JP6960657B2 - 複合型モノフィラメント糸の製造方法 - Google Patents

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本発明は、複合型モノフィラメント糸の製造方法に関し、特に樹脂製容器の壁に接着させて容器を補強するための補強用布帛を得るのに用いる複合型モノフィラメント糸の製造方法に関するものである。
従来より、樹脂製容器の壁の外側又は内側に布帛を接着させたり、壁中に布帛を挿入したりして、容器を補強することが行われている。そして、補強用布帛としては、織物、編物又は多軸シート等が用いられている。かかる補強用布帛を構成する糸として、芯鞘複合型モノフィラメント糸が用いられることがある。芯鞘複合型モノフィラメント糸とは、芯成分が高融点重合体よりなり、鞘成分が低融点重合体よりなり、比較的高繊度のものである。そして、鞘成分のみを軟化又は溶融させて、樹脂製容器の壁に融着することができるので、補強用布帛の構成糸として用いられている。
芯鞘複合型モノフィラメント糸の芯成分としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル、ポリフェニレンエーテル及びポリビニルアルコール等の高融点重合体が用いられており、鞘成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレン−プロピレン系共重合体等の低融点重合体が用いられている(特許文献1、請求項1〜3)。すなわち、芯成分として高融点重合体であれば種々の重合体を用いることができ、鞘成分として樹脂となじみが良く接着性にすぐれたオレフィン系重合体を用いることが知られている。
かかる芯鞘複合型モノフィラメント糸は、その強度が高いことが求められる。特に、樹脂製容器の壁に接着させた後にフィラメント形態を維持して残存している芯成分には、高い強度が求められる。本発明者は、芯成分として高強度及び高剛性を持つポリアミドMXD6を採用することを試みた。しかしながら、ポリアミドMXD6は曳糸性に劣るため、軸方向に繊度の均一な芯鞘複合型モノフィラメント糸を得ることが困難であった。また、芯鞘複合型モノフィラメント糸の強度を向上させるため、延伸処理を施すと、芯成分と鞘成分とが剥離するということがあり、芯鞘複合型モノフィラメント糸を用いて製織又は製編等をする際に、鞘成分が脱離したり切断されたりして、布帛中に鞘成分を均一に存在させにくくなるという欠点があった。また、芯成分と鞘成分が剥離した芯鞘複合型モノフィラメント糸を容器等の壁に接着しても、強固な接着を実現できないという欠点もあった。
特開2003−193332号公報
本発明の課題は、芯鞘複合型モノフィラメント糸の芯成分としてポリアミドMXD6を採用しながら、軸方向に繊度が均一で、かつ、芯成分と鞘成分とが剥離しにくい複合型モノフィラメント糸を製造する方法を提供することにある。
本発明は、鞘成分として、ポリアミドMXD6に曳糸性を与える特定の混合樹脂を使用することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、芯成分をポリアミドMXD6とし、鞘成分をマレイン酸変性ポリオレフィン及び高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンよりなる混合樹脂として、複合溶融紡糸法によってモノフィラメント糸を得た後、該モノフィラメント糸を冷却した後に、加熱下で延伸処理を施すことを特徴とする複合型モノフィラメント糸の製造方法に関するものである。
まず、芯成分となるポリアミドMXD6を準備する。ポリアミドMXD6とは、メタキシレンジアミンとアジピン酸とを重縮合反応して得られるポリアミドのことである。ポリアミドMXD6の融点は、約240℃である。芯成分をポリアミドMXD6とすることにより、高強度及び高剛性の芯成分となる。なお、ポリアミドMXD6のみを芯成分として用いてもよいし、他の重合体と混合して芯成分としてもよい。一方、鞘成分となるマレイン酸変性ポリオレフィン及び高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンよりなる混合樹脂を準備する。マレイン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンの側鎖にマレイン酸(無水マレイン酸を含む)を付加させたものである。マレイン酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリエチレンやマレイン酸変性ポリプロピレンを用いることができる。マレイン酸変性ポリオレフィンの融点は、種類によって異なるが、概ね110〜160℃であり、ポリアミドMXD6の融点よりも低融点となっている。鞘成分をマレイン酸変性ポリオレフィンとすることにより、芯成分であるポリアミドMXD6の曳糸性を良好にすることができる。この理由は定かではないが、ポリアミドMXD6がマレイン酸変性ポリオレフィンと強固に密着し、マレイン酸変性ポリオレフィンの良好な曳糸性に助けられて、ポリアミドMXD6の曳糸性も良好になると考えられる。
鞘成分である混合樹脂は、マレイン酸変性ポリオレフィンに、高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンが添加されてなるものである。高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンの添加量は、マレイン酸変性ポリオレフィン100重量部に対して50〜150質量部程度である。高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを添加する理由は、鞘成分のメルトフローレートを調整して、その曳糸性と流動性とを向上させ、複合溶融紡糸しやすくするためである。
芯成分と鞘成分とを、複合溶融紡糸孔を複数備えた紡糸装置に、溶融状態で導入し、加熱された複合溶融紡糸孔より芯成分と鞘成分を吐出する方法(すなわち、複合溶融紡糸法)によって、芯鞘複合型モノフィラメント糸を得る。芯成分と鞘成分とを複合溶融紡糸孔より連続して吐出し、芯成分を鞘成分によって良好に被覆するには、芯成分と鞘成分のメルトフローレートを一定の範囲に調整するのが好ましい。具体的には、芯成分のメルトフローレートを5〜40g/10分の範囲内にし、鞘成分のメルトフローレートを15〜65g/10分の範囲内にするのがよい。特に、この範囲内で、鞘成分のメルトフローレートを芯成分のメルトフローレートよりも高くし、鞘成分の流動性を高めておくのが好ましい。なお、このメルトフローレートは、複合溶融紡糸する際の温度に近似する温度である280℃で、荷重2.16kgで測定したものである。
得られたモノフィラメント糸は冷却された後に、モノフィラメント糸を加熱下で延伸して、複合型モノフィラメント糸を得る。冷却方法及び加熱方法は従来公知の方法で行われる。たとえば、低温の温水中にモノフィラメント糸を浸漬することにより、モノフィラメント糸を冷却してもよい。また、高温の温水中にモノフィラメント糸を浸漬することにより、モノフィラメント糸を加熱してもよい。さらに、高温の熱風中にモノフィラメント糸を導入することにより、モノフィラメント糸を加熱してもよいし、高温の過熱水蒸気をモノフィラメント糸に吹き付けて行ってもよい。低温の温度は60℃以下程度でよく、室温であってもよい。また、高温の温度は80℃以上程度であり、200℃以上程度でもよい。延伸は、二つの一対のローラー間で行われる。たとえば、一対の第一ローラー間にモノフィラメント糸を導入した後、このモノフィラメント糸を第一ローラーよりも回転速度の速い加熱された一対の第二ローラー間に導入することにより行われる。第一ローラーと第二ローラーに回転速度差を設けることにより、任意の倍率で延伸することができる。たとえば、第一ローラーの回転速度をXrpmの場合、第二ローラーの回転速度を2Xrpmにすると、2倍の延伸倍率で延伸されることになる。本発明では、延伸倍率は、3〜7倍であるのが好ましく、特に4〜6倍であるのが最も好ましい。
本発明によると、上記した延伸工程を経ても、芯成分と鞘成分とがよく密着しており、芯成分と鞘成分の剥離の少ない芯鞘複合型モノフィラメント糸が得られる。複合型モノフィラメント糸の繊度は比較的高繊度であり、100〜2000デシテックス程度である。複合型モノフィラメント糸の表面には油剤をを付与してもよい。油剤を付与することにより、巻き取り性、巻き戻し性及び製織性又は製編製等を向上させることができる。この複合型モノフィラメント糸を用いて布帛を得る。具体的には、複合型モノフィラメント糸を経糸及び緯糸に用い、製織して織物を得る。織物の組織は、平織組織、綾織組織又は朱子織組織等の従来公知の組織を採用すればよい。また、複合型モノフィラメント糸を用いて緯編又は経編で製編して、編物を得る。編物の組織も、平編組織、パール編組織又はトリコット編組織等の従来公知の組織を採用すればよい。さらに、複合型モノフィラメント糸を経方向、斜め方向又は緯方向に並べた層を積層し、各層間を接着してなる多軸シートを得る。これらの布帛を構成する複合型モノフィラメントの鞘成分のみを軟化又は溶融させて、各糸間を融着させて、目づれが生じにくいようにしておいてもよい。。
以上の方法で得られた布帛は、各種材料の補強用布帛として用いられる。たとえば、樹脂製容器の壁の表面に張設して、加熱加圧し、複合型モノフィラメント糸の鞘成分のみを軟化又は溶融させて接着して、樹脂製容器の壁を補強することができる。
本発明に係る方法を採用すると、ポリアミドMXD6に良好な曳糸性が与えられるため、軸方向に繊度の均一な芯鞘複合型モノフィラメント糸を得ることができるという効果を奏する。また、芯成分からの鞘成分の剥離の少ない芯鞘複合型モノフィラメント糸を得ることができるという効果を奏する。したがって、軸方向に繊度が均一で、かつ、芯成分と鞘成分との剥離が少ない複合型モノフィラメント糸が得られるという効果を奏する。また、芯成分と鞘成分との剥離が少ない複合型モノフィラメント糸を用いて布帛を得ると、この布帛中には鞘成分が均一に存在する。そして、この布帛中の鞘成分のみを軟化又は溶融させて、樹脂製容器の壁等に接着させた場合、均一で強固な接着が実現でき、樹脂製容器の壁等の補強効果に優れるという効果を奏する。
実施例1
芯成分として、融点が240℃でメルトフローレートが5.4g/10分のポリアミドMXD6(三菱瓦斯化学社製 MXナイロン 6121)を準備した。鞘成分として、以下の混合樹脂を準備した。すなわち、融点が131℃でメルトフローレートが62.0g/10分の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 HJ490)50重量部と、融点が122℃でメルトフローレートが31.7g/10分のマレイン酸変性ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 アドテックス DU6600)50重量部を均一に混合した混合樹脂を準備した。そして、複合溶融紡糸装置に、孔径2.0mmの芯鞘型複合紡糸口金を装着し、280℃に加熱した芯成分及び鞘成分を、芯成分:鞘成分=2:1(重量比)となるように両者を供給し、モノフィラメント糸を紡糸した。その後、紡糸したモノフィラメント糸を60℃の温水中に浸漬して冷却した。続いて、95℃の温水中に導入し、この温水中で3倍の延伸倍率で延伸処理を施した。その後、このモノフィラメント糸を210℃の乾熱雰囲気中に導入し、1.3倍の延伸倍率で延伸処理を施し、総延伸倍率が4倍となるように延伸して、繊度が3075デシテックスの複合型モノフィラメント糸を得た。
実施例2
鞘成分として使用する混合樹脂を、融点が127℃でメルトフローレートが15.15/10分の低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製 エヴォリュー SP4030)50重量部と、融点が122℃でメルトフローレートが31.7g/10分のマレイン酸変性ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 アドテックス DU6600)50重量部を均一に混合した混合樹脂に変更する他は、実施例1と同一の条件で、繊度が3071デシテックスの複合型モノフィラメント糸を得た。
比較例1
鞘成分として使用する混合樹脂に代えて、融点が131℃でメルトフローレートが62.0g/10分の高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 HJ490)100重量部を用いる他は、実施例1と同一の方法で複合型モノフィラメント糸を得た。
比較例2
鞘成分として使用する混合樹脂に代えて、融点が127℃でメルトフローレートが15.15/10分の低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製 エヴォリュー SP4030)100重量部を用いる他は、実施例2と同一の方法で複合型モノフィラメント糸を得た。
実施例1、2、比較例1及び2で得られた複合型モノフィラメント糸の端部を側面及び端面から観察した。その結果、実施例1及び2で得られた複合型モノフィラメント糸は、芯と鞘とが密着しているのに対して、比較例1及び2で得られた複合型モノフィラメント糸は、芯と鞘とが密着しておらず、剥離しやすいものであることが分かる。特に、比較例1及び2で得られた複合型モノフィラメント糸の端部では、鞘が収縮して芯が露出していることが分かる。
実施例1及び2で得られた複合型モノフィラメント糸を経糸及び緯糸に用いて平織織物を製織し、これを樹脂製容器の壁に加熱加圧して接着させたところ、織物は強固に樹脂製容器の壁に接着し、補強用布帛として好適に使用しうるものであった。
実施例1で得られた複合型モノフィラメント糸の端部側面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 実施例1で得られた複合型モノフィラメント糸の端面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 実施例2で得られた複合型モノフィラメント糸の端部側面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 実施例2で得られた複合型モノフィラメント糸の端面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 比較例1で得られた複合型モノフィラメント糸の端部側面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 比較例1で得られた複合型モノフィラメント糸の端面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 比較例2で得られた複合型モノフィラメント糸の端部側面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。 比較例2で得られた複合型モノフィラメント糸の端面を光学顕微鏡で観察したときの写真である。

Claims (4)

  1. 芯成分をポリアミドMXD6とし、鞘成分をマレイン酸変性ポリオレフィン及び高密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンよりなる混合樹脂として、複合溶融紡糸法によってモノフィラメント糸を得た後、該モノフィラメント糸を冷却した後に、加熱下で延伸処理を施すことを特徴とする複合型モノフィラメント糸の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法で得られた複合型モノフィラメント糸を用いて布帛を得る布帛の製造方法。
  3. 請求項1記載の方法で得られた複合型モノフィラメント糸を経糸及び緯糸に用いて製織する織物の製造方法。
  4. 請求項記載の方法で得られた布帛に熱処理を施し、鞘成分のみを軟化又は溶融させて、該布帛を構成している複合型モノフィラメント糸相互間を融着させる補強用布帛の製造方法。
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