する。第2スピーカ6は、制御信号y(t)に基づいて、第2制御音を出力する。このように、2つのスピーカから1つのスピーカの半分の音レベルの制御音(第1制御音及び第2制御音)が同位相で出力される。
第1スピーカ5及び第2スピーカ6には、第1制御部8が接続されている。
DSPデバイス7は、第1制御部8及び第2制御部9の動作を切り替えるためのフィルタを備える。フィルタは、第1制御部8が動作すべき周波数域の信号を第1制御部8へ振り分け、第2制御部9が動作すべき周波数域の信号を第2制御部9へ振り分ける。一例として、フィルタは、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4の出力側に設けられてもよいが、これに限定されない。
[制御音源の配置位置]
続いて第1スピーカ5と第2スピーカ6との配置位置について一例を説明する。図8は、制御音源の配置位置を説明する図である。図8に示されるように、第1スピーカ5及び第2スピーカ6は、患者HM1の軸線(2つの誤差マイクの中点)を中心として対称に配置される。第1スピーカ5及び第2スピーカ6の向きによって規定される開き角をθとすると、低周波数域での減音効果を考慮してθ=180°にしてもよい。
[能動騒音制御の切り替えのための閾値]
DSPデバイス7は、フィルタを用いて、参照マイク2の検出信号の周波数が所定閾値以上の周波数で第1制御部8を動作させ、参照マイク2の検出信号の周波数が所定閾値未満の周波数で第2制御部9を動作させてもよい。
所定閾値は、適宜設定することができる。以下では所定閾値の一例を説明する。図9は、能動騒音制御における制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数の逆数のグラフである。横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は音のレベル[dB]である。図9に示されるように、所定閾値は、制御音源と誤差マイクとの間の伝達関数の逆数が第1周波数域A1において0[dB]と等しくなる周波数(切替周波数SH3)である。一例として、所定閾値は、第1スピーカ5から第1誤差マイク3までの誤差経路に対する第2スピーカ6から第1誤差マイク3までの誤差経路の位相遅れが30°となる周波数である。言い換えれば、所定閾値は、第2スピーカ6から第2誤差マイク4までの誤差経路に対する第1スピーカ5から第2誤差マイク4までの誤差経路の位相遅れが30°となる周波数である。
つまり、参照マイク2の検出信号の周波数が切替周波数SH3以上の周波数域(周波数域F2)で第1制御部8が動作して2チャンネルの能動騒音制御が実行され、参照マイク2の検出信号の周波数が切替周波数SH3未満の周波数域(周波数域F1)で第2制御部9が動作して1チャンネルの能動騒音制御が行われる。
なお、所定閾値は、切替周波数SH3に限定されるものではない。例えば、所定閾値は、周波数域F1に出現する極値SH2以下の周波数を適宜設定すればよい。極値SH2は、一例として、第1スピーカ5から第1誤差マイク3までの誤差経路に対する第2スピーカ6から第1誤差マイク3までの誤差経路の位相遅れが90°となる周波数である。言い換えれば、極値SH2は、第2スピーカ6から第2誤差マイク4までの誤差経路に対する第1スピーカ5から第2誤差マイク4までの誤差経路の位相遅れが90°となる周波数である。
また、DSPデバイス7は、参照マイク2の検出信号の周波数が上限周波数SH1以上のときには2チャンネルの能動騒音制御を終了させてもよい。上限周波数SH1は、一例として、第1スピーカ5から第1誤差マイク3までの誤差経路に対する第2スピーカ6から第1誤差マイク3までの誤差経路の位相遅れが150°となる周波数である。言い換えれば、上限周波数SH1は、第2スピーカ6から第2誤差マイク4までの誤差経路に対する第1スピーカ5から第2誤差マイク4までの誤差経路の位相遅れが150°となる周波数である。
[能動騒音制御方法]
上述した第1制御部8及び第2制御部9を動作させることにより、能動騒音制御方法が実行される。第1制御部8は、上述のとおり、参照マイク2、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4のそれぞれの検出信号に基づいてスピーカごとにフィルタを構成し、参照マイク2の検出信号及びスピーカごとのフィルタに基づいて第1制御音及び第2制御音を制御する(第1制御ステップの一例)。第2制御部9は、上述のとおり、第1誤差マイク3の誤差信号e(t)と第2誤差マイク4の誤差信号e(t)とを加算した加算信号e(t)と、騒音信号x(t)とに基づいて、第1スピーカ5及び第2スピーカ6に共通のフィルタ(共通制御フィルタWL)を構成し、騒音信号x(t)と共通のフィルタによって出力される信号を第1スピーカ5及び第2スピーカ6に分岐させて、第1制御音及び第2制御音を制御する(第2制御ステップの一例)。第1制御ステップ及び第2制御ステップは、参照マイクの検出信号の周波数に応じて何れか一方が実行される。
[実施形態のまとめ]
以上、本実施形態に係る能動騒音制御装置1及び能動騒音制御方法では、第1制御部8により、2チャンネルの制御(ステレオ制御)が行われる。また、第2制御部9により、2チャンネルの構成上において1チャンネルの制御(モノラル制御)が行われる。このため、装置構成を変更することなく、参照マイク2の検出信号の周波数に応じてステレオ制御とモノラル制御とを切り替えることができる。騒音の周波数に応じて制御の切り替えることにより、騒音の周波数に適した能動騒音制御をすることができる。
また、本実施形態に係る能動騒音制御装置1及び能動騒音制御方法によれば、騒音が切替周波数SH3以上の高周波数域である場合にはステレオ制御を行い、騒音が切替周波数SH3未満の低周波数域である場合にはモノラル制御を行うことができる。これにより、それぞれが減音効果を発揮しやすい周波数域でステレオ制御又はモノラル制御を行うことができるので、高い減音効果を安定して発揮することができる。
なお、上述した実施形態は本発明に係る能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法の一例を示すものである。本発明に係る能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法は、実施形態に係る能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る能動騒音制御装置及び能動騒音制御方法を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、上述した実施形態の第1制御部8及び第2制御部9は、図6及び図7に記載された内容に限定されず、周知の2チャンネル能動騒音制御及び周知の1チャンネル能動騒音制御を採用することができる。
以下、1チャンネル能動騒音制御の具体的な他の構成を説明する。第2制御部9は、第1誤差マイク3の検出信号及び第2誤差マイクの検出信号の何れか一方の検出信号と、参照マイク2の検出信号とに基づいて1つのフィルタを構成してもよい。そして、第2制御部9は、参照マイク2の検出信号を1つのフィルタで処理し、処理された信号に基づいて第1制御音及び第2制御音の少なくとも一方を制御してもよい。例えば、第2制御部9は、1チャンネル能動騒音制御を、第1誤差マイク3及び第2誤差マイク4の何れか一方だけを用いて行ってもよい。この場合、第2制御部9は、第1スピーカ5及び第2スピーカ6に共通のフィルタ(共通制御フィルタWL)を、第1誤差マイク3の検出信号及び第2誤差マイク4の検出信号の少なくとも一方の検出信号と、参照マイク2の検出信号とに基づいて構成する。あるいは、第2制御部9は、1チャンネル能動騒音制御を、第1スピーカ5及び第2スピーカ6の何れか一方だけを用いて行ってもよい。この場合、第2制御部9は、第1誤差マイク3の検出信号及び第2誤差マイクの検出信号の何れか一方の検出信号と参照マイクの検出信号とを用いて1つのフィルタを構成し、参照マイク2の検出信号を1つのフィルタで処理し、処理された信号を第1スピーカ5及び第2スピーカ6の少なくとも一方に出力してもよい。
このように、1チャンネル能動騒音制御は、実施形態として示された2つのスピーカと2つの誤差マイクとで実現する態様に限定されず、2つのスピーカと1つの誤差マイクとで実現する態様、1つのスピーカと2つの誤差マイクとで実現する態様、1つのスピーカと1つの誤差マイクとで実現する態様の何れの態様であってもよい。
また、上述した周知の2チャンネル能動騒音制御及び周知の1チャンネル能動騒音制御には、実施例に記載されたように常にリアルタイムで適応フィルタのフィルタ係数を更新しならが能動騒音制御をする場合のみならず、フィルタ係数の調整がある程度完了した後にフィルタ係数の調整を中断して能動騒音制御をする場合や、適応フィルタに替えて固定フィルタを採用して能動騒音制御をする場合も当然に含まれる。固定フィルタとは、フィルタ係数が予め調整された値で固定設定されたフィルタである。
以下、固定フィルタを用いて2チャンネル能動騒音制御及び1チャンネル能動騒音制御を行う場合を例示する。図10は、図1中の能動騒音制御装置が備える第1制御部の他の例を示すブロック図である。図11は、図1中の能動騒音制御装置が備える第2制御部の他の例を示すブロック図である。図10及び図11において、参照マイク2、第1スピーカ5及び第2スピーカ6は同一(共通して使用されるもの)である。
最初に、2チャンネルの能動騒音制御用の第1制御部8Aを説明する。図10に示されるように、第1制御部8Aは、参照マイク2の信号と、スピーカ(第1スピーカ5,第2スピーカ6)ごとのフィルタ(第1制御フィルタW1,第2制御フィルタW2)とに基づいて第1制御音及び第2制御音を制御する。以下詳細を説明する。
第1制御部8Aは、第1スピーカ5の第1制御音を制御するための第1制御フィルタW1を備えている。第1制御フィルタW1は、固定フィルタである。第1制御フィルタW1のフィルタ係数は、能動騒音制御の実行前において調整され、固定される。例えば、測定用騒音源及び測定用誤差マイクを用意し、測定用騒音源から出力された騒音と制御音とを測定用誤差マイクで計測し、騒音が小さくなるように第1制御フィルタW1のフィルタ係数が調整される。調整された第1制御フィルタW1は、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。第1スピーカ5は、制御信号y(t)に基づいて、第1制御音を出力する。
第1制御部8Aは、第2スピーカ6の第2制御音を制御するための第2制御フィルタW2を備えている。第2制御フィルタW2は、固定フィルタである。第2制御フィルタW2のフィルタ係数は、能動騒音制御の実行前において調整され、固定される。例えば、測定用騒音源及び測定用誤差マイクを用意し、測定用騒音源から出力された騒音と制御音とを測定用誤差マイクで計測し、騒音が小さくなるように第2制御フィルタW2のフィルタ係数が調整される。調整された第2制御フィルタW2は、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。第2スピーカ6は、制御信号y(t)に基づいて、第2制御音を出力する。
第1スピーカ5及び第2スピーカ6には、第2制御部9Aが接続されている。
次に、1チャンネルの能動騒音制御用の第2制御部9Aを説明する。図11に示されるように、第2制御部9Aは、参照マイク2の信号と、1つのフィルタ(共通制御フィルタWL)とに基づいて第1制御音及び第2制御音を制御する。より具体的には、第2制御部9Aは、騒音信号x(t)を共通制御フィルタWLで処理し、共通制御フィルタWLで処理された信号を第1スピーカ5及び第2スピーカ6に分岐させて、第1制御音及び第2制御音を制御する。以下詳細を説明する。
第2制御部9Aは、第1制御音及び第2制御音を制御するための共通制御フィルタWLを備えている。共通制御フィルタWLは、固定フィルタである。共通制御フィルタWLのフィルタ係数は、能動騒音制御の実行前において調整され、固定される。例えば、測定用騒音源及び測定用誤差マイクを用意し、測定用騒音源から出力された騒音と制御音とを測定用誤差マイクで計測し、騒音が小さくなるように共通制御フィルタWLのフィルタ係数が調整される。調整された共通制御フィルタWLは、騒音信号x(t)を信号処理することにより、制御信号y(t)を出力する。制御信号y(t)は、制御信号y(t)及び制御信号y(t)に分岐される。制御信号y(t)及び制御信号y(t)は、制御信号y(t)を等分した信号である。第1スピーカ5は、制御信号y(t)に基づいて、第1制御音を出力する。第2スピーカ6は、制御信号y(t)に基づいて、第2制御音を出力する。このように、2つのスピーカから1つのスピーカの半分の音レベルの制御音(第1制御音及び第2制御音)が同位相で出力される。
第1スピーカ5及び第2スピーカ6には、第1制御部8Aが接続されている。
DSPデバイス7は、第1制御部8A及び第2制御部9Aの動作を切り替えるためのフィルタを備える。フィルタは、第1制御部8Aが動作すべき周波数域の信号を第1制御部8Aへ振り分け、第2制御部9Aが動作すべき周波数域の信号を第2制御部9Aへ振り分ける。一例として、フィルタは、参照マイク2の出力側に設けられてもよいが、これに限定されない。能動騒音制御の切り替えのための閾値は、適用フィルタで説明された閾値と同一とすることができる。なお、固定フィルタを用いた能動騒音制御装置においては第1誤差マイク3が不要であるため、適用フィルタにおける閾値の説明において、第1誤差マイク3を患者HM1の右耳へ読み替えてもよい。例えば、固定フィルタを用いた能動騒音制御においては、閾値は、第1スピーカ5から患者HM1の右耳までの誤差経路に対する第2スピーカ6から患者HM1の右耳までの誤差経路の位相遅れが90°以下となる周波数であってもよい。低周波においては患者HM1の左右の耳は対称であるとみなすことができるため、上述した閾値は、左耳に対する位相遅れを用いて表現しなおすこともできる。つまり、閾値は、第2スピーカ6から患者HM1の左耳までの誤差経路に対する第1スピーカ5から患者HM1の左耳までの誤差経路の位相遅れが90°以下となる周波数であってもよい。
以上、固定フィルタを採用した場合、適応フィルタを採用した場合と比較して、以下の利点がある。能動騒音制御時において対象者の耳元に誤差マイクを配置する必要がなくなる。このため、能動騒音装置の構成を簡素化することができる。また、測定用の騒音源は実際の騒音を出力する必要がないため、低周波数から高周波数まで広帯域の波数を用いてフィルタのパラメータを同定することができる。このため、1つの帯域のフィルタのパラメータをより正確に決定することができる。さらに、パラメータを動的に変更する場合と比べて、フィルタ長を長く設定することが可能であるとともに、制御の不安定さを回避することができる。
固定フィルタを用いて2チャンネル能動騒音制御及び1チャンネル能動騒音制御を行う例は、図10及び図11に示される例に限定されない。例えば、第1制御部8A用のスピーカ2つ、第2制御部9A用のスピーカ2つの合計4つのスピーカを備えてもよい。また、第2制御部9Aは、第2制御部9と同様に、共通制御フィルタWLを用いて第1スピーカ5及び第2スピーカ6の制御音の少なくとも一方を制御してもよい。
また、第1制御部8及び第2制御部9(又は第1制御部8A及び第2制御部9A)は、DSPデバイス7の内部において別々に存在する必要はなく、1つの制御部として構成されていてもよいことは無論のことである。つまり、第1制御部8及び第2制御部9(又は第1制御部8A及び第2制御部9A)の制御系を構成するハードウェアは、1つであってもよいし、分離されていてもよい。
適用フィルタ及び固定フィルタの何れを採用する場合においても、2チャンネル能動騒音制御を1チャンネル能動騒音制御へ切り替える場合、第1制御フィルタW1及び第2制御フィルタW2の何れか一方を共通制御フィルタWLとして使用してもよい。
能動騒音制御装置において用いられるフィルタは、適用フィルタ及び固定フィルタが混在していてもよい。つまり、能動騒音制御装置は、騒音が切替周波数以上の高周波数域である場合には適用フィルタによるステレオ制御を行い、騒音が切替周波数未満の低周波数域である場合には固定フィルタによるモノラル制御を行うこともできる。あるいは、能動騒音制御装置は、騒音が切替周波数以上の高周波数域である場合には固定フィルタによるステレオ制御を行い、騒音が切替周波数未満の低周波数域である場合には適応フィルタによるモノラル制御を行うこともできる。
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例について述べる。
図6及び図7に示す能動騒音制御装置を用いて、1チャンネル及び2チャンネルの減音効果を確認した。図12は、1チャンネル及び2チャンネルの能動騒音制御装置の減音効果を比較したグラフである。横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は減音された音のレベル[dB]である。図12に示されるように、周波数100[Hz]程度よりも低い周波数域では、2チャンネルの能動騒音制御よりも、1チャンネルの能動騒音制御の方が減音効果に優れていることが確認された。これにより、1チャンネルと2チャンネルとを切り替えることによって減音効果が最大化されることが確認された。
次に、固定フィルタを用いた能動騒音制御装置の効果を確認した。図13は、固定フィルタを用いた能動騒音制御装置の実施例である。図13に示されるように、騒音源として騒音スピーカ10を患者HM1の側方に設置した。騒音スピーカ10と患者HM1との距離は2.5mとした。騒音スピーカ10の近傍に参照マイク2を配置して、DSPデバイス7に接続した。制御音源として、40Hz〜1kHzの周波数の音を出力する第1スピーカ5及び第2スピーカを用意し、DSPデバイス7に接続した。第1スピーカ5及び第2スピーカを、傾き角θ(図3参照)が90°、開き角(図8参照)が180°となるように、患者HM1の両耳側方に配置した。患者HM1の両耳の距離間隔Δr(図3参照)は30cmとした。DSPデバイス7には、第1スピーカ5の固定フィルタ、第2スピーカ6の固定フィルタ、第1スピーカ5及び第2スピーカ6に共通の固定フィルタをそれぞれ格納させ、第1制御部8A及び第2制御部9Aの機能を発揮できるように構成した。
最初に、固定フィルタのフィルタ係数を決定した。まず、2チャンネル用に、第1制御フィルタW1と第2制御フィルタW2とのフィルタ係数を確定した。測定用誤差マイクを用意して患者HM1の右耳(第1制御点P1)の音を計測できるように配置した。騒音スピーカ10から出力された調整音と第1スピーカ5の制御音とを測定用誤差マイクで計測し、調整音が小さくなるように第1制御フィルタW1のフィルタ係数を調整した。同様に、患者HM1の左耳(第2制御点P2)の音を計測できるように測定用誤差マイクを配置し、第2制御フィルタW2のフィルタ係数を調整した。続いて、1チャンネル用に、共通制御フィルタWLのフィルタ係数を同様の手法で調整した。
フィルタ係数の確定後、騒音スピーカ10から騒音を出力するとともに、能動騒音制御を実行した。1チャンネル、2チャンネルの切り替え周波数は、100Hzとした。つまり、騒音が100Hz以上の場合には2チャンネルの能動騒音制御とし、騒音が100Hz未満の場合には1チャンネルの能動騒音制御とした。騒音スピーカ10の位置をXY平面内でX方向に±25cmの範囲で移動させ、移動位置ごとに第1制御点P1における音[dB]を計測した。結果を図14に示す。同様に、騒音スピーカ10の位置をXY平面内でY方向に±25cmの範囲で移動させ、移動位置ごとに第1制御点P1における音[dB]を計測した。結果を図15に示す。
図14は、騒音の周波数及び騒音源スピーカの横位置と減音効果との関係を示すグラフである。図14において、横軸は騒音スピーカ10の横位置X[cm]である。縦軸は騒音の周波数[Hz]である。減音効果が大きいほど白に近い色で示している。図14に示されるように、何れの横位置においても500[Hz]以下の騒音に対して減音効果が発揮されていることが確認された。また、騒音スピーカ10の横位置Xが±25cmの範囲で移動したとしても、減音効果は大きく変わらないことが確認された。
図15は、騒音の周波数及び騒音源スピーカの縦位置と減音効果との関係を示すグラフである。図15において、横軸は騒音スピーカ10の縦位置Y[cm]である。縦軸は騒音の周波数[Hz]である。減音効果が大きいほど白に近い色で示している。図15に示されるように、何れの横位置においても500[Hz]以下の騒音に対して減音効果が発揮されていることが確認された。また、騒音スピーカ10の縦位置Yが±25cmの範囲で移動したとしても、減音効果は大きく変わらないことが確認された。
図14及び図15の測定結果によれば、騒音源である他の患者HM2が寝返りなどにより多少移動したとしても、固定フィルタによる能動騒音制御で十分に減音することができることが確認された。
1…能動騒音制御装置、2…参照マイク、3…第1誤差マイク、4…第2誤差マイク、5…第1スピーカ(第1制御音源)、6…第2スピーカ(第2制御音源)、7…DSPデバイス(制御部)。

Claims (6)

  1. 対象者が聴き取る騒音を、制御音を用いて低減させる能動騒音制御装置であって、
    騒音源からの騒音を検出する参照マイクと、
    前記対象者の右耳へ向けて第1制御音を出力する第1制御音源と、
    前記対象者の左耳へ向けて第2制御音を出力する第2制御音源と、
    前記参照マイクの検出信号に基づいて前記第1制御音源及び前記第2制御音源を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記参照マイクの検出信号の周波数が所定閾値以上の周波数の場合には制御音源ごとに構成されたフィルタを用いて前記第1制御音源及び前記第2制御音源の制御音を制御するステレオ制御を実行し前記参照マイクの検出信号の周波数が前記所定閾値未満の周波数の場合には1つのフィルタを用いて前記第1制御音源及び前記第2制御音源の制御音の少なくとも一方を制御するモノラル制御を実行し
    前記所定閾値は、前記第1制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路に対する前記第2制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路の位相遅れが90°以下となる周波数である、
    能動騒音制御装置。
  2. 前記フィルタは固定フィルタである、請求項1に記載の能動騒音制御装置。
  3. 前記対象者の耳元に配置された第1誤差マイク及び第2誤差マイクをさらに備え、
    前記制御部は、前記参照マイクの検出信号と前記第1誤差マイクの検出信号と前記第2誤差マイクの検出信号とに基づいて、適応アルゴリズムによって前記フィルタのフィルタ係数を調整する、請求項1に記載の能動騒音制御装置。
  4. 前記所定閾値は、前記第1制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路に対する前記第2制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路の位相遅れが30°となる周波数である、請求項1〜3の何れか一項に記載の能動騒音制御装置。
  5. 前記騒音はいびき音である、請求項1〜の何れか一項に記載の能動騒音制御装置。
  6. 対象者が聴き取る騒音を、第1制御音源及び第2制御音源の制御音を用いて低減させる能動騒音制御方法であって、
    騒音源からの騒音を検出する参照マイクの検出信号及び制御音源ごとのフィルタに基づいて前記第1制御音源及び前記第2制御音源の制御音を制御する第1制御ステップと、
    前記参照マイクの検出信号及び1つのフィルタに基づいて前記第1制御音源及び前記第2制御音源の制御音の少なくとも一方を制御する第2制御ステップと、
    を有し、
    前記参照マイクの検出信号の周波数が所定閾値以上の周波数の場合には前記第1制御ステップが実行され、前記参照マイクの検出信号の周波数が前記所定閾値未満の周波数の場合には前記第2制御ステップが実行され、
    前記所定閾値は、前記第1制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路に対する前記第2制御音源から前記対象者の右耳までの誤差経路の位相遅れが90°以下となる周波数である、
    能動騒音制御方法。
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