JP6956971B2 - 排水からのマンガンの除去方法 - Google Patents
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Description
また、pHを上げるためにアルカリを添加した場合、pHが9を超えると、排水中に上述した不純物とともに含有されるマグネシウムが、マンガンよりも先に水酸化物を形成するという問題もあった。
マンガン酸化細菌を利用してマンガンを除去するには、一定量のマンガン酸化細菌を増殖し、増殖したマンガン酸化細菌がマンガンを酸化して沈殿させ、澱物を形成する除去能力を高めなければならない。
90以上の分子量をもつアミノ酸と、グルコースを添加し、前記アミノ酸の添加量が、排水中のマンガンのモル濃度の1.6倍〜2.2倍のモル濃度となる量であり、前記グルコースの添加量が、排水中のマンガンのモル濃度の0.2倍〜0.6倍のモル濃度となる量であることを特徴とする。
第2発明の排水からのマンガンの除去方法は、予備工程として、マンガンを含む排水に予めアルカリを添加してpHを調整し、マンガン濃度を65mg/L以下に低減しておき、該予備工程で得られた排水を上記請求項1記載の処理に供することを特徴とする。
a)マンガン酸化細菌を増殖させると共に細胞構成成分としての炭素源およびエネルギー源を供給することで、多大なアルカリを投入することなく、マンガン酸化細菌によってマンガンを十分に酸化させて、これを沈殿させて除去することができる。
b)アミノ酸分子量が好適な範囲なので、マンガン酸化能力が低すぎることもなく、過剰なアミノ酸により雑菌が増殖することもなく、マンガンを低減させることができる。
c)グルコース添加量が好適な範囲なので、マンガン酸化細菌の活動が弱くなることもなく、過剰のグルコースによって雑菌が増殖することもなく、マンガンを低減させることができる。
第2発明によれば、予備工程において、マンガン濃度を下げておくので過剰なアルカリ添加を必要とせず、反応時間も短くできるので、コスト的および設備的に有利となる。
本発明に係る排水からのマンガンの除去方法は、マンガンを含む排水からマンガン酸化細菌によりマンガンを除去する方法であって、90以上の分子量をもつアミノ酸と、グルコースを添加して行う。グルコースを添加する目的は増殖したマンガン酸化細菌に細胞構成成分としての炭素源およびエネルギー源を供給するためであり、アミノ酸を添加する目的は、炭素源・エネルギー源、また、その他窒素源などの微量栄養元素を供給するためである。
マンガン酸化細菌を増殖させると共に細胞構成成分としての炭素源およびエネルギー源を供給すれば、多大なアルカリを投入することなく、マンガン酸化細菌によってマンガンを十分に酸化させて、これを沈殿させて除去することができる。このマンガン除去効果は強力なので、pH9未満となる低いpH領域の排水であってもマンガン除去は可能である。
マンガン酸化細菌は、排水中に含まれている例が多いが、含まれていなかったり、極く微量の場合は、予め保存しておいたマンガン酸化細菌を排水中に添加する。
既述のように、多種多様な菌種があるマンガン酸化細菌を、精密に分析して菌種を特定したり、あるいは特定の菌のみを増殖させたりすることは一般に困難である。そのため、本発明では、同一条件で採取し培養した菌種をまとめて扱い、様々な菌種が全体としてマンガンを除去することに利用する。このため、本明細書では、マンガンを酸化する能力がある細菌を一括して「マンガン酸化細菌」と定義し、マンガンの酸化に関与しない細菌を「雑菌」と定義する。
また、本発明では後述するようにフィリピン国パラワン島で操業する製錬所の排水処理設備の排水路配管から採取したマンガン酸化細菌を培養して試験に付したが、特定の産出地に限定されるものではない。
本発明によるマンガン除去は、マンガン濃度が概ね60mg/Lとなる排水を対象とし、それ以下にマンガン濃度を低減させる場合に好適である。
(1)アルカリを添加してpHを上昇させる従来からのマンガン除去方法を用いた場合、pHが9未満となる領域であっても排水のマンガン濃度は概ね60mg/Lまでは低減できるが、さらにマンガンを低減しようとする場合には当量を上回る過剰量のアルカリ添加や過大な反応時間が必要となる。このため、マンガン濃度が65mg/L以下、好ましくは60mg/L程度になるように中和した後、この中和後の排水に対してマンガン酸化細菌を利用した処理を行ってマンガン濃度を1mg/L以下まで低減するのが、コスト的にまた設備的にも有利である。
以下に本発明によるマンガン酸化細菌を用いたマンガン除去方法を実施するに当って、必要とされるマンガン除去能力を保持するための条件を説明する。
添加するアミノ酸の役割は、炭素源・エネルギー源、また、その他窒素源などの栄養源となってマンガン酸化細菌の増殖を助けるところにある。
上記培養液に、低濃度のマンガン及びそのマンガン量に対して0.01倍から5倍までの間のモル量の分子量100以上のアミノ酸を加えて供試の水溶液とした。
そして、60mg/Lの濃度差のマンガンを除去するには、添加するアミノ酸の分子量として概ね90程度以上が必要であることがわかる。分子量が75のグリシンのように、分子量が90未満となるようなアミノ酸を用いた場合はマンガン低減量は60mg/L未満にしかならない。
具体的には、マンガンが1.8mMol/L(100mg/L)の濃度で含まれた排水に対して、アミノ酸の添加量が概ね4mMol/Lを超えると。過剰なアミノ酸によって雑菌の増殖が加速されてしまい、さらに次亜塩素酸ソーダを添加してマンガンを酸化してきた場合のコストに匹敵するためマンガン酸化細菌を用いるメリットがなくなる。そのため、図3に示すように、アミノ酸は3〜4mMol/Lを添加することが好ましい。
また、元液のマンガン濃度が異なる場合は、同じ倍数の範囲となるアミノ酸濃度を添加すればよい。具体的には、例えばマンガンが50mg/L(0.91mMol/L)含有された排水に対しては、アミノ酸は1.4mMol/L〜2mMol/Lの範囲で添加する。
マンガン酸化細菌を含む培養液には、マンガン酸化細菌に細胞構成成分としての炭素源および活動するためのエネルギー源としてグルコース(分子量180)もしくは相当する炭化水素を添加することがよい。
上記から明らかなように、グルコースは0.4mMol/L以上の量を添加する必要がある。上記のアミノ酸の場合と同じように含有するマンガンのモル濃度に対しては、0.2倍となる。
グルコースの濃度が0.4mMol/Lを下回るなど低すぎると、マンガン酸化細菌の活動が弱くなり、増殖に寄与しなくなり、その結果マンガン低減量は低下する。
つまりマンガンのモル濃度の0.2倍〜0.6倍のモル濃度となる量のグルコースを添加することが好ましい。
マンガン濃度が60mg/Lを超える高濃度の排水に対してマンガン酸化細菌を利用してマンガンを酸化することも可能である。しかし、処理に必要な多量のマンガン酸化細菌を培養して確保し、マンガン酸化細菌が処理するのに必要な反応時間を確保できる設備の大きさを勘案すると、予備工程として60mg/Lの濃度までアルカリによってマンガン濃度を低減しておき、その次に本発明を適用してマンガン酸化細菌を用いてマンガン除去する方法が効率的である。
フィリピン国パラワン島バタラザ,リオツバ(Rio Tuba,Bataraza,Palawan 5306,Philippines)に所在するコーラルベイニッケルコーポレーション社(Coral Bay Nickel Corporation)のニッケル酸化鉱の湿式製錬プラントの排水処理設備の排水路配管から採取したマンガン酸化細菌を含むスラッジを水分込みで約1g採取し、これを250mlの純水中に懸濁させた。
始液に含まれたマンガン濃度は、撹拌を開始してから1時間程度の初期時間で急激に1.8から1.4mMol/L(76mg/L)まで低下する初期状態を呈し、その後は14日間かけて検出下限すなわち事実上0mMol/Lまで低下した。
つまり14日間でマンガン酸化細菌によりマンガンを1.4mMol/Lだけ低減させることができた。
上記実施例1の結果は添加したマンガン酸化細菌が増殖活動し、溶液中のマンガンを酸化除去したためと考えられる。
アミノ酸としてアスパラギン酸の代わりに分子量が141のグルタミン酸のナトリウム塩4mMol/Lを添加した以外は、実施例1と同じ条件で14日間撹拌を実施した。この時のマンガン濃度の変化は初期期間で1.8から1.5mMol/L(84mg/L)まで低下し、その後14日経過後は検出下限、すなわち事実上0mMol/Lとなった。
アミノ酸としてアスパラギン酸の代わりに分子量が75のグリシン4mMol/Lを添加した以外は、実施例1と同じ条件で14日間撹拌を実施した。この時のマンガン濃度の変化は初期状態で1.8から1.3mMol/Lに低下し、その後14日経過後には0.2mMol/Lとなった。この時の変化量は1.1mMol/L(60mg/L)だった。
実施例1、2と比較例1の対比から、分子量が大きすぎるアミノ酸は製造が難しいことや経済的に妥当でなく、アミノ酸としては分子量が概ね90以上のアラニンやグルタミン酸ナトリウムなどを用いるのが望ましいことがわかる。
アミノ酸としてアスパラギン酸を1mMol/Lとなる量を添加した以外は実施例1と同じ条件で14日間撹拌実施した。この時のマンガン濃度は初期状態で1.8から1.4mMol/Lに低下し、その後14日経過後には0.9mMol/Lとなった。0.5mMol/L(27mg/L)しかマンガン濃度は低下せず、マンガン酸化細菌の活性化が不十分で濃度の下がり方は実施例1と比較すると鈍くなった。
図3に示したアミノ酸添加量の関係から、マンガン低減量(ΔMn)を60mg/L以上確保するには、アミノ酸は概ね3mMol/L以上の量を添加することが望ましいことがわかる。
マンガンの初期の濃度1.8mMol/Lと比較すると、マンガン濃度に対して1.6倍以上のモル濃度量の添加が望ましいこととなる。
栄養素としてグルコースを全く添加しなかったこと以外は実施例1と同じ条件で 14日間撹拌を継続した。この時のマンガン濃度の変化は初期状態で1.8から1.4mMol/Lまで低下し、その後14日経過後には0.4mMol/Lとなった。この時の変化量は0.9mMol/L(濃度52mg/L)だった。
比較例3を実施例1と対比すると、マンガン濃度の低下は認められるが、マンガン酸化細菌の活性化が不十分で、マンガン濃度の下がり方は実施例1と比較すると鈍く、グルコースを添加することの有効性が確認された。
図4に示したグルコースの添加量の関係から、マンガン低減量(ΔMn)を60mg/L以上とするためには、グルコースを概ね0.4mMol/L程度添加することが必要となる。しかし過剰に添加しても前述のように雑菌の繁殖によってマンガン酸化細菌の活性化が鈍化するなど逆効果であり、上限は1mMol/Lとすることが好ましい。
マンガン濃度は1.8mMol/Lから低減していくので、グルコースはマンガンの0.2倍当量以上、0.6倍当量以下の量を添加することが効果的となる。
Claims (2)
- 自然に繁殖している場所から採取したマンガン酸化細菌を、マンガンを含む排水に添加してマンガンを除去する方法であって、
90以上の分子量をもつアミノ酸と、グルコースを添加し、
前記アミノ酸の添加量が、排水中のマンガンのモル濃度の1.6倍〜2.2倍のモル濃度となる量であり、
前記グルコースの添加量が、排水中のマンガンのモル濃度の0.2倍〜0.6倍のモル濃度となる量である
ことを特徴とする排水からのマンガンの除去方法。 - 予備工程として、マンガンを含む排水に予めアルカリを添加してpHを調整し、マンガン濃度を65mg/L以下に低減しておき、該予備工程で得られた排水を上記請求項1記載の処理に供する
ことを特徴とする排水からのマンガンの除去方法。
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